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※赤い文字色のページには性描写があります
「ひッ、ひぃ、ひやぁああぁああ!!!」
子供部屋の寝台の上で白い下着と黒い靴下のみの姿にされた少年が金切り声を飛ばす。その男児向けの下着に男の顔が密着していた。鼻が丁度股間に触れていて、全ての匂いを吸い取らんばかりに深い呼吸をする度に男の肩が大きく上下する。
「ふうぅ、ふぅうう……! 最近の男の子はすぐカッコつけてトランクスとかはきたがるが、やっぱり○学生は白ブリーフだよな、はぁはぁ、ふぅううう!!」
何とも品のない感想を零し、肺活量の限界まで鼻息を吸い込む。激しい不快感にキャアキャア叫び続ける少年の瑞々しい匂いと下着に残る洗剤の香りが入り混じる中に別のにおいを感じ取った男は口角を醜く吊り上げた。
「へ、へへっ、もしかして……」
ひとしきり、暮羽の恥ずかしい香りを堪能した後に小さな下着を無遠慮に引きずり下ろす。音量が上がった悲鳴も構わずに生温かい下着を両手で広げて股の辺りを覗き込むと、男の鼻と獣欲を刺激し続けていたにおいの元である黄色い斑点が少し散っていた。
「あぁ……やっぱりオシッコのシミが付いてる……○学生らしくて可愛くてエロいなぁ……」
母にいつも注意される汚れを、相手の男は陶然とした様子で眺め、顔を突っ込み、すかすかと聞きたくもない音と共に吸い、さも当然と言った様子でズボンのポケットにしまいこむ。その気持ちの悪い一部始終を呆気に取られて見てしまった暮羽は、一呼吸置いてようやく目をそらし、思い出したように襲って来た吐き気に口を押さえた。自分に背を向けた状態で苦しげに呻く少年をニヤニヤと見やりながら、男は床に放置されていたダンボール箱を開ける。中から男が取り出した物は。
「そうそう、いいよエイジくん。もっと、思いっ切り足広げてー」
「っく、ひぐ……」
グラビアアイドルを宥めすかすカメラマンのような口調の男に命じられるままに、暮羽は布団の上で寝そべって大きく股を広げ、小さな性器と楚々とした穴を見せつける。カメラのシャッター音が自室に弾けた。例のダンボール箱に入れて持ち込んだ一眼レフのカメラを構え「やっぱり、完全真っ裸よりも全裸に靴下の方がいやらしくてイイよな」などとひとりごちつつ、男は調子に乗った命令を続ける。
「お尻の穴を指で拡げて」細い指で蕾を左右から引っぱって横に拡げる。穴に冷たい風が入り込んだ。
「おちんちんのアップを撮らせて」手を後ろについて下腹部を突き出すと、カメラが暮羽の若い雄芽に触れんばかりに近付いてシャッター音を連発させた。
「そのまま皮を剥いて中を見せて」大事な場所を覆う皮を不慣れな手つきでずり下ろし、痛みに耐えながら薄桃色の本体をチラリと見せる。裸の中の裸を見られているようで、とても恥ずかしかった。
「四つん這いになってお尻を高く上げて」ベッドシーツに胸をつけ、言われるままに柔らかな双丘を高々と掲げる。そうやって男をいやらしく誘う淫乱な子なんだね。謂れもない嘲りが聞こえた。
その後も、口に出すのも憚られるような卑猥な姿が男の大きなカメラの中に何十も収められた。
「ふぅ。まぁ、これだけ撮れればいいかな。○学生の生写真は高く売れるからなぁ。……あぁ、もちろん、おじさんのオカズにもするから安心してね」
「……うっ」
暮羽は深くうなだれた。悔しさと惨めさが一粒の涙となって瞳から零れ、敷布を握る小さな拳の甲の上にぽたっと落ちた。肩を震わせて嗚咽を漏らす暮羽に下卑た微笑を与え、暮羽の痴態が詰まったカメラを箱の中に大事そうに収めた男は円い壁かけ時計に目を飛ばす。
「四時ちょっとすぎか。エイジくんのお母さんは八時まで帰らないらしいから、まだ遊べるね」
「い、いや、だ……もう、やだ……」
