決起二日目。
長かった夜が明けても、帝都は不気味に静まりかえっていた。
都民は、何か起こったらしいということはわかっても、それ以上のことがわからなかった。
新聞が届かなかったのだ。
決起軍が新聞社に押し掛け、自分たちの主張を掲載するよう迫ったのを受け、彼らは対応に
苦慮した。
武装決起は明らかだったから、その行為に対する批判を行なうべきだという意見が主流だった
が、意趣文を載せなかったら彼らは何をしてくるかわからない。
といって、そんなものを素直に掲載することも出来なかった。
陸軍に問い合わせようにも、陸軍省も参謀本部も決起軍に抑えられてしまったらしい。
結局、各社の代表が話し合い、緊急事態発生につき臨時休刊ということにしたのである。
もうひとつの報道機関であるラジオも、放送協会は取り敢えず通常番組を流す以上のことは
出来なかった。
確かな情報がないということほど人心を不安にさせるものはない。
逼塞した状況に耐えきれなくなった人々が動き回ってみると、陸軍の本拠地とも言える三宅坂
一帯に武装した兵士が立っている。
銀座周辺にも陸軍兵が立哨しており、事態の異常さを物語っていた。
洩れ伝わってくる噂や流言によると、陸軍の一部部隊が実力行使に出たらしいことがわかり、
人々を唖然とさせた。
新聞、ラジオは沈黙し、軍部からも明言がなかった。
帝都の人々は、要所要所に銃を持って立っている兵隊を、不安げに見守っていた。
一方、政府および軍部は大混乱に陥っていた。
時間が経つにつれ、粛清された人物の情報が伝わり、政府関係者を慄然とさせた。
天皇は久谷侍従長との連絡が取れないことに不満を表明し、他の侍従を呼び寄せた。
そこで陸軍決起の情報を得るや否や、ただちに陸相と海相を呼び出した。
京極大将は、御所から執務室に戻るとコートを主席秘書官に手渡した。
コートと軍帽を受け取りながら秘書官が尋ねる。
「いかがでした、陛下は?」
「芳しくないな」
京極はやや顔をしかめて答えた。
「激怒しておられたよ。陸軍大臣は配下の将校たちをきちんと掌握してもらわねば困る、とね」
「彼らの意趣は申したのですか?」
「ああ言った。彼らは国を憂いて起ちましたとね。青年将校たちの気持ちもご理解ください、
彼らは陛下の御為に行動したのだとも言ったさ」
「それで、陛下は何と?」
「ああ」
四十四歳の陸軍大臣は、どっかと椅子に腰を下ろして言った。
「陸軍大臣がそういうことを言わなくてもよかろう、と」
「……」
「そんなことよりも、速やかに叛乱部隊を鎮圧する手段を講じろ、とのことだ」
京極のアテは少し外れた。
この時点で天皇が彼らのことを「叛乱軍」と定義づけるとは思わなかったのだ。
混乱に乗じて、決起したのにも理由があることを認識させたかったのである。
考えが甘かった。
側近を殺された天皇は激怒し、ただちに事態の収束を命じたのである。
これには京極もまいった。
あの剣幕では決起軍将校たちへの同情心を煽ることも出来ず、這々の体で退出してきたのだ。
「まあいい」
京極は自分に言い聞かせるように言った。
「要は、連中を賊軍扱いにしなければいいのだ。まだ手はある」
* - * - * - * - * - *
横浜・神崎邸。
押し入った部隊は、なかば引き上げている。
神崎重樹社長殺害の目的は達せられなかったが、紀平は十名程度の兵を残して東京へ部隊を戻した。
残った兵は神崎邸の監視と社長捜索にあたっている。
兵たちが昼食を採り始めた頃、紀平はすみれの部屋にいた。
紀平中尉は、昨夜はじめてすみれを犯した後、夜が明けてすみれが目覚めるとまたすぐに部屋
を訪れて抱いた。
そして今、またしてもすみれをベッドに押し倒していた。
「ああ……」
すみれも紀平も一糸まとわぬ姿でベッドにいた。
犯される美女は、左右の豊かに膨らんだ乳房をつかまれ、揉みくちゃにされている。
軍人の武骨な指が柔らかい肌に食い込み、すみれはその顔を少し歪める。
紀平は、最初こそ優しく愛撫をしていたが、何度も性交を繰り返すうち、徐々に強い責めに
切り替えていた。
もちろん紀平がそうしたいという欲求があったことが大きいのだが、幾度も肌を重ねている
うちに、すみれもそうした責めに対して敏感に反応していたことを知ったからだ。
「あうっ、そんな強く……」
乳首を捻られ、ジーンと痺れが突き抜けるとすみれは喉を反らせた。
紀平はその鋭敏な蕾を唇で覆い、引っ張り上げるように強く吸った。
「はあっ……んっ……ううんっ……」
中尉はべろべろと乳輪全体を舐め回し、今度は口いっぱいに乳房を頬張った。
その上で吸飲したり、舌で舐め込んでくる。
その異様な快感に、すみれの股間はジンジンと反応し、甘い蜜を滴らせてくるのだった。
紀平の歯が乳首に当たると、勝手に背中が反り返ってしまう。
自分でも不思議なくらいに紀平の愛撫に肉体が応えている。
歯を立てられ、鋭い痛みが走るのだが、それすら妖しい痺れに変化していった。
