ビアンカに対する凌辱は連日に渡って行われた。
それも、時間をおいて日に二度三度と犯されることも珍しくなかった。
朝起きるなり、いきなり犯され、朝食とほんの僅かな休憩を挟んでまた犯される。
その後、入浴を許されるが、この時でも先日のように浴室でジャミにレイプされることもある。
そしてその日最後の調教レイプが始まり、失神するまで犯されて、そのまま放置される。
気がつくと朝、というパターンが続いている。
ビアンカは、ジャミとのセックス以外にすることがなく、また、させてもらえなかった。
こうなると、いやが上にもそれに意識がいってしまうようになる。
穢らわしくおぞましい行為だとビアンカは思っているのだが、それとは別に肉体の方は反応してしまうようになっていた。
ジャミの前では強がっているものの、感じてしまっていることは否定しようもなく、日に何度も絶頂させられているのも事実だった。
持ち前の気丈さと意志の強さで、そのことを口にしないだけである。
そのことをジャミに告げるということが、リュカに対するとんでもない背任だと信じていたのだ。
夫ではない別の男──しかも魔物──に、いいように犯され、気をやってしまっていることに、言いようのない背徳感を覚えていた。
問題なのは、その背徳や恥辱がビアンカの性と敏感に結びついてしまい、より彼女を高みに昇り詰めさせていることであった。
そのことはジャミにも指摘されていたが、最近ではビアンカ自身も「そうかも知れない」と思うようになっていたのである。
だが、リュカに対する愛情は本物であり、少しも薄れていない。
むしろ一層に彼が恋しく、愛おしくさえ思えている。
しかしその反面、どうしてあれ以来助けに来てくれないのか、という微かな疑惑はあった。
もちろん、そう簡単にいかないことはわかっている。
そもそも、このタワーに乗り込むだけでも大変な労苦だろう。
入れたとしても、並み居る魔物や妖物どもを蹴散らしてここまで来なければならないのだ。
並みの男に出来ることではない。
頼れる仲間とパーティを組んだり、軍の部隊を率いてきても難しいだろう。
その困難なことをリュカは二度もやっているのだ。
最初来た時はレックスを奪還した。
次はジャミと戦い、ボロボロになりながらも、最終的にタバサを取り戻している。
その彼なら、きっと今度は自分を救ってくれるに違いない。
だが、ジャミの言った言葉が少し引っかかっている。
「あの男はおまえよりも子供を選んだ」というあれだ。
親なら子を優先するのは当然だし、ビアンカもそれを望んだのだから当たり前だ。
それでも、やはり気にはなっていた。
女心というものだろう。
しかも、タバサ救出以来、リュカは来なくなった。
二度も突破しているだけにジャミたちも警戒を強めているからだろうが、ビアンカはじりじりと待つよりなかったのだ。
そんな日々を過ごしていたある日、それは起こった。
その日はなぜか、ジャミのレイプがなかった。
朝は犯されたが、昼以降は放って置かれたのである。
ホッとしたのは確かだが、何となくもやもやとしていた。
連日連夜、そして日に十時間近くもセックスさせられていたビアンカの肉体は、意識してはいなかったものの、それがないだけで燻っていたのである。
ビアンカは、自分はニンフォマニアになってしまったのではないかと哀しくなっていた。
どんどんとジャミに染められていく。
リュカのものだった身体が、いつの間にか魔物の好むものに作り替えられつつあった。
ジャミはビアンカにいつも裸で居ることを求めていたが、何を考えているのか、この日は着衣を許された。
とは言っても下着だけである。
しかも、普通の下着ではなかった。
ブラジャーは、いわゆるオープン・ブラとかトップレス・ブラと呼ばれるものだった。
要するに、アンダーバストを支えるワイヤー部以外は露出しているのである。
色は黒で、透けて見えそうな薄い生地で作られ、細かい刺繍が施されていた。
下は、ショーツもパンティも着けていない。
代わりに、腰にはガーターベルトを履かされ、そこから伸びるストラップが左右に前後二本ずつ垂れており、それでストッキングを吊っていた。
ベルトもストッキングもブラと同じデザインで、黒糸で織られた薔薇の刺繍入りである。
ある意味、全裸よりも恥ずかしかった。
足には真っ赤なハイヒールを履かされていて、ビアンカの醸し出す色香を増幅させていた。
これではまるで娼婦である。
何のつもりかさっぱりわからなかった。
そのまま夕方になり、そして夜になってもあの憎らしい魔物は来なかった。
代わりに、岩戸の向こうから姿を現したのは意外な人物だった。
「あ、あなた……ザバン……国務大臣?」
「お久しゅうございますな、王妃陛下」
「あなた、なぜこんなところに……」
「それは私が伺いたいですな、陛下。あなたこそ……」
「わ、私はあの夜、ジャミに攫われて……」
「ほう、そうですかな」
ザバンは上目遣いでビアンカを見て言った。
「囚われの身にしては縛られてもおらんようですな」
「これは……」
もう抵抗は無意味だったし、少なくともジャミにはビアンカを殺す意志はなかった。
犯されたからと言っても、ビアンカに自殺するつもりはなかった。
身体を好きにされるのは屈辱だったが、それが我慢できぬほどに子供ではない。
このつらさと悲しさも、いつの日かリュカに、子供たちに会える日を思えば耐えられたのだ。
そうならば、下手な抵抗はしない方が良い。
ここでジャミの怒りを買い、危害を加えられて死んでしまうよりはマシだった。
だからこそジャミもビアンカを拘束することなく、犯す時以外は自由にさせていたのだった。
ザバンはいやらしそうな声で言った。
「拘束もされていないということは……、王妃さま、あなた、もしやあの魔物と……」
「バ、バカなこと言わないでくださいっ」
「いいや、バカではない」
続けて三人の男たちが入室してきた。
そのどれもに見覚えがある。
「ドルマゲス財務大臣……、オセアノン司法大臣も……。あ、あなたはアントニアさん……確か……」
「税務大臣ですよ、王妃さま」
アントニアは喉の奥でククッと嗤って答えた。
ビアンカは呆然と彼らをきょろきょろと見回していた。
「い、いったいどうしたと言うのです……、どうやってここに……」
「そんなことはどうでもいいじゃないですか奥様、ふふふ。それにしても随分と色っぽい格好ですなあ」
「あっ……」
ビアンカは慌てて腕で胸を隠し、しゃがみ込んだ。
娼婦紛いの格好をさせられていることを忘れていたのである。
誰か来るとは思っていなかったのだから仕方がなかった。
四人は下品に笑いながら、ゆっくりとビアンカに近寄ってくる。
「ふん、そのいやらしい衣装で、あの魔物を誘惑したのですかな」
「そんなっ……失礼なこと言わないで!」
「じゃあ、なぜそんな恥ずかしい格好なんです?」
「こ、これは……」
