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※赤い文字色のページには性描写があります
施錠されたドアのフックに男が革鞄をかけるのを見て、暮羽も自分の荷物を置く場所を探してはみたが、眼前にある洋式便器の背後に鎮座するタンクの上ぐらいしかまともなスペースがなかった。平たいタンクの屋根に鞄を置きつつ人差し指を鼻孔にあてがうが、狭苦しい密室に篭る臭いは容赦なく暮羽の鼻腔に染みる。
あれから二人が向かったのは、無人駅の外れにポツンと存在する小さな公衆便所だった。灯りもついていないゆえに薄暗く、陰気な雰囲気が漂う矮小な建物からはじっとりとした悪臭が漏れ出ているようで、入り口にて仁王立ちする“故障中。使用禁止”の看板が使用者に対するつれない拒絶感をより一層強めていたのだが、男は事ともせず、むしろ「好都合だ」と呟いて隣に立つ青年の背を押して中へと導いたのだった。
“行政に色々言われそうだからとりあえず設置しました”と言わんばかりの小ぢんまりとした便所は男女兼用で、一般的な公衆便所のそれよりは多少広いようではあるが狭いことに変わりはない個室が一つしかなかった。とりあえず、手探りで灯りをつけてはみたものの、一部の蛍光灯が力尽きかけているのか時折チカチカと瞬きをするのが何ともわずらわしい。そして、故障中というのもあってか掃除はまともに行っていないらしく、その正体をあまり考えたくない飛沫の跡が散らばる薄汚れた壁には絵心がまるでない人間が欲望と勢いに任せて描いたとおぼしき拙い猥画や浮かんだままに書き殴った品性下劣な言葉といった落書きがあちこちに点在し、故障しているのを知ってか知らでか切羽詰った誰かが人間の尊厳を失いたくなかった一心で使用してしまったらしきすえた臭いが鼻を衝く。
嗅覚が疲れ、個室にたちこめる汚臭にようやく慣れてきた頃。蓋を閉ざした洋式便器に座らされた暮羽のズボンのベルトを中年男が慣れた手つきで音高く外した。汗ばんだ脚に時折ひっかかる着衣を足まで下ろされ、そのまま抜き取られる間も暮羽は抗う様子は見せず、得意の悪態すらつかず、清潔とはいえぬ便器の縁を掴む指に力を入れるのみ。露わになった鈍色のボクサーブリーフの中心部には肉山が高々とそびえ立ち、山頂部から染み出た湧き水が布地の一部分を色濃くしている。その後も、相手の視線に感じているのだろうジワジワと拡大していく青年の恥部のシミに男は顔をほころばせた。
「ははっ、そんなに感じてくれてたの?」
「あぁッ……!」
上機嫌な態の男が暮羽の下着を掴んで勢いよくずり下ろすと、柔らかな茂みに囲まれた搭が頂点と布の間に光る橋をかけつつ前後に振れ、すっかり出来上がっている青年の蕩けた悲鳴が耳を撫でた。
「はぅ、あ、ぁ……も、もう、した、い……い、入れて、くれ……」
声と同じく揺らめく上目で男を見据え、興奮で薔薇色になった唇を小さく震わせてせがむが、男は器用に片眉の尻を上げて鼻からフンと息を抜いた。
「せっかちだなぁ。キミばっかり気持ちよくなってずるいと思わないのかな?」
「……え?」
奪い取った下着をポトリと床に落としながら肩をすくめて言葉を紡ぐ男に困惑の表情を浮かべる暮羽だったが、直後に視界に乱入した物体を捉えるや虚ろな瞳を妖しく光らせた。
「キミも同じぐらいおじさんを気持ちよくしてくれないとね」
「あっ、あぁあ……」
スーツの股ぐらから飛び出て来た黒光りする肉刀に暮羽が恍惚の声をあげて顔を寄せようとすると、男は少し意地の悪い笑みを浮かべて後ずさりをし、個室の扉に背を預けた。離れてしまった男を追うべく慌てて便座を降り、床の不気味な湿り気も構わずに男の足元に両膝を落とす暮羽の鼻先に男の肉茎が突き出される。夏という季節も手伝って、普段以上に蒸れた臭いが鼻に突き刺さったが、今の暮羽にとってはその臭いこそが彼が求める雄の象徴であり、肉体を駆け回る情火を激しく燃え上がらせた。
「んッ、んふぅ……はぁ、はぁ……」