乳房に加えられる甘い刺激を堪えきれず、すみれの口からは口惜しい嗚咽が洩れだしていた。
「うっ、あああ……あ、いやです……ああっ……あうう……」
股間にも指が深々と刺さっていた。
紀平の中指は完全にすみれの中に埋没しており、もはや抗うことは不可能だった。
指を鉤状に曲げられ、お腹の裏あたりの襞をコリコリと擦られる。
親指は、媚肉の頂点にある蕾をくすぐるように下から上へと撫で上げられた。
上下を存分に責められ、どうしても逆らえない甘美な疼きがこみ上げてくる。
「ああ、いや……あ、あっ……む……んああ……」
いやでも覚醒させられる淫らな欲望をどうすることも出来なかった。
せめてもの抵抗で、必死に股を締めているのだが、腿の弾力が紀平には心地よい。
嫌がりながらも締めつけてくるすみれの膣は、早くも蜜を滴り始めていた。
そこを紀平の熱い唇に押し当てられる頃には、もう止めようがないほどに溢れてきているのだった。
「……」
紀平中尉が股間から顔を放し、すみれを見ると、その顔は真っ赤になっている。
充分すぎるほどの快感を感じているのだが、それを表に出すまいと堪えているのだろう。
娼婦のように、やたらと男に媚びを売る女よりは、自分の肉体の変化に戸惑っている今の
すみれの方が何倍も美しいと紀平は思う。
セックスを恥ずかしがっている彼女に、我を失わせるほどの愉悦を与えて絶頂まで押し上げる
ことこそ男冥利に尽きると思った。
くたり、となっているすみれの両腿を抱え込み、紀平は股間に割り込んだ。
「ううっ……あっ…」
熱烈な愛撫に恍惚となっていたすみれは、股間に押しつけられた熱い感触で正気に戻った。
紀平がのしかかってきている。
媚肉に当たっているのは彼のペニスだ。
すみれは叫んだ。
「いやあっ! もう、いやよ、中尉! ああ、もう辱めないで……」
「辱める? それはひどいな、すみれさん。僕らはこうして愛し合って……」
「バカ言わないで!!」
凌辱され、続けざまに犯されているこの状態を「愛の行為」とは呼んで欲しくない。
自分の運命を諦めたすみれにも、それくらいの誇りは残っている。
もともと気位の高さで名を売っていた女性だ。
さくらを含め、帝撃の人たちをなかば人質にとられて、この身を自由にされているとはいえ、
心まで犯されてたまるか、という気丈さがあった。
「な、なにが愛よ! こんな……こんな無理に辱めて……」
「ですが、すみれさんも感じているじゃないですか」
「!!」
「最初はともかく、だんだんと気持ちよくなってきてたんでしょう? わかりますよ、それ
くらいは」
「……」
事実だった。
背伸びして大人ぶっていたすみれだが、その実、性的には未熟だった。
肉体は見事なくらいに発達していたが、まだ男女の営みということに関しては無知に近かった。
セックスに快感が伴うことは知っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
早熟な級友たちの話も興味深く聞いていた方だが、話半分だと思っていた。
それが、こうだ。
相手の紀平は、何度も娼婦を抱いたらしいから、女には慣れていたのだろう。
だが、それにしても、初めてからまだ間もないはずの自分が、これほどの官能を得るという
ことがショックだった。
よほど自分は淫乱なのではないかと思い悩んだほどだ。
だがそんな悩みも、紀平に抱かれ、貫かれると吹っ飛んでしまっていた。
「少なくとも僕はすみれさんを愛している」
「……」
ぬけぬけとよくもまあ、とすみれは思っている。
「だけどすみれさんも満更ではないはずだ。だからこそこんなに濡れる」
「あっ」
濡れた媚肉に触れられ、すみれは思わず腰を引いた。
それでも紀平の指には透明で、やや粘りのある液体がまとわりついていた。
「恥ずかしいことじゃないですよ。女性なら当然です。そのうちすみれさんも僕のことを……」
「そんなことありません」
すみれの気の強さに、紀平は少し苦笑する。
まあいい、これくらいの方が刺激になっていいだろう。
「あっ……ううっ……」
ぐぐっと重みがかかり、すみれは身体が割られていくのを実感する。
そして何度も味わわされた疼痛を感じた。
昨夜に処女を失ったばかりなのに、もう何度犯されたろうか。
いいかげん紀平のものに膣も慣れたはずなのだが、この期に及んでも、突き抜かれる瞬間は
裂けるような痛みで顔をしかめるほどだ。
「うあっ……あ……」
まさにめりこまされるような感触に、すみれはたまらず呻いた。
奥に到達するまでの、膣襞を擦られる感じに下半身が震える。
そして最奥まで届かされた瞬間、すみれの脳裏にビリビリと電流が走るのだ。
いったん奥まで納めると、紀平は動きを止める。
そしてぴったりとすみれと重なるのである。
両脇から腕を通し、すみれの肩を抱きしめる。
唇を噛んで耐えているすみれの美貌がたまらなかった。
