どんな手立てを使ったのか、ザバンに示されたルートには妖物の数がかなり少なかった。
リュカも知っている道ではあるが、普段はどちらかというと危険なエリアなのだ。
魔の森を突っ切らねばならず、こんなところを通れと言うザバンに不信感すら抱いた。
魔の森は獣が変化した魔物の巣窟だったからだ。
ところがそれがほとんどいなかった。
むしろ狼やハイエナといった肉食動物の方が危険だったくらいだ。
無論、この程度はリュカの敵ではなく、呆気ないほどにあっさりとモンスター・タワーに辿り着くことが出来た。

が、ここまでであった。
やはりというか、タワーにはゴンズやジャミ配下の魔物どもが大量に巣食っていた。
しかし、魔物どもを排斥しながら城門を突破し、階をひとつずつ昇っていくにつれ、これでも魔物の脅威は減っていることに気づいた。
普通なら、いかにリュカといえども、とてもひとりで何とか出来る数ではないのだ。
迎え撃ってくる魔物どもも、ゴーレムやトロル、あるいはアンデッド系が中心で、言ってみれば雑魚であり、よくても中ボスクラスだ。
とはいえ数は多く、リュカと言えども無傷というわけにはいかなかった。

そして、何とか最上階のジャミの部屋まで到達する頃には、軽装の鎧は無惨に砕かれ、服の裾はボロボロ、自慢のロングソードの刃毀れも痛々しい有様だ。
予備のソードも使い切っていた。
何にせよ、あの時と同じく呪文魔法が一切使えないのが大きかった。
致命傷まではいかぬまでも、身体中あちこちに怪我を負っていた。

あの部屋が見えてきた。
どういうわけか扉が半開きになっている。
リュカが乗り込んできたことはジャミも知っているだろうが、たったひとりでここまで来るとは思っておらず、油断しているのかも知れない。
ならばチャンスだった。
リュカは気力を振り絞って部屋に飛び込んだ。

「ジャミ! ビアンカを……ああっ!」

あまりの光景にリュカは立ちすくんだ。
ビアンカは、無惨なまでにその裸身を魔物に晒していたのだ。
彼の美しい妻は全裸だった。
両手を手首で縛り上げられ、そのロープが天井から吊られている。
両脚も大きく開かされて、左右の足首がそれぞれベッドの脚に縛り付けられていた。
リュカは思わず顔を背けた。
とても直視できるものではなかった。
ビアンカは、リュカだけに見せていたその美しい肢体を、惜しげもなく化け物の目に晒していたのだった。

「あ……あなた! リュカっ!」

リュカの登場に驚き、喜びの声を上げたビアンカだったが、すぐに我に返った。
おのれの恥ずかしい格好を見られたくなかった。

「だめっ、リュカ! 見ないで、こっちを見ないで!」
「く、くそ……ジャミぃぃぃっっ!」

妻の声で、ルカはジャミへの怒りを露わにする。
この有様では、あの後ビアンカが無事に済んだはずもなかった。
きっと妻は、この化け物にその身を捧げさせられたに違いない。
そう思うと、抑えようもない怒りが込み上げ、炸裂した。
ジャミが嘲るように言った。

「ほほう、性懲りもなくまた来たか。この意気地なしめが」
「妻を、ビアンカを返せ! このぉぉぉっっっ!」

満身創痍だったが、もう傷や痛みのことは忘れた。
妻の哀れな姿に冷静さを失ったリュカは、ソードを両手で持って大きく振りかぶり、ジャミに突撃していく。
無謀な攻撃だった。
もしグループを組んでいたなら、いやビアンカだけでも一緒に戦っていたなら、まだ何とかなったかも知れない。
それが望めぬとしても、せめてリュカの肉体と精神が健常であれば、もう少しまともな戦いになっただろう。
しかし今の彼は全身に怪我を負っており、さらし者にされたビアンカを見て激情に駆られていた。
とても魔物王にならんとしているジャミに敵うはずもない。

「ふん」

ジャミはリュカの太刀筋を難なく見切って、その剣先を蹄で受けた。
のみならず、そのまま腕を振り、ソードごとリュカを壁まで吹っ飛ばした。

「ぐっ!」

リュカは背中から激突し、瞬間的に呼吸が止まる。
夫の苦鳴を聞き、ビアンカが悲鳴を上げた。

「リュカっ!」

そこにジャミがけしかける。

「おらおら、それで終いか? 可愛い妻やガキを取り戻しに来たのだろうが。人間の王とはその程度のものなのか?」
「う、うるさいっ! いくぞ!」

よろけながらも再び立ち向かうリュカだったが、如何ともし難かった。
何度となく攻撃は弾き返された。
避けられたのではなく、すべて受けられていた。
つまり、こんな攻撃など避けるまでもない、ということなのだろう。

「く……」

何度挑んでも叩きのめされる。
壁や床に背中や胸から何度も叩きつけられ、さすがにリュカも無力感を感じていた。
それでも立ち向かわねばならない。
負けるとわかっていても、立たねばならぬ時がある。
それが今だと信じていた。
そうでなくて、どうしてビアンカの夫だと、タバサの父だと胸を張れるだろうか。
妻や子を護れない夫や父など問題外だ。
そんなリュカを、ジャミはいたぶってくる。

「もうおしまいか? なら、こっちからいくぞ」

そう言うと、ジャミは蹄を振るった。
ここではジャミも魔法は使えないらしい。
得意のメラミやバギクロスも使わず、ひたすら腕力に頼った物理的な攻撃を仕掛けてきた。

「ぐおっ!」

ジャミの右腕がリュカの左頬へまともに決まった。
リュカは唇から血を噴き出しながら壁に叩きつけられる。

「リュカ!」

ビアンカの悲痛な声が響く。
それが力になったのか、よろける身体を叱咤してリュカがまた立ち上がる。
ジャミはリュカが立つのを待ってから、今度は鳩尾に蹄をめり込ませていた。

「うぐ!」

また呼吸が止まり、思わず身体を折り屈める。
その背中に肘が落ちてきた。

「っ……!」

もはや声も出せず、リュカは床に激突した。
ビアンカが泣き叫ぶ。

「やめて! もうやめてぇぇっ!」

その声を聞いて、ジャミは動きを止めた。
リュカはそれでも立ち上がろうと四つん這いになる。

「く、くそ……。待ってろ、ビアンカ……きっと俺が助け……ぐあ!」

今度は背中を思い切り踏みつぶされ、リュカは背骨が砕けたかと思った。

「やめて、お願い!」
「……」
「やめて……、もうやめてジャミ……。リュカが死んでしまうわ……」

ジャミがビアンカを振り返って言った。

「やめて欲しいか。殺さないで欲しいのか?」
「こ……殺さないで。リュカを助けて」
「そうもいかん。あの時、ガキとこいつを殺さないでやったのに、こいつはまたも俺に刃向かってきた。もう許さぬ」
「お願い! リュカを殺さないで!」

ずいとジャミが近寄ってきた。
ビアンカは本能的に脅えて、思わず腰を引いた。
縛られていて逃げようがないのだが、嫌悪感が強すぎるのだ。
ジャミが斜に見ながら言った。

「何でも俺の言うことを聞くか?」
「……」

ビアンカは口ごもった。
この魔物が何を要求しているかは明白なのだ。
おとなしく抱かれろ。暴れないでジャミのものになれ。
受け入れろ。
そう言っているのだ。

絶対に嫌だった。
リュカ以外に身体を許すことなど考えたこともないし、況して化け物相手に抱かれるなど寒気がする、虫酸が走る。

だが、よく考えるとジャミの行動も少し変だった。
リュカとレックスを返してからというもの、最初に襲われた時も途中でやめてしまっていた。
レイプを覚悟していたというのに、挿入半ばで諦めてくれたのだ。
以後も何度か犯されかかったが、最後までいったことはなかった。

そこでビアンカは気づいた。
つまりこの魔物は、ビアンカが自ら受け入れるようにしたいのだ。
だからこそ、こうしてまたリュカを使って脅しをかけようとしているのだ。
だが、それも少し違う気がした。そうなら、別にリュカでなくともいいのだ。
タバサがいる。
レックスは無事に帰せたが、人質はまだいるのだ。
タバサの命で脅迫すれば、ビアンカは屈せざるを得ないのだ。
なのに、なぜかそれはしなかった。
わざわざリュカが来るまで待っていたように思える。
ジャミが重ねた問うた。

「どうなんだ。俺に従うのか?」
「し……従う、わ……」

他に選択肢はなかった。
これでいよいよ本当に犯される。
ビアンカはハッとした。
まさかこの魔物は、このままリュカの前で、夫の目の前で犯そうというのではないだろうか。
その考えに至ってビアンカはぞっとした。
ジャミに裸身を晒している姿を見せるだけでも発狂しそうなほどに恥ずかしいのに、このままレイプされるところまで見られたら生きていけない。
もし本気でジャミがそうする気なら、ビアンカは舌を噛んで命を絶つ決意をした。
死ぬ気になったからこそ、ビアンカはキッとジャミを睨みつけることが出来た。
彼女本来の気丈さが顔を出す。

