そんなに興味有る題材ではなかったのですが、集英社文庫の『オー・マイ・ガアッ!』を購入。……恐るべし次郎。結構「書き飛ばし」っぽいやや駄目な文章だったのに、ラストまで読み止められなかった…
それにしてもこの人の作風は作品ごとに見事にバラバラですが、この作品は「漫画的なやりすぎ感」を堪能できます。『きんぴか』『プリズンホテル』系かな?
舞台はラスベガスのカジノ、全登場人物がどこかイカレてて最高。特に「超美形のスーパーエリート、世界一の金持ちにして世界一のケチ、オイルダラーのアラブの殿下(フルネームもネタ満載)」まわりの描写がおかしすぎ。浅田作品は『美貌・気品』がしつこいまでに描写され、特に美形の「手」は必ずムチャクチャ美しい。しかしこの作品はその描写まで全てが笑いに繋がります。なのにオチは非常に心温まるところも次郎節炸裂。
本棚の整理してて、古い本を見つけて読みふけるのは良くある話。今回はその「古い本」についての感想です。
福山庸治作『マドモアゼル・モーツァルト』
「父親に音楽の天才的才能を見いだされ、男として育てられたエリーザの数奇な運命」
…というとなんだか少女漫画くさいですが、青年誌掲載作品だけあって適度に下品で秀逸な作品に仕上がっています。天才としての黄金期、「父親」の呪縛、魔笛、そしてレクイエム。ウォルフガングに恋をして「俺はホモじゃない!」と苦悩しまくるサリエリ先生とか、「夫が女」と知ってシーツ一枚で夜の町に飛び出す新妻(同じく追いかける「夫」)とかいう面白場面も満載。
夫婦生活の不自然さを怪しんだ弟子がモーツァルトに口止め料を請求し、「お金無いからこれで勘弁」と差し出された楽譜(アイネクライネナハトムジーク)を帰り道で口ずさんで、あらためて師匠の才能を思い知らされ号泣する場面とかお気に入り。この場面に限らず、楽曲の引用の仕方が上手いのですよ。
それにしてもこれ、「別に女にしなくてもいいじゃん、サリエリもシカネーダーも『男』のモーツァルトに惚れてるのに」とか思ってしまう自分はつくづく腐女子属性というかなんというか…
アシモフの『わたしはロボット』(創元社版)を読んで、SFの原点を学ぶ(映画は見てない)。一応スタトレ・SF愛好者として、ハヤカワから出ている『SFハンドブック』で古典や有名な話は押さえてますが、やっぱり紹介文だけで読んだつもりになるのはいけないと思いまして。
ポジトロニックブレインが出てくるし、最初の章のロビーが可愛くてたまらないし(これがアシモフ17歳の作品ってのがスゴイ)、成る程確かにコレは古典として残る作品だ。
・皇なつき『燕京伶人抄』
潮出版社から文庫で出ていた!!たぶん角川版の2冊分を収録してるのね。買おうか迷ったけど角川版のを持ってるし、縮小サイズの絵は悲しいし(生原稿見たことがあるけど、もーシャレにならんくらい美麗!縮小させるなんてもったいなさ過ぎる)で未購入。持っていない人、コレは絶対買いです!!それからどこの出版社でも良いので、この人の画集を出して下さい絶対買いますので。
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宗像教授の文庫版を探していて見つけた。でも肝心の宗像教授は見つからない。
・浅田次郎『蒼穹の昴』文庫版全4巻
うそだろー「文庫化はしない」って言ってたのにー。でもこれでこの物語がより多くの人の目に触れる機会が増えたんだと思えばいいか。作者の「あざとさ」「泣かせの技」炸裂ですが、この作品の舞台設定だとそれがそんなに鼻につくことなく、きっちりエンターテイメントに繋がっているのだ。浅田次郎にはまったきっかけの本。単行本2冊を不眠で読み切って、おかげで卒論落とすところだった(^_^;)それくらい面白い。でも通勤途中にはオススメできないかも(泣けるので)。
上記のように、作家買いで本を買うことが多かった最近ですが、やっぱり本屋でひたすらだらだらと眺めながら未知の作家さんを開拓するのは楽しいです。しかしハズレだと辛いので、パッケージされてる漫画本は悩む。漫画喫茶が近くにあればなぁ…
・諸星大二郎『海竜祭の夜』
かなり昔の作品なんですが、ようやく見つけて読めました。
もー、収録されてる話ことごとく怖い!!久々に「闇が怖い」。この人の描く「化け物」はなんでここまで生理的嫌悪をかきたてるんだろう(←勿論誉め言葉)『生命の樹』は怖いというより著者の諸星さんの凄さを再認識。『闇の中の仮面の顔』はラストシーンが怖い!「トコイ」が怖い!
・青池保子『魔弾の射手』
収録されていた『トラファルガー』マスコマでナポレオン戦争時代にある程度予備知識ができてたので、かなり面白く読めました。絵柄もこのころの物は華麗さの度合いがほどほどで結構好きだ。つーかネルソンはやっぱりアイドルなのね。
・ロバート・V・ヒューリック『雷鳴の夜』『観月の宴』『紅楼の悪夢』
ディー判事シリーズ一気読み。でもできればタイトルは『中国○○殺人事件』で統一して欲しかったな。
副官勢揃いがないのは残念ですが、オトモダチのルオ知事のキャラクターが愛らしくも格好良い(小柄のおデブさん。粋人かつ有能、堅物のディー判事のペースを軽く崩してくれる)ので満足。面白いけどあまり人に知られていない、不遇なこのシリーズの布教をしたくてたまらない。