「い、いや……、今日はいやです」
「なぜ? 今さら何です。それとも今日は何かあるんですか」
「別に何もありません。でも……、でも、昨日もあんなに責められたのに……」
「昨日は昨日ですよ。僕、毎日でもさくらさんを抱きたい」
「おっ、大きな声で言わないで!」

夜の大帝国劇場内。
一階の西側隅には、貴賓用の玄関がある。
普段、公演のある日は、風組の榊原由利がここに詰めていて、来客の案内、接待を
している。
夜11時を過ぎた今は誰もいない。
真っ暗である。
隣の事務室の灯りも消えており、残業していたらしい藤井かすみも帰宅したようだ。

その暗い貴賓客入り口で、さくらと新次郎が揉めていた。
ほぼ毎日のようにさくらを抱いている新次郎が、この日も迫っていたのだ。
どちらかに何か用事がある時や体調不良の時を除けば、連日連夜に渡って新次郎に
されるがままになっていたさくらは、今では背徳感よりも彼に対する空恐ろしさを
感じている。

(いったい、この子はどうなってるんだろう……)

普通の男性の性欲とは、こんなに激しいものなんだろうか。
さくらが将来結婚したなら、夫となる男は毎日のようにさくらに挑むのだろうか。
さくらの友人にも結婚した娘はいるが、そんなことは聞けるはずもなかった。
この時代、女性がセックスについて話すなど、著しい不道徳であり、恥知らずな
ことだったのだ。
もっとも、それはあくまで男性視点の話であり、女性達は男のいないところで女
同士の性談義はしていた。

とはいえさくらは、実家が神社ということもあり、処女性や貞操観念については
当時の一般女性から見てもかなり強固な方である。
故に、友人たちとそうした話題になることもなく、まったくの奥手で上京したのだ。
花の帝都に出てからも状況は大して変わらず、大神に好意を寄せて恋人となり、肉体
関係を結ぶまでは性に関する知識はほとんどなかった。
経験を少しずつ重ねることにより、だんだんとセックスの快感も覚えだし、愛する者
同士が肉体的に愛し合う心地よさもわかってきた。
それでも彼女の男性経験は大神ひとりであり、当然、他の男のことは知らない。
男性生理も大神基準で判断するしかないのだ。

その大神もさくらも帝撃内に居住していることもあって、さすがに毎日同衾する
ようなことはなかった。
大神は隊長である手前、余計に他の隊員を意識するだろう。
隊員達も劇場スタッフたちも、大神とさくらの仲は知っているが、だからこそベタ
ベタしにくい面もある。

従って、大神がさくらを抱くのはせいぜい週に1度がいいところで、彼の任務や
さくらの公演によっては、ひと月以上ご無沙汰ということ珍しくない。
さくらも何となく、そういうものだと思っていた節もある。
そんな程度だったから、さくらの身体を求め続ける新次郎の性欲の強さに戸惑い、
おののいていたのだ。

大神のことを考えれば、新次郎のそれは明らかに異常である。
世の中、それほどに性に対する欲求の強い者がいるとは思いもしなかった。
だが、もし逆だったらどうだろう。
新次郎くらいが普通であり、大神の方が欲求が薄すぎるという可能性もある。
あるいは大神自身が、さくらにまだ遠慮している面もあるかも知れない。
いずれにせよ新次郎は大神とは段違いで、屈託なくさくらの身体を毎日のように
求めてくる。
もしかしたら、今まで大神に抱かれた回数よりも、この短期間で新次郎に犯された
回数の方が多くなってしまっているかも知れない。
そんなことまで考えたさくらは、もうこんな爛れた関係は清算したかったのだ。

「!」

その時、廊下の方から物音がした。
ふたりは緊張する。
こんなところを見つかったら、何を邪推されるかわかったものではない。
どう言い繕おうと、端で聞いていたら痴話喧嘩としか思えない。
さくらと新次郎が恐る恐る顔を出すと、事務室の隣──つまり支配人室のドアが
少し開いていた。

「……何でしょう?」
「行ってみましょうか」

それまでのやりとりを忘れ、ふたりは顔を見合わせると支配人室へ向かった。
ドア前にやってくると、内側から大きくそこが開いた。
出てきたのは米田である。
何だか少し困ったような顔をしている。