「何をする気なの」

少し語尾が震えているが、それでも強気にそう言えた。
ジャミはそんなビアンカを見て、大層愉しそうに笑った。

「ふふん、おまえらしい気の強さが出てきたな」
「大きなお世話よ。さっさと言いなさい。あ、その前にリュカを助けて。ここから逃がしてよ」
「……随分と強気になってきたな。ま、いい。おいおい、そんな顔をするな。別に大したことをしろと言ってるわけではない」
「……」

白々しいとビアンカは思った。
ツバでも吐きかけてやりたかった。
しかし、ジャミは意外なことを口にした。

「ロープを解いてやる。だが、暴れるな。そのままの姿勢でいるんだ」
「……解く?」
「ああ、そうだ。だが逃げるな、というか動くな。条件はそれだけだ。それが守れれば亭主は生かして帰してやろう」
「私も……?」
「おっと、そこまで欲張るな」

ジャミは大笑いした。
もうビアンカは平常心を取り戻している。
やはりこの女の精神力はなかなか大した物だ。

「リュカの命だけだ。しかしそれもおまえが俺の約束を守ればの話だ。ほら、動くなよ」
「あ……」

手首のロープが外れた。
同時に足首の拘束も解けている。
ビアンカは少し痛そうにそこを擦った。
ジャミが顎をしゃくったので、仕方なく両脚を拡げた。
手の方は上へ上げず、後ろに突いて姿勢を支えることにした。

「……見ないで」

予想通り、ジャミが目の前に回り込んでビアンカの股間を凝視している。
いやらしい視線が媚肉に注がれているのがわかる。
背筋がぞっとするほどおぞましかった。
思わず脚を閉じそうになると、ジャミの声が冷たく響く。

「動くなよ、そのままだ」
「……」
「いいか、これから何があってもその姿勢を崩すな。それが出来れば亭主とガキを返してやる」
「タバサも……?」
「ああ、そうだ。だが、それもこれもおまえが……」
「わかったわよ」

ビアンカは少し安堵した。
リュカだけでなく、まだ人質に取られているタバサも返してくれるという。
ホントかどうかはわからないが、よくよく考えればタバサを人質にしていてもあまり意味はないのだ。
人質ならビアンカひとりで充分だろうし、もしかしたらタバサの世話を持て余しているのかも知れない。
だったらあまりジャミを刺激せず、おとなしくしていた方がいいかも知れない。
辱められるのだろうが、どうせ覚悟はしていたことだ。
見返りでリュカとタバサが助かるのならそれでもいい。
そう思っていても、ビアンカの脚が僅かに震えているのはやむを得ないだろう。

「それでいい。よし、今度は亭主の方だ」
「え……?」

ビアンカは思わずジャミを見返したが、その魔物は倒れ込んでいるリュカを乱暴に起こしている。
倒れ伏しているジャミの髪を掴むと、その顔を持ち上げた。

「いつまでへばってやがる。さっさと起きろ」
「う……」
「この身の程知らずめが。魔物と人間の力の差を思い知ったろう」
「……」

リュカは、汗と埃、そして血の滲んだ顔でジャミを睨みつけた。
しかし、もう身体があまり言うことを聞かない。
倒すどころではなく、起き上がるのさえやっとだ。
そのリュカの耳元でジャミが小声で囁いた。

「いいか、よく聞け。これから俺の言うことを聞けば、このまま生かして帰してやる。あのタバサとかいうやかましいガキも一緒にな」
「……本当か」
「ああ本当だ。ただ、女房は置いていってもらうぜ」
「だめだ! ビアンカも……ぐあっ!」

そこまで言うと、ジャミの手がリュカの頬を強かに弾いた。
平手のつもりだったが何しろ蹄だから、拳で殴られたのと変わらない。
ビアンカの「何するの! リュカに酷いことしないで!」という叫び声が聞こえる。
しかし、ベッドから降りて止めようとはしなかった。
それどころか、大股開きの姿勢を崩していない。
ビアンカとしては死ぬ気でジャミの命令を守っているのだが、リュカはそれを知らない。
もう拘束を解かれているのに、叫ぶだけで動こうとしない妻を怪訝に思いながらも、リュカはジャミから視線を外さなかった。
ジャミが言った。

「もし女房が恋しかったら、また出直せ。そしてまたここへ辿り着ければ、その時こそあの女を……ビアンカを返してやる」
「本当だな」
「ああ、本当だ。だから今回はガキだけで我慢しろ、いいな」
「……」

どういうつもりなのかわからなかった。
三人まとめて攫っておいて、前回取り戻しに来るとレックスだけ、今回はタバサだけ返すという。
そしてビアンカが欲しければもう一度来いというのだ。
遊んでいるとしか思えなかった。
しかし、ここは従うしかない。
今のリュカでは到底ジャミには勝てないし、ここで死んでしまっては意味がないのだ。
リュカは屈辱を噛みしめて言った。

「……何をすればいいんだ」
「なに、簡単なことだ。おまえたちがいつもやっていたことをしてもらう」
「なに?」

ジャミがリュカの顔を覗き込みながらにやにやして言った。

「ビアンカをいかせろ」
「……どういうことだ」
「わからんのか? おまえの女房に気をやらせろといっている」
「な、何だと!? きさま、何を言っている!」
「興奮するな。俺がやるんじゃなくておまえがやれと言ってるんだ。それならいいだろうが。それともおまえの前で俺がビアンカを嬲ってもいいのか?」
「ふ、ふざけるな! そんなことさせんぞ!」
「だったらおまえがやれ。そうすればガキもおまえも助かるんだぞ」
「……」

リュカは怒りで震えていた。
抵抗は無駄と知りつつも、右手がソードの柄を握っていた。
その様子をバカにしたように見ながらジャミが言う。

「別に抱かなくてもいい。そうだな、手と口でビアンカのマンコを愛撫してやれ。それで見事にいかせることが出来れば……」
「わ、わかった! もう言うな!」

拒否は自分とタバサの死を意味する。
もちろんビアンカも同じ運命になるだろう。
他の男──それも魔物の見ている前で、ビアンカを絶頂させねばならない。
ビアンカが気をやった姿をジャミに見せなければならないのだ。
憤怒と屈辱と無力感がスクラムを組んでリュカの心を踏みにじる。
それでもしなければならない。

自尊心が傷つくだけなら、いくらでも我慢しよう。
しかし妻の心にも一方ならぬ傷を負わせることになるだろう。
手に手を取って無事に帰ってから、事情を話して誠心誠意謝罪する。
それでビアンカは許してくれるだろうか。
どちらにしても、リュカとビアンカの双方に癒しがたいトラウマとなることは確実だった。

「やれ。いいか、女房に何を言われても応じるなよ。おまえは一切しゃべってはならん。いいな」
「……」

ジャミに引き起こされ、リュカはふらふらとビアンカに近づく。
ビアンカは、ジャミとリュカとの間にどんな会話が交わされ、何が決まったのか知らない。
近づいてくる夫の姿に異様なものを感じて後じさった。

「あ、あなた……リュカ……どうしたの?」
「……」

声を掛けてやりたい。
励ましてあげたいし、力づけてあげたい。
それ以上に、あの魔物に理不尽な命令をされ、それに従わざるを得ないことを伝えたかった。
一緒になってこの試練を乗り越えてくれるよう頼みたかった。
なのにジャミからは言葉を発することを禁じられていた。
事情のわからぬ妻の身体を弄び、無理矢理にでもオルガスムスに達するよう仕向けねばならないのだ。

(ビアンカ……、ごめん)

リュカは心の中で何度も妻に詫びながら、彼女の股間の前に跪いた。

「な、なにっ!? あなた、どうしたの!?」

ビアンカがつい脚を閉じそうになると、ジャミが「ビアンカ!」と叫んでそれを咎める。
ビアンカの美しい脚がぴたりと止まった。
股間を拡げ、それを愛するリュカの前に晒している。
結婚して2年、毎日のように愛し合った間柄なのだから、これくらいはどうということはない。
いや、恥ずかしかったのだが、リュカが望んでいると思えばこそ耐えられた。
しかし今は状況が違いすぎる。
魔物が見ている前で夫がそこを覗き込んでいるのだ。
リュカの行動とは思えなかった。
リュカの手がビアンカの脚にかかる。
顔が近づいてきた。
ビアンカは今、夫が何をしようとしているのか、はっきりと覚った。

「リュ、リュカ……まさか……」
「……」

リュカは口をつぐんでいる。
言いたくとも言えず、ビアンカに謝り、理解を求めたくとも出来ないのだ。
夫の尋常でない様子に脅え、ビアンカは脚を閉じようとするものの、リュカの手が膝をしっかりと押さえ込んでいた。
その様子を、リュカの真後ろからジャミがじっと見つめている。

