第5121対中型幻獣小隊、別名5121独立駆逐戦車小隊。
ちなみに5121とは、第5連隊第1大隊第2中隊第1小隊の略称だ。
連隊の上部組織は師団あるいは旅団だが、5121の母体師団は、熊本の第5師団である。
戦時臨時特別徴集によってかき集められた10代の若者たちが形作る部隊。
軍上層部からも、何の期待もされていない。
しかし、それでも部隊は部隊であり、戦力である。
数のうちには入るのだ。

とはいううものの、その兵力は弱体極まる。
装備されている戦車は、士魂号単座型車体ナンバー50401……すなわち壬生屋乗機の一号機。
同車体ナンバー50418……滝川機である二号機。
そして速水と舞が乗車する士魂号複座型車体ナンバー50026……三号機。
これだけである。
通常、人型戦車一個小隊は4機をもって編成するはずだが、四号機は欠だ。
もっとも、これは5121に限ったことではない。
どこもかしこも、そして何もかも足りないのだ。

他に予備の士魂号が1機(あるいは2機)。
機体の予備があるのなら戦力として使えばいいではないかとの意見もあろうが、実際にはこれは予備部品扱いなのである。
滅多にない補給の直後であればともかく、そうでない場合、整備班には部品の余裕がない。
そこへもってきて、この士魂号ときたら装甲がぺらぺらで、敵の攻撃が当たれば、まず間違いなく破損する。
その上、やたら故障しやすい。
一会戦あれば、たちまち部品が足りなくなるのだ。
演習でも故障する。
そのために最低でも一機分は確保しておいて、そこからパーツを抜き取って使うのである。
従って、予備機体1機分は、いわば「パーツ取り」用だということだ。

稀に2機分あることもあるが、その場合でも乗せるパイロットすらいない。
精密機械である以上、そこらから引っ張ってきて誰でも乗せるというわけにはいかない。
短期だろうが促成だろうが、とにかく一端の教育くらいは施さないと歩かせることすらできないのだ。
その乗員を育てている余裕もないということだ。
まさに末期的であった。

その他の装備は、戦闘指揮車が一輌。
6つのタイヤを持つ装輪装甲車で、指揮用に電子通信設備が充実している。
通常、これ1台で2個小隊……8機の戦車を指揮できる能力を持っている。
司令の善行とオペレータの瀬戸口、東原がこれに乗る。
運転手として、小隊事務官の加藤も乗車する。

そして原木輸送用トレーラーを改装した大型輸送車が三輌。
言うまでもなく士魂号を輸送する。
戦車なのだから自走して進軍すればいいではないかと思うかも知れないが、そうはいかない。
通常戦車もそうだが、この士魂号も、やたら燃費が悪い上、居住性も悪いから、ただ乗っているだけで乗員は疲労してしまう。
おまけに足回りも華奢だから、進軍するだけで故障しかねない。
燃料節約とその後の整備、パイロットの体調管理を鑑みて、戦線までは輸送車に搭載するのが普通なのだ。
もはや尚敬高校から最前線までわずか20キロとなっていたが、それでも輸送車輌は必要である。

あとは整備員用の輸送トラックが三輌ある。
パイロットは定員割れしているのに、士魂号の整備が困難なため、整備士だけはやたらいるのである。

あとは部隊固有のウォードレス随伴歩兵が2個分隊。
彼らのための輸送トラックも一輌ある。
以上がこの部隊の戦力のすべてである。

度重なる軍令部からの命令により、この俄か戦闘集団に出撃命令が下ったのは、速水らが入隊して二ヵ月と二週間後だった。
ハンガー内が慌しい。
いつもの訓練前とは緊張感が違っている。
森や遠坂といった整備班の連中も、自分たちが前線へ出るわけでもないのに、顔つきが強張っていた。

パイロットたちも上擦っていた。
一号機の壬生屋は、目を閉じ、自機に手を押し当てて精神集中していた。
古武術を修める家系の娘だけあって、こうした緊張感には動じないようにも見える。
しかし、そこは16歳の少女である。
よく見ると、足元が小さく震えているのだった。
死ぬかも知れないのだ。
当然であろう。

二号機の滝川は、誰彼と言わず盛んに話しかけていた。
普段から口数の多い少年だが、そうすることによって押し潰されそうなプレッシャーと戦っているのだろう。

三号機の舞は、これはもういつもの無表情である。
周囲がいかに騒ごうとも、自分には無関係と言わんばかりに落ち着いている。

パイロットと歩兵に集合がかかった。
ずらりと並んだウォードレス姿の生徒たちの前に、彼らの担任ともいうべき教官が立った。
中年である。
180センチ80キロのがっしりした体格。
パンチパーマに濃いサングラスと、一見とっつきにくそうな男だが、実に言葉遣いが丁寧で、意外なほどの常識人だ。
少佐の階級を持つれっきとした軍人だが、およそ他の教官と違って、無闇に生徒をしごきあげるようなことはしない。
厳しいことは厳しいが、陰湿な制裁などは一切しなかった。
坂上教官が口を開く。

「この期に及んで、もはや何も言うことはありません。今までに私や本田先生から教わったことを、10分の1でもいいから思い出して実戦に臨んで
ください。そうすれば生還できる確率がかなり高まります。いいですか、あなたたちの任務は死ぬことではありません。敵を撃退することだけでも
ありません。幻獣を殺すことも大事ですが、それ以上に大切なのは生きて帰ることです。あなたたちの教育には莫大な費用がかかっています。平時で
あなたたちがサラリーマンをやって一生掛けて稼いだお金よりもかかるのです。それをむざむざ一回の戦闘で失うようなことは許されません。士魂号は
壊れても直せるし、全損しても補充は利きます。しかし、あなたたちの命は一度なくなってしまえば、それでおしまいです。もう一度言います。生き
残ってください」

彼の生徒たちは微動だにせず、じっと聞いている。
無駄口を叩いている者はいなかった。

「それと、基本的に武器や機体……士魂号は消耗品だと思ってください。邪魔になったら捨てていい。機体を撃破されたら躊躇せずに帰投しなさい。
これはスカウトのみなさんも同じです。武器や機体、ウォードレスの換えはありますが、あなたたちの命の予備はありません。私は全員の帰還を期待
しています」

坂上はそう言うと一端うつむき、すぐに顔を上げた。
そして、横に立っていた本田節子に言った。

「先生、どうぞ」
「いや……俺は……」
「先生」

促されて、本田教官が生徒たちの前に立った。
26歳の女性軍属。
正式な軍人ではない。
教官として芝村にスカウトされ、ここに回されてきた女性だ。
頭は染め、ピンピンに立っている。
着込んでいるのは真っ赤なエナメルの服。
メイクも派手で、濃いシャドウの入った目は、よけいに吊り上って見える。
こんな格好で軍学校の教官など出来ようもないが、そこは芝村で、軍令部に認めさせている。
見た目が派手で、言動も荒っぽい、ハードロックでメヴィメタな女だが、情は深くて生徒思いだった。
その拳や出席簿でぶん殴られる生徒も少なくなかったが、殴る本田にまるで悪意が感じられないので憎まれることはなかった。
174センチと大柄な本田が、少し猫背気味になっている。
ようやく口を開いた。

