一戦を終えると、素子と速水はシーツを肩まで掛けたまま、並んで仰向けに寝ていた。
男にとっては何となく気まずい時間で、こういう時はタバコでも吹かすのがいちばんだが、生憎彼は喫煙者ではない。
まだ経験が浅いウブな少年を演じている以上、終わったからといって、さっさと着替えるわけにもいかないだろう。
さてどうするかと思案していると、素子の方が物憂い口調で話し始めた。

「……昔ね、善行くんとつき合っていたの」
「は?」
「ところが……捨てられちゃってね……。ずっと前から他のひとと、つき合ってたの」

はあ、なるほど、そういう事情か。
道理で、善行とはうまくいっていない雰囲気だったわけだ。
衝突するというところまではいっていないが、事あるごとに反発していた。
それは単に技術士官と戦術士官の思惑が合致しないからだと思っていたのだが、裏があったということだ。

「……男を見る眼がなかったのね。……次は、失敗しないようにしないと、ね」

素子はそう結ぶと、左横にいる速水の方を見た。
その瞳には強靭な意志が感じられる。
独占欲とか、その類だろう。
男を縛り付ける目。
何のことはない、善行もそれがイヤだったんだろう。
気持ちはわかる。

素子は確かに美人だが、束縛されることを嫌う男だっている。
まして速水は、目的のための手段として女を篭絡している以上、素子のものになるわけにはいかない。
しかし、原素子少尉の整備士としての実力、隊内での影響力、そしてこの嫉妬深さからくる報復を考えると、ぎりぎりまではこの女に従った方がいいかも知れない。
速水がそんなことを考えていると、女は彼に身体を預け、腕を絡めてきた。

「ふふ、私もこんなことするの、ひさしぶりなのよ」

そう言って、速水の腕に頬擦りをする。

「一所懸命にしたから、少し疲れちゃったかな」

少し顔を赤らめ、照れたような表情を浮かべ、素子はなおも少年に語りかける。
こうしてピロウトークするのもひさしぶりで、嬉しいのだろう。

「ふわぁ。なんだか……眠いわ。夜更しはお肌の天敵な上に、私は、どうも低血圧なのよね」
「……」
「……あ、それから……」
「なんでしょう?」
「ちょっと昨日頑張ってみたから、後で機体性能を見ておいてね。……じゃ、悪いけど私……夢も見ず寝るわ。おやすみなさい」

───────────────

ちょうどその頃。
まだ小隊長室のプレハブに残っている者がいた。
丸メガネをかけた善行部隊設営委員長と、先任下士官の若宮康光軍曹である。

「……」

善行は暗いというより、やや疲れたような顔つきで通信機を切った。
その様子を見て、軍曹が気遣わしそうに聞いた。

「いかがですか、司令殿」
「……いけませんね。軍令部は矢のような督促を繰り返しています。早く前線に送れと」
「失礼ですが、司令殿。ヒヨコどもは、まだ羽根も満足に生えておりません」
「分かっていますよ。……だが、覚悟だけはしておいたほうがよさそうですね」
「ですが……」
「もういい、軍曹」
「……」

善行中尉は、なおも言い募ろうとする若宮の言葉を手で制した。
先任下士官としての彼の気持ちはわかる。
戦いは数だ。
この第5121独立駆逐戦車小隊の候補生どもは、まだとても戦力にはならない。
それでもいいから、頭数でいいから、という軍令部の言い分もわかるが、現状ではそれこそ員数以上のものにはならないだろう。
役立たずは、どれだけいても役立たずなのだ。
彼らと共に戦うことになる他の部隊が気の毒である。
足を引っ張るだけになるだろうからだ。

挙句、貴重で高価な士魂号を全滅させ、隊員も全員戦死。
そうなることが目に見えているのだ。
唯一の慰めは、随伴歩兵として配属された連中の中に、幾人か実戦経験者がいる、というくらいだ。

だが、肝心の戦車部隊にはベテランはゼロだ。
若宮は随伴歩兵の分隊長となる予定だから戦車には乗らないし、乗れない。
善行は士魂号に搭乗することも出来ないではないが、指揮官自らあれに乗るようでは戦は負けだろう。
通常、部隊が新設される場合は、基幹要員として他の部隊から経験豊富なベテランを引き抜いて配属する。
しかし、この5121にはそれがないのである。

若宮の危惧はそれだけではない。
こんな半端な即席部隊で戦おうものなら、自分の命だっていくつあっても足りないのだ。
まだ死にたくはなかった。

「準竜師にも話してはみたのですがね」

と、善行は言った。

準竜師とは、この区域を統括する軍司令部の幹部だ。
九州生徒会連合軍を統括している。
名を芝村勝吏という。
芝村一族である。
とっくに上の階級──竜師になる資格を得ているし、周囲も昇進するよう促しているのだが、どうしたことか本人が望んで現在の位置に留まっている。