「リュカ! あなた、バカなことはやめて……」

おののいてそう叫び、逃げようと後じさったビアンカの目に、それを咎めるようなジャミの顔が映る。
その表情は「動くな。約束を忘れるな」と言っていた。
ビアンカの動きが止まった。
それを合図に、リュカの手が妻の手に伸びる。
顔を背けてはいるものの、辛そうに表情が歪んでいるのがわかる。

「リュカ……あっ……」

リュカは左手でビアンカの右膝を押さえ、その股間を開かせている。
それと同時に右手は、剥き出しになっていた妻の乳房に触れていた。

「だ、だめ、リュカ……あっ……!」

魔物に見物されている前で、強引に夫の愛撫を受けなければならない。
しかも自分は動くことは許されない。
そんな異様な状況に、ビアンカの白い肌にはうっすらと冷や汗が染み出している。
その少し湿り気を帯びてしっとりとした乳房を、リュカはそっと揉みほぐしてきた。

「んっ……い、いや、リュカ……こ、こんなところで……」

夫の愛撫を拒むように、ビアンカは身を捩る。
過去、そんなことはなかった。
ふざけて拒否してみせたり、希に強引に迫ってくる夫を窘める意味でしたことはあったが、本気で抗ったことなどなかった。
リュカによる望まぬ愛撫という、あり得ない状況。
それでもビアンカの肉体を知り尽くしたリュカの愛撫は、的確にポイントを突いてくる。
リュカとしてもおざなりにするわけにはいかない。
ビアンカをいかせなければ、自分はもとよりタバサの命がない。

「リュカっ! あっ……そ、そこだめ……あ……」

リュカの指が、乳房の尖端にある突起を刺激すると、ビアンカはたまらず声を漏らし始めた。
面白そうにそれを見ながらジャミが合いの手を入れる。

「ほほう、随分と艶めかしい声も出せるじゃないか。さすがに亭主はツボを知ってるってことか」
「う、うるさい、だまりなさいっ……あっ……」
「減らず口は変わらんな。俺の時でも、そういう色っぽい声を出すようになってくれよ」
「だ、黙りなさいって言ってるのよっ……あっ……く……くうっ!」

リュカの肩がびくりと震えた。
突然、リュカの手の動きが活発になる。
それまでは遠慮がちに、申し訳なさそうに義務感でそうしていたように見えた愛撫が、俄然積極的なものに変わっていく。
今のジャミの言葉にショックを受けたらしい。
やはり妻はこのモンスターに犯されたのか。
そう思うと、頭の中が焦げ付きそうなほどの悔しさと妬心が込み上げてくる。
愛して止まなかったこの白い身体を、あの魔物が穢したのか。
嫉妬と焦燥で、リュカの理性が薄れ、今までとは一転して妻の裸身を念入りに愛撫していく。
ビアンカは俺の妻だ、この身体は俺のものだ。その思いが行動に表れていた。

「リュカ……ああ、お願い……し、しないで……あっ……あ……」

リュカがいじくっている乳首は早くも硬くしこってきていた。
ピンと指で弾かれると、身体をわななかせ、声が出るのが抑えきれなくなっている。
感じるたびに、ビアンカはシーツに置いた手をぎゅっと握りしめてその快楽に耐えていた。

リュカは、妻がだんだんと反応してきたことを知り、なおも乳首を責め、さらに強弱の変化をつけながら、柔らかく膨らんだ乳房に指を食い込ませている。
指先が乳首を乳房に押し込むような仕草を見せると、そのたびにビアンカの裸身がぴくりと反応し、顎を反らせるようになっていた。

「やっ……もう……んああっ……」

普段なら、優しい言葉を掛けながら愛撫してくれるリュカが、黙りこくって身体をまさぐってくる。
不審と不安を感じるビアンカだったが、よく考えればこんな状況で愛の言葉もないだろう。
きっとリュカも恥を忍んで屈辱的な行為をさせられているのだ。
ならば妻たる自分も耐えなければと思うのだが、この2年間、たっぷりと夫の愛撫を受け続け、開発されてきた肉体はそうはいかなかった。
リュカの手の動きに対して素直に反応し、その快感をビアンカの脳髄と子宮に伝えてくる。
いけないと思いつつも、ビアンカは自分のそこが濡れてきていることを知った。

「ああっ……!」

乳首を捏ねるように愛撫されると、ビアンカは一層に激しい声で喘いだ。
たっぷりと量感のある見事な乳房が、リュカの手で揉みしだかれ、その指の動きに合わせて淫らに形を変えていく。
どんどんと高まる快楽に戸惑い、ビアンカは必死に夫を止めた。

「ひっ、あうっ……だめ、あなた、あっ……ああ、そんなこと……ああ……」

胸をいじくる指に力が籠もり、少し強い愛撫が加えられると、ビアンカの喘ぎもそれに併せて大きくなる。
リュカはあまりそうしたことはなかったが、どうやら強く刺激される方が感じるようだ。
すっかり汗ばんできた乳房は、リュカの手のひらと指にしっとりと馴染み、吸いつくような感触になっている。
艶やかな肌に包まれた肉塊はたぷたぷと揉み込まれ、その上にある乳首がびくびくと震えながらぷくりと膨れあがっていた。

「随分と気持ち良さそうじゃないか、え? 俺の見ている前でよくもそんな……」
「うるさいのよっ、あっ……も、元はと言えばあんたが、ああっ……!」

ビアンカは非難めいた目つきでジャミを睨むのだが、すぐにまた身を捩り、喘いでしまう。
そんな時でもリュカの愛撫が止まないのだ。
恐らくは、さっきリュカを引き摺り起こした時、ジャミがそう指示したのだろう。
であれば、彼にはどうにもなるまい。
ビアンカとタバサの命を持ち出されれば、従わざるを得ないのだ。

「あああ、いや……だめよ、そんな……んっ……」

リュカの手が左右の乳房を揉み、捏ねるたびに美しい妻の口からは甘い吐息と喘ぎが漏れ続けた。
それだけでなく、徐々に新たな動きが加わってくる。
焦れったそうに、あるいはもどかしそうに脚を捩り合わせるような仕草を見せてきたのだ。
ビアンカの官能が昂ぶり始め、更なる刺激を求めているのはジャミのもわかった。

「なんだ、その動きは。もっと他のところもいじって欲しいのか?」
「だ、誰がそんな……! いやらしいことばっかり言わないで! んあ……あ……」
「否定する声が色っぽいぜ、くく。でも身体は正直なもんだ。どうだリュカ。おまえの女房のマンコは濡れてないか?」
「……」

リュカは悔しそうに、小さく頷いた。
ビアンカの脚に掛けた手が震えている。
耐え難いほどの屈辱だった。
タバサがいなければ、差し違えてでもジャミに挑んだだろう。
そのジャミは、さらに非道な命令をリュカに下した。

「おっぱいはもういい。次はお待ちかねのオマンコだ」
「ひっ、いやっ……!」
「くくっ、「いやよいやよも好きのうち」ってか。リュカ、ビアンカのマンコを責めろ。おまえが触りたければ、おっぱいもいじっていいがな」
「……」
「いやあ!」

身を捩って反転して逃げようとするビアンカをリュカが押さえ込む。

「あっ!」

驚くビアンカをまた仰向けにして、ぐいとその両脚を開かせた。

「やめて、あなた! どうしちゃったの!? わ、私は……」
「ビアンカ」

ジャミの声が冷たく強く響く。
ビアンカはびくりと震え、そして動きを止めた。
ここで抵抗しても、結局は同じことをさせられる。
挙げ句、「約束を破った」として、リュカとタバサが殺されるかも知れないのだ。
愛するリュカの愛撫なのに、いやでいやでたまらない。
この、あり得ない二律背反にビアンカの心は激しくかき乱されていく。
気が狂いそうなほどに恥ずかしくつらいのに、受け入れねばならぬ運命を呪った。
ジャミの狙いはここにあるのかも知れない。
当然だが、ビアンカはジャミに犯されかかっても性的な反応はしなかった。
ならばリュカに愛撫させてでも、反応するところを見てやろうというのだ。

「あ……」

リュカの手が乳房からすっと外れ、そのまま滑らかな腹部を撫でつつ、下腹部に降っていく。
指先が恥毛に触れると、たまりかねたように手を伸ばし、リュカの腕を食い止めた。
しかしジャミの視線を感じてしまうと、夫の手を掴む腕の力が抜けていく。
リュカはビアンカの手を振りほどくようにして、柔らかな繁みをなぞり、かき分けるようにして秘裂に触れていく。
もうビアンカは、僅かに身体を捩るだけで抗おうとはしなかった。
それを見て、リュカもビアンカは覚悟を決めてくれたと思い、改めて妻の性器を指で刺激する。

