×ロクス 「
簒奪者」別バージョン。
「……………ん……」
悪夢の夜と熱く甘い一夜、明けた朝はどうなるのだろう?
シルマリルは自分以外の存在のぬくもりを感じながら目を覚ました。
彼女のおぼろな記憶が目を覚ます前に顔だけを上げると――――視界に入ったのは、裸のまま眠っているロクスの穏やかな寝顔。彼に折り重なって眠っていた自分のことを思い出したらしいシルマリルの表情は朝だけど暗く、不安を忘れたいかのように自分を抱いて眠っていた彼の腕にそっと触れて再び折り重なった。
激しかった。けれど愛された実感は確かに与えてくれた。ロクスは何度も甘い言葉を口にして天使の彼女を女として扱った。彼にほのかな想いを寄せつつあった未熟な天使様は天使としての責を忘れ人間の男が与える肉欲と快楽に溺れて、刹那に等しい一夜を愛する男性からもらった。
この肌がこんなに愛しくなるとは思ってもみなかった。喪失の痛みさえも今では甘い記憶。
シルマリルは生まれたままの姿のままロクスに重なりながら静かに目を閉じた。
「…翼、広げてみろよ。」
そんな彼女の腰のない髪を、細い男の手がそっと撫でた。その声にシルマリルが思わず顔を上げると、いつ目を覚ましたのだろう、ロクスが眠たげに目をしばたたせながらも微笑んでいた。
「確かに君を汚したけれど、僕は純粋に君が愛しくて抱いたのは間違いない。
…この気持ちさえ否定されるんだったら、僕は君に必要な役目を終え次第法衣を脱ごう。そんな心の狭い神に僕の一生全部を捧げるくらいなら、信仰なんて僕には不要だ。君ひとりがいればそれでいい。
さあ、翼を広げて僕に見せてくれ。」
起き抜けのそれは甘い囁きで、ゆっくりと言い聞かせるような言葉を口にする間ずっと、ロクスはシルマリルの髪を頬を慈しむように撫で続けた。彼の言葉に背を押されて、躊躇を覚えつつもシルマリルがうなずき、身を起こし、生まれたままの姿で、目を閉じて――――
「…美しいな、やっぱり。
言っただろう? 男を知った瞬間に翼を失う訳じゃない、って。
…僕の、シルマリル………」
さらに力強い光を振りまきながら、シルマリルは純白の翼を大きく広げた。ロクスが紐解いた禁書の記述は嘘ではないことを、現在の教皇庁の最高責任者に昇る男がその目で確認して、しかしただの男の顔で彼は身を起こし彼の美しい天使を抱きしめた。そして口づけを交わす。
「愛してる…愛してる……」
頭の中にある言葉を何度も繰り返しながら、ロクスは再び昨夜と同じに、昨夜よりも激しく彼の天使を求め始めた。唇を合わせ躊躇なく舌を絡めて貪り翼を広げたままの彼女の腰を抱き寄せて肌を合わせて…シルマリルも素直に与えられた肉欲に従いロクスの頬を小さな手で包み込み彼の絡み合う口づけを受け入れて自らも返しつつ、見掛けよりも逞しく力強い男の体に己の小さな体を預ける。豊満な乳房がロクスの胸板に押しつけられて形を変え、ようやく名残惜しさを残しながら離れたふたりの唇には、お互いをつなぐ一筋の透き通った糸が音もなく伸びていた。
「シルマリル…いいだろ?」
「…はい……もう一度抱いてください。今度は混乱してる私のわがままじゃなくて…あなたが欲しいんです……。」
「そう言ってくれたら昨夜もつべこべ言わなかったんだけどな。
ほら、膝に来て。」
朝から求めてきた若い男の本能にシルマリルが頬なんて染めながら恥ずかしそうにうなずいて、ロクスにしがみついたまま彼の膝に跨った。ロクスの手はすかさずシルマリルの大きなふくらみを包み込み淫らな動きをしつつ揉みしだく。
ロクスが欲しいなんて少し戸惑いながらも口にした彼女の体はその言葉がスイッチになったかのように、彼を受け止めるその場所が潤った感触を感じていた。唇を求めなくなったロクスの悪い唇が白い女のうなじに這い、衣で隠れそうな胸元に、彼女の傷が刻まれている谷間ではなく、彼女の心臓のあたりに紅い花びらがふたつ、みっつと散らされる。
それは昨夜ヴァイパーがシルマリルに刻みつけた所有の印よりも紅く強かった。
「―――――んっ」
シルマリルの小さな手が、昨夜と同じにロクスのシルクグレイの髪に絡む。
胸の紅い蕾を男の唇と舌で責められ弄ばれて、天使の心を持つ少女の体が男の畳みかける愛撫の前に簡単に陥落した。続けざまにロクスの指が次の場所に伸びる、シルマリルの小さな体の中心を淫猥な動きでなぞりへそのくぼみで彷徨うみたいに指先で撫でて、ぬくもり宿す掌でそっと触れてシルマリルの細腰を抱き寄せた。
「あんっ!?」
シルマリルが甘い悲鳴を挙げた直後、ロクスに跨っている小さな体が弓なりに反った。昨夜彼を受け入れた谷間に何かが埋められた感触、ロクスの手はある意味力ずくでシルマリルの体をいいように動かし始めた。当然女性の体の中でもっともデリケートで敏感な場所が擦られてシルマリルの体は鋭く反応する。
「あ、ろ、ロクス、こすれるっ」
「いいだろ? 昨夜君が腰が抜けるまで味わったものだ。
しかしこんなに欲しいのはどれくらいぶりか…もしかしたら初めてかもしれないな。」
彼女の谷間に押しつけられたのはロクスのそれで、男を知ったばかりの少女の甘い蜜にまみれて猛々しく天を仰いでいるのをシルマリルは知らない。
「や、も、もうそんな…意地悪、しないでっ…」
「意地悪? 心外だな、君に喜んで欲しいだけなんだけど。
そう思われるのは致し方ないけど、とりあえず何も考えずに喜んでくれると嬉しいんだが。」
「あ?」
「じゃあお望み通りに入れてあげるよ、君の小さなここに。」
シルマリルの小さな体が男の腕に持ち上げられて、己の翼で舞うのとは違う浮遊感の直後、彼女は己の体重に手伝われる形でロクスをひと息で受け入れさせられた。短い戯れの間にシルマリルはすっかり準備が出来ていて、痛みどころか違和感すらも感じずに逞しい男性自身をロクスの言葉の通り小さな場所に飲み込んだ。
「すごいな、君はずいぶんと感じやすいみたいだ…いや僕らの相性がいいのかな?