「おう! おまえらか、ちょうどいい」
「どうしたんです? 支配人」
「ちょうどいいって何ですか?」
「いや、まいったよ」

米田は人差し指で頭を掻きつつぼやいた。
そして、ちらと室内を振り返り、親指で差す。

「あれだよ」
「は?」

覗いてみると、支配人室の応接テーブルに大神が突っ伏している。
さくらは驚いて駆け寄った。

「おっ、大神さん!? あ……」

慌てて大神を抱き起こそうとしたさくらはすぐに気づいた。
眠っているらしい彼の吐息がかなり酒臭いのだ。
さくらは少し睨むように彼らの司令官を見た。

「支配人てば、また大神さんを……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」

米田は両手のひらを前に出して、後じさった。

「確かに大神とサシで飲んだんだよ。でもな、まさか潰れるとは思いもしなかった」
「……そんなにお酒を飲ませたんですか」
「い、いやだからそうじゃないって。おい、さくらその顔はよせって」
「……無理に飲ませたんでしょう。大神さん、そんなに強くないのに」
「そんなことねえよ、普段と変わらねえさ。でもな……」
「でも、なんですか」
「大神のやつ、少し体調悪かったらしいんだよ。それで……」
「それなのにお酒飲ませたんですか」

なおも異様な迫力で迫ってくるさくらに米田はタジタジである。
そこに新次郎が割って入った。

「ま、まあまあ、さくらさん。それより叔父さん……、いえ隊長を部屋に運びま
しょう」
「そうしてくれるか」

米田はホッとしたように肩を落とした。

「しっかしよぉ、大神のやつも、調子が悪いなら悪いと言ってくれりゃいいのに」
「そう言えば今日、かすみさんに風邪薬もらってましたよ」
「風邪か。どうりで赤い顔してると思ったぜ」

米田とさくらが大神の顔を覗き込むと、確かに真っ赤である。
あながち酒のせいばかりでもないのだろう。
新次郎が大神を抱え起こしたが、その吐息はかなり日本酒臭かった。
風邪をひいたところに大酒飲まされれば潰れるのも無理はない。
新次郎は大神の左脇に右肩を入れ、何とか立ち上がらせた。
身長は大神の方が高いが、そこは新次郎も厳格な海軍士官学校出である。
体力はかなりあるから、大神をおぶるくらいは訳ないのだが、身長の差があるだけ
にやはり大変そうだ。
意識を失った人体はぐにゃりとしているから背負いにくく、重く感じるものである。
すかさずさくらが大神の右脇に頭をくぐらせ、左肩の乗せた。
その様子を見て、米田が彼らを導き、ドアを大きく開けた。

「すまんな。大変だろうが、部屋まで送ってやってくれや」
「わかりました」

ふたりを少し見送ると、米田は支配人室に戻った。

「さくらさん、大丈夫ですか」
「……平気です」

新次郎はさくらを気遣って声を掛けてみると、案外彼女は普通の声色で返事をして
くれた。
さっきまでのやりとりは、この事態ですっかり後回しにされているようだ。
何しろ大神が重かった。
体重は成人男子としては並みだろうが、正体をなくした酔っぱらいをひきずっていく
のは大変である。
さくらも新次郎も大神より背が低かったから、ふたりで両肩を抱え持って行くと、
真ん中の大神は靴を引きずるような形になる。
余計に運びづらかった。
いっそ大神を起こそうかとも思うのだが、それも何だか可哀想な気がするし、何より
ここまで酔っていてはそう簡単には起きないだろう。
「起きろ、起きろ」と大騒ぎすれば、大神の失態が他のメンバーにも知れることに
なる。
ここは黙って大神の私室まで運ぶしかなかった。

大神たち花組隊員の部屋は二階だから、階段を上らせるのには難儀した。
この状態で運ぶのは無理と判断して、結局、新次郎が大神の両脚を持って下半身を、
さくらが脇に手を入れて上半身を担当して運び上げた。
三段上っては休み、踊り場で一息つき、そしてまた三段ごとにゆっくり登っていく。
あまりドタバタしては他の隊員たちが起き出してくるだろう。
時間を掛けて何とか二階まで上がると、再び両肩を支えるようにして大神の部屋まで
連れてきた。
大神のポケットからキーを探し出して部屋に入り、彼をベッドに横たわらせると、
ふたりともホッと息をついた。

「ご苦労様でした」
「いいえ。その、新次郎くんもお疲れ様でした」

新次郎が微笑んでそう言うと、さくらもにっこり笑って返してくれた。
彼女の屈託ない笑顔を見るのもひさしぶりだ。
さくらは、大神が制服のままなのに気づくと、甲斐甲斐しく服を脱がせ始めた。
このままでは窮屈で寝にくいと思ったのだろう。
寝たせた大神の服を脱がせているので、どうして前屈みとなり、後ろに尻を突き
出すような格好となる。
それを見ているうちに、新次郎はまたむらむら来てしまった。

