ボーイングB-17 「フライングフォートレス」
  

     ボーイングB-17 「フライングフォートレス」

 第2次世界大戦を舞台にした戦略シュミレーションゲームをプレイされた方にとってB-17はエンジン4基を積んだ戦略爆撃機ですが、設計開発プランが提示された当時の構想は全く正反対でした。

 1934年アメリカ陸軍はボーイング社に対してエンジンを複数装備した戦闘機の開発を命じました。この戦闘機の要求条件は本土を敵の侵攻から食い止める多座多発戦闘機という類を見ないものでした。つまり滞空時間の長い重武装戦闘機であったわけです。ボーイング社はこの要求に対してエンジンは4基装備、多少の攻撃にはビクともしない防弾装備を充実させた大型機を完成させました。XB-17と呼ばれたこの試作機はテスト飛行中に墜落するというアクシデントに見舞われながらも、ライバルのダグラス社で開発されていたXB-18と圧倒的な性能差を見せ付けて大型爆撃機として制式採用されました。


 この当時、第1次世界大戦の戦訓の捉え方は国によってまちまちでした。たとえばドイツでは機動力のある戦車を主力として開発に全力を注いでいたかと思えば、戦車は歩兵の支援であるべきとロクに開発しなかった日本のような例もあります。爆撃機に関しても同様で、日本やドイツのようにエンジンを2基装備した高速双発爆撃が最良であると考える国がほとんどでした。その背景には4発もある大型爆撃機は運動性が極めて悪く、敵の反撃で撃墜される確率も高く、夜間爆撃にほそぼそと運用される程度であると解釈されていました。
 
 しかし、XB-17はこれまでの常識を覆す特徴を持って軍関係者の前に現れました。

・空気抵抗を減らすため、突起物の無いスマートな外見であること
・航空機史上初めて、排気タービンが採用され高高度での作戦と速度が保障されたこと
・機体の搭載量に余裕があるため、重武装でも、重爆装しても飛行に支障が出ないこと
・防弾装備が充実しており、生還率が高いこと


 この4つの点を盛り込んだ画期的な大型爆撃機はどの国も実現できませんでした。また信頼性も高く、敵国であったドイツは鹵獲したこのB-17の機体を塗り替えて使用していたという話が残されています。唯一の欠点は機体が別口で採用されたダグラス社のB-18よりずっと高価であったことです。このため、第2次世界大戦が始まるまで機体はまるで売れませんでした。第2次世界大戦勃発後、B-18では激戦に耐えられる性能が無い事が判明し、いよいよB-17にスポットが当たることになったのです。


 B-17は主にヨーロッパ戦線に投入され、ドイツ本土空襲が主任務となりました。初飛行が1935年と5年前に開発された機体でありながら、その性能はずば抜けたものがありました。しかし、P-51P-47といったB-17に随伴できる護衛戦闘機が無かった1943年頃まではドイツ空軍の迎撃で撃墜されるケースも多く、ハリネズミのように防御火器と防弾装備があっても搭乗員たちにとっては命がけの任務でした。
 一方、対日戦では主に南太平洋を拠点として、ニューギニア方面での作戦に投入されました。零戦を中心に配備していた日本海軍航空隊は対大型爆撃機戦のノウハウもなく、連日のB-17の夜間爆撃に苦しめられました。しかし、日本が劣勢になるにつれ高価なB-17よりも空母艦載機の方が任務に向いていることが多く、1943年後半からはB-17の運用は下火になりました。


 アメリカは爆撃機開発では様々な名機を生み出しましたが、特にB-17はパイロットたちからの評判はずば抜けて高かったと言う記録が残っています。

 B-17の後継機となるB-29は試作機完成からすぐに量産に移ったため、初期不具合の手直しや、十分なテストの時間はほとんど与えられませんでした。そのため軍用機としての完成度はB-17の足元にも及ばず、作戦中にエンジントラブルなどで墜落する機体が後を絶ちませんでした。
(エンジン起因のトラブル多発のため、エンジンごと交換せざるを得なかったという話も残されている)


 ボーイング社といえば、旅行好きには絶対に欠かせない旅客機の最大手メーカーであるのは周知の事実です。実は戦争の影でこの技術を生かしたボーイング307という旅客機(もちろんプロペラ機)が登場していました。このボーイング307はB-17の主翼・尾翼を利用した設計がされた機体でした。

 このB307の最大の特徴は日本が戦争中、喉から手が出るほど欲しがった与圧装備を標準装備しており、成層圏飛行が可能だったことです。現在では当たり前のことが、当時では天候に左右されず安全で快適な旅は最上級の贅沢だったのです。この機体を出発点にして、B-29のデータも織り交ぜながら現在のジェット旅客機に進歩していったのです。


性能諸元 (B-17 G型 )      


 全長; 22.66m
 全幅;  31.62m
 全高;  5.82m
 正規全備重量; 16,391kg
 エンジン; ライト R-1820-97「サイクロン」空冷星形9気筒 (離床馬力1200馬力×4)
 最大速度; 462km/h (高度7000m)
  武装;  
12.7mm旋回機銃×13(機体固定)
        
  爆装;  最大 7983kg


     


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