「みんな……」
「……」
「……頑張って来い。死ぬんじゃねえぞ、いいな。以上」

それを聞いた善行が一礼して生徒たちに叫ぶ。

「敬礼!」

ざっと音がしそうなほどに揃った見事な敬礼が、教官たちに施された。
坂上も本田も、民間人教師の芳野春香も、硬い表情で答礼した。
善行小隊長の声が響く。

「以上、解散! 直ちに出撃せよ」

駆け出す学兵たちの中、速水は素子に呼び止められた。
ハンガーの裏手、自家発電室の中だった。

「……なんでしょうか」

幾分、緊張した顔を作って素子の前に立った。
無論、ポーズである。
こんなことくらいでビビるような速水厚志ではない。
戦場では何が何でも生き残る。
彼にとって戦争とは死の恐怖を感じる場ではなく、勲功を挙げて成り上がる場なのだ。
場合によっては、味方を踏み台、犠牲にしてまでも自分だけは生き残り、手柄を横取りする。
彼はそうして生きてきたのだ。
そしてこれからも。

「厚志」

素子は、ウォードレスを着込んだ速水に声を掛けた。
歩兵だけでなく、戦車兵もインナーとしてウォードレスを着込む。
士魂号が撃破されて脱出した後の生存率を高めるためだとされている。
軽装甲服だから、武器を手にすればそのまま戦闘に加入できるし、何より士魂号が、ウォードレス着用を前提としたパイロットを想定した作りになっているのだ。
これがないと、ヘタをすると士魂号が激しく動いた際に押し潰されかねない。

一方、この日の彼女は制服姿である。
整備員たちはツナギだが、彼女は士官として初陣の部隊を激励する側に回る。
正装なのである。
この後すぐに彼女も前線後方に進出し、戦場で士魂号の応急修理にあたる整備兵もウォードレスを着る。
彼女も現場で整備の指揮を執るから、多分この後に着替えるのだろう。
少々青ざめているように見える少年に、年上の彼女は言った。

「緊張してる?」
「少し……」
「大丈夫」

素子は笑みを見せて言った。

「みんな一度は通る道よ。おねーさんなんか、何人もこうやって送り出してきたんだから、慣れたものよ」
「でも……」

速水は不安そうな顔を作って聞いた。

「見送ってきた人の中には、帰ってこない人もいたんでしょう?」
「ええ、そうね」

素子はあっさり肯定し、そして言った。

「でも、あなたは死なないの」
「……」

見詰め合うふたりの男女。
だが、そこを狙ったかのような大きな声がした。

「速水! どこにいる、出撃するぞ!」

舞の声だ。
素子が眉間に皺を寄せ、どこにいるとも知れぬ芝村舞に毒づいた。

「何よ、ウルサイわね……。やあね、邪魔して」

何とも答えようのない速水に、また素子が念を押す。

「いいこと、死んじゃだめなんだから。私のために生き残ってきなさい。命令よ」
「はい……」
「そんな顔しないで」

泣きそう(に見えた)な速水の表情を見て、素子は悪戯っぽく笑い、小首を傾げる。
そして、おもむろに右手でキュロットの裾をたくし上げた。
ストッキングに覆われた綺麗な腿の付け根あたりが見える。
すらりと綺麗に伸びた脚の根元、わずかにヒップが見てとれた。
速水はびっくりしたような顔で、たまらなく扇情的な脚線美に見とれる。
素子はすぐに元に戻し、速水の肩に手を置いた。

「ふふ、この環境でそんな気分になれれば大丈夫、平常心よ」
「……」
「……生きて帰ってね。そしたら、ご・ほ・う・び、あげるわ」

素子はきゅっと右目をつむり、若い恋人をウィンクして送り出した。

──────────────────

「帰りました」

速水がにこりとして素子の前に立つ。
指揮車からの通信で、無事は確認していたが、こうして本人を見るまでは安心できなかった。
素子は、抱きしめたい衝動を何とか堪えた。
周りには、まだ大勢の整備員たちがいる。
帰投した士魂号のメンテナンスがあるのだ。
特に壬生屋の一号機は幻獣の攻撃を受け、一部破損している。
その応急修理にてんやわんやだった。
素子はさっと辺りを見回し、こちらを注目している目がないことを確認してから少年に笑いかけた。

「……お帰りなさい。聞いたわ、立派な戦果だったそうね」
「いえ、そんな……」
「謙遜することはないわ。いちばん生き残るのが難しいとされているのが初陣なのよ。なのに生還しただけでなく、あれだけ敵機を落としたんだもの、胸を張っていいわ」
「ありがとうございます」
「でもね、そんなことより……」

素子は整備用の薄手皮手袋を外すと、右手を伸ばした。

「よく生きて帰ってくれたわ……」

速水の手を握り締めると、その顔を見つめる。
抱きしめたい気持ちを抑えて、意を決したように整備班長が言った。

「……面白いもの、見せてあげるわ。さっきの戦闘で士魂号が壊れたから」
「なんです?」

問いには答えず、素子は整備員たちが集まっているところまで早足で歩いた。
速水もその後を追う。
見ると、森や狩谷、遠坂と言ったメイン整備士たちが、破損した士魂号を覗き込んでいる。
一号機……壬生屋機だ。
古武道をやってるか何だか知らないが、とにかくこの壬生屋未央という女、突っ込んでいくことしか知らぬ。
闇雲に特攻して敵中に飛び込み、その中で阿修羅の如くカトラスを振り回すのだ。
彼女の近接戦闘能力は確かに高いが、敵だってバカではない。
飛び込んでくれば迎撃するに決まってるのだ。

速水機も敵中に突入してから四方にミサイルを発射する戦闘法だが、その際は敵弾避けにちゃんと煙幕を張るし、ジャミングもかける。
なのに壬生屋ときたら、そんなことは一切おかまいなしの玉砕戦法なのだ。
敵機も落とせるが自分もタダでは済まない。
速水あたりから見れば、馬鹿げているとしか思えない戦いだが、それを親切に忠告してやることなど、もちろんしない。
どうせ、あんな女からは何も得られぬ。
死にたければ死ねばいい。
味方が戦死するような激戦で戦果を挙げれば、速水の活躍がいっそう目立つというものだ。
素子が屈み込んで整備員に聞いた。

