×ロクス 「
簒奪者」別バージョン。
天使の素肌に触れて許されるのだろうか?
しかし恐れを知らぬ不埒者はロクスの天使を陵辱しようと彼女を弄んだ。彼女の抵抗を封じるために使われた魔石の瘴気に当てられどうしようもなく火照る体を持て余しながら泣き出しそうな天使に、ロクスは「慰めてやる」とは言ってみたものの、いざあどけない少女に向かい合うとロクスは躊躇してしまう。
やわらかい流れを描く金の髪。抜けるように白い肌。ほんのりと淡く紅色に色づいた頬とそれよりも濃い色で彩られた唇。…確かに男を魅入り惑わし跪かせる魔性を持っている。けれど彼女は泣き出しそうに頼りなくて悲しげな表情を見せているから、ロクスとしてはゆっくり眠らせて、眠ることで熱を抜いてやりたい。
男の欲望で踏みにじること、いやそんな妄想さえ憚られそうな神聖な存在…と受け取るのはロクスが聖職者だから。他の男ならばこんな顔を見せられたらどうにかしてやりたいと思うのが普通だろう。
それは理解できる。しかしロクスは罪悪感が先に立つ。
どこまでならば。どれくらいなら触れられる? 触れてもこらえられる?
シルマリルと言うあどけない天使に魅入られたという意味では、ロクスもヴァイパーも同じだった。
しかしロクスのそれはすでに愛情に姿を変えていて、おそらくヴァイパーは渇望に姿を変えてしまった。…愛しい女性を大事に想うロクスにはもう彼女を踏みにじることはできなくなってしまった。けれど彼も男、しかも女を知っているから触れてしまったらおそらく自分を止められなくなる。
天使は精神的に満たされれば人間の快楽に近い感覚を得られる、だからシルマリルはロクスの放蕩を理解できない、と言う話を口論寸前でしたことがある。
「…シルマリル。」
初めて彼女を膝に乗せた。顔を見ては理性が瓦解するからと顔を見なくてすむ体勢を選んだロクスだけど、女性との情事では背中から抱く体位を好むことを失念していた。ただでさえそんななのに愛してしまった手の届かない女性を膝に抱いてしまい人としての善性と男の本能がロクスの中で激しく葛藤する。
「間近で見ると本当に綺麗な髪だな…」
いや。あれこれ考えても仕方がない。花を選び続けた蝶のように不実な言葉を駆使して天使様を口説き落とそう。そして彼女を先に終らせればお役御免、浮名を流した色男としてはさびしいことなのだけれど、自分で自分を慰めると言うのもまた女を抱くのとは違う快楽が存在するからたまには悪いものじゃないと思いたい。
「気づいていたか、僕はこの髪が好きなんだ。日差しの下で見るよりも、そう…暗い方が。
真っ暗だろうと君の髪は淡く光って、君の白い肌もその青い瞳もまるで光ってるみたいで……」
それは装うふりをした本音。ロクスにとって天使シルマリルは道標で、迷い荒れようとも彼女はほのかに光を放ち必ずそばにいる。
ロクスは光の粒を振りまきながら微笑む彼女に魅入られた。その彼女が今己の腕の中にいる。
皮肉にもロクスは今ヴァイパーの気持ちに痛いほど共感していた。…行動を起こすことは無謀でしかない、けれどそれだけ腹をくくったと言うこと。高い女ほど覚悟を要求する、シルマリルは人間ではなく天使という女として最高級のそれ。
生半可な覚悟では神から奪うことなどできるはずがない。
「…本当に小さな体だ。僕の腕にすっぽりおさまる。」
奪う覚悟など恐れ多くて抱けないロクスが中途半端な睦言を繰り続けるんだけど、言葉に反応薄いシルマリルが背中からゆるく抱かれてふるりと身をふるわせた。天使が慣れない感覚にふるえた様子にロクスも思わず生唾を飲む。
それまでおとなしく男の膝に抱えられ甘い囁きを聞いていたシルマリルが不意にひざを動かし、自らロクスに横抱きにされる。いきなりその美貌を間近で拝んでしまったロクスは思わず目を丸く見開き驚いてしまったが、彼女はほんの少しの間その表情を見て、
「――――――!?」
突然ロクスの唇を、その薄紅の薔薇の花びらのような唇でふさぎ奪った。そんな彼女の振る舞いにロクスは当然たじろいだ、今の彼女はロクスの知る彼女ではない。