ビアンカは悔しそうに俯き、唇を噛んだ。
「ジャ、ジャミに……ジャミに着ろと言われたから……」
「ほう。すると王妃陛下は、あのモンスターの言うことは何でも聞くということですか」
「違うっ、そういうことじゃありませんっ」
「まあ、いいではないか、オセアノン」
ザバンがくくっと喉で嗤う。
「いやあ、眩しいですよ奥様。我々のような者には目の毒だ」
「見ないで! 見ないでくださいっ!」
「見るなと言われましても、他に見るものもありませんしな」
「あ、あなたたちは一体何をしに来たんですかっ!」
ビアンカの悲痛な叫びに答えたのは、新たに入ってきた五人目の男だった。
「もちろん、あなたをお助けにですよ、王妃さま……、いいや、ビアンカさん」
「えっ……? ル……ルドマンさん……?」
これまた予想外の人物だった。
ビアンカとも面識があるこの国の富豪だ。
その養女であるフローラとデボラとも知り合いであり、彼女たちが少なからずリュカに好意を持っていたことも知っていた。
「ルドマンさん……あなたまで、なぜ……?」
「ですから、助けに来たんですよ。ここから逃げたいのでしょう? それとも、王城よりもこちらの方が好みですかな」
「そ、そんなことありません! でも、どうして……」
「もちろんタダとは言いません」
ルドマンは、その大きな太鼓腹を突き出しながら言った。
要は、ビアンカを救出して王城まで送り届けられたら見返りが欲しいというのだった。
彼は船舶輸送の会社も持っているが、港での関税を免除して欲しいと言ってきた。
それだけでなく、彼の炭鉱会社やカジノ、ホテルなども、すべて王国御用達にすることを条件としてきたのだ。
すると、ザバンたち政治家も次々と要望を口にした。
棒給のアップはもちろん、貴族としての爵位を上げ、手持ちの荘園の無税化、そして閣僚としてさらなる昇進を望んだ。
国務相のザバンは摂政、財務相のドルマゲスが代わって国務相に昇格するなど、閣員の出世を希望した。
ビアンカは戸惑いながら何とか答えた。
「わ、私には……そういう実権はありませんけど……、リュカには進言してみます……」
自分の身の安全のため、裏でそういうことをするのはいけないと思うのだが、リュカに言えば一も二もなく承諾するだろう。
何しろ妻を救ってくれた相手なのだ。
褒美は思うがままであろう。ルドマンが代表して言った。
「では、ご了承いただけたわけですな」
「……はい」
俯くビアンカにサディスティックな目を向けながら、ザバンが言った。
「それにしても王は何をやっておるのですかなあ」
「え……」
「リュカ国王でございますよ。王子様や姫様をお救いになるために単身ここへ乗り込んだのは大したものでしたが、それっきりです」
「それっきり……?」
「いかにも。まだここに王妃陛下が囚われておるというのに、もうそんなことはどうでもいいと言わんばかりだ」
「ウソ……ウソです、そんな……」
オセアノンが告げ口でもするように続けた。
「私めもそう思いたいところですがな、あれ以来、もう城からはお出になりません」
「……」
「お子様たちとお戯れになってはおりますが、王妃さまを助けに行こうという素振りもない。こっちが心配になるほどです」
「そんな……」
ビアンカは、傍目でわかるほどに動揺していた。
そんなバカなことはない。
リュカが私を見捨てるはずがないのだ。
でも、それならどうして来てくれないのか。
警戒が厳重なのはわかるが、子供たちを救出した時はそれを突破してきたではないか。
人妻の揺れ動く心をさらに揺さぶるようなことをルドマンが言った。
「それに……これは噂でございますが、王様には他の女がいると……」
「ウソです! それは絶対にウソよ!」
あのリュカが……恋愛には不器用なリュカが、二股を掛けるなどということが出来るはずがない。
だが……、二股ではなかったらどうなのか。
もうビアンカには何の未練もなかったなら、リュカの思いは他の女に向いてしまうのかも知れない。
そうでなくともリュカは女性に人気がある。
ルドマンのふたりの養女も、リュカに惹かれていたらしいのだ。
ビアンカの心が千々に乱れた。
そこにザバンの声がかかる。
「ま、それはともかく……」
「……?」
「……王妃さま、ここから逃げたいのは本当ですな」
「あ、当たり前です」
ビアンカは驚いたように言った。
何を言っているのだろう。
ザバンはねめつけるような視線でビアンカの身体を見ている。
「では……、我々の希望を叶えて戴けますかな」
「ですからそれは……、無事に城へ戻ればリュカに……王に言ってみますから……」
「いやいや、そうではなくてですな」
ザバンがぽてぽてとした厚い手のひらを振った。
「もちろん、そっちの方も是非お願いしたいのですが、実はもうひとつ望みがありましてな」
「……何ですか、早く言って下さい」
「そうですか、ふふ。ではズバリ言いましょう。王妃さま」
「な……なんですか」
「私たちは、あなたのその身体が欲しい」
「は……?」
何を言っているかわからなかった。
今度はドルマンが言う。
「ですからね、そのおいしそうな身体を差し出してくれないかと言っているのですよ、我々は」
「……!」
何ということだ。
この男たちは救出の条件として、ビアンカの身体を求めているのだった。
アントニアが、さもいやらしそうに言った。
「わかるでしょう、王妃さま。魚心あれば水心というやつですよ」
「そんな……」
ジャミに言われた言葉が脳裏に蘇る。
ビアンカの身体を狙っている男は少なくない。
チャンスがあればおまえを犯そうというやつだっているだろう。
身近にそんな不謹慎な者はいないとビアンカは思っていたのに、どうやらジャミの見立ては本当のようだった。
忠臣のような顔をして、そんな目で自分を見ていたのかと思うと、ビアンカは鳥肌が立つ。
「どうです、ビアンカさま。この身体を……」
「いやっ……!」
ドルマゲスが手を伸ばし、剥き出しになった肩を撫でると、ビアンカは反射的にその手を叩いていた。
財務大臣は大仰に顔を歪めて言った。
「これは異な事を。王妃さまはここから逃げたくないのですか?」
「下劣な……! あなたたちは交換条件で、わ、私の……私の身体を穢そうと言うのですか!」
「何を今さら。どうせモンスターに犯されたんだろうに」
「何ですって!」
オセアノンの無神経な一言で、ついビアンカはカッとなった。
ルドマンが両手を拡げてビアンカを宥めた。
「まあまあ、奥様。そう興奮しないで」
「これが興奮しないでいられますか!」
「落ち着いて。しかし、大臣のおっしゃることももっともですよ。我々がここに来るのに、どれだけの犠牲を払い、苦労したと思うのです?」
「それは……」
「しかも、あなたの夫であるリュカ王でさえ来られないところをやってきたのですよ。相応の礼があって然るべきかと」
「ですから、それは……」