勝吏が率いる生徒会連合軍とは、九州地区の高等学校部隊を統括する組織だ。
旧軍時代、部隊は地域ごとに置かれるのが常だったが、戦力の中心が若者に移るに従って、自ずと学校主体になっていった。
各高校ごとに部隊が編成され、生徒会が指揮中枢となって戦闘および兵器開発に臨んだ。
それらを統合し、戦略指揮するのが九州生徒会連合総司令部である。
そこの総司令は、後に「熊本の女傑」として名を馳せた林凛子だが、芝村準竜師は彼女を取り巻く幕僚たちの長、つまり参謀長だった。

「……準竜師殿は何と?」
「『仕方がない、命令には従っておけ』だそうです」
「……」
「但し、軍令部からの命令で動くことはないようです。準竜師の話だと、員数外の遊撃部隊として扱うそうです。つまり、どこに出撃するかは
基本的にはこちらで決めていい、と。ある程度の自由裁量を与えてもらったわけです」

善行はそこで立ち上がり、デスクに戻った。
そのまま座らず、後ろのハンガーにかかっていた上着に袖を通す。

「……何か考えがあるようでしたがね。まあいい、この件は以上です。軍曹も今日は帰りたまえ」
「はっ……。司令殿、ひとつ質問してよろしいですか」
「手短に頼みます」
「ありがとうございます。軍令部は出撃の期限を切ってきましたか?」
「……」

善行はメガネのフレームに手をやり若宮を見た。
表情はなかった。

「……三週間以内だそうです。もしこの期間内に出撃できなかった場合、以降、軍令部が直接命令を下すそうです」
「三週間……ですか」

───────────────

軍令部から過酷かつ非情な命令が下され、苦悩する士官や教官たちとは裏腹に、戦車士官候補生たちの日常は足早に過ぎていく。
懸命と言えば懸命、お気楽といえばお気楽な訓練の毎日が過ぎ、それでも過酷な実弾演習が繰り返される。

この日の演習は、少しは結果が良かったらしく、坂上、本田と言った教官連も、さほど小言を口にせず解散した。
ハンガーには、演習場から持ち帰られ、ドックに入った士魂号が三機並んでいる。
各々の機体には、それぞれ整備員とパイロットたちがまとわりついている。

士魂号三号機──突撃仕様の複座型が、速水と舞の乗機である。
三号機には素子がついていた。
単座型士魂号に比べ、複雑な機体だから整備班長がついているという大義名分はあるが、実際は速水機だから彼女が見ているのだ。

もちろん速水もいる。
舞の姿はなかった。
素子は舞を毛嫌いしているし、舞もそのことは知っている。
そして舞は速水とふたりでいたいと思っているから、他の人間が速水といる時にはあまり近寄ってこないのだ。
それをいいことに、素子は可能な限り、速水の傍にいるようにしている。
速水としては、素子だけでなく舞も篭絡したいのだが、それを素子が知ったらえらいことになりそうだ。

先日、素子を抱いた時にわかったことだが、この女は異様に嫉妬心が強い。
独占欲がすごい。
どうやら、以前つき合っていた善行も、それに辟易として別れたらしい。
これは速水にとって、いささか想定外だった。
どうせなら、舞も並行してたぶらかそうしていたのに、これではそうもいかないだろう。
効率は悪いが致し方なかった。
素子は、少なくとも士魂号の秘密や、それに絡んだ芝村あるいは軍上層部の話に通じている可能性もある。
軽々に扱うわけにはいかない。
従って、とりあえずはおとなしくしているしかないだろう。
まずは、このお姉さんぶった年増女を完全に骨抜きにすることが先決だ。
素子は、隣の二号機や一号機に取り付いている部下たちを見渡した。

「どう? パイロットさん」

そう言って速水を振り返った。

「見てやってよ。あなたが壊すたびに、整備士達がどれだけ努力して修理しているかを。部品不足や最近の精度不良の部品にめげず、泣きごと
いわずに、頑張っているんだから」
「……」
「……謝れって言っているんじゃないのよ。感謝しろって、言ってるわけでもないの。ただ、自分一人で戦争しているんじゃないと、そう教えたいだけ」

素子はそう言いながらパイロットたちを見た。
壬生屋も滝川も、作業の手を止めて素子を見ている。
彼らに言い聞かせるように続けた。

「一人では戦車は動かないのよ。名パイロットは、そこのところ良く分かっていなきゃ、ね?」

一号機と二号機のパイロットは気まずいような、それでいて素子の言葉を噛み締めるような表情で、また作業に戻った。
それを見て、整備班長は速水に笑いかける。

「今のうちに整備しなきゃ。予備の士魂号、もっと送ってくれないかしら」
「そう簡単にはいかないんじゃないですか? 高いんでしょう、これって」
「まあね。うちの司令さんも準竜師に陳情してるらしいけど、なかなかね……」
「舞も芝村でしょう? 準竜師に直接頼めないんですかね?」
「さあ。どうかしらね」