君の中が狭くて熱くてたまらないよ…。」
ロクスは意地悪に唇をわずかに歪め笑いながら下から腰を突き上げるけど、彼は知っててやっているのか無意識なのか、言葉の愛撫も巧みで、耐性などあるはずもないシルマリルはその前に理性を簡単に崩壊させられた。力強い律動に彼女が逆らえるはずもなくされるがままに蜜壺をかき回されてすでに女としての彼女しか存在してなくて、翼をしまうことすら忘れた幼い天使が天使の姿のまま男に抱かれ昇りつめる。彼女の痴態にロクスは少々どころかかなり興ざめというか罪の意識を強く感じるんだけど、ここで躊躇してももう戻れないこともわからないほど自分に酔っているわけでもなくて――――開き直り小さな体をかき抱く。
長身だけど大柄と言うほどでもないロクスなんだけどシルマリルは人間の女性と見てもかなり小柄で、彼女の谷間の狭さは彼の言葉責めの中だけの話ではない事実で、ロクスは繋がって間もないのにもう表情から余裕をなくしてしまっていた。
「あ…あ……もっとゆっくりっ……痛い……」
「ん? ああすまない、乱暴だったか?」
「…っ…違…おなかの奥に…当たって……あぁっ!」
しかしシルマリルの「痛い」のひと言でロクスがつい装わない普段の彼の顔で詫びたけど、その理由らしき言葉を聞かされたなりに彼は再び邪な笑いを唇に浮かべて彼女の腰を抱きさらに激しく突き上げる。
「奥に当たって痛いの、か…体の小さい君らしい言葉だよ。本当たまらないなぁ。
ほらどうだ、奥の奥で味わう僕は?」
「待って…待ってもっとゆっくり……壊れちゃう…壊れちゃうぅ……ロクス私壊れちゃう!!」
壊れるなどと言いながら、シルマリルの表情は恍惚に染まっていてロクスは責める手を腰の動きをゆるめようとしない。そんな彼の座っているすぐそばには昨夜彼が咲かせた純潔が散った後の大輪の薔薇が何も語らずそこにあった。終わりが近づいてきたロクスはもう何も考えられずにその薔薇の上に繋がったままでシルマリルを横たえて覆い被さり男の終わりを求めさらに激しく、愛するシルマリルを壊してしまいそうな律動で彼女を容赦なく突き続ける。
「ロクス…ロクスいいっ…すごい……!」
すべてを忘れられるほどに強い快楽を与える男。精神的に満たされることで快楽に近い喜びを得る天使の心までも満たすことが出来る男もともに満たされる汚れた行為に、天使シルマリルはこの上ない喜びとこの上ない恐怖を同時に感じながら、彼女の勇者のほとばしりを己の膣と子宮で受け止めた。胎内で脈打つ男の余韻とこぼれて谷間から滴る白濁液の感触を覚えた彼女が、女の妖しい微笑を無意識のうちに浮かべた。
ロクスも放出の余韻と肉欲と征服欲が満たされた充足感を覚えながらも、愛しい天使の頬に髪に肩に首筋に雨あられと口づけを降らせた。
不安がないと言ったら嘘になる。しかし幸福感が今は勝っている。
シルマリルは図らずも得られた想いを寄せていた存在との情事と彼のくれる数々の気持ちに浮かれながら小さい町の通りを歩いている。
浮かれていても昨夜不埒者に引き裂かれた衣をそのままにはしておけなくて、ロクスは慣れない情事で疲れてぐったりしてしまったシルマリルの代わりに彼女の身を包む為の服を物色しに行ったけれど、ひとりで待てないほどに彼に首っ丈になってしまったシルマリルは言いつけを破ってこっそりと彼を追い宿を出た。
破れた衣を装身具を使い器用にごまかして引きずるほど長い裾も引きずらないくらいに端折りとことこと歩く姿は美しい少女のそれで、そんな彼女が幸せそうにほくほくと思い出し笑いなんて堪えきれずに浮かべて通りをゆくんだけれど、直後彼女を襲う不幸を、当然彼女は気づかない。
今の今まで通りを歩いていた美しい少女が、まだ開く前の酒場の扉の前にさしかかった次の瞬間、彼女は通りから姿を消した。
彼女の存在感はその小柄さで相殺されて、誰も不思議な神隠しに気づかない。
「ごきげんよう、間抜けで可愛い天使様。昨夜は失礼しました、と。
あんなことがあったのにひとりで表歩くなんざ、ホント感動するぐらい間抜けでいてくれて嬉しくなっちまったよ。」