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※赤い文字色のページには性描写があります


 夜も更けて、これからが本番だと言わんばかりに一層の盛り上がりを見せる繁華街。毒々しいネオンまみれの一角にそびえ立つビルに一人の中年の男が入る。ちょっとしたホテルさながらにソファやテーブルが並び、青々とした観葉植物が点在するロビーを大股で横切って向かったカウンターでは、受付係らしき若い男が一人暇そうに雑誌を読んでいたが、来訪者の存在にハッと気付くや手の中の本をそそくさとしまい、愛想の良い笑顔を作った。
「いらっしゃいませ」
 笑顔に似つかわしい爽やかな挨拶をする従業員に男が手を突き出す。その指に挟まれた会員証らしき紫色のカードを見た受付の男は心得顔でメニュー表を取り出し、客の男の前に広げた。ラミネート加工されたメニュー表の中には若い男の写真がずらりと並んでおり、その中の一枚を中年男の指が寸分の迷いもなく差す。すると、まるでそれがスイッチであったかのように受付男は眉を八の字にした。
「申し訳ありません。彼は今、接客中でして……今日お客様の相手をさせるとなると、彼の休憩時間も入れて今から二時間はお待たせすることになりますが」
「いや、いい」
 若い男の早口を中年男のよく通る低音がゆったりと遮る。
「予約をしなかったこっちも悪かったから、今日はもういいよ。とりあえず、次の予約だけさせてもらうかな」
「かしこまりました。えーと、一番早くて明後日の午後九時半になりますが……」
 背後の棚から大判のノートを取り出して、ペラペラとページをめくる受付の手元を盗み見た男は「あぁ、その時間でいい」と指定すると、ふっと薄笑いを浮かべた。
「相変わらず、彼は人気みたいだね。予約がびっしり入ってるじゃないか」
 ノートに書かれたお目当ての青年の名と彼の名前の横を隙間なく埋める客の名前(と言っても偽名であったが)や日程を眺めながら、男は独り言のように続ける。
「彼は僕たちのような中年に喜んで抱かれてくれるからね。普通、その名簿に載るような若い子は同年代の子かちょっと年上の若いのが好みで、僕たちみたいなおじさんは相手にはしてくれるけど、内心見下してたり、嫌々だったりするからね」
「いえいえ、まさか、そんな」
 ノートに新たな名前と時間を記入しながらその場しのぎの台詞を吐く受付の男を中年男はすがめた眼で見つめ、そっと肩をすくめた。
「じゃあ、明後日の九時半に頼むよ。内容はいつも通りでね」
 相手の返事も待たずに店を後にする中年男の背に向かって、受付の男は「ありがとうございました」と頭を深く下げた。