汗や尿といった排泄液、体臭、恥垢、洗剤のほのかなフローラル系の香り。それら全てが綯い交ぜになった上で暑気に蒸らされた雄のフェロモンを思い切り吸い込んで肺と脳を満たすと、暮羽はやんごとなき至宝を扱うかのように恭しく男の淫棒に両手を添えて軽く掲げたのちに視界に入った二つの宝玉をさも当然のように念入りに舐め、一つずつ丁寧に口に含んで舌で転がした。予想以上のあつい奉仕に思わず呻きを漏らす男の本体に青年の少し尖らせた唇が近付いて先端に触れるか触れないかのついばみを繰り返し、少しずつ触れる回数の方が増えてきたかと思うと、恋人への愛を伝える接吻のように高い音を立てて唇全面を押し当てる長いキスを幾度も与え、そのまま熱くて柔らかな口唇で肉頭を包んでチュウチュウと貪欲に吸う。
「んちゅっ、ちゅっ、んー ちゅぶっ
はふっ
はふっ
」
口いっぱいに溜めた唾液を相手の肉根に塗りたくる暮羽はうっとりとした様子で目を閉じ、長めの睫毛を細かく震わせつつ何度も鼻で深呼吸をして相手の獣臭を味わった。嗅覚から来る刺激がほとんど痛みに近い痺れとなって脳の制御機能を壊し、暴走しつつある頭は暮羽の身体に淫らな命令を下す。
「あうっ ふぅ……ん、んむぅ
」
男茎をくわえたまま暮羽は左手をおずおずと晒された尻に近付け、くっつき合った人差し指と中指で陰門周辺の放射線を数度なぞった後に、何の躊躇もなく捻じこんだ。ぬぷちゅっと淫靡な水音が二人の間に響く。ふぅふぅと息を荒げて一物をしゃぶりながら恥ずかしげもなく自分の後穴をほじくる青年に中年男は歯列が微かに零れる口から熱い吐息と笑いを漏らした。
「ふふっ、何だか慣れてる感じだな。いつもお尻の穴をいじってるんだろ」
「んちゅぶ、んぅ、んッ……ほぼ、毎日、オナニーしてて……そン時に、ケツ穴も、いじってる……ゥ、う、はうっ はぁっ
あぁ
」
「……ふぅん」
甘い喘ぎと共に紡がれる開けっぴろげな告白を聞いた男の脳天から足裏までを昂ぶりの電流が一気に流れ伝ってその身をブルッと痙攣させ、笑顔が劣情によって卑しく歪む。
不意に男が暮羽の口から腰を離した。
「ぷはッ、あ、あッ……?」
思わぬ相手の行動に唾液の泡を飛ばしつつ露骨にうろたえた様子の暮羽は、細めに整えた眉尻を切なげに下げた。獲物を失った嘆きに泣きそうにすらなっている相手のくすんだ金髪を男は大きな手で優しく梳き、穏やかな声で頼んでみた。
「キミが穴をいじっている所をよーく見せてほしいなぁ」
「えッ」
半べそ顔に戸惑いが走った。自分で局穴を慰めるところなぞ、普段よく身体を交える後輩にすら見せたことがないのに、数十分前に会ったばかりの名も素性も知らぬ痴漢男に披露しろというのか。そう思っている間も男は期待と猥情に満ちた双眸で自分を、特に下半身を見つめている。男のいやらしい視線が弱りきった理知ととどまる所を知らぬ欲望の狭間で小さく唸る暮羽の迷いを乱暴に奪って投げ捨てる。理性の衣が引き剥がされて露わになるのは、発情した獣の淫猥なる本能。
「う、うぅ……」
無駄すぎる最後の抗いの呻きを喉奥から搾り出す暮羽の腰が臭いたつ湿気に満ちた床にずるずると落ちる。秘部の奥の奥まで見せるように目いっぱい開かれた大股の奥で秘穴がぬらぬらと光って玩弄の時を待つ。爪を短く切っている長い指が飢えた肉口を満たすべくゆるゆると近付く。ごくっ。男が生唾を飲みこむ音と菊穴が指を飲みこむ音が重なった。
「ぁ、うあ! ……は、あぅ あ
あんっ
はあ
あ、あんぁッ
」
じわりと涎を滲ませている淫口が暮羽の二本の指を待ちかねたように捕食した。激しく前後する指をにちにちと貪る猥りがわしき咀嚼の声を聞いた男は相好を崩すと同時に局部に痛いほどの滾りを覚え、人知れず前かがみになった。相手の声を聞くごとに肥大化しているような錯覚すら覚える亀頭がへその辺りをつつく。
「ははっ……こりゃ、とんだ淫乱だな」
