花組の面々はそれぞれに個性が強い。
性格的なこともあるが、各々が自分の技に自信を持っているからである。
そうした中、ともすれば個人技に走りがちな降魔との戦闘に於いて、極力チームに
よる集団戦にさせるのがマリアの役割である。
本来、こうした仕事は隊長たる大神の役目だが、大神自身、先頭になって斬り込ん
でいき、敵陣で大暴れするのが本意だったりするから、どうしても指揮を執りにくい。

マリアも何度となく大神には苦言を呈し、時には米田やかえでにも訴えていたので
あるが、結局はうやむやになっている。
というのも、後方で指揮を執ることに専念させてしまっては、大神の能力や意欲を
殺いでしまうかも知れないという恐れもあったからだ。
だから米田もあやめも、大神に隊長としての指揮を軽視するなと指示はしているが、
基本的には好きにさせていたのである。
実際、大神は闇雲に突っ込むだけではなく、前線からでも可能な限り隊員達に目を
配り、指揮は執っていたのだ。
それ以上を望むのは酷であり、そうなるのは大神がさらに経験を積み、年齢を重ねて
前線指揮官というより作戦全体を統括する立場になってからでも遅くはない。

マリアもそれはわかるから、仕方なく自分がチームをまとめようとしている。
戦闘や公演のない時などは、戦術フォーメーションなどの研究もやるのだが、実戦
や訓練と違って、隊員たちは真剣みに欠ける。
ある時、同期のカンナが言ったものだ。戦術をないがしろにしているつもりはない
が、あまりにそれにこだわっては結局、彼らの個性を殺すことになりかねない。
大神も同様だ。
チームで戦うことは花組メンバーたちも重々理解している。
だから、あまりやかましく言わない方が良い、と。
それはマリアもわかっているのだ。
多分に我流であり、その場凌ぎではあるものの、戦闘時に於いて隊員たちは一応、
理に適った共同戦闘は行なっているのだ。

例えば、日本刀を模した武器と徒手空拳で戦うさくら機とカンナ機は、切り込み隊長
として真っ先に敵に突っ込んでいく。
マリアと紅蘭は火砲を装備した機体だから、これは明確に後方からの砲撃、狙撃が
任務だ。
武器はないが、強力な霊能力を持つアイリスは、テレポートやサイコキネシスを駆使
して戦闘をサポートする。
その短距離と長距離の挾間をカバーするのが薙刀を操るすみれ機であり、彼女の場合、
長い武器を振り回すことによって、密集体型の敵を一掃するという特技もある。
明確な区分けはあるわけだ。

当然、不得手もある。
白兵戦を得意とするさくら機、カンナ機は、逆に言えば遠方から飛び道具で攻撃され
たら無力なのだ。
一方、マリアと紅蘭、そしてすみれは、敵に内懐に飛び込まれたら如何ともし難い。
武器のないアイリスも同様である。
その弱点、欠点がわかっているからこそ、彼らは自然発生的にコンビを組んで戦う
のである。

距離がある場合は、紅蘭が一斉砲撃を加えて敵の数を減らし、混乱を与える。
敵の動揺が収まらぬうちにさくら、カンナに大神、ソレッタ機が突っ込み、蹴散らし
ていく。
その際、アイリスが念動力で敵を拘束あるいは宙に持ち上げ、それを下から彼らが
仕留めるのである。
その隙を狙って攻撃してくる敵には、後方からマリアが狙撃して撃破する。
遊撃隊のすみれは、敵の濃いところに突入し、薙刀を振り回して迎撃する。
もちろんこの攻撃にもマリアや紅蘭といった砲兵のサポートがある。

こうしたコンビネーションは彼らがその場その場で適宜採用しているものであり、
教えられたわけではない。
しかし、結果的にはマリアが口を酸っぱくして講義している戦術とそう大差はない
ものになっているのだ。
ただ、こうした臨機応変の戦闘は、当然のことながら猛烈な集中力を要求される。
彼女たち花組はそれを充分に保っているはずだった。

黒乃巣会および黒鬼会は壊滅したものの、帝都は依然として降魔の脅威を受けていた。
これは何も日本に限ったことではなく、人間たちの戦乱に影響されたのか、世界各地
で降魔の被害が目立ち始めていた。
帝都、巴里に続き、紐育でも華撃団が結成されたのもそのせいである。
この日も帝撃に出撃命令が下っていた。

「そっち! 行ったぞ、すみれ!」
「お任せなさい!」

カンナが討ち漏らした降魔が二匹、前線を破って後方へ突進していく。
それを迎え撃ったのはすみれ一機だったが、彼女は愛刀を振るって二匹を難なく同時
に仕留めた。
鋭い大刃に両断された降魔は身体を上下に切り放たれ、惰性で数歩進んでからドッと
ばかりに血と臓物をまき散らして地に伏した。

この日の降魔は割とオーソドックスなタイプで、蜥蜴を立ち上がらせて、その背に
悪魔のような翼を生えさせたようなスタイルだ。
二足歩行だから脚は発達していたし、悪魔のような羽根といっても、その強靱な筋力
で一応は飛翔能力もある厄介なタイプだ。
しかし、連中を指揮統率するリーダー格はいないし、別の強力な降魔に飼われている
わけでもない。
集団で攻撃してきてはいるが、個々が勝手に破壊し、戦っているだけで、特に強敵
ではない。
花組が戦いを有利に進めていた。