 男が店から退出した頃。ビルの最上階の一室では、親子ほどの年齢差はあろうかという二人の男が巨大なベッドの上で絡み合っていた。腹がたゆんだ壮年の男が引き締まった体躯の若い男に乗っかかり、みっともなく腰を揺さぶっている。もしも第三者が見たとしたならば、大抵の人間が下にいる青年に同情するであろう光景だった。
「う、ぁ、あんッ! くゥ……」
 野球で鍛えた身体に汗を滲ませ、くすんだ金色の髪を乱してあられもない声で喘ぐ青年。それは、あの少年の十年後の姿。大人になった、暮羽鋭次。
 シーツを引っ掻く暮羽の血管が浮く手の甲の上に小太り男の指の太さが目立つ手が重なってくる。汗でぬるつく熱い手が暮羽の拳をそのまま握ってきた。
「はぁっ、はっ、え、エイジくん、そろそろイくよ!! ほら、エイジくんもお尻の穴締めて!!」
「あっ、はぁっ、あうぅん……で、出る? え、もう出ちまうの? 早くね?」
「エイジくんのアナルちゃんが気持ちいいからだよ! あ、あぁああ!! 出る、出るぅ!! は、早く、ケツ穴、締め……!」
 体型と同じくだらしない声をあげて悶える男に暮羽は苦笑した。
「ッたく、しょうがねェなァ……言うこと聞いてやッからチップ弾んでくれよ!?」
 苦笑いを挑戦的なそれに変え、自分の臀肉に力を込めて菊穴を窄めると、相手の男は無駄な肉をブルブルさせて嘶き、張りのある青年の双丘を掴んで腰を突き出してきた。やや短いながらも太さで補っている男の雄棒が暮羽の最奥を掻き分ける。
「ひあ、ぃあうぅ! そ、そンな、急に奥まで突くなッて……!! あ、ああッ、太いぃ!!」
 男の猛攻の前に暮羽の肉搭が揺れてシーツの上に透明な蜜を散らす。やがて、悶える暮羽の後ろで男は裏声で絶叫し、お世辞にも綺麗とは言えぬ出来物まみれの尻肉を震わせながら達した。
「ぅう……はー、はー……今日も、はっ、はあっ……良かったよ……」
 壮年男が年齢的にも身を案じたくなるような息切れを繰り返しながら腰をゆっくり引き抜くと、ぬるぬると濡れるゴムに包まれた肉茎が姿を見せた。すっかり萎びた己の分身から避妊具を引き抜いて、いつのまにか起き上がっていた暮羽に手渡すと、彼は流れ作業のように渡されたゴムの口を手際よく結び、サイドボード脇のくずかごに放り捨てた。
「アンタがゴム着けてヤるとか珍しいな。中出し料金ケチってンの?」
 サイドボードの上に立ててある料金表(卑猥な行為が数多羅列されている)の下部に大きな赤字で書かれている「ナマ中出しをした場合、プレイ料金が30%増しになります!!」という明け透けな注意書きを横目で見て問う暮羽の目線を追った男は、相手と同じように文字を読みつつ「まさか」と笑った。
「そんなことでケチケチするほど金に困ってたら、週に二度も君を抱きに来ないよ」
「じゃあ、何で……ぅんッ」
 男の分厚い唇が暮羽の唇を押さえつけて彼の台詞を中断させる。少し戸惑う暮羽の口内を舌で一頻り愛撫した男は、二人の間に架かる唾液の橋を指で断ち切り、満面の笑みを浮かべた。
「そろそろ新しいのが欲しいな、と思って」
 言いながら男は床に置いたままだったファストファッションショップの袋を暮羽に渡した。袋の中を覗き込んだ暮羽は、「あぁ」と小さく頷く。
「そういうことか」
 暮羽はとりあえず袋を枕元に置くと、床に散らばっていた自分の服を寝台の上から伸ばした手でかき回した。左手が昨夜からはいていた下着を掴み、足を通す。下着一枚の姿になって寝台に座る暮羽の肩に男の太い腕が回って来た。余った手が暮羽の下着にそろそろと近付く。
「エイジくんが一日はいていたパンツに自分のザーメンが付くなんてゴメンだからね。だから、今日はゴム付きのコースにしたんだ」
「そのためにわざわざ新しい下着まで買って来たのかよ。ま、これのサービス料金として下着代五千円出すよりは、テメェで新しい下着用意する方が安上がりか」
「そういうこと。新しいパンツ、気に入って貰えるといいな
 男は粘つく声で言い、暮羽の耳に舌を伸ばし、下着の中に手を侵入させた。既に布を盛り上げていた暮羽の淫棒をさすり、柔らかな皮をずるずると引きずり下ろす。暮羽の唇から熱い息が零れた。
「エイジくんはおじさんの手でシコシコされるのが大好きだもんね。おじさんの手じゃないとイケないんだよね」
「はぁ、うぅ……ち、違うッ、違う……けど」
「けど?」
 ニタニタ笑顔で粘着的に尋問する男に暮羽はボソボソと答えた。
「俺の手でも……普通にオナニーしてもイケることはイケるけど」
 そこまで言うと暮羽は艶めいた瞳で男を見上げ、甘えるように男の鎖骨に頭を乗せた。
「誰かの手でイカされる方が気持ちいいッてだけなンだよ」
「ふふっ、エイジくんは見た目によらずエッチな子だからねぇ。よしよし、今日もおじさんがエイジくんを気持ち良くさせてザーメンいっぱい出させてあげるからね」
「ッ……! あ、あはぅ! あぁあああ!! もっと! もっと俺のちんぽシコシコしてッ……あ、あん あんッ か、皮が、俺のちんぽコスコスしてるッ、皮コキちんぽ感じるぅうう!!」
 下着の中の手が動く度に暮羽の身体が跳ね、男の手の内にある雄根も熱く脈打ち、下着の股の部分が濡れ始める。
「エイジくん、気持ちいいの? こんなおじさんの手にシコられて気持ちいいの?」
「気持ちいい! 気持ちいい! “パパ”におちんちん弄られるの気持ちいいよォ!!」
 突然の呼称と幼い口調に男は皺深い目を細め、静かに微笑んだ。それは青年が他人の手に局部を蹂躙され、絶頂を迎えそうな時に出る不思議なクセだった。悪ぶった見かけや口調とは真逆の幼児帰りを繰り広げる青年の落差に小太り男も気分が乗り、いつものように暮羽に合わせてやる。
「パパの手でイキそうなんだろ? 精子出そうなんだろ? ほら、出してごらん? エイジくんのパンツの中にエイジくんの赤ちゃんの種を思い切りぶちまけてごらん!?」
「んくぁ! う、うんッ、だ、出す! ザーメン出す!! パパの手の中でイクからッ、赤ちゃんのもと出すから、見てて……ッ! あ、ぃひあああぁ!! い、イク! イクッイクッ!! せ、せせ精子出るゥううあぁああ!!!」
 あまやかな白が吠える暮羽を征服し、その白は一瞬にして種液となって暮羽の肉樹の先端から弾け飛ぶ。下着の中にねっとりとした熱がジワジワと広がった。
「ぅく……ぅ……はぁ……はぁ……」
 脱力感と戦いながら暮羽は己の種に濡れたボクサーブリーフを細かく震える脚から抜き取り、ボードの引き出しから取り出したポリエチレン製の袋に丁寧に入れると入り口部分のジッパーをしっかりと閉じた。そして、持ち帰り用の紙袋を同じ引き出しから取り出そうとした時、脇でニヤニヤしていた男に不意に腕を引っぱられ、強制的に相手と向かい合う形を取らされた。驚き顔の暮羽の手から落ちた紙袋が床で乾いた音を立てる中、男は暮羽の両の二の腕を掴み、顔を笑みの形に歪めて暮羽の顔を覗き込む。
「本当にエイジくんのイク時の顔は可愛いね。……またパパと遊ぼうね
「…………」
 そのまま顔を寄せてきた男からの口付けを受け容れながら、暮羽は目を閉じた。もう、寂しくない。心の中の小さな自分が言う。ここにいる限り、たくさんの“パパ”が俺を愛してくれるから。暫しのち、暮羽がそっと目を開けてみると太った中年男の醜く笑んだ顔のアップが視界を満たしたが、暮羽は特に嫌悪感を覚えなかった。
 だって、この人も。
「……パパ」
 暮羽は男と合わさった唇の端をそっと上げ、父親ほど年の離れた相手の口の中に甘えた声を放り込んだ。