眼前で自涜にふける青年に聞こえぬ声量で呟いた男は、下着もろともスーツの下を足首まで滑り落とした。本当はもう少し青年の卑猥なショーを楽しみたかったのだが、恥部にてそびえ立つ分身がすでに爆ぜる準備を始めており、強い肉欲と熱による甘い鈍痛はなかなか耐えがたきものになっていた。
「ほ、ほらっ、さっきみたいにエロくしゃぶるんだ! これが欲しいんだろ!?」
差し迫った声と唾を吐きながら中年男は少しぎこちなく歩を進め、喘ぎを飛ばす暮羽の大口に高い熱が下がらぬ愛息をねじこんだ。
「んぐっ、んぶぅ!」
突如喉をえぐってきた不意打ちに顔を歪めるがそれも一瞬のことで、
「ぷはっ、はぁ、んちゅ ぇあ、んあぁ……
」
閉じていた瞳はすぐにうっすらと開き、寝ぼけたような眼がとろんと虚空を眺める。呆けた顔の暮羽の口内で無遠慮に暴れる牡棒を、柔らかな唇が温かく包み、熱い舌が艶かしく巻きつき、白い歯が優しく甘噛みをして、手厚く歓迎する。改めて口に広がる雄の味と臭いと触感に暮羽は好物を与えられた犬さながらに尻尾ならぬ尻を激しく振り、興奮に耐えかねた獣は獲物を離さぬ口からは品のない淫辞を嬉しそうに零し始めた。
「んちゅぶっ んぶっ
はぶっ
ち、ちんぽ
久しぶりのちんぽおいひぃ
ふあっぁああ
おつゆ
カウパーおつゆも、いっぱい、出てるッ
ちゅぶっ
んはぁ
ちんしゃぶアナニー気持ちよしゅぎるぅうう
」
体液まみれの唇から紡がれる猥雑な台詞を無言で愉しむ男のニヤケ面に見下ろされる暮羽のあまった右手が何かに操られているように胸元にゆっくりと近付き、シャツの布を小さく持ち上げている突起物の周りを幾度も周回させると、あまやかな喘ぎが鼻から抜けた。刺激によってより硬くなった小豆を指の腹で一心不乱にこすり続ける暮羽だったが、やがて服の存在が鬱陶しくなったのか荒々しくシャツをたくし上げて乳頭を露わにすると、その部位の名を裏返った声で連呼しつつ力の限りにつねって引っ張った。
「ふあっ、あぁっ ち、乳首
こ、これ、好き! 乳首
ちくび、いじめるの好きぃ
」
「あぁ、そうなの。乳首いじめるの好きなんだ?」
子供の自慢話に呼応するようにオウム返しをしてやりながら、男は下腹をグイグイと暮羽の鼻に押しつけた。苦しげな呻きが下半身の辺りから聞こえたが、構わずに尻を揺さぶって青年の口を蹂躙する。呼吸も満足にできぬはずなのに必死に舌を動かして側面に浮かび上がっている太筋を一心不乱に舐める相手の殊勝さに褒美をくれてやろうと、男は縦横に揺れる金髪の束を握り締め、一度大きく息を吐き、そのまま呼吸と腰を細かく刻んだ。
「はっ、はっ、はぁっ……そ、そろそろ出すよ! そのエッチなフェラのご褒美にキミの口の中に射精してやるからザーメン全部飲むんだ! いいな!?」
「んぐぶっ、うぶっ、ぷはぁ! はぁ あッ
い、イイから、出せよ
我慢汁だけじゃ物足りねェから、本汁もっ、んちゅ、ぅん
ぶちまけて、口ン中、精子まみれにしてくれよ
」
「よ、よし、お望み通りに上のお口に一発目出すよ!! んはあぁあ!! 出る、出る、出るううう!!」
「んぶゅ! ぐっ、ぅ、うぐぶぅううううんッ」
様々な臭いが混ざり合う狭い個室に、肉砲が爆発した男の情けなく上ずった声が響き、口いっぱいに種液を放出された暮羽の篭った歓喜の叫びが続いた。久方ぶりの激しい絶頂が年齢的にこたえたのか、ふらつく足で後退して相手の口をようやく解放し、ドアに後頭部と背を当てて息づく男の微かにぼやけた視界の中で、やや輪郭がぶれている青年が陶酔しきった上目遣いで男を見つめながら口を大きく開き、伸ばした舌の上にたっぷりと乗った白濁液をわざわざ見せた後に音を立てて飲みこんだ。口淫を知った初期の頃はただただ不味と不快と拒絶感しか抱けなかったが今ではすっかり馴染んだ青臭い苦味が咽頭をこすり、腹に落ちていく。
「ぅんっ…… 何か、アイツのと味とか感じがちょっと違う
」
一番最初に自分に精汁の味を教えてくれた後輩のそれとの違いを愉しみ、唇から微かに零れた種ももったいなさげに舌で掬い取った暮羽は、無邪気な瞳と妖艶な唇で微笑を作った。