エルフィン１（ないと・めあ）

エルフィン１－１

　広大な妖精ステージを歩き続ける。草原を歩き、また森を抜ける。迷路になっていないフィールド型のステージは、ともすれば自分の位置を見失い、迷路以上に迷いやすくなっている。

　しかし最近では、トラップにでも引っかからないかぎり、同じところをぐるぐるめぐるようなことがなくなっていた。同じような森や草原であっても、注意深く見れば特徴があり、目立った目印がなくても、慣れるにしたがって自分の進み具合が何となく分かるようになっていた。

　何度か橋も渡った。川は今のところ一番分かりやすい目印だ。流れと橋の数が自分の進度と進路を示してくれる。僕はとくに水の音をたよりに自然豊かなステージを進むのだった。

　それでも、自分がこのステージの序盤をさまよっているにすぎないことは、出現する敵たちが一体ずつであることから明らかだ。これまで何度も妖精（といってもごく一部だが）と戦ってきたが、ピクシーはともかくエルフの名器にはまだなれていない。まだエルフ一体相手に苦戦させられている。

　というより、エルフほどの相手、僕みたいな人間では普通に瞬殺されてしまうのかもしれない。苦戦しながらも高次のオンナに耐え抜いて勝ち進んでこれたのは、これまでの修行の成果かはたまた偶然か。

　いずれにしても、エルフ相手では、少しでも気を抜けばあっという間に高められ、動いてもいないのに脈だけ打ってしまうことにもなりかねない。彼女たちは人外娘のなかでも強いほうだから、耐えるので精一杯という戦況もやむをえないのかもしれない。

　それでも、このままの実力では、この先訪れるであろう集団戦には心許ない。三人バージョン、はてはプチボスとなる十人バージョン…いや、いつもと違う変則ステージなのだから、三人十人とは限らないぞ。もっと不利な戦いになるやも知れぬ。一人相手でさえこんなに苦労している程度では、人数が増えたら…それも一気に増えでもしたら、まず勝ち目はない。

　暫く歩いたとはいえ、まだまだ、このままではいけない、もっと強くならなければ、という思いで、不安を胸に森を歩き、時々出現するエルフを何とか倒しながら先を急ぐのだった。

　美しい森ももうすぐ抜けられそうだ。この先はきっとまた草原、相手はエルフのほかにピクシーも混じる。その分戦局は楽になり、ある程度心に余裕をもってレベル上げにいそしむことができる。

　「むっ！？」森を抜けて視界一杯に広がったのは、見慣れた草原ではなく、一面色とりどりの花畑だった。自然にできた花の密集地らしく、ヒザ上あたりまでさまざまな花が咲き乱れていた。ちょっとしたグラウンドくらいの広さがあり、その先に草原と川が見える。進むにはあの川を渡るしかなさそうだ。

　人の手が加わらない無造作な花々が、かえってランダムな色合いを出していてカラフルだった。そういえばこのステージで花が咲き乱れる場所は初めてだな。少し気をつけて進もう。

　「う…う…」花畑のなかを進んでいると、花のいい香りがあたりに立ち込める。えもいわれぬ、心をくすぐる甘い香り…自然の香水のような芳香に、段々頭がクラクラしてくる。これはただの花の香りではない。全身に染み込み始めた芳香は、僕を心地よい安心感に包むだけでなく、徐々に体を性感のほうへ向かわせる効果があった。

　気付いたときには遅かった。花々から醸し出される淫気香に体がすでに蝕まれ、ペニスがじわじわ疼いている。気を抜くと肉体の欲求に負けて、自分でしごいてしまいそうになる。敵が誰もいないのに、この香りのなかで腰をくねらせ、花々に向けて一人、動物の種をまいてしまいかねない状況だ。

　まずい、この花畑はトラップの類だったか…。トラップなら自分で抜いてもゲームオーバーだし、例えそうでなくても、このステージに潜むいたずらピクシーが僕のオナニーを狙っているのだ、イク寸前に飛びついてきて、精力回復のはずが直前でゲームオーバーになる。以前回復しようとしごいていたら、ひどい目に遭ったことがあるからな。

　とにかく気を引き締めて早急に脱出しなければ。

　「ねえ…」「むっ！？」突然声がしたほうを探そうと、僕はあたりを見回す。女の子の声…敵の可能性が高い。一気に緊張感が高まる。

　「こっちですよ…」「誰だっ！？」「もっと下よ。」見ると、少し大きめの赤いチューリップから小さな顔が覗いていた。体調３㎝ほどの女の子…たぶん妖精の一種だ。羽もないし清楚な感じもするからピクシーではない。そもそもピクシーよりも小さめだ。彼女はチューリップのなかから僕をつぶらな瞳で見上げているのだった。