「公式な褒美は無論頂戴致しますがな、それ以外の報酬も欲しいのですな。それがあなたの身体です」
「そんな……」
ビアンカは目の前が真っ暗になった。
この男たちは、ビアンカの肉体に対する欲望を隠そうともせず、執拗に求めてきた。
ジャミに穢されただけでなく、今度は側近と知人に犯されることになるのだ。
拒めば拒めるのだろうが、そうすればこの男たちは本当に自分を見捨てて行くだろう。
どうしてもイヤならそうすればいいが、そんなことをしたら今度はいつチャンスが来るかわからない。
それに、この連中の言い分を信じるならば、リュカはビアンカを助けようと思っていないらしい。
ビアンカにはとても信じられなかったが、それをどうしても本人に確認したかった。
それにはビアンカ自身が王宮に戻るしかない。
来るか来ないかわからないリュカを待っている時間はなかった。
激しく動揺し、悩乱したものの、もう答えは出ているようなものだ。
ここから逃げたいのだ。
ビアンカの決断を促すようにルドマンが言った。
「決めるならお早く。そうのんびりもしていられません」
「……」
それはそうだろう。
いつジャミや配下の魔物が気づいて乗り込んでくるか知れないのだ。
迷い悩む人妻に、ルドマンが思わせぶりに言った。
「……ご決心がつかないようですな」
「……」
「では……、こうしましょう」
ルドマンがポンと手を打った。
「ひとつゲームをしませんか」
「ゲームって……」
「これが出来れば、私たちはあなたの身体を諦めましょう」
「何をすればいいんですか……」
「ふふ……」
「い、言って下さい! どうすれば……」
「ご自分で慰めて戴きましょうか」
「は……?」
何のことだかわからなかった。
きょとんとした表情になった美人妻に、大商人は苦笑しながら言った。
「おわかりになりませんか? 平たく言えばオナニーして見せてくれませんかと言っているのです」
「お、おなにーって……あっ!」
それが何のことが理解したビアンカはさあっと頬を染めた。
怒りに満ちた声で叫ぶ。
「な、何を言ってるんですか! あなた正気なんですか!? そ、そんなはしたないこと人前で出来ますか!」
「だからこそ見てみたいんですよ、くくっ。売春婦ならともかく、王妃さまのような高貴な方の自慰など見たことがありませんのでね。
もっとも、今のあなたも娼婦のような格好だが」
「ひどい……」
ああ、この男たちもジャミと同じだ。
自分を性の対象としてしか見ていない。
どうして人も魔物も、女を嬲り、いたぶることに執着するのか。
しかもオナニーして見せろなどという破廉恥なことを言う。
そんなことはジャミにすら言われたことはなかった。
脅して淫らな要求をしてくるという卑劣さは人も魔物も一緒だった。
ザバンが追い打ちを掛ける。
「どうしました? もしや王妃さまはオナニーなどしたことはない、と……」
「は、恥ずかしいこと言わないで!」
ビアンカは真っ赤になった顔を手で覆い、振りたくった。
数は少ないが、未経験なわけではない。
しかしそれもだいぶ以前の話だ。
まだ十代の頃、悪友に教えられて興味半分でしたことがあった。
その時は大した快感もなく「こんなものか」と思っていたのだが、時々、もやもやとしてしまい、性器や乳房をいじることがあった。
それでも習慣となることはなく、本当に数えるほどしかなかったのだ。
リュカを意識し始めてからも、彼を思って慰めたことはない。
そうすることは、何だか薄汚い行為だと思えてしまったからだ。
もちろん結婚してからは性的にも満足していたから、まったくしなくなっていた。
経験が少ないだけに、余計にそれが穢らわしい、汚い、恥ずかしいことだと思えてならなかった。
ルドマンが言った。
「早く決めてください。我々はここまで譲歩した。あとはあなたがどうするか決めるだけだ」
「そんな……」
「時間がありませんよ、お早く」
もうどうにもならないのだろうか。
自慰などという秘められた恥ずかしい行為を見せ物にされてしまう。
ジャミに浣腸され、排泄を見られた時も死ぬほどの羞恥と恥辱を感じたが、これも同等かそれ以上に思えた。
しかし迷っている余裕はなく、選択の余地もなかった。
ビアンカは顔を伏せ、肩を震わせたまま小声で言った。
「わ……かり……ました……」
「……」
「し……します。それをしたら本当に……」
ビアンカの泣きそうな声を聞いて、ルドマンとザバンが顔を見合わせてにんまりと笑った。
「ええ、いいですとも。お助けしますよ」
「……」
「でも、あくまでこれは余興、ゲームですからね。ルールを設けます」
「ルール……?」
「そう。ビアンカさまはオナニーをして10分以内に気をやってもらいましょうか」
「な……」
「もし出来なければ、その時はお身体を差し出して戴きましょう。よろしいですな?」
あまりのことにビアンカは目を剥いた。
こんな恥ずかしいことは本気で出来るわけがなかった。
だから彼女はポーズだけして、演技で乗り切ろうと思っていたのだ。
それらしい格好と仕草をすれば、この連中は満足してくれるのではないだろうかと考えていた。
しかしそれが甘かったことを思い知らされる。
さすがに悪徳政治家や金儲けの巧い富豪だけあって、こうした悪知恵に関してはビアンカよりも数段上らしい。
ザバンが念を押す。
「今のルドマンさんの話はわかりましたね? では、私たちはここで見物してますから、始めて下さい」
そう言うと、男たちはざわざわしながらビアンカの座るベッドを丸く囲むようにして座り込んだ。
にやにやといやらしく笑い、ビアンカの裸身を鑑賞している。
ルドマンがわざとらしく懐中時計を取り出した。
「どうしました? もう始まっていますよ、時間がありません。あと9分30秒です」
「くっ……」
悔しかったが、どうしようもなかった。
ビアンカは隠すように横向きになり、そっと手を股間に向ける。
そこでザバンの厳しい声がした。
「王妃さま、それではいけません。ちゃんとこちらを向いてください。そしてしっかりと両脚を開いて、肝心なところを見せて戴かなくては」
「そんな……」
ビアンカは泣きそうになったが、時間がない。
正直なところ、ビアンカはオナニーで本当にいったことはない。
軽く気をやったことはあるが、気持ち良かったというよりは罪悪感の方が強く、とても絶頂したとは思えなかったのだ。
だから、自分が自慰をしてどれくらいでいけるのか、さっぱり想像がつかない。
10分以上かかったら、こいつらはビアンカを置き去りにするか、身体を奪うのだ。
始めるしかなかった。
ビアンカは身体を正面に向け、震える脚をおずおずと開いていく。
途端に男たちのざわめきが止み、熱の籠もった目でビアンカの股間を凝視してくる。
ビアンカには、その視線が物理的な力を持っているように感じた。
視線が媚肉に刺さってくるのがわかるのだ。
(ああ……、み、見られてる……こんな人たちにまで大事なところを見られてる……リュカ、助けて……)