「……」

さくらは、そんな仲間たちの戦い振りを呆然と眺めていた。
そう見えた。
気を抜いていたわけではない。
今日もカンナとともに敵陣へ走り込み、派手に暴れているようには見えた。
しかし、いつもキレも迫力もなかった。
相手が雑魚だから、取り敢えず始末できているだけで、さくららしいケレン味がない。
メンバーたちも、そんなさくらの様子に薄々気づいてきたらしい。

「さくら! 何してるデスか!」
「さくらはん、前や、前! 三匹まとめて来よるで!」

そうした仲間の声を聞いて初めて動き出す。
そして撃破すると、また動きを止めてぼんやりしてしまう。

「……」

さくらの脳裏には、降魔ではなく新次郎が占めていた。
それどころではない、今は戦わないとと思うのだが、どうしても身が入らなかった。
彼に犯された衝撃、彼のテクニックで心ならずも感じさせられてしまったこと、そ
してその快感が、もしや大神相手の時以上だったのではないかという脅え。

さくらは新次郎に好感を持っている。
大神の甥ということを除いても、新次郎は愛すべき少年だったし、さくらの母性
本能をくすぐる相手だったのだ。
降魔迎撃部隊の隊員として、そして指揮官としての素質もある。
その彼を、さくらも育てているような面映ゆい実感もあり、保護したい可愛い相手
だったのだ。
その相手に肉体を蹂躙された悔しさと恥辱。
その結果による陶酔感。
いずれもがさくらを奈落の底に落とすだけのショックがあった。

「カンナぁ、さくら、どうしたの?」
「……知らねえよ。もしかして隊長と喧嘩でもしたか?」
「お兄ちゃんと? アイリス、そんなこと聞いてないよ」
「だよなあ。だいいち、隊長は普通だもんな。喧嘩でもしたら、むしろさくらより
隊長の方に影響が出そうだし」
「カンナ、アイリス! おしゃべりはやめなさい、まだ降魔は残ってるのよ!」

マリアは舌打ちしていた。
さくらがおかしいだけでなく、そのさくらのせいで他のメンバーにまで悪影響が
出ている。
マリアは大神と相談して、さくら機を撤収させることも考えていた。
概ね戦況は優位であるし、ここで一機退いても問題はなさそうだ。
そう判断して、前線の大神に連絡しようとしたその時だった。
マリアの顔から血の気が引いた。

「さくらっ!!」

さくら機の真後ろから降魔が飛来し、手にした槍を構えて突っ込んでくる。
このタイプにとって唯一の武器であるこの槍はかなり硬質で、今の人類科学では
分析不能だった。
何しろ、持ち主の降魔が死んでしまうと同時に、その槍も消失してしまうからだ。
わかるのは、降魔とほぼ同じ物質で出来ているらしいということと、その先端の
鋭さと硬さは、充分に霊子甲冑の装甲を破損させる威力はある、ということだ。

「え……?」

まだぼんやりしたさくらが振り向くと、もう降魔は目の前にまで来ていた。
槍の穂先がさくら機の首筋に向かってきている。
もしこのまま突き刺さり、装甲を貫通すれば、さくらの頭部に届いてしまう。

「……!!」

さくらは声も出せず屈んでしまうだけだった。

「さくら!」
「さくら君っ!」

他の隊員たちも気づいたが、距離があって咄嗟にどうにも出来なかった。
紅蘭の砲撃ではさくらを巻き込んでしまうし、マリアの射撃技能を持ってしても
狙撃は難しかった。
降魔に当てることは出来るだろうが、跳弾がさくら機に行かないとも限らないし、
降魔を貫通してしまったら、その弾丸がさくら機を破壊しかねない。
それでも放っておくわけにはいかない。
マリアは一か八か、狙点を降魔に定め、トリガーに指をかける。
その時だった。

「大河少尉!?」

さくら機に最も近かった新次郎の機体が、降魔の槍とさくら機の間に潜り込んだの
である。
新次郎の機体はまだ専用機ではなく、予備の光武改を使っていた。
彼も叔父に倣って接近戦を好み、武器も日本刀をモデルにしたものだ。
従って、彼の位置では刃が届かない。
咄嗟の判断で、我が身──というか自機を犠牲にして降魔の刃先に身を挺したので
ある。

「ぐっ……!」

降魔の槍は無惨に新次郎の光武の装甲を突き破っていた。
長い穂先が機体に抉り込まれている。
もしさくら機に刺さっていたら、間違いなくさくらは重傷、ヘタをすれば戦死して
いたはずである。

「少尉!」
「新次郎!」
「新次郎はんっ!」

「お退きなさいっ!」

みんなが駆け寄る中、いちばん先に到達したすみれ機が薙刀を振るった。
縦横に十字を描くように刃が走ると、降魔はその首が飛び、首がなくなった胴体が
縦に両断されていた。

「少尉! 大河少尉、大丈夫ですの!?」
「あ……あ……」

新次郎の機体を抱え起こすすみれ機の側で、さくら機は尻餅をついていた。
あまりのことに激しいショックを受け、口から出る音が言葉にならない。
そんな腑抜けたさくらにすみれの怒鳴り声が容赦なく浴びせられる。