「どう?」
「死んでます」

そう答えたのは遠坂だ。
まとめた長髪がほどけ、少しうっとうしそうにしている。
素子は、遠坂が引き出した箱の中に目をやって顔をあげた。
そして速水を見て言った。

「これが士魂号の制御部分」
「……」
「多分、この部品は……戦死者か、幻獣共生派のものでしょうね。……人間のそれを使うなんて、国際法違反よ」
「……」

この戦況で、国際法も何もあるまい。
速水はそう思った。
まして人類同士の戦争ではないのだ。
例えハーグ協定やジュネーブ条約に違反していようと、それを裁く国際司法裁判所など、もうどこにもない。
黙ったままの速水の方も見ず、美しい女性士官は吐き捨てるように言った。

「……これが彼らのやり方なのよ」

素子はおもむろに立ち上がると、整備員たちを見た。

「……いいこと、あなたたちは、何も見なかった。何も見なかったのよ。わかったわね?」
「……」

返事もできない森たちに厳しい目を向ける。
そして言った。

「……処分は私がします。あなたたちは二号機と三号機をチェックして」

──────────────────

小隊長室で、善行が今日の戦いの戦闘詳細を記入していた。
先任下士官である若宮がデスクの前に直立している。
フルフェイスヘルメットを外しただけのウォードレス姿で、若宮が聞いた。

「設営委員長……いえ、もう今日から小隊長どのですね。いかがでしたか、今日の戦闘は?」
「委員長でけっこうですよ、まだとても戦闘部隊とは言いがたい連中ですからね。それはそうと、今日は初戦にしてはまずまずだったんじゃない
でしょうか。軍曹はどう思います?」
「自分もそう思います、小隊長どの。思ったより損害が少なかったですし」
「そうですね、被害はどれくらいでした?」

若宮は額の汗を拭ってから、手にしたデータを見た。

「我が隊の戦死は、随伴歩兵が1名のみです。負傷はパイロット1名、歩兵が2名。いずれも軽症で大したことはありません。歩兵一名は左脚の
挿げ替えが必要ですが、問題ないと思います。士魂号1号機が損傷しましたが、予備部品をあてがえば修理可能との報告が原少尉どのからありました」
「そうですか。他部隊の損害は?」
「支援に出た5112および5113で、戦死が16名、負傷10名だそうです。戦車は4機撃破されました。うち2機は全損です。乗員は共に戦死」
「……」

報告を受ける善行に、若宮軍曹が顔を近づけてきた。

「小隊長どの、実は……」

先任下士官の声が小さくなる。
誰も他にはいない屋内なのに声を潜めていた。

「5112小隊の生き残りが言っていたことなんですが……」
「なんです?」
「うちの三号機のことです」
「三号機?」

芝村舞と速水厚志の乗機だ。
初陣にも関わらず、敵幻獣を27機も屠った大活躍を見せた。
叙勲してもいいほどの働きだ。
壬生屋機が3機、滝川機が1機しか仕留めていないことを考えれば、その戦果は特筆に値するだろう。
舞が乗っているから、ある程度はやるだろうと踏んでいたが、まさかここまで派手にやるとは善行も思っていなかった。

「三号機がどうかしましたか?」
「撃破した27機中22機はマイクロミサイル斉射で仕留めているんですが、その際に味方を巻き込んでいるらしいのです」
「……」

そうしたことはよくあることだ。
実際、対幻獣戦以外の戦闘行為──つまり人類同士による過去の戦争に於いても、被害の20%は味方による誤射や誤爆だというデータもある。
友軍機による爆撃や機銃掃射で地上軍の味方が損害を受ける話は珍しくないし、後方からの支援砲撃による砲弾が、前進している友軍の歩兵や戦車の
上に落下し、壊滅的被害を受けたというケースだっていくらでもある。
乱戦の最中、味方同士が勘違いで撃ち合っていたという話も、枚挙に暇がない。
誤認による友軍機同士の空中戦、僚艦が入り乱れての艦隊戦ということもある。
戦争がいかに愚かかという見本である。

「あの士魂号の多弾頭ミサイルは個々に目標を設定できません。そもそも密集した幻獣群の中に突撃して、それを一掃するための兵器なのですから、
運悪くその近辺にいた味方が巻き込まれるのは致し方ありませんよ」

善行がそう言うと、若宮は首を振った。

「それがそうではないようなんです。5112の戦車と歩兵が幻獣を追い込んで包囲したところへいきなり速水機が飛び込んできて、彼らが驚いて
退避する時間も与えずに発砲したとのことです」
「……」
「5112は小隊長や分隊長も戦死していますので正式に抗議がきたわけではありませんが、兵たちはかなり動揺しているようです」
「……その話、うちの部隊の連中は知っていますか?」
「いえ、多分。何しろ、5112でその場に居合わせた連中は全員戦死していますから。それに、たまたまかも知れませんが、三号機の周囲には
5121の他の戦車も随伴歩兵もいなかったようです。ですからこの話は、5112の指揮車から出ているんです。やられた連中が、その直前に
無線で連絡したらしくって……」
「わかりました」

善行はそう言ってうなずいた。

「この件は伏せておいてください。三号機のパイロットに確認するようなこともしないように。5112へは私から話を通しておきます」
「……」

若宮は、少し間をおいて敬礼し、プレハブを後にした。

──────────────────

今日も整備棟のハンガーに最後まで残っていたのは速水と原素子だった。
時刻はそれでもまだ20時過ぎだった。

「今日はみんな早かったですね」

速水がそう言うと、素子は綿の手袋を取りながら言った。

「そうね。仕事のない時はさっさと帰れ。これが小隊長どののご命令だから」

いつもは22時くらいまで灯りの消えることのない職場だが、昨日の段階で前回の戦闘後の機体メンテナンスは一応終了している。
いつ召集、戦闘になるかわからないということで、小隊長の善行からは、用のない時は可能な限り休息をとるよう指示されていた。
パイロットやスカウトはもちろん、整備員たちもである。
とにかく士魂号はやたらと整備が手間である。
整備員に欠員が出てしまったら、それだけチェックやメンテに時間がかかってしまう。
無理はさせたくなかったのだ。
素子は、ライトに照らされている機体を眺めながら言った。

「それにしても、士魂号は打たれ弱くて故障が多い上に、すぐオーバーホールで困るわ。……動けば最高なんでしょうけど」
「そうですね。坂上先生や本田先生からも、装甲なんかつけるよりも逃げろって言われてます」

少々の装甲を気休め程度に施したところで、ミノタウロスやスキュラのミサイルやレーザーを食らったら大被害を食うのは変わりないのだ。
だったら身軽にして逃げ回る方が良い。
無理して展開式増加装甲を両肩に乗っけても、機動力はガタ落ちになる。
戦場では標的になるだけだ。
これではいくら防御しても、集中的に攻撃を受けることで、結局は撃破の憂き目を見る。
「受ける」より「逃げる」が、時代の趨勢らしい。

「そのうち、動かせなくなる日が来るんじゃないかしら」
「士魂号が、ですか?」
「そう。……部品精度は悪くなるし、生体クローン部品はトレーニング不足だし……。目に見えないところから、少しづつ戦況が悪くなっているのが
分かるわ」
「……」
「……今ある機体を、大事に整備しなきゃね」