腕利きの女性整備長は、そう言いながらピンセットや精密ドライバを操っている。
戦車の整備というよりは、電機の分解整備のような器材を使っていた。

「この士魂号の後期型だけど、かなりいいわ。少しづつだけど、性能は上がってる」
「そうですか」
「特に、人工筋肉が。あの人工筋肉は、芝村一族の秘密なの。我々はただ貰って使うだけのオーバーテクノロジーなんだけど……」

素子はそう言って、顔についたオイルをツナギの袖口で拭った。
拭き取り切れなかったオイルの黒い跡が、頬にうっすらと残っている。

「一体彼らはどうやってあれだけの物を研究してきたのかしら。研究施設なんて、ひとつも持ってないのに」
「……」

なるほど、思った通りこの女はいろいろと知っていそうだ。
芝村一族のことは、舞をたらしこんでからゆっくり情報収集しようと思っていたが、ここからもいけそうだ。
士魂号のブラックボックスを探ろうとして、詳しそうなやつを捜していた速水が見つけたのが素子だった。
士魂号目当てでたらしこもうとした女だったが、思いのほか事情通らしい。
内部ではなく、外部から見た芝村について、素子の話を聞くというのもいいだろう。
速水は思い切って聞いてみる。

「……素子さん、じゃない、副委員長は、士魂号とか芝村一族について詳しいんですか?」

一瞬、凄惨な表情で速水を睨みつけた素子だったが、すぐに頬を緩めた。

「……どうして? あなた、何が知りたいの?」
「何って……」
「私が士魂号について詳しいのは当たり前でしょう? 整備主任なんだから」
「そういうことじゃないです」

速水はきっぱりと答えた。誤魔化しは効かないようだ。

「人にはね、知らなくていいこともあるのよ」
「……」
「知らない方がいい、と言いなおした方がいいかな」

素子はそう言って、少年の澄んだ瞳を見つめた。
自分の知っていることを告げるということは、速水も巻き込むということにつながる。
秘密を共有したいという気持ちの他に、この子だけは芝村に毒されてはならないという思いも強くある。
黙っている速水に素子が聞いた。

「……それとも、芝村に興味があるのかしら?」
「というか……」
「それとも……まさかとは思うけど、あのお姫さまのこと?」

メラッと妬気にかられる。
おとなげないと思うのだが、素子はこういう時、自分が嫉妬深いことを思い知らされる。
もっとも、おとなげないと言っても、まだ素子は19歳である。
だが、自分が「これ」と見込んだ男が、そして身体を許した男が、他の女にわずかでも関心を持つことは我慢がならなかった。
そうじゃなくても、学習でも訓練でも、いつもあの女は速水と一緒にいるのだ。

「舞ですか? 興味というか……まあ、面白い子だとは思いますが、パートナーである以上、よく知っておいた方がいいというか、その程度です」

それを聞いて、素子は立ち上がった。
仁王立ちである。
両手に腰を当てて少年に告げた。

「関わり合いにならないほうがいいわよ。あの人の実家、悪い噂しか聞かないわ」
「……」

唖然とする速水を見て、少し視線を逸らした。

「あの目つきがいやなのよ、お姫さまの。まるで私たちなんか、目に入っていないよう。……多少能力があるからと言って……!」

弾劾するような口調で激しくそう言うと、素子は足音も荒くその場を立ち去ってしまった。
周囲にも聞こえるような声だっただけあって、整備員たちは唖然とし、滝川と壬生屋は少し慌てたように速水のもとに駆け寄っていった。

───────────────

二度目の行為は、素子のアパートで行われた。
八畳ほどの広さのワンルームで、フローリングの上に絨毯が敷き詰められている。
窓際にセミダブルのベッドが置かれていた。
独り寝するには大きすぎるが、素子曰く「寝る時くらいは窮屈な思いはしたくないから」なのだそうだ。

怪しいものだと速水は思う。
善行と別れて以降、また別の男を物色すべく、こうしたベッドにしているのだろう。
そう、今の速水のように。

素子は速水に背を向けると、思わせぶりに一度軽く振り向いてから、おもむろにジャケットを脱ぎ始めた。
速水は迷うことなく素子の背中に抱きつく。
誘ってくるなら応じてやろう、というところだ。
やはりそのつもりだったのか、素子は悲鳴も上げず、さして抵抗もしないで速水の腕の中で少しもがいた。

