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※赤い文字色のページには性描写があります
てらてらと濡れた先端、滑り気を帯びた窄まり。暮羽と風薙二人の腰が触れ合うと接吻を交わしたような音がした。四肢を突いたまま小さく呻いてシーツを握る暮羽の拳の上に後ろから覆い被さっている風薙の手がそっと静かに乗せられる。怖くない。俺に任せて。そう伝えるように。
「やあぁ、あっ、んん、あぁ……!」
接吻を交わしたその場所に未だ慣れぬ圧迫感が襲って来る。指とは比にならぬ太く長く逞しい肉竿が少しずつ、少しずつ入ってくる。相手を痛がらせないように気を遣ったペースでゆっくり、ゆっくりと。
「んっ、暮羽さん、まだ、力入ってるっ……リラックスリラックス」
漸く暮羽と繋がれようとしている悦びを滲ませつつも、相手の無駄な緊張によって中々腰が進まぬ事に風薙は焦りを覚えた。いつもなら、こんなまどろっしい事しないで無理矢理にでも奥まで一思いにぶち込むのになぁ。頭の何処かに隠したままの裏風薙が密かに嘆息するが、“恋人モード”を維持する表風薙は根気良く暮羽を慰め、労わり、力を抜かせる涙ぐましい努力を続ける。
「んくっ、はぁ、はぁ、はぁ……!! は、入って……風薙のが、あぁっ、く、るぅ……」
相手も僅かずつながら落ち着きを取り戻した事で、油を塗っても堅さを覚えていた其処は徐々に風薙を迎え入れて来た。柔らかい。温かい。気持ち良い。最奥まで入り込んで掻き回してやりたい欲求が湧いて来るが、己が半分ほど埋もれた所で風薙は暮羽の腰を持ち直した。そして
「はぁはぁ……じゃ、動きますよ」
「えっ? ……!! あ、ア、あぁっ! あんッ、あっ、あんっ、ひ、あぁああ!!」
いつもなら、深奥まで入ってくるそれが今回は少し短縮コースで動き始めた。半分しか入れずにいるのは相手なりの優しさであり、心遣いかも知れないし、現に痛みも何となく普段より少ない気がするが(単にワセリンが手伝ってるだけかもしれないが)、それが何だかじれったいとも秘かに感じていたりもする。勿論、そのような事を言える筈も無く、代わりにあまやかな嬌声を刻み、血管が浮いた手で敷布を握る暮羽の耳元に風薙の唇が近付いて、吐息で耳朶を撫でながら熱く揺れる声で率直な感想を伝えた。
「あっ、ヤ、ヤバイ……暮羽さんの、中、熱くて、ぬるぬるでっ、はぁっ、女の子の、おま○こ、みたい……! うあっ、溶けるっ、溶けそっ」
「ばッ……!!」
唐突に登場した直接的な性単語に瞳が飛び出んばかりに瞠目し、口を金魚のようにパクパクさせてしまう存外純情な暮羽鋭次だったが、そのような中でも自分でも驚くほどの昂ぶりを覚えていた。女の子の、おま○こ、みたい。風薙の言葉が頭の中で何度も繰り返される中、以前世話になったアダルトビデオのワンシーンが突如脳裏に蘇る。結構自分好みの女優が今の自分と同じように後ろから腰を打ちつけられて長い黒髪を振り乱し、この業界にはマニュアルみたいな物でもあるのかと突っ込みたくなるようなお決まりの台詞を叫んで悩ましげに悶えていた。
不意に、彼女と自分が勝手に重なった。胸が一気に燃え盛る。頭の中でビデオのあるシーンが勝手に繰り返し再生される。交わりの終わり際、彼女は男に促されて幾度もこう絶叫して激しく痙攣し、髪を逆巻かせて達していた。愛してる愛してる愛してる!!
