新次郎はさくら以外眼中にはないが、だからと言って他のメンバーに対しておざ
なりということは決してない。
もともとマメな性格だし、叔父と同じく根は真面目なので、八方美人に見えること
すらある。
誰にでも優しいし、特に女性相手には親切だ。
特に先日の実戦に於いて、デビューとは思えぬ華々しい活躍を見せたため、歴戦の
花組隊員たちも一目置くようになっていた。
いろいろな意味でとっつきにくいすみれでさえ、素直でない表現法ながら、彼を
認めるようになってきている。
この日も、一階の衣装部屋前の廊下ですれ違った紅蘭、すみれと談笑していた。

「せやけど、新次郎はんもようやくここに慣れてきたみたいやね」
「そうならいいんですけど」
「大尉より少尉の方がずうずうしいところがありますから、割と早めに慣れましたわね」

すみれがそう混ぜっ返すと、紅蘭と新次郎は顔を見合わせて苦笑するのだった。

「……」

そこに、両手で大きな板を抱えたさくらが通りかかった。
次の公演で使う背景画の書き割りのようである。
さくらは三人に気づくと一瞬立ち止まり、それからぷいと顔を背けたまま脇を通り
過ぎようとした。

「ごめんなさい」
「あ、さくらはん」
「あら、書き割り出来上がったんですわね。業者さん、いらしたんですの?」
「ええ、さっき」
「あ、僕が持ちますよ、さくらさん」
「……」

新次郎がそう言った。
こうした言動はほとんど条件反射のようなもので、深い意味はあまりない。
持っていたのがさくらだったからそう言ったのではない。
カンナならともかく、織姫やマリアが運んできても同じことを言っただろう。

「けっこうです」

いやにきっぱりとさくらはそう答えた。新次郎の方を見ようともしない。
この態度に、すみれと紅蘭が訝しんだ。
今までのさくらなら「まあ、どうもすみません」とにっこり笑って頼んでいたはずだ。
そもそも新次郎がさくらの大ファンであったことは周知の事実だし、さくら自身、
大神の甥ということもあって新次郎に好感を持っていた。
実際、周囲が「大神がやくぞ」と心配するほどに新次郎との仲は親密だったのだ。
それが一転、この態度はなんだろうか。

「……どないしたん、さくらはん」
「別に何でもありません」

答えが堅い。

「何でもないってことはないでしょう? せっかく少尉が手伝ってくれるとおっしゃ
ってますのに」
「……ですから、遠慮しますと言ってるんです」
「何でや? 新次郎はん、さくらはんが大変そうやなと思ったから言うてくれとんの
に」
「……」
「それにさくらはん、新次郎はんとあんなに仲良さそうやったやないですか。急に
どないしはったん?」
「……あたしは別に新次郎くんと仲が良かったわけじゃありません」
「……そらまた」
「とにかく、自分で運びますからけっこうです。新次郎くんも、すみれさんたちと
お話していて楽しそうでしたし。お邪魔してすみませんでした!」
「……」
「どいてくれますか」
「はあ……」

さくらはそう言い捨てると、ずかすかと一階東奥にある大道具部屋で立ち去った。
あまり重くはなさそうだが大きさは2メートル四方くらいはありそうで、かなり歩きにくそうだった。
そんなさくらを呆然と見送っていた三人は小さくため息をついた。

「……何があったんやろね」
「さあ。さくらさんはもともと気性の激しいところもありましたしね」

気の強いことにかけてはすみれには及ばないだろうにと思いつつ、新次郎は言った。

「本当にどうしちゃったんでしょうね。あんなさくらさん、初めて見ました」
「そうやね……。新次郎はん、あんたさくらはんに何ぞしはったんちゃう?」
「え……、何もしてない……と思いますけど」

さくらをレイプしたのだから──そして今もし続けているのだから、「何もして
いない」というのはウソだ。
しかし、もし本当にそのことで怒っているのなら、最初から怒っているだろう。
何度も何度も関係を続けているのに、今さら何だという思いはある。
徐々に怒りが募っていって、今ようやく爆発したと考えるのも、何だか無理がある
と思う。
すみれが言った。