「さくらさんっ、あなた、何してるんですの!?」
「あ……」
「あ、じゃありませんわ! 今日はあなたおかしくてよ。何があったか知りません
けど、戦場でほさってしてるのは命取りですわ! あなたの命が取られるだけなら
構いませんけど、仲間がみんな危地に陥るんですわよ!」
「……」

すみれは、駆け寄ってきたアイリスと織姫とレニに新次郎機を託すと、さくら機を
立ち上がらせた。
大神やマリアたちは、後ろ髪引かれる思いで残りの降魔を掃討しに行っているようだ。
すみれは、まだ唖然としているさくらに罵声を浴びせる。

「いい加減にして! 今日のあなたは足手まといですわ! いいからもうお帰りな
さい!」
「すみれぇ、新次郎、怪我してるっ」
「何ですって!?」

アイリスの声に我に返ったすみれは、さくら機を解放──というより突き放して
から、慌てて新次郎の機体を振り返った。
コクピットのハッチが強制解除され、織姫とレニによって新次郎が引きずり出され
てくる。
彼の制服が血に染まっていた。
その血に一瞬脅えたアイリスだったが、勇を奮ってヒーリングをかけ始めた。
さくらは声もなく、震えたままその光景を見つめていた。

────────────────────────

「……っ……あ……」

この夜の凌辱は、それまでとは少し違っていた。
新次郎が、あまり反応のないさくらを見て、出来るだけ愛撫に時間を掛けようと思っ
ていたことがひとつ。
そしてもうひとつ、さくら自身の心の動きであった。

新次郎に犯されることは悲しく、そして屈辱的であることは以前と変わらない。
ただ、さくらは今までわからなかったのだ。
どうして新次郎はこうやって自分を虐めるのだろうか。
レイプとは、女性に対する最大の暴力行為だ。
好きだとあれだけ言っていたのに、なぜこんな酷いことを続けるのかわからない。
好きだというのは口だけで、もしかすると嫌って──いいや憎んでいるのではない
だろうか。

さくらは新次郎を目にかけていたし、端からわかるほどに可愛がっていたのだから、
憎まれる道理はないはずだ。
あるとすれば、自分が大神とつき合っている──肉体関係もある大神の女である、
ということへの嫉妬だ。
さくらは漠然と、そうなのだろうと思っていた。
だが、それにしては日常生活では、それまでとまったく変わらない態度でさくらと
接していたし、周囲に誰もいなくともさくらに冷たくするということもない。

そして今日の戦闘である。
新次郎のこともあり、戦いに集中できなかったさくらは降魔に狙われ、光武を撃破
される寸前だった。
霊子甲冑が撃破されれば、搭乗しているさくらとて無事では済まない。
実際、過去に光武を破壊された隊員たちはほとんど負傷していた。

降魔の鋭い槍先が、さくら機のカメラに大きく迫った時、さくらは悲鳴を上げて目を
瞑るしかなかった。
次の瞬間、別の霊子甲冑がさくら機と降魔の槍の間へ割り込むように突っ込んできた
のだ。
攻撃が間に合わないと見た捨て身の行動である。

さくらは当然、これは大神機だと思っていた。
そして、ぼんやりしていた自分への嫌悪、大神への感謝と愛情に胸が熱くなった。
しかし、降魔の槍に貫かれていたのは大神機ではなく、新次郎の機体だったのである。
唖然とするさくらを尻目に、大河機は中破され、その際に新次郎は脇腹に傷を負って
いる。

さくらは混乱した。
なぜ彼が自分を助けてくれるのかわからない。
余裕のある状態ではなく、身を挺して、怪我までして助けてくれたのだ。
さくらを憎んでいるなら、嫉妬しているなら、そんなことをしてくれるわけがない。

さくらは戦闘後、部屋に新次郎を訪ねたときのことを思い起こしていた。
隊のマスコット的存在になりつつあった新次郎が負傷したということで、隊員達は
大騒ぎになった。
降魔を駆逐し帝撃に引き上げて、医務室で治療する彼を心配そうに見守っていた。
その中に、さくらとマリアだけいなかった。

さくらは支配人室に呼び出されていたのだ。
もちろん表向きは今回の不始末に対する叱責であるが、その反面、他の隊員たちと
の関係を慮った処置でもある。
すみれなどは、医務室でまたさくらを責めかねないだろう。
さくらも大勢の前で怪我をした新次郎を見舞うのはいたたまれないはずだ。
それを見越したマリアと大神が、取り敢えずメンバーが見舞っている間はさくらを
他に置いておこうとしたのである。
米田もかえでもそれを察し、さくらを呼び出したのだ。

支配人室から出た時、新次郎は医務室を出て自室に戻ったとかすみから聞かされた。
この年長者の優しい女性は、それだけを告げると薄く微笑んでその場を立ち去った。
見舞いに行きなさい、と言っているのだろう。
さくらはその思いやりに頭を下げた。

二階の彼の部屋への足取りが重い。
一歩一歩がこれだけ重く感じられたのは生まれて初めてだった。
新次郎に感謝と礼を言わないわけにはいかない。
だが、それ以前に彼がさくらに対して行なってきた蛮行はどうなのか。
その男に助けられたからと言って、礼を言う義理があるのか。
だが、新次郎の行為は肉欲一辺倒ではないようにも思えたし、何より命がけでさくら
を救ったのは事実なのだ。
年上らしく、言うべきことは言わずばなるまい。