「嫌じゃない。おじさんの言うことを聞くって約束しただろう?」
有無を言わせぬ高圧的な声が、たゆたう涙声をピシャリと叩き落した。
カチコチと針が時を刻む中、男の作り物の明るい声が部屋を包む。
「はい。それじゃあ、お名前と学年と年齢を教えてください」
「あ、う……」
先程と変わらぬ、黒靴下のみの格好で寝台の前に立つ暮羽は、男の問いに答えようと引き攣る唇をこじ開けようとしたが、真正面から向けられているビデオカメラのレンズが目に入った瞬間、反射的に両手で恥部を覆って頭を落としてしまった。
「チッ!」
手の平サイズのカメラを構えた男は忌々しげに舌を打つと、暮羽の頭頂に向かって激しい怒号をぶつけた。
「ちんこ隠したら意味ねぇだろうが!! いいから、そのまま気を付けしろ! 学校で習っただろ!?」
「いっ……ひ、ひっく……」
乱暴な言葉で一気にがなりたてられた暮羽の身体が雷に打たれたかのようにビクンと跳ね、半ベソ顔をおどおどと持ち上げる。そして、その小さな手をゆっくりと局部から離し、太腿の外側に静かに置いて背筋を伸ばした。少年の直立を見届けた男は鼻から大きく息を抜くと、気を取り直した様子でカメラの照準を暮羽に合わせた。
「じゃあ、撮り直すぞ。……お名前と学年と年齢を教えてください」
地に響く凄み声から少し高い明朗な声へと男のトーンが様変わりする中、暮羽は眉尻を下げながら揺れる声で男の問いに答えた。
「く、暮羽鋭次、です。○学四年生です。×歳です……」
「エイジくんは、今から何をするんですか?」
あくまでも明るい声で続けられる問いに、暮羽は撮影開始前に相手の男に無理矢理覚えさせられた“台本”の台詞をつかえつかえ搾り出す。
「い、今、から……おじさんに、お、おちんちんを……ボクの、お、おし、お尻の、穴に……えぐっ……い、入れてもらいます。ひっく、ひッ……×歳だけど、おじさんと、せっくす、しますっ……ぐずっ……」
「はい、エイジくん、ありがとうございましたー! おじさんと楽しくセックスしようね ……っと。よーし、いい画が撮れた!」
最後の方は泣きじゃくりながら言ってしまったのだが、男は「その泣き顔もそそる」と満足気にカメラを下ろして笑った。
慣れ親しんでいるはずの部屋が、自分の場所であるはずの部屋が、別世界のように感じた。ただ単に、部屋のあちこちに男が用意したビデオカメラが置かれているだけなのに。それだけなのに。
自分を至る所から凝視し続ける黒い機械の血の通わぬ瞳が、自分を記録し続ける赤い光の突き刺すような視線が、すごく、痛い。
「う……」
ベッドに寝そべる全裸男の肉体と言う最悪な敷布団の上でうつ伏せになった暮羽の鼻先で大人の男の亀頭が揺れる。自分のそれとは色も形も大きさも違う、ただただ不気味な物体に眉を思い切り顰めていると、暮羽の腰の下に顔を敷いている男の生温かい息が細い両脚に絡みついた。
「ひっ!」
高い声が飛び出た時には、自分の陰部を男の口が丸ごとすっぽり包み込んでいた。唇が未熟な茎をしごき、舌がまだ中身の作り方を知らぬ種袋を転がす。
「んむ、ちゅっ、ふう……エイジくんのおちんちん、とっても小さくて可愛いからおじさんのお口にすっぽり入っちゃうよ」
「ぃやああああ!!」
男は舌を器用に動かし、暮羽の幼い雄を覆っていた皮を捲り剥いた。少し前にカメラに収めた少年の無垢な桜色を思い返しながら、つるりと小さな本体を舌先で念入りに撫で回し、乳にありつけた赤子さながらにチュウチュウと吸う。甲高い喚き声が部屋に轟く中、暮羽本人にとっては汚くても、男にとってはたまらぬ塩味が味蕾を刺激する。
「んちゅ、ちゅぱっ、ふはぁ……はぁ……エイジくんのオシッコの味がするね……」
「ヒッ……な、何なンだよ……!」