「……なあに? せっかちなんだから……んっ!」

速水の熱い舌が首筋を這うと、素子はピクンと反応して身を捩った。
少年は、素子の白い肌にねっとりと舌を這わせながら、巧みに服を脱がせていく。

「おや」と素子は思った。
脱がし慣れている気がするのだ。
見た目はおっとりしているし、普段の言動もそうなのだが、意外と速水は女と経験しているのかも知れなかった。
妬心の強い素子の心が少し灼けた。
だが、すぐに振り払う。
つき合う以前のことまで詮索するのは子供じみている。
自分はもうおとななのだからと、素子は思い直した。

「厚志……、服が皺になるから、自分で脱ぐわ……あっ……ちょ、あっ……」

速水は素子の言葉に従わず、そのままジャケットを脱がせるとTシャツを捲り、ブラの上から大きな乳房をゆっくりと揉みしだいていった。

「んんっ……」

彼の腕から逃れようとする素子をしっかりと抱き留め、乳房の形や柔らかさを確かめるように速水はじっくりと揉んでいく。
左手は素肌の上を這い進み、浮き出たあばらやくびれたウェストのラインをなぞる。
乳房を揉まれ、肌をまさぐられる微妙な快感に、素子はピクッと身体を痙攣させ、「んっ」と鼻を鳴らしている。

その微妙な快感で、素子の官能に火かついていく。
身体を細かく震わせ、足が萎えるのか、それとも逃げようとしているのか、だんだんと前屈みになってくる。
その素子を後ろからしっかりと抱き留めた速水は、乳房を掴んで立ち上がらせた。
まだ少し腰が引けていたが、その臀部に硬いものが押しつけられた。

「あっ……!」

それが何か覚って、素子は思わず腰を逃がした。
しかし速水は素子の腰を掴み、ぐっと股間のものを尻の谷間に食い込ませている。
素子の頬がぼうっと染まり、その美貌にも羞じらいの色が浮かんだが、すぐに落ち着いた口調に戻った。
ペースを取り戻して、速水から主導権を奪おうとしているのだ。

「こ、こら、悪戯が過ぎるわよ……あっ……な、なあに、この硬いのは」
「素子さんが欲しがっていたものですよ。ほら、もうこんなになってるんです」
「え、ええ……、わかるわ。厚志の……、すっごく熱くなってる……、それに、ああ……お、大きいわ、すごく……。こんなにバッキバキに
硬くしちゃって……恥ずかしくないのかしら?」
「恥ずかしいのは素子さんの方でしょう? 硬いの押しつけられて悶えてるんだから。僕の硬くて太いのが、素子さんの柔らかいお尻に食い
込んでるのがわかるでしょう?」
「わ、わかる……わ……、んっ……、こ、このすごいのが私の中に……あっ……は、入りたがってるのよね……んんっ」

髪に顔を埋めたままの少年に耳元で淫らな言葉を囁きかけられ、素子の性感はぐんぐんと上昇していく。
速水の鼻や頬が髪や頭皮を撫でるだけでも感じてくる。

「あっ……!」

速水がブラジャーを引き千切るように剥がすと、形の良い、いかにも柔らかそうな若い乳房がぶるんとまろび出た。
まろやかな乳房は、直に少年の手で揉みしだかれて淫らに形を変えている。
たちまち乳首は反応し、乳輪からぐぐっと屹立した。
速水は素子のうなじや首を舐めながら乳首を指で転がし、右手を下半身に伸ばす。
キュロットの裾から手を通し、ショーツの隙間から指を侵入させた。
反射的に素子の腕が伸び、その手を止めようとするものの、速水の腕は意に介さなかった。

「あっ、だめ! んんっ、そこは……くうっ!」

速水の指がクリトリスをそっと撫でると、素子は大きく顔を仰け反らせて喘いだ。
さらに、もう濡れそぼっている膣口をくすぐるようにまさぐると、全身をわなわなと震わせ、とろりと熱い蜜を吐き出してくる。
乳首とクリトリスを重点的に責められ、素子はもう踏ん張ることも出来ず、後ろの速水に背中を完全に預けていた。

「気持ち良いんでしょ、素子さん」
「そんなこと……あっ……」
「強がることないですよ、ほら、どうです?」
「くっ、だ、だめ、それっ……あ、あ……いい……気持ち良いわよ……だ、だからもう……んううっ」

素子は、年少の学兵に嬲られて声を上げてしまうのが恥ずかしいのか、右手の人差し指を唇に当て、必死に喘ぐのを堪えているようだ。
それでも、感じるポイントを愛撫されるとその指も離れ、つい「ああっ」と官能の声が漏れ出てしまう。
素子の右肩から顔を出した速水は、感じ始めた女の艶っぽい美貌にむらむらと獣欲が込み上げてくる。
小さく口を開け、遠慮がちに喘いでいる朱唇に唇を重ねた。