素子は、ぽんぽんと士魂号を叩いた。
以前、彼女は、私の子供のようなものだとも言っていた。
速水には理解不能だが、愛着があるのだろう。

「さあ、あなたも帰る用意をなさい。私たちも帰りましょう」

素子はそう言いながら、カチリとスイッチを切る。
ハンガー二階の電灯が落ちた。
あとは常備灯である非常灯がぼんやりと赤く光っているだけだ。
ふたりはキャットウォークに立ち、裏庭を見下ろしている。
グラウンドはまだ照明が点いていた。
尚武高校の女子生徒や、5121の連中がまだ残ってトレーニングしているようだ。
あるいは、それにかこつけてデートしているらしいカップルもちらほら見える。
素子は微笑ましそうに笑った。

「あらあら、あそこ御覧なさいな」

グラウンドは校舎よりやや低い位置にある。
校舎と校庭の間には土手があり、そこには芝生が敷き詰められていた。
その上に座っていた男女が、ひしと抱き合っていたのである。

尚武高校は女子高なのだから、男の方は当然5121の誰かだということになるだろう。
午後8時のグラウンドにまだ生徒が残っているとあれば、普通なら問題視されるのだろうが、誰も注意するような素振りはない。
何せ非常時、戦時中であり、しかもここは軍関係の施設でもあるのだ。
確かに彼らは学生なのだが、同時に軍人でもある。

「ふふ。いいわね、青春してて」

そう言って19歳の美女は笑ったが、すぐに悲しそうな顔つきになる。

「こう戦局が慌しいとね……。ああいうの見たら、私なんかは注意しなくちゃいけない立場なんだけど、とてもそんな気にはなれないわ」
「……」
「さ、帰るわよ。着替えて……あっ」

いきなり後ろから速水の手が胸をまさぐってきた。
つなぎのファスナーを下ろして前をはだけさせ、Tシャツの上から豊かな乳房を揉みしだいている。
驚いた素子が身を捩るが、速水は後ろからしっかりと抱きかかえている。
もがいても、やはり男の腕は振りほどけなかった。

強気な素子の表情に癇癪が走る。
いくらなんでもこんなところでこんな不埒な真似は我慢できない。
いかにすべてを許し合った恋人同士であっても、である。
しかも、まだ勤務中であり、素子は上官でもあるのだ。

「厚志っ、何してるの! やめなさいっ……あっ!」

胸を揉んでくる腕を掴んで引き剥がそうとするものの、速水は一向にやめようとしなかった。
それどころか、シャツとブラの上から巧みに胸肉や乳首を愛撫し、素子に甘い声すら上げさせていた。
さすがに怒った女は、速水の腕に爪を立てて怒鳴る。

「厚志、いい加減にして! ここをどこだと思ってるの!」
「いいじゃないか」

速水は、いつの間にか素子にタメ口を利くようになっている。
名は呼び捨てだったし、口調がぞんざいだ。
もとより、そうするように指示したのは素子の方だ。
恋人に敬語を使われるのは好きではないし、もっと身近に感じたかったからだ。
しかし、こうも短期間でここまで馴れ馴れしくなってくるとは思わなかった。
それでも素子は好ましい変化と捉えている。
もっと速水に「男らしく」なって欲しかったのである。
彼の行動は「男らしさ」を遥かに凌駕……というよりも、明らかにはき違えており、獣じみていた。
但しそれは、あくまでも素子とのセックスの間だけである。

「いいわけないでしょ、あっ……ちょ、ホントにやめて、んんっ……」
「ほら、素子だってだんだん良い声になってきてる」
「くっ……」

素子の爪が速水の腕に食い込み、皮膚に傷を付けている。
じわっと血が滲み、さらに引っ掻くと爪の先に薄い皮が剥がれてきた。
なのに速水は、そんなことまるで気にしていないかのように胸をこねくっている。
素子の声が熱くなってきた。
情けないが、強く抗えないのである。
速水は、まだ数回の行為からすっかり素子の肉体を熟知したようだ。
性感帯の勘所を憎いくらいに責めてきている。

怒鳴ってもダメ、無理に振りほどこうとしてもダメとわかり、今度は泣き落としにかかった。
素子がそんなことをするのは異例ではあるが、それだけ焦っているということだろう。
こんなところを誰かに見られたどうなってしまうのか。
速水とつき合っていたことがバレるくらいならともかく、こんな場所で淫らに絡みっているのを知られたらタダでは済むまい。
しかも素子と速水は部下と上司の関係でもあるのだ。
倫理面だけでなく綱紀の面からも厳しい糾弾を受けるだろう。

「あっ!」

素子は突き飛ばされ、そのまま両手を窓について身体を何とか支えた。
速水の手が器用につなぎを脱がしていく。
もちろん素子は抵抗したが、時折速水が首筋にキスを与えたり、胸を愛撫したりするものだから、ついつい力が抜けてしまい、結局、彼の思うままになっている。
素子が「あっ」と思った時には、つなぎがするりと皮でも剥くように上半身から下ろされてしまった。

「ちょっと本当に……あっ……ああ……」

つなぎの袖が腕を後ろで束ねてしまい拘束する形となり、素子は抗うこともできない。
ユニセックスな白いつなぎの下には、これも色気のないダークグリーンのシャツを着ている。
軍から支給されている正規の下着である。
速水はそのシャツをたくし上げ、素子の素肌を存分に撫でまわしてから、ブラの上から激しく乳房を揉んだ。
ブラ生地に擦れ、ナマで揉まれるのとはまた違った快感が素子に伝わる。
特に乳首がカップの上からぐりぐりとこねくられると、思わず顎を上げて喘いでしまう。
もともと感度は良かった素子だが、速水と身体を重ねるごとに、ますます感じやすくなってきているように思えた。

そこに速水が、突き出した素子の臀部に股間を押しつけてくる。
素子は、厚手のデニム地つなぎとはいえ、布地越しに速水の硬く熱いペニスを感じ取っている。
ゴクリと喉が動き、つい尻を速水に預けようとしてしまう。
それでも、まさかこんなところでセックスするわけにはいかなかった。
気力を振り絞って、若い恋人を窘める。

「やめなさい、本当に……あっ……こ、こんなところじゃだめよ、厚志、くっ……誰かに見られたらどうするのよ、ああ……」

その間にも速水は素子のシャツを捲り上げ、ブラジャーを乱暴に剥ぎ取っていた。
火照った肌が外気に触れてひんやりとするが、すぐにまた愛撫によって熱くなってくる。
速水は、靴先で素子の両方の踵を軽く蹴って脚を拡げさせた。
素子は、上半身を半ば晒した状態で大きな窓に手を突き、大きく脚を拡げて速水に尻を突き出す格好にされていた。
つなぎはほとんど下ろされており、辛うじて素子の豊かな臀部に引っかかっている有様だ。
これではまるで素子の方から「犯して」と迫っているようにすら見える。