ロクスの知ってる彼女はおっとりしていてのんびり屋で初心で…そう、「清純なる乙女」といった表現が彼女ほど似合う存在もいないだろうなんて思っていたほど。そんな彼女に唇を奪われた、キスも知らない清廉なる自分などと寝言は言わないけれど、
「ロクス…抱いてください。」
その台詞をシルマリルの口から、彼女の声で聞いたことが信じられない。
細い女のやわらかい腕が男の体に絡みつき、ロクスは間抜けにも彼女の抱擁を身動きひとつ出来ずに受けている。
「お願いです…あなたなら…あなたに抱かれるんだったら……」
「…何を血迷っているんだ。君は」
「あなた以外の男性を知るくらいなら…あなたを知ってから消えてしまいたい……。」
「いいかげんにしろ」
「…あの魔石に触れてしまいました…私がいつ自分を保てなくなるか…わからないんです。
クラレンスに抱かれて消えるぐらいなら…あなたの手で……」
「いいかげんにしろシルマリル!」
あまりにもらしくない、彼女の取り乱したとしか思えない様子に、ロクスはつい声を荒くし抑えた声でシルマリルを恫喝した。しかし彼女は彼にしがみついたまま離れる様子はない。
「僕の体で君を消してしまえ、君はそう言っているんだぞ?
残される僕はどうなる?他の君の味方たちもそうだ! …昔の僕みたいな無責任なことを言うんじゃない。」
ロクスもそう言いながら、しかしシルマリルを手放せずにいる。この手を離しては彼女が戻ってこなくなりそうで、落ち着かせたいけれどそれが出来ない。こんな風に求められては彼の中の男が揺らぐ。
「…シルマリル、君は誤解している。
天使が男を知り翼を失っても…本当は、消えないんだ。」
そしてロクスが大事な彼の天使を落ち着かせるために、隠された禁忌の口伝を紐解いた。
「…………え?」
「君たちにとっては禁忌だろうが、教皇庁の禁書の中には…それに関する記述がある。
かつて人間の男を好きになりひそかにその男の子をなした天使がいるんだそうだ。彼女は……」
その結末も悲しいものなのだけれど、天使と人間との道ならぬ恋の結末は悲劇しかないのだけれど、
「とにかく、男に抱かれたぐらいで君たちの存在は揺らがないというのが僕の知ってる伝説だ。
だからそんなに怯えなくてもいい。…もしもなどないように僕も気をつける、それでも守りきれなくても…君が消えることはないし、それで君の価値が左右されるはずなんてない。」
ロクスの知識の中では結局天使は散ってしまうのだけれど、その瞬間は異性を知った瞬間ではない。
けれどその配慮の中身は実は心無いもので、彼の言葉は別の男に抱かれた女の存在が当たり前である傲慢に過ぎない。
シルマリルのような純粋な存在にとっては、その身すら捧げてもよいほどに想う相手に捧げるわけでもなく、望まぬ情を交わされてしまうことそのものが許せない。
そんなことになるくらいならば、彼女にとっては特別な存在となってしまったロクスを知って散る事を選ぶ。…それも彼女の傲慢に過ぎない。
「ロクスっ」
「…僕は…君を汚したくないんだ。今の君はどうしても僕が欲しいんじゃない、どうせなどと捨て鉢な理由で求められても僕は嬉しくなんかない。
…わがまま言わずにおやすみ、シルマリル。」
優しい声で囁くロクスだけど、当然抱きたくないわけがない。こんなに求められて、彼女が普通の少女ならもっと早くに押し倒してる。今頃彼女を女にしてる。それでも出来ないのは簡単な話で、清らかな彼女が好きなのもそうなのだけど、もっと彼の奥底の話、今のシルマリルは錯覚しているだけ。
彼の解釈では本気で欲しがってない女を抱きたくはない、そんなところ。
そんな彼の言葉をようやく理解したのか、シルマリルがやっとロクスに絡みつけた腕を解いた。
不意に開放されてどこかさびしいものを感じながらも安堵したロクス、だったが――――シルマリルは己を包み込んでいたロクスの紫の法衣をさらりと肩から滑らせて、胸元を引き裂かれた衣を、不埒者に刻まれた所有の印をロクスに突きつけるみたいに露にした。
「これを…消してください。こんなのいらない、私は…私は……!」