そして、重なっていた彼女は少しずつ溶暗してしまい、頭の中で淫らに乱れているのは完全に自分になり、だらしのないニヤけ顔で後ろから突いていた男優も気が付けば、冷笑を浮かべた風薙に変わっていて、自分は止まらぬ涙も涎も拭わずに身体を目いっぱい仰け反らせ、笑みさえ湛えながら例の台詞を絶叫し続けている。あい、して……
……何を考えているんだ俺は! 我ながら酷い妄想に焦る理性を嘲笑うかのように止まらぬ劣情は瞬く間に飛び火して全身を駆け巡った。馳せ回って、駆けずり回って、散々体内の至る所を荒らした熱がやがて到達したのは
「は、あ、はぅっ、ひっ、あ、ち、違う、こ、こンなの、こンなの、違う……ぃ、やああぁああ!!」
「えっ! ちょ、暮羽さっ、えぇえ!?」
「あ、あ……あっ、あああぁあああ!!」
突然、自分の愛息を飲み込んでいる肉穴が別の魂でも吹き込まれたかのように蠢き、収縮し、貪欲に食らい付こうとしてくる感触にさしもの風薙も驚愕したが、数度瞬きをする内に何とか落ち着きを取り戻してニヤリと笑い、例のモードを一時的に解除して底意地の悪い声をかける。
「えー、暮羽さん、どう言う事ですか?」
「んくっ、はぁ、はっ……」
「もしかして、お尻の穴がま○こみたいって言われて感じちゃったんですか? やーらしー」
「はー、はー……ち、ちがっ……」
「違うって言うんですか? こっちも大変な事になってるのに」
「ひぁ!!」
腰を掴んでいた両手の内の片方が暮羽の鼠蹊部を撫でた後、そのまま中心に移動して硬度と熱が増した膨張物を掴むと短い嬌声が弾けた。
「こっちもガン勃ちしてるじゃないですか。うわー、すっごい。先っぽまで腹にくっ付いてる」
「ば、ば、馬鹿ッ、言わなくて、良いンだよ! ンな、こと……」
「ふふーん♪ 暮羽さんって女の子呼ばわりされて感じる変態なんだー……っと!」
「ひっ!?」
突然襲ってきた排泄感に慌てて振り向くが何も漏らしてはおらず、代わりに自分から腰を離した風薙が油と体液でぬらぬら光る男茎を微かに揺らしつつ立っていた。
「えっ、何で」
抜くんだよ。その一言を言う前に風薙がフフッと笑い、そのまま寝台の僅かな空きスペースに仰向けに倒れこんだ。その行動の意図が分からなくて汗まみれの顔を傾ける暮羽に風薙は涼しい声で言い放った。
「俺ばっかりリードしてて何かずるくないですか? 今度は暮羽さんから動いてくださいよ」
「え」
「俺のこの体勢見れば、どうすれば良いか大体分かるでしょ?」
「くっ……」
息も絶え絶えに獣の態勢を解除し、笑う膝を必死に押さえながら壁に手を付き立ち上がった。膝と同じくガクガク揺れる両足を風薙の腰の辺りで跨がせて軽くしゃがみ込み、頭をもたげたままの風薙の若き大樹に手を添える。ここで一度相手の顔をコッソリ
窺い見てみると、彼は夏の砂浜で肌でも焼いているかのように組んだ両手を枕にしてゆったりしており、満足そうににこついていた。
「クッソ……」
結局、自分は相手に踊らされているような気がして喉の奥で呻くが、燻り続ける疼きには勝てずに相手の呼吸に合わせて動く肉製バットを軽く掴んで停止させ、その先端を自分の後穴にあてがうと、数分振りの雄との再会に蕾は本人の意思を無視して綻んで、早く早くとヒクついた。
「ぅく……んっ、ふっ、ふう、ふっ、ふぅう……!」
腰を少しずつ沈めると相手の亀頭がめり込んで行き、其処から生じる苦痛を少しでも和らげようと息を吐く。そして、相手をある程度飲み込んだ所で意を決し、勢い良く膝を折ってしゃがみ込むと油に塗れて解れた門が一気に男を腹の奥まで受け入れた。
「んあっ、ああ! あ、はっ、ぅあぁぁああ!!!」
一気に全身を貫いた衝撃に身体が反り返り、海老のように跳ねる腰の辺りに風薙の手が触れた。
「はぁ、はっ、うっ……」
無意識に瞳を相手の顔へと向けると変わらぬ笑顔の彼がいて、視線が交わった瞬間に、それが合図だと言わんばかりに腰を揺さぶり突き上げて来た。下から地鳴りのように襲い来る律動に暮羽は首を激しく振って涙の粒を辺りに散らし、絶え間ない悲鳴をあげ続けた。
「ねぇ、暮羽さん。気持ち良いですか? おま○こ状態の尻穴を下から突かれまくってどうですか?」
「や、やめっ、その、言い方……だ、駄目ッ、んあぁ!!」
「その割にはキュウキュウ締めてくるじゃないですか。いやらしいなー」
どうも、彼は自分の穴を女性器呼ばわりされる事に抵抗がある(と言うか弱点なのか)らしい。良い事知っちゃった。風薙は片方の眉と口角を同時に器用に吊り上げて、ある実験に着手した。それは。
「暮羽さん、気持ち良い……腰、止まんないかも」