時間をかけてようやく彼の部屋の前に来たが、まだ決心がつかない。
何度も何度もドアノブを握っては離すことを繰り返していたが、ようやく決意を
固めてグッとノブを開こうとした。

「あっ……」
「? さくら?」
「マリアさん……」

先にマリアが見舞いに来ていたらしい。
マリアも責任者としてさくらの訓戒につき合ったため、病室で見舞えなかったのだ。
マリアは、一見ひやりとするような視線でさくらを見ていた。
さくらは素直に頭を下げた。

「マリアさん……、今日は申し訳ありませんでした……」
「謝るべき相手は私じゃないわ」
「でもあたし……、みんなにまた迷惑かけてしまって……」
「それよりも、まずあなたが言葉を掛けるべき相手はこの中にいるはずでしょう?」
「……」

マリアはそう言ってドアを振り返った。
そして軽くさくらの肩を叩くと、無言のまま去って行った。

「……さくらさんですか?」
「……」

中から声が掛かると、さくらはもうどうしようもなく俯いたまま小さくうなずく。
そっと部屋の中に入った。
重い口を何とか開き、言葉を紡ぎ出す。

「怪我……、大丈夫ですか?」
「はい、平気ですよ、これくらい」
「でも……、血がいっぱい出てました……」
「ええ、出血はしましたけど失血死するところまではとてもいきませんよ。急所
だって外れていたし、骨も内臓も大丈夫だってかすみさんに言われました」

思いの外明るい声に、さくらはようやく新次郎に視線を合わせた。
笑っていた。
まるで何もなかったかのように微笑んでいた。
さくらは目を逸らせたまま深く頭を下げた。

「……本当に……すみませんでした」
「だから平気ですよ。僕だって、これでも海軍士官学校出です。これくらい、どう
ってことありませんよ」
「でも……」
「ホント、平気ですって。だって本当に重傷だったら海軍病院に収容されちゃいま
すよ。そこまでいかなくても、ここの医務室に入院させられちゃうはずです。でも
かすみさんも由利さんも、自室療養で構わないって言ってましたから」
「でも……、どうして?」
「は? どうしてって?」

相変わらずニコニコしている新次郎が、さくらには信じられない。

「どうして、その、あたしを……助けてくれたんですか」
「え?」

新次郎はきょとんとして目を大きくした。
それこそ、何を言っているのかわからない、という風情だ。

「どうしてって……聞かれる方がわからないですよ。だって、仲間を助けるのは
当たり前でしょう?」
「……」
「しかも、さくらさんなんですから。そりゃもう何を差し置いても助けたいですよ」
「ほ、本当に……」
「当たり前じゃないですか。場合によっては、僕の命を投げ出してもあなたを救った
と思います。それで悔いはないですから。逆に、自分の命を惜しんで躊躇って、その
結果、さくらさんに何かあったとしたら、そっちの方がイヤですよ」
「……新次郎くん……」

さくらは複雑な思いで年少の青年を見つめるしかなかった。

そんな中、彼はまたさくらを抱こうというのだった。
怪我のこともあり、もしかすると今夜は来ないかも知れないと思ったが、やはり彼は
やってきたのだった。

「んっ……」

縛られているのはいつもと同じだった。
ただ今夜は、後ろ手ではなく、捕虜のように組んだ両手を首の後ろで固定されるよう
に縛られていた。
脚が自由で、胸を括り出すようにされているのはいつも通りだ。
違うのは、いつもは愛撫もそこそこに、さくらが濡れるような状態ではないまま性急
に犯してくるのに、今回はそれがなかった。

縛り上げられ、ベッドに仰向けに寝転がらされた状態で、身体の隅々まで愛撫して
きたのだ。
最初さくらは、足下に這ってきた新次郎が、彼女の脚を舐め始めたのを見てかなり
驚いた。
腿をさすったり舐めたりするくらいは大神もしていたが、新次郎はさくらの脚の裏や
指まで口に含み、唇と舌で念入りに愛撫してきたのである。

「なっ、何をするの……、汚いからやめて……!」

今日もまた、石のように醒めたままこの時間を終わらせようと思っていたさくらだっ
たが、さすがにびっくりして新次郎に言った。
それに対する彼の答えはさくらを唖然とさせるに充分なものだった。

「汚い? どこがです」
「どこがって……、そんな、足の……裏なんか……」
「全然きたなくないですよ。さくらさんの足の裏、まるで今お風呂から上がったばっ
かりみたいだ。綺麗ですよ」
「……」

事実、足の裏とは思えぬほどに清らかで柔らかい皮膚で覆われていた。
角質層が硬くなった部分もない。
きゅっと締まった足首は実に美しかったし、くるぶしも可愛らしい。
嫌悪すべきものは何もなかった。
新次郎はさくらの動揺をよそに、そっとその足の指を口に含んだ。

「んっ……」

さくらは初めての行為におののいた。
ねっとりと熱く柔軟性に富んだ舌が、さくらの指を一本一本丁寧に舐めていくのが
判る。
指の間にすっと舌を入れられ、舐められると、さくらは思わず身をすくめた。