か細い体に不似合いな豊満すぎる胸、その谷間にくっきりと刻まれている男のつけた所有の印。
瘴気の結晶に中てられたこともそうなのだろうが、彼女が許せないのは自分の存在と引き換えにしても、とまで思いつめたほどの男以外が己の肌に所有の印など刻み付けた不埒そのもの。それを消せるのは彼女の胸の内にいる男だけで、それをロクスにせがんだだけ。
その言葉から先はシルマリルの口から出ずに、彼女は再び泣き崩れた。想いを寄せた相手に受け入れてもらえなかった、彼に拒まれてこのまま今までの関係を保てるはずなどない。
彼の配慮に従い何もないまま眠って彼のそばから離れて己の役目に戻ったら…もう、今までみたいに彼を無邪気に信頼できない。そのことがわかっているから、それに次クラレンスとふたりきりで相対することがあったなら…シルマリルとロクスの懸念がおそらく現実になる。
シルマリルの翼は罪にどす黒く染め上げられて、彼女はクラレンスだけの堕天使になることだろう。
罪とは言え人間の女性なら許されていることだけれど、シルマリルは天使で、誰でもない彼女の自我が許すはずがない。
それが魔石が生み出した葛藤、堕落への誘い。己の愛した勇者か、己を渇望する欲望か――――彼女はまた選ばされる。
「…シルマリル、誤解しないでくれ。僕は君に女性を感じられないからここまで拒んでいるんじゃない。
君には…僕よりも優先しなければならないことがあるはずだ。こんな僕でもそれを知ってしまった以上、…こんな僕でも君の崇高な仕事の役に立てるとわかった以上、それを妨げるようなことは…したくない。
僕の感情はすべてが終ったそのあとか、どうにも堪えきれなくなった時に、と思っているだけだ。そして今はまだ辛抱できる。…これでも男のプライドはまだ残ってるんでね。
好きな女性のために僕が役に立つんだったら僕のことなどどうなろうと構わない。
けれどこんな風に求められても僕のプライドが喜べないんだ。」
ロクスのそれはもはや告白と同意義。不実な男が愛しくてどうしようもなくて抱けないほどに思いつめてしまった相手は天使様、その構図に酔う己を知りつつも、彼女の目的のためにそれすらも利用し己までも騙すのがロクスという男らしい。
「…君は魔石に中てられているだけだ。後悔が残るような情事など君と共にしたくはない。
共にするのなら、すべてを捨てるほどの覚悟で腹をくくって君を襲わせてもらうが、今の僕はそんなことを望んでいないものでね。
落ち着いたならきっと君の気は変わってるだろう、…だからおやすみ、シルマリル。」
男としてこんな上げ膳そうそうない、しかし欲望や刹那よりも大きな愛があるなどと柄にもないことまで知ってしまった。それが自分の中にあったことまで知ってしまい、ロクスは自分から角が取れてしまったことを知り無駄な反発をシルマリルに向けることだけはしなくなった。
彼女相手になら何かを与えられることに気づいてしまった。
「心配ならばずっと…ずっと僕のそばにいればいい。
誰かにまかせるつもりなんてない。ヴァイパーの汚い手から僕が守ろう。」
シルマリルが腕を解いてから、ロクスは彼女の目を見て、彼女を膝に抱いたままで、その細く優しげに見える大きな手でシルマリルの髪を丁寧に梳いている。人間の女性ならばそれは告白に他ならないと舞い上がる場面なのだろうが、シルマリルは天使で、人間の男性のわかりにくい告白同然の求愛など読めないまま。
ロクスは彼女の髪を撫でるのをやめてどうしようもなくまだ泣いているシルマリルの引き裂かれた衣を指先で捉え合わせて傷にも似た赤い印を隠し、自分の法衣の留め金を再び留めるべく手を伸ばす。
「悪いな、その気になれなくて。でも人間の男は女性諸君が思うよりもずっと繊細なんだ。
今無理に君の望むとおりに行動しても、僕は多分機能しないだろうな。そんな僕を無理にその気にさせるなんて多分君にも出来ない。
君が出来ると思うんだったらぜひ襲ってみてくれ。無理なんだって繰り返す僕の言葉を証明してみせよう。