ジャミだけでなく、邪な男どもにまで身体を観察されている。
それを意識すると、ビアンカの腰の奥が熱を持ち、じくじくと愛液が分泌してくるのがわかった。
(い、いけない、こんな……こんな人たちに見られて濡れるなんて……そ、それに……それを知られたらこの人たちは……)
あまりの恥ずかしさに身がすくみ、躊躇するビアンカをけしかける声がする。
「ビアンカさん、1分経過です。あと9分」
「いやっ……」
思わずそう叫びながらも、とうとうビアンカは恥ずかしい行為を開始した。
せざるを得なかった。
手がすっと胸へ伸びていく。
震える細い指が、ゆっくりとまさぐっていた。
途端にビアンカの顔が真っ赤になる。
こんなことを見せ物にされるなど、娼婦でも拒否するに違いない。
それをやらされているのだ。気持ちが萎えそうになると、ギャラリーから叱咤の声が飛ぶ。
「もたもたしていたら時間がないですぞ、あと8分半」
「くれぐれも気をやった芝居などせんよう願いたいですな。それくらいは簡単に見通せますぞ。我々をなめないことだ」
「そうそう。さ、私らが見ていることなど忘れて気持ち良くなることです」
意識するなと言われても無理だ。
例え見ているのがリュカでもこんなことは出来っこないのだ。
しかし、もじもじと渋っていても時間は経過する。
いけなかったら、この人たちは本当に自分を置き去りにするだろう。
こんなチャンスはもうないかも知れないのだ。
「んっ……」
ビアンカは、豊かな胸の肉塊を揉みながら、身を捩った。
自分から乳首をいじってみると、男にされるよりは刺激が少ないものの、かなりの快感が湧いた。
乳首を指でつまみ、軽くしごくだけで、もう声が抑えきれない。
「ああ……」
乳首がピリピリする。
痛いというよりはむず痒いような微妙な感覚。
それでいて何とも心地よく、もっとしたい、されたいと思ってしまう麻薬的な快楽だった。
見ている男たちも興奮し、盛り上がってく。
「おお、自分であんなに激しく乳首を……」
「これは予想通りの好き者らしいですな」
「あの身体だ、とてもあんな若造ひとりじゃあ満足しきれなかったようで」
「ですなあ、こりゃあ楽しみだ」
「王妃さま、そんなにおっぱいがいいのですかな?」
声を掛けられると、途端に現実が蘇る。
見られている前でオナニーしているという信じがたい現実。
ビアンカは小さく叫んだ。
「い、いやっ……見ないで!」
「見ないわけにはいきませんな。いじるのは胸だけですかな? おっぱいだけでいけるほど敏感な身体だとか」
「か、勝手なことばっかり……!」
「いいから、急いだ方がいいですぞ。ほら、あと7分」
「くっ……」
ビアンカは指先に力を込め、自分の乳首を潰した。
痛いのだが、それを凌駕する鋭い快感が人妻にわき上がる。
「んくっ……あ、あっ……んんっ……」
ビアンカの裸身がうねり、口から喘ぎが出始める。
自分で愛撫するのだから、もっとも囓るポイントや感じたい場所へと勝手に手が行っている。
ツボは誰よりもわかっているのだ。
身体に込み上げてくる甘美な快楽を確かめるかのように、ビアンカは乳首や乳房に対する刺激をコントロールしている。
乳首は強めにこねているが、乳房全体はどちらかというとやんわりと、その代わり大きく揉みしだいていた。
いやが上にもビアンカの女体に火が着いていく。
野卑で卑劣な男どもが見ている前ではしたない、あさましいという人間的な思いと、仕方ない、時間がない、やるしかないという絶望的な積極さが渡り合う。
屈辱的な行為であればあるほどに、ビアンカの官能が燃え上がっていく。
しっとりと汗をかき始めた乳房から右手が離れ、そっと股間に添えられた。
「んはっ……! だ、だめ……」
自分の手でしているというのに、ビアンカの理性が思わず咎めてしまう。しかしそんなものは徐々に薄れ、股間は少しずつ開いていった。
滑らかそうな肌の腿の付け根から、ビアンカの指が滑り込むように入っていく。
媚肉そのものではなく、早くもクリトリスに触れてしまった。
「んああっ……ああっ……!」
触れた瞬間、びくりと大きく反応し、同時に両脚が大きく開いた。
手の動き、指の速度に合わせ、ビアンカの吐息が荒く、熱くなっていく。
屈辱と羞恥に苦悶していた人妻の裸身は、いつしか被虐の快楽に身悶えるようになっていた。
もうその白い指先には、ねっとりとした蜜がまぶされており、二本の指が器用に媚肉を割っている。
濡れた指が膣口に伸びると、ぬちゃりと粘った音がして、同時にビアンカが首を反らせて喘いだ。
見ている男どもも生唾を飲み込んで凝視している。
「おおっ、もうあんなに濡れ濡れに……」
「い、いや……見ないで、恥ずかしい……んく……ああ……」
「何が、見ないで、だ。自分でしておるくせに。どうせ見られたくてしようがなかったんでしょうが」
「違う……違います、そんなひどい……ああっ……」
「喘ぎながら言っても説得力がないですな」
「そんな……あう……」
ビアンカの目は潤み、吐く息は熱を含んでいて火が着くほどに熱かった。
熱にうなされるようにはあはあと荒い息を吐き、時折、小さく首を捩って恥ずかしそうに顔を隠す。
左手は盛んに乳房をこね、乳首を摘んではしごいている。
それだけでも気がいきそうになるのに、右手はといえば股間で肉芽を同じようにしごいていた。
上半身がうねり、尻が捩れるのが止まらない。
「だ、だめ、こんなの……ああ、熱い……身体が熱い……わ、私……あ……」
ビアンカの指は、本人の意志とは関係ないかのように、勝手に敏感な箇所を嬲り始めた。
濡れそぼった媚肉を愛撫し、さらにその奥にある小さな穴へと差し込まれる。
細い指はあっさりと挿入され、押し出されるように透明な蜜がとぷっと吐き出された。
「ああっ……!」
とうとう自分から挿入してしまった。
恥ずかしくて死にそうなのに、肉体の方は逆に物足りなさを感じている。
こんな細い指ではなく、もっと太い──そう、ジャミくらいの指が欲しい。
いいや、指などではなく男の……。そこまで考えてビアンカは激しく顔を振りたくった。
(だめだめっ……私、何を考えているの!? い、いやらしいっ……いけない、こんなの……)
「くひぃっ……!」
ビアンカが鋭い声で喘いだ。
すっかり包皮が剥け、硬く尖ったクリトリスを指でぴぃんと弾いたのだ。
大きく肢体を跳ね、反らし、白い首筋を露わにして喘いだ。
上を見ている首から鎖骨へのラインが何とも美しく、また官能的だった。
男たちは、もうそれを見ているだけで襲いかかりたくなる。
白い肌は薄紅に染まり、汗が浮き、甘い女の香りを漂わせていた。
ビアンカの白い肌と黒いガーターのベルトとストッキングが、素晴らしく官能的なコントラストを描いている。
男どもは興奮し、ついつい首を伸ばしてビアンカのそこに顔を近づけてくる。
「こりゃあすごい……見てください、あのマンコを」