「あっ、だめよ!」

素子が悲鳴を上げた。
速水の手が、尻でわだかまっていたつなぎを引き下ろしたのだ。
そのままショーツの縁に指を突っ込むと、ぐいっと引っ張ってお尻を剥き出しにした。

「だめ……!」
「自分で脱いでよ」
「な、何を言ってるの……」
「自分でパンティ脱いでって言ってるの。それとも僕が引き千切ってあげようか?」
「……」

素子は一瞬、速水を睨みつけたが、すぐに諦めたように項垂れて、おずおずとショーツに指をかける。
少しためらっていたが、目をつむってするりとお尻から下ろしてしまった。
セックスに至ってからの速水の強引さは、素子がいちばんよく知っている。
変に逆らっても結局は従わされるのだし、だったらさっさと済ませた方が良いのだ。

それに、素子の方にもこの状況に少し興奮してきていた。
こんなところを見られたらどうなるのか。
そう思うだけで腰の奥がズンと熱くなる。
年下の少年に、いいように犯される自分の惨めさに被虐感を覚える。
官能の火がぶすぶすと不完全燃焼のように燻ってきていた。

「いいね、素子」
「……」

素子は答えず、ただ黙って速水に尻を差し出していた。
その美貌は屈辱に染まり、目は堅く閉じられているものの、逆らいはしなかった。
むしろ尻を淫らにくねらせ、早く入れて欲しいとおねだりしているかのようだ。
速水はけだものじみた笑みをにやりと浮かべると、完全に勃起している肉棒を素子の媚肉にあてがい、そのままゆっくりと貫いていく。

「んんっ……ああっ!」

声を出すのはまずいと思いつつも、素子は喘ぎを抑えきれない。
膣で速水の硬さと熱さを味わい、その圧倒的な充足感に目眩すらしてくる。

「んっ、んんっ……だ、だめ、入ってくる……ホントに入って来ちゃう……んううっ」
「くっ……相変わらず素子のここはきつくていいな。こんなの濡れてるのにさ」
「い、言わないでそんなこと……あう……」

きつい収縮が、速水のものを押し返すように絡みついてくる。
熱い肉を掻き分けながら、速水は腰を押し進めていく。
ぶるぶると震える素子の腰を掴みながら、ズシッと最奥まで貫いた。

「んはあっ!」

子宮口を亀頭で突き上げられ、素子はぐぐっと背筋を反り返らせて拳を作った。
その手がまた開き、白く長い指が窓ガラスに貼り付いていく。
速水はそのまま素子の背中にのしかかり、両手を前に回して揺れる乳房を緩く揉んでいる。

「ほら、いちばん奥まで入ったよ。素子の大好きな子宮まで届いてるだろ?」
「とっ、届いてる、あっ……わ、私の中、ああ……厚志のでいっぱいよ……あああ……」

背中に覆い被さったまま、素子の耳元で悪魔が優しく囁く。

「いいだろ素子、このままやっても」
「……い、いい……いいわ……でも、あっ……な、なるべく早く済ませてよ、んんっ……こ、こんなとこ見られたくないから……あっ」

それを聞くと、速水は身体を起こして素子の腰を掴み直し、ぐいぐいと突き込みを与えていく。
素子はたちまち喘ぎ始め、窓についた手を開いたり閉じたりを繰り返していた。

「んんっ……あっ、厚志のいつものより、ああっ……ふ、太い感じがするわ……んむっ……」
「そうかもね。僕もこんなところで素子を犯してるってシチュエーションに興奮してるのかな」

速水はそう言いながら媚肉を深くまで貫き、突き刺した時よりも時間をかけて引き抜いていく。
奥まで入って抉られ、カリで襞をこそげとられながらも、素子の膣も盛んに速水を締めつけている。
みちみちと密着してくる膣襞に逆らいながら、速水は大きく突き上げ、そして抜いていった。
中でさらに大きく膨らみ、熱さと硬さを増していく肉棒の凄さに、素子は悲鳴を上げて身を捩った。

「ひっ、すごっ……ま、またおっきくなってる……ああっ!」

粘り着く襞を引き剥がしながら男根が引き抜かれ、また深くまでねじ込まれていく。
早くはないが力強く重い律動が繰り返され、素子は過敏に反応し、尻を振っている。
速水は乳房を強く揉みしだき、白いうなじに舌を這わせていた。
びりびりと痺れるような快感が身体の芯を貫き、素子の膣から蜜を滴って鉄製のフラットデッキを濡らしている。
こんなところで犯されるという屈辱と、誰かに見られるかも知れないという緊張が少しほぐれてきたのか、素子のきつかった膣が少し緩んできた。
速水はここぞとばかりに女の腰をがっしりと掴み直し、一転して激しい腰使いを見せる。

「あひっ! あ、なに、急にっ……ああっ、そ、そんないきなりっ……だめ、激しいわっ……あううっ!」

素子の子宮口を硬く尖った亀頭が遠慮なく叩き、ねじ込むような激しい律動が行われる。ぱんっ、ぱんっと腰が尻たぶを打つ音を響かせ、その勢いの強さに素子の姿勢が崩れる。
後ろから突かれる激しさに、身体を支えていた肘が屈脚し、乳房が窓ガラスに押しつけられた。素子ご自慢の形の良い乳房が窓ガラスに押しつぶされ、無惨に変形している。
外から見ている者がいれば、その異様さと淫らさに目を奪われることだろう。
ガラスの冷たさに悲鳴を上げる素子だったが、すぐにその声も熱く濡れてくる。
ガラスも乳房の熱を吸い取ったかのように温度が上がっていた。
愛液も一層に噴き出し始め、素子のすらりとした太腿を汚し、つなぎに染みを作っている。

「んんっ、いいっ……厚志のが子宮まで突き上げて……ああっ!」
「いいだろう? ほら、こうやって突かれるともっといいはずだ」
「んはあっ、いいっ……奥に……奥に当たって……くっ、だめ、あ、もういきそうになってるっ……」

もともと収縮の強い膣がさらに速水を締めつけ、早くも射精を促している。
素子はもう、ここが自分の職場であり、しかも、誰に見られてもおかしくない状況であることも忘れていた。
自分から腰を動かし始め、速水の方に尻を押しつけるようにして深い挿入感と摩擦感に酔い痴れている。
速水は、蔑むように顔を歪め、小馬鹿にしたように腰を打ち込んでいた。

「なんだ、もういきそうなのか」
「くっ……」

素子は恥も外聞もなく、ガクガクと頷いていた。
こんなに早くいかされる恥辱はあったが、もう身体はそうしたくてたまらなくなっていたし、さっさと終わらせたいという思いもあった。
そんな素子をさらに追い詰めるように、速水はまた耳元で囁く。