すみれは、男のたくましい胸に乳房を潰されている。
そして少しでも動かれると、胸板で乳首が擦られて鋭い快感に身体が痺れるのが止まらない。
膣を太いペニスで埋め尽くされた息苦しさに、すみれが思わず喘ぐ。
「うんっ……うんんっ……んはっ……」
すみれが紀平に抱きしめられ、押しつぶされているのは乳房ばかりでない。
下半身も密着しており、感じやすい肉芽や媚肉の襞などが彼の陰毛に刺激され、ちくちくする
ような、こそばゆいような感覚を受ける。
思わず笑い出してしまいそうな、それでいてもっと擦りつけてもらいたいような不可思議な
感触だった。
「ああ……あ……う、うむ……」
すみれの紅唇が薄く開き、細いが熱い吐息が洩れ出す頃になると、紀平は本格的に責め始める。
力強くすみれの中に押し入って、ずんずんと動き出すのだ。
「うあっ…うんっ…うんっ…ううんっ…あっ…んはっ…ああうっ…あ、ああっ…」
紀平が貫くたび、すみれは声を出さずにはいられない。
愛撫は若々しいが、決して乱暴でない。
すみれを犯すことによって自分が快感を得ることよりも、すみれに性の悦びを与えようとして
いる責めだった。
腰の動きも、荒々しいというよりはひたむきささえ感じられた。
そのような行為で責められて我慢できるほど、すみれの裸身は鈍感ではなかった。
長いペニスをいっぱいに使った長大なストロークは、彼女の灼けている子宮を正確に捉えていた。
膣の奥を小突かれると、すみれは早くも恍惚の泉へ迷い込んできた。
「ああ……ああっ……うっ、はあっ……あ、うむっ……あひっ……」
すみれの表情が苦悶に染められていく。
洩れてくる喘ぎも、短くそして切迫したものに変わってきた。
肩や腰がぶるっ、ぶるるっと痙攣している。
「すみれさん、もうですか」
「いやっ」
いきそうなのだ。
いきそうだが、その恥ずかしい姿をさらしたくなかった。
すみれは口を強く噛んで自らの心を叱咤する。
それでも、紀平の正確な突き込みと性技の前に崩壊は寸前だった。
ここで気をやらせるのは簡単だが、紀平はそうしなかった。
今度こそ、すみれの口からその瞬間を告げさせたいと思っていたからだ。
すみれがいきそうになる直前で、紀平は律動をいきなり中止した。
盛り上がるだけ盛り上がったすみれの性感が突然放り出されてしまった。
あまりのことにすみれは唖然として紀平を見る。
「ああ……な、なんで……」
「……いきたかったですか?」
「……」
はい、と言えるわけがない。
すみれは悔しそうに唇を噛み、顔を背けた。
その顎をつかみ、正面を向かせて中尉が言う。
「途中でやめられるのはつらいでしょう?」
「……」
「すみれさんが素直にならなければ、何度もこういう目に遭わせます」
「え……」
すみれはハッとして紀平を見た。
見上げる陸軍中尉の目は思ったより澄んでいた。
「いく時はそう言ってください」
「……そんな……」
「でなければ、またいく寸前でやめます」
すみれの気性からして、そんなことを口に出来るわけがなかった。
例え愛した男に抱かれていても言わないのではないだろうか。
すみれの美しさを支えている要素のひとつがプライドなのだ。
それを捨てろと紀平は言っている。
「……」
返事が出来ないすみれだったが、紀平の肉棒は膣に入りっぱなしである。
熱く硬いものが沈め込まれている。
それが、すみれの「女」を誘うかのようにピクピクしていた。
彼女の膣はどうしようもなく男を求めていた。
悔しいが、すみれ自身それを認めざるを得なかった。
動かずに挿入されている肉棒を急かすように、すみれの腰がうねり、せり上がってしまうのである。
紀平はそれを予測していたらしく、蠢くすみれの腰を上から押さえ込んでしまった。
「あっ……」
自分で動くことにより、わずかな快感を得ていたのに、それすら止められてしまった。
すみれは自分の浅ましい欲望と行動に、女としての誇りが打ち砕かれる思いだ。
さらに紀平はペニスをすみれから抜きはなってしまった。
「あ……」
膣にきつきつに入っていたものが抜き去られ、すみれはその頼りなさに小さな声を出した。
ペニスの先がわずかに媚肉に触れている。
すみれは自然に腰が持ち上がり、紀平を追いかける動きを止められなかった。
目を固く閉じて屈辱に耐えているものの、肉体の疼きは如何ともし難かった。
すみれの動きがなよなよしたものになってくるのを見計らって、紀平は再度すみれの中に没入した。
「あ、ああっ……うむ……」
またしても感じる張り裂けそうな痛み。
狭い膣口を幅広のカリで押し広げられる感覚。
「う、ううんっっ」
カリが通ると、ずっと中に入り込む。
そして入り口付近から奥へ奥へと満たされていく実感。
太く硬い男のものがすみれの胎内を切り裂いていく。
苦痛と共に感じさせられる充足感にすみれは酔った。
「はんんっ……うっ、あ……」
重々しく貫かれ、すみれは息が詰まりそうだ。
充分に自分の威力を思い知らせたと思った紀平はいよいよ動き出した。