「んっ……く……」

ビアンカの気の強そうな眉が寄り、苦悶の表情を示している。

「んっ、あ……あ……」

媚肉の割れ目をいじくられ、ビアンカは表情を歪めながら微かに喘いでいる。
リュカの方は、もう愛撫に没頭することにしたらしく、いつものように妻を愛していく。
割れ目に指を沿わせていたかと思うと、今度はそこをそっと開かせるように擦り始めた。

「だ、だめ……あっ……」
「ビアンカ、リュカがやりやすいように、もっと脚を拡げてやれ」
「そんな……」
「やれ」
「……」

ビアンカは美貌を俯かせ、腰を少し前にずらした。
肘をシーツに突き、夫に股間を突きつけるような格好になる。
言われたように、両脚は大きく割っていた。

「……」

リュカは、妻のそこが濡れているのを目で確認する。
同時に、彼に鼻腔にビアンカの妖しくも甘い匂いが薫ってきた。
少し拡げられたスリットからは、少しではあるが蜜が滲み、女独特の匂いが漂ってきていた。

「ああ!」

リュカの指は、ためらいながらも妻の媚肉を愛撫する。
割り開かれた媚肉の合わせ目の上にある肉芽を捉えた。
途端にビアンカの腰がびくりと大きく跳ね、その口から甲高い声が漏れ出た。
リュカはクリトリスの上から押し込み、そこをくりくりと潰すように指を回転させた。
滲んでいた蜜を指で掬い取り、そこに擦り込むように揉んだ。

「んあっ、そこっ……リュカぁっ……くうっ……あっ……」

恥ずかしげに小さくなっていたクリトリスは、自らの愛液にまみれ、指先に翻弄されているうちに、びくびくと自己主張を始めて来た。
包皮がつるりと剥け、ぷくんと小さく丸い顔を覗かせて頭を尖らせている。
乳首同様、ここも極めて感じやすいようだ。
普段のリュカなら、ここまで濡らしてしまえば、あとは挿入してセックスに突入してしまう。
敏感なビアンカは、それだけでも充分に気をやったのである。

しかし今回はセックスまではしたくなかった。
ジャミの前でそこまでする気はない。
妻も自分も、この上ない恥辱にまみれることになるのだ。
ジャミも「セックスしろ」とまでは言わなかった。ならば、
言葉通りにビアンカをいかせれば許してもらえるのではないか。
だったらこんなことは早く終わらせた方がお互いのためだ。
そう思ったリュカは、さらにビアンカの媚肉を愛撫していく。
前戯だけでビアンカをいかせたことはなかったが、彼女の鋭敏な性感であれば可能だろう。
ビアンカにしても、ジャミの前でリュカに抱かれる──いや「犯される」と言った方がいいだろう──よりは、ペッティングで
いってしまった方がマシに違いない。
リュカはそう考えをまとめると、ビアンカへの愛撫に熱を上げていく。

戸惑ったのはビアンカである。
それまでは遠慮がちだった夫の愛撫が、いきなり積極的になったのだ。
まさか本気でリュカは、ジャミの前で自分を嬲るつもりなのだろうか。
ビアンカが動揺する中、リュカはその手を休めなかった。

「リュカ、だめ、やめて! もう、こんなこと……ああっ、だめっ、ひぃっ!」

尖り、硬くなり、そして感じやすくなっていく肉芽を、リュカは指で執拗に擦り、撫でていく。
愛液はもう滲むような段階ではなく、垂れてきていた。
クリトリスを指で押さえ、軽く弾き、そしてまたこねくり回す。

「んああっっ……!」

ビアンカが仰け反る。
同時に、膣口からぴゅっと軽く蜜が跳ね出てきた。
漏れ出る愛液を指になすりつけると、それをまたクリトリスにまぶしていく。
すると新たな蜜がまた溢れ、リュカはそれをまた掬い取って肉芽に塗り込んでいった。

「やあっ……んあっ……あっ……んん……あ……くうっ……」

ジャミを意識したのか、もう「やめて」とは言わず、ただひたすらリュカの愛撫に反応し続けていた。
熱い吐息を喘ぎを交互に吐き出し、悩ましげにその美貌を苦悶させている。
羞恥と恥辱は相変わらず強く感じているものの、ややもするとそれが新たな快楽のもととなってビアンカに染みこんできた。
いけないと思う心を疼く肉欲が飲み込んでいく。
ジャミに見られているということも頭から薄れていく。
腰が勝手に持ち上がってしまうのを止められない。

「……」

そこでリュカは息を入れた。
ビアンカは明らかにリュカの愛撫に反応してきている。
リュカの方も妻の媚態にいやでも反応してきてしまい、ズボンの股間が痛いほどに勃起してきていた。
リュカは目を瞑って軽く頭を振り、欲情を押し殺して、義務的に妻を絶頂まで導こうとする。
その行為に限りない空しさを感じる。

しかし、目を開けて改めて妻の肢体を見ると、思わず息を飲んでしまう。
見かけよりは遥かにグラマラスでスタイルの良さを誇る身体。
清楚な見た目と裏腹に、今のビアンカの媚肉は、ロウソクの僅かな灯りに反射して、ぬらぬらと淫靡に光っていた。
もう2年に渡り、何度もリュカを迎え入れているはずなのに、そこは「処女」だと言われても信じてしまいそうな、慎ましい佇まいを見せていた。

そんな場合ではないと思っているのに、リュカは顔を近づけてビアンカのそこを覗き見る。
今まで、妻の身体を見ない日はほとんどなかったのだから無理もなかった。
夫にまでそこを凝視され、ビアンカは頬を一層に赤く染めて恥じらった。

「や……、見ないで、そんなに……あ、いや!」

リュカはものも言わずに妻の媚肉にむしゃぶりついた。
反応しつつも羞じらい、それでも愛液の分泌が止まらないビアンカにたまらなく欲情してしまったのである。
ビアンカは火照った肌の胸を仰け反らせるようにして弓なりになり、喘ぐ。
リュカはビアンカの股間に顔を埋め、そこに舌を這わせていた。
もう妻は性の六合目、七合目あたりには達している。
このまま責め続ければ、たまらずいってしまうだろう。
それが自分でもわかるのか、ビアンカは喘ぎつつも必死になって夫に思いとどまるよう告げる。

「ああっ……だめ、だめだよリュカ、くっ……そ、そこだめっ……ああっ、そ、そんなに舐めちゃ……いっ……」

リュカの舌が膣口を抉り、媚肉全体を舐めてくると、もう身体の奥がジンジンしてたまらなくなってくる。
いつしかビアンカの腕が伸び、リュカの頭を押さえ込んでいる。
しかし、押さえつけて止めさせようとしたのは最初のうちだけであり、今ではそこから離さないように自らの股間に押しつけていた。

「んああっ、だめえっ……あ、あ、あはあっ……!」

リュカはビアンカの媚肉に吸い寄せられるように舌を這わせ、貪るように吸った。
ビアンカは息を荒げ、喘ぎ、指を立ててリュカの頭を掴んでいる。
夫の舌が這い回り、唇が吸ってくる淫らな音が響き、ビアンカの羞恥と恥辱はぐんぐんと上昇していく。
どうにもじっとしていたれず、腰は勝手にビクビクと痙攣し、身体はうねるようにくねっていた。

「んひっ! だめえ!」

突如、ビアンカが鋭い悲鳴を上げた。
リュカの舌がクリトリスを捉え、器用に包皮を剥き挙げて舌先で転がし始めたのだ。
淡く色づいていた膣口の奥から、どろっと濃い蜜が溢れ出す。
リュカはそれを何度も舐め取ったが、後から後から愛液はこんこんと湧いてくる。

「やっはあっ……だめ、あ、んああっ……や、やめ……ひぃっ!」

責めながらリュカは、妻がいつも以上に感じやすくなっているのを実感していた。
こんなアブノーマルな状況で普段より反応することに驚きつつも、自分も同じだと思った。
もうリュカのペニスはズボンを突き破りそうなほどに屹立し、その部分が濡れてくるほどにカウパーを放出していたのだ。
したい、妻のここに入れたい。
そうまで思うようになってきたが、さすがにそれだけは思いとどまった。
代用として指を挿入することにし、舌とともに指を使ってビアンカのそこを犯していく。
指でくりくりと肉芽の根元を絞るように摘み、口に含んで舌でねぶる。
ビアンカの嬌声があたりに響いた。

「あんっ、だめっ……くっ……リュカ、だめっ……そ、そんなにしたら私ぃっ……ああっ……」

ビアンカは腰を持ち上げ、リュカの顔に押しつけていく。
両手はしっかりと彼の後頭部を抱え持っている。
ビアンカに力一杯押しつけられ、呼吸が苦しくなりつつも、リュカは愛撫を続行した。
妻の肉体はよくわかっている。
どこをどうすればどう反応し、感じていくのかはリュカがいちばん知っているのだ。
もう彼の脳裏には、ジャミに命令されてやっている、あるいは見られていることはなくなっている。
妻の喘ぎ、悶える痴態に興奮し、ますますビアンカを感じさせることに夢中になっていた。