「くっ、くすぐった……あ、いや……」

こそばゆいような、ぞくぞくするような不可思議な感覚だった。
汚い、気持ち悪いと思っていたのに、不快な感じはなかった。
新次郎はさくらの足を手に取り、その裏も甲にも舌を這わせ、くるぶしには軽く歯
を立てたりした。
指は特に念入りに舐め、くわえたまま指の根元を軽く噛むようにしつつ、舌でその
周囲をねぶっていく。
左右の足にその愛撫を行なうと、今度はふくらはぎだ。硬い脛とは対照的に、健康
的なさくららしくふっくらと膨らんだふくらはぎは実に女らしかった。
新次郎はそこにも舌を這わせていく。

「ん……あ……」

そんなところに性感帯があるとは思いもしなかったさくらは、微かな頼りない快感
を覚え始める。
ふくらはぎに沿うように舌が這い上がっていくと、その舌のこそばゆい感触に小さく
身を捩る。
そして指は、爪の背を使って、膝の裏をこそこそとくすぐってきた。

「ひゃっ……!」

さくらはびっくりしたように小さく叫び、身をすくめた。

「どうしました?」
「ちょっとびっくりしたんです……。く、くすぐったいし……」
「そうですか」

こそばゆいのは性感の一歩手前である。
新次郎は、もう少し力を入れて膝の裏を責めていく。
間接の裏というのは、表に硬い骨があるので、対照的に他よりも薄く柔らかい皮膚
で覆われている。
くすぐったい箇所なのだ。
そこを青年は慎重に、爪でそっと撫で上げていく。

「あ、あ……む……」

くすぐったいか気持ちいいか、その境界線あたりの感覚に、さくらは戸惑っていた。
思わず笑い出してしまいそうな、それでいてぞくぞくするような痺れもある。
続けて新次郎の舌は、太腿に進出していた。手と指を使って太腿の外側の肉と皮膚
を軽くつまみ、ぐっ、ぐっと按摩でもするように愛撫し、揉みほぐしていく。
同時に、唇と舌はその内側を優しく責めていった。

「あ、そこは……くっ……」

内腿を舐められ、さくらは思わず顎をくっと仰け反らせた。
そこはさくらのポイントのひとつだった。
大神の愛撫中に偶然発見され、それと知った大神もさくらを抱く時には、そこを愛撫
してくるようになったのだ。
そのせいで開発され、今ではそこを撫でられたり舐められたりすると、すぐに濡れる
ようにすらなっている。
そこを責められては、思いもよらず男を迎え入れる状態になってしまう。
さくらはやや慌て気味に新次郎を止めた。

「新次郎くんっ、そこはだめ……あっ……」
「だめ? なぜです?」
「だ、だって……」

さくらは赤くなった顔を伏せた。
気持ちよくなってしまう、とは言えなかった。
新次郎はそれがわかるのか、何度か頷いて言った。

「ここがいいんですね?」
「……」
「わかりました」
「え? あ、やっ……うんっ……」

やめてくれるのかと思いきや、彼はなおも舌と唇で愛撫してきた。
新次郎としては止めるつもりは毛頭ない。
そもそもさくらの全身をこうやって愛撫しているのも、さくらの感じるポイントを
自分の身体に覚えさせるということもあるのだ。
新次郎は、さくらの反応が強いところをしつこついほどに舐め込んでいった。

「やっ……やめ……くっ……」

焦れったいような快感と、時折やってくる強い快感に、さくらは歯を食いしばって
堪えていた。
新次郎は、腿を手で何度も撫でながら、口を開けて内腿を頬張り、唇で挟むように
愛撫している。
舌を尖らせて線を引くように強く刺激したり、舌全体を使ってねっとりと大きく
舐めることを繰り返した。
頬張った内腿の肉を思い切り吸い上げるようなこともしてきた。

「や……は……だ、め……あっ……」

(だめ、いけないっ……あ、このままじゃ、あたし……)

さくらは腰の奥に熱いものが滲んでくるのを自覚した。
このままでは新次郎の望むままに愛液を漏らし、濡らしてしまう。

もう我慢できないと思った時、すっと新次郎の口が離れた。
ホッとする間もなく、今度は裏返しにされる。
何をされるのかと思って首をねじ曲げると、今度は背中に舌を這わせてきた。
窪んだ背筋に沿って、思い切り舌を伸ばして下から舐め上げていく。
唾液をたっぷりと溜めて、舌全体を使って舐めてきたため、ぬるっとした感触が背筋
に走る。

「くっ……あっ……」

またしても新たな性感帯を教えられ、さくらはそのたびに身体を震わせて、くぐも
った呻き声を上げた。
首筋から肩にかけてじっくりと舐め上げられると、背筋がキュンとするような戦慄
を覚える。
新次郎がぺろっとひと舐めするごとに「くうっ!」と、堪えきれぬ微かな声を漏ら
し、ギクッと身を震わせる。
何度か悲鳴と呻きを噛み殺して耐えていると、ようやく舌はそこを離れてくれた。

今度は二の腕や肩、うなじ、肩胛骨のあたりを舐めている。
うなじはともかく、あとはそう強い快感もなく、さくらは少し自分を取り戻している。
そして首を回して、盛んに自分の背面を愛撫している新次郎を見やっていた。
まさに全身を愛撫し、舐めようとしているかのようだ。ここまで執拗な愛撫は受けた
ことがなかった。
まだ半身しか終わっていないのに、もう20分以上時間は経っている。