「でもまあ、ああいうさくらさん、前にもありましたわね」
「え……、そうなんですか?」

意外だった。
紅蘭も思い出したように頷いた。

「そう言えばそうやね。あん時も確かあんな感じやったかな」
「何です? どうしたんですか?」
「まあ……」

すみれと紅蘭は互いに顔を見合わせた。

「ヤキモチ……ってやつですわ」
「は? ヤキモチですか?」
「そうや。うちらが気づいたんは遅かったけど、さくらはん、かなり早い時期から
大神はんに惚れてましたからなあ」
「はあ……」
「そうですわ。でも大尉の方は、最初はそうでもなかったみたいですし」
「そうなんですか」

すみれは小さく頷く。
ほんの少しだが胸がきゅんと痛んだ。
すみれ自身、大神に好感を抱いていた時期があったのだ。
紅蘭がやや悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。

「そうや。大神はん、あんな真面目そうな顔してはって、あれでなかなか女好き
みたいやったしね」
「え、叔父さんが?」
「ええ、そうですわ。それも年上がお好みだったようで、あやめさんに……」
「あやめさんてどなたです?」
「……前回の第二次降魔戦争の時、大神はんが赴任しはった時のことやね。そん時
の戦いで……」
「殉職されたんですわ」

あやめが降魔に取り込まれ「殺女」となったこと、そして大神自身に誅されたこと
は花組内でもタブーになっている。
言いにくそうだった紅蘭に代わり、すみれが殉職という言葉を使ったのもそのためだ。
あの時はそうするしかなかったわけだし、大神本人も深く傷ついたはずだ。

「今の副司令の藤枝かえではん、あの人のお姉さんだったんですわ。役職も、同じ
副司令やったしね。新米だった大神はんに何くれとなく世話を焼いていたんや」
「なるほど……」
「ま、その頃からさくらさんは大尉に「ホの字」でしたから、大尉があやめさんと
一緒にいるのなんか見たり、親しそうに話しているのを見たりすると、もう……」
「そうそう。見てて面白かったわな、あからさまなんやもん」

紅蘭とすみれは声を抑えながらおかしそうに笑った。

「なんか今のさくらはん、あん時と同じやったね」
「わたくしもそう思いましたわ。でもねえ……」

すみれはそう言って新次郎をじろじろ眺めた。

「やく相手が大尉ならともかく、少尉じゃねえ……」
「そうやね。第一、もうさくらはんは大神はんとつき合うてるわけやから、大神はん
がうちらと居てもやくことなんかないしな。増して新次郎はんにやいてどないする
んや」
「惚れっぽい大尉ならともかく、一途なさくらさんが、まさか大尉から少尉に気移り
したとも思えませんしねえ」

すみれと紅蘭はそう言って首を捻った。
新次郎はさくらが歩み去った後を呆然と見ていた。

────────────────────────

さくらはまた新次郎の部屋に呼び出されていた。
もう諦めというか、投げやりになっていたのかも知れない。

さくらの心情には大きな変化が四度もあった。
最初はもちろん、初めて新次郎にレイプされた時である。
二度目は全身くまなく愛撫され、舐め尽くされた時だ。
三度目は、酔って眠りこけた大神のすぐ側で犯された時。
そして最後は、廊下ですみれたちと談笑する新次郎を見た時だった。

どの時にどう変わったのか、自分でも具体的にはわからない。
ただ、これほどの変化が続けて起こったのは産まれて初めてのことだ。

最初の時はひどく悲しく、落ち込み、失望した。
二度目は新次郎の言動に大きく戸惑った。
三度目は激しく動揺し困惑し、諦観にも似た気持ちになった。
最後の時は、何だかわからないがムラムラと名状しがたい気持ちとなり、くさくさと
荒んだ心根だった。

理由はまったくわからない。
だから今晩こうして呼び出されさくらは、いつもと印象が変わっていた。
普段なら諦めておとなしく言うことを聞くか、情に訴えるべく哀願するかのどちらか
だったのだが、今日はまったく違っている。
機嫌が悪いかのように反発したのだ。
最後には言いなりにさせられるのだが、その時までは新次郎を睨みつけるようにして
反抗して見せたのである。

