由良と南の関係はさらに深まっていった。
さすがに由良も、これ以上南を部室で嬲るのはまずいと思ったのか、大学での行為はやめた。
以降は、さらに濃厚なプレイを求めて、堂々とホテルへ呼び出すようになったのだ。

この時点で、もう南は逆らうことが出来ず、ほぼ由良の言いなりだった。
回数を重ねるたびに、南を脅迫する写真や動画は増える一方であり、まさに蟻地獄に嵌ってしまっていた。
と言って、ここでこの爛れた関係をやめられるくらいであれば、最初から断固拒否し、抵抗していただろう。
初体験失敗で傷ついた達也を思いやればこそ、こんなことはとても告白できない。
その秘密を守るだめに、由良の薄汚い脅迫に屈し、その身体を提供してきたのだ。
そのままずるずると関係を続ければエスカレートする一方だとわかっていながら、やめられなかった。

これと並行して、キャプテンの渡瀬紀子も南をぞんざいに扱うようになっていった。
というより、それまで特別扱いだったのが、その他大勢の部員と同じになった。
それはそれで仕方ないし、むしろ当たり前のことではあったのだが、何かと頼りにして相談してきた紀子にまで見捨てられた気がして、南はますます追い込まれていった。

由良の呼び出しを断ることも出来ず、ホテルで二回、三回と淫らな行為を重ねていった。
約束通り、処女だけは奪われなかったものの、肛門責めを徹底されて、そこから南の肉体は急上昇を描くように成長させられていった。
未だ処女なのに、経験豊富な女のように喘ぎ、身悶えてしまう。
南の身体は、処女のままどんどん熟成されていった。
この日も浣腸の洗礼を受け、アナル調教を施されている。

「だ、だめ、きついわ……あああ……」

南は生々しく身悶えし、呻いていた。
苦悶に身体を震わせるたびに、綺麗な肌を汗が伝い落ちる。
苦しくてたまらないのに、そのくせ南の身体の芯は熱く疼き、腰の奥が燃え始めていた。

「つ、つらい……ううむ、苦しいっ……」

南の苦悶の声が響く。
しかし、苦しげに呻いているのに、媚肉はひくつき、たっぷりの愛液を分泌させている。
排泄を堪えている肛門も収縮を繰り返していた。
ググッ、グルルッと南の滑らかな腹部がくぐもった音を立てた。
猛烈な便意が腹部を駆け巡り、腸壁を掻きむしっている。
浣腸の量は増やされ、今ではグリセリン原液を1リットルも入れられるようになっていた。
その分、南の苦痛は増し、腸管の地獄は一層に酷くなる。

「が、我慢出来ませんっ……ああ、もう苦しい……ううっ……」

とてもじっとしていられず、南は緊縛された裸身をうねらせて呻いた。
上半身は例によって胸乳を搾り出すように縛られ、その縄尻で両腕が背中で拘束されている。
南が呻き、身悶えるたびに、縛ったロープがギシギシと鳴った。

「コ、コーチもうだめ……さ、させて、お願いです……ああ……」
「もうか? 早すぎる、もう少し我慢しろ」
「そんな……、もう無理……」

南はそう呻いて弱々しく顔を振った。
これが今日三度目の浣腸なのだ。
1回目より2回目と回を重ねるごとに浣腸はつらくなる。
腸内に何もないのだから当然だった。

由良は、締め付けの強い南のアヌスをさらに鍛え上げようと浣腸を繰り返し、許可するまで排泄を許さなかった。
南は縛られて自由を奪われているのだから、由良の許しがなければどうにもならない。
排泄の自由すら奪われ、南は由良に主従の関係をイヤでも意識させられるようになっていった。

「だめです、本当にもうだめなんです、コーチ……ああ、もう出る……」

南は浅ましく尻を振りながら、恥ずかしいセリフを何度も口にした。
恥辱の言葉を吐くたびに官能が高まっていくのを感じている余裕もない。
猛烈な便意が肛門のすぐそばまで来ている。
アヌスの内側がひどく熱を持ち、燃えるほどに熱かった。
もう排泄するものは薬液しかないはずなのに、気が遠くなるほどの便意が南の意識をジリジリと白く灼いていく。

「で、出そうなんです、もう……ああ、お願い、させてください……し、したくてもう……」
「浅倉南とは思えない言葉だな。もうちょっと我慢しろ」
「い、いやです、もう無理……た、助けて、もう出ちゃう……ああ、出てしまう、出る……お、お腹が裂けちゃう……」

南の大きな双臀部が震えている──というより、大きく揺さぶられていた。
片時もじっとしていられないらしい。
美貌を蒼白にして、息も絶え絶えに呻いている。
さすがに限界と見たのか、由良はようやく排泄を許可した。
ポリバケツをあてがうと、一瞬の躊躇の後、堪えきれない便意を一気に解放した。

「ああっ、出るぅっ……見ないで、見ちゃいやあっ!」

浣腸のおぞましさ、そして排泄を見られる羞恥と恥辱だけは、何度されても慣れなかった。
それどころか、繰り返すたびに恥ずかしさが増していく気がする。
南は臀部を打ち振るわせながら、次から次へと激しくグリセリン溶液を排泄した。
一度途切れても、またすぐにドドッと激しく噴きこぼす。
ようやく全部絞りきると、ガックリと脱力してしまう。
呼吸はまだ荒々しく、女らしくなった乳房が息遣いと鼓動に合わせて大きく揺れ動く。
生々しく口を開けたままの肛門も苦しげにひくつき、溶液と腸液のミックスをとろりと垂らしていた。

「苦しかったか? ふふ、よく我慢したな、さすが浅倉だ」
「ああ……」
「よし、じゃあ褒美だ。今度は気持ち良くしてやる」
「いや……。あ、あうんっ!」

ぐったりしていた裸身は、活が入ったようにびくついた。
由良の指が、ぱっくりと口を開けた媚肉に這い寄っていったのだ。
肉溝の頂点にある肉芽もすっかり膨らんでおり、包皮もほとんど剥けていた。
浣腸され、便意を我慢し、排泄する間も必死になって息んでいたせいか、いつの間にか媚肉は蜜で滲み、クリトリスまで反応していたのだ。