 

<END>

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【こっそり後書き】

ツイッターでブツブツ呟いていた悪趣味ショタネタの暮羽編。
こちらの方もツイッターの段階ではモブおじさんに撮影されてレイプされて…ぐらいだった筈なのですが、
やっぱりプロットを立てると変態プレイが追加されてしまう件。
実はプロットの段階では「これ、どう見ても風薙編の方がエロいし酷いし胸糞悪いじゃん!」と思ってました。
でも 実際書いてみると……ホントこれ、どっちが酷いんだろう……。
とりあえず、エロシーンを書いてる最中「このモブおじさんは私が憑依しているのかな?」と頭を抱えたのは秘密です。
おまわりさん、このひとです!!
リコーダー突っ込んで失禁ぐらいはまぁ普通に考えてたけど、
何か知らん間に暮羽のおもらしパンツであんな事やこんな事させたのは当時の自分は頭がおかしかったとしか思えません。
「今も頭おかしいじゃないですかヤダー!」と言う突っ込みは各自の心の中でお願いいたします。

暮羽さんの家族に関しては例によって捏造です。
父親については「死別の方がレイプされる暮羽さんの心のダメージがグッと強まるじゃん!?」と言う理由で
あのような表現にした人間のクズ。
いや、そう言うの関係なしに死別かなーと勝手に思ってるんですけど。
それ以前に大人になった暮羽さんの幼児帰りのほうが怒られちゃうかなーと個人的に思っています。
やっぱり、暮羽さんと言えばオラオラ口調ですもんね。
でも、今回だけは「父親ぐらいの年齢の男性(パパ)の手じゃないとイケない身体になった暮羽さん」を書きたかったので、
どうかお許しください。
え?監禁編の最後ら辺の暮羽さんもメス口調だったって?さぁ、何のことだか(すっとぼけ)

日記にもちょっと書いたのですが、タイトルに関してはまだちょっと「うーん」な感じです。
実は「トラウマ遊戯・暮羽編」にしようかなーと結構最後まで悩んでいたぐらいです。
なので、もしもしっくり来るタイトルが浮かんだら変えるかもしれません。
この手の「○○するかも」を実践した事は殆どないけどな!駄目じゃん。

最後までお付き合いいただき、本当に有難うございました!