さすがにこんな場面ではまずいと思うのだが、身体が止まってくれない。
それに、これはまたとない刺激ではないか。
恋人である大神がいる前でさくらを犯す。
その時、この清純な美女はどんな反応を見せてくれるだろう。
そう思うと矢も盾もたまらなくなっていた。

「きゃっ!? しっ、新次郎くんっ!」

あっと思う間もなかった。
いつのまにか後ろに回っていた新次郎は、大神の服を脱がせ、ベッドに寝かせて
布団を被せていたさくらの右腕を軽くねじり上げた。

「い、痛いっ……」
「ごめんなさい。ちょっと我慢して」
「な、なにを……あっ……」

たちまち両手を絡め取られ、腰の後ろに回されて縛られてしまった。
さくらは唖然として後ろの新次郎を見やった。

「ま、まさか新次郎くん、こんなところで……」
「……」
「そんな、いやっ……!」

黙って頷いた新次郎に、さくらは顔を青ざめた。
抱かれる抱かれないで揉めてはいたが、大神の騒動のためにうやむやとなり、新次郎
と協力して何とか解決した。
今夜はそこで笑って別れるつもりだったのに。

「あっ!」

新次郎はさくらの後ろを取ると、ドンとベッドに突き飛ばした。
よろけたさくらは、つんのめるようにしてベッドに突っ伏してしまう。
そのさくらの腰を持ち上げるようにして半身を起こさせると、新次郎はさくらの
真っ赤な袴をぐいっとまくり上げた。

「いやあっ!」
「静かに!」

新次郎は、さくらの背中を押さえつけて言った。

「……そんな大声出したら、叔父さんが起きちゃいますよ」
「……!」

普段なら、少々の声は防音が効いた部屋ならどうということはない。
それでもさくらは、恥ずかしい声を出さぬよう堪えてきた。
増して今は、信じられないことだが同じ室内に大神がいる。
泥酔して眠りこけてはいるが、大声で叫んだり揺さぶったりすれば起きてしまう
だろう。
彼が目覚めて、新次郎に犯されているところを見られでもしたら……。
そう思うさくらの動きは抑制された。

「ま、まさか新次郎くん……、こ、ここで……」
「ええ」
「そんな……」

さくらは狼狽えた。

「い、いやよ、ここでなんて……」
「でも僕はしたいんです」
「だ、だめよ。いや、ここではいや……あっ!」

さくらは上半身をベッドに押しつけられ、パンティをむしり取られてしまった。
直後、熱い肉塊が媚肉あたりに押し当てられたのを感じ、声を殺して叫んだ。

「そ、そんな……だめっ……! ここじゃだめ、いや!」
「……」

新次郎は無言でペニスを片手で掴み、その先端をさくらの肉の割れ目にあてがって、
軽く擦ってきた。

「ああ……し、新次郎くん、お願い。ここでは許して……」
「……」
「ここではいやなの。す、するなら別のお部屋で……あ、あたしの部屋か新次郎
くんの部屋でして……、お願い……」

目に涙すら浮かべてさくらは哀願した。
歪んだ美貌には大神の前で嬲られるという羞恥と恥辱、屈辱、後ろめたさと背徳感、
それに伴った暗く妖しい感覚が入り交じり、複雑な色を呈している。

「いきますよ」
「い、いやっ……!」

さくらは慌てて顎で這い進もうとしたが、新次郎はその背後からゆっくりと突き
入れてきた。

「んんっ……!」

まだ乾いている陰毛を掻き分け、まったく湿り気の足りない膣口を肉棒が貫いて
いく。
当然そこはきつく、進みにくかった。

「い、痛……いやっ……」

さすがに無理と思ったのか、新次郎はそこで挿入を止めた。
その代わり、さくらの背中にのしかかり、白い首筋やうなじに舌を這わせ始めた。
右手は和服の襟を掻き分け、襦袢の中に潜り込ませ、豊かな乳房を愛撫する。
そして左手は袴のスリットから侵入させ、さくらのぷりぷりした臀部を撫でさすり、
太腿を揉み、その肌をまさぐっていく。

