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※赤い文字色のページには性描写があります


 

 カーテン越しに差し込む白い光。鼻腔を擽るコーヒーの香り。リズミカルに包丁を鳴らす音。幸せな目覚ましが風薙を覚醒させる。
 あれから結局、二人で狭い風呂場でシャワーを浴び(暮羽は嫌がったが、だってもう遅いからと無理矢理ご一緒させていただいた)、ワセリンが中々落ちないと苦戦する暮羽を“俺に中出しされたら何時もそうやって、いやらしくザーメン穿り出してるの?”などとからかって激怒され、その影響で同じ寝台に寝る計画は破綻になって、自分は半ば蹴り落とされるように例の床に敷かれた布団で寝た訳だ。

 お得意の亀の体勢になって、布団の中から台所を覗くと何かを切る暮羽の背中が見えた。どうやら、昨夜と同じ部屋着の上にエプロンを掛けて食事を作っているようだ。駄目だなぁ、暮羽さん。其処は裸エプロンでしょ。
 そこまで考えた所で風薙の瞳はすぅっと暗く冷めた。
「本当に、甘いですよね。暮羽さんって」
 部室で陵辱して、その様を撮影して、下手に抵抗したり誰かに言ったりしたら全てネットやマスコミにバラすとお約束の脅しをして、プロ野球選手にどうしてもならなければいけない理由を抱える彼を屈服させて。そして、その写真や動画をネタに呼び出して、犯して、また撮影しての悪循環を繰り返して――
 だが、やはり悪循環も度を過ぎれば、彼は自暴自棄を起こして抵抗し、告発し、プロへの道を捨ててでも自分や壱琉大学野球部もろともに破滅の道へと進む選択肢を選んでしまうかも知れない。
 だから、抱いた。優しくした。愛してやった。ほんの少しだけ、自分への憎しみを好意に変えてやろうとした。……それは案外呆気なく成功した。これで暫くはまた彼を性玩具にして遊んでも大丈夫だろう。そうこうしている内に、また彼の中の何かが燻り爆発しそうになるかも知れないが、その時はまた昨夜と同じ事をしてやれば恐らく間違いない。
「ふふっ、ふっ、くくくくっ……」
 呑気に食事の準備を進める暮羽の背中を見ている内に笑いが込み上げ、闇色のそれは自然と歪んだ口から漏れ出たが、暮羽は何も気付かぬ様子でIHコンロの上のフライパンを覗き込んでいた。