「おお、確かに。まるで生娘の性器のようじゃないか。とても人妻とは思えん」
「いやいや、人妻どころか子持ちなんですぞ、この王妃さまは。しかもふたりも」
「そ、そうだったですな。いやしかし、とても信じられん……」
男たちの下品で粗野な褒め言葉に、ビアンカは改めてその視線を感じ、身を捩った。
「だ、だめ……み、見ないで……見ないでください……は、恥ずかしい……恥ずかしいんです……」
「そう言われてもですな、王妃さまくらいの美人が目の前でオナニーしているんですよ。男としては見ないわけにはいきません」
「さよう。しかも王妃さまは見られて感じておられるようですしな」
「いやああ……そ、そんなあ……私……私は……ああ……」
ビアンカはザバンたちを激しく嫌悪したものの、詰ることもできなかった。
見られていると意識した途端に、膣の奥からはドッとばかりに愛液が分泌されてきたのだ。
いけないと思うのに、指は勝手に媚肉の奥に入り込み、その蜜を掻き出すかのように襞を擦っている。
ぬるっと膣内で指が動き、あちこちをなぞり、擦っていた。
まるで感じるポイントを自分で探そうとしているかのようだ。
(だめ、気持ち良いっ……や、やめられないっ……そんな……)
「ああっ……ひっ……んくああっ……」
時々びくびくと細かく痙攣しながら、ビアンカは尻を捩るようにしてもじもじし始めた。
高められ、頂点を目指している肉体が、もう抑えきれないと言っているかのようだ。
リュカやジャミに仕込まれた感じるところを正確に指が愛撫している。
乳首とクリトリスへの責めは効果的で、ビアンカは自分の指が責めやすいように腰をうねらせていた。
膣奥がきゅんきゅんと鳴いている。
中に入った指をかなり強く締め付けていた。
ザバンたちは、もう声もなく凝視していた。
ルドマンあたりは、気の早いことにズボンの中に手を入れ、自らの男根を扱き始めている。
好色そうな財務大臣が唸るようにつぶやいた。
「くく、この感じやすくて淫らな身体を使って、あのジャミを誘惑……」
「ドルマゲス! 滅多なことを言うな」
すぐにザバンが窘めたが、ビアンカはそれを聞き咎めるような余裕はない。
それどころか、もうほとんど男たちを意識しなくなるほどに集中していた。
「ああ、だめっ……もう、ああっ……」
ビアンカの声が上擦っていく。
腰がぶるぶると震えだし、背中にぞわっと寒気が走った。
もう奥まで中指が埋め込まれている媚肉は、その根元を盛んに締め付けてくる。
不思議な感覚だった。とてもきついし熱いのだが、柔らかい。
根元が痛いくらいに収縮しているのに、中で指が動くのには支障がない。
心地よいのだ。
喘ぐビアンカの声は、今にも絶息しそうである。
「あっ……あっ、あっ……!」
じゅぶっ、ぬぷっと淫らな水音をさせながら何度も繰り返して抜き差ししている中指は、膣内から溢れる蜜を掻き出してくる。
愛液は肌を汚すだけでなく、ガーターストッキングにまで染みていく。
そのあふれ出た愛液をクリトリスになすりつけ、塗り込んでいくと、その刺激だけでビアンカはよがり泣いた。
「やああっ……もっ、もうだめえっ……ひっ、ひっ……」
高まり続ける官能は急カーブを描いて頂点を目指している。
そこから落ちることなく、ビアンカを高みへと持っていった。
腰と指の動きはさらに大胆になり、見ている男どもを刺激して止まない。
ビアンカの左手がぎゅっと乳房を強く掴み、右手の指が思い切り深くまで膣を抉った。
「んひぃっ……ああっ……!!」
ビアンカは釣り上げられた魚のように身体を何度も跳ねさせた。
身体全体をビクンっと大きく震わせると弓なりに反り返り、がくりと力を抜いた。
どたりとベッドに肢体を投げ打ち、わなわなと細かい痙攣が続いている。
手の指はぎゅっと強く握られ、その激しい官能を物語っていた。
ビアンカの絶頂を合図に、男たちも我に返った。
ほうっと太い息をついてアントニアが言った。
「……どうやら気をやったようですな、ザバンさま」
「そのようだ。ルドマンさん、どうですかな」
「いったようですよ、ザバン大臣。しかし、激しかったですな」
「いや、まったく。恥ずかしげもなく、よくもまあ人前で絶頂できるものだ」
自分たちが強要したくせに、ザバンたちはそう言ってビアンカを蔑み、からかい、嘲笑した。
ビアンカは、ようやく首をもたげてルドマンに尋ねた。
その裸身は熱く燃えており、、湯気が立ちそうなくらいだ。
ルドマンは思わせぶりに言った。
「そうですな……。ああ、残念でしたな、王妃さま」
「え……」
「12分もかかってますぞ。くく、王妃さまもおたのしみのようでしたからな、もう時間なんぞどうでもいいと思っておったのではないのですかな」
「そんな……」
ビアンカは目の前が真っ暗になった。
脱出できる条件として出された淫らで卑劣名要求を、死ぬ思いでこなしたのだ。
愉しむも何もあったものではない。
なのに時間切れ……。
いったい何のためにこんな男たちの前で、死にも勝るような恥ずかしい行為をしてきたのかわからない。
「ああ……」
ビアンカは絶望したように、ぐったりと横たわった。
もう腕にも脚にも力が入らない。
気をやってしまったということもあるが、それ以上に精神的なダメージが大きかった。
人前で自慰行為を晒すという羞恥と恥辱。
しかもそれが無駄に終わったという失望感。
加えて、そんな強要されたことなのに、心ならずも絶頂してしまったという屈辱感。
そのどれもが、この聡明な人妻に大きな衝撃を与えていた。
ルドマンとザバンは顔を見合わせて笑った。ウソなのである。
実はビアンカが気をやるまでの時間は7分と40秒だった。
かなり余裕を持って絶頂したのである。
それをタイムオーバーと欺き、嘲笑ったのだ。
最初から騙すつもりでオナニーさせていたのだった。
ビアンカが半ば失神しているのを見ながら、男たちは立ち上がった。
早くもズボンを脱ぎ始めている者もいる。
ザバンは苦笑しながら言った。
「気が早いな。もうそれか」
「大臣こそ。もうズボンの前が苦しそうですぞ」
「そうですとも。わしももう我慢できそうにない。よろしいですな、ザバンさま」
仲間の淫らな言葉を笑って聞いていたザバンが大きく頷いた。
「ああ、いいとも。だが忘れるなよ、抱いてはならん。あくまで射精して、中に出すだけだ」
ザバンがそう言うと、オセアノンとドルマゲスがビアンカの身体を起こしていく。
ふたりの男は「役得」とばかりに、ビアンカの裸身に手を這わせていた。
ビアンカは薄目を開けてはいるが、何をされるかよくわかっていないらしい。
というよりも、もう抵抗する気力も失せていたのだろう。
ルドマンが中心となって、ビアンカを拘束していく。
両手は後頭部でまとめられ、縛り上げられた。
仰向けのまま両足首にロープが掛けられ、それがぐっと頭の方へ引っ張り上げられる。
俗に言うまんぐり返しにされた。