これは由良の調教の成果でもある。
由良は浣腸やアヌス責めといった苦痛系の責めの合間に、乳房や媚肉を責める快感調教も交えていった。
そのため南の肉体は、肛門を責められた後には性的に気持ち良くなると条件反射的に憶えていったのだ。
こうなると南の意志とはあまり関係なく、肉体は反応するようになっていく。

「くっ! いや……、うっ……くあっ!」

幾分大きめのクリトリスを指で軽く弾いてやると、そのたびに南は身体をすくめるようにして悶えた。
濡れたそこを指でなぞっても、身体をギクンとさせて強く反応する。
由良が顔を近づけると、そこからはむっとするほどの女の香りが匂った。

「あうっ!」

南が背筋をピンと張って仰け反った。
由良がそこをつるりと口の中に含んだのだ。
唇に吸われ、つるんと咥内に入ってしまうと、南は「くっ!」と呻きながら一層に強く身体を揺さぶった。
由良はそのまま舌で転がすように愛撫し、舌全体を使ってねっとりと舐めしゃぶった。

「うああっ……!」

強すぎる快感に、南の胎内に官能の波が渦巻いていく。
ぺろりと舐められ、舌先で転がされると、子宮が強く反応し、収縮した。
ジンジンと痺れにも似た快感に襲われ、膝ががくがくしてくる。
ひと舐めされるごとに南の理性が溶け崩れ、ともすればはしたない欲望まで頭をもたげてきた。
もっと舐めて欲しいと言わんばかりに、腰を由良の顔に押しつけるのだ。

「よし、ここまでだ」
「あ……」

由良の愛撫が遠のくと、途端に南の理性が蘇り、顔が燃えるような恥ずかしさでいたたまれなくなってしまう。
ついさっきまで、淫らに愛撫の続きを求めようとした自分が信じられない。
苦悩する南の耳へ、またあのおぞましい音が聞こえてくる。
慌てて振り向くと、案の定、由良は浣腸の準備をしていた。
シリンダーへ溶液を吸い上げ、耳障りなガラスの軋む音が響く。

「や、やだ……、浣腸はもういやです……、浣腸は許して……」
「だめだ。良い気持ちになった後はまた尻だ」
「ど、どうして……どうしてそんなことを……」
「浅倉が尻でよがるようになるまでだよ。いくぜ」
「あ、いやあ!!」

嫌がる南の肛門に、この日4回目の浣腸が仕掛けられていく。
熱く爛れる肛門から、グリセリン原液の重苦しい感じが流れ込んでくる。
背筋に悪寒が走り、身体の震えが止まらなくなった。
何とか押しとどめようと息むもののまったくの無益で、薬液はドクドクと南の腸管を犯していった。

「ああっ、い、入れちゃいやあ……」
「もう何度目の浣腸になると思ってるんだ。いい加減に馴れろ」
「む、無理です、そんな……もう、もうしないで……ああ……」

ノズルをくわえ込んだアヌスがひくつき、見ている由良のペニスを大きくしていく。
あっという間に半分ほど入れられると、もう南は悲鳴を上げることも出来ず、ただ呻いていた。
早くもお腹がググッと鳴ってくる。

「もう……、もう許して……ううむ……」

猛烈な圧迫感で真っ赤だった南の顔が青ざめ、歯の根すら合わずにがちがちと鳴った。
もう便意はそこまで駆け下っており、脂汗が全身から噴き出てきた。
もうじっとしていられないのか、腰までがガクガクと震えていた。

「く、苦しい……きついっ……お尻、きつすぎますっ……あ、もう入れないで……んんっ」

由良は少しも休まず、リズムもつけず、一気に浣腸していく。
そうでもしないと、さすがに南のアヌスでも保たないとわかっているのだ。
最後の100ccを勢いよく注入すると、南は甲高い悲鳴を上げて仰け反った。
跳ねるように裸身を揺さぶり、ドッとベッドに突っ伏したが、すぐに苦悶の表情を浮かべ、便意に呻き始める。

「く、苦しい……お腹が苦しいっ……あ、もうだめです、コーチ……ロ、ロープを解いて! 出ちゃいますっ!」
「何が出るんだ、浅倉」
「そ、そんなこと言えない……ああ、もうお腹がきついっ……お尻、あ、あ、出てしまいますっ!」
「さっきより堪え性がないじゃないか。もう少し我慢したらどうだ」
「ぜ、絶対に無理ですっ……は、早くおトイレにぃっ……あ、もう出る、バ、バケツでいいですっ、早くしてぇっ!」
「まだだめだ。あと10分は我慢しろ」
「無理無理無理ぃっ……あ、出てしまいますっ!」

南はアヌスの痙攣を自覚した。
尻には何もあてがわれていない。
ここで漏らしたら、ベッドやシーツが酷いことになる。
由良に浴びせかけることにもなる。
死ぬ気になって我慢しようとしたが、それももう無理だ。
ジリジリと頭の芯が灼けるような便意に、南は失神寸前となる。

「お願いです、コーチっ!! ほ、本当に漏れてしまう……で、出てしまう、出るっ!」
「仕方ないな、じゃあ栓でもするか」
「な、何を、あうう、もうだめ……ひっ!?」

南は臀部を割られ、今にも排泄しかねない肛門に由良が肉棒を押しつけてきたのを見てゾッとした。

「ま、まさかコーチ……」
「このままで尻を犯してやろう」
「だめえっ! そんなのだめです、あ、い、入れちゃいやあ!」
「栓をしないと漏れるだろうが。入れるぞ」
「いやああああっっ!!」

逃げようと必死に捩り立てる尻たぶに、たくましすぎる肉棒があてがわれ、中心部に太い亀頭の先端が密着してきた。
その刺激で思わず出てしまいそうになったものの、それを防ぐように由良のペニスが挿入されていく。