妻をいかせたい。
しかしペニスは入れられない。
代用品の指を膣に挿入した。

「んはっ!」

ビアンカの裸身がギクンと跳ねる。
リュカの指が一本、ビアンカの膣に押し込まれる。
つぷんと愛らしい音がして、媚肉からぴゅっと愛液が噴き出た。
相変わらずビアンカのそこは狭くきつかった。
指一本でこうなのだから、かなりの膣圧らしい。
しかしリュカは知っていた。
いかにきつくて狭くても、この絶品の壷は太い男根でも充分に受け入れてしまうのだ。

「んああ……ああ、入ってくる……リュカの指が……ああ、だめ……んんっ……」

処女と見紛うほどにきつく閉じていたはずのビアンカのそこに、リュカの指がぬるりと埋め込まれていく。
リュカはすぐに指を二本にし、そして三本まとめてビアンカの膣を犯した。

「や……あ……こんな……ああ……ああ、だめっ、動かさないでリュカぁっっ!」

リュカの束ねられた人差し指、中指、薬指が、ビアンカの膣へぐちゅぐちゅと抜き差しされていく。
同時に舌がクリトリスを舐めしゃぶる。
同時に2箇所を責められ、ビアンカはひぃひぃ喘いで尻をうねらせた。
艶々の肌には汗が浮き、玉を作り、それがつうっと滑り落ちていく。
ビアンカの膣内はリュカも驚くほどに熱かった。
そして律動させている指に絡みつき、締め付けてくる。

「だめ、そんなっ……あ、指しないで、ああ、そんなに動かしちゃだめえっ!」

ビアンカの抗いでリュカの手が止まることはなかった。
彼女の肉体が火照り、ぎりぎりのところまでいっていることはわかっている。
身体が跳ねるほどに反応し、息も絶え絶えに快楽の声を上げているのだ。
指を入れている媚肉は、今にもいきそうなほどにビクビクと蠢いていた。
本当にビアンカは切羽詰まってきたらしい。
声が上擦り、腰が宙に浮いている。

「くううっ……お願い、リュカ、もうやめてぇっ……だめだめっ、あ、あっ……も、もうっ……!」

ビアンカの腰が引き攣ったように痙攣する。
リュカはずぶっと指の根元まで膣奥に押し込みつつ、唇にくわえたクリトリスを思い切り強く吸い上げた。

「んはああああっっ……!!」

その瞬間、ビアンカは悲鳴のような絶叫を挙げ、媚肉からまた愛液を噴き出させた。
ぐぐっと弓なりに裸身を仰け反らせ、そのままぶるぶると痙攣し、そのままドッとベッドに落ちた。
腿や尻がビクビクと小さく震え、時折ビクッと軽く跳ね上がっていた。
いったらしい。
リュカは安堵したように、そして罪悪感に満ちた表情の顔を上げた。
ジャミが上から覗き込んでいる。

「ほほう、いったらしいな。さすがに亭主だけのことはある」
「……」

反論する気もないのか、リュカは呆然とした顔で妻を眺めている。
ジャミは、そのビアンカにも声を掛けた。

「どうだ、ビアンカ。気持ち良かったのか? 派手にいきやがって」
「あ……はあ……はあ……はあ……」
「いったんだろ、え? 俺の前で亭主に舐められてよ」
「い……ってなんか……ないわ……」
「ほう。まだ気をやってないのか」
「あ、当たり前よ……だ、誰があんたの前で……」

すっかり蕩けたような顔のまま、ビアンカは気丈にもそう言い放った。
いかされたのは事実だが、認めたくはなかった。
こんなけだものの目の前で恥ずかしい姿を晒したとは思いたくなかったのだ。
ジャミがにやりとする。

「……だ、そうだ。まだおまえの女房はいってないとさ。じゃあ約束はなかったことに……」
「ま、待て!」

リュカは慌てて振り返った。
ここで反古にされたら、妻とともに恥をかいた意味がない。
ビアンカが絶頂したのは確かだが、妻はそれを認めたくないのだろう。
しかし、明らかにいかせたことをわからせないとジャミは納得しそうもない。
リュカは妻を見下ろして力なく言った。

「もう一度やらせてくれ」
「ま、待って」

驚いたのはビアンカである。
「いってない」と主張したのは確かだが、自分が絶頂したことは夫にはわかっているはずだ。
そして多分、ジャミにもそれはわかっている。
だがビアンカが意地でそれを認めたくないと言っているのも知った上で、さらにいたぶろうとしているだけなのだ。
ビアンカは続けて恥をかくつもりはなかった。
それはリュカにもわかるだろうに、なぜ夫はそんなことを言うのだろう。
リュカが虚ろな顔で、またビアンカの肢体に手を掛ける。ビアンカは絶叫した。

「やめてリュカ! バカなことはしないで! あっ、くうんっ……」

いかされたばかりの敏感すぎる膣に、またリュカの指が入り込んできた。
もういやなのに、いったばかりの膣襞はまたしてもあっさりと異物を迎え入れ、官能が疼き始めてくる。
リュカは一度指を抜いてからビアンカの腰の下に手を回し、少し持ち上げた。
そして手のひらを上にして、ビアンカの膣に中指を再び挿入した。

「あう……」

ビアンカの裸身が小さく震える。
そしてもどかしげに腰がうねった。
まるで「動かして」「もっと太いので」と言っているかのようだ。
リュカはそのまま挿入した中指を軽く曲げる。
第2関節が入ったあたりで、指の腹を使ってビアンカの膣内──お腹側──を軽く擦った。
ビアンカが脅えたように戸惑う。

「あ、あっ……リュカ、そこは……」

リュカの指に、少しざらりとしたような感触が伝わる。
ここだ。
さっきいったばかりのせいか、少しばかり盛り上がっているように感じる。
そこを指でぐっと圧迫する。
ビアンカの反応は激烈だった。

「くあっ……! そ、そこはあっ……!」

強烈な快感で、ビアンカは掴んでいた夫の腕に爪を立ててしまった。
リュカは、早くいかせてお互いに楽になりたい。
その一心で、妻の最大の性感帯であるGスポットを刺激したのだった。
結婚してから毎夜のように繰り返されるまぐわいの中で発見した、宝物のような官能ポイントだった。
初めてそこを見つけた時は、リュカはもちろんビアンカ自身も驚くほどの反応を見せ、
たちまち達してしまった。
以来、そこを責めるようにもなったのだが、あまりにも強烈でしかも早々にいってしまうため、かえって使いづらくもなっていた。
挿入前にここばかり刺激し、愛撫し続けると、ビアンカはそれだけで何度も気をやってしまい、挿入する頃にはぐったりしてしまって
反応が薄くなることもしばしばだったのだ。

だから、ビアンカがその気でもリュカの気分が乗らない時など、セックスしないで妻を満足させる時に利用するようになっていたのである。
リュカは鮮烈な反応を見せるビアンカを見ながら、Gスポットを指で押したり、押さえたまま小刻みに震わせたりもした。
そして、仕上げとばかりに、そこを円を描くようにぐりぐりっと少し強めに擦ってみた。
ビアンカはひとたまりもなかった。

「リュカだめっ……んはあっ、い、いく……いくっ!」

ビアンカの身体が激しく何度も跳ね、腰が宙を舞ってリュカの顔と手を弾き返した。
大きく仰け反った頭は枕に埋まり、両手はシーツが千切れそうなほどに握りしめていた。
脚がガクガクと震え、腹筋がビクビクと痙攣している。
そのまましばらく痙攣を続けると、どさっとベッドに裸身が落ちてきた。
媚肉からはびゅっ、びゅっと愛液が小さく噴き上がっており、足の指は屈まったままだ。
完全に絶頂したらしい。
それを見届けると、リュカは力なくと立ち上がり、うなだれたままジャミに向き直った。
「これでいいか」と言っているようだ。
ジャミはさも満足そうに頷いた。

「……見事なもんだ。さすがに亭主だな。くく、しっかしこの女、すげえいきっぷりだったな、え?」
「……」
「おまえにしても、ひさしぶりに女房の身体を味わって満足だったろうが。俺様に感謝しろよ」
「……そんなことより」
「ああ、わかってる。ガキは連れて行け」

ジャミがうるさそうに手を振ると、岩戸が開いてトロルが赤子を抱いてきた。
タバサだ。
それを奪い取るようにしてリュカは我が子を見下ろした。

「タバサ……」
「無事だよ。寝てるだけだ」
「……」

トロルが引き下がると、ジャミがそう言って大きな椅子に腰を下ろした。

「行け。また来るのなら来てもいいぜ。今度は俺に勝って見せろ。そうすればビアンカを返してやる」
「……」

リュカは黙ってジャミを見返した。
そしてズボンの違和感に気づく。
勃起していた陰茎は萎んでいた。
その代わり、ズボンの前がどろりとした液体でぬめっている。
ビアンカをいかせた時に、自分も思わず射精してしまったらしい。
情けなかった。
そして、妻を一瞥すると、振り切るように部屋から出て行った。

