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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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[8親子]ディア・マイ・ダディ 1

  • 2018/01/03 21:00
  • カテゴリー:FF


サプライズをするのが好きな人だから、される事も好きなのだ。
レインは、夫であるラグナをそう分析している。


新年を迎え、家族揃っての初詣も済ませ、息子娘の手伝いを貰いながら作ったお節も、そろそろ品が尽きて来る。
正月前にたっぷり買い溜めした冷蔵庫の中身も、少々心許なくなって来て、買い物に行かなくちゃ、と呟いたら、真っ先に長男が「俺が行くよ」と言った。
その瞳が意図している所を感じ取りながら、じゃあお願いね、と言うと、長男は直ぐにコートを羽織って出掛けて行った。
それから十分と経たない内に、ラグナがレインに「映画でも見に行かないか?」と言った。
珍しい申し出もあるものだと思っていると、どうやら娘からクジ引きで当てたと言う映画のチケットを貰ったらしい。
ついでに「おうちでゴロゴロしてばっかりだとだらけちゃうのよ」と言われ、母と一緒に出掛けるようにと促されたそうだ。
娘がくれたと言うチケットを見せて貰うと、クジ引きで当てたにしては妙で、指定の映画館で新春特別上映されるもので、見れる映画も座る席も決まっており、子供達が見たがるようなタイトルは含まれていなかった。
ラグナは娘の見たいものがないから、勿体ないからと言う理由で譲られたと思っているようだったが、レインは、いやこれは───と、娘が意図している所を感じ取り、何も言わずにじゃあ行きましょうか、と腰を上げた。
母にいつも抱かれている5歳の末っ子はと言うと、甘えたがるかと思いきや、姉と手を繋いで「いってらっしゃい!」と良い子で見送り。
そんな末っ子の意図する所もまた読み取って、レインは久しぶりに夫と二人きりで外出する事になった。

映画館が併設されているショッピングモールは、新春の福袋やらセールやらで大賑わいだ。
レインとラグナは、福袋目当てに並んでいる長蛇の列を素通りし、映画館へと向かう。
特別上映の映画を観ようと集まった客は多かったが、娘に貰ったチケットのお陰で、チケット売り場に並ぶ必要もなかった。
上映時間までの暇をグッズ売り場で潰して、子供達の土産にシャーペンやキーホルダーを買う。
その傍ら、ラグナはショッピングモールで擦れ違う人々の影を思い出しては、


「皆で来ても良かったなあ」


と、呟いた。

ラグナは家族揃って過ごす時間を愛している。
妻と二人きりでデートをするのも、勿論嬉しかったが、そんな時でも子供達の事は忘れない。
あいつらに見せてやりたいなあ、きっと喜ぶだろうなあ、といつも言うのだ。
その度レインは、そうね、今度は皆で来れたら良いわね、と答えている。

買ったグッズを忘れないようにと鞄に仕舞い、ロビーで五分ほど待っていると、開場時間になった。
席は指定なので慌てる必要もないと、のんびりと中に入って、指定席を見付けて年甲斐もなく赤らんだ。
カップルシートなんて、よくもまあ取ってくれたものだ。
良い年をして、と少々赤くなる顔を自覚する隣で、夫もまたカチコチと固まっている。


「これは、はは……なんか、うん。不思議って言うか、面白いって言うか」
「もう、あの子達……」
「仕方ないよな、クジ引きだもんな」


娘の狙いには相変わらず気付いていない様子の夫に、鈍いわねえ、と思いつつ、レインは緩む口元を隠す。

映画は十年以上も前に作られたタイトルで、当時の世代から絶大的な指示を得ているものだった。
レインは映画に殆ど興味がなかったのでよく知らないが、多趣味だったラグナはよく見ていたようで、この映画も知っていた。
他の世代でも有名である為、レオンとエルオーネも大まかな内容は知っている。
少々過激なアクションシーンがあるので、アクションヒーローものでも怖くて泣いてしまうスコールは、まだ見られないか。
子供達が大きくなったら一緒に見たいなあ、とラグナは言った。

カップルシートに座った事を強く意識していたのは、初めの内だけだ。
上映がスタートし、物語が大きく動き出すに連れて、ラグナとレインの距離は埋められて行った。
家のリビングでテレビを見ている時のような、子供達がいない為に一緒に暮らし始めたばかりの頃のような距離感で映画に没頭した。
お喋りなラグナが小声で「此処からが凄いんだ」「ほら、あそこ。窓に映ってる奴が」「今のシーンは前にあいつが言ってた台詞で」と解説するのを、レインは黙って聞いている。
時々「俺、煩いかな」と唐突に心配するラグナに、レインは「まあまあね」と言った後で、「それで、今のシーンはどう言う意味になるの?」と訊ねると、直ぐ嬉しそうに話し始めた。

大人向けのラブロマンスとアクションを織り交ぜた映画が終わった後は、ショッピングモール内のカフェに入った。
夫と二人きりでカフェなんて、何年振りだろう。
デザートセットを前に、見てきたばかりの映画について語る夫を眺めつつ、レインはそんな事を考えていた。