「ああ……」

全身をくまなく舐め回され、その身体全部を新次郎に知られてしまったさくらは、
彼の舌と指がまた這いずり始めると、また快楽の虜となる。
ふくよかな乳房をたっぷりと揉みしだかれ、勃起した乳首をくりくりとこねくられ、
込み上げてくる喘ぎを噛み殺すのに苦労する。
新次郎の舌は、まるで軟体動物のようにさくらの肌を舐め回し、たっぷりの唾液と
鋭い快感をなすりつけていった。
左手の下半身愛撫が、太腿から尻、そして内腿に回ってくる頃には、さくらはくぐ
もった喘ぎすら漏らすようになってきていた。
その間も、粘り強く、浅い律動を繰り返していたペニスは、さくらの膣が次第に潤
ってきているのを感じていた。
大神によって女にされ、新次郎によって性の悦びを教え込まれていたさくらの肉体
は、ペニスに貫かれる快感を覚え込んでしまっている。
挿入した部分の肉棒に、さくらの膣の熱さとぬめりを充分に感じ取った新次郎は、
そのままゆっくりと根元まで押し込んでいく。

「んっ……ああ……」

スローモーな速度でじわじわと埋め込まれていく感覚に、さくらは腰をぶるぶる
震わせながら熱い吐息を漏らした。

「あ、あ……こ、こんな……ああ、どうして……どうして……はああっ……」

イヤでイヤで仕方ないのに、なぜ身体は新次郎を受け入れているのだろう。
さくらには訳がわからなかった。

「もう濡れてきましたね、さくらさん」
「そんなこと……あっ……な、ないっ……あ、あっ……!」
「ほら、静かにしましょう。そんな声を出したら大神さんが……」
「!!」

新次郎の意地の悪い言葉に、さくらはハッとして目の前に寝ている大神を見た。
今、彼が目覚めたら言い訳のしようがない。
いくら酔いつぶれたとはいっても、すぐ側でさくらが大声で喘いだりよがったり
すれば、気がつかないわけがない。
さくらは懸命に声を抑えようとするが、それを邪魔するように新次郎が責めてくる。

「あ……はっ……んんっ……やっ……はああっ……や、やめて……あっ……う、
動かないでっ……うんっ……」
「あまり喘がない方がいいですよ。叔父さんが起きる」
「だ、だったらやめて……あっ……」
「ここまで来たらやめられっこないですよ。僕が満足するまで」
「い、いや……は、早くして……早く済ませて……ああ……」
「やれやれ、待ちきれないんですか? さくらさんも気持ち良くなりたいんだ」
「違いますっ……ああ、もういや……は、早くぅっ……」

徐々に快楽を露わにしてくるさくらを見ながら、新次郎はぐいぐいとさくらを突き
上げていく。
奥深いところまで貫かれ、さくらはぐぐっと背中を仰け反らせて、押さえきれない
喘ぎを噴きこぼしていく。

「やっ……ああっ……くっ……いっ……ああ……」

大神が起きるかも知れないという状況に、羞恥と恐怖がさくらを覆い尽くす。
ともすれば漏れそうになる喘ぎを噛みしめるが、なおも突き込まれて唇が緩み、
甘い声が漏れ出てしまう。
新次郎は腰を使いながら、そんなさくらの様子を観察している。
どうも彼女は、ひどく虐められたり、辱められたり、いやらしい言葉で責められ
たりすると、余計に感じてしまうようだ。
こうして、最愛の人の前で犯されるという状況すら、心はともかく肉体の方は異様
なほどに燃えているらしい。

「色っぽく悶えてますね、さくらさん。こんなところを叔父さんが見たら……」

媚肉を深く抉られる快感に翻弄されていたさくらに、新次郎が囁くように告げる。

「お、大神さんが……」
「そうですよ。ま、叔父さんはさくらさんが喘いでるところなんか見慣れてるだろ
うけど、こうして他の男に抱かれてよがってるところなんか見たらどう思うでしょ
うね」

大神の甥の言葉に、さくらの膣がきゅっと締まる。
その心地よさにうっとりしながら、新次郎は言葉を続ける。

「酔って寝てるだけなんですから、大きな物音がしたり、大声でよがったりすれば
いつ起きたっておかしくない」
「ああ……、い、いやっ……いやあ……」

破滅の予感に、さくらは今にも大声で泣き叫んでしまいそうになる。
新次郎は大神をダシに脅したが、実際には大神が覚醒する確率は低いだろう。
風邪引きの状態で日本酒を飲まされているのだ。
下戸ではないものの、酒の強さは米田とは比較ならない。
しかもかすみから風邪薬を処方されている。
成分が何だったかはかすみに聞いてみなければわからないが、もしアセトアミノ
フェンが入っているなら問題だ。
この解熱剤は肝臓で分解されるのだが、当然、アルコールも肝臓で分解される。
アセトアミノフェン分解に肝臓が大忙しで、アルコール分解が後回しになるのだ。
当然、醒めるのは遅くなり、二日酔いや場合によってはアルコール中毒になりかね
ない。
おまけに、ごく少量だが肝臓毒素が発生する。
泥酔するのも当然なのだ。
今夜の大神であれば、帝都に大地震が起こっても目が覚めないかも知れない。

