ロボット3−1


 いよいよこのステージも終盤だ。このフロアで暫くの間、最新式の異世界ロボット達を相手に奮闘して来た。ロボット達の人体そっくりの特殊な皮膚構造、フェラも挿入も可能な精巧な作り、何より極上のバイブやうねり、しごき攻撃に翻弄された。一体相手でもそれなりに苦戦したのに、ここに来て三体纏めて相手にする状態が続いた訳だ。機械ながら何度戦ってもいつ射精してもおかしくない状態ばかりだった。ロボットはたしかに強い。

 それでも彼女達にも弱点があった。精密で高度なモノ程、思わぬショックに弱い。たしかに物理的な衝撃に対してはしっかり対策が施されていて、落としても投げても精密機器に影響がないように和らげられている。が、電気ショック系や磁気系にはあまり防御ができておらず、比較的簡単に狂わせる事ができる。時々狂い過ぎて暴走する事もあるが、そこにさらにPVを放てば暴走ロボでさえ動きを止める事ができる訳だ。そうやって何とかここまで勝ち残って来たんだった。

 もっともこの塔のように「消える」反応がなければそれも訳には立つまい。もし消えずに残っていれば、自動修復が施され(といっても時間は掛かるが)、いつまた精を求めて動き出すか分からない。ある星の人類はこのロボットの弱点を突いてみたに違いない。地球の科学が遠く及ばない高度な星だからな。それでも破壊はできずいつも復活していたのだろう。つまりこの塔の構造だったからロボットに対処できたようなものだ。

 きっと僕が負ければ消える機能がなくなるから、このロボット達も永遠に噴出する僕の精を喜んで絞り続けてくれるんだろう。元々そういう役目のようだし。永遠に安楽と快楽に浸れる世界…いや、それでも僕は脱出しなければいけない。安逸なる死といえども、魂を代償にする訳には行かないんだ。

 とにかく相手は一つの星を滅ぼしたメカ軍団だ、しっかり気を引き締めないと。

 と、少し広い部屋に出た。奥に昇り階段用の扉も見える。そして扉の前に立ちはだかる大小二つの影が…。いよいよここもゴール、プチボス戦か。相手が10体分だろうとこれを乗り越えないとな。ここまで来たんだったらチャレンジするしかあるまい。

 「やっと来たか。」「…。」扉の前に立っていたのは、背が高く髪の長いロボットと、どう見ても子供にしか見えない女の子の組み合わせだ。小さい方が僕が来たのでしゃべり出したのだった。

 二人しかいない。腕組みをして威張っている風貌の西洋系の小さな女の子と、その隣に直立不動しているロボット。メカっぽいのは背の高い方だが、ここはロボットフロアだし口を開いた子も仲間なのだろう…だとすると生きているように見える小さい方が強力と考えるのが自然か。いずれにしてもこの二人でロボット10体分の力があるという事だろう。今までもプチボスで10人いなくても「相応の力」がある敵が待ち構えていた事があったからね。

 「まずは自己紹介をしよう。私は警備係のエヴァ・E・マクドゥガル。吸血鬼の真祖にしてドールマスターだ。」「きゅ…吸血鬼!?」え…なんで…?ロボットフロアなのにバンパイアがいるって…!?一体この子は何者なんだろう。吸血鬼って事は永遠の生命を持っているんだろうけど、どう見てもコドモです(本当にありがとうございました)。という事は幼女時代に吸血鬼になったという事なのだろうか。これは…初めての敵だぞ。

 「不思議がっているようだな。私の経歴を簡単に教えてやろう。私は…昔は日本の某学園で警備をしていた。さらにその昔は10歳で真祖となり世界中を放浪。登校の呪いで暫く学園にいたが、少子化の影響で学校が潰れた後は行き場もなかった。そこに『ないと・めあ』に雇われ、今はこの居心地のよい塔で警備の仕事をしている。以上だ。」「カンタンだな…」肝心の説明がないんですけど…何でこのフロアにバンパイアがいるんだろう…?それに、警備係というのも初耳だぞ?