もっとも君にそれが出来るはずなんてないけどな。」
シルマリルが晩生ではなく、男を誘う術を知らないと言うことをロクスは知っている。あの不意打ちのキスが切り札だったろうに、早々にそれを切ってしまって彼の知るシルマリルは手詰まりになってしまった――――ロクスはそう見て言葉に少しだけ軽さを織り交ぜ始めた。
カード遊びのルールすら知らない彼女が、駆け引きなど繰り広げられるはずはない。ロクスはそう解釈している。
しかし、シルマリルは幼いが無知ではない。無知ではロクスという男を相手になど出来ない。
知ってはいるが理解に至ってない、つまり知識だけはある。紫の衣の留め金を留めるために伸ばされた彼の手を取り、シルマリルは…己の素肌、引き裂かれた胸に彼の掌を導いた。そしてそれで豊かな胸を包み込む。
別の体温にシルマリルがふるりと身ぶるいし切なげなため息を漏らす。それは男が抗えない引力を持つ誘惑に他ならなくて、不意に触れてしまった天使の素肌の感触と乳房のやわらかさに固まってしまい一瞬だけ出来た理性の隙間に女の誘惑を突き立てられて…
「…あなたを知っても私の存在が消えないのなら…ロクス、お願い…私を抱いてください。
体だけで構いません、私を愛してください……。」
誘惑など知らないシルマリル相手では機能しない、つまり勃起しないなどと遠まわしに彼女の女性としての誘惑を簡単に否定したロクスの傲慢への反撃がこれならば、神聖なる天使様も女に他ならないと言うことなのだろう。再び男の唇にシルマリルがやわらかな唇を合わせ、彼の手は乳房を包み込ませたまま離そうとしない。
魔石の瘴気、いやそれで増幅されたクラレンスの毒気はたいしたもの。破滅を願う混沌と同じほどに渇望は鋭いらしくシルマリルの善性をいとも簡単に飲み込んだ。彼の誤算はロクスと同じで、シルマリルは男と女のそれについて無知に等しいと決めつけていた事。
クラレンスの渇望と狂気がシルマリルを支配してロクスを望んでいる。
シルマリルは彼女を渇望している男ではなく彼女の勇者を選んだ。
男相手ならば拒絶するロクスだろうが、女性なら、しかも彼の唯一無二の女性ならば誘惑に抗うことは苦痛以上の激痛でしかないだろう。
シルマリルは頬を染めながら唇を外すと、肩にかけられたままのロクスの上着を音もなく滑らせて落とし引き裂かれた衣も音もなく開き豊満な乳房を露にしてロクスに差し出した。
「あなたの好きにして構いません…ロクス…壊れるぐらい、愛して…抱いてください…」
男ならば、その誘惑に抗える者などそうはいないだろう。シルマリルは金の髪の少女の完成形で、人のそれではない美貌の少女が素肌も露にしながらロクスを欲しがっている。彼の象徴でもある白い法衣にしなだれかかり細い顎に唇を這わせて男を望み豊満な胸の形が歪みつぶれるほど彼に己を重ねて、あの優しげな唇が男に所有の印、罪の烙印を刻みつけた。
ロクスはちくりと刺した喉元の感覚に、思わずそこに手をやろうとしたけれど、シルマリルはその手までも捉えて今度は己の腰に導いた。そして自分よりも体の大きなロクスをふたりで腰掛けていたベッドに押し倒す。
「ちょ、ちょっと待て、待てシルマリル――――むっ」
女性に押し倒されたことがないわけではないが、ロクスは己が優位に立つことを望む。押し倒されるのは性に合わない。久しぶりにこうされた、その相手がまさかシルマリルとは想像だにできなくてまた唇を奪われて、その誘惑に抗うのは精神的苦痛、拷問…いや、事実上不可能。
こんな状況で理性で性欲を抑えている彼も意外にたいしたもの。
シルマリルは魔石に支配された。救いは男なら誰でも、ではなく彼女はロクスだけを望んだ。
他の男ならばいらない、消えてしまった方がましとまで言い切った。
唇を貪られながらもロクスはひたすらに考える。必死で理性を駆使して選ぶ。
このまま彼女の中に熱を残すか、それとも……
「…好きにしていいんだな? 断っておくが、僕は激しいぞ。」