言葉ではそう言いつつも実際の動きは徐々に速度を落として緩慢にし、やがて下半身を完全に止めてみる。さて、どうなるか。
「……ははっ」
相手に聞こえぬぐらいの声で風薙は笑った。自分が腰を止めた事に気付いているのかいないのか、暮羽は天を仰いで烈々たる上下運動を繰り返していた。跳ねる度に艶かしい声を刻み、淫棒が腰の動きと同じリズムで揺れてピタンピタンと己の腹を打ち鳴らし、その先端から止まらぬ蜜と汗が風薙の胸に降って来る。
あーあ、自分からガンガン腰振ってるよ。やっぱ暮羽さんって天性淫乱ぽいよなぁ。相手の止まらぬ腰を義理で持ってやりながら、風薙は再度薄く笑った。
一時的に解除していた恋人モードのプログラムを風薙が再度呼び戻したのはそれから暫く後の事。お互いに大分限界が近付いている事を悟った二人は何となくと言うか本能的と言うか、とにかくどちらからともなく体位変更を申し出て、最終的に辿り着いたのが、下で仰向けに横たわる暮羽に上から風薙が被さって、腰を繋げ振るという至って普通の正常位。
「あぅん、う、んっ……」
肘を曲げた利き手で枕を掴んで、相手の動きに合わせて漏れる暮羽の声は少し枯れていた。あれだけ乱れれば無理もない事だが。
「はぁ、はっ、はっ……」
息を切らして下半身を前後させる風薙の声は何処か揺れて浮いていて、虚ろな瞳は暮羽の顔を見詰める。その艶めいた顔を見ている内に、自然と、唇が開き、紡いだ。
「……鋭次、さん」
「え?」
突然下の名前で呼ばれて閉じっ放しだった瞼をそっと開くと、もうすっかり目が慣れた薄暗い闇の中で風薙が、少し嬉しそうに、照れ臭そうに微笑んでいた。
「何か、そう、呼びたくなりました。……このセックスが終わるまでは良いですよね?」
言いながら、暮羽のすっかり乱れた金の髪を愛しげに梳き
「俺の事も豹って呼んで良いですよ?」
願望を遠回しに伝えてみるが
「……」
返事はなく、相手はただ無言で肩を小さくすくめた。風薙は微笑を微かな苦笑に変えて、知らず知らずの内に一時中断していた律動を再開する。無言を維持していた暮羽の口が呆気なく開いた。
「っ、あ、はぁっ、あぁ、んくぅ!!」
ベッドの軋みが速く、大きくなっていき終末の時が近付いている事を告げた。跳ねるスプリングに合わせるように腰を小刻みに動かす風薙の鼻先から汗が落ち、無意識に腰を浮かせて同じく揺れる暮羽のまなじりから涙が落ちる。やがて、風薙の腰の辺りが妖しげな震えを生じ始めた。
「あっ、あ、で、出るっ、イクッ……え、鋭次さんっ、だ、出して、良い、ですか……? この、ままっ、はぁ、中に、出しちゃって、良い、ですか……!?」
直後に答えは返って来た。獲物を逃さんばかりに風薙の身体に四肢を絡み付ける形で。その答えに目を見開き、思わず間近の相手の顔を見ると、彼は熱に浮かされたような涙目で何かを言いたげに唇を震わせていたが、その口からは喘ぎしか聞こえてこなかった。
やがて、その瞬間はやって来る。暮羽の長い両脚にガッチリと固定されてしまった腰を何とか動かし、揺らし、仕上げの形で中を先端で擦ってみると、彼の肉口は獲物を捕食するように食いついて“餌”を寄越せと収縮してきた。餌……精を暮羽の欲深き淫穴に搾り取られそうな感触に風薙は彼らしからぬ声をうっかり上げ、身体を弓なりに仰け反らせた。
「んあ、あっ! イクッ、鋭次さんの……んっ、出るッ……エロ尻穴に、出すっ……! ん、あ、あぁぁあああ……!!」
「ひっ、ひぃっ……! ひあっ、あ、熱ッ、ああぁぁ!! 出されてるのに、中にっ、出されてるのに、俺、ひょう、に、中出しされながら、イックうううぅ!! あ、ああああぁぁあ!!!」
暮羽が喉彦の奥から叫びつつ、本能のままに己の屹立を掴んで激しく擦り上げると、数度の手の往復だけで呆気なく決壊し、弾む腰が辺りに種液を散らしていく。風薙の下半身がそっと離れると、少し拡がった穴から風薙の白い樹液がまろやかな線に沿ってトロトロとシーツへと流れ落ちていった。
「あんっ……」
散々自分を蹂躙した風薙の少し萎んだ本体が抜ける瞬間にその面妖な感触から思わず女のような声を漏らしてしまい、慌てて口を押さえる暮羽の身体に風薙の腕が伸びて抱き締めて来る。そのまま暮羽の鎖骨に頭を乗せて余韻に浸っていると、自分の背中にも戦慄く両腕が回って来る。ギュッ……と抱きついてくるその力は自分よりもやや強い気がした。
「そう言えば」
暮羽の体温を噛み締めながら、風薙は思い出したように呟く。
「さっき、豹って呼びました?」
鎖骨の枕から顔を上げると彼は大きな黒目を横にずらし、うっすらと笑って言った。
「あーあ、シーツ洗わねェと」