妻はまだ絶頂の余韻に酔ったままで、半ば失神したままだった。
性の陶酔に酔い、恍惚とした表情のままくたりとしていたビアンカは、また膝を持ち上げられ、またグイと大きく開脚された。

「……あ?」

ぼんやりとした意識のまま、虚ろな目が視力を取り戻していく。
すると、そこには既にリュカの姿はなく、ジャミが代わってビアンカの両脚を拡げていた。
途端に正気に戻ったビアンカが喉を鳴らして悲鳴を上げる。

「ひっ!」

「俺の前で派手にいったな。それにしても、見かけによらず随分と激しいんだな、おまえは」

ビアンカの顔が、羞恥と恥辱そして怒りでカッと赤く染まる。

「い、いってなんかないわよ! やっ、離して!」
「何が「いってなんかない」だ。あれだけでかい声で「いくっ」とか言ったくせによ」
「ウソっ! そんなのウソよ!」
「ウソじゃないさ。リュカのやつ、おまえをいかせただけでチンポ入れられなかったもんだから、可哀想に漏らしてたみたいだぜ」
「いやっ……! あ、リュカは!? リュカはどこよ! タバサは……」
「心配すんな。ちゃんと約束通り返してやったさ」
「……」

ビアンカの肩からすっと力が抜けた。
死ぬほどの恥辱だったが、それでも無意味ではなかったのだ。
この魔物が約束を破るかも知れないと恐れていたが、リュカもタバサも無事らしい。
ビアンカのホッとした顔を見ながら、ジャミは小馬鹿にしたように言った。

「それにしてもおまえの亭主、だらしねえったらないな」
「……リュカのこと、悪く言わないで」
「捨てられたのに、その相手を庇うことはねえだろう」
「捨てられた……ですって?」

ビアンカは唖然として化け物を見た。
ジャミはビアンカの揺れる乳房や濡れている媚肉を眺めながら言う。

「そうともよ。あの時もそうだったが、あいつはおまえじゃなくてガキを選んだのさ」
「え……」
「やつが、ガキじゃなくてビアンカ、おまえを返せと言われたら俺も迷ったところだったが、あいつはあっさりとガキを選んだのさ」
「当たり前……でしょう」

ビアンカはそう言ったが、少し言葉に力がない。

「親なのよ、私たちは。子供を守るのが第一に決まってるわ」
「そうかねえ。俺ならおまえを選ぶがね」
「……私たちは人間なのよ。あんたたちモンスターとは違うの」
「そうかね。ま、いい。じゃ、続きと行こうか」
「つ、続きって……」

思わずビアンカは身を引いたが、ジャミの手がしっかりと両脚を抱えていた。
動けなかった。

「おまえもいったらしいが、クンニだけじゃ物足りねえだろうよ。俺様がきちんと仕上げをしてやるからな」
「仕上げって……ひっ!」

ビアンカの美貌が青ざめた。
ジャミの下半身が目に入ったのだ。
あの時──最初に犯されかかった時、というか半ばレイプされた時は、動転していてあまり見なかったのだが、改めて見てみるとその巨大さに目眩がする。
挿入されかかった時も、本気であそこが裂けると思ったものだが、このサイズなら本当に裂けてしまっていても不思議はない。

ジャミは馬の魔物と人間のハーフらしい。
馬のペニスのサイズがかなり大きいのはビアンカも知っていた。
田舎暮らしだったから、馬も牛も身近だった。
年頃の時にも、仲の良い友達とふざけ半分で馬のそこを覗き込んだことがある。
あまりに大きくて、恥ずかしいながらも爆笑してしまった憶えがある。
同時に、あんなものを人間の女が受け入れたら死んでしまうのではないかと怖かったものだ。

ジャミは、その馬モンスターの血と身体を受け継いでいる。
そのせいなのだろうか、陰茎のサイズも人間離れしていた。
魔物のペニスは人間より長大なものが多いが、ジャミのようなホースタイプの魔物は特にその傾向が強かった。
あんなもので犯そうというのだろうか。
ビアンカの桜色の唇から血が引いて、青白くなっている。
人妻の身で夫以外の男に犯される。
それも相手は魔物だ。

(お、大きい……何て大きさなの!? あ、あんなもので私を……)

ビアンカの心情を知ってのことか、ジャミは自慢げにペニスを振って見せた。

「どうだ、でかいだろうが。これに比べれば人間の男など……いや、おまえの亭主などガキの包茎チンポよりもまだ小さいだろうな」
「いやっ、気持ち悪いっ! そんなもの見せないで!」
「そう言うなよ。見てくれは悪いが、硬くてでかくて具合はいいぜ。きっとおまえのマンコとの相性もいいさ」
「いやよ! 絶対にいや!」
「そうは言っても、おまえもそのまんまじゃ身体が火照って収まらんだろうに。チンポで慰めて欲しいだろう?」
「い、いいっ、いらないっ……そんなのいらないわ、しないで!」
「満足させてやるぜ、くくっ」
「い、いやああああっっ、やめてぇぇっっ!」

ビアンカは絞められようとしているニワトリのような絶叫を上げる。
否応なく押し倒され、その上に重たい魔物がのしかかってきた。
迸る欲望を湛えた肉棒は、ビアンカの媚肉へぴたりと照準を定めた。
ぐっと押しつけられると、粘った水音が聞こえた。

「い、いや、だめえ!」
「くく、怖いか? 怖がれ怖がれ。俺たちにとって、おまえら人間の脅える姿こそ最高の見物だ。ついでに、俺のものでよがっていくところまで見せてくれよ」
「ふざけないで! いやって言ってるのよ、あっ!」

ジャミはいたぶるように、ビアンカの媚肉の割れ目に亀頭の先を押しつけ、膣口をゆっくりと撫で、なぞっている。
またいやらしい蜜の音がした。
濡れ具合は充分だ。期待に高ぶるジャミに対し、ビアンカの方は青ざめている。
見た目の恐ろしさ、グロテスクさもさることながら、押しつけられた時の感触に身が震え
る。
(あ、熱い……灼けそうなくらい熱い……そ、それに……本当に硬い……こ、こんなものが中に入ってきたら……)

脅える若妻の姿にそそられたのか、ジャミはその膣に射るような目を向け、ペニスの先を割れ目に潜り込ませ、膣口に押し込もうとする。

「いやあっ!」

ビアンカが絶叫する。
処女を失った時でも、こんなに怖くはなかったと思う。
相手が愛するリュカだったこともあるし、リュカがビアンカに気を遣い、出来るだけ痛くないように心がけてくれてた。
また、彼が大事にしてくれていることがビアンカにもよくわかり、そのせいか、聞いていたほどの痛みはなかったのだ。

だが今回は、もう処女ではない上に、2年以上も夫と閨を共にしてきたにも関わらず、セックスに対して非常な恐怖を覚えていた。
リュカのクンニによって気をやってしまい、そこはぐっしょりと濡れていたのだが、さすがに恐怖と緊張からか、多少愛液の分泌が減っているようだ。
もちろん、そんなことを気にするジャミではない。
悲鳴を上げるビアンカに構わず、腰を勧める。
ペニスが媚肉を割り、膣口に頭を潜り込ませようとすると、途端にビアンカの裸身がびくりと震え、きゅっとそこを締めてしまう。

ジャミは鼻を鳴らした。
このまま無理にやってしまってもいいのだが、ヘタをすると膣を引き裂きかねない。
それほどに彼の逸物は巨大なのだ。
ジャミは過去に、何人かの女のそこを使い物にならなくしたことがある。
今回だけはそんなことにしたくはなかった。

「力を抜け。そんなに力んでいたらかえって痛いぞ」
「だ、だからいやなのよ、入れないで!」
「何を今さら。この状況で引っ込みがつくか。素直にやらせないなら、おまえのマンコを引き裂いてくれるぞ」
「ひっ!」

その言葉には真実味があった。
何しろこのサイズである。ビアンカがあくまで拒絶し、そこへ無理にジャミが挿入しようものなら、本当に裂けてしまうかも知れなかった。
といって、まさか化け物のペニスを受け入れるわけにもいかない。
強気がビアンカが、目尻に涙を浮かべて哀願してきた。

「お願い……しないで」
「……」
「な、何でもする……何でもするから、それだけは許して」

今ではもう許しを乞うしかなかった。
リュカは子供を連れて戻ってしまった。
それはビアンカが望んだことでもあるのだが、いざとなるとリュカがいないことに悔いていた。
あり得ないことだが、タバサではなく自分を選んでくれたなら、こんなことはなかったろうに。