「い、いや、助けて! お尻はいやあっ!」

ぐぐっと力強く押しつけられ、肛門が割られていく。
懸命に便意を堪えて引き窄められていただけに、そこを突き破ろうとしてくる苦痛は倍増する。
肛門が押し広げられ、一気に排泄せんと勢い込んでくる便意を押し止め、逆に押し返していく肉棒の争いに、南は気死寸前だ。

「うあああっ!!」

苦悶する美貌を引き攣らせ、南が絶叫した。
由良は惨く根元まで押し込み、奥まで貫いた。
ペニスが肉の栓となり、その中で行き場を失った便意が激しく腸管を責め苛む。
アヌスはゴムのように強く激しく、ペニスを食い締めてきた。
思わず由良が顔を顰めて呻く。

「おおっ、こりゃすごい締めつけだな。その調子だ、浅倉」
「苦しいっ……お、お腹が裂けるっ……お尻が、お尻が痛い……あああ……」

南は錯乱状態に追い込まれていく。
排泄を見られたくはないが、もう出したくてたまらない。
なのに排泄できない苦しさに呻き、身悶えている。

「あああ苦しい……お腹が苦しいわ……お腹もお尻もきつい……どうにかなりそう……」
「くく、いい顔だな、浅倉。おまえのその苦しそうな顔を見てるだけで、俺のチンポが硬くなっていくぜ」

その通りだった。
南のアヌスを強く深くまで貫いている由良の肉棒はぐぐっと膨張し、さらに太く、そして硬く、熱くなっていった。
上に反り返った部分が腸管を擦り上げ、南は背中を震わせて顔を引き攣らせた。
もう苦痛なのか快感なのか、本人でもよくわからなかった。

「た、助けて……助けて下さいっ……もうだめ、苦しくて……し、死んでしまう……ああ……」

由良は体重を掛けるようにして、上からのしかかって突き込んでいく。
一回一回、確実に奥深くまで貫き、根元まで埋め込んだ。
打ち込むたびに南の腰骨が軋み、今にも砕けてしまいそうだ。

「も、もう……ああっ、もうっ……!」
「い、いくのか、浅倉」
「いやああっ……だめえ!!」

南は激しく黒髪を振りたくり、目を剥いて背を反り返らせた。
腰を持ち上げるようにして激しく痙攣し、アヌスに入ったペニスを食い千切らんばかりにきつく締め上げる。
苦悶する南の美貌に興奮し、アナルセックスで気をやらせたのかも知れないという満足感で、由良も限界に達した。

「くっ、いくぞ、浅倉!」
「ひぃっ!」

奔流のように勢いよく精液が放たれ、南は泣き叫んで絶叫した。
もう腸内にはたっぷりの浣腸液で満ちていたはずなのに、なぜか南は由良の射精をはっきりと感じ取っていた。
あのたくましい肉棒から噴き出されてくる精液が腸管に当たる錯覚まであった。
射精の直前にぐぐっとペニスが太くなり、射精するたびにそれが細かく震えるのがアヌスで感じ取れたため、南にそのような錯覚を与えたのだろう。
驚くほどの敏感さだった。

由良はそのまま南の尻を腰で押しつぶしていたが、射精を終えるとペニスを引き抜き、素早くバケツをあてがった。
半ば失神していた南の肛門は、彼女の意志とは無関係に激しくグリセリンとそれに混じった精液を排泄していった。

由良はまだ解放する気はなかった。
普通の女なら、これ以上の責めはもう無理だろうが、南の体力ならまだいけそうだ。
軽く頬を叩かれ、南がうっすらを目を開けると、いつの間にか仰向けにされていた。
まだ尻の穴がずきずきと疼いている。
生々しいほどに肛門性交の実感があった。
ただ、疼いてはいたが、今までのような、張り裂けそうな激痛はなかった。
言ってみれば「痛気持ちいい」感じだった。

「あ……」

由良は南の腕を縛り上げていたロープを解いた。
脅迫していることもあるし、ここまで凌辱してしまえば、そうそう抵抗はしないと判断したのだ。
それに、縛られていない南の肢体を自在に操り、様々な格好で抱いてみたいという欲望もあった。

しかし、ロープを解かれてもまだ全身に力の入らない南は、由良の動きについていけない。
由良は南の両脚を抱え持つと、それを両肩に乗せていた。
そのままのしかかり、ふくらはぎから膝の関節が肩に掛かる。

南は恐ろしいものを見るように由良を見ていた。
由良がペニスを軽くしごくと、そこは見る見るうちに大きく勃起していき、また臨戦態勢となったのだ。
あまりのことに南は息を飲んだ。
南の幼い性知識でも、男性がこんなに連続で出来るとは思えなかった。
達也は一度もしないうちに射精してしまったり、いざという時に勃起できなかったりと散々だったのに、由良のこの精力は何事だろう。
その肉棒の凄さ、たくましさに、南はイヤでも「オス」と意識してしまう。
そして自分が、そのオスに犯されるメスなのだと覚ってしまうのだった。

由良の逸物は、またしても南のアヌスを狙ってきた。
ねっとりと尻たぶを撫で回しながら由良が言う。

「どうだ、この尻の見事さは。肛門で男を知ってから、この尻はますますでかくなったんじゃないか?」
「い、いや、そんな……」
「これなら、いくら子供を産んでも大丈夫そうだな。見ろ、このむちむちした尻っぺたを」
「あ、いやあ!」

南が抗う前に、ズンと貫かれていく。

「ああっ!」

その肛門を擦りつける肉棒の刺激で、南は喉を晒して仰け反った。
もう身体はくたくたなのに、肉体のどこかがまだ燃え続けている。
肛門を犯されても、すでに苦痛はない。
認めたくはなかったが、そこはかとない快楽まで感じ取るようになっていた。
アヌス責めと快感責めを交えた由良の巧みさもあって、早くも肛門性感を得るようになったのだ。
加えて、南の肉体自体が非常に鋭敏で、性的に脆かったこともあるだろう。
さらに、信頼するコーチの裏切り、恋人との行為の失敗といった精神的負担が、逆に背徳と被虐の快感となっていったことも見逃せない。
犯されているのはアヌスなのに膣が、そして子宮がジンジンと疼いてたまらなかった。
肛門性交と媚肉愛撫を交互に繰り返されたこともあり、もうどっちがどっちの快感なのか、南にもよくわからなくなっていた。

