クリードＢＢＳ

Beast Bind TRPGのクリード掲示板だっ！

新しく記事を書きたい
　→［記事を書く］をクリック！

今ある記事へ返信したい
　→[この記事へ返答する]をクリック！　各記事の右下にあるぞ！

詳しい機能とか知りたい！
　→だいたい読んだまんまですが、ここにヘルプを用意！

新しい記事から表示します。古い記事はこのページの下の方にあるリンクから読めます。

#　異能者＠追憶編のクリード

投稿者：いずみつ　投稿日：2001年05月14日(月)03時16分32秒 [reply to]

Let's just say....

　そして　　突然に光は失せた。
　体に感じる威圧に逆らい、あたしは辛うじて顔を上げる。
「逃げろ、姉ちゃん！」
　そこにいたのは、
「・・・陽・・・？」
　弟だった。体を火ぶくれだらけにして、両の手に角材を握り締め。
「ほう・・・いい根性だ、人間にしちゃあな」
　たった今振り下ろされたそれを、ハイオヴェリアの片手が受け止めている。
「逃げろッ！」
　もう一度陽が叫ぶ。本当に死に近いのは、あの子の方なのに。
「く・・・ッ」　
　弟を逃がそうと思う。思うのだけれど、動けない。
　頭は前進を命じているのに、体がそれを拒絶するのだ。完全に萎縮している。
「麗しの姉弟愛か？　ん？
　　　反吐が出るな」　
　ぐい、と悪魔は、その強力で陽を引き寄せる。抗しかねてたたらを踏んだその瞬間、ジュリ
アスの手刀が一閃した。
　刎ねられた首が宙を舞う。一瞬遅れて吹き出す鮮血。
　その全ては、まるでスローモーションのように。

「しまったな」
　楽しそうに、悪魔は笑う。
「これじゃあオレの殺し過ぎだ。残念だが、もう少しお前は生かしておいてやる」
　とん、と目の前に、陽の首を捨て置いて。
「弟に、感謝するんだぜ？　ん？」
　そうして、ハイオヴェリアは消え失せた。闇の領主の消失と同時に、それまで感じもしなか
った熱気が身を焼く。

　　　関係無い。
　震える四肢を鼓舞して、小さい方の陽に手を伸ばす。拾い上げて、大きい方に歩み寄る。
　切断面は綺麗だから、くっつけるのになんの問題も無い。　
　首輪のような血痕を拭えば、ほら。
　もう、元通り。
　なのにどうして　　どうして、笑ってくれないんだろう？


　火に煽られるように、あたしはふらりと立ちあがる。知らないうちに、雫が顎を伝って。
　陽も、父も、母も、みんなこの火炎に呑まる。そうして、ただあたしだけが取り残される。
　
　それは、別離ではなく哀惜の涙。
　あたしの中の強い部分は、とうに決別を受け入れていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　“死神憑き”松久 紗枝 ／ 夢幻Ⅲ

クリードＢＢＳ

次のページの目次