またしてもすみれの子宮まで届くピストンが始まる。
そして手はたわわに実ったバストを絞り出すように揉み込んだ。
「ああっ……うっ、うんっ……」
たちまち媚肉が燃え出し、紀平のものに熱く絡みつく。
紀平の遠慮ない動きに、すみれの繊細な肉襞がこそぎ取られていく。
中尉はすみれの細腰をぐいと掴むと秘肉の最奥まで串刺しにした。
「んああうっ……」
とろけて爛れ始めている襞が、中で出入りする肉棒にねっとりとしがみつくようだ。
紀平は焦らずじっくりと責めた。
ゆっくりと肉茎を割れ目入り口まで引き抜くと、今度は速度を上げて奥までずぼっと貫いた。
「はあうっ……」
熱い喘ぎがすみれの口を割って出てくる。
その可憐さに我慢できず、紀平はすみれに唇を近づけた。
そしてすみれの唇を食べるように口に含む。
「!!」
すみれは慌てて振り払おうとするが、紀平は委細構わず舌を潜り込ませようとした。
すみれは舌の侵入を防いでいたが、紀平が激しく何度も突き込むと口元が緩み、舌を許してしまった。
「んっ、んほっ……むっ……」
すみれはむせて咳き込み、男の舌を受け入れさせられた。
口の奥へと逃げる舌を、紀平の舌が強引に探り出し、引き抜くように吸い上げた。
「うっ、うむうっ……むむっ……んっ……」
舌が痺れるほどに強く吸われ、硬かったすみれの舌が一気に柔らかくとろけた。
そこを逃さず、中尉は舌を絡ませる。
「うっ、んっ……むっ……むむ……んっ、んう……んくっ……くんっ…」
紀平が流し込む唾液を飲まされ、白い喉がなまめかしく上下する。
すみれは頭の芯まで痺れてきた。
「はあっ……ああっ…あっ……あ、ううっ……ひあっ……」
紀平が口を離すと、すみれの身悶えが一層激しくなったように見えた。
深いひと突きひと突きが、この財閥令嬢の肉体を熱く狂わせていく。
ひくひくとペニスを締め上げてくる膣に紀平は満足し、さらに腰を使い出す。
すみれも紀平に反応し、知らず知らずのうちに尻をうねらせ、彼の男根を深く感じようとしていた。
「ああ……ああっ……あ、も……ああ、いっ……」
「いくなら言うんですよ」
「いっ……いや……ああっ……くうう……」
女がまたも頂点に届こうかという間際、男は動きを止めた。
女は狼狽えた。
「ああ、またっ…。ど、どうして、中尉……」
「どうすればいかせてもらえるか説明したはずです」
「そんな……」
またしても紀平が抜き去ろうとすると、すみれは軽く悲鳴を上げて腰で追った。
「ああっ、ちゅ、中尉っ……」
「言えますね、すみれさん」
「……」
すみれは目を閉じ、顔を伏せた。
その目尻から、つうっと涙が伝っている。
紀平には、わずかにうなずいたように見えた。
それを見て、紀平はすみれに繋がったまま姿勢を変えた。
「ひぁっ……うあああっ……」
媚肉に肉棒をくわえこまされたまま、ぐるりと裏返しにされたすみれが、引きつりそうな悲鳴
を上げた。
その太く硬いものを中心に回転させられると、膣内の襞が擦られる。
いや、擦られるというよりは、襞がよじれてゴリゴリと巻き込まれるようなものだ。
その擦過感で膣は一層熱くなり、すみれは胎内から噴き上がる恐ろしいほどの愉悦に気を失い
そうにすらなった。
気をやる寸前で止められた秘裂には刺激が強すぎ、それだけでいってしまいそうになる。
「ふっ、ふああうっ……んあっ、こ、擦れる! 痺れちゃう……あうんっ…」
高ぶる官能に、うねって悶えるすみれの腰をがっちりと掴むと、紀平は律動を開始した。
「こういう格好もいいでしょう、すみれさん」
「いやっ……こ、こんな恥ずかしいの、いやですわっ、あああっ……」
犬のようなスタイルで貫かれる。
まさに「犯されている」ということを実感させられる体位に、すみれは恥辱にまみれ、むせび
泣いた。
深いところまで届かされ、入り口近辺では感じることの出来なかった新たな快感の虜となり、
美女は陶然となっていく。
腰の骨が砕けそうなくらいの強い打ち込みを受け、息を継ぐ間もない。
「うんっ……ううんっ…あっ…うあっ…っあ…っあう…っああ……」
初めて突かれる奥の肉が、ズーンと響いてくる悦楽にとろけてくる。
何度も繰り返しそこを責められると意識が遠のいてしまうほどだった。
「ああっ……あああっ……う、うむっ……うんっ……うあっ……」
すみれの様子で、そこが弱いと見るや、紀平は執拗に奥の肉を突いてきた。
子宮に近いところで快楽を得てきているすみれを、さらなる高見に押し上げようというのだ。
ひと突きひと突きが初めての快感のように感じられ、すみれは全身に官能の炎が飛び火するの
を抑えることができなかった。
「ああ、ああっ……うああ、だ、だめっ……あ、また……またあっ……」
「いくんですか? なら言わないといかせませんよ」
「い、いやっ」
桃源郷へ一直線に向かっているこの状況でやめられたらおかしくなりそうだ。
すみれは必死の形相で紀平を振り返った。