新次郎は、そこまで詳しいことは知らなかったが、風邪薬とアルコールを併用する
と悪酔いする二日酔いする、という知識は海軍から得ていた。
だから、さくらが派手に喘いでも、よっとやそっとでは大神は起きないだろうと踏
んでいた。
ただ、さくらにはそうは言わず、大神の前で犯される、喘いだら気づかれるという
恐怖と背徳の歪みに沈めてみたかった。

「い、いやっ……もうやめて、離して……!」

嫌がりつつもセックスの快感に溺れそうになっていたさくらは、大神のことを意識
させられると、途端に現状を把握した。
さくらは懸命にもがいて、何とか新次郎から逃れようとするのだが、がっしりと腰
を抱え込まれ、尻を振るのがせいぜいだ。

「物欲しそうにお尻を振ってどうしたんですか。いくら声を抑えても、ベッドの上
でそんなに暴れたら叔父さん、目を覚ましますよ」
「ああっ……くうっ……」
「だから暴れないで。それとも叔父さんを起こしたいんですか? いっそ起こして
見て貰いますか、僕らがつながっているところを」
「い、いやあっ……絶対にいやっ……」

新次郎がことさら大神のことに触れると、さくらは身を捩って嫌がった。にも関わ
らず、さくらの媚肉はさらに一層具合が良くなり、犯しているペニスを締め付けて
くる。
大神に見られる羞恥、この関係を知られる背徳、そのことを持ち出されて責め抜か
れる自分自身。
そのいずれもが、さくらの官能を揺さぶって止まなかった。

「バレるのがいやなら、おとなしくするしかないですよ」
「ああ……お、大神さん、許して……あああ……」
「いいですね、叔父さんの名前を出しながら喘ぐのも」
「い、や……あう……ああ……あ……」

予想以上の反応に、新次郎はなおも責めてくる。

「叔父さん、さくらさんが自分以外の男に抱かれてこんなに喘いでいるのを見たら、
さぞ驚くだろうな」
「いやっ……あ、あは……」
「しかも、さくらさんを抱いているのがこの僕だと知ったらどう思うのかなあ。僕
も叱られるだろうけど、叔父さん、さくらさんに呆れて愛想を尽かすんじゃないかな」

さくらは黒髪を大きく宙に舞わせながら泣きわめいた。
泣き声は極力殺しているが、それでも掠れたような声はどうしても漏れる。

「ああ、こんな……お、大神さん……大神さんっ……だ、だめ……あああ……」

顔を振りたくり、口では盛んに抗い、嫌悪する様子を見せているのに、さくらの性
的な反応の方はいや増すばかりだ。
控え目ながら心は強いだけに、マゾヒスティックな性癖が隠されていたのかも知れ
ない。
いたぶられ、責められるほどに燃え上がり、喜悦に震えるのは間違いないようだ。

「だんだん僕に抱かれるのもよくなってきたんでしょう?」
「あ、そんな……やっ……ああっ……」

言葉で責められると、さくらの膣は如実に反応する。
硬い怒張で肉奥を突き上げられるたびに身体を震わせ、快感を押さえ込むのに苦労
しているのが判る。

「ど、どうして……」
「はい?」
「どうしてこんなに虐めるんですか……ああっ……あ、あたしがそんなに嫌いなん
ですか……あっ……」
「嫌いなわけがない。大好きだって何度も言ってるでしょう」
「だ、だったらなんでこんな酷いことばかり、あうう……」
「酷い? そうかなあ、さくらさんだって満更でもなさそうだけど」
「そんな……う、うそっ……ああ……」

まださくらには「虐められている」というイメージしかないのだろうが、肉体の方
は新次郎の責めを快楽として受け取っている。
その証拠に、罵られるたびに、じゅわっと熱い蜜が膣奥から零れ出るのがわかる。

「ふふ、オマンコびちょびちょですね。僕のちんちんまでべちょべちょだ」
「いやっ……」
「ここまで感じてるなら、少し新しい味を覚えますか」
「な、何を……ひっ!?」

新次郎は、濡れた媚肉から愛液を掬い取ると、それをアヌスに塗り込んできた。
そんなところをいじられるなど産まれて初めてであり、さくらは失神するほどに
動転、混乱した。