体位の関係上、男が暮羽の顔を窺うことは出来なかったが、足元から聞こえる声と眼前で小刻みに震える体から、その表情は想像に難くなかった。男の想像とほぼ合致している嫌悪と恐怖に歪んだ顔に涙を滲ませる暮羽の腰から、この状況を心底愉しんでいるらしい男の声が聞こえる。
「エイジくんにも気持ち良くして欲しいなぁ。エイジくんもおじさんのおちんちんを舐めてくれないかな?」
「いッ!? そ、そんな気持ち悪ィこと、で、でで出来るワケねェだろ!!」
「そうしないと、お遊びは終わらないよ? エイジくんのお母さんが帰って来ちゃってもいいのかな?」
「くうッ……」
“お母さん”と言う、どんな拒絶も無にしてしまう言葉を聞いた暮羽は喉の奥で唸り、視線を落とした。目の前でゆらつく肉茎の先端に思わず吐き気を催してげっぷを零す暮羽に男はアドバイスをくれてやる。
「アイスクリームは好きだろ? アレと同じように舐めるんだ」
「……」
数時間前の自分が先のことも知らずに呑気にしゃぶっていたソーダ味のアイスキャンディーを頭に思い浮かべ、視界に映る肉棒と重ね合わせてみるが、「おいしそうだから口に入れてみよう」とは到底思えなかった。むしろ、好物であるアイスが嫌いなものになってしまいそうな気さえした。
だが。
「う、んぅ……!」
男の言いなりにならねばこの最悪な遊戯は終わらないと察した暮羽は、大きな瞳を湿らせながら好物とは似ても似つかぬ醜悪な肉に舌を伸ばす。男の先端の窪みに先が挿し込まれた瞬間、嫌な塩味が舌に染み込み、同時に感じた痺れが瞬く間に顔の裏へと広がる。暮羽の唇が左右に広がって歪み、おえっと舌を吐き出すような空えずきをした。それでも、少年は悪夢を少しでも早く終わらせるために、全ては母を巻き込まぬために、数度深呼吸をした後、水に潜る前のように大きく息を吸い、目を硬く瞑って男の肉筒の先端を咥え込んだ。
「んむっ……! ふぅ……ちゅっ、んちゅっ……ぷはぁ、はぁ、えぁ……ぅン」
柔らかな唇で雁首を撫で、自分の唾液でてらてらと光る赤黒い頭に口付けをし、男の助言通りに舌を伸ばして雄棒の側面をぎこちなく撫で上げた後は、舌先を細かく動かして射出用の穴を舐め続ける。足元から恍惚とした吐息が聞こえた。
「ん、ふぅ……あぁあ……いいよ、エイジく……凄く上手だ……あ、お、おぅっ! こ、これはたまらんっ! ×歳の男の子がちんぽをペロペロ舐めてるっ! き、気持ちよすぎるぅ!!」
男が喋り喘ぐ度に太腿にかかる温かい息に、この上ない気持ち悪さを覚えて目を潤ませる暮羽だったが、それでもひたむきに彼なりの拙い奉仕行為を続ける。不意に暮羽の濡れた垂れ目が大きく見開かれた。
「ふぇあっ!? あ、ァああああッ!!」
裏返った叫び声に男がニヤリと笑む。太い人差し指を少年の小さな蕾に捻り込みながら。侵入物を押し出そうと狭門が指に噛み付いてくる感触は男の胸をいびつに高鳴らせた。
「ははっ、○学生のアナルはやっぱり小さいなぁ。おじさんの指が食い千切られちゃいそうだよ」
「う、ぅあ、あッ、や、やめ、て……気持ち、悪いッ……!!」
男の指が出入りする度に襲う、排泄を繰り返しさせられているような異物感に胸元から仰け反る暮羽だったが
「勝手に舐めるのをやめたら駄目だろう?」
「ふぎぁ!!」
臀部を平手で強く打たれ、高らかに鳴いた。
「えっく……うっ、うっ……」
男の太腿に涙の粒を散らしながら、暮羽は揺らめく雄に頭を寄せて舌を伸べる。そして、先端に接吻をし、がむしゃらに肉搭の側面に浮く血管を舐め続けていたのだが、ふと小さな異変に気が付いた。唇が当たる度に、男の肉搭が不穏な動きを刻ませる。舌が撫でる度に、顔のすぐ脇にある相手の太腿が小さく痙攣する。突如、男の切羽詰った声が耳に飛び込んだ。
「エ、エ、エイジくん! エイジくんも、おじさんの、くっ……お尻の穴に、指を入れるんだ!」