「ああっ、お、お願いっ……」
「……」
「あ、あ……つ、続けて……ください……」
紀平も、すみれの持ち物の素晴らしさに酔っていた。
激しいセックスでぐずぐずになり、とろけきり、愛液でぐしょ濡れになっているにも関わらず、媚肉の収縮は少しも弱くなっていなかった。
男根は優しく包み込んでいるものの、それを絞り込む締め付けは逆に強まっているかのようだ。
「あ、ああっ……」
すみれは今、紀平の男根を思い浮かべている。
ゴツゴツして硬そうな、赤黒いそれはいかにも暴力的に思えた。
そんなたくましいものを後ろから思い切り突き込まれているのかと思うと目眩すら覚える。
しかしそれも、強く何度も突き上げられ、肢体を揺さぶられるごとに打ち消されていく。
深く抉られ、擦られているうち、泣きたくなるような心地よさと痺れるような快楽に溺れ、
性の深淵に堕ちていく自分がわかる。
「あ、もう……もうっ、いいっ……」
すみれが屈服した。
どうしてもそう言わなければ心が破裂しそうになる。
そして一度、禁を破ると、その言葉は次々と唇から溢れ出てきた。
「いいっ……ああ、気持ちいいっ……」
「その調子です、すみれさん」
「あううっ……ふ、深い……ああ、か、感じますっ……いいっ…」
紀平は少し調子に乗り、すみれをもっと責め落とそうとする。
「僕のはどんな感じです?」
「ああっ…いいっ……」
「いいのはわかりましたよ。僕のペニスはどうですか、と聞いてるんです」
「そんな……んあっ……」
すみれの身悶えが一層烈しいものとなった。
紀平が突くと尻を突きだし、深い挿入を求める。
長大な肉棒がずるずると膣道をなぞり、子宮まで届く摩擦がたまらなかった。
そして子宮まで届くと、その入り口を抉るように押し込んでくるのだ。
痛いはずなのに、すみれの脳髄には甘美な愉悦しかわき起こっていない。
子宮も、ペニスの刺激に反応して、物欲しげに口を開いていた。
「ああっ、お、おっきいです……ああっ」
紀平の攻撃は正確に子宮を捉えていた。
これから先のことを考えると、すみれを妊娠させるのはまずいと思っていたが、もう抑えが
利きそうにない。
紀平の男としての本能が、この美女を孕ませたいと念じているようだ。
すみれの方も、それに応えるべく腰をうねらせ、膣を締め上げ、男の射精を望んでいるかの
ように見えた。
「硬くて、ああっ……ふ、太いのが、お、奥まで……あっ…奥まで、と、届いて……うああっ…」
中尉はすみれの最奥まで貫いたまま、背中に覆い被さった。
そのまま腰をぐりぐり回して媚肉周辺を擦り上げる。
そして、すみれの美しい背中線を舐め、両手で抱え込むようにして、責めに揺れる乳房を揉み
上げた。
強くつままれた乳首は、ちぎれそうな痛みよりも突き抜けるような官能の方が大きかった。
背筋を熱い舌で舐め上げられ、ぞくぞくするような快感が走る。
「あ、もう、もう……」
「いきそうですか」
すみれはまったく抗おうとせずガクガクとうなずいた。
もう腰のあたりがプルプルと痙攣してきている。
ベッドについた手もシーツを固く握りしめ、震えていた。
すみれにはわかる。
また、あれだ。
昨夜から何度か味わわされたあの感覚。
「いく」とか「気をやる」とか紀平が言っているやつだ。
目眩がしてくる。
光が散ったように視界が輝く。
意識はその光の中に吸い込まれていくようだ。
そして浮遊感とともに、急に足下がなくなったかのような落下感。
身も心もどんどんと軽くなっていく。
快感だ。
全身が痺れるような快感で鳥肌すら立っている。
順一郎は最後の責めにかかる。
これでもか、これでもかと言わんばかりに、すみれの最奥を散々突きまくった。
その威力に、子宮は上へ押し上げられ、打ち込んでくる腰で尻がつぶされそうだ。
「うあっ、うああっ……だめ、だめっ…そ、そんなにされたら……い、いいっ…」
「いっていいですよ」
「あああっ……い、いく……」
とうとう口にしてしまった。
だが、すみれには羞恥も屈辱もなかった。
あるのはピンク色染まった妖しい肉の欲望のみだった。
紀平は深く入れるだけでなく、腰にひねりも加えてきた。
ねじ込まれる感覚が強くなり、すみれは一気に高まっていく。
「それっ……そ、それ、だめですっ、あ、もうっ……い、いっちゃうっ……ああ、もう、もうっ」
紀平は、まるでバネ仕掛けが壊れたかのような腰使いで令嬢を責め上げた。
もう彼自身がいきたくてしようがなくなっているのだ。
すみれは、ついていた腕が萎え、シーツに顔を押しつけられて、めり込むくらいに激しい責め
を尻に受けている。
媚肉は爛れ、ぼたぼたと愛液がひっきりなしに滴っていた。
すみれは声も枯れだし、嬌声すら思うように出せなくなってきた。
「あ、あ、あ、あ、も、もういく、いくっ……いく、いっくうう!!」
ぐうんと背を反り返らせて、すみれは壮絶に気をやった。
そのきつい締めに我慢せず、紀平も射精した。
どびゅうっ。
びゅるるっ。