「さ、さっさと済ませてください」
「さくらさん、そんな言い方ないでしょう」
「大きなお世話です。もうイヤなんです、こういうのは」
「……」

新次郎は、全裸で立っているさくらをじっと見ていた。
やる気のない姿勢を見せて、新次郎を萎えさせるつもりかのかも知れない。
それでいて、彼にじっと裸を見られると、恥ずかしそうに顔を逸らす。
もう何度も見られているのに、そしてもっと恥ずかしいところも全部見られている
というのに、こういう初々しさは失っていない。

もしかして本当にさくらに嫌われているのかとも考えた。
実際、嫌悪されて当然な行為を新次郎は仕掛けてきている。
彼としては悪意はなく、そうすることでさくらを何としても自分のものにしたかっ
ただけだ。
今はこうして肉体を犯すことに執着しているが、身体だけでなく心も奪いたいと
心底思っている。

さくらからすれば、随分と酷いことをされ続けてきているわけだが、新次郎とすれ
ば、さくらにより素晴らしい快楽を与えたいと思っているだけだ。
もちろん自分がさくらと一緒に気持ち良くなりたいという思いもある。
だが、それは男側の理論であり、それが女性に通じるとも思えない。
嫌われても当然なのだ。

だが、それにしてはさくらの態度が曖昧なのだ。
本当に嫌ったのであれば、喋るのも、顔を見るのもイヤだろうに、それがない。
さくらと一対一で対面している時などはやや堅いものの、今までのような笑顔を
見せてもくれる。
ただわからないのは、他のメンバーと接触していると、途端に機嫌を損ねるような
のだ。

いみじくもすみれが指摘したように、新次郎に対するヤキモチなのだろうか。
嫌われるならともかく、好かれるようなことは特にしていないつもりなのでよく
わからない。
その辺を聞いてみたい欲求はあったが、さすがに普段は出来なかった。
こういう時、さくらをセックスで完全に堕とした後なら、事後に聞けるかも知れ
ない。
今の新次郎にはそれくらいしかなかった。
仕方がない。
新次郎は少し大胆に出た。

「さくらさん、僕の前に跪いて」
「何でそんなことするんですか」
「いいから。早く終わらせたいんでしょう?」
「……」

さくらは顔を背けたままだったが、それでも素直に彼の前で両膝を折った。
高さも位置も、イヤでも新次郎の股間のあたりに顔が行く。
彼も既に衣服も下着も脱ぎ去っていた。
ヘソにくっつきそうになるほどにそそり立った新次郎のペニスがイヤでも目に入る。

「ちゃんと前を見てください、さくらさん」
「い、いやよ! そんなもの、見たくありませんっ」
「見たことないわけじゃないでしょうに。叔父さんのは……」
「いちいち大神さんのことを言うのはやめてください!」
「わかりましたよ」

ここまで反発されると、さすがに新次郎もムッとする。
さくらがそういうつもりなら、こっちも下手に出るのはやめればいい。
どっちみち、今日こそさくらを完全に屈服させるつもりなのだ。

「ほら」
「な、なんですか」
「何ですかってことはないでしょう。口でするんですよ」
「く、口でって……」

さくらは少しおののいたように前を向き、新次郎の顔と股間を交互に見ている。
大神の甥は、やや唇を歪めて言った。

「口で僕のを愛してくれればいいんですよ」
「……」
「驚いたような顔してますね。それくらい叔父さん相手にしたことあるんでしょう?
それとも初めてですか?」
「バ、バカにしないで! あります、それくらい」

さくらはキッと睨みつけてから、膝で這いながらおもむろに新次郎の股間に顔を近
づけた。
大きいだけでなく、グロテスクとしか言いようのないその肉茎に一瞬たじろいだ
ようだが、すぐに思い直してそっと両手で支え持つと、唇を亀頭の先に合わせた。
精臭がするのか、目を閉じた顔をややしかめ、それでも何とか舌先を僅かに出して
ちろちろと遠慮がちに舐め始めた。

「……焦れったいな。何です、それは」
「んむっ!? むぐうううっ!」

新次郎はさくらの頭を押さえ込み、ぐっと自分の腰の方へ抱え込んだ。
驚愕したさくらは目を白黒させていたが、肉棒がさくらの唇をあっさり割ってずるり
と咥内に入り込んでいった。