(ど、どうしてこの人はお尻ばかり……、ま、前は放って置いてお尻ばっかりなんて……)

そんなことを考えて、南はハッとした。
ともすれば、もうお尻ではなく前にして欲しいという思いにかられてきたからだ。
本来、肛門は性交する場所ではなく、膣こそがその場所なのだ。
なのに、こうも排泄器官ばかり犯され続けていると、気が狂いそうになってくる。

だが、もしかするとその原因は自分なのかも知れないのだ。
達也に対する思いから、膣を犯すことだけはやめて欲しいと由良に哀願したのは南なのである。
しかし、その代償として排泄器官への凌辱という、羞恥と恥辱のセックスを強要されているのである。
そこを犯され、レイプされ続けることにより、南の性感は右肩上がりに成長し、熟成していった。
なのに媚肉は放置状態なのだ。
もう、どうにかなりそうになった。

南の内心とは裏腹に、身体の方は勝手に反応していく。
責める由良すらも感心するほどの感度の良さだった。
太すぎるペニスをくわえ込んだアヌスはきりきりと食い締め、時折フッと緩んで抉り込む余地を与える。
そこでぐいっと深くまで打ち込むと、美貌を仰け反らせて大きく喘いだ。

「い、いや……ああ、お尻はもういや……ああう……いあっ……あ、あは……」

いっぱいに拡張された肛門と腸管がビリビリと痺れ、ズキズキと疼く。
堪えても堪えても膨れあがってくる妖しい官能に、南は顔を振りたくって喘いだ。
こんなことで快感を生じるはずがないと思っても、乳首が腫れ疼き、膣が痺れて濡れそぼち、子宮がカッカと疼くのは誤魔化しようもなかった。

「お、お尻は許してください……ああ、もういやあ……」
「本当に許して欲しいのか? それにしちゃ良い具合だがな。感じてるんだろうに」
「い、いや……あああ……」

南の肛門が痙攣するようにきゅっと収縮を繰り返している。
もうアヌスを犯される苦痛はないのか、頬が赤く上気してきていた。
苦悶と恥辱の中に発生した官能の渦に、為す術もなく巻き込まれていく。
確かに肛門も感じてしまっている。
だが、それ以上に媚肉が熱く疼いて仕方がなかった。
なぜ本来の場所なのに犯してくれないのかと不平を言うように、内部からジンジンと痺れが込み上げてくる。

「コ、コーチ、ああっ……お、お願いです、もう……あああ……ま、前……」
「なに?」
「あ……」

今、自分は何を言おうとしたのだ。
南はサッと美貌を赤らめた後、その顔を伏せた。
しかし腰は自然とうねり、男の腰に押しつけるように持ち上がっていく。

(も、もう……だめ……)

「ま……前に……」
「……」
「お尻にしないで……、ま、前に……して……」

この時、南に達也を思う気持ちがなかったわけではない。
こんなはしたないことを口にしてしまった自分を恥じ、達也に申し訳ない気持ちになったのも事実だ。

しかし、達也とは出来なかった。
失敗してしまった。
そのことが、達也だけでなく南にも相当な重圧となっていたのだ。
ああいったものは男性の側の問題が大きいのだろうが、女性サイドの責任もかなりあると聞いたことがある。
もしかすると自分が悪かったのではないのかという思いが、どうしても捨てきれなかったのだ。
その理由がわからない以上、達也に抱いてもらうことは難しいかも知れない。

しかし、ここまで由良によって調教され、心ならずも性的に成長し、熟れてきてしまった肉体の火照りはどうにもならない。
少なくとも、今の達也ではその炎を鎮めることは出来ないのだ。
達也というより、達也と南の関係では難しいというべきなのかも知れない。
南は、今現在、これ以上の肉の疼きを堪え忍ぶ自信がなくなっていた。
由良は南の顔を覗き込んで、確認するように言った。

「いいのか、浅倉」
「……」

南は小さくコクリと頷くと、顔を伏せた。
そして、覚悟するように右手でシーツをキュッと握りしめた。
左手は自然と口元に運ばれ、その人差し指をそっと噛んでいる。
声を出したくないのであろう。

「んう……」

南が仰け反った。
由良の男根がアヌスから引き抜かれたのだ。
カリが肛門出口を思い切り擦り上げ、その快感にわなないたのだ。
ぬぷりと顔を出した肉棒は全体が腸液にまみれて、淫らに鈍く光っている。
南の瞳から恐怖が抜け、それをじっと見つめている。
まだ禍々しい凶器に脅える色は残っているものの、たくましさと力強さに対する期待も僅かながら混じってきていた。
それをおぞましい、はしたないと感じる余裕は最早なかった。

「あ……!」

熱いペニスの先端が媚肉に当てられると、さすがに南は躊躇し、身体をずり上げて逃げようとした。本能的なものだろう。
しかし由良は、南の脚を肩に乗せてのしかかっているのだ。
ほとんど動けず、南はもがいただけに終わった。

そのまま、熱く濡れた媚肉に亀頭が押しつけられ、南の裸身がぴくりと震える。
割れ目は男根を迎え入れるようにざあっと蠢き、大きく割れていった。
膣口も、まるで「ここだ、ここだ」と教えるかのようにひくついている。
亀頭の先がそこにめり込むと、南はクッと仰け反った。
唇に挟んだ左手の人差し指を軽く噛んでいる。
由良はそのまま腰をぐっと落とし込んでいく。

「んんっ!」

南の白い歯が指を強く噛んでいる。
悲鳴を上げまいと必死に堪えているようだ。
苦痛と、処女を失う恐怖に激しく動揺している。

「んあっ! やっ、やっ……うんっ……くううっ……!」

太い男根が、南の処女地帯をゆっくりと奪っていく。
しかし、思っていたほどの抵抗感はない。
充分に濡れ、そして南本人も受け入れるつもりになっていたからだ。
それでも、初めて異物が挿入され、膣内に大きなものが強引に入り込んでくる圧迫感と苦痛は大きい。

