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※赤い文字色のページには性描写があります


 

「――――ッ!!!!!」
 何かが裂けたような不穏な音と感触に暮羽の瞳が大きく見開かれ、同じく大きく開いた口からは舌が伸び出るが、声は殆ど出なかった。出せなかったと言うべきか。
「ははっ、流石にきっつ……」
「あッ、アッ……あがっ、あ、あぁぁああ……!!」
 何とか一度呼吸をすると辛うじて嗄れ声が喉の奥から零れるが、ろくな言葉が出て来ない。今まで経験した事のない、身体を両足から真っ二つに千切られているような激しい痛みに襲われている其処をじわりと熱く濡らし、そのまま接合部を伝ってポタポタと床に散っていくのはまさか…。言い様の無い絶望感に襲われて頭の中を嫌な渦が巻き始める暮羽の耳朶を風薙の不気味な揺れ声が撫でた。
「ヤバッ……俺、マジで、暮羽さんレイプしてる……暮羽さんの処女尻穴にちんこ突っ込んじゃってる……あ、あはは……血、血が出ちゃった……暮羽さん、見えます? 記念すべき処女喪失の証、見えます?」
「か、風、な……」
「ねぇ、暮羽さん。どうですか? 生まれて初めてのセックスがこんな形になっちゃって。男に犯されてケツ掘られる事になっちゃって」
 風薙の虚ろな喘ぎと澱んだ眼の色に脳が熱く痺れてグラグラ揺れる。激痛。恥辱。恐怖。絶望。痛い怖い怖い痛い助けて助けて助けて。
 気が付けば、自分は喉が割れんばかりに絶叫していた。叫ばなければ気が狂ってしまいそうだった。
「い、嫌だッ! こンなの、い、いやっ、だ……ぃ、痛ェ! 痛い!! 痛い痛い痛い!!! ぃああぁああああああ!!!」
「……ちょっと前から気になってたんですけど」
 不意に今までの蕩け顔が嘘であったかのように真顔に戻った風薙が淡白な声で言った。
「何かさっきからギャーギャー叫んでますけど、そんな大声出してたら誰か来ますよ? 良いんですか? こんな所誰かに見られて」
「ッく、嫌だ、いやッ……もう、嫌だ……嫌だ!!」
 誰かに見られる事と風薙に陵辱されている事の二つに対する“嫌だ”をその言葉しか知らないかのように繰り返し、すっかり乱れた黄蘗色の髪を両手で鷲掴みにして頭をいやいやと振る相手に、風薙は悪戯っぽく笑って言った。
「まぁ、中から鍵を掛けておきましたから誰かが入る心配はないんですけどね。でも通りすがりの人に聞かれる可能性はあるので程ほどにお願いします。流石に俺もバレたら色々面倒ですし」
 淡々とした調子で言い終わった途端に瞳はまたくすみ始め、暮羽の反応も待たずに腰を前後に揺すり始めるが、随所で擦れてギチギチと引っ掛かり、動きは自然とぎこちなくなって余計な苦痛を与える結果となり、白いフローリング床に赤い血の小花が咲いていく中で、暮羽が口から新たな叫び声を吐き出した。本来、其処は男を迎え入れる為に存在する訳ではない上に大した下準備もしておらず、潤滑油代わりとしているのは、血と僅かな体液と言う余りにも頼りのない物。滑らかな動きなど到底無理な話ではあった。
「あーあ、何かスムーズに行かないなー。何たって初めてだし、穴も尻の穴だもんなー。暮羽さん、ちょっと痛いでしょうけど頑張ってくださーい」
 そんな状況を風薙はおざなりな慰めの言葉を相手にかけてやりながら楽しみ
「あ、あぐッ、うッ、あぁ! か、かはっ!! い、痛ェ……痛ェッて! う、動くな、ッてか、抜き、やがれ……!!」
 暮羽は風薙と壁の間に挟まれたまま突かれ続ける事によって生じる圧迫感に咳き込み、涙でくぐもった声を刻む。のた打つその手が、ブルブルしながら足元に落ちている自分の服へと向かった。脱がされたユニフォームを拳が震えるほどに強く握り締め、ついつい食い縛ってしまう歯の隙間から呻吟を漏らす。
「ははっ、シーツ代わりですか?」