「んむむっ……むう……んん……んじゅっ……ちゅっ……」

いきなり唇を奪われ、最初は驚いたように顔を振りたくって逃れようとした素子だったが、貪るように口を吸われると、すぐに身体の力を抜いた。

「んんん……む……むじゅっ……んむ……ちゅぶっ……ちゅううっ……」

長く濃厚なキスが終わると、もう素子の表情がとろけている。
いつもの凛とした様子はなく、虚ろになっていた。
よほどキスに弱いのか、それとも、いつもとは違う速水の強引さに戸惑っているのも知れない。

その速水は、性急なほどに素子を求めていた。
有無を言わさずベッドに押し倒すと、彼女が抗う間もなくTシャツを脱がせ、キュロットとショーツをするっと膝まで下げてしまう。
ソックスだけは履かされたままだったが、単に忘れたからなのか速水の趣味なのかはわからない。

勝ち気な素子は、押し倒されたり、強引に下着を剥ぎ取られる経験はほとんどなかったから、呆気にとられていた。
誰もが素子の美しさと職務上の優秀さを知っていたし、性格的に強気なのもわかっていたから、一種、腫れ物に触れるような扱いだったのだ。
それは一線を越えた恋人でも同じだったのである。
あくまで主役は素子であり、男は傅く召使いだったのだ。
善行は、そんな素子の我が儘さや嫉妬に嫌気が差し、彼女を捨てたのである。
といって、根が紳士だったから、速水のように素子を乱暴に扱うようなこともしなかった。

裸に剥かれ、ベッドに押し倒されて、素子はほとんど初めて「犯される」という実感を抱いている。
セックスの経験はあるが、それはあくまで素子主導であり、良くても対等なパートナーとしてだったから、こうして無理に犯されるようなことはなかった。
しかし、その初めての行為に、素子の官能はいたく刺激されていた。

女王様から一気に娼婦にまで堕ちた気がする。
その被虐的な感覚に素子はゾクゾクし、腰の奥が熱くなるのを感じていた。
それでも、いつの間にか全裸になっていた速水が、硬そうにそそり立ったペニスを支え持ったままのしかかろうとしているのを見て慌てた。

「ま、待って厚志!」
「……何です、今さら。まさか、したくないとでも……」
「そうじゃないわ。だから……、コンドームを……」
「持ってないんです。いいじゃないですか」
「だめよ。私、持ってるから。その机の一番下の引き出しに……あ、待って!」

素子の言葉を無視し、覆い被さってきた速水は、ペニスの先で媚肉のスリットをなぞるように滑らせている。
肉棒のカウパーと素子の愛液でぬるぬるになっているそこは、すでに受け入れ可能になっていた。
素子は、今にも挿入しそうな速水の胸に手を突き、押し返していく。

「だめ、待ちなさい! ちゃんとルールは守ってよ、する時は避妊しないと……」
「もう待ちきれませんよ。それに、ナマの素子さんを感じたいんです。いいでしょう?」
「厚志……」
「素子さんだって、僕を直に感じたいと思いませんか? ゴム越しなんて……」
「そ、それは……それはそうだけど、でも……」
「そうでしょう? ならいいじゃないですか、いきますよ」
「待ってってば! でも、もし妊娠したら……」
「大丈夫ですよ」

速水は静かに微笑んで見せた。
その柔らかい笑みに、素子の腕の力が抜ける。
彼女には、この「天使の微笑」の裏に隠された「悪魔の嘲笑」が見えていない。

「いく時には抜きますから。外に出せば同じでしょ?」
「でも、そんな……あ、あ、だめっ……んんううっ……!」

まだ躊躇する素子を押し切って、速水のペニスが媚肉の中に沈んでいく。
挿入するには十二分に潤い、熱くぬめっていた膣口は、ほとんど抵抗なく肉棒を受け入れていった。
濡れてほぐれていたにも関わらず、速水の長大なペニスは素子の膣に猛烈な圧迫感を与えている。
素子はぐっと顎を反らせ、苦悶に顔を歪め、身体を捩る。

「くうっ……は、入る……厚志の、入ってくるっ……んっ、き、きつっ……あ、あう、大きいっ……!」

速水はゆっくりと、しかし確実に奥まで挿入していく。
そして根元まで埋め込み、腰同士が密着すると、子宮口まで届いた亀頭がぐぐっと子宮を押し上げた。
奥の奥まで突き通された素子は、身体を突っ張らせてその息苦しさを堪えている。

「んっ……あっ! ふっ、かいっ……い、いちばん奥まで来てるわ……んううっ……」

腰が完全に同化し、男女の陰毛が絡み合っている。
ペニスが来ていると思われる子宮の辺りを腹の上から軽くさすってやると、素子はくぐもった声で喘いだ。
根元まで挿入された肉棒が亀頭で子宮口を擦ってから、ゆっくりと引き戻され、そしてまた深々と差し込まれていった。