「ふわぁああ……おはようです暮羽さん」
 数歩の間に顔の陰を消し、緩い欠伸をしながら台所に入ると二人分の朝食の準備が着々と整えられていた。黄身が黄金色の目玉焼きが眩しいハムエッグ、真っ赤な二つのプチトマトがアクセントになっているサラダ、コーヒーメーカーの中では濃い黒が音を立て、食パンは自分が起きた後に焼いてくれるつもりだったのかまだ袋の中で待機している。
「え? あ、うん、おう」
 まだ昨夜の余韻が残っているのか、普段以上にぶっきらぼうに挨拶する暮羽の目は少し赤かった。昨夜はあんなに涙したし、寝るのも大分遅くなった中での早起き。案外、あのままベッドでまんじりともせずに朝を迎えてしまったのかもしれない。要因は色々考えられた。
「うわー! 俺の分の朝飯まで作ってくれたんですか?」
 大袈裟に手を広げて驚いてみせる風薙に暮羽は何故か少し顔を赤らめて、持っているフライ返しを上下に振った。
「ば、馬ッ鹿! 勘違いすんなよ? ハムとか卵とかの賞味期限ヤバかったから、お前にも手伝ってもらおうと思っただけだかンな!」
「へぇ〜、そうですか」
 そう言っていますけど、ゴミ箱の中にあるハムのパッケージ袋に書いてある賞味期限。何か大分先みたいなんですけど。まぁ、黙っとくか。
「ま、まァ、それに作ってやらねェと“俺の分ないんですかー?”とか言うだろ」
「言います」
「な?」
 テンポの良い会話を交わしながら袋から食パンを取り出してオーブントースターに突っ込む暮羽を見て風薙は僅かに肩を上下させた。変な誤魔化しとかしないで、最初からそう言や良いのに。
 布団を畳み、隅に追いやってたテーブルを元の場所に戻し、その上に並ぶ朝食に追加されるのはこんがり狐色のトーストが乗る皿二枚。その間、まるで何もしなかった(した事と言えばトイレと洗面ぐらいか)風薙が嬉しそうに手をパンと叩いた。
「うわー! 美味しそう!」
「嘘吐け、てめェ味オンチらしいじゃねェか。極楽サンから聞いたぞ」
 何とかレギュラーの座を得たのにちょっとした事件を起こしてランキング最下位に落ちてしまった野球部の先輩(極楽組のキャプテンなので暮羽は極楽サンとあだ名を付けている)の名を出し、何処となく不満げな顔を見せる暮羽に対して風薙はニッコリと満面の笑みを浮かべた。
「うーん、普通はそうなんですけど……何ででしょう。これは何だかすっごく美味しそうに見えました」
「へッ、下手なお世辞言いやがって」
 ……なんて言っているけど、ちょっぴり鼻をひくつかせるその顔は満更でもなさそうで。本当に、甘い人。
「じゃあ、いただきまーす!」
 改めて手を叩いて挨拶をし、相手の“はい、どうぞ”も待たずに目玉焼きにかぶり付く。絶妙な焼き加減の黄身がとろりと溶けて風薙の舌の上に乗った。それは何の変哲もない、ちょっとした料理上手が焼いた目玉焼き。だが。何だろう、何だか凄く幸せな感じ。これって“美味しい”って事なのか? 基本的には誰が作っても味がぶれないメニューだと思うけど。作った人が、彼だから?
 朝食をパクつきながら上目で暮羽を窺うと、何も付けていないトーストの端に齧り付いている彼と目が合った。
「……朝メシ食ったら帰れよ」
 視線が合った事で生じた妙な照れを隠すようにポツリと呟く暮羽に風薙は箸を置いて静かに彼を呼んだ。
「暮羽さん」
「あ?」
 怪訝そうな彼の瞳を瞬きもせずに見据えて、言う。これは、自分の綿密な計画が無事に成功したのかを確認するテスト。
「また、泊まりに来ていいですか?」
「…………」
 暮羽が戸惑いの表情を見せ、齧りかけのパンを置く。暫し俯く。互いに無言の時間が少し続き、やがてパンくずが少し付いた彼の唇がそっと開く。
「――――」

その言葉に風薙豹は相好を崩した。

 

<END>


最後までお付き合いいただき、本当に有難うございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<コッソリ後書き>

うん、また長くなった(完)
プロットの時点では「まぁ2〜3ページぐらいだろうなー」と思ってたら5ページ(4ページ半?)…。
き、騎乗位のシーンは要らない子だったんじゃ…!
いや、隠れ淫乱な暮羽書くの楽しかったんですけどね。
それよりも恥ずかしかったのが女性器表現。暴走しやすい夜中に書いたからね仕方ないね。
昔はその手の単語を書くのが気恥ずかしくてよく頭抱えたり部屋を意味なくウロウロしたりしたのになぁ。

「風薙が暮羽を強姦している」みたいな表現がチマチマ出てきますが、
実はこの話は以前から書きたいと思っている風薙×暮羽中心の暮羽総受け強姦・輪姦etc話の派性みたいなものなんです。
い、一応、コレ一本でも何とか読める内容にしたつもりなのですが、いかがだったでしょうか…

最初は全く書くつもりがなかったんですけど、風薙×暮羽と言う物にハマッていく内に
何だか風薙と暮羽の和姦みたいなモノがふと書きたくなりまして…
ちょっと書き始めたら、こっちの方が楽しくなってしまって、先に勢いのままに書き上げてしまいました。
書く順番逆なんだよなぁ…
いや、だってクッソ長い話になりそうなんですもの、強姦編。
つ、次こそは強姦編スタートしたいけど、どうなる事やら。
書くよ!と断言するのは自分で自分の首を絞めそうなのでやめておきます。根性なし。

何か風薙の暮羽に対する感情が曖昧というか妙な感じになっててすみません。
強姦編&この話の風薙に関しては
「表面上は「暮羽=性欲処理の道具」で本人もそう自覚しているけど、心の奥底では本人にも分からない不可思議な感情を抱いていて、
性玩具にするのも独占欲の表れのようなもの」みたいなイメージを個人的に抱いています。ここで説明かよ!!

長くなってしまいましたが、最後まで付き合っていただき有難う御座いました!

…風薙豹と言うキャラがまだ何か掴めてない感じです。
皆様のイメージと違ってたらすみません。