びゅ、びゅうっ。
びゅくっ。
びゅっ。
「ひあああっ……熱、熱いっ……ううむ、い、いくっ……」
すみれは子宮の中にまで迸っていく熱い精液を感じ、続けざまにいった。
射精を受けて気をやったのはこれが初めてだった。
ぼんやりと薄れていく意識の中で、本当に「女」にされたと実感していくのだった。
絶頂の瞬間、光の玉が弾けたような感覚を受けた。
大げさでなく、天にも昇るような浮遊感が消え失せ、どっと体重が戻ってきた。
後に残るのは、気怠い虚脱感と疲労、そして言い尽くせないほどの口惜しさであった。
紀平は、まだ半勃ち状態の肉棒を引き抜き、汗みどろでベッドに突っ伏しているすみれの尻を
撫でた。
猛烈な責めに、喉をぜいぜい鳴らしている美女を眺めながら、紀平は今日はあと何回出来る
だろうかと考えた。
軍人仲間からも「融通が利かない」と評される生真面目な男である。
いかにすみれにご執心とは言え、指揮官の職務を放り投げるようなことはなかった。
職務の合間を縫って、こうしてすみれを抱いているのだ。
時計を見やると、あと三十分ほど余裕がある。
続けてもう一回くらい出来そうだと思い、うつぶせになっているすみれに手を伸ばし、その尻
たぶを割った。
* - * - * - * - * - *
米田たちが監禁されている部屋がノックされ、かえでが応対に出ると何やら紙切れを渡された。
かえでは、米田に魔神器を護衛するよう言われて、その金庫の前で頑張っていた。
予想通り兵たちがなだれ込んできたが、かえでの武装を解除しただけで金庫にもかえでにも
関心を示さなかった。
危害を加える様子はなかったので戸惑っていると、有無を言わさず米田の部屋に押し込まれた
のである。
かえでからその事情を訊き、米田は取り敢えず安心した。
どうも彼らは魔神器に関する知識はないようである。
それなら最大の心配事はまずなくなった。
「なんだね、それは?」
米田はかえでの持っている見て言った。
かえではそれを司令に渡しながら答える。
「決起意趣文みたいですね」
「意趣文だあ?」
「はい。これを今朝からあちこちで市民に配布しているようです。さっきは四丁目の交差点
で、誰か士官が演説してましたわ。多分、これのことでしょう」
米田は二枚の紙を渡された。
まず最初の一枚をがさがさ鳴らしながら拡げてみる。
内容はこうだった。
国民よ! 天皇の御名に於いて君側の奸を屠れ!
国民の敵たる既成政党と財閥を殺せ!
横暴極まる官憲を懲殺せよ!
奸賊、特権階級を抹殺せよ!
農民よ、労働者よ、国民よ、起て!
祖国を護れ!
陛下聖明の下、建国の精神に帰り、国民自治の大精神に徹して人材を雇用し、朗らかな
維新日本を建設せよ!
要するにこれは檄文であろう。
雪の中、外でアジっている連中が叫んでいる内容だ。
もう一枚を見てみる。
こちらはもう少し突っ込んだことを言っていた。
一、陸軍大臣の断固たる決意を元に事態の収拾に務め、本自体を維新の方向へ導くこと。
一、決起の趣旨を、陸軍大臣を通じて天聴に達せしむること。
一、近衛師団、第一師団および憲兵司令部の行動を統一し、皇軍相撃のなからしむるよう
処置すること。
一、各地の同志将校を東京に招集し、事態収束に協力させること。
一、事態の安定をみるまで、決起部隊を警備部隊とし、現占拠地点から動かさぬこと。
米田は鼻を鳴らして不満を表明した。
「陛下がこんなことを容認するわきゃねえだろうによ」
二番目の「天聴」とは、天皇に説明しわかってもらうことを言う。
人一倍争いごとの嫌いな太正天皇が武力蜂起など認めるはずもない。
米田は半ば呆れて読み進む。
そこには彼らの目指す国家像が書かれていた。
「三無主義?」
そう書かれている文章を読んでみるとこうあった。
三無とは、無税、無失業、無戦争という三つの「無」だ、とある。
無税政策はこうだ。
国家資産に見合う証券を発行して、有望企業に貸し付け、その金利で国家予算を賄おうという
ものらしい。
無失業は、国鉄、専売、逓信などの国営企業を民営化して自由競争を行わせる。
このことにより中央省庁を五分の一まで削減し、地方分権によって地方を活性化させて失業者
をなくすという。
無戦争は、近隣アジア諸国と友好関係を結んで、技術的、経済的支援を行なう。
さらに国際警察軍を設置して積極的に参加すれば、世界戦争は回避できると主張していた。
悪くない計画だが、いかにも机上プランである。
これだけのことを実行しようとすれば十年以上はかかるだろう。
正規の手続きには時間がかかるものだ。
その辺がわからず、ムリヤリ実行しようとするから武力行使などしなければならなくなる。
しかも、これらの政策の中に軍備縮小は含まれていない。
経費節減や税金浪費の中に軍備は入っていないらしい。
それに、アジア諸国との友好などと言っているが、本音は、欧米列国を追い出して、日本が
盟主になるつもりなのであろう。