恥ずかしいほどに股間を開き、相手へ晒す屈辱的な姿勢である。
「え……、何を……」
まだ朦朧としている意識の中、ビアンカが弱々しくもがく。
しかし腕も脚は動かず、僅かに腰を動かすくらいしか出来ない。
「何をするんですか、こんな……」
「何をするだと? 時間内にいけなかったくせに」
「そ、それは……でも、それとこれとは……」
「関係あるさ」
ルドマンが冷たく言った。
みんなの口調が変わっている。
さっきまではビアンカに対し、王妃として敬語を使って話していたのに、今はタメ口になっていた。
ビアンカは男たちの態度が豹変しているのに気づき、おののいたように身を捩る。
「さっき言ったろう。出来なかったら、その身体を差し出してもらう、とな」
「な……」
ビアンカは唖然とした。
この連中は本気なのだ。
この様子では、ここからの救出というのも方便で、実はビアンカの肉体を狙っていたのかも知れない。
だとすると、リュカでも難しいモンスター・タワーへこんなやつらが侵入できたというのも、裏でジャミが糸を引いている可能性もある。
ジャミと始めから結託していたのか、それとも何か裏取引でもあったのか、いずれにしても味方ではなかったのだ。
ビアンカの胸を絶望の黒雲が覆い、急速に屈辱感と怒りが込み上げてくる。
「あ、あなたたち、最初からっ……」
「さあ、それはどうかな。だが、そんなことはどうでもいいのだ。おまえがゲームに負けたのは変わらん」
「そうとも、ルドマンさんの言う通りだ。もう観念せい」
「い、いやあっ……!」
ビアンカは必死になって暴れたが、どうにもこうにも動けない。
手首は、縛っていたロープが食い込んでおり、そんな状態で暴れたから薄い皮膚がすりむけてしまっている。
脚も同様で、縛られたまま暴れたおかげで、摩擦で肌が赤くなっていた。
脅えながらも、憎しみの視線を向けてくるビアンカに、アントニアがゆっくりと近づいてくる。
「だ、だめです、こんなところで……」
「ほう、ではこんなところでなければお許しいただけるのかな」
「そ、そういうことじゃありませんっ……こ、ここではジャミがいつ来るかわからない……」
「それならご心配要りませんぞ。あの方はまだ来ないことになっておる」
「そ、それはどういことですか! あ、あなたたち、もしや……」
「もう奥様は細かいことは気にせずともよい。愉しもうではありませんか」
「い、いやっ……ああっ……!」
ロープで拘束されているとはいえ、なおも暴れるビアンカの両脚を左右からオセアノンとドルマゲスがしっかりと押さえ込んだ。
腿が乳房を潰すほどに引き上げられており、左右に開かれていた。
ビアンカの股間は恥ずかしいほどに開脚され、男どもの熱い目に晒されている。
「み、見ないで、いやよ!」
「くく、もっとよく見せていただきましょうか」
「ひっ……!?」
アントニアが、わざとらしく手にした道具をビアンカの顔の前に突き出している。
何だか理髪師が使うバリカンのように見えた。
ハッと気づいてビアンカの顔から血の気が引いた。
もしやこの男、あそこの毛を剃ろうというのだろうか。
「い、いや、そんなことしないで!」
ビアンカは絶叫したが、アントニアは彼女の予想外の行動を執った。
それはバリカンではなかったようだ。
ビアンカは知らなかったが、クスコだったのだ。
同じような形状ではあるが、バリカンの櫛形刃の代わりに、ペリカンの嘴ようなものがついている。
その嘴を穴に差し込みハンドルを握ると、嘴が開いて穴を拡げるという代物だ。
穴とはつまり膣であった。
「ひぃっ!? つ、冷たっ……」
クスコの先がそっとビアンカの媚肉に押しつけられ、ぬるっと膣内に潜り込んだ。
ビアンカ自身の体温で暖められ、金属の冷たい感触はすぐになくなったものの、違和感は残る。
異物を性器に押し込まれ、ビアンカはガクガクと身を揺らして悶えた。
「や、やめてください、何をしてるのっ!?」
「まだわからんかな、この奥方は。これはクスコだよ」
「クスコって……」
「知らんかね? これはね、こうやって……」
「あっ……」
「オマンコの中を調べる道具さ」
「そんなっ……いやああっっ……」
血の気が引いて白くなっていた人妻の顔が、さらに青白くなっていく。
なぜこんな連中に性器の奥まで見られねばならないのか。
そんなところ、夫にも見られたことはない。
震えるビアンカを左右からドルマゲスらが抑えている。
もちろん抑えるだけでなく、オープンブラで顔を見せている乳房をやわやわと揉み上げていた。
アントニアは、クスコで膣内部を傷つけたりしないように調整しながら、嘴の根元まで押し込んだ。
ようやく位置決めが出来たのか、今にも涎を垂らしそうな表情で、ぐっとハンドルを握った。
クスコは見事に膣口を捉え、ビアンカのそこはぽっかりと口を開けた。
「いやああああっっっ……!」
ビアンカは喉の奥から声を絞り出して絶叫した。
その声に反応するかのように、男どもが我先にと集まってくる。
クスコを担当していたアントニアも、膣を開口した状態で動かないように固定し、ハンドルの下から伸びる紐を分娩台のベルトに絡ませて手を離した。
興奮したようなザバンの声がする。
「こ、これがビアンカの……王妃さまのオマンコの中か」
「いやああああっっっ、見ないで、見ちゃいやああっっ!」
その言葉を聞いてビアンカの羞恥は極限まで高まり、身体を大きく波打たせた。
腿と腰が小さく跳ね、固定させているクスコが揺れる。
しかし、落っこちたり外れたりすることはなく、しっかりとビアンカの膣を開いていた。
男どもは唸るような声で口々に述べた。
「これは……襞だらけのいいオマンコですな」
「いや、まったく。しかもほれ、ご覧なさい、あんなによだれを垂らしておる」
「お、子宮口まで見えますぞ。これも綺麗な色だ、本当にあそこからふたりも子供が出てきたのか?」
「ううむ、見事に熟れておりますな。しかし肉壺の奥の色が綺麗だ。人妻とは思えませんな」
「くく、あのへなちょこ亭主は案外とインポだったのかも知れませんな。で、可哀想にこの美人妻は夜泣きしておったとか」
淫らで下品な感想を言い合う男たちに反論することもできず、ビアンカはただ泣いて懇願した。
「あ、あっ……お願いぃ……見ないで、見ないでください……」
「これが見ずにおられるものか。おお、腹側から蜜が垂れてきておるわ」
「いやああ……もう、いやあ……」
ビアンカはもう諦めたのか、暴れることもなく、おとなしくなった。
ただ哀しそうに顔を背け、しくしくと泣いている。
常識を逸した恥辱に、もう抵抗する気力も失せたらしい。
奸臣どもはなおも顔を寄せ合うようにして、ビアンカの股間を覗き込んでいる。
「綺麗なピンク色ですな。オセアノン大臣のおっしゃる通り、まるで処女のようだ」
「匂いも悪くない。甘酸っぱい女の香りがたまらんわ」