「ぐっ……ううっ……んはっ……あっ、い……うむ……んんんっ……」

速水とは二度目のセックスになるが、その身体に似合わぬ巨根にまだ身体が慣れていないのか、素子は苦しげに呻き、短く荒い呼吸を繰り返している。
長大なものを強引に埋め込まれたこともあって、まさに「犯されている」感覚を満喫していた。
苦悶と、徐々に大きくなってくる愉悦の表情を交互に浮かべながら、素子は腕を伸ばし、速水の背を抱いていた。
速水はゆっくりと肉棒を引き、カリ首が膣口に引っかかるまで抜いてから、また根元まで押し込んだ。
押し込んだまま腰に力を入れ、ぐりぐりと子宮口を擦ってやると、素子は甲高い悲鳴のような嬌声を放った。

「んひっ! い、いいっ……!」
「どうです、素子さん。僕の、いいでしょう?」
「んんっ、お、大きいわ、すっごく……そ、それに、ああっ、すごい硬くて……あうっ、、痛いくらいよ……」
「それが素子さんの中に入ってるんだ」
「そ、そうよ、あうう……い、今まで誰も入ってきたことがないところまで来てるのよ……深くてすごいっ……あ、ああ、そ、それ……子宮に、
くうっ……め、めり込んできてる……ああっ」

深く強い突き上げに反応し、素子の動きと感じっぷりにも拍車がかかってくる。
たくまししすぎるペニスが力強く何度も膣を抉っていくと、堪えきれないかのように裸身をうねらせ、腰を弾ませた。
速水の腕を掴んで爪を立て、自分から乳房を揉みたてていく。

「んくっ、あう、深いっ……ど、どうして子宮ばっかり……ああっ」
「それが気持ち良いんだろ、素子さん」
「い、いいっ……いいのっ」

素子はためらわずガクガクと何度も頷いた。

「あ、あ、もう……はああっ、だめっ……き、来ちゃう! ああ、ウソよ、こんなに早くっ……」
「どうした? もういきそうなのか、え?」
「そ、そうよっ……い、いっちゃう……いくの……あ、いく……あああ……」

素子は羞じらいもなく絶頂しそうなことを訴えると速水にしがみつき、その胸に顔を押しつけている。
さすがに気をやった顔を間近に見られるのは恥ずかしいらしい。
かまわず速水は、そのままで激しく律動を続けていく。
へばりつく粘膜を引き剥がし、むちっとした膣肉を押しのけるようなピストンを仕掛けていくと、素子はたちまち大きく仰け反った。

「あ、あああっ……い、いく……いくうううっ……!」

ガクガクッと身体を数度弾ませ、素子は最初の絶頂に達した。
呆気ないほどの崩落だった。
それでも貪欲に速水の「男」を求め、肉棒を貪るように腰を淫らに振っていく。
もちろん速水も、素子の絶頂した媚肉の震えを締めつけと味わいながら腰を使っている。

大きく突き上げるたびにゆさゆさと跳ね動く乳房を乱暴に掴み、ぎゅうっと絞り上げて素子の喉から悲鳴と嬌声を絞り出させた。
素子の子宮口を亀頭の先で突っつき、カリのエラで狭い膣内をゴリゴリと抉る。
速水の、レイプするような乱暴な責めにも、そのペニスの長大さにもすっかり馴染んだ女体は、激しい動きにも難なく対応し、絡みつき、締め上げてきた。
速水は、跳ねる素子の腰を押さえ込み、子宮を持ち上げるほどに深く突き上げ、そのままの状態でぐりぐりと子宮口を削るようにこじ開けようとしている。

「ぐううっ、痛いわっ……あ、あんっ、深いっ……」
「深いところを痛いくらいに責められるのがいいんだろう、素子さん」
「そ、そうよ、あうう……ら、乱暴なくらいに、ああ……犯されるみたいにされるの、好きよ……んはあっ……!」

子宮口を嬲られる苦痛を感じ取ってはいるが、それ以上の快楽が素子の心身を襲ってくる。
媚肉や膣内など性感帯への快感に加え、手玉に取るはずだった少年兵に完膚無きまでに犯される屈辱と被虐感で心まで貪られていった。

「あ、あ、だめっ……厚志、私、またっ……ひああっ……」
「なんだい、またいくの? 年上なんだから少しは我慢してみなよ」
「そ、そんなこと言ったって……あ、激し過ぎるのよっ……」
「それが好きなくせに。美人で優秀な整備班長どのは、とんだ淫乱女だったわけだ」
「そ、そんなこと言わないで! い、いいからしてっ……今はセックスしてよ! わ、私っ……いいっ!」