「手ぬるいですよ。そんなんじゃあ僕から動きますよ」
「……ん」

わかった、とでも言うように、さくらは小さく頷くと、堅く目をつむったまま懸命
に舌を使い始める。
経験はあると強がった彼女だったが、実はほとんどしたことがない。
大神は、最初さくらが新次郎にしていたように、遠慮がちに舌先で軽く舐めるだけ
で「そんなことまでしてくれている」と感激し、満足していた。
だから、それ以上の濃厚なプレイにのめり込むこともなかったのだ。
せいぜい、ペニスを口中に飲み込んで舌を居絡めたり、唇でしごいたりするのが
関の山だった。
それ以上どうすればいいのか、さくらはもちろん大神もわからなかったからだ。

「ただ舐めるだけじゃ芸がないですよ。もっと考えてください、どうすれば男が
気持ち良くなるのか」
「……」
「……仕方ないなあ。じゃ言われた通りにしてみてください。裏筋……っても、
わからないか、裏の方に筋みたいのがあるのわかりますか。そこをなぞるように」
「ん……」
「そう、そんな感じですね。そしたらカリ……先のくびれたところ、あ、そうそこ
です。そこを唇すぼめてしごいてください」
「んんっ……んっ……む……」

新次郎の指示通りに彼のペニスを愛撫しながら、さくらは「これでいいのか」と、
ちらちら彼を窺い見ている。

「まだぎこちないけど、そんなものでしょう。続けてみてください」

さくらは小さくコクンと首を縦に振ると、口唇愛撫を続けた。
顔を前後に振り始め、そのたびにポニーテールでまとめられた黒髪がさらさら流れ
るように動く。
技巧的にはまだまだだが、男に言われた通り素直に口舌を使っているのがさくら
らしい。
さくらは時折新次郎の顔を見て表情を確認したり、舌で肉棒をねぶってその反応を
気にしている。
これでいいのか不安なのだろう。

「ん、ん、んむ……うん、うん……んうう……じゅっ……むむっ……」

白く細い指が太い肉棒の根元を支え持ち、指でもそれをしごいている。
息苦しくなったり、しごく唇が疲れたりすると、ペニスをいったん口から出して、
舌で唾液を塗りつけるように舐め上げていく。
サオよりも亀頭やカリの方が感じるらしいとわかると、そこを集中的に舌や唇で
優しく愛撫する。
漏れ出るカウパーをまた尿道口に戻すように舌で圧迫すると、その微妙な快感に
新次郎の方が呻いてきた。

「んっ……むむう……んっ、んっ、んっ……んは……うんっ……」

綺麗な弓形の眉を眉間に寄せつつ、さくらは必死に肉棒をしゃぶっていた。
唇と舌をゆっくりと根元から亀頭まで這わせながら、カリまで来ると、そこを舌先
でこすってやる。
そのまま亀頭まで持って行くと、口から抜ける寸前のところで唇を止め、舌先で
尿道口を抉るように愛撫した。
そこまで終えると、今度は徐々に逆方向に進み、肉棒を咥内に収めていく。
新次郎の大きなペニスに合わせるように長いストロークを行なっていった。

「うっ……だ、だんだん上手になっていきますね……。すごいや、さすがさくら
さんだ」
「……っ」

こんなことで褒められてもちっとも嬉しくないのに、なぜかさくらは頬を染めた。
帝撃の人気女優でもある彼女は、言ってみれば褒められ慣れている。
特に上流階級の人たちやファンからは、歯の浮くような褒め言葉を貰うことが多い。
すみれなら、それを当然として受け取るだろうが、さくら自身は謙虚で控え目な女
だから、持て囃されて嬉しくないわけではないが、そればかりというのもかえって
居心地が悪い。