「濡れ放題ですなあ、これは。ぽたぽたと天井から垂れ落ちとる。ひょっとして、我々に見られて感じておるのかも知れませんぞ」
「いやっ……そ、そんなこと……」
ビアンカは激しく顔を振って否定したものの、脳裏にジャミの言葉が蘇る。
そう言えばあの魔物も同じことを言っていたような気がする。
おまえは見られたり、恥ずかしい目に遭うと感じるいやらしい女だと。そんなことはないと何度も首を左右に振るのだが、だんだん自信がなくなってくる。
(ああっ……いやっ、あそこに息が掛かってるっ……あんなに顔を近づけて見てる……ああ……)
男たちの興奮する吐息がかかるほどに間近で見られ、ビアンカの恥辱は高まるだけ高まる。
羞恥が募れば募るほどに、ビアンカの媚肉はじくじくと蜜を分泌し、クスコを食い締めている膣口は蠢き、金属の嘴を締め付ける。ドルマゲスが上擦った声で言った。
「も、もうよろしいでしょう、ザバンさま」
ビアンカの恥部を見ているうちに我慢できなくなったらしく、既にズボンの前開きから男性器を露出させ、しごいている。
見ればオセアノンも同じだ。
ザバンは苦笑して許可した。
「いいだろう、だがいいか、わかってるだろうが……」
「わかっております。王妃に入れなければいいのでしょう?」
そう言うと、まずドルマゲスがビアンカの前に陣取った。
仁王立ちとなり、ビアンカを見下ろす形で早くも自慰を始めている。
ビアンカは仰天した。
淫らなことをしてくるに違いない、もしかしたらレイプされるかも知れないと覚悟していたが、まさかそんなことをしてくるとは思わなかった。
美しい王妃は真っ赤になった顔を背け、目を堅くつむって叫んだ。
「な、何をしてるんですっ! し、仕舞ってください、そんなものっ……」
「仕舞っては意味がない。これから私どもは、王妃さまをオカズにしてオナニーするのですからな」
「な……」
信じられぬという顔で、ビアンカは目の前の閣僚を見た。
さっきは、嫌がるビアンカに自慰を強要し、それを見物していた卑劣な男たちだ。
今度は彼らがビアンカの前でそれをするという。
まったく理解出来ない性癖の持ち主たちだった。耐えきれず、ビアンカは絶叫する。
「や、やめてください、そんなっ……」
「いやいや、先ほどは王妃さまのオナニーを拝見させて戴きましたからな、今度はお返しに……」
「いっ、いらない、いりません、そんなっ……やっ、見せないで!」
「くくっ、見たくなければ目を閉じていればいい。私どもはそれでも一向に構いませんのでな」
「そんな……ひどいっ……!」
「では、早速……ううっ……」
ドルマゲスは年甲斐もなく呻きながら、おのれの男根をしごいていく。
使い込まれた風のペニスは、サイズは普通ながら毒々しい色合いで赤黒くなっていた。
興奮で目が赤くなるほどにビアンカの裸体を凝視している。
丸く豊かな臀部が、柔らかく分娩台で潰れている。
いかにも膣の締まりが良さそうな、ほっそりとした足首。全身を覆っている薄くて透けそうな肌は艶やかで、産毛がほとんど見えなかった。
ほっそりした印象なのに肉づきは悪くない。
その肉と脂肪は、胸と腰回り、太腿に集中してまとわりついているようだ。
いかにも弾力がありそうな、熟れた女の肉体だった。
それを見ているうちに、早くもドルマゲスが達しそうになっている。
「お、おっ……もう出る!」
「え……きゃあっ!」
太った腰がぶるっと震えたかと思うと、大臣はペニスを絞るようにして射精した。
粘液がびゅるっと前に飛び、ビアンカに引っかかった。
とはいえ、肌にかかったのは僅かで、そのほとんどはクスコでぱっくりと口を開けていた膣の中に吐き出された。
「いやああっ……!」
男の粘液がびゅるるっと放出され、それが直接膣内に出されている。
セックスされたわけではないが、その精液を膣で受けているのに変わりはなかった。
「あ……あ……」
あまりのことにビアンカは言葉が出なかった。
何ということをするのだろう。
縛った女を目の前にして自慰をするという行為自体信じられないが、その射精したものを女の中に放出するとは思わなかった。
「早いですな、大臣」
「ドルマゲス……溜まっておったのか」
囲んでいた男たちがドッと笑い転げた。
しかし当のドルマゲスは盛んにペニスを扱き、絞り出すようにして射精していた。
勢いが止まり、だらだらと精液が垂れるだけになると、ようやくホッと息をついて笑った。
「いやあ面目ない。しかし、これだけの身体を前にしてお預けされているんですからな、無理はない」
「しかし若造でもあるまいに、ちと情けないぞ」
「そう言うなら、オセアノン大臣。卿もやってみればよい」
「よろしい」
今度は痩せぎすのオセアノンが前に出てくる。
ビアンカはまだ信じられないのか、口を開けたまま男を見ていた。
オセアノンは構わずペニスを引き出すと、いきなりしごき始めた。
ようやくビアンカが嫌悪の籠もった声を上げる。
「な、なんてことするの? 信じられない! や、やめて、もうっ……そ、それを仕舞って! もうしないで!」
「おお、そうやって動いてもらった方が雰囲気が出ますぞ。いかにも生身の女という感じがする」
「やめて!」
ビアンカの瑞々しい肉体が、オセアノンに視姦されていく。
何も着けていない下半身が悩ましい。
むっちりとした、いかにも人妻らしい肉づきの内腿が黒い刺繍のストッキングに妖しく映えている。
恥ずかしいのか屈辱感のためか、黒く薄い生地で覆われた爪先が屈まり、ふるふると震えていた。
そんな姿でさえ、オセアノンの嗜虐欲望を刺激した。
自慰を覚えたばかりの少年のように激しくしごき、あっという間に達してしまう。
「ううっ……」
一声唸ると、これまたビアンカの開口された媚肉の中に射精していく。
生温かい粘液が膣内の粘膜に引っかけられ、ビアンカは泣き叫ぶ。
「いやあああっ、もういやあっ……し、しないで、出さないで!」
ビアンカは、羞恥や恥辱よりも哀しい思いの方が強くなってきた。
人間性が否定されている感じがする。
相手が魔物だろうと、またまたこの男たちであろうと、犯されているのであれば、まだ女として扱われている気がする。
ただ射精され、精液をかけられるだけなのだから、これはもうトイレと同じである。
男の排泄物を受け止めるだけの便器に過ぎないではないか。
なのにビアンカには、屈辱や悲哀の中に、どす黒い被虐の快楽が芽生えてきていた。
こんな酷いことをされているのに、いや、酷いことをされているからこそ、腰の奥が熱くなってきている。
認めたくはないが、膣のもっとも深いところが熱を帯びてきていた。
男たちは高揚していて気がつかないようだが、愛液の量も増えてきている。
なぜ自分の身体がこうなってしまうのか、ビアンカは哀しく、情けなくなった。
「ああ……、もういや……」
抗う声にも力がなくなってきていた。
オセアノンが引っ込むとザバンが、ザバンが終わるとルドマンが続けて同じことをした。