「いっ……たっ……ぐううっ……うっ、あああっ……!」

錯覚なのだが、由良のものがブチブチと処女膜を破っていく音が南には聞こえてくる。
もともと熱かった膣内がさらに熱を持ち、潤んでくる。
それでも苦痛は和らがず、南は胸を反り返らせて呻き、右手で握ったシーツを引き裂かんばかりに引っ張っていた。

由良もきつさを感じ取っている。
やはり肛門と違って、それまで何も入ったことはなく、出て行ったこともない箇所を無理に挿入しているのだ。
抵抗があって当然である。
しかし、それにしてもきつく締まっている。
由良は無理をせず、慎重に腰を送っていった。

「ううっ……あ……あうむ……むむうっ……いっ……いった、い……」

南は激痛に顔をぶるぶると振りたくり、眉間に皺を寄せて目をぎゅっと堅くつむっている。
その目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。
小さな鼻腔や唇から漏れ出る吐息は火が着くほどに熱く、声はくぐもっている。

「んあううっ……!」

南がひときわ大きな声を上げて仰け反った。
とうとう貫通されたのである。
まだ由良のペニスは少し外に出ているが、南の膣はもう肉棒でいっぱいになっていた。
子宮口に亀頭が当たる痛みに呻き、胎内を占領し尽くした男根の大きさに圧倒され、呻いている。

「よ……し、浅倉、終わったぞ」
「……」

それを聞くと、南はホッとしたように全身から力を抜いた。
それと同時に、あれだけ酷かった激痛が少し和らいだ気がする。
やはり怖がり、緊張して息んでいた分、膣も余計に締まっていたのだろう。
挿入されたと知り、もう肉を裂くような苦痛は終わったとわかり、南の緊張も少し解けたようだ。
まだ息が少し弾み、乳房が小さく揺れ動いているが、呼吸は規則的になっている。
由良は満足そうに南の清楚な美貌を見やった。

「どうだ、浅倉。これでおまえも一人前の「女」になったんだぞ」
「あ……」

とうとう犯されてしまったという哀しみ、達也に捧げるはずだったものを自分の意志で別の男に与えてしまったという背徳で、南の目から涙が溢れてくる。
追い打ちを掛けるように、由良が宣言した。

「これで浅倉の尻も膣も俺のものだ。わかってるな?」
「ああ……」

絶望に浸る暇もなく、由良がゆっくりと腰を打ち込み始めた。
途端に苦痛が蘇り、南は口を開けて呻き、悲鳴を上げた。

「ぐうっ、いやあっ……あ、あうっ……うんっ……あはあっ、いっ……うはあっ!」

抜き差しが開始されると、まだペニスに馴れていない胎内の粘膜が擦られる激痛に呻き、内臓をこねくられる苦痛に悲鳴を放った。
思わず南の腕が由良の背中や腰に回り、ぐぐっとそこに爪を立てた。
快楽のために引き寄せようというのではなく、シーツや指などよりも、もっとしっかりとしたものに縋り付きたくなったからだ。
綺麗に切り揃えられた爪が、男の皮膚を軽く破いたが出血するほどでもなかった。

一方の南の膣からは、やはり出血が見られた。
ぬるっと抜かれてくる由良の肉棒にもべっとりと血がついていたし、血の混じった愛液が膣から零れてくる。
南はそれを見たわけではないものの、裂けた胎内から出血しているのは実感できていた。
挿入された時に熱を持ち、潤ったように感じられたのは、傷による発熱と出血のためだったのだ。

「んあっ……あぐっ……んっ、んんっ……いや……うぐっ……ああっ!」
「まだ痛いだろう、浅倉。無理もない、最初はそういうもんだ」

確かにかなり痛かった。
しかし、貫かれた当初よりは随分とマシになったし、別の感覚もあった。
自分の身体の中で別のモノ──男の身体が入り込んで蠢いているという感覚に戸惑っていたのだ。
別の生物が入り込んで動き回っている気色悪さがある。

「やっ……わ、私の、ああっ……お、お腹の中でぇっ……な、何か……こ、コーチのがう、動いてる……んううっ……いあっ!」
「痛いだろうが我慢しろ。何度もしているうちに気持ち良くなってくるもんだ」
「い、いたぁい……あうっ……ぐううっ……あ、あ……あああ……」

南は盛んに苦痛を口にしていたが、早くもそれを脱皮しようとしていた。
南は達也に愛撫を受けていた時も、由良に調教されていた時も、同じ思いを持っていた。
乳房を揉まれたり乳首を舐められたり、あるいは媚肉やクリトリスを指や舌で愛撫され、性的な快感が強くなっていくと、どういうわけか膣の中に何か入れて欲しくなっていたのだ。
膣奥への刺激が欲しくなった。
最初のうちは、胸を揉まれながら媚肉を指で愛撫されるだけでも満足出来ていたが、そのうち物足りなくなり、中の方への刺激が欲しくてたまらなくなっていった。

今回、初めて膣内に挿入され、その激痛は飛び上がるほどに強いものだったが、それでも痛いだけではなかったのだ。
痛いのがいい、という倒錯的なものもあったろうし、「痛気持ち良い」感覚もあっただろう。
しかしそれ以上に「セックス」を肉体が求めるようになっていたというのが本当のところらしかった。
ゆっくりとではあるが、深々と南の胎内奥まで抉ってくる肉棒に、南は苦痛を堪え、呻いている。
だが、その表情に戸惑いの色が浮かび始めていた。

(あ……ウソ……、い、痛いのに……き、気持ち良いっ……ど、どうして……もっとして欲しくなってる……)

南は少なからず衝撃を受けていた。
話に聞いていた処女喪失はかなりの苦痛で、ロマンティックな時間を楽しむどころではなさそうだった。
人によっては泣き喚くほどの激痛とショックらしい。