 「警備って、何を警備してるの?」「侵入者だよ。『ないと・めあ』が独自に創ったこの世界、淫魔らしく快楽に満ち溢れている。それを求める不届きな輩が、高度な星から、未来世界から、魔界から、毎日後を絶たない。まぁ実の所偶然迷い込んだ男が大半なのだが、中にはわざわざ女を求めてやって来る奴も毎日いるって事だ。私の仕事はそいつらを外に出し、悪質な奴は徹底的に懲らしめる事。」「…ふうん。」

 「で、ここにいる二人が私の従者。肩に座っているのがマジックドールのチャチャ0。」「オウ。ヨロシクナ。」「ひっ!」エヴァの肩にいる小さな人形には気付かなかった。ぶっきらぼうに肩のドールがカタカタしゃべったのでびっくりした。「何驚いてるんだよ。アホか。」「う…。」「そして、私の隣にいるのが、最先端ロボのチャチャ○だ。」背の高いロボがペコリと頭を下げた。顔立ちの整った、物静かなロボだ。耳から尖ったメカが突き出ていてチャーミングだ。ロボが混じってはいるとはいえ、こんな異種族が混じっているのがプチボスとは…。こんな状況も初めてだ。かなり苦戦が予想される。

 「うーむ…ロボのステージなのに吸血鬼とドールまで混じってるとはな。10体分とはいえ苦戦しそうだ。」「バカか!誰が私達全員が相手してやると言った!?思い上がるな!」「えっ…違うの?」「お前の相手はこのチャチャ○だけだ。私とチャチャ0は引き続き警備に戻る。…実はな、元々このフロアを守っていたスペシャルロボコップン、『マフィ子・タナカ=キネン』が修理中なのだ。」

 「まふぃ子ぉ!?」「10体分の力を持ったハイテクメカだ。本来はマフィ子がここのボスでお前と勝負する事になっていたのだが、その体を雑巾で水ぶきしたバカがいてな。お陰で精密な部位に水やミクロン糸くずが入り込んで故障。現在修理中という訳。」「…。水ぶきした犯人知ってるぞ。」「そう、あいつだ。」

 「しょうがないから、同じロボという事で特別にチャチャ○が駆り出されたんだ。」「そうだったのか…。」それでマフィ子の代わりにこの警備ロボが相手という事になったんだな。それだからエヴァもドールも参戦はしない、という訳だ。

 「言って置くがチャチャ○はマフィ子よりもずっと強いぞ。」「えー!」「ったり前だろが。この塔にはドールも吸血鬼もいるが、チャチャ0に比べればドールフロアのドールなど足元にも及ばないし、只の吸血鬼と違って私は真祖、ハナからケタが違う。…そうでなくては警備は務まらん。無論チャチャ○もこのフロアのロボの実力をはるかに超えているんだ。マフィ子以上にな。」そんな…10体分じゃあないの?

 「…つまり、マフィ子戦よりも僕に不利って事?」「安心しろ。マフィ子と同じ程度になるように手加減させてやる。」「…よろしくお願いします。」おっとりロボがまたペコリと頭を下げた。「よろしくって…」待てよ、侵入者を排除する必要があるという事は…

 「じゃあな。仲良くやれよ。」「ちょ、ちょっと待って!侵入者を追い出すって、どうやるの?」「お前には関係のない事だ。」「いや…侵入者がいるって事は、別に出入り口があるって事だよな…。」「ははーん。そういう魂胆か。でもお前は侵入者でも迷い人でもない、れっきとした”ゲスト”だからな。」「う…やっぱりダメか。」「だめだ。」

 エヴァは腰に手をやってため息をついた。「まったく、ここまで来てお前も往生際が悪いな。…たしかに、この世界は魔界の一空間座標点上に歪みを生じさせて創られている。真に強大な魔力を誇る者は、魔界の領地さえ欲しがらない。質量のない無限小の一点を歪め、そこを他の座標に影響させずに無限大の広さに拡大しながら外からの出入りをシャットアウトする。」「ん〜?」「どうせ人間には理解できんだろう。体積のない無限小の一点に”粒”があって、その大きさが変わらずに粒の内部が無限大に拡大しているという事で納得しとけ。粒子ではないし体積もないから”内部”という言い方は不正確だがな。」「…?」

 「その独自の世界に住むという事、いわば自分で自分だけの”魔界”を創る者こそ、Aクラスをはるかに超えた超S級の魔王なのだ。周りの空間を押し潰しもせずそれでいて重なりもせずに無の中に広大な異世界を創る…並の魔力では到底不可能だ。お前が相手にしてるのはそれだけヤバイ女って事だ。」「…。」それはよく分かるよ。『ないと・めあ』がとんでもない相手だって事はね。

 「自分の精神を、他の物理にほとんど干渉せずに魔力を媒介して具現させる。”夢”の中に無限に広がる精神世界、それがこの塔なんだ。時間も空間も支配し、その世界での全智全能の創造主となる…とてつもない魔力がこの塔の為に費やされたんだろう。その代わり内部では何不自由なく永久に安泰。…一応はな。」「…いちおう?」