「あっ、あ、何をするんですかっ……!」
「何って、されてるんだからわかるでしょう。さくらさんのお尻……いや、お尻の
穴をいじってるんです」
「いやっ……あ、やめて恥ずかしいっ……き、汚いわ……」
「何度も言いますけど、僕はさくらさんを愛しています。汚いところなんかありま
せん」

愛しい男にもされたことのない恥ずかしい行為に、さくらは慌てて尻を振って抵抗
する。
だが、新次郎の細い指は案外簡単に、するっとさくらのアヌスに入り込んでいた。
媚肉を犯され、感じていたため、そこが少し緩んでいたようだ。
加えて、とろみの強い蜜を塗られて一層に柔らかくなっていたこともある。
一端ぬるっと入り込んでしまった指は、いくら尻を振ったところでそうそう簡単に
は抜けない。

「あ、い、いや……ああ……うっ……」

つらく恥ずかしい責めに、さくらは身悶えた。
だが、秘密のセクシャルゾーンを責められる感覚は、羞恥や恥辱という精神的な
苦痛はあるものの、思ったよりも肉体的苦痛はなかった。
くすぐったいようなもどかしいような、摩訶不思議な感覚だ。
ともすれば、異様な快感に変わってしまいそうで、さくらは一時も気が抜けなかった。
あり得ない箇所を責められ、さくらは上半身をベッドに完全に横たえたまま呻き続
けた。

「あ……や……ゆ、指、しないで……あ……ああ……」

もがくようにさくらの尻が蠢いたが、新次郎の指は執拗なほどに肛門を責め立てて
いった。
背後から膣を犯していた時は、むしろ開き気味だったさくらの股間はぴったりと閉じ
ている。
それだけアヌス責めがイヤなのだろうが、それがかえって新次郎の手を挟み込むこと
になっていた。
新次郎は、半身をベッドにうつぶせて、膝立ちになったさくらの粘膜を責め続けた。
時折、指の付け根をぐっと締め付けてくる弾力は、膣のものともまた違った別の心地
よさがあった。
指先を鈎状に曲げ、さくらの直腸を直接触ってみると、ぬめぬめとした感触が指に
残る。
腸の内壁を擦られると、さくらは苦鳴とも喘ぎともつかぬ妖しい呻き声を漏らした。

「うっ……あああ……いっ……」

新次郎の指が動くごとに、さくらは脳髄にビーンと電気が走った。
ほんの少し動くだけで、僅かに粘膜を擦るだけで、ウソみたいに強烈な刺激がさくら
の神経組織を駆け抜け、脳天から子宮にまで痺れてくる。
何だか、身体がずぶずぶと深いところに沈んでいくかのような不思議な錯覚を感じて
いる。
のめりこんでいくような、どこかにすがりつきたいような頼りなさに、さくらは身を
揉んで呻いた。

「あ……ううっ……んっ……」

新次郎の指が微妙に動くだけでさくらの五感が痺れていく。
それまでのセックスや愛撫とは次元が違うような恍惚感まで感じ始め、さくらの媚肉
はさらに蜜を分泌してきていた。

「あ……あ……あ、あは……いっ……」
「……」
「いっ……あああ……ううっ……あ!?」

強烈なのに薄いような、痺れる感じだがどこか甘い、苦痛なのか快楽なのかわかり
かねる刺激に囚われつつあったさくらだが、唐突にそこから指を抜かれ、驚いたよう
に振り返った。

「どうしたんです? いやだったんでしょう、お尻を虐められるのは」
「……」
「またダンマリか。まあいいです、さくらさんはお尻もいけそうなことがわかった
だけでもいいや」

お尻で何がいけるのかわからなかったが、何かとてつもなく恥ずかしいことを指摘
されたような気がして、さくらは顔をシーツに埋めた。

「あっ!?」

羞恥で首から上を真っ赤にしていたさくらは、下半身を新次郎に抱え込まれ、その
ままベッドに放り投げられた。
ベッドはシングルではなく、ハーフダブルクラスだったから、さくらと大神が並んで
横になるくらいは平気である。
さくらの華奢な身体が弾むと、その振動で隣の大神の身体が揺れる。

「ん……」
「ひっ……」

大神が少し顔をしかめたが、ごろりと寝返りを打ってさくらに背を向ける格好に
なった。
大神が呻いたのでさくらは息が止まるかと思うほどに緊張したが、彼が起きること
もなくまた寝息を立て始めたので、太い息を吐いた。
起き上がろうとすると、さくらの両脚の間に膝を落とした新次郎が見ていた。