確かに痛かった。
南にしても、股間から身体を引き裂かれそうな、怪我をして擦りむいた部分を思い切り擦られるような、名状し難い激痛があった。
だが、それだけではなかったのだ。膣を貫かれ、狭い膣道を押し開かれる辛さときつさの他に、ほのかに快楽の兆しが見えてきていたのである。
中には初体験がトラウマとなり、セックス恐怖症になる女性もいる。
なのに南は、まだ朧気ないものではあるが、はっきりとした快感、気持ち良さがあった。

浅倉南という子は、真面目そうな印象とは裏腹に、腹の底にはドロドロとした淫らな本質があったのではないかと、自分で疑いたくなるほどだった。
まだ痛みでわなないてはいるものの、膣口もペニスの律動を恐る恐る受け入れているようだった。
ずるっと引き抜かれるペニスにはまだ破瓜の血が付いているものの、それも薄くなってきている。
出血が止まりかけていることもあるし、血液以上に愛液が分泌されてきたのだ。
しかし南は、肉や内臓を引き裂かれる激痛よりも、男の勝手にされている、男のものになっているという被虐的な快楽に囚われつつあった。

「浅倉、まだ痛いか?」
「い、いたい……です……あ、んむ!」

由良は南の顔を両手で押さえると、そのまま顔を被せ、その唇を奪った。
キスは許したくないと思っていた南は激しく動揺し、顔を振ろうとしたものの、由良は離してくれない。
しかも、顔を振りたくろうとすると、意地悪く腰をズンと強く打ち込んで邪魔をしてきた。

「んぐうっ!」

不慣れな膣奥を亀頭で抉られ、南は塞がれた口で呻いた。
その隙に由良の舌が咥内に侵入し、南の口の中を味わっている。
舌を絡め、それを吸い上げると、南は目を堅くつむって低く呻いた。

「んんん〜〜〜っ……んむううっ……」

両手と脚の指がぎゅっと強く屈まっている。
相当の嫌悪感があるのだ。
それでも舌が咥内粘膜を擦り、舌をくすぐっていくと、硬かった唇が緩んでくる。
舌も逃げ回ろうとせず、由良の舌に任せるようになっていった。

「んっ……んうっ……んむ……むむ……」

腰を突かれるたびに呻き、舌を吸われ、南はまた腕を由良の背に回している。
あれほどキスを嫌がってはいたものの、キスされて咥内を愛撫されることで、少し痛みが薄らいできている。
南の裸身から、少しずつ力が抜け、緊張も緩んでいった。
攣りそうになるほどに力が入っていたふくらはぎも、今では柔らかそうな肉感を取り戻していた。
由良の胸が南の乳房を潰すほどに密着してきている。
南の長い脚は、ほぼ完全に上半身にくっついていた。
新体操選手ならではの身体の柔らかさだろう。

「ん……、むはっ……はあ、はあ、はあ……あ、ああっ……!」

キスから解放されたものの、南は軽く息継ぎしただけで、また呼吸が苦しくなっていく。
次第に喘ぎ始めたのである。

徐々に露わとなる南の痴態に、責める由良の方も極まってきた。
何しろ、国民的な人気を誇る少女の処女を奪ったのである。
しかもその子には想い人がいるのに、自分が強引に犯しているのだ。
興奮しない方がどうかしている。

始めは加減していた腰の動きが素早くなっていく。
南の媚肉も反応著しく、くわえ込んだペニスを離そうとせず、きつく食い締めていた。
硬く腫れ上がった肉棒が痛みを感じるくらいの収縮に、由良の射精欲も頂点に達する。

「浅倉、いくぞ。いいな?」
「あ、あ、コーチっ……中はだめ、中に出さないで……ああ……」
「だめだ。おまえは俺のものなんだ。その証をおまえの中に刻んでやる」
「そんな……、絶対にいやです、ああっ……中、出さないで!」
「だめだ、いくぞ!」
「や、やだっ! やああっっ……!」

単調かつ激しく腰が打ち込まれ、由良は込み上げる射精感を抑えようともしなかった。
南の両手が、押し返すように由良の胸を突き上げたが、どうにもならなかった。

「いやあ!!」

由良の陰嚢がきゅうっと引き締まったかと思うと、陰茎まで一気に精液が噴き上がってきた。
射精時の音が聞こえるかのような激しい射精が始まり、南の無垢な胎内を穢していく。

「やだ、やだ、やだああっ! あ、で、出てる、本当に出てるっ……いやあああっ!」

由良は南の裸身をしっかりと抱きしめ、腰を密着させたまま精液を放った。
びゅくびゅくと勢いよく射精され、南は子宮口に浴びせられる精液の熱さと濃さを実感させられていた。

──────────────────

達也が、見知らぬ女に声を掛けられたのは、ホテルでの南とのセックスに失敗した翌日のことだった。
辛うじて大学はさぼらなかったものの、当然のように講義は頭を素通りしていった。
友人たちにも気のない返事をするに留まり、いつ授業を終えてどう帰って来たのかすらはっきりしない。
そんなぼんやりした状態でふらふら歩いていると、突然に後ろから呼び止められたのだ。

「上杉くん?」
「……」

最初は気づかず、そのまま歩いていた。
女の方は無視されたと思ったのか、少しムッとしたような顔で近づいていく。
早足で達也に追いつくと、横から顔を覗き込んだ。

「上杉……達也くんでしょ?」
「え、あ、はい、そうですけど……」

達也はいきなり声を掛けられたような感覚だったから、かなり驚いて女を見た。
しとやかそうな美人である。
長い黒髪が背中にかかり、美しいウェーブを形成している。
知的で聡明そうな顔つきだった。
どこかで見た憶えがあると思ったら、高校時代の野球部で南の先輩マネージャーだった西尾佐知子によく似ていたのだ。
彼女もかなりの美人で(もっとも、キャプテンの黒木の恋人だったのだが)、達也が野球部に入るきっかけを作ってくれた女性でもある。

ただ、佐知子は知的なイメージではあったが、決して冷たい感じはしなかった。
この女性は、ともすれば冷笑とも受け取れるような表情を浮かべている。
いずれにしても見知らぬ女だった。
怪訝そうな顔で達也が尋ねる。