 何処までも初々しい反応に愛おしささえ感じ始めた風薙は、口の中を軽く蠢かして唾液を作りながら相手のシャツを捲り上げて胸部を露出させ、色素が強い小さな円を舌でなぞって唾液をたっぷりと塗りたくり、濡れた円の中心部を舌先で突付いていると、其処は暮羽本人の意思なんぞ完全度外視して、吸って下さいと言わんばかりにぷっくりと形を成していく。小豆のようになったそれが望むままに唇を寄せて、赤子の如く音を立てて吸いついてやり、そのまま上目で相手の顔を窺い見るが、彼は快感を得ている様子を全く見せておらず、自分を見下ろしているその顔に浮かんでいるのは“信じられない”の一言。そんな相手の表情に少なからず苛ついた風薙は吸っていた豆粒に思い切り歯を立てた。暮羽の呆れに近い顔が一気に苦悶のそれに変わる。
「いって……!! て、てめェ、何なンだよ!!」
「だって」
 深く刻まれた歯形からうっすらと紅を滲ませる突起を庇うようにして睨むと、風薙は拗ねた子供のように唇を尖らせたが、急に両眉をそのまま上に持ち上げてわざとらしく言った。
「あー、別に暮羽さんに快感与える必要ありませんでしたね。俺が暮羽さんを犯してるって形だから俺だけ気持ち良くてもいいんですよね」
「てめッ、マジで好い加減にッ、いぃ……!! ぃあ、やっ、あっ、あうっ、うんッ……!! はぁっ、あ、あぁぁ!」
 必死の怒号も打ち切られ、その代わりに、出している本人も恥ずかしくなるような声が律動を再開した相手の身体の動きに合わせて散っていく。天を仰いで喘ぐ先輩の顎辺りを見遣った風薙は口唇の片端を軽く上へ傾けた。僅かずつではあるが、たどたどしかった下半身の動きが滑らかになって行くのを感じる。それはほんの少し前まで全く男を知らなかった彼の穴が拡がって来た、と言う事になるのだろう。
「ふふっ」
 口の隙間から自然と笑い声が溢れ出た。雄が雄を組み敷き犯すと言う背徳と優越と高揚とが綯い交ぜになって風薙の全身を駆け巡り、背中の辺りにゾワゾワと快い鳥肌が立った。

 ふと。風薙の鋭敏な聴覚が耳ざとく何かを捉えた。
「ん?」
 腰にほぼ全て向けていた意識を聴覚に少し分散させ、相手の声に耳をそばだてる。絶え間ない苦痛に少しでも耐える為に出しているのであろう拒絶混じりの涙声が自分の身体の動きとほぼ同じリズムで小切られているのだが、何とも艶かしい雌の声がその中で一瞬聞こえた気がしたのだ。
 尻を少し浮かせ、落とし、奥を抉ってみたり、浅くしてみたり。一度火がついた探究心の命ずるままに謎の嬌声の正体を探る。そして、ほんの少しの、本当に微かな違和感を覚える場所に先端が触れ、此処はどうだと軽く擦ってみると
「ッ!! ひぁっ、あんッ!!」
 先程捉えたのと同じ淫らな声に内耳を刺激された風薙は一瞬眼を丸くしたが、瞬きと共に大好きな菓子を貰った子供のように瞳に星を散りばめた。
「もしかして暮羽さん、ここ感じてます? ほら、ここ」
「んぅ、んっ……あっ、あんっ、ち、ちがっ、あッ……あっあっあっあっあっ!!」
 腰部を揺すって、違和を何度も刺激すると、開きっ放しの暮羽の口から淫靡な裏声が次々と飛び出して行った。聞いているだけで達してしまいそうな声音を堪能しながら風薙は発掘した暮羽の性感帯の場所を腰と眼で改めて確認し、その耳元にシニカルな笑顔を寄せた。
「あー、これって前立腺辺りかな? 基本ですよねー。でも、初めてで、しかもレイプされてるって状況なのに感じてるなんて暮羽さんって淫乱なんですね」
「ばッ、ち、ち、違う……感じて、なンか……ァ!! や、やめッ、ああぁあああ!!」
 言いかけた否みの言葉も空しく、件の場所を重点的に攻められると言葉がまともに紡げなくなって、身体を捩じらせ悶える暮羽を風薙の言葉が痛烈に攻め立てる。
「これで分かるでしょう? 暮羽さん、貴方は淫乱なんです。男の後輩にレイプされて、ケツ穴掘られて、初めてなのにあんあん喘ぐ、とってもいやらしい人なんですよ」
「違うッ、違うッ、違、ぁ……う、嘘だ、そンなの、う、そッ……もう、嫌だ、もう、もう、い、や……あぁッ!!?」