「本当に淫らなんだな、素子は。ここがどこだか忘れたのかい」
「……!」
「整備士にとって神聖なハンガーで、男に尻を突きだして犯され、悶えてるなんてな」
「そんなひどい……だ、だって厚志が無理矢理に……あ」

素子を現実に引き戻してから、速水はあっさりとペニスを媚肉から引き抜いていた。
あまりのことに素子は唖然として振り返った。
確かにこんなところで痴態を晒すのは恥知らずな行為だが、だからと言ってここまでしておいてやめるなんて酷すぎると思う。
戸惑う素子を無表情に見下ろしながら、速水はその尻たぶをぐいっと割り開き、その奥でひくついていたアヌスにペニスを押しつけた。
素子は仰天し、泡を食ったように叫んだ。

「厚志っ! あなた、どこに……」
「どこって、素子の肛門だよ。お尻の穴」
「な……」
「なんだい、その顔は。僕ともアヌスは経験済みだろ? それに、僕とこないだする前にも、他の男にやられたことがあったって言ったじゃないか」
「そ、そうだけど、こんなところで……うああっ!」

素子が抗うヒマを与えず、おののきひくついていた肛門に亀頭を食い込ませると、速水は一気に肉棒で貫いた。
素子は目を大きく見開き、グンッと背中を仰け反らせて腰を捩った。

「そんな、いきなりっ……! あ、あっ、お尻っ……お尻に厚志のが入ってきてるっ……んむううっ!」

素子は、狭いアヌスを太くて硬いもので突き通された苦痛に顔を苦悶させながらも、スムーズに肉棒を受け入れていた。

「くくっ、なんだ、あっさり入ったじゃないか。さすが素子の尻だな」
「やっ、そんな……うむううっ、だめっ……奥に……奥まで入ってる……んああっ」

太い亀頭がめり込むや否や、あっという間に素子の肛門は厚志のペニスをくわえ込んでしまっている。
挿入の際も特に苦労はなく、亀頭を入れる時だけ粘膜の押し返すような圧力がかかったものの、そこを過ぎてしまうとぬるりと吸い込まれるように
根元まで押し入っていた。
それでも素子にはきついのは、腰や腿をぶるぶると痙攣させ、顔を上げて苦悶している。

「あ、あうむ……きつい……お尻がきついっ……」
「ウソをつけ、こんなにスムーズじゃないか」
「あ、だめ、動いちゃだめよ! んああっ、お尻っ、めくれちゃうわ……あうっ」
「まだまだ。ほら、これはどうだ?」
「ひぃあっ!」

速水は、ペニスに熱く粘り着く腸壁や粘膜を引き剥がしつつ、腰を大きく使っていく。
さらにアヌスを拡げるかのように腰を回転させ、そのまま奥へ突いた。

「んっ、んおおっ、きついっ……厚志、それだめっ……お尻、苦しいわ……お尻、広がるっ……んはっ!」

深々と根元まで肉棒を飲み込まされたまま、男の腰をぐりぐりと尻を潰してくる。
アヌスを拡げられ、その粘膜を擦られ、亀頭の先で腸壁をこねくられて、素子は狂ったように苦鳴を上げ、喘いだ。
サオの硬い部分で擦られる肛門が痛く、熱い。
亀頭の先で突っつかれる腸壁がびりびりと痺れ、これも熱くなってくる。

「はひぃっ、お尻っ……そ、そんな激しくしちゃだめっ、ひっ……んぐううっ」

苦しがっているものの、素子は速水によって完全にアナルセックスに目覚めさせられてしまった。
ペニスを突き込まれるとアヌスの括約筋が緩んで奥までいざない、抜かれる時はきゅっと引き締まってその摩擦感を愉しんでいる。
素子が意志で括約筋をコントロールしているわけではなく、身体が勝手にそうしているだけあって、余計に刺激が強かった。

速水は、カリがアヌスに引っかかるところまで引き抜いておいて、間を置かず一気にずぶりと奥まで刺し貫いていく。
奥まで突かれると粘膜が巻き込まれて中まで戻り、引き抜かれるとへばりついた腸壁が露わになるほどだった。
素子はわなわなと唇を震わせながら喘ぎ、窓に突いた両手の拳をきゅっと握った。

「んんっ……ぬ、抜かれるとお尻の肉が持って行かれるっ……あうっ、つ、突かれるとお尻の中にめくれ込んじゃうっ」

速水は素子のよがり声を聞きながら、何度も繰り返して激しく強くそのアヌスを貫き、抉っていく。
腰を回転させて亀頭の先で腸壁をこねくることも忘れない。
腸壁をこそぐように抉り、それを引き出すように抜き差ししていく。
素子は嬌声を放ちつつ、後ろを向いて悶える美貌を速水に見せつけた。

「んぐううっ、すごいっ……お尻が、こ、こんなに抉られて……いっ……いいっ……」
「そうだろう、尻の穴がいいんだろう素子は」
「い、いいわ……ああ、こんなにいいなんて……お尻が熱くてもう……」
「それだけよがってりゃ、もういきたくてしようがないか?」

素子は真っ赤にした顔を元に戻してガクガクと頷いた。
もう脚は爪先立ちになったまま震えており、ふくらはぎも腿もその快感を堪えるために力み返っており、今にも攣ってしまいそうだ。

「なら言えよ。お尻でいきそうですってな」
「くっ……あ、厚志っ……!」

セックスになると簡単に主導権を奪われてしまう悔しさに、年上の女性士官は唇を噛んだが、すぐにその口から喘ぎが零れ落ちてしまう。

「ほら、言えっ!」
「あぐっ……!」

またいきなり根元まで太いものを飲み込まされ、女は白い首筋を晒して喘ぐ。
しかし、その後に来るべき「腸内粘膜を引き摺られるような感じ」はなかった。
男はずぶりと奥まで刺し貫いたままで動きを止めてしまっている。
あの摩擦感を刺激を求め、素子は切なそうに尻を振るものの、速水はその腰を押さえ込んでいた。
恨めしそうに少年を睨みながら、年長の女は屈した。

「お……お尻で、いきそう……あああ……厚志、お尻が疼くのよ……こ、このまんまじゃ……」

素子はそう呟きながら腰をなよなよと振り、括約筋をきゅっと収縮させた。
熱い粘膜がペニス全体に粘り着き、根元を引き絞るように締めつけてくる肛門の感触に、速水も思わず腰を突いて射精してしまいたくなっている。
大きく深呼吸してそれを何とか堪えると、肉棒を苦しげに飲み込んでいるアヌス周辺を左手の指でなぞりつつ、右手で媚肉を触りだした。
案の定、そこは熱く濡れたままで、愛液の量はさらに増えている。
素子のつなぎはだいぶその蜜を吸い込んでいたし、床にも無数の水滴の後が出来ていた。