「どちらさま……?」
「あ、ごめんなさい。名乗りもせずに失礼だったわ。私、渡瀬紀子と言います。浅倉さんと同じ大学で一緒に新体操やってます」
「あ、南の……」
「ええ。そこでキャプテンやってるの」

なるほど、美人なわけである。
すらりとしたスタイルは、いかにも体操選手らしかった。

「ちょっとお話していかない? 時間ある?」
「あ、はい、大丈夫ですけど……、何です?」

不可解そうな達也に妖しい笑みを浮かべながら、紀子は促すように先を歩いて行った。
ふたりはフランチャイズのコーヒー・ショップに入ると、レジから離れた場所に席を取った。
比較的空いており、セルフサービスということもあって、隅の席にいれば話の内容を他人に聞かれることもないだろう。
窓際だったから外からは見えるが、声が聞こえることはない。

席に着くなり、自分で運んできたブレンドを口にした紀子を見て、それにつられるように達也もコーヒーを啜った。
コーヒー好きの彼にとって満足できるような味ではなかった。
値段相応といったところだ。
何しろ隣家である南の家が喫茶店だったから、そこに通い詰めていた達也の舌はそれなりに肥えている。
あまり長くつき合う気のない達也は早々に切り出した。

「話って何ですか」
「……あなた、浅倉さんの彼氏、よね」
「……」

のっけからそう聞かれても答えられなかった。
つき合っていることを特別に隠したりはしなかったものの、だからといって公表もしていなかった。
仲の良い連中──高校時代の野球部の友人など──は知っているが、他は知らないだろう。
と言っても、前述の通り、まるで知られていないというわけでもないし、薄々感づいた人がいてもおかしくはなかった。
だから正直に言った。

「まあ……、一応」
「ふうん、やっぱりそうなんだ」
「……」

紀子はクスクスと笑っている、
その目に、少しからかうような色があった。

「ごめんね、笑ったりして。でも、本当にそうなんだ……」
「……」
「片や、甲子園で優勝し、その年のプロ野球ドラフト会議の目玉だったのに、肩の故障を理由にプロ入りを拒否した投手」
「……」
「片や、高校時代に彗星のようにデビューし、都大会でもインターハイでも上位入賞を果たした新体操界期待の星」

達也は、やや居心地悪そうに黙って座っていた。

「こんなカップルが世間に知れたら、それこそマスコミは大騒ぎよね。美男美女同士の上、見事なサクセス・ストーリーを描いているふたり。
馴れ初めもドラマ性たっぷり。映画の題材になりそうなほどだもの」
「で、何が言いたいんですか」

さすがにイラッとした達也が、珍しく険のある口調で言った。
そんな達也の矛先を難なく受け止め、紀子が返した。

「ねえ……、あなたたち、最近うまくいってる?」
「え……?」
「今まで通りのアツアツなのかしら? それとも、もともとそんなべったりでもなかったのかな?」
「……」

強いて言えば後者であろう。
前述の事情もあり、そう人前でイチャイチャは出来なかったし、状況が許しても、互いの性格からしてあまりベタベタするようなカップルではない。

「なぜそんなことを聞くんですか?」
「知りたい?」

紀子は思わせぶりに「うふふ」と笑った。
何となく癪に障る感じである。

「浅倉さん、あれだけ綺麗だし、可愛いんだもの、他の男だって放って置かないわよ」
「……」
「況して、あなたとつき合ってるなんてこと、うちの大学じゃ多分誰も知らないわ。それに、つき合ってると知っていても、何とかしようとする男なんかうじゃうじゃいるのよ」
「……誰か南に言い寄っている、とでも言うんですか」
「ていうかね、もう浅倉さんは……」
「南がどうかしたんですか!?」

前回と昨日の痛烈な失敗もあり、達也は男としての自信を失いかけている。
まさかそれが原因で南が離れて行くとも思えなかったが、確信はなかった。

そう言えば、昨日の南も達也が唖然とするほどに積極的だった。
まさかあの南が、自分からフェラチオしてくるとは思わなかったのだ。
南には南の事情があったし、達也のことを慮ってあんなことをしたわけだが、当然、達也はそんなことは知らない。
紀子はそこで意図的に話を核心から逸らした。

「体育会系の男女ってね、本当に簡単にくっついちゃうのよ」
「え?」

紀子はカップを置くと両手を組み、その上に顎を載せて達也を見ている。

「外から見てるとさ、女性選手とその指導者の男ってデキてるんじゃないか、なんて思ったりしない?」
「……」
「ま、もちろんやっかみもあるんだけどね。でも、本当に、意外と男女関係になっちゃうケースって多いの」
「だ、男女関係って、その……」

達也は息を飲んだが、紀子は敢えてその問いには答えなかった。

「まあ、こないだ事件になった柔道のケースは悪質だけどね。あれは未成年の女子部員に有名な男性コーチが酒を飲ませて酔っぱらわせた挙げ句、
部屋に連れ込んでって感じで、ほとんど犯罪。でもねえ、それに近いようなことは表沙汰にならないだけでけっこうあるのよ」
「……」
「有名なのはマラソンよね。あれも、男性指導者と女子選手が簡単に男女の関係になっちゃう。具体的に名前は出せないけれど、国民的にも人気のあった
選手とそのコーチがそういう関係だった。もちろん恋愛は自由なんだけど、選手はともかくコーチには妻も子供もいたからね。逆に、人妻選手のランナーも
いたでしょ? この人は美人だったけど、ご多分に漏れず、手を出されていたみたい」
「……」
「陸上競技なんかは、特に個人競技が多いから、どうしてもそうなることが増えるのかもね。マラソンだけじゃないしさ。他にもテニスとか卓球なんか
でも、そういうことは珍しくない。でもね」