つい大神との行為を思い出す。
大神とのセックスは、前戯と後戯を入れても30分くらいだろうか。
時間がない、あまり双方の部屋に行っているのはまずいということもあって、割と
早めに済ませていた。
もうさくらたちが恋人同士だというのは公然の事実だが、それだけに特別扱いされ
ていると思われたくなかったし、変な目で見られるのもイヤだったから、そそくさ
と済ませていたのかも知れない。
興が乗って二度目の行為に及ぶこともあったが、それでも40分くらいだったろう。
愛撫による効果をその身でいやというほど実感しながら、さくらはぽつんと聞いた。

「新次郎くん……」
「……何でしょう」
「どうして……その、こんなに……」
「?」
「あたしの……身体を……」

新次郎はさくらの白い背中から口を離し、ひょいとその顔を見た。

「こんなにさくらさんの身体を念入りに愛するのかって聞きたいんですか?」
「……」
「そりゃさくらさんのことが大好きだからです」
「え……」
「言ったじゃないですか、何度も。僕はさくらさんが好きです。愛してるんです」
「……」
「愛する人の身体なんですから、大事にしたいんです。丁寧に扱いたいんです。それ
だけです」
「……」

返す言葉が見つからなかった。
ウソをついているとは思えない。
やはり彼はさくらを嫌うどころか、真剣に愛しているらしい。
そう考れえば、昼間の戦闘で大神よりも早くさくらを救出したのもわかる。
こうやって、さくらの裸身をまるで宝物のように大切に扱い、愛撫しているのもそう
だろう。

だからと言って、さくらはそれを受け入れるわけにはいかなかった。
どう言い繕っても新次郎のしていることは女性の尊厳を穢していることに他ならない
し、許せることではない。
第一、さくらには大神がいるのだ。
大神と別れることなど考えられない。
そうなったとしても新次郎と……ということになるわけがなかった。
だが、新次郎の言葉にウソはなく、さくらの肢体を心を込めて丁寧に愛撫している。

(この子……、本当に……本当にあたしのことを……。どうしよう……どうしたら
いいの、大神さん……)

さくらの心は千々に掻き乱れた。
新次郎の愛撫が再開し、またさくらを現実に引き戻した。

「あっ!?」

新次郎の顔が思いも寄らぬところにあった。大きく拡げた腋だった。
青年がそこをじっと見ている。
さくらは赤くした顔を背けた。

「そ、そんなところ見ないで……。ああっ!」

新次郎としては、背面を舐め尽くしたので、今度はひっくり返して乳房を責めようと
思っていたのだ。
さくらをあおむけにする中途でそこが目についた。
両腕を後頭部で組まされいているために、さくらの腋がすっかり剥き出しにされて
いた。
綺麗にむだ毛処理もしてあったその白い窪みに、新次郎は強く惹かれるものがあった。
思わずそこにすっと舌を伸ばすと、さくらは思いも寄らぬ激しい反応を見せた。

「ひぃっ! やっ……、く、くすぐった……ああっ!?」

指でくすぐられるのとはまったく違うその感触に、さくらは大いに戸惑い、激しく
身悶えた。

「いやっ、はああっ……やめっ……ひっ……きゃっ……ああっ……!」

くすぐったさと性感は紙一重だが、さくらはそのことを我が身を持って知ることと
なった。
こそばゆさの限度を超えたその時から、はっきりとした快感へと変化していった。
新次郎の舌が思い入れたっぷりに腋の窪みを舐め上げるごとに、さくらはまるで乳首
やクリトリスを舐められているかのような感覚を味わっていた。
唾液を乗せた舌が大きくべろりと舐めてくると、背筋がびりっと痺れ、身体の芯から
官能の疼きが走り抜け、子宮まで感電してくる。

「やっ……あああ……うんっ……もっ、あっ……し、しないで……あ、あは……」
「だんだん気持ちよくなってきたみたいですね」
「そっ、そんなこと……」
「違うんだ。じゃあ、もっとしてあげますね」
「い、いやっ……!」

拒むさくらを突き転がして、なおも腋を責め続け、とうとうさくらを喘がせるにまで
至った。
もうじっとりと綺麗な額に汗を浮かべ、消耗しきったような弱った美貌を見せている。
そうしてから身体を仰向けにして、その見事な乳房を露わにさせた。
和服の上からは想像もつかない大きさの膨らみだ。
着痩せするタイプらしい。

「あ……あ……」

新次郎の顔がゆっくりと胸に近づくのを見ながら、さくらは戦慄した。
今まで全身で味わったあの感覚が敏感な胸で展開されることになる。
彼の唇が乳房を捉え、ふっくらとした白い膨らみを優しく吸い上げつつ、もう片方の
乳房は手でじんわりと揉み上げていく。
見る見る勃起した乳首を唇で挟むようにして虐め、舌でころころと転がしてやる。

「あうっ……!」

じぃん、びぃんとした響きがさくらの胎内にまで伝わっていく。
唇に含んだ乳首は、新次郎が舌先でなぞるように小さく円を描いていき、乳輪にまで
下っていった。

「あくっ! あ、やっ……うんっ……!」

新次郎の指や舌が官能のツボに触れるたびに、さくらは小さく叫びながら白い裸身を
跳ねさせ、反り返っていた。
乳房も徐々に熱を持ち、熱くなってきている。

「さくらさん、興奮しているんですね。心臓の鼓動が僕の舌や指に伝わってきます」
「いやっ……もうやめて……ああ、このままじゃ、あたし……」
「このままだとどうなるんです? もしかして、もういっちゃうとか?」
「……」