「も、もう許して……これで終わりにして」
「ええ、そうしますよ。今度は向かい合って抱き合って、それで今日はおしまいに
しましょう」
「ま、まだ……」
「しますよ、当然でしょう。僕、まだ出してないし、さくらさんだっていってない。
思い切り気をやらないと欲求不満でしょうに」
「いやっ……、もういやです」
「なんか今日は刃向かいますね。最近は素直に抱かれてくれようになったのになあ」
「だ、だって……」

さくらはちらりと隣で寝ている大神を見た。
顔は見えないが、小さく身体が上下しているのはわかる。
ぐっすり寝ているようだ。

「叔父さんのことは気にしないでいいですよ。こうやって叔父さんの前で抱かれる
のもいい刺激になるでしょうし」
「いやよ、そんなの……。ど、どうしてもするなら……」
「さくらさんか僕の部屋ですか? それでもいいけど、たまには趣向を変えたいん
ですよ」
「で、でも、ここだけはいやっ……。大神さんの前ではいやなのよ……」
「寝てるからいいじゃないですか」
「だめっ……。お、起きるかも知れないじゃないですかっ」
「起こさないようにすればいいでしょ。さくらさんがよがらず我慢すればいい」
「そんな……酷い……」
「酷い、じゃないでしょ。じゃ、入れますよ」
「いやあっ……、あ、あむっ……」

力の入らないさくらの両脚を簡単に割ると、新次郎は呆気ないほどにあっさりと
さくらの媚肉に挿入してきた。

「あ……うむっ……、い、いや……うんっ……」

口はともかく身体はちっとも嫌がっておらず、むしろ中途半端にされていたところに
再度貫かれ、悦んでいるかのようだ。
より深く入れようと、新次郎はさくらの美しい脚を抱え込み、根元までずぶりと突き
込んだ。
大神ではとても無理だった深いところ──子宮めがけて打ち込んでいく。

「あひっ……あ、あっ……そ、そんな深いっ……あ、深い……怖いっ……ああっ……」

新次郎は欲望の赴くままに、さくらを深く貫いていく。
それに応えるかのように、さくらの膣もまるで肉棒に吸い付くように絡みついてきた。
まだ22歳の若さでここまでの反応を見せるとは、3年後5年後にはどこまで成長
するだろう。

「ああっ……いっ……」

ついついさくらの媚肉の魅惑さに引き込まれそうになるところを堪えつつ、新次郎は
突き込む角度や深度、強さを変えて責めていく。
するとさくらの媚肉は、彼の責めに合わせるように柔軟に肉棒を受け止めていた。

「あっ……はああっ……いっ……あ、あうっ……」
「そんなに喘がないでくださいよ、さくらさん。叔父さんが聞いてますよ」
「やっ……!」

さくらは慌てて大神を見る。相変わらず背を向けて寝込んでいる彼を見て、ホッと
するが、それを打ち砕くかのように、新次郎が突き込んでくる。

「あ……いっ……んんっ……あああ……」
「本当にいやらしいんですね、さくらさん。もしかしたら叔父さんは本当は起きて
いて、聞き耳立てているかも知れないのに」
「いやあっ……お、大神さんっ、大神さんっ……ゆ、許して、見ないで……恥ずか
しいさくらを見ないでくださいっ……ああっ……」

大神のことを持ち出すと、さくらはその名を呼びながら喘ぎ始めた。
許して、見ないでと言いながらも、喘ぐ声が止まらない。
その声をもっと引き出そうと、新次郎の動きが大きく強くなっていく。

「あ、あっ、は、激しっ……激しいっ……も、もっと弱くっ……優しくしてぇっ…
…ああっ……」
「ほら、また叔父さんのこと忘れてる。大声でよがっちゃだめですよ」
「やあっ……あ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」

いけない、はしたないと思うのに、もう声が止まらない。
ずんずんと奥を突かれるたびに、それと同じリズムで声が漏れ出てしまう。

「あっ、ああっ……こ、声が……声が出ちゃう……や、やめてっ……あっ……」
「う……ん……」
「ひっ!」

さくらの声が耳に入ったのか、それともリズミカルに振動するベッドが気になった
のか、大神が呻いてまた寝返りを打った。
今度はさくらの方を向いている。大神の寝顔がすぐそこに迫り、さくらは身を固く
した。
それでも新次郎の責めは休まらない。