顔見知りのこの商人までが、自分を辱めてくる。
「確かに良い身体だ。きっとこれで男を騙してきたんでしょうな」
「……」
ビアンカは反論する気にもならず、顔を伏せてむせび泣いた。
ルドマンが自慰を始めると、残りの男たちはビアンカに群がり、肌に舌を這わせたり、乳を揉んだりしている。
もちろんその間も、自分の性器をしごくことは忘れなかった。
一回や二回では終わらないぞ、とその顔が言っている。
ルドマンは目を見張った。
まじまじとビアンカの裸を見たのは初めてだ。
なるほどこれなら、養女のフローラやデボラを振ってまでこの女に惚れたリュカの気持ちもわかるような気がする。
しかしルドマンには、それが面白くなかったのだ。
手塩に掛けて育て上げたふたりの娘より、この女を選んだ国王──リュカを快くは思えなかった。
しかもデボラの方は、リュカに断られたショックからなのか、このところ不審な行動が目立つ。
ルドマンがいくら諦めるよう言って聞かせても効果はなかった。
確かに男勝りなほどに気丈でプライドの高い娘だが、気立ては悪くないのだ。
ルックスだってビアンカに負けていないと思う。
フローラも同じだが、彼女はもともとおとなしいせいか、まだ未練はあるようだが現状を受け入れている。
デボラはそうもいかなかったようだ。
そんなこともあり、ルドマンはこの誘いに二つ返事で応じたのだった。
じっくりとビアンカの裸身を見ながら自慰をする。
こんなことは30年ぶりだと思う。
しかし、そうしたくなるほどに、確かにこの女の肉体は見事だった。
乳白色の裸体は男を興奮させるに充分な豊かさを持っている。
茶褐色のレザーベルトや、黒いガーターやストッキングが際立つような素肌のきめ細かさが素晴らしい。
白い陶器のようにすべすべで、抜けるような肌を見ているだけで、むくむくとペニスが硬くなっていく。
「う、うっ」
ルドマンがペニスをしごきながら唸っている。
とても正視に耐えなかった。
見たくないから顔を伏せているものの、その興奮しきった声は聞こえる。
胸をまさぐられ、首筋やうなじを舐められている。
いやが上にもビアンカの官能までが刺激されていく。
「んおっ……!」
ルドマンが吠えて射精した。
どろっとした精液がビアンカの膣を目がけて発射され、それは見事に膣内に放出された。
またあの生臭く、生温かい、不快極まりない液体がビアンカの性器を汚した。
ルドマンが終わると、もう順番などなくなったようで、寄り集まってビアンカの膣へ次々と射精していった。
「ああ……」
精液を膣内に浴びせられるたびに、ビアンカの裸身がぶるっと震える。
繰り返し射精を続けられ、もうだいぶ中に溜まってしまったようだ。
身体を揺すると、こぷこぷと中の精液が波打つような気がする。
尻が痙攣している。
腰がわなないていた。
そして、あろうことか膣奥までが蠢いてきた。
子宮が精液に反応しているのだ。
中をじっくり観察していたザバンが気づいたようだ。
「みんな見てみろ、この女のマンコを」
「ん?」
「中が蠢いておるわ。ほれ、中の精液がごぼごぼしている」
「おお、確かに。しかし、随分と出したもんですな」
「んん? まるで子宮が精液をごくごくと飲んでいるように見えますぞ」
「ひっ……!」
ビアンカが鋭く悲鳴を上げた。
ルドマンがからかうように言う。
「きっとそうですよ、大臣。この女、犯されているわけでもないのに、精液を中に入れられただけで興奮しているのだ」
「くく、いやらしい牝豚だ、感じておるのか」
「そんな……違う、違います、私は……」
「それにしても大した量だ。これだけ子宮に入れられれば妊娠するかも知れんな」
「いやああ……」
そうかも知れない。
ビアンカは目眩がした。
ジャミの子種で孕むのもイヤだが、こんな連中の精液で妊娠させられると思うと気死しそうになる。
大きく開脚され、その中心の膣穴に大量の精液を溜め込み、妊娠の恐怖とおぞましさに打ち震える美女を見ているだけで、男どもの獣欲は
むらむらと湧き起こってくる。
アントニア大臣がビアンカの腿を撫でながら言った。
「どうですかな、ザバンさま。こうなったらいっそのこと……」
「い、いや、それはならん。そんなことをしてバレでもしたら、わしは……。いや、わしだけではないぞ、おまえたちもきっとあの方に……」
「ここまできたら、もう一緒ですよ。それにジャ……いや、あのお方は今日、ここにはいないのでしょう」
「……そう聞いているがな。しかし……」
渋るザバンにオセアノンもけしかける。
「ザバンさま、いいではないですか。これだけの女を目の前にして、若造のようにオナニーだけで済ませろとは酷ですよ」
「ううむ……」
「あのお方の指示は、この女の中に精液をたっぷり溜めておけ、というものだったのでしょう? だったら犯して中に出してやっても
同じではありませんか」
もうザバン以外の閣僚たちは、ビアンカを凌辱する気でいるらしい。
側近のドルマゲスまでこう言った。
「なに、バレなければしていないのと同じです。だいいち、抱いたかどうかなんて、ただ見ただけではわかりっこない」
「しかしな、この女が喋るかも知れんぞ」
「口止めしておけばいい。王宮はともかく、この国の実権を握っているのは我々です。もしこの女があのお方に今日のことを口にしたら、
王の……あのへなちょこ亭主の身の安全は保証できないとでも言っておけばよい」
「それもそうか」
ザバンまでが淫猥に笑いながらそう答えた。
「ルドマンさんはどうお思いですかな?」
「ふふ、私は何も聞いていませんでしたよ。そもそも私は一介のあきんどです。お国の政治に口を挟むなど以ての外」
「くく、さすがに肝の据わった大商人ですな。では異論はないということで」
「無論。私にとっても娘の仇敵のような女ですからな、ここはひとつきつい仕置きで懲らしめてやろうかと」
「仕置きにはならんかも知れませんな。我々のテクニックで何度も気をやって良い思いをするだけかも知れぬ」
「それもそうだ」
男たちは顔を見合わせて大笑いした。
そしてビアンカが正気を取り戻す前に、一斉にその肢体に襲いかかっていく。
一対一で犯している時間的余裕はないから輪姦ということになる。
今の姿勢ではやりにくいということで、ビアンカをロープによる緊縛から解放した。
もうほとんど抵抗する気もないだろうが、一応の用心として、背中に回させた両腕を革製のアームザックですっぽりと包んでしまった。
仰向けから、四つん這いの姿勢になったせいか、膣に溜まった精液がどろりと零れてきた。
「おお、もったいない。入れてやったザーメンが零れてきましたな」
「なに問題ない。また入れてやればいい、子宮が溢れるまでな」
ザバンはそう言うと、ビアンカの膣口に差し込んだクスコを引き抜いた。
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