B-24 「リベレーター」
                
              
      B-24 「リベレーター」
 

  
 1938年、アメリカを代表する航空機メーカーの一つ、コンソリデーテッド社はアメリカ陸軍からB-17のライセンス生産の打診を受けていました。この当時のアメリカの長距離爆撃機で最前線で使用に耐えうる実用機はB-17のみでした。連合国への武器供与のためにも1機でもB-17を必要としていたアメリカ陸軍でしたが、コンソリデーテッド社はライセンス生産は引き受けず、逆にB-17よりも高性能な新型機の開発を逆に提案しました。

 ストーリーはまるでムスタングを開発したノースアメリカン社のようですが、コンソリデーテッド社では社内で独自に開発を進めていたプランがありました。陸軍向けに仕様変更し、このプランが陸軍に承認されました。1938年2月から陸軍は初飛行もしていない試作機を少数ずつ発注していきました。

 その背景にはコンソリデーテッド社はこの新型機開発の数年前に第二次大戦中の飛行艇の大ベストセラーでもあるPBYを海軍に納品しており、その技術力は不動のものだったと思われます。

 1939年12月、無事に初飛行を迎えた新型機はB-17よりも多くの点で性能が勝っていました。その一つに航続距離が長大であったことが挙げられます。B-17は「空飛ぶ要塞」というキャッチコピーが付くほど、耐久性には定評がありましたが、航続距離は短く、ヨーロッパ戦線では不満の声が上がっていました。

 コンソリデーテッドは飛行艇メーカーとしての技術を長距離爆撃機に転用したため、胴体が太めで、主翼も機体上部に配置した独特のデザインを採用しました。主翼は比較対象とされるB-17と違い、グライダーに使われるような細長く、分厚い直線翼を採用しました。この選択は飛行艇開発のノウハウから得られたもので、主翼内部に大容量の燃料タンクを持つための設計でした。また尾翼もこれまでの技術を生かした双尾翼を選択し、分厚い主翼で発生する空気抵抗のロスを軽減しました。

 爆弾倉の扉にもB-17以上の工夫を凝らしました。この時代、機体内部に爆弾を装備する爆撃機は外に向けて扉が開く、いわゆる「観音扉」が一般的でした。しかし、コンソリデーテッドの設計スタッフはこの扉をシャッター方式にして、空気抵抗を減らすようにしました。

 初飛行の結果、B-17よりも20キロ以上高速の440km/hを出しました。しかし、ターボチャージャーを装備すれば、さらなる高速が期待されたため、B-24は早い段階からターボチャージャーを標準装備とし、初期量産機はアメリカ本土の沿岸警備や哨戒、輸送任務さらにはヨーロッパ戦線に送られました。


 B-24が配備されたイギリスではB-17以上にこの新型機を高く評価しました。というのも、最初期のB-17は不具合が多く、イギリス空軍はB-17に対し、少なからず不信感を持っていました。またドイツへの攻勢に出た以上、できるだけ遠くにたくさんの爆弾を投下したいという要望を叶えてくれる新型機が到着したばかりのB-24だったからです。同じ頃に実戦配備されたランカスターとも相似点が多く、一説ではB-17よりもB-24の人気が高かったともいわれています。

 B-24はヨーロッパ戦線、太平洋戦線全域に広く配備されたため、その生産数もライバルとなるB-17、果てはその発展機となるB-29とは比較にならない18000機超を記録しました。(B-17は13000機超、B-29は4000機ほど)これはアメリカが国内の自動車メーカーの生産ラインを効率よく量産に振り向けたためでした。特に24時間体制のフォードの生産力はアメリカの工業力の見本ともいえる威力を発揮し、なんと

     「1時間でB-24を1機製造できた」

ほどでした。

 万能爆撃機のように思われるB-24にも欠点はやはりいくつかありました。B-24はB-17と比較するとタフさの面では大きく水を空けられました。特に細長い主翼は折れやすく、シャッター式の爆弾倉扉は強度が低かった点が挙げられます。とくに海面に不時着したとき、このシャッターは破損して、一気に水没するというリスクがありました。実戦データをフィードバックして量産された改良型のB-17はやがて性能面でB-24を凌駕し始め、イギリス空軍の見る目も変わってきました。

 ヨーロッパ戦線では4発エンジンの半分が止まろうが、機体の一部が被弾して喪失しようが、執念の如く帰還したB-17と違い、B-24はダメージに弱く、悪評がつきまといました。ランカスターより事故が多かったため、「未亡人製造機」「乗員一掃機」「空飛ぶ棺おけ」などという不名誉なあだ名を付けられた機でしたが、現場に求められた数に比例した生産数ではアメリカ最多を更新し、現在でもこの記録は破られていません。




性能諸元  (B24-J)

 全長;  20.50m
 全幅;  33.5m
 全高;  5.50m
 正規全備重量; 29,480kg
 エンジン;
P&W R-1830-65 (離床出力1200馬力)×4基
 最大速度; 467km/h 
  武装;  12.7mm機銃×10
  爆装; 5,800kgまで
  
              
   



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