容姿も美しく気立ても良かったから、見栄えや性格でよく褒めそやされたが、新次
郎はまた別だった。
無論、さくらの容貌や肢体も賞賛するが、「女」の部分を絶賛する。
そんなことを言われたことはないから、さくらも最初はかなり戸惑った。
大神とのセックスの際、彼にそれとなく言われることもあったが、大神自身あまり
そうしたことをはっきり言うタイプではなかったから、新次郎の言葉はかなり鮮烈
だったのだ。
増して、セックスの感度や性行為の技巧などで褒められたのははじめてである。
顔がカッと熱くなったのを感じたさくらは動揺する。

(あ、あたし……あんなこと言われて悦んでるの……? そんなことない、あんな
いやらしいこと言われても嬉しくないっ……)

自分の思いを振り切るように、さくらは潤んだ瞳を薄く開けて激しくストロークを
再開した。
さくらの上下の唇は、ずずっと淫らな音をさせながらペニスを飲み込んでいく。
それはまるで横についた性器の割れ目のようにも見えた。
頭を前後に揺らし、めいっぱい拡げて懸命にくわえるその唇の端から、ねっとりと
した透明な唾液が滴っていた。

「っ……ぐっ……ぐうっ……」

興奮してきた新次郎が、自分から腰を使ってさくらの喉を責めている。
ときどき先が喉奥に当たるのか、さくらは苦しげに眉を寄せている。
それでも、突き込んでくる新次郎に抗議することもなく、黙ってその責めを受け入
れていた。
何とか奥までいかないようにコントロールしようとするのだが、新次郎はさくらの
後頭部を押さえていて、後ろには逃げられなかった。
喉のいちばん奥まで飲み込まされ、さくらの大きな瞳から溜まった涙がこぼれる。
苦しいだろうに、さくらは次第にうっとりと陶酔したような妖しい表情に変化して
きている。

「うんっ……ぐうっ……んんんっ……んむっ……うんっ……!」

かちかちに硬くなった肉棒が、遠慮なくずんずんと奥まで突き込んでくる。
その動きを緩めようと、必死になって舌を絡ませ、唇をすぼめていた。
ペニスに加えられる甘美な快感はもちろん、さくらが美貌を歪めて懸命にペニスを
くわえている、愛撫しているという事実に、新次郎のものがさらに膨張していく。

「んんっ!? んむっ……んむうっ……」

ぐぐっと大きくなったのがわかるのか、さくらの表情がいっそう苦しそうなものに
なる。
新次郎はさくらのポニーテールを掴み、思い切りその口と喉を犯していた。
さくらの顔に新次郎の腰が当たり、彼の陰毛が鼻や頬をくすぐる。
喉どころか食道まで犯しかねない勢いで腰を振ってくる新次郎のイラマチオに、
さくらは必死に合わせて舌を這わせていた。
そんなさくらの健気な姿に、いよいよ新次郎も限界に来る。

「さ、さくらさんっ……僕、もう出そうだ……!」
「んんっ!」

さくらはその声でハッと我に返り、今度は両手を新次郎の腰に当て、押し返そうと
している。
出すなら外に出して欲しいということのようだ。
新次郎にはそんな気はないし、第一、今はもう射精したい、でも出来るだけ堪えたい
という二律背反の快楽を愉しんでいる。
さくらの様子を気遣う余裕もない。

「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んううう〜〜っっ!」
「くあっ!」

びゅびゅっ、びゅるっ。
どびゅくっ、びゅるんっ。
びゅるるっ。

「んんん!?」

喉の奥に勢いよく噴き出してくる熱い粘液のかたまりを、さくらは目を大きく見開い
たまま受け入れた。
飲み込んだ、というよりは、喉の奥から食道へ流れ込んできた、という感じだ。
あっという間に喉の奥がいっぱいになり、否応なく嚥下していく。
新次郎から離れようとして、何度も拳で彼の腰を叩いたが、新次郎はがっしりと
さくらの後頭部を抱え持っている。
それでも、射精の快感のせいか、新次郎の力は緩みがちだ。

「んっ……んぐっ……んくっ……ごくっ……くんっ……」

呼吸が出来ず、やむなく喉を鳴らして飲み込んだ。
咽せそうになりながらも、何度も何度も喉を上下させた。
それでもきりがないほどに流し込まれる精液は喉から咥内に逆流してくる。