 「避けられない欠点もあるんだ。一つは外の世界との繋がりがないのがネックだ。時々は寂しくもなるんだろう。そういう時は”ゲスト”を招くって訳だ。そしてもう一つ。完全に出入りを塞いでしまったらそういうゲストも招けなくなるから、わざとスキを作って置く。どのS級魔王もそうする。」「…。それが侵入者が出る原因か。」

 「侵入者もそうだが、わざと空間の歪みを外に露出させてるんだ。一刹那毎にあらゆる世界にランダム移動しながら”スキ”が一瞬出ては消える。物理世界にも魔界にも精霊界にも冥界にも…神界にもな。この世界と別の世界(外側)を行き来できる通路が一瞬だけ出現する。その入り口に偶然居合わせた生物はこの世界に自動的に引き込まれる。その為毎日のように偶然迷い込む奴が出て来る。」

 「任意で必要な時だけ隙を作る訳には行かないの?」「万一完全に塞がってしまっていたら穴を空けるのに膨大な時間も魔力も掛かるし場合によっては魔力が足りずに閉じ込められてしまう危険性がある。閉じ込められた後で穴を空けるのは世界を創るよりも多くの魔力を必要とする場合もあるんだ。これに対して、普段からいつでも開けられるようにして置けば閉じ込められて気付かないという事もないし、万一の時はすぐに状況を把握して対処できる。穴も開けやすい。」つまりこういう世界ではいつも外界の誰かを巻き込む可能性があるって訳か。まぁ宇宙だけでももの凄い広さだし宇宙以外にも魔界や神界等広大な世界があるから巻き込まれる確率はかなり低いだろうけど。

 「入り口から出入りできるのは精神を持った生物だけ、例えブラックホールの中にこの世界の入り口ができても影響はない。それでも毎日一人は迷い込んでしまうんだ。そういう奴は私の力でゲートを開き、元の世界に誘導する。その時の記憶は奪う。それも警備の仕事だ。」「…魔物のクセに親切だな。悪魔なら迷い人なんて邪魔だからその場で消してしまいそうなもんだが。」「高等な存在は無駄な悪事は働かないもんだ。」「ふうん。」

 「問題は侵入者だ。淫魔の作った世界、その快楽を求めて不届きな奴が”スキ”を追跡して侵入して来る。穴は小さく大勢では進入できない。只迷い込んだだけならそのまま外に出すだけだが、悪意を持って入って来た奴は罰を与える。」「罰?」

 「初犯はこのチャチャ○が相手だ。ゲストじゃないから射精すれば疲れるが、それでもこのロボは攻撃をやめず、男が気を失うまで犯し続ける。天国は一瞬、後は地獄になる。それで気を失ったら強制排除だ。これに懲りて大半は二度と進入して来ない。だが…それでもこの世界を自分の思う通りにしようとして再び入って来る奴もいる。二度目は…チャチャ0の仕事だ。」

 「ウケケケ…オレハコノポンコツロボミタイニ優シクハネーゼ。」「…こわいなこのドール。」「ナメてると何されるか分からんぞ。お前も気を付ける事だな。」「…ポンコツなのですか、私…」「気にするな。」「マスター…」

 「チャチャ0は気絶すら許さん。魔力で死の一歩前まで勃たせ続けるからな。生命エネルギーの大半を精液に変えられて瀕死に追いやられる。容赦はない。」「ウケケケ…」

 「それでもまだ入って来る奴は、この私が直々に吸い取ってやる。三度目はもう許さん。全エネルギーを吸い尽くすぞ。くくく…私にここで殺された男はこれまでに4人いる。そいつらは死んで魂になっても淫魔界に送られ、永遠にサキュバスやリリム達のエサになるのだ。絶対に逃げられん。」…この真祖が一番コワい…。

 「お前はさっき、あわよくば私にゲートを開いて貰って元の世界に帰る裏技を思いついた訳だが、残念だったな。迷い人や侵入者は入り込んだ時点と空間点の軌跡から『元の場所』を割り出して正確に送り返す事になるが、”ゲスト”の場合はそういう軌跡を計算する事ができない。『ないと・めあ』が直々に召喚したからな。つまりお前の帰りゲートは私には分からないって事だ。恐らくは唯一の出口はあの女が握ってるのだろう。」「やっぱりダメかぁ…」「どこでもいいというなら出してやってもいいぞ。まぁ人間ならどこか宇宙空間の中に放り出す事になるな。それ以上細かくは座標を特定できんのでな。極寒真空の中に投げ出されれば一瞬で全身破裂して氷結後岩になる。運がよければ恒星の表面辺りに出られるかもな。その瞬間跡形もなく焼けるが。くっくっく…。」「うう…それはイヤです。」