「い、いやっ……あむっ……うんっ……んっ……むむっ……」

さくらは新次郎のピストンに合わせてガクガクと全身を波打たせながら喘いだ。
もう自分の意志力ではどうにもならぬらしい。

「し、新次郎くんっ……く、口をっ……」
「口? さくらさんのですか」

さくらは隣で眠りこける大神を涙目で見ながら、コクンと頷いた。

「ふ、塞いで……あたしの口を塞いで……ああ、もう声が出てしまう……ああっ……」
「喘がなきゃいいでしょう」
「そんな……そんなこと言っても……ああっ……」
「どうしてもよがっちゃうんですか」
「くっ……」

さくらは一瞬悔しそうな表情を見せたが、すぐにまた快楽に身を委ねだした。

「ああ、お願いです……口っ、塞いでっ……!」
「でも、僕、手がふさがってますし」

新次郎はさくらに覆い被さるように犯しているが、両腕はシーツに突いていた。
熱く柔らかいさくらの肢体を抱きしめたい気持ちもあるが、そうすると強くて深い
突き込みが難しくなる。
といって、さくらの腕は背中の後ろで縛られているのだ。

「ああ、もう我慢できませんっ……!」
「どうすればいいですか?」
「くっ……ああっ……き、……」
「き?」
「キ、キス……して……ああっ……」
「……」
「お願い、キスしてっ……口を塞いでっ……は、早くっ……声が出ちゃいますっ……」

さくらはセックスを許すより、唇を許す方がより罪深いような感じがしていた。
身体は暴力で奪えるが、唇はそうは行かないからだ。
なのに、その口づけを自分からねだらなければならない。
そうしないと淫らな大声を出して大神を起こしてしまいそうだからだ。
なのに、はしたなくも自分から求めなければならない。
それ以外に喘ぎ声を食い止める方法が思いつかなかった。

「は、早くっ……あ、うむっ!」

表情は必死ながら、とろんとした虚ろな瞳で口づけをせがまれ、たまらず新次郎は
さくらの可憐な唇に吸い付いた。

「んっ……んんっ……むむう……」

シーツに突いていた腕をさくらの後頭部に回し、顔を持ち上げてキスしている。
貪るように唇を吸っていると、ふっとさくらの口が緩む。
そこをすかさず舌で割り込んで、さくらの熱い咥内に潜り込んでいく。

「むむ……ん……うっ……うんっ……」

新次郎の舌がさくらの咥内を蹂躙するが、さくらはそれと気づく余裕もない。
キスされつつも、相変わらず新次郎の腰は躍動しているのだ。
ずんずんと深く突き込んで、さくらの胎内を抉っていた。
その快感を堪え、大神の存在を気にするだけで精一杯だ。それでも彼女の腰はさくら
を裏切るかのように、新次郎の動きにつれ上下運動していた。

「うんっ……う……うむ……」

さくらの声がくぐもった。同時に膣肉が小刻みな痙攣をし始めている。
腰もわなわなと震えていた。
新次郎はいったん口を離し、さくらを見下ろした。ふたりの唇が唾液の糸で繋がって
いる。

「さくらさん……、いきそうなんですね?」
「……」

さくらは顔を染めてコクンと小さく頷いた。

「く、口を……」
「わかってます」
「あ、むうっ……!」

またちゅううっと吸い付いてきた新次郎の唇を感じ、さくらの身体の芯が震える。
そして彼の太いものが子宮口をなぞるように擦ってくると、押さえきれない喘ぎが
新次郎の口の中で木霊する。

「むううっ……んんんっ……うんっ……!」

いよいよいきそうなのか、さくらの震えが全身に及んできた。
新次郎自身も、もう限界だ。ここまでさくらを乱れさせたのは初めてなのだ。
新次郎は限界まで膨張し、硬くなった肉棒をぐいぐいとさくらの子宮に責め込ませ
ていく。
その強烈な刺激に、さくらの性感が炸裂する。

「んむっ……んむううううっっ……!」

新次郎の口の中ではっきりと絶頂を告げる言葉を放ち、さくらは全身をガクガク
ガクッと大きく痙攣させた。
同時に新次郎のペニスを飲み込んでいた膣が著しく収縮する。
その甘美な締め付けには我慢できず、新次郎は一気にさくらの胎内に射精した。

どびゅうっっ、どびゅっ。
どぷぷっ、びゅるっ。
びゅくっ。

「んむうううっっ! んむっ、むむうっっ!」

熱い飛沫を胎内に感じ取り、さくらは汗まみれの肢体をぶるるっと大きく震わせ、
続けざまに絶頂した。
なおもドクドクとポンプのように吐き出される濃い精液の迸りに、両脚を突っ張ら
せて震えていた。


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