「誰も日本に頼んでいない」というアジア各国の声が聞こえてきそうだ。
身勝手と言われても仕方があるまい。
「要するに、ケツの青いガキどもの計画ってことだ。……ということは裏はねえのかな」
「裏……?」
「絶対にバックがいると思ったんだがな。どうもこいつを読んでると政治のプロはいない
ようだ。議員の誰かが一枚噛んでれば、もうちっとマシな草案を出してくるだろうよ。
具体策が何もねえんだから、ついていこうにも恐くていけねえ」
「……」
立ちすくむかえでに背を向け、米田は窓の外を見た。
また雪がちらついているようだ。
寒そうに歩哨が歩いていた。
「……わからねえな」
* - * - * - * - * - *
朝、起き抜けで徹底的に犯されたというのに、少し休んだだけで、昼過ぎからすみれはまた
凌辱されていた。
度重なる激しい行為に、肉体がすっかり紀平に馴染んできている。
紀平に愛撫され、揉まれ、舐められると、あっと言う間に反応してしまう自分に身体が情け
なく、すみれは泣きたくなる。
だが、泣こうが喚こうが、すみれの胎内はドロドロにとろかされ、紀平の男根をしゃぶるよう
に蠢いていた。
もう何度も絶頂に達していたが、紀平は放出せず、腰を振り続けた。
男と女の股間がぶつかり、肉が弾け合う音が淫靡に響く。
パンパンという乾いた音ではなく、ぐちょぐちょ、ぬちゃぬちゃという粘着質のそれに変わっていた。
気をやり続け、そのエクスタシーの頂点から降りることを許されずに、紀平の責めが終わることなく続行される。
気も狂うような愉悦と快美の嵐に、すみれはとうとう嬌声を上げ始めた。
「ああ、いいわっ……こ、こんな……あ、う、動かないで! …ああうっ……」
すみれは苦しげな表情を浮かべているが、これはあまりにも大きな快楽に身体が限界に来て
いるからだろう。
苦悶する美貌とは裏腹に、その膣は男の肉棒をきつく締めつけている。
紀平はきゅうっと締めてくる媚肉の快感に耐えながら、思い切りすみれを犯し続けている。
グングンと腰を打ち付け、潤んで溶けきった媚肉に、カチカチに硬く張りつめたペニスを突き
通し、すみれを蹂躙した。
「ひあああっ……あう、あううっ……だめ、硬いっ……ああ、いいぃぃっ……」
すみれは発狂したかのような絶叫でよがり、呻き、悶えた。
硬直した男性自身が割れ目にねじ込まれ、深くまで挿入されると、秘裂の隙間から太いペニス
の分だけじゅぶじゅぶと新たな愛液があふれ出す。
「んう……んううっ……んああっ、あ、お、おっきいぃぃ……おっきいのがあ……」
紀平は出来るだけ深くまで挿入し、子宮まで入り込むようなピストンに切り替えた。
責める紀平も汗みどろである。
壮絶とも言える表情で、男は女の膣と子宮を責め抜いた。
先端がコツコツと子宮口に当たると、すみれは膣が暴発し、子宮の中から凄まじいばかりの
電流が流れるのを感じた。
もう限界と思っていた性の頂点に、まだまだ上があることを思い知らされて、令嬢は胎内と
頭の中が白く灼かれるようだった。
「あ、当たるっ……うああ、おっきいの、中で当たってるぅっ……いいっ……あ、もう、もう
気持ちよくって……あううっ……」
普段のすみれからは想像もつかないほどの乱れっぷりで、その美貌からは清純さが消え、凄絶
なほどの色香が漂い始めた。
すみれの媚肉は紀平のペニスにぴたりと吸い付き、強い収縮と弛緩を繰り返す。
若い中尉の激しいばかりの攻撃を難なく受け止め、さらに奥へと男根を導く込むかのような肉
だ。
処女を喪ってまだ二日目。
末恐ろしいばかりの美女だった。
「くあっ……だ、だめ! …ああ、くる……来るっ……すごいの……すごいの、来ちゃうっ……」
射精を促すような秘肉のひくつきに何とか耐えた紀平は、すみれを完全に屈服させるべく腰を
打ち込み続けた。
すみれはか細い悲鳴から甲高いよがり声まで、様々な艶っぽい媚声を紡ぎだした。
限りなく押し寄せる圧倒的な性の歓喜に、喘ぐばかりで息を吸う間もない。
「んっ、はあっ……ふあああうっ……くっ、いいっ……苦しい……息、出来ない……んあ
うっ、いいっ……あっ」
人が変わったようなすみれの反応に、男も昂奮し、さらに淫語を喋らせようとする。
「どこがいいんですか」
「ああ、い、言えない……ああっ」
「言うんです」
「あひっ……ああ、あそこ、です……いいっ…」
「はっきりと」
「お、おま……あうう……」
もう一息と、紀平は腰を密着させてグリグリと深い位置でカリを動かした。
子宮にも膣の壁にも、紀平の張ったカリ部分が摩擦され、熱く痛い、しかし鮮烈な快美に
すみれはあられもない声でよがる。
背筋はぐんと弓なりになり、見事なブリッジを形成した。
「さあ」
「ああ、オマンコっ……オマンコ、よくってもう……ああっ…」
すみれの甘い声が掠れ気味になり、切羽詰まったものになってくる。
シーツを握りしめる手に力が入り、二の腕がふるふる痙攣していた。