 「いい加減諦めろ。私の知ってる限りこの世界に招かれたゲストで生きて帰った奴はいない。ゲストなんてめったにないがな。あー、言って置くがお前が前のゲスト達に出会う事はないぞ。お互いにその存在を認識できないようになっているし異空間化して重なっても気付かないからな。完全に別世界って訳だ。ま、仮に偶然出会えたとしても、ゲストはあらゆる世界から招かれてるからな。精霊もいれば天使もいるしお前達の言う宇宙人もいる。つまり生態も種族も言語も違う。そもそもそいつらは性の虜になっていて周囲に気づく事もないしな。話になるまい。くくく…」

 「あの…」「なんだ、まだ私に質問があるのか。私は忙しいんだ。さっさと済ませてチャチャ○を返せ。」「その…『ないと・めあ』の重要な警備とか世界とかの事を僕なんかにしゃべっちゃっていいの?」「なんだ、そんな事か。私は只の雇われ人で、『ないと・めあ』の配下じゃない。警備の仕事をする以上の何の義務も義理もない。マフィ子が壊れたからと言って立っての願いで『ないと・めあ』本人から頼まれたから、仕方なく今回チャチャ○を貸してやったんだ。」

 「でも…機密情報なんじゃ…」「くくくく…私は悪い魔法使いだからな。ゲストに裏話をするのも平気なのだ。」「…さすがハイデイライトウォーカー。敵には回したくないな。」「当然だろ。本来なら私はお前と一度も会わずに終わるんだ。只の警備係だからな。私はこの精神世界にレーダーを張り巡らし、”招かれざる客”を察知するのが仕事だ。迷い人を外へ出し、三度目の侵入者をやっつけるのも私。そしてチャチャ○とチャチャ0を使って一度目二度目の侵入者を懲らしめる。毎日のように入って来るから忙しいんだ。分かったらとっとと済ませろ。」

 まぁ今回はエヴァとチャチャ0が相手じゃなく、物静かそうなロボ、チャチャ○さんも手加減してくれるって言うし…。「ったり前だ。本気になったらお前なんか私の手で瞬殺だ。手心を加えたチャチャ○で十分だ。」う…心を読まれてる。とても敵わない。「じゃあチャチャ○、すぐに済ませて私の所に戻れ。」「はいマスター。」「一つだけ忠告して置こう。いくら手加減しているからといってチャチャ○を甘く見ない事だ。少なくともこのフロアの最新ロボ10体分の実力がある。ハカセに『えっちにゃ事もできるように』改造され徹底的に性能を高めてある。もちろん性感もあるぞ。侮れば負ける、心して置け。」「あ…ああ。」「じゃあな。」「ありがとう…エヴァちゃん。」

 ドキャ!突然トビゲリを喰らった。「外見がコドモだからってチャン付けで呼ぶな!少なくともお前の一生分の何十倍と生きて来てるんだぞ!」「す、すいません…エヴァさま。」「ぅむ…。今後は私をさま付けで呼ぶか、マスターと呼べ。何なら足をナメさせてやってもいいぞ。くっくっく…」「…。」「それはちょっととか思うなボケ!」「わゎっ!すいませんマスター!」「…ま、今後と言っても多分もう遭う事もないだろうけどな。じゃあ後は頼んだぞ。」「はいマスター。」

 吸血鬼真祖とマジックドールは去って行った。僕とチャチャ○さんが残った。「それでは…よろしくお願いします。」丁寧にペコリと頭を下げる。「あ…どうも…よろしくです…」なんか調子狂うな。丁寧であまり笑わない彼女はそれでも服を脱いだら顔を赤らめた。感情豊かで人間っぽいのが高機能を思わせる。

 「あの…やっぱりやるの?」「はい。マスターの命令ですから。」「でも…本当は不本意なんじゃ…」「…ハズカシイ、というのは…たしかにありますが。」「じゃあ、いっそ勝負したって事にして、やめちゃおうか。ね。カードキーくれたら口裏合わせるからさ。」「だめです。」「…だめ?」「ウソはいけません。」「うぬ…」

 やっぱり勝負しかないか。僕はずるっこモードをやめて本腰を入れた。「では始めましょう。」こちらの気を察してかチャチャ○さんも身構えた。

 チャチャ○さんの体はフシがはっきりしている以外は人間の女そのものだ。球体関節が却って彼女の魅力になっている。手加減してくれるというが、それでも相手はこのフロアのボス代わり、10体分の実力がある。素早さも力も今までとはケタ外れだろう…もちろんアッチも。気をつけて戦おう。
 

−選択肢−
ロボット3−2 プレジャーボルト
ロボット3−3 魅了魔法を試してみる
ロボット3−4 ロボの精神に入り込む
ロボット3−5 積極的に責めまくる
ロボット3−6 相手の出方を窺う


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