そして彼も選ぶ。流されたと見られようと構わない、クラレンスに限った話ではなく、他の男に奪われるぐらいならばおそらく彼女を奪い女にすることだろう。押し倒されながら受身だった彼が己の意思でシルマリルの腰を抱き乳房にかぶせたままの掌をじんわりと動かし始めて彼女に最後の問いを投げかけた。
「君が初めてでも加減は出来ない。それに何度求めるかさえわからない。
僕はそんな男だ、それでもいいんだな?」
「言ったでしょう?…壊れるぐらい愛して、って…。」
「ふん、一人前に僕を誘うか。終ったあとに、いや僕を知った瞬間に後悔しても知らないからな。
泣き喚こうと容赦しないぞ。」
腰を抱く男の手がシルマリルの尻を撫で、そのまま太ももに動き彼女の長い衣の裾をたくし上げる。もう何度目かわからぬほどに唇を求めてきたシルマリルのそれを、ロクスは今度はあっさりと受け入れてなおかつ彼女の知らぬ絡み合うキスを返す。
荒い呼吸と舌が絡み合い、ロクスは己が下になったままで即物的にシルマリルの尻まで衣をたくし上げてしまうと、彼女の薄い下着に細い指を絡めるみたいに滑り込ませた。
「あっ」
「このぐらいで感じてどうするんだ。ほら、動かない。」
「………はい。……っ!?」
ぐちゃりと重い水音がシルマリルの谷間から漏れた。ロクスの指はそこに辿りつき処女らしく閉じていたそこを割ってその奥へ、女を彼女以上に知っている男のふしだらな指が彼女の入口を探しながら蠢く。
「なんだこれは、すっかり出来上がっちまって…こんなだったらいきなり入れてもいっちまうんじゃないのか?
ほらどうした、腰が揺れてるぞ? そんなに僕が欲しいか?」
「あぁ…ロクス…ロクスの指がぁ…っ」
「ダメだ。まだ早い。
男を知らないんだからおとなしく僕にされるようにしてろ。…悪いようにはしない。」
「でもっ…熱い…体が熱くてっ……」
「それもこれも僕が鎮めてやる。僕なしでいられなくなった時が怖いが…まあ君が求めてくるのなら僕もいくらでも応じられることだろう。…天使の身体に溺れるのもいいかもな。」
本当は初心なシルマリルを言葉でも責めながら、ロクスの指は執拗なまでに彼女の濡れた谷間をかき回す。シルマリルはロクスの脚に絡みつきながら、彼の言葉の通りに腰をわずかに揺らしていた。
青い瞳を情欲で潤ませ火照らせて、少女が淫らな表情を隠しきれずにロクスの上でもがいている。すでに彼女の入口を探り当てた指先が執拗にそこばかりを責めるんだけど、指先を埋めるみたいなじれったさで彼女の身体を開かせようとしていて
「ほら、言ってみろ。さっき僕を欲しがったみたいに、どうして欲しいのかわかるように言うんだ。」
「…は、い……ロクス…あなたの指でっ…」
「指でいいのか? 男にはもっと太いものがあるぞ?」
女慣れした愛撫と意地悪な言葉責めの果てに、シルマリルはもう自我まで粉々に砕かれていた。
しかし彼女は男を受け入れることなど知らなくて、知るはずもなくて、何か言おうとするのだけれどロクスの指に阻まれて彼の法衣に包まれた胸板の上でもがいてばかりいる。
「…知るはずがないことを口に出来るはずもないな。
ほらシルマリル、もっといいことをしてあげるからどいてくれ。
さすがにこの格好のまま君を抱いちゃまずいだろ。」
ロクスはシルマリルの下からようやく抜け出して、事に及ぶ前に法衣を脱ごうと手をかけた。
嵐のような激しい愛撫から開放されたシルマリルはぐったりとベッドの上にうつぶせになっている。
法衣を纏う者にとって男と女の情事は罪でしかなくて、しかしロクスは放蕩の果てに知っていて、更なる罪の領域に足を踏み入れようとする。
白い法衣が、無造作に古ぼけた椅子に投げられた。それに薄いシャツと細身のズボンが乗る。
ロクスは一糸纏わぬ姿になるとうつ伏せのままで放心しているシルマリルの肩をじんわりと撫で、小さな背中に口づけた。そしてそのまま彼女の背筋に沿って舌先を這わせ、クラレンスがしたのと同じに所有の印、罪の烙印を刻み、再び指先を彼女の潤った谷間に這わせた。
「あ!!」
谷間をなぞった男の指先が躊躇なくそこを割りその奥へ、そして一度見つけ出した入口をまた探り当てて――――今度は指先だけじゃなく、ゆっくりと彼女の奥へと指を挿入した。