「ッ!? やだ!! 汚いからヤダ!!」
「いいからサッサと言う通りにしろ!!」
「痛ッ!」
尻肉を千切り取らんばかりに抓られた暮羽は甲走った声をあげ、ほとんど反射的に男が指定する場所をオロオロと涙目で探した。あった。短く縮れた毛に囲まれた皺深い小穴が。このおぞましい窪みに自分の指を突っ込めと言うのか。
「……あ、ぅ……」
自分の細くて短い人差し指と男のくすんだ肉穴を交互に見る。怖い。気持ち悪い。入れたくない。夢なら今すぐ覚めて欲しい。
――これは、夢ではない。残酷な事実を証明する鋭い痛みが尻に走った。
「早くしろって言ってるだろうが! 俺のケツの穴に指入れてイカせるんだよ!!」
興奮と切迫感ゆえか粗暴な口調で喚きつつ、柔肉を抓り、叩き、爪を立てる。痛みに耐えかねた暮羽は、もうどうにでもなれと言わんばかりに薄汚い皺穴に自分の人差し指をあてがい、そのまま突き進める。自分の指が細いゆえか男の肛穴が存外緩んでいたゆえか、どちらにしても理由は考えたくなかったのだが、とにかく、暮羽の指は思ったよりも呆気なく男の中に沈んでしまった。暮羽の嫌悪に満ちた高声と男の陶酔のいななきが重なり合う。
「お、おほっ、ほうっ! すごい!! ×歳児の指が俺のケツ穴ほじって……う、うおぁ……! い、イク! エイジくん、イクよ! エイジくんの可愛い指にお尻の穴を弄られながら、おじさん精液出すよ!!」
「へ? ふえッ? な、何? せーえき?」
「せ、精液も知らないのか……! や、やった……この子はアタリだ! 顔や身体も上玉だが、中身も無知で無垢で最高だ! はぁ、はぁ、はっ、あぁっ、あああ! で、出る!! 精子も知らない×歳児にザーメンぶっかける!! んくっ、ぅあぁあああ!!」
「きゃうッ!!」
男の腰が大きく跳ねたかと思うと、暮羽の顔に添えていた屹立が爆ぜ、暮羽がよく利用する公園の水飲み場の蛇口を思い切りひねった時のように白く粘つく謎の液体が天井に向かって勢い良く飛び出した。白い噴水は直後に雨になり、暮羽の髪に顔に降りかかる。
「ふぁ、あ、ああぁ……!」
頬を濡らす種液を手の平で拭い、そのべたつく感触や臭いに喉の奥から涙声を絞る少年の姿を満足そうに見ていた男は、やおら立ち上がって寝台を降りた。取り残された暮羽は、とっくの昔にベッドから落下していたボックスティッシュを慌てて拾い上げ、何枚も何枚も取り出して汚れた顔を拭き、口の中に残る不快を大量の唾に混ぜて紙の束の中に吐き出す。
「今のお宝シーンもちゃんと録れてるよな?」
机上のカメラに語りかけながら覗き込んだ男は、働いていることを意味する赤い光を確認して満足気に頷いた後、机の片隅に突っ立っている写真を一瞥して卑小な笑みを浮かべると、背後のベッドの上で紙に向かって嘔吐き続けている少年に向き直った。再度、自分に近づいて来る大人の足音に揺れが止まらぬ大きな垂れ目が一瞬で凍りつく。
「さ、エイジくん。続きをしようね」
寝台に乗るや否や男は暮羽の狭い背中に手を当てて、柔らかな布団にうつ伏せに押し付ける。ぷぎゅっ。蛙か何かが潰れたような鳴き声が小さく聞こえた。
「えっ!? も、もう今ので終わりだろ? もう、帰るンだろ!? 頼むから、帰ってくれよォ!!」
枕に顔を埋めたまま、頭のてっぺんから声を出して懇願する暮羽を静かに見下ろす男の瞳が冷たく輝く。
「終わり? 何を言ってるんだ。これからが本番だよ」
暮羽の頬に向かって囁きながら、男は痛々しい青痣や紅葉が散るすべらかな白丘を愛しげに撫でた。
ベッドの隅に転がしていたボトルを手に取り、中身である透明な液体を己の興奮冷めやらぬ愚息に惜しみなく振りかける。男の分身がもたげた頭を心地良さげに微動させた。
「おじさん、エイジくんのためにローションいっぱい塗ったからね。ちょっと痛いかも知れないけど、男の子だから我慢出来るよね?」