タバサの命には替えられない。
それはわかる。
しかし、そんな理屈で割り切れないのが女心なのかも知れなかった。
ジャミが厳かに答えた。

「だめだ。俺はおまえを絶対にものにする」
「そんな……」
「セックスだけは必ずするからな。その代わり、他のことは望まん」
「え……?」

ジャミがにやっとして言った。

「今日からおまえの仕事は、俺に犯されることだけだ。それだけしていれば、何不自由なく生かしてやる」
「なにが何不自由なくよ! だったら帰してよ!」
「ああ、いいとも。城に帰っても俺が呼び出したらここへ来て俺に抱かれるのならな」
「バカッ! そんなことあるわけないでしょ、絶対に!」
「だったら、ここから出られないのはしようがないだろう」
「で、でも……」
「おしゃべりはここまでだ。あとはスキンシップとやらを愉しもうぜ」
「……」
「まだ力が入ってるぞ。マンコ引き裂かれたいのか? 力を抜け」
「……」

ビアンカは下唇を噛みながら、悔しさと恐怖を同時に味わっている。
どうにもならなかった。いやでいやで仕方がなかったが、身体からゆっくり弛緩させた。
ビアンカの裸身が緩んだのを見て取ると、ジャミは腰を送り始めた。

「ん……んくっ……」

亀頭の先が膣口にめり込んだ。
どれほどの衝撃と苦痛が来るのか、ビアンカは脅えてシーツをぎゅっと強み握りしめていた。

「んっ……」

ほんのちょっとずつしか進んでいないが、僅かでも肉棒が動くたびに、ビアンカは鼻や口から苦鳴を漏らしている。
無理もなかった。
夫のリュカでさえ驚くほどの膣が狭いのだ。
そこに文字通り馬並みのものが入ろうとしているのだ。
痛くないはずがない。
ジャミのペニスがビアンカの肉と粘膜を押し広げ、ねじ込まれていく。

「あ……ああっ!」

初めて犯された時に感じたあの猛烈な圧迫感が蘇る。
まだ入り口を僅かに埋めただけだというのに息が止まる。

「はっ……はうっ……く……っっ……んん〜〜っ……!」

とてもするりとは入っていかない。
進むたびにミシミシと軋み、粘膜がみちみちと鳴っている。
仰向けになっても潰れない乳房がわなないている。
腹筋が浮き、びくびくと痙攣していた。

「あ、くっ……も……だめっ……そ、それ以上入れちゃ……あうっ……」

そのきつさと苦痛に、ビアンカの肢体が引き攣る。
シーツを掴んだ手は、それを引き裂かんばかりに力が入っていた。
指が白くなるほどだ。

苦悶するビアンカの美貌をむしろ愉しむかのように、ジャミは挿入を続けていく。
凄まじい圧迫感のためか、ビアンカは吊り上げられた魚のように口をパクパクさせて必死に呼吸しようとしている。
未だかつて感じたことのないほどに媚肉が押し広げられていく。
ビアンカの唇がわななき、やっとのことで哀願した。

「だ……め……、あっ、裂けるぅ……し、しないでもう……だめえっ……」

ただでさえ太すぎる男根のもっとも太いカリ部分が、膣内の襞をゴリゴリを擦り、抉っていく。
ビアンカには永遠に感じられるほどに長い時間だったが、それも終わった。
ズンッと身体の奥に響くほどの衝撃を感じ、声もなく仰け反った。
とうとうジャミのペニスがビアンカの最奥にまで達したのだった。
それでも、まだとても全部入ってしまうような状態ではなかった。

「あ……あ……」

苦痛に身を震わせ、ビアンカが呻く。
ジャミがそんな人妻を見下ろして言った。

「どうだ、わかるか? 俺のものがおまえのいちばん深いところに届いたんだ」
「ううっ……いや……ぬ、抜いて……もう、ああ……」
「バカを言うな、まだ始まったばかりだ」
「そんな……痛いのよ、こんな……こんな大きいなんて……」
「痛いなら力を抜くんだ。まだ身体が堅いぞ、リラックスするんだ」
「そ、そんなこと言ったって……無理よ……ああ……」

ジャミはビアンカの膣のきつさに、少し顔を歪めている。
人間のサイズ用なのだから狭いのは当たり前だが、ビアンカのここは特別だ。
とても出産を経験しているとは思えなかった。
ビアンカの膣はまだ快感などなく、許容量以上のものをただ締め付けているだけなのだろうが、このきつさは格別だ。
これでビアンカが性に溺れ、自らの快楽のために膣を締めるようなことになったらどれほどの気持ち良さだろうか。
それを考えるだけで、ジャミの肉棒がまた膨れていく。

「やっ……う、動かないで……んぐっ……いやあ……」

ジャミは少しずつ腰を捩って、少しでも動きやすい位置を探していた。
だが動いていたのはジャミだけでなく、ビアンカもだ。
ただし彼女の場合は、少しでも苦痛の少ない姿勢を探してのことだろう。
その、両者の微妙な動きのせいで、ビアンカの膣内に収まった肉棒が蠢き続けている。
ジャミは辛抱強く、そのままの姿勢でじっとしていた。
ビアンカの膣がジャミのペニスに馴れてくれるのを待っていたのだ。

動かないでいてくれるのはビアンカの肉体にとっても幸いではあった。
しかし、その間にビアンカの媚肉はジャミの望む方向に近づいていく。
ペニスが入りっぱなしのせいか、ビアンカの膣内はその狭い中でジャミの巨根に馴染んでいった。
満員電車でぎゅうぎゅうに押し込まれても、発車して少し経てば少しは身動き出来るような隙間が出来るのと同じことである。

同時に、肉体は交尾するための状態になりつつあった。
愛液の分泌が著しくなってきたのだ。
無論、セックスによる快楽のためではなく、ペニスで膣内を傷つけられないための潤滑剤としてである。
ジャミは、ビアンカの中に愛液が再び滲み出し、ペニスのきつさが多少薄れてきたことを感じ取ると、少しずつ律動を開始した。
その動きによってまたも痛みが湧き起こり、ビアンカは苦痛に美貌を歪めた。

「うっ、動かないで、痛いっ! ひっ、痛っ……抜いて、やあっ……!」

ビアンカは苦痛に悶えたが、それでもペニスの抜き差しはさっきよりもスムーズになっている。
ゆっくりと野太いものが出入りするたびに、ぬちゃぬちゃと粘った音もし始めていた。
ようやくビアンカの身体が受け入れ体勢になってきたことを知ると、ジャミの腰も動きをダイナミックなものにしていく。
その苦痛を紛らわすつもりなのか、大きな手で揺れる乳房をぐっと掴んできた。
いつの間にかジャミの手は、馬の蹄ではなく人と同じような手になっている。
指が四本なだけで形状はそっくりだ。
確かにこの方が女を愛撫するには適しているだろう。

「んひっ!」

力強く乳房を握られ、痛みとは別の鋭い感覚が胸に走る。
続けて甲高い声を発し、身を仰け反らせた。
ジャミが前屈みになり、その長い舌でべろりと乳首を舐め上げてきたのだ。
ペニス同様、人間の舌とは比較にならぬほどに長く幅広く、そしてしなやかな舌が、ビアンカの乳を舐めている。
長い舌を器用に使って、強い性感帯である乳首にその尖端を巻き付けていた。

「ん、あっ……や、やめ……そんな、あっ……」
「どうだ気持ち良かろうが。さっきもリュカに乳を揉まれてよがっていたしな」
「やっ、言わないで! や、そんな強く揉んじゃだめっ、痛いっ……ああ……」

ぎゅうと揉みしだきながら、ぐっと括り出させた乳首をべろべろとしつっこいほどに舐めてく。
ぞくぞくするような快感が背筋を走り抜けた。
胸の愛撫に反応してきたビアンカを見ながら、ジャミは少しずつピストンの動きを強めていく。

「ん、んあ……いや……ああ……だめ……うっ……あっ……」

だいぶ痛みが薄れてきたのか、それとも麻痺してきたのか、ビアンカの肢体から力が抜け始め、彼女本来の柔らかさが出てきている。
執拗なまでに舌でねぶられる乳首も敏感に反応し、びくびくと痙攣しながら勃起していた。

「あ、あう……おっぱい、だめ……あ、そんな……ああう……」

とうとう太い男根に馴染んできたのか、ビアンカの膣はジャミの肉棒を受け入れていく。
ゴリゴリと襞を抉られる感覚は同じだが、その苦痛が薄れていた。
代わりに、名状し難い別の感覚が湧き起こっている。
奔放に犯しているようだが、ジャミもビアンカの身体に気を遣っていた。
ビアンカが快楽に浸りそうな時はより深く、強く挿入したが、苦悶している時は動きを意識的に弱めていた。
乱暴に犯すのも悪くはないが、嫌がる女を戸惑わせるほどに感じさせ、最後には快楽に屈服させるのがもっとも愉しかった。
数々の女をレイプする中で、ジャミが学んだ経験則だった。