「…熱いな。それに絡みついてくるとは…火傷しそうとはこういうことなんだろう。
痛くはないか? 痛かったら言うんだぞ。優しくはしてやれるから。」
「あ…だいじょう、ぶ…いや、いいっ…ロクスの指がぁ……」
いいはずなどない。ロクスが少しだけ体を起こすと、ゆっくりと抜いた指に血がついているのが見えた。
この小さな体の蜜壷の大きさは容易に想像できて、…痛いのが当たり前だろうに、蝕まれた精神は苦痛のすべてまでも支配してしまったらしい。だが今さら同情などして何になるはずもなくて、ロクスはまたシルマリルの背に口づけると再度指を挿入しゆっくりと抜き差しを始めた。
「君はいいかもしれないが、ここはずいぶんきつい様子だ。
ほら、少しおとなしくしろ。いいのかもしれないが君を傷つけたくはない。
…僕を受け入れられるぐらいにしてあげるから暴れるな。」
幼子に言い聞かせるみたいな調子で淫語を囁く声が、背中からシルマリルの体全体に波紋のように広がる。それで瞬間に力が抜けて、ロクスはおとなしくなった彼女の蜜壷をゆっくり、ゆっくりかき回す。
「膝を立てて。」
言いながらもロクスは彼女の自発的な動作を待たずに、逞しくは見えない強い腕がシルマリルの尻を抱えて起こす。そして指が二本に増えて、シルマリルはシーツをつかみ爪を立ててそれを受け入れた。
クラレンスが与えた愛撫と同じようなことをしていると言うのに、彼女の反応はまるで正反対。クラレンスは徹底的に拒まれて結局最後まで彼女の気持ちを向けさせることは力ずくだろうとできなかったのに、ロクスは激しく拒んだ末のこの状況でもまるで尻軽娘のような痴態を隠しきれずに彼女は感じて身悶える。
「ロクス…ロクスいいっ…すごいぃ……」
「指ですごいなんて言われてもな。…今からもっとすごいことをしてやるよ。」
そして彼女の運命が決まる。翼を失うかそれとも…男を受け入れた女天使がどうなるのか、禁忌の箱に閉じ込められたままのそれをシルマリルは知らなくて、ロクスも禁書の記述すべてを鵜呑みになどしていない。ロクスはシルマリルのそこに己をあてがいシーツをつかむ手に己の手を重ねて指を絡め、ゆっくりと………
「……っ!? あ、あ……!!」
「さすがに痛いだろう?
悪いがこればかりはどうにもしてやれない…そんな思いをさせたくなかったから最初は拒んだが…っ…ああ…絡みついてくるっ……」
シルマリルの細腰ががくがくとふるえながらロクスを根元まで受け入れた。指に続き受け入れさせられた太いそれに彼女のそこは悲鳴を挙げる代わりに破瓜の赤い涙を滴らせロクスのそれに伝い、彼女の引き裂かれた淡い緑の衣にも純潔の証が滴り赤い花が咲いた。だがシルマリルのそこは処女の反応を見せながらもロクスをくわえ込んで蠢いていて、絡みつく媚肉の感触に彼も思わず眉を歪めた。
それから先は肉欲と快楽が支配する境界線の向こう側、ロクスは抜きそうな勢いで大きく腰を引き、しかし抜かずにそのまま音がするほどの激しさで腰を突き出す。翼を汚されそれでも快楽に支配されて己を保てないシルマリルのすべてを貪り味わうために、人間の男に過ぎないロクスは残っていた理性すべてを手放し包まれる感触と熱に酔いしれる。
こんな状況で羞恥心など邪魔でしかない。乱れ乱れてひとつに融けてしまおう。
シルマリルはもう己の立場も与えられた責務までも忘れるほどに、想いを寄せた男の情交が与える快楽にすべてを預ける。
彼女は己の愛した男を飲み込んだ堕落の味を知ってしまった。
「シルマリル…僕だけを欲しがるんだ。僕はいくらでも応えてみせる。
たとえ君が翼を失おうと君の価値は揺るがない。…君は僕だけのものだ。」
反対にロクスは束縛がもたらす快楽を知ってしまった。精神的に侵食し支配し優位に立つことに価値を見出す男が、その血肉だけではなく肉体がもたらす汚れた快楽までも、すべてを彼の認めた唯一の天使に捧げる。
共に相手に刻みつけた烙印を誓いの証に変えて、これからの不安を忘れるためだけに絡みつきひとつになり溺れてゆく――――