「ぶはっ……ごほごほごほっ……ごっ……ぐっ……げほっ……」

たまらず新次郎を突き飛ばし、ようやく肉棒を吐き出した。
苦しげに喉を押さえているさくらの口からは、どろりとした濃い精液が溢れ出す。

「な……何するんですか! げほっ、げほっ……」

まだ新次郎の射精は終わってなかったようで、勃起したペニスからはまだ精液が
噴出している。
それがさくらの右頬にびしゃっとかかり、どろっとした白い液が頬から顎を伝って
床に垂れていく。
さくらは膝を崩し、横座りになって、まだ苦しそうに喉と口を押さえている。

「ごほっ……、の、飲んじゃった……飲んじゃったじゃないですかっ」
「あーあ、全部飲んで欲しかったのに」
「ふざけないで! こ、こんなもの……生臭くて苦くて……ごほっ、濃すぎて飲み
にくいんですよっ。だ、だいいち、こんなの飲むものじゃありませんっ、ごほっ…
…」
「そうですか? あ、じゃあさくらさん、叔父さんにしてあげた時も……」
「の、飲んでるわけないでしょう!」

大神にもフェラすることはあったが、それはあくまで前戯という意味合いが強かった。
そもそも口ですること自体少なかったし、このまま射精まで、ということはほとんど
なかったのだ。
二度ほど大神が我慢しきれず、さくらの咥内で射精してしまったことはあったが、
その時もさくらは桜紙に大神の精液を出していた。
別に彼も「飲んで欲しい」などと言わなかったし、さくらも当然そういうものだと
思っていたのだ。

「そうなんですか。叔父さん、可哀想に。きっと叔父さんもさくらさんに飲んで欲し
かったんじゃないかなあ」
「そ、そんなわけ……ないでしょう」
「確認したんですか?」
「え……」
「叔父さんに聞いたわけでもないでしょう。男だったらね、やっぱり飲んで欲しい
んですよ」
「……」

そう言えば、確かに大神に聞いてはいなかった。
そもそも精液は飲むものではないと思っていたからだ。
もしかしたら大神もそうして欲しかったのだろうか。
そうだとしても、彼の優しさから言って、さくらに無理強いするとは思えなかったし
変態的な行為を要求することもなかった。

(どうして……なんだろ。大神さん、して欲しいなら何でも言ってくれればいいのに
……。あたし、何でもするのに……)

さくらは横座りのまま俯いて、唇にこびりついている精液の残滓を指で拭っている。
その姿を見ているだけで、新次郎のものはまた力を取り戻し、先から精液を滴らせた
まま力強く勃起してきている。

「さくらさん」
「な、何よ。あっ……」

勃起している陰茎を見て、さくらは見る見る赤面した。
この子はまだ満足していない。

「ど、どうしようと言うの」
「わかってるくせに」
「もういや! 今日はこれで……」
「そんなわけにいかないですよ。ほら僕のまだ全然……」
「みっ、見せないで、そんなものっ!」

新次郎がペニスを手に持ってぶらぶらさせると、さくらは慌てて目を逸らした。

「しましょうよ」
「いやっ」
「うーん、仕方ないな。じゃあ、したくなるようにしましょうか」
「何を……する気なんですか」
「ベッドに寝て」
「……」
「寝てください」

さくらはふらふらと立ち上がり、ベッドの上に乗った。
どうしてそうしてしまうのかわからない。
逆らっているのは口だけで、行動は新次郎の命じるままにしている。
自分でもこうしたかったのか、それとも新次郎に指示されることをしたいのか。
考えれば考えるほどわからなくなる。

「うつぶせに寝てくれますか」
「……」

さくらは黙って従った。
仰向けになるよりマシだと思ったのだ。
身体の表面を晒すことは、乳房も股間も見られることになる。
うつぶせになれば、臀部は見られるが、他の恥ずかしいところは隠せると思った。

さくらは新次郎の枕を顎の下にあてがい、そのまま横たわった。
さくらの美しい肢体が長々と伸びている。
すらりと素直に伸びた脚が美しい。
臀部の盛り上がりも、悩ましい曲線を描く背中のラインや窪みも文句のつけようが
ない。
そしてさくら自身の身体に柔らかく押しつぶされている乳房がはみ出しているのも
扇情的だった。
そして何よりも、ぷりんと隆起した真っ白い臀部が美しい。
陶器のようにすべすべした肌触りなのに、触れた手のひらに吸い付いてくるような
しっとり感もある。
さくらの素肌の美しさが凝縮しているのが尻たぶだった。