 ひたすら否定の言葉を繰り返す暮羽だったが、突如、左手首を掴まれた事でそれは高い息と共に飲み込まれた。肩で息をしながら不安げに自分の眼を見詰めてくる相手に適当な笑みを返してやった風薙は静かに暮羽の左の握り拳を両手に取り、親指から一本一本丁寧に解いた後、その手を暮羽の両足の中心へといざなった。一体、何をさせようと言うのか。涙で赤く染まった眼で見上げて来る暮羽に作り物の慈愛の微笑を贈る。
「どうせなら、暮羽さんも気持ち良くなりたいでしょ? おちんちんシコッてて良いですよ」
「ンな事、出来る訳ねェだろ!!」
「……良いからやれって」
 慈しみの顔とは真逆の、地に響くような低声を零し、行為を始めた頃と余り変化のない肉根を無理矢理包ませた。暮羽は暫し風薙をねめ付け、無反応な相手に呆気なく眉尻を下げ、一物を掴む己の大事な左手を見下ろし、一度赤い鼻を啜り、やがて観念したのかおずおずと左手を動かし始めた。
「ははっ、やっぱり小指を立てるタイプなんですねー」
「う、うっせ!! 見ンな馬鹿ッ……!!」
 風薙の満足気な声に頭が煮え立つのを感じ、辛うじて尖り声を出す暮羽だったが、次の瞬間には後頭部を壁に打ち付けそうな程に顎を上向かせていた。例の場所への苛烈な攻めが再開されたのだ。
「見るなって言われても、目に入っちゃうんですから仕方ないでしょ? あー、暮羽さんのオナニー見れるとは思わなかった♪」
「ひっ、ひゃうっ、ひッ、ひぁ、あっ、ひぁんっ、あんっ、あんッ……!! ひ、そ、そこっ、ちがっ、痛ッ……や、やめ、やめえぇええええっ!!」
 涼しげな声とは対照的に熱い肉刀が幾度も幾度も弱点を突き、あられもない声を吐き出してしまう。しかも、時折わざと外すのか鋭い痛みがランダムに襲って来たりもした。
「あぁ……暮羽さん、声も身体もすっごいエロい……何か、こっちが駄目になりそ……」
 淫猥な声に風薙の瞳と声の澱みが一層強くなり、薄く開いた口から甘い溜め息が長々と漏れた。全く止まる気配のない腰の中心が心地良く窄まって来るのを感じた風薙は口の端を大きく吊り上げ、顎の先から汗を落としつつ眼前の暮羽に声をかけた。
「暮羽さん、ちょっと確認したいんですけど」
「う、うぅ……」
 既に息も絶え絶えになってまともに返答する気力も残っていないのか、大きな瞳だけを風薙の顔へと向ける。眼が合った瞬間、彼は真剣な顔を作って問うた。
「暮羽さん、男ですよね?」
「は?」
 余りにも突拍子もない質問に口がポカンと開くのを感じたが、何せ相手は自分をこんな目に合わせている掴み所のない狂人だ。質問の意図を考えても仕方がないと思った暮羽は素直に答えた。
「てめェ、見れば分かるだろうが。俺が女に見えるか?」
「良かったぁ!」
 真剣そのものだった顔はあどけない満面の笑みに変わり、直後に冷酷な能面に変わった。何とも見事な百面相に暮羽が戸惑いがちに目を瞬かせていると、彼は表情の無い顔から口だけをニッと笑いの形に動かしてみせた。
「じゃあ、このまま中に出しちゃっても良いですよね。男なら妊娠のリスクないですし」
「!! よ、よせ! やめろ!! 出すな!! この変態!! 嫌だ! ぜってェ嫌だ!!!」
「あー、良いですよ。その嫌がりっぷり。何か凄く燃えちゃいます」
 最後の抵抗を試みて足掻き、繋がっている身体を何とかもぎ剥がそうとする暮羽の両肩を掴んで爪を立て、後頭部から腰下までをピッタリと壁に直角に引っ付くまでに押し付け、自分も身体を限界まで相手に密着させて、最奥を狙わんばかりに局部を突き出す。喚き、泣きじゃくる暮羽の顔の真横に自分の頬を当てた時、暮羽のかぼそい震え声が耳朶に触れた。
 ……嫌だ。怖い。と。
 その瞬間、計り知れない熱情がどっと湧き出して、風薙の激しく脈打つ心臓をグチャリと握り潰しそうなまでに強く鷲掴みにした。あぁ、この人、本当は可愛い人なんだ。可愛すぎて、愛し過ぎて、だからこそ、滅茶苦茶に、したくなる位に。
「大丈夫ですよ、暮羽さん」
 瞳のみを暮羽の横顔へとずらし、フッと何処か優しげに微笑んで独り言のように呟くと、それが聞こえたらしき暮羽の濡れた瞳もまた風薙の方へと向いて来た。