そこで紀子は顔を傾けて達也に微笑んだ。

「新体操とかフィギュアスケートとかシンクロナイズド・スイミングなんかではあまりそういうことはなかったの。どうしてかわかる?」
「さあ……」

達也は少しホッとしたが、それが本当なら考えてみれば不思議である。
紀子は、達也が口に出さぬ疑問へ答えるように言った。

「新体操にしてもシンクロにしても美人が多いでしょ? 採点競技だからね、技術点の他に芸術点も加わる。芸術点には、表現力はもちろんだけど
競技者の容姿も評価の対象にされちゃうのよ。本当はそんなことは無関係なはずなんだけど、やっぱり採点者だって人間だからね」

その通りだろう。
南がホープとして期待が大きかったのも、技術や運動神経の良さの他に、そのルックスやスタイルの良さ、愛くるしさがウェイトを占めていたのは間違いない。

「昔ね、技術的には間違いなく世界一だったのに、どうしても金メダルが取れなかったフィギュアスケートの日本の女子選手がいたのよ。でも、
残念ながら彼女の美貌は諸外国選手と比べてそれほどではなかったのね。はっきり言えば美人ではなかった。そのせいで金には届かなかったのだと、
まことしやかに言われているのは事実なの」

採点者が全員女性だったらそんなことはないだろうと思うのだが、逆に、あまりに美人だと嫉妬から点数を下げてしまう者が出かねないということもある。
採点競技の難しさだ。

「でも、シンクロもフィギュアも、そして新体操もあんまりそういう噂はなかったのよ。理由はひとつ。なんだと思う?」
「さあ……」
「指導者も女性だから、よ」

それはそうだろう。
男子競技ならともかく、女子の競技なら普通は女性のコーチが就くと思う。
マラソンなどの陸上競技、あるいはテニスなどの球技では男性指導者の方が多いようだが、こと新体操だのフィギュアだのは圧倒的に女性コーチの方が多い。

理由は簡単で、男子コーチは女性の競技を経験したことがないからだ。
新体操にしても、男子選手と女子選手では競技内容が違うものも多いし、指導法もまた異なる。
当然、経験を活かす意味でも女性選手から成り上がった指導者が行なうべきなのだろう。

「まあ、さっき例に出したフィギュアスケートの選手の場合、指導者ではなくてその競技を運営する側の実力者とデキていた、というオチがあるんだけどね」

紀子はそう言って苦笑した。

「だ・か・ら。私とか浅倉さんみたいな女子の新体操選手には、そういうのはないんだけどね……、普通は」
「普通は、ね……」
「そう、普通は。でもねえ、例外って、どんなことにでもあるのよ。うちの大学のコーチ、女性がほとんどだけど、たったひとりだけ男性コーチがいるの」

達也の身体が、ほとんどわからないくらい小さくピクリと動いた。

「それも超有名な指導者。この人、自分では新体操とかやったことはないのよ、全然。学生時代は確かラグビーか何かじゃなかったかな」
「それが……、どうして?」
「自分がプレーするのとは別に、競技として新体操に興味があったんですって」
「……」
「ま、それだけならそこらにもいくらでもいそうなんだけどね。やっぱさ、男の人ってフィギュアとか新体操とか見る時に「そういう目」で女子選手を見るでしょ?」

そうかも知れない。
達也は、南に対してももちろん性的な関心を持っていたが、それ以外の選手たちにも「そういう目」は向けていた。
身体の線がはっきりと出るレオタードを着て、タイツを履いているとはいえ脚も露わにして女性的な魅力を思い切り発散させているのだから、
それはもう仕方がないだろう。

「でもね、そのコーチ……由良さんって言うんだけど、由良コーチはそういう興味ではなくって、純粋に競技として新体操に惚れ込んだのね」
「……」
「で、独学で勉強して外国に渡り、指導者としての修行を積んでいったわけ。その結果、その国のナショナルチームでコーチを務めるほどになったのね。
その頃にはもう彼の名は日本の関係者の間にも知れ渡ってた。だから帰国した時には争奪戦になったくらいよ。そこでどんな伝手を使ったのか知らない
けれど、うちの大学が由良コーチを射止めたってわけ」
「その由良さんて人と南が……、何かあったんですか」
「さあて、どうかしらね」

散々煽り、達也を焦らせるようなことを言っておきながら、紀子は肝心なところは言葉を濁した。

「私の口からははっきり言えないけど、そういう噂があるのは事実。浅倉さん、大学からも強化指定選手に指名されて、コーチからも熱心な指導を
受けてるしね。由良さんからマッサージを実際に受けることができるのは限られた選手だけなんだけど、浅倉さんもそのひとり」
「マッサージ……。その人から南はマッサージされてるんですか」

膝の上に置かれた達也の拳がぎゅっと握られた。
マッサージとは言え、南の身体に触れている男がいると知り、やはり穏やかではいられなくなる。
これが整体師とかトレーナーならともかく──いや、それでもやはり気にはなるだろう──、コーチとは言え本職ではない者に身体を触れさせているのだ。
そう思うだけで達也の心が千々と乱れる。

それだけではない。
あろうことか、股間が熱く硬くなるのを感じ取っていた。

「うん、そう。そういうところから、他の女子選手たちがやっかみでそういう噂を立ててるだけって可能性もあるけれど、でもねえ……」

そこでまた紀子は思わせぶりに達也を見る。

「私も見ちゃったんだ」
「な、何を……」
「部室から出てくるふたりをね。もう夜遅かったな。私、いったん練習を終えて合宿所に帰ってたんだけど、忘れ物に気がついて体育館に戻ったの。
そしたら、真っ暗の体育館から浅倉さんがひとりで帰るところだった」
「……」
「すぐに部室の灯りが消えて、今度は由良コーチが出てきたわ。マッサージだけにしてはやけに時間がかかったんだなと思ったんだけど、何だか様子が変
だったわ。浅倉さん、俯いたまま足早に出て行っちゃうし、コーチはコーチでこそこそしてたしね」
「……」
「すぐピンと来たわ。これは多分……」

ガタンと大きな音を立て、達也は立ち上がっていた。
それを見上げて紀子がダメを押す。

「余計なお世話かも知れないけれど……、確認した方がいいんじゃない? 浅倉さんに……」



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