硬いもので子宮口を擦られる愉悦と、そこから発せられる熱で、素子の全身が白く灼けていく。
速水は、必死になって腰に絡めてくる長い脚を引き離し、女をベッドに押しつけるように抑えると、再度激しく腰を打ち込んでいった。
たまらず素子が大きく喘ぎ、そしてよがった。

「あ、あううっ、いいっ……すごっ、いいっ……ああああっ!」
「いいっ、深いっ……んんんっ、こ、こんな奥までなんて……は、初めてよ、ああっ」
「くっ、奥っ……奥に当たって……あ、あはあっ!」

男が聞いたら、すぐにでも射精してしまいそうな艶っぽい声を上げながら、素子は身悶えた。
切なそうな物欲しそうな表情でキスを求めるものの、速水は冷たくそれを無視して肉棒を操った。
膣の奥底、突き当たりの壁まで貫き、そのままで腰をうねらせて亀頭部分の硬さで胎内を蹂躙する。
密着した男女の腰からは、ぐちゃぐちゃ、にちゃにちゃという淫靡極まりない粘った水音がひっきりなしに響いてくる。
べとべとになった濃い愛液は、速水と素子の双方を汚していた。

「あああ、だめええ……厚志、もうっ……ホントにもうだめっ……あ、またよ、またっ……ひっ、いっ、いきそうっ!」
「僕もだ、いくよ素子さん」
「い、いって、あなたもいって! ……あ、だめよ!」

肉の喜悦にとろけきっていた美女の顔が、一瞬で正気に戻った。
速水はその理由を正確に理解しているが、わざと不満そうな顔を見せた。

「なんだよ、ここまできて。僕はいっちゃいけないの?」
「そ、そうじゃないわ……、さっき約束したでしょ? だ、出す時は外にって……」
「そんな、殺生だよ。僕はこのまま素子さんに出したい」
「だめよ、そんなの……ああ……」

抗う素子の口調が甘いものになっている。
口では拒絶しているものの、とても本気には思えなかった。
速水は、素子をいかせる直前の状態で焦らしているのだ。
子宮口にぴたりと亀頭をあてがったまま、腰をぐるっと回転させたり、ぐぐっとさらに奥まで緩く突いている。
動きがゆっくりなだけに、焦燥感とともに、速水の男根の様子までが素子ははっきりとわかった。

(ああ……、ほ、本当にもう出そうになってるんだわ……)

若いペニスがぐぐっと一回り大きくなった気がする。
びくびくと細かく痙攣までしていた。明らかに射精の前兆だろう。
その証拠に、素子の子宮口は熱い粘液を感じている。
カウパーがとめどなく溢れ出ているのだ。
ひょっとすると、もう精液も漏れ出ているのかも知れなかった。
このまま、この若い恋人の熱い精子をしっかりと受け止めたいという女の本能と、「懐妊」という最悪の結果だけは避けなければならないという
理性がせめぎ合っている。

その理性を溶解させるべく、速水は念入りに、かつ愉しみながら素子を嬲っていった。
まだ薄っぺらい理性で何とか中出しをさせまいとしているようだが、そんなものは今ひと突きで脆くも崩れるに違いなかった。
速水は念押しするように言った。

「いいね、素子さん。中に出すよ」
「そんな……、ああ、お願いよ、厚志、それだけはやめて……」
「本気とは思えないな。だってほら、素子さんの足が僕の腰にしっかり巻き付いて離してくれないじゃないか」
「こ、これは……」

素子は唖然としてそれを見つめた。
意識したわけではないのに、確かに自分の脚は男の腰に絡みついている。
より深くまで受け入れようとしているのだ。
速水はにやりと笑うと、素子の綺麗な顎を指で摘んだ。

「だから……、いいだろ?」
「あ、でも……も、もし本当に妊娠してしまったら……」
「「危ない日」なのかな?」
「そうじゃないけど……、でも……微妙なのよ。そうなってしまっても不思議はないわ……あ、んむうっ!」

そこで速水の唇が素子の唇に重なった。
して欲しかったキスを受け、素子の表情が緩み、そっと目を閉じた。
すっと口が開くと、速水の舌が遠慮なく口腔内に入ってくる。
素子はその舌に舌を絡め、ちゅううっと吸い上げる。

「ん、んん……んちゅううっ……ん、んむうう……」

速水もお返しのように素子の舌を激しく吸った。
舌の付け根から持って行かれそうなほどの強さで、素子は頭の芯が甘く痺れてきた。
口を離すと、女の口から「ああ……」と熱い吐息が漏れた。
その耳元に、甘い悪魔の囁きが響く。