責める紀平の腰あたりが熱を持ってきた。
数も忘れるくらいに律動を繰り返していたすみれの膣は、人の体温とも思えないほどの熱を
帯びてきており、その熱が紀平に伝染したかのようだった。
そして襞は小刻みに痙攣し、盛んに精を欲していた。
中尉はくらくらしそうなペニスの快感を堪え、ひたすらすみれの媚肉をしごき、しなやかな
肢体に腰を叩き込んだ。
「す、すごいっ……ああ、身体が……あうう、溶けちゃう……いいっ…」
とどめとばかりに子宮口を思い切り突き出すと、すみれは狂ったように叫ぶ。
「それ、だめっ! ……こ、毀れるっ……ああ、もう……もうっ」
「それっ、それっ!」
「もう、だめ、いく! ……あ、あひっ、い、いくうっ…」
すみれの細い腕が紀平の腰に回り、背中に爪を立てた。
髪を振り乱し、愉悦を貪り続けるすみれは、途切れることなくよがり声を上げている。
紀平の背中に立てた爪に力がこもり、皮膚が破けて血が滲んできた。
限界を告げているのだ。
それに応えて、紀平は子宮をこじ開けるまでペニスをねじ込み、ぐりぐりと潜り込ませる。
そして亀頭の尿道口をぴったりと子宮に押し当てると、すみれは膣をきゅううっと締めてひと
きわ高い嬌声を出した。
「ああ、いく……いくうううっっ!!」
激しい絶頂にびくびくと大きく痙攣したすみれを確認してから、紀平は熱い精を思い切り迸らせた。
「うあ……うあああ……で、出てる……ああ……」
ドクドクと断続的に放たれる熱い精液を子宮で感じ、すみれは小刻みに痙攣していた。
絶頂の余韻で指先まで震えている。
爪先は内側の反り返ったまま固まって、まだ硬直も取れていなかった。
「あ……あ………」
ようやくすみれの硬直が解け、紀平の背に回っていた両腕が力無くシーツに落ちた。
胸の膨らみは激しく上下し、たっぷりと注ぎ込まれた股間からは、中に入りきらなかった紀平
の精がトロトロと零れ出ていた。
紀平は満足していた。
もうすみれの身体は自分のものだ。
まだ心は完全にはこちらを向いてはいないが、ここまで肉体をドロドロにしてやれば、それも
時間の問題だろう。
女性の身体と心への偏見を露わにしたようなことを考え、彼はすみれに言った。
「すみれさんの身体は素晴らしいですよ。感じやすくて、僕も気持ちいい」
「……」
「どうですか、セックスはいいものでしょう?」
全身の力を抜いてベッドに倒れ伏していたすみれは、キッとした顔で紀平を見て言った。
「セックスですって……?」
「ええ。最初は恥ずかしがってたみたいですけど、今ではけっこういいものだと思うんじゃ
ありませんか?」
「あ、あれは……」
「ん?」
「あれはセックスなんかじゃありませんわ!」
まだ呼吸が整わず、荒く息を吐いていたすみれとは思えないほど強い口調で言う。
「セックスじゃない…?」
「そ、そうよ」
すみれは身体を起こし、汗と男女の淫液で汚れた裸身をシーツで隠す。
「セックスというのは……愛し合う男と女が慈しみ合う行為ですわ。あ、あなたがしたこと
とは別物です!」
「そうでしょうか」
着替えのため立っていた士官は、ベッドに戻って腰を下ろす。
「すみれさんはまだ僕を愛してはいないかも知れないが、僕はすみれさんを愛している。
そしてすみれさんは僕の行為に反応し、感じていた」
「……」
「そうでしょう? 続けていればすみれさんも僕のことを……」
「違うわ!」
「……」
すみれは首を激しく振って叫ぶ。
紀平はすみれの勢いに圧倒された。
「あれはセックスなんかじゃない……。た、ただの……」
すみれは顔を赤らめて口ごもったが、気を取り直して続けた。
「ただのオナニーですわ!」
「オナニー……」
そんな言葉がすみれの口から出たこと自体驚いたが、それ以上に納得いかないのがその内容だった。
紀平は眉をひそめて問い質した。
「オナニーではないでしょう。男女間のセックスです」
「違いますわ。あれは相手の身体を使ったオナニーです。セックスではありませんわ」
「……」
絶句する紀平にすみれは続けた。
「愛し合って、愛情を込めた行為ではありません。自分の快楽のために相手の身体を使った
だけ。相手の意志を無視して自分の快楽に奉仕させただけじゃありませんの!?」
「そ、それは……、しかし、すみれさんだって感じていたはずだ。何度もいった……」
「言わないで!」
すみれはぶるぶると頭を振った。
そのたびに涙が露となって飛び散った。
「確かに……、確かにわたくしは恥ずかしい姿をお見せしましたわ。でもそれは……、それは
あなたが嫌がるわたくしを強引に辱めたからです!」
「……」
「あなたは確かにわたくしを感じさせるための行為をしました。しかし、それはあなたがそう
いうわたくしを見たいがためではありませんの!?」
すみれの鋭い舌鋒に、決起軍指揮官は返す言葉を思いつかなかった。
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