恥ずかしそうに、そして悔しそうに顔を逸らせる美女に、新次郎はさらなる愛情を
抱いていく。

「じゃ、ここなんか責めたらたちまちいっちゃいますかね」
「え……? きゃあ!」

青年の指が、もっとも恐れた箇所に伸びていた。
新次郎の細身の指が、さくらの肉の割れ目に沿って這っている。

「あれ、やっぱりもうこんなに濡れてるじゃないですか」
「こ、これは……」
「感じてたんでしょう? 気持ちよかったわけだ」
「……」
「またダンマリですか。それならイヤでも声を出させてあげます」
「んっ……」

新次郎の指が膣の脇をかすめるように愛撫していく。
焦れったくてもぞついてくると、今度は割れ目の合わせ目を撫で上げる。
恥ずかしげな、それでも甘く熱い吐息を何度も漏らすようになってくると、新次郎
の指は新たな蜜で汚れていく。

「……っ! あ……くうっ……いっ……」

必死に声を噛み殺そうと、小さめの唇を噛みしめているているものの、どうしても
熱い吐息が漏れ出てくる。
そうしておいてから、今度はお得意の舌責めが始まった。

「あ、あうっ! ひっ……いっ……うっ……ああ、だめっ……ひゃっ……!」

新次郎は大胆に、舌全体を使ってペロペロとさくらの花芯をねぶるように舐めていく。
どんなに堪えても、次から次へと込み上げてくる熱い感覚。
官能の神経すべてが剥き出しにされたような敏感な肉芽を直接責められ、さくらは
しなやかな肢体をうねらせ脂汗を滲ませている。
包皮から顔を出したクリトリスに熱い舌がちょんと触れると、さくらはビクッと腰
を震わせて仰け反る。

「ああっ! そこっ! あ、もうだめっ! しないで、あくうっ!」

もはや全身性感帯と言ってもいいさくらだが、やはりそこは外面上もっとも鋭敏な
箇所だ。
新次郎は包皮を完全に剥いてクリトリスを露出させると、そこつるっと口に含んだ。
その瞬間、さくらは絶叫を上げて腰を突き上げるようにして反り返った。

「ひぃっ!!」

さくらの腰に顔を直撃され、少し驚いたような顔をしていた新次郎だったが、すぐに
気を取り直し、そこを唇で吸い上げた。

「あひっ!? ああ、やああっ! しっ、しんじろ、ああっ! 新次郎くんっ、そこ
だめっ、ひっ、ホントにだめえええっ!」

狂ったかのようにビクッ、ビクッと身体を大きく痙攣させ、強烈な快感に刃向かって
いたさくらだったが、その身体は汗にまみれ、匂い立つような朱に染まってきていた。
華奢な身体が跳ね、反り返るたびに、汗が飛び、美しい乳房がぷるんっと大きく揺れ
ていた。
その先端の乳首は充血し、触れれば血が噴き出しそうなくらいに硬く尖っている。
跳ねる女体を押さえつつ、新次郎は舌と唇を駆使して肉豆を吸い、ねぶり、責めていく。
そして少し強めにちゅるるっと吸い上げると、さくらは股間に乗った新次郎の顔を弾き
飛ばす勢いで跳ね上がった。

「だんめっっ! いっ……くううっっ……!」

その激しい絶頂に、新次郎もさすがに驚きの色を隠せず、呆れたようにつぶやいた。

「びっくりするなあ……」

感度が良いこともそうだが、その反応が凄かった。
我慢に我慢を重ね、限界まで耐え抜こうとするが、その箍が外れてしまうと、一気に
それが噴出するらしい。
一方、さくらの方は、全身が萎えきってしまったかのように力が抜け落ち、がっくりと
息絶えたみたいに見える。
縛られた腕はもとより、両脚も含めて全身を弛緩させ、さきほどの強烈なエクスタシー
の余韻に浸っている。

「感じやすいとは思ってたけど、ここまでとはね」
「……恥ずかしい……」
「恥ずかしいことなんてないですよ、それだけさくらさんの身体は素晴らしいって
ことじゃないですか」
「……」
「でも、大神の叔父さんだってこれくらいのことはしてくれたでしょうに」

してはくれた。
しかし互いに照れが先走って、あまり執着はしなかった。
気持ち良かったのは事実だが、恥ずかしさの方が強かったのだ。
さくらの性格上「もっとして」とは、なかなか言えなかった。

「ここまですれば、もう充分そうですね」
「充分て……なにが……?」
「もうさくらさんのオマンコ、びっちょりですしね」
「……」
「それじゃ、本番いきますね」
「ほ、本番って……あ!」

震えながら新次郎の方を見やると、すぐに小さく叫んで顔を逸らせた。
その股間には、立派なものがぶらぶらと揺れていたのだ。

「どうです、そろそろこれが欲しくなってきたでしょう」
「……」

さくらは目をつむり、顔を逸らせたままだったが、首から上が見る見る紅潮してきた
のが自分でもはっきりとわかる。
唇も顔も、いや全身が小刻みに震えている。
首筋や腕、腿に鳥肌が立っていた。
恐怖と期待がない交ぜになり、鼓動が大きくなっていく。