速水の指が媚肉の縁をなぞり、すでに花開いている割れ目の中に侵入する。
中指と人差し指が膣内に潜り込み、親指がクリトリスをこねていた。
アヌスだけでも気をやりそうになっているのに、そんなことまでされたらたちまち頂点に達しそうになる。
素子はべたんと上半身を窓ガラスに押しつけ、思い切り喘いだ。
窓の外から見ている者がいれば、素子のたわわな乳房が透明なガラスで美しくも醜く潰れた様子が手に取るように判るはずだ。

「いっ、いくっ……そんなされたらいくってばあっ……んんんっ……くああっ!!」

素子の様子を見ながら、速水はペニスをアヌスから抜き去ると、またしても膣にぶち込んだ。
肛門は太くて硬い刺激が消え失せて切なさが込み上げてくるが、代わりに欲しくて欲しくてたまらない状態だった媚肉に待ちかねた刺激が来て、素子はその一撃で絶頂した。

「うむううっ……! ……い、いった……いっちゃったわよ、ホントに……あう」

絶頂した地点で素子が彷徨っているまま、速水は媚肉を犯していく。
アヌスに負けないほどに膣も激しい快感を得ていた。
いちばん奥まで抉られ、子宮口をなぞりあげるまで突き上げられると、素子はぶるるっと尻を何度も痙攣させて身悶えた。
腸管と違い、こっちは本来の性交する場所だ。
アヌスを犯される時は「排泄器官でセックスさせられている」という背徳感が肉欲を強く刺激していたのだが、媚肉の場合は本来の性感帯が素直に
反応している。
ガラスに肘を突いて何とか前屈の姿勢を整え、速水に尻を与えながら、素子は首を下に曲げてその愉悦に耐えていた。
ふと目を開けると、そこには自分の股間が見えている。
濡れそぼった肉の花園が、速水の大きな肉棒を易々と飲み込んでいるのがわかる。
素子の愛液でどろどろになったたくましいペニスが、何度も何度も抜き差しされているのを見ていると、素子の官能がますます高ぶっていく。

「んんっ、ふっ、太いっ……ああ……あんな大きいのが……私の奥まで……わ、私のあそこが厚志ので犯されてる……んんっ、いいっ……!」
「尻の穴もいいが、やっぱりこっちもいいだろう」
「いい……いいわ……オ、オマンコいい……と、蕩けちゃうわ……いっ……ああ……」
「マンコでもいきそうだろう」
「い、いくっ……もういきそう……あ、なんで!? ひっ、ま、またお尻ぃっ!」

素子がいきそうになると、速水はまた引き抜いてアヌスに挿入した。
女の前と後ろを存分に味わって、速水の男根はさらに太く硬くなっていたが、素子の蜜をたっぷりとまぶしたせいで、ひくつく肛門への再挿入は楽だった。

「お、お尻っ、いいっ……熱い、お尻の穴……熱いっ……灼けそうよ……んぐうっ」

狭い腸管を太いもので埋め尽くされ、しかも激しく出し入れされて、素子はその感覚にのめり込んでいく。
狂ったように悶え、自分から腰を使って速水の腰の動きを促している。
男根が抜かれてくると、肛門が内部からぐうっと膨らんでくる。
それを押し戻すように挿入すると、今度はすり鉢状に窪んでいった。
尻肉と腸管をめくり上げるように抜き、深く打ち込んでめくれ込ませる。
速水は女の背中にのしかかると、意地の悪そうな顔で喘ぐ素子の耳元で囁く。

「あんまりよがるなよ、素子。ほら、あそこ見てみろ。誰かいるぜ」
「……!!」

速水は、素子の頭を掴むとその方向に顔を向けさせた。
楡の木の陰に誰かいるのがわかった。
どうもこっちを見ているような気もする。
素子は慌てて速水から逃れようと、身を捩った。

「あ、厚志もうやめて! み、見てるわ、こっちを……!」
「今さら何だよ。さっきまで「いきたい」とか言ってたくせにさ」
「だ、だからあれは……! とにかくやめて、こんなの見られたら……あうっ!」

速水がにやりとして腰を打ち込んだ。
下から持ち上げるように膣奥を抉ると、素子は顔を仰け反らせてつい大きく喘いでしまう。
かさに掛かったように激しく責められ、素子は手のひらで口を塞いで喘ぎ声を殺そうとする。
速水は結合を深めながら、口を押さえる素子の両手を右手で軽く捻り上げた。
左手を胸に回し、わしわしと強く乳房をこねくる。口を塞ぐことも出来ず、素子は必死になって喘ぎとよがり声を噛み殺していた。

「厚志、だめっ……こ、声が出る……や、やめて、あうっ!」
「色っぽい声だな、素子。外にいる連中にも聞こえるかもな」
「ひっ! そ、そんなのいや!」

その可能性も充分にあった。
何しろハンガーの二階と一階は吹き抜けである。
人型戦車の脚部から腰部までを一階で、コクピットや頭部などは二階で整備するのだ。
しかも一階の大きなシャッターは開きっぱなしだから、二階で犯されて大声でよがりでもすれば、その喘ぎ声は一階まで筒抜けだし、多分、外にも
聞こえてしまうに違いない。

「んっ、んんっ……ん、んくっ……」

素子は、込み上げてくる喘ぎを懸命に飲み込み、声を上げまいと堪え忍んでいる。
口を塞ぎたいのだが、手は速水に押さえ込まれた上、媚肉を突き上げる腰の動きは一向に止む気配もなかった。
零れ出そうになるよがり声を抑えつつ、必死になって速水に哀願した。

「あ、つしっ……あっ……や、めてっ……んんっ……いっ……」
「やめて欲しいようなマンコじゃないけどなあ。僕のチンポをさっきから締めつけてさ」
「くっ、言わないでよっ……ああ、せ、せめて……せめて、あっ……く、口を……口を塞いで……じゃないと声が……あっ」
「我慢しなよ」
「そんな……こ、こんなにされて……が、我慢なんか、あっ……で、できっこないわよ……くっ……」

素子は一瞬、悔しそうに速水を睨みつけたものの、またすぐに官能の渦に巻き込まれていく。
もう、どうにも燃え上がる肉の疼きを抑えようがないらしい。
女の声が切羽詰まり、わなないてくる。

「お、お願いっ……口、ふさいで、声が出るっ……あ、あ……いい……声が……出ちゃうっ!」
「ふふん、そんなにふさいで欲しいかい?」
「ふ、ふさいで早くっ……あ、だめっ、そんな深く突いちゃあっ……早く、早くしてっ……声、出るっ……あ、んむうっ!?」

突然、素子は頤を掴まれて後ろを向かされると、その唇を吸われた。
驚いた表情を浮かべた素子だったが、すぐにキスに没頭してしまう。

「ん、んん……んちゅっ……じゅっ……んん、んんん……んむ……ちゅううっ……」

勝ち気そのものの美貌が官能で蕩けてきている。
一歩間違えば衆人環視の状態で犯されることになってしまう。
我慢しても我慢しても次から次へと込み上げてくる愉悦を堪え、声が漏れぬように歯を食いしばる。
そうして官能を身体の奥に溜め込んでいた素子は、激しいキスによってその箍が外れた。