「う、ぅうう……! 嫌だ、こンなの、やだッあああぁあ!!」
呻きと喚きが混ざった声をあげ、何とかベッドから逃げようと足掻く暮羽だったが、彼の華奢な身体の上には大人の男が覆いかぶさっていて、まともに身体を動かすことすら出来なかった。それでも、暮羽は激しくもがき、何とか片腕を男とベッドの間から引っこ抜く。
「ううっ、ぐッ、あ、ぎぅうう!」
食い縛った歯から唸り声を搾り出して身体を自分の机の方へと捻り、短い腕を精一杯伸ばす。小さな手を目一杯広げる。
「く、うっ、うううぅ!!」
細い指で空を掻く暮羽の唇がハァハァと喘ぐ。せめて、“アレ”を倒さなくちゃ。前でも後ろでもいい。とにかく、自分の方を見ないようにしなくちゃ。
「……」
自分の身体の下で無駄な抵抗を繰り返す少年に男は作り物の憫笑を湛えて言った。
「お父さんに見られたくないのかい?」
「!!」
暮羽の指が静電気に触れたかのごとく跳ね、五本の指全ての関節が折れ曲がった状態で固まった。
瞬きを忘れた大きな瞳と面白そうに細めたやや皺深い瞳が机の上のある物に注がれる。二人の注目を浴びているのは写真立てに収まった一枚の写真。中にいるのは白い歯を見せて二人に笑いかける長身の若い男と、彼の腕の中で親指をしゃぶりながら円らな瞳で虚空を見つめるオムツも取れていなさそうな幼児。若い男は……暮羽の父親は、その写真を撮ってから一年もせぬ内に妻や息子の目の前どころか、この世界からも姿を消してしまったけれど。
「あ、あうぁ、あっ……」
声にならぬ声を揺らす暮羽の非常に分かりやすい反応に男は笑みを浮かべ、確信した。彼には父親がいない。出会った最初に彼の頭を撫でてやった時の非常に喜んでいた様子を思い返しても合点がいく。この家に入り込んだ時点で、いや、少年の身辺を調べている時から何となく感付き、抱いていた推測が的中した瞬間だった。
男は改めて写真の中の若い男を見た。雰囲気が自分の下で啜り泣く少年に似ている。少年の成長後の姿が容易に想像できるほどに。
「……くくっ」
男は粘り気を感じそうなまでに湿った笑いを漏らし、上半身を起こして布団の上に膝立ちになった。そして暮羽の細い腰を両側から掴み、己の局所を近付ける。そして、不意に浮かんだ台詞を有り体に口にした。少年の白い心を深く斬りつける残酷な言葉を。
「エイジくんがおじさんとセックスする所をお父さんに見てもらおうね」
「ッ!! あ、ああ゛ああぁ!! やだ! やだああ゛ぁあ!! お父さん! おとうさん!! おどうざあぁあ゛ん!!」
彼なりに耐えていた涙が爆発し、裏声の絶叫が部屋に響く。暮羽は再度腕を伸べ、張り詰めた手の先で笑う父を幾度も叫び呼んだ。こんなことを言えば、テレビの観すぎと笑われるかも知れない。漫画の読みすぎだと怒られるかも知れない。でも、でも、自分の叫びを聞きつけた父が写真の中から飛び出して、この男を殴って追い払ってくれたら、どんなに嬉しいだろう!
だが、皮肉なことにその絶望的な号泣が男の劣情を激しく煽ってしまった。加虐心が夕立雲のように男の胸の中に瞬く間に立ち込め、心と同じ黒い微笑みが男の唇を醜く歪める。男は泣き喚く暮羽の身体を押さえつけ、微笑を下品な引き笑いに変えると、写真の中で笑い続ける若い男に向かって呼ばわった。
「ひ、ひひっ……! お父さん見ててくださいね! おたくの可愛い息子さんが○学生なのに男とアナルセックスする所をしっかり見てやってくださいね!」
「嫌ッ! イヤッ! お父さん、助けてッ! ……ぃやあああぁああ!!!」
少年の悲痛な叫び声に寝台が軋む音が重なる。絶叫がより痛々しい高音になった。
耳を覆いたくなる悲鳴に満ちた狭い子ども部屋。その閉ざされた窓を覆う水色のカーテンが微かに揺れた気がした。
悲しげに。辛そうに。