「……っ……」

さわさわ、もぞもぞと触れてくる男の手の感触がおぞましかった。
新次郎が触っている部分が熱を持ってくる。
彼のさくらの対する執着心が熱となってさくらに伝わるかのようだ。
淫らな指は尻表面だけでなく、その割れ目の間にも伸びてくる。

「あっ、いやっ!」

さくらは思わず腰を捩って逃げようとしたが、新次郎がすかさず上から押さえ込む。
振り返って新次郎を見ると、彼の目が「じっとしていろ」と命令している。
さくらは顔を戻し、身体の動きを止めた。
覚悟が決まったようにも見えるが、さくらは目を堅く閉じており、臀部も小さく
震えていた。
新次郎の愛撫がおぞましい肛門に向かうのが怖かった。
どうしてそんな不潔なところを責めるのか訳がわからない。
やはり虐められているようにしか思えなかった。

「やっ……さ、触らないで、そこいやですっ」
「……」

新次郎は黙ったままゆるゆるとさくらのアヌスを揉んでいく。
そんなところを揉みほぐされる恥辱に、さくらの震えが臀部から全身へと広がって
いく。

「やめて……やめてください、そんな……あっ……」

もう言葉責めもせず、新次郎は口を閉ざしたまま念入りに肛門を責めた。
執拗に5分以上も揉み続けると、さくらのきつく窄まっていたアヌスはすっかり
緩み、ふっくらとしてくる。
ついとろけてしまう肛門を懸命に引き窄めようとしても、新次郎の指が妖しく蠢く
たびにジンジンと痺れるような刺激が背筋を走る。
その妖美さに囚われ、つい括約筋が緩んでしまう。

「や……あ……こんな……こんなのって……あ……」

いつしかさくらの身体の奥から、得体の知れぬ官能が込み上げてきている。アヌス
を中心に臀部全体が熱く火照りだし、その熱が腰へ広がり、媚肉へ届き、そして
子宮にまで伝わっていった。
ここまでさくらを持って行ってから、新次郎はようやく口を開いた。

「お尻で感じてきましたね」
「だっ、誰がそんな……は、はしたないっ」
「はしたないのはさくらさんでしょう。あんなに嫌がってたのにお尻で感じてくる
なんて」
「うそっ……うそですっ」
「ウソじゃないですよ。オマンコ濡れてるのが自分でもわかるでしょう」
「こ、これは……」

ハッとしてそこを意識すると、媚肉も同じように熱くなっている。
その真下にあるシーツが濡れて染みているのがわかる。

「次はこれを使いましょうか」
「え……」

さくらが恐る恐る振り返ると、新次郎が何やら手に持っている。
不気味ともおぞましいとも言えぬ、奇怪な道具だった。
真っ黒な棒である。
長さは20センチくらいはあろうか。
太さはさほどでもなく2センチくらいだ。
異様なのは、その棒の周囲全体にねじりが入っていることだ。
パーティ・キャンドルやドリルのようである。
おまけにその棒自体、真っ直ぐではなくやや弓状に反り返っているのだ。

さくらはゾクッと背筋が震えた。
もしかすると、あれは擬似ペニスではないだろうか。
性の道に長けた男女が、そうした器具で愉しむらしいということは知識として知っ
ている。
もちろんさくらはまるで興味はなく、話を聞いても顔をしかめるだけだった。
今、それが自分に使われようとしている。
さくらはまたぞくりとした。

もしかすると、それは膣以外で使われるのではないだろうか。
アヌスに指を入れてきたこともある新次郎である。
加えて、ついさっきまでしつこいほどにさくらの肛門を愛撫してきていた。さくら
自身、揉みほぐされてそこがしっとりと緩み、柔らかくなってしまったことは自覚
していた。

「し、新次郎くん、まさかあなた……」
「……どうすると思いますか」
「まさか……、お、お尻に……」
「正解」
「ひっ……!」


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