「いきますよ」
「い、いや……」

さくらの抗いは形ばかりで、のしかかってくる新次郎をはね除けようとはしなかった。
熱く硬いそれの先端は、さくらの性器と同じように濡れそぼっている。
カウパーが出っぱなしで、どろどろになっていた。
それが媚肉にあてがわれると、割れ目の合わせ目にぴたりとくっつけられる。
新次郎が腰を振り、ぐいっと下から上へとなぞりあげると、それだけでさくらの
花弁はぱあっと弾けるようにめくれあがってしまった。

「入れますね」
「……あ」

すっかり口を開けた膣口に、たくましい男根がずずっとばかりに挿入されてきた。
その瞬間を、さくらは全身で鮮烈なまでに感じていた。
また大神以外の男に犯されるという背徳感もさることながら、徹底的な愛撫で煮え
たぎっていた肉体が不安と、より大きな期待におののき、それを受け入れていく。

「んんっ……!」

身体の中いっぱいに入ってくるその感覚がわかる。
太いものが狭い膣をめいっぱい拡げてゆっくりと侵入してきた。
身体がはちきれてしまいそうなきつさと、その充実感、たくましさに目眩すら覚えた。
挿入しやすいように新次郎はさくらの腰を持ち上げつつ、深く貫いていく。
そのペニスを口いっぱいに頬張ったさくらの膣は、膣内の襞で絞り上げていく。

「ああ……」
「……やっとセックスでも感じてくれましたね。オマンコ、いい感じだ。その調子
ですよ、さくらさん」

ねっとりと絡みつくさくらの粘膜を感じ、新次郎は感慨深げに言った。
その言葉で、さくらは無意識のうちに自分の肉体が反応していたことを知り、己の
はしたなさ、浅ましさに顔を赤らめてしまう。
だが、新次郎の身体がゆっくりと動き始めると、だんだんとさくらの理性が曇りだし
それが関係ないかのように官能が勝手に疼き出していく。

「くっ……いい感じ……。僕も気持ちいいですよっ」

そんな新次郎の言葉が徐々に遠のいてくるような感じがする。
さくらの全身に性の悦楽が走り出し、白い肢体をうねらせ、悶えさせていた。
意識が薄れつつあったものの、身体だけは敏感すぎるほどに反応し、新次郎の肉棒
を必死にくわえ込み、味わおうとしている。

「はあっ……あっ……あうっ……あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……あっ
……」

むしろのんびりとした動きでピストンが始まると、さくらはそれに合わせて喘ぎ、
小さく呻いていた。
堅く閉じた目の奥で、突き抜けるような快感だけがさくらの媚肉でパッ、ポッと
明滅していた。
さくらの媚肉を充分に充分に愉しむと、新次郎は動きを少し変化させていく。
片手でさくらの腰を持ち上げつつ、余った片手で乳房を揉み込み、そのまま深く、
鋭く突き上げていった。

「くっ……くうっ……くっ……!」

さすがに深くまで突き上げられると、さくらの息が乱れ、小さな鼻腔から苦しげな
呻き声が漏れる。
その苦しさを解きほぐすかのように、新次郎は揺れる乳房を愛撫し始めた。
律動されるごとに、ぶるんぶるんと揺れ動く丸い乳房は、目にしみるほどに白かった。
初々しい淡いピンク色の乳輪から浮き出るように飛び出た乳首をくりくりと指で揉み
出すようにほぐしていく。
指の動きとともに蠢く乳首が何とも愛らしく、また色っぽかった。

「あう!」

その乳首を唇に含まれ、さくらは強い性感を感じた。
硬くしこった乳首を舌の先で転がされ、唇で柔らかく潰されるごとに、びぃんと
電流が背筋を突き抜ける。
その痺れは直接子宮の中に届き、快感の疼きとなって発散されていった。
浅く早く、深くゆっくり。
腰の使い分けていると、性感がだんだんと揉みほぐされてくるのか、さくらの身体は
はっきりと新次郎に感応していった。

「あ……」

さくらの頭に手をやり、髪を絡ませた片手で持ち上げると、さくらはつむっていた
目を開けた。
新次郎は、今さらながらさくらの美貌にうっとりする。
この美しい清純そうな女性を見ているだけで、さくらの中に挿入した肉茎がますます
膨張し、硬くなっていく。
堪えきれず、新次郎は腰を使って抉り込んでいく。

「ああっ……むうっ……あっ……くうっ……」

いくら押さえても、後から後から込み上げてくる快感にさくらが喘ぐ。
今、自分を犯しているのは大神ではないこと。
大神の血縁者であること。
年下であること。
大神も、そしてさくらも好感を抱いていた相手であること。
そして何より、本気でさくらを愛しているらしいこと。

そうした後ろめたさ、戸惑いが複雑な心情を作り上げ、さくらの心と肉体に微妙な
バイアスをかけていた。
新次郎の動きが激しくなっていく。

「ああ!」

さくらの声は、はっきりとした嬌声に聞こえた。
さすがに直接的な言葉は吐かなかったが、言葉を伴わぬ声が愛欲に染まっているの
は明らかだ。
今度は新次郎が呻き出した。

「あっ、あっ……さ、さくらさんっ、僕、もうっ……」
「あ、いやっ……」

「中に出さないで」と言う前に、新次郎はさくらの胎内にたっぷりと射精してきて
いた。



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