「出すよ、中に。いいね?」
「お願いよ、厚志、それだけは……。ほ、他ならどこでもいいわ……、胸でも……か、顔にかけてもいい、だから……」
「だめ、許さない」

速水は微笑みながら、はっきりとそう言った。

「どうしてもだめなら……」
「だ、だめなら……」
「素子さんとは、もう終わりだ」
「そんな……!」

素子の胸がきゅうっと痛くなる。
この若い男を離したくない。
前回の二の舞はゴメンだった。

しかし、それにしても、この短期間でここまで速水を愛してしまったことは、素子自身少し意外に思っていた。
執着心は強い方だと思うが、ここまで一気にのめり込むようなことはなかったはずだ。
素子は、今さらながら速水厚志の持つ魔性に戦慄する思いだった。
速水は念押しにように言った。

「さ、いいね」
「……」

素子は顔を背けながら、小さく頷いた。
その結果が破滅をもたらすかも知れないというのに、素子の肉は熱く燃えていた。
愛する男の子種で受精したいという本能と、とうとうこの少年に孕まされるのだという背徳感が入り交じり、聡明で気丈な女を困惑させている。

「よし」

速水は満足そうに支配者の笑みを浮かべた。
しかし、それだけでなく、さらに素子を追い込んでいく。

「自分から言ってよ」
「な……にを……」
「中に出して、ってさ」
「っ……!」

素子は一瞬驚いたような顔になったが、すぐに諦めた。
もう彼女の官能と肉の疼きは我慢の限界まで来ている。
これ以上焦らされるように子宮口をやんわりと嬲られたり、逆にペニスを抜き去られてしまっては気が狂ってしまいかねない。

「言って」
「……ひどい男ね、あなた……」

少しだけ恨めしそうに少年を見たが、素子はすぐに従った。

「……だ、出して……いいわ」
「ああ、出すよ。素子さんの子宮の中にたっぷりと射精してあげる」
「ああ……、本当に出すのね……。いいわ、出して……私の中にあなたの精液……全部受け止めてあげるから……あ、ああっ!」

腰の動きは緩いものだったが、言葉の力で素子の絶頂が近づいていた。
速水の射精もコントロールされており、込み上げてくる射精感に合わせて一転して激しく素子の膣を突き上げていった。
素子は再び甲高い嬌声と喘ぎを放ち、必死に速水にしがみついている。
子宮口に亀頭がぐうっとめり込むのを感じ取ると、素子は絶頂した。
まるで身体のいちばん深いところを串刺しにされたように思った。

「やああっ、いくっ……い、いくわっ……い、いっくううっ!」
「くっ……、出る!」
「いやあああっ!」

速水の腰が素子の腰にぶち当たり、腰骨が軋む鈍い音がした。
その瞬間、速水は素子の腰を掴み、出来るだけ腰を密着させて深々と子宮にペニスを突き刺す。
僅かに開いた子宮口の感触を得ると、そこに亀頭をねじ込んで欲望のままに射精していく。

どっびゅううっ、びゅくくっ。
びゅるるっ、びゅるっ、びゅるるるっ。
どくどくどくっ。

熱くて濃い粘液をもろに子宮内に浴び、素子はガクンと大きく顔を仰け反らせて気をやった。

「んっはあああっ、出てるっ……ほ、ホントに厚志の出てるっ……すごいっ、奥に……奥に直接当たってる……あ、熱い……ああ……」

ねじ込まれた亀頭を子宮口がひくつくように締め上げた。
それに反応し、速水の男根がビクンビクンと跳ねながらどくどくと射精を続けている。

「いやあ、まだ出てる……お、多すぎる、精液……あう、子宮に流れ込んでるわ……に、妊娠するう……」
「まだだ、もっと出しやる」
「すごい……、ま、まだ出るの? ……い、いい……濃いのがこんなに……な、何だかおかしい、私……ま、またいきそう……う、うむ……いく!」

子宮に弾ける精液の勢いと熱さ、濃さに素子は恍惚となり、連続的に絶頂していた。
びくびくと媚肉が痙攣しながら、射精を続ける男根を絞り上げ、残りの精液を飲み干していった。

行為が終わり、物憂い、気だるい雰囲気が漂う。
腹這いになった素子は、隣の速水を見る。すっかり落ち着いた表情だ。
最初の頃の、おどおどしたような気の弱さは微塵も感じられない。
女を抱いて自信が出来てきたのかも知れない。

「士魂号のこと、知りたい?」

素子は、自重で柔らかく潰されている乳房を気にしながら言った。

「そうですね……興味あります」
「士魂号はね……生体部品で構成されているのよ。つまり、生ものってわけ。お早めにお召し上がりくださいって、なんだか女の子みたいよね」
「……」
「……なあに、その目は。まだしたいのかしら、さっきあんなに、あっ」

男は無表情のまま、女に貪りついていった。



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