そうしているうちに、ビアンカの表情からも徐々に苦痛の苦悶が消えていった。
やはりリュカの愛撫が効いている。
なんだかんだ言っても、ビアンカの肉体をいちばんよく知っているのは、夫であるリュカなのだ。
強制されたとはいえ、その熱心な愛撫を受けてしまい、絶頂に達してしまった。
その官能の燻りがまだ残っているのだ。前戯でいかされただけでセックスはなかったのだから、それも無理はなかった。
ビアンカは男を知らぬ処女ではなく、もう十二分にセックスの良さを知った人妻だったのである。
一度気をやった肉体は脆く、忌み嫌うべきジャミとの行為ですら、早くも快感を得てしまっていた。
ビアンカの口から漏れるのも、悲鳴や怒りは少なくなり、自らの肉体に湧き起こっている快感に戸惑うものが多くなっていた。

「や……ん、んむ……んく……やあ……あ、あうむ……んんっ……」

ビアンカの声がだんだんと甘くなって来た。
太いものを膣奥まで埋め込まれ、それが引き出されると、中からたっぷりと蜜を掻き出してくる。
ジャミの肉棒をくわえこんだ媚肉周辺は、際限なく掻いだされる愛液でべとべとに濡れていた。

「や……んむ……はっ……んあ……あ……ああっ……い、いや……あむう……」

苦痛がなくなってきたものの、さすがにビアンカの方から腰を使うところまではいっていない。
しかし、ジャミの腰の動きに逆らうようなところもなくなっていた。
ジャミの肉棒も動きが大きくなる。
子宮口のあたりまで突き込まれたペニスは、カリ首がビアンカの膣口に引っかかるところまで引き抜かれ、そしてまた深々と突き刺されていく。

「ん……?」

ジャミの表情が動いた。
今、ビアンカの膣が少し動いたのだ。
膣というより膣内の襞が、である。
まだジャミの大きな男根に完全に馴染んだわけではなかろうが、それでも受け入れようとはしているようである。
次第に彼女の媚肉内部は、ジャミの動きに呼応するかのように襞を蠢動させてきていた。
熱くて硬いものに、恐る恐るながら絡みつこうという動きも見せている。
やはり一級品の媚肉らしい。
きつくて狭いだけでなく締め付けが強い。
その上、きついくせにペニスを優しく包み込もうという動きまである。
これでは、並みの男ではたまらず射精してしまうはずだ。

「や、もう……あ、あ……やめ、て……ああ……」

だんだんと上気してくる美貌を見せながら、ビアンカは行為に身を委ねている。
その肉体は、早くも魔物の男性器を覚え込もうとしていた。
苦痛を排除し、それを快楽に変えるためにはどうすればいいのか模索しているかのようだった。
その順応性の高さ、性に対する貪欲さには、ジャミですら舌を巻いた。

「感じてきたようだな」

そう言われ、ビアンカはハッとしたように顔をジャミに向けた。
そしてすぐに顔を逸らし、きつい調子で否定した。

「そ、そんなわけないでしょう。こ、こんな……こんなことされて誰が……ああっ!」
「その艶っぽい声が証拠だよ。へへ、いいじゃねえか感じたってよ。セックスされてるんだ、それが当然だ」
「こ、これは違うわ……あ、あたしはただ、ああっ……ただ犯されてるだけ……せ、セックスなんかじゃ……ああ……」
「そうかも知れないがな。だとすれば、おまえは無理矢理に犯されても感じちまう淫らな女だってことになるぜ」
「違うわ、いやらしいこと言わないで! んあっ……しゃ、しゃべってる時に動かないでよ!」

ジャミがにやつきながら嘯いた。

「だったら感じなきゃいいだろうがよ。喘ぐからそう思われるんだ」
「あ、喘いでなんかないっ……ああっ、だ、だから動いちゃだめ、んああっ……」
「なんだ恥ずかしいのか? 人妻で散々亭主とセックスしてきたんだから、犯されて感じたって、今さら恥も何もねえだろうに」
「だから感じてないっ……誰があんたに犯されて感じるのよ、あっ……ああ、あ……」
「いいんだよ、無理しなくてよ。さっき亭主のリュカにたっぷりマンコ舐められていっちまったばかりなんだ。まだ身体が火照ってるんだよ」
「……」
「それが醒めやらないうちに、今度は本物をぶち込まれてるんだ。感じねえ方がどうかしてるってもんだ」
「ああ、そんな……で、でも……」

そうなのかも知れなかった。
今はともかく、リュカに膣を舐められ、愛撫された時には、心ならずもいかされてしまっていた。
自分の肉体をよく知る夫に愛撫されたのだから当然だったろう。
そして今、またその感覚を思い起こしてきていた。
今自分の性器を貫いているのは愛するリュカのものではなく、おぞましい魔物のペニスだというのにだ。

しかし、ジャミの言う通りなのかも知れない。
そのいったばかりで敏感になりすぎている肉体を貫かれているのだ。
女の生理として、本能として、反応してしまうのも無理からぬことなのだろう。
しかしビアンカにも意地やプライドはある。
自分と子供を攫い、リュカを手酷く叩きのめし、挙げ句、強制的に愛撫させた。
そんな相手に犯されて官能を得てたまるものかという意地、そしてモンスターの慰み者になりながらも性的快感を持ってはならないという、人間のプライドもあった。

だが、そんなものはビアンカの身体に訪れる現実的な肉の快美の前には頼りないものだった。
ビアンカの反応は明らかだ。
まだ嫌がっているし、戸惑ってもいるようだが、性的快感に身悶えているのは事実である。
子宮口まで突き上げていくと、次第にジャミの方まで強い快感を得るようになってきていた。
ぐぐっとペニスがさらに硬くなり、押さえようもない射精欲が込み上げてくる。

「くっ……」

それを隠すために一声唸り、乳房を愛撫する手にも力が自然に入った。
乳房を捻られ、その痛みにビアンカは顔を歪めたが、その刺激さえも性的なものに変換してくるようだった。
揉み込むごとに乳房が波打ち、乳首が震える。
膣の締め付けもますます強くなってきた。思わずジャミが呻いてしまう。

「くっ……で、出ちまうっ……」
「え……? で、出るって……まさか!?」

一瞬でビアンカの快楽が醒めた。
そしておぞましい予感が脳裏に去来する。
腰を強く打ち込みながらジャミが白状した。

「あ、ああ……もう出るってことだよ」
「な、何ですって!?」

ビアンカは、突き立てられて揺さぶられる裸身のまま、声を震わせた。
ジャミは射精すると言っているのだ。
冗談ではない。

「そんなっ……中はだめよ! 絶対にだめっ!」
「もう手遅れだよっ……くっ、出るっ」
「いやあ!」

ジャミは乳房の愛撫を止め、後ずさりして逃げようとするビアンカの腰をがっちりと両手で掴んだ。
この快楽を途中で中断されてはたまらない。
細い腰を掴み、よく張った星骨に指をかけてなおも自分の腰を打ち込んでいく。
ジャミのピストンの速度が上がったことを知り、ビアンカは青ざめた顔を激しく左右に振りたくって叫んだ。

「だめよ、それだけはだめっ! だ、出すなら外にぃっ!」

ビアンカは、膣底に亀頭を擦りつけられ、ひぃひぃ喘ぎながら膣内に射精されることを強く拒んだ。
膣の奥に収まっているペニスがぐぐっとさらに太くなった。
びくびくと痙攣しているのもわかる。
その変化を敏感に察したのか、ビアンカは狂ったように身体を揺すり、絶叫した。

「中はだめえっ……お願い、やめて! 中だけはいやああっっ……!」
「くっ、出るっ……い、いくぜ!」
「いやあああああっっっ……!!」

ビアンカとしては拒絶の締め付けなのだろうが、犯す方にとっては痛いくらいに心地よい収縮に過ぎなかった。
粘り着く襞を引き剥がすように律動を強く繰り返し、強く締め付けてくる膣圧に刺激され、ジャミはビアンカの中に放った。

「いやあああああっっっ……!」

熱いものが勢いよく膣内に吐き出されてくるのがわかる。
膨らみきった亀頭の先から、びゅるびゅると射精されているのが見なくてもわかった。
ビアンカの膣奥に、魔物の精液がどくどくと流し込まれていく。
ビアンカは背を弓なりに仰け反り、呻いた。

「ああ、いやああ……で、出てる、出されてる……あ、熱いっ……ああ、中でこんなに……いや、まだ出てるっ……もう出さないでぇ……」

ジャミはビアンカの腰を掴んで自分の腰を押しつけ、性器を半分ほど押し込んだ状態で射精を続けていた。
ジャミは臀部の筋肉と腹筋が痙攣するほどに力を込め、精嚢にたまった子種を美しい人妻の中に注ぎ込むのだった。


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