　「こんにちわ。」「あ…ああ、こんにちは…」「私、おやゆびひめって言います。花の精です。」「あっ、聞いたことあるぞ。」「ちなみに”おやゆびひめ”って三回立て続けに言うと早口言葉になりますよ。」「…どーでもいいよ…」

　小さくかわいらしい妖精の可憐な雰囲気と、ちょっと拍子抜けする出会い方に、僕は一瞬戸惑って、性欲を忘れた。おかげで淫気香に我を忘れそうになることだけは避けることができた。

　「花の妖精エルフィンは、もともとエルフの仲間なんですよ～。」「そうなのか。それにしては口調も雰囲気も大きさも全然違うな…。」

　「エルフさんは長い間森に棲んで、棲家に応じた生き方をしています。私たちエルフィンは花に住み、それぞれ別のライフスタイルになりました。長い間棲み分けていますからね。エルフさんは人間との関わりを避けてきたから口調もあんなぶっきらぼうだし逃げ癖がついてますから攻撃は得意ですけど守りが弱かったりします。ただエルフさんは集団生活を基本としますから、徒党を組んだときの実力はすごいものですよ。」「そうなんだ…。」

　「私たちは弓矢を持たないし、めったに徒党を組みません。それにエルフさんは基本的に人間嫌いなんですけど私たちは人間とよく関わってきました。エルフィンは人に幸福と安らぎを与えます。えへへー。」満面の笑みを浮かべるおやゆびひめ。

　「たしかにエルフよりとっつきやすくて人なつっこくてカワイイけど…。ピクシーよりも小さい君をどうしろというのだ。」指先でおやゆびひめのぷにぷに丸い顎をくすぐってあげる。「やん♪」エルフィンは目を閉じて喜んだ。

　「エルフさんは背の高い木に囲まれた森に生きてますからそのままで良いんですけど、私たちは隠れる場所がないから、小さくなってお花さんのなかに隠れるしかなかったんですよー。…よいしょっと！」おやゆびひめはチューリップから抜け出して飛び降りた。一瞬、彼女の姿が花畑のなかに見えなくなった。

　「！」エルフィンがぐんぐん大きくなり、エルフくらいの大きさになった。「これが本来の大きさですー。」

　さっきまで小さくてぷにぷにな感じだったおやゆびひめが、いまや可憐な美少女となって僕の目の前に立っている。エルフの仲間だけあって尖った耳をしており、髪は長い。花で作った冠が特徴的だ。少し幼い感じは残すものの彫刻のような美しい顔立ちはやはり妖精らしい。体は十代のピチピチ感を備えていて、あちこちに花をあしらったスケスケのドレスを着ている。

　やはりパイパンだった。

　「うっく…」エルフィンが真の姿になったとたん、さっきまで忘れかけていた男心をくすぐる魅惑の花の香りが一段と強くなった。淫気の混じった甘い花は、間違いなくエルフィンのしわざだった。彼女が棲む花は妖しい芳香を放ち、人を安らげ、また男の性欲をどんどんかきたてるのだ。

　「心地よい香りでしょう？」かわいらしい雰囲気に加えて、全身から、言葉から、そして視線からかもし出される妖しい色気が、エルフィンをとりまいていた。「さあ…もっと近くに…来てください…ねえ…」エルフィンが甘い声で囁くと余計に脳天が痺れてしまう。

　彼女がエッチできる大きさに戻ったときに、すでにおやゆびひめは戦闘体勢に入っていたのだ。いや、もしかしたら、僕がこの花畑に入ったときにはもう、戦いが始まっていたのかもしれない。すでに僕の体内には大量の花淫気が取り込まれ、染みついてしまっている。性欲がはげしく疼きながらも、心はうらはらに安らぎ、目の前のエルフィンについフラフラと引き寄せられるのだ。

　「さあ…あなたにも…花の安らぎを差し上げましょう…私の体で…ね？」吸い寄せられた僕の頭をやさしく撫でながら、じわじわ痺れる囁きで僕を翻弄し始めるエルフィン。彼女の言葉が呪文のように僕の精神を心地よく犯している。この香りのなかでエルフ以上の妖しさをもった相手と戦うことになるんだ。

　エルフィンはわずかに身を低くし、今度はゆっくり僕の首もとにしなだれかかってきた。やさしくふんわりと身を寄せたかと思うと、段々僕に体重をかけてくる。気を抜けばこのまま押し倒されてしまいそうなほど、僕は脱力し、半ば呆然とし、そして込み上げる性欲のくすぐったさが全身を駆け巡っている。

　ここは花畑、完全に相手のテリトリーだ。エルフ以上の苦戦も予想される。どう切り抜けようか…

－選択肢－
エルフィン１－２　そのまま押し倒される
 エルフィン１－３　押し倒されておきながら反撃
 エルフィン１－４　逆上して押し倒す
 エルフィン１－５　まず淫気香を避けて様子を見る

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