「んんっ……んむうううっ……!!」

速水の口の中ではっきりと「いくうっ!」と叫び、素子はガクガクッと全身を痙攣させた。
なおも濃厚なディープキスを受け続け、咥内を男の舌で蹂躙されている。
舌を思い切り吸われ、貪るように口中を犯されていた。
ようやく速水の口が離れると、素子は「はあっ」と熱い息を吐いて脱力した。
頭を掴み、後ろを向かせたまま速水が言った。

「……どうだ、ちゃんと口をふさいでやったろ?」
「ひどい……」
「何がひどいんだよ、キスされていっちゃったじゃないか。いやらしいな、素子は」
「……」
「好き者の素子のことだ、まだいけるだろう?」
「や……、もういやよ、しないで……あうっ、そこはあっ!」

速水はアヌスの皺を指で何度もなぞってから、人差し指をそこにずぶりと差し込んだ。
指の侵入に素子は甘い声を上げ、尻をうねらせている。
肉棒のようなたくましさはないものの、抜き去られてから物寂しかった肛門は、待ちかねたように指を食い締めてきた。
速水の指先に、膣を抉っているペニスのゴロゴロした触感が伝わってくる。
腸管越しにペニスの収まった膣に触れられるのがたまらないのか、素子は両脚を踏ん張って身悶えた。

「んううう〜〜っ、だめっ……か、感じるっ……感じちゃうっ……」

喘ぐ素子の背に浮いた汗を見ながら、速水はまた深々とペニスを突き通した。
素子の方も、速水の突き込みに合わせて尻を突きだしてきて、より深い挿入感を求めている。
熱く蕩けきった媚肉からはひっきりなしに蜜が溢れ出し、その濃度を増していた。
もうぽたぽたと垂れるのではなく、粘度の高い液体は糸を引いてつなぎや床を汚している。

素子は何度も喉を仰け反らせ、よがり、喘いでいる。
それでも他人に見られることを恐れる理性はまだ少し残っているらしく、大声で喘ぐことを堪え、口を閉じて鼻を鳴らしていた。
ただ、激しく喘ぎ過ぎたせいかもう声が涸れかけており、息も絶え絶えの状態だったから、よがり声も掠れたようなものになっている。
速水は、その僅かに残った理性すら打ち砕かんと、素子の身体が宙に浮くほどに激しく力強く腰を突き上げていった。
その深さは子宮口にまで到達するほどで、素子は子宮口を何度も叩かれ、またしても気をやってしまう。

「ぐううっ、深いっ……厚志、だめっ、もうっ……あ、あ、また……またいく!!」

媚肉がきゅううっと引き絞られ、素子は達した。
今度は全身を息ませるほどに激しく絶頂したようで、素子の身体から力が抜ける。
足腰が砕かれたように力が入らず、その場に倒れかけた。
速水はそれを許さず、不抜けたような素子の腰をぐっと掴んで立ち上がらせ、そのままぐいっと自分の腰に引き寄せた。

膣がまた拡げられ、素子は目を剥いた。
太く硬いペニスの感触に目眩がしてくる。
そうだ、この少年はまだ終わっていなかったのだ。
射精するまで決して許してはくれまい。
案の定、速水はすぐに律動を再開する。
素子は悲鳴を上げて振り返った。

「あっ! やああっ! だ、だめよ、こんなすぐにっ……ああっ、いっ……お願い、少しっ……少し休ませ、ああっ……い、いったばっかりで
感じすぎるのよっ……あ、あ、そこそんな強くしたらっ……やああっ、またいくうっ!」

甘美で強烈な絶頂感に浸ることも許されず、素子はまたしても強制的に気をやらされた。
絶頂してそこから降りる前に、また激しく絶頂させられていく。
男を魅了して止まない素子の美しい臀部が、連続絶頂でぶるぶると震え、わなないていた。
まだ足首も膝も腰もぐらぐらと不安定で、ろくに立っていることも出来ない。
その腰を速水は抱えるように持ち上げ、シャンとさせてからまた深くまで抉っていった。

「まだいきたいんだろうが。こんなにマンコが締めつけてくるぞ」
「いっ、ああっ、いいっ……こ、こんなに続けてなんて……くううっ、いいっ……だめ、もう、か、感じるっ……壊れちゃうわっ!」
「ほら、いけ。もっといくんだよ、いくところを連中に見せつけるんだ」
「やっ、だ、誰のことよ……あああ、もう許して、動かないで! い、いきそうっ……またいきそうになってるっ……!」

「許して」と言いながらも、腰を速水に押しつけてくる。
「動かないで」と懇願しつつも、自分から動いて腰がうねっていた。
そんな素子の痴態や、強烈に収縮してくる膣の甘美さに、さすがの速水も限界が近い。
歯を食いしばって深くまで挿入し、子宮口を亀頭の先で擦り上げていく。
素子の方も、早く絶頂しようとしているのか、尻を回転させてペニスとの摩擦感を大きくしていった。

「あ、あ、だめえっ、いくっ……ふ、太いっ……厚志のおっきいのが奥まで、あっ、いいっ……奥まで……奥まで突かれてるっ……い、いって……
あなたもいって、お願いっ!」
大きな官能の嵐を感じ取り、素子は全身を大きく痙攣させ、首を反らせて嬌声を放った。
膣の締めつけに速水も射精欲を抑えることが出来ず、足の裏から背筋まで痺れてきた。

「よし、素子……、出してやるぞ」
「ああ、だめよ……な、中はだめ……中は許して……何を、何してもいいから、中だけは……」
「だめだ許さない。絶対に素子の子宮の中に出すからね」
「そんな……ああっ、強いっ……おかしくなるうっ……い、いく……いっくうううっ!」

最後に一声吠えると、素子はまたしても絶頂させられた。
膣の締めつけから素子の絶頂を感じ取ってから、速水も子宮口にペニスを押しつける。
子宮口までがわななき、めり込んだ亀頭を刺激してきた。
たまらず、速水は素子の尻に指を立てて引き寄せ、できるだけ深いところで射精していった。

「んひぃぃっ、いくうっ! で、出てるっ、また厚志のが私の中に……い、いく!」

びゅううっと勢いよく出てくる精液の熱さを子宮内部で直接感じ取り、素子は腰を震わせた。
びゅくびゅくと射精の発作があるたびに素子は痙攣し、子宮に注ぎ込まれてくる精液の熱さと濃さを思い知らされた。
素子の腿に鳥肌が立ち、腰や膝がガクガクと大きく震えている。

「んああ……、ま、まだ……まだ出てる……こ、こんなにたくさん……子宮が厚志のでいっぱいになっちゃうわ……あう……」

ともすれば崩れ落ちそうになる素子の腰を持ち上げ、速水は精嚢内の精液が全部出るまでその尻から離れなかった。



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