「経験がないから怖いって思うんです。一回出されてしまえば、平気になりますよ」
「ッ!!! あっ、あ……あぁぁあああっ!!!」
 余りにも非情な言葉に何かを言おうとして開きかけた口からは言葉は出なかった。言おうとした時には風薙に力任せに打ち付けられ、掻き回され、深奥を何遍も突かれていたから。それに合わせて暮羽の背中や腰が壁を激しく擦り、繰り返し叩き付けられる。
 痛い。暮羽の瞳から新たな涙が溢れて床に落ちる。後ろ頭が、背中が、腰が、痛い。風薙が入って来ている例の場所が、痛い。
 そして、何よりも、痛いのは……
「あっ、あっ、や、ヤバイ……で、出そ……」
 突如、切羽詰った声が聞こえ、思わず相手に目を遣ると風薙の汚濁の瞳の奥にギラギラした劣情があった。それを見ているだけで黒い恐怖心に押し潰されそうになったが、どうにか自分を奮い立たせて死に物狂いで拒み、もがき、抗おうとする。
「や、やめッ、やめろって!! ま、マジで、頼むから、お、願い、だか、らぁ……!!」
「ん、はっ、はぁっ、駄目ですよ。はぁ、はあ……中に、出さなきゃ、っ……完全に、貴方を、屈服させる事に……んっ……ならないじゃ、ないですか……!」
 虚ろな笑顔と揺れる声を返し、終末へ向けて一気にスパートをかけると、暮羽の短い悲鳴と拒否と懇願が入り雑じった叫びが何度も何度も耳をつんざいた。嫌がられると逆に燃えるとさっき教えてやったのに。案外この人は馬鹿なのかも知れない。
 頭の中では存外冷静に分析しているが、身体の方はもうとっくの昔に限界を超えていた。風薙の身体の中心部で燻っていた熱が早く外に出せと急かして来て、暮羽の温かな肉に包まれている相棒をふるふると震わせて来ている。風薙は一瞬辛そうな渋面を作り、揺れが止まらぬ腰を改めて極点まで前進させると、上体を大きく後屈させ、後穴がギュッと固く閉じられるほどに尻を引き攣らせて、己を思い切り解放させた。先端が熱く破裂し、その衝撃に視界が一瞬真っ白くなる。
「はぁ、はぁ、はぁ!! あ、んぁぁ、イ、イクッ……出るっ…暮羽さんの、バージンアナルに、中出しっ、す、るぅ……!!あ、あぁ、出る、イク、出たっ……出てる!!」
「ぃあぁああ!! あ、熱い!熱い!! い、やだっ、で、出てる……!! 何か、なンか、中に、たっくさん、入ってぇえ……!!、ぃい、い、嫌だ! 嘘だ……こ、こンなの、い、ぃ、やああああぁああ!!!!」
 眩い白光の中に魂を吸い込まれかけた風薙を現実世界に引き摺り戻したのは、暮羽のこの世の終わりのような叫喚。未だ視界がぼやける目線を大声の方へと向けると、ただただ拒絶の言葉を繰り返しながら真っ赤な顔で嗚咽を漏らす彼がいた。あぁ、どうしよう。この人、本当に…
「は、ははっ……暮羽さん、かーわいー」
 頭に浮かんだままの言葉をぼうっとした声で口にし、繋がりっ放しの局所を今一度突き出して細かく揺すると、まだ少し残っていた精種が少量ながら相手の中に撒かれて行くのを感じた。直後にまた相手が悲痛な泣き叫びを始めた気がするが、もう慣れてしまったのか聞き飽きたのか単に疲れたのか、風薙はまともに構う気にはなれずに汗ばむ暮羽の身体にもたれて息を整える。
 そう言えば。暫し後に何かを思い出した様子の風薙が少しだるそうに頭を上げて、ある場所に目を向ける。その瞳が目当ての物を見つけた瞬間、薄い唇からクッと小さな笑いが漏れた。
「あー、暮羽さんイケませんでした? まぁ、初めてで、しかも犯されてる状態でイクってのはちょっとレベル高かったですかね。結構感じてたみたいですけどねー」
「…………」
 暮羽は、もう、何も言わなかった。彼は壁に背中を預け、壊された人形のように鎖骨の中心辺りに顎をくっつけて項垂れていた。そんな彼の左の手中にあるのは、硬度を増してはいたが種を吐き出す段階までにはまだまだ遠い若き茎。
 やがて、花が綻ぶようにその指がふわりと開いていき、無惨に散りし花びらの如く、床にゆるりと落ちていった。