「───それで最初の台詞に繋がるんだよ。父親の言葉が、ちゃんと息子に受け継がれているって判るシーンになるんだ」
「ふぅん。思春期の時には受け入れられなかった言葉が、年を重ねて、父親の気持ちも判るようになったって言う事なのね」
「そうそう。ああ、あんな父親になりたいなーって思ったよ。父親も渋くて良い奴だし。こう、言葉で語らず、背中で語るって凄いよな!でも俺には難しいな~」
「言葉ばっかりだもの、貴方は。でも良いじゃない。レオンもエルも、スコールも、貴方のお喋りな所が好きだから。急に黙ってる事が増えたりしたら、病気にでもなったんじゃないかって心配されるわよ、きっと」


ラグナのお喋り好きは、生来からのものだ。
彼がいるから、一家はいつも賑やかで笑い声が絶えない。
時にレオンが呆れたり、エルオーネが怒ってイタズラしたり、スコールがテンションについて行けずに泣いたりする事もあるが、皆父の明るい性格を愛している。
確かに、不言の背中は男として憧れるのかも知れないが、お喋りな背中であっても良いだろう。
それだからこそ、子供達は父を好いているのだから。

デザートセットのプリンはとろりとした甘さで、コーヒーとよく合った。
デザートのラインナップは、プリンやヨーグルトの他にケーキもあり、基本のショートケーキやチョコレートケーキの他にも、フルーツタルト等種類が豊富で、コーヒー類も多様。
子供の用のチェアもあったので、今度は皆で来るもの良いかも知れない。


「エルはケーキ好きだよなあ。スコールも」
「そうね」
「此処に来たら喜ぶだろうな。レオンは最近、あんまり甘いもの食べないよな?」
「昔よりはね。でも、食べてない訳でもないわよ」
「ケーキを買う時、レオンは何が良いかなあっていつも迷うんだよ」
「見た目が可愛いものとかは、エルやスコールに譲っちゃうしね」
「うんうん。良いお兄ちゃんしてるよな~。でも、もうちょっと甘えてくれても良いのにな」
「あら、意外と甘えて来る事も多いのよ。私には、だけどね」
「えっ、そうなのか。ずるいぞ、レイン。エルもスコールもレインが一番だし、俺寂しいよ」


よよよ、と泣いて見せるラグナ。
レインはそれに対し、そう言う所の所為じゃないかしら、と揶揄った。


「───それは冗談だけど。仕方がないわよ、もう13歳だもの。思春期よ」
「うっ。そうかあ…そうだよなあ……俺、レオンに嫌われたりしないかな」
「大丈夫、大丈夫。きちんと節度を持って接すれば───多分。ね」


不安そうな夫に断言出来ないのは、レインとて同様の不安や戸惑いもあるからだ。
何せレオンは二人が初めて授かった子で、何をするにも、彼から始まる所がある。
それはレオンの成長に欠かせない事であると同時に、両親にとっても一つの試練であった。

ニュースで報道される事件や、ドラマで度々描かれる家族間の衝突に、ラグナは非常に敏感だ。
特に最近は、中学生になって良くも悪くも繊細な時期になる長男と照らし合わせる事が多いようで、見えない不安が尽きない。
しかし、焦り不安になるばかりでは、どうにもならない事も事実。


「ちゃんと向き合って、ちゃんと話し合えば、きっと大丈夫よ。レオンも貴方の事が好きだから」
「そうかなあ。そうだと良いな。うん、そうなるように頑張ろう」
「そうそう。それに、レオンの後にはエルがいて、それからスコールもいるのよ?しっかり心構えしていかなくちゃ」
「心構えか。よし、頑張ろう。………でも嫌われる心構えなんて出来ねえよ~」
「何も嫌われる前提で考えなくても良いんじゃない?」


子供達の事になると、妙にセンチネルになる夫に、レインは眉尻を下げながら言った。


「大丈夫よ。ケンカになる事だってあったりもするかも知れないけど……あの子達が貴方を嫌いになる事なんて、きっとないから」
「……そっか?」


確かめるように問うラグナに、レインはしっかりと頷いた。
そうでなければ、今日と言う日は────とは口にせずに。

ラグナが少し安心した表情を浮かべた所で、二人はカフェを後にした。
ショッピングモール内は、新年で子供を連れて里帰りしている家族の姿も増え、一層賑わっている。
折角なので少し二人でぶらついて、子供達の土産にイベントフロアで売られていた菓子を買った。
クリスマスにも何か買っていたような、とレインは思ったが、気にするまい。
きっと今頃、頑張っているであろう子供達へ、労いにでもなれば良い。

午後をたっぷりとショッピングモールで過ごし、そろそろ夕飯の準備の時間が気になる所で、二人は帰る事にした。


「途中でどっか寄って帰るか?」
「そうね……」


レインは携帯電話を取り出して、時間を確認しつつ、メールを開く。
其処には、息子から一通のメールが届いており、それを流し見ながら、


「少しスーパーに寄ってくれる?」
「晩飯か?レオンが買いに行ったんじゃなかったっけ」
「そうなんだけど、買い忘れてたものがあったみたい」
「珍しいな。いつものスーパーの当たり、ちょっと混みそうだけど、大丈夫か?」
「ええ。ゆっくりで良いわ」


寧ろ、ゆっくりでお願い、とレインはこっそりと思う。
その方が、子供達も焦らずに準備を済ませる事が出来るだろう。



ドアを開けた時、子供達はどんな顔で迎えてくれるだろう。
その時、ラグナはどんな顔をするだろう。

楽しみだなあ、と思いつつ、レインは鈍感な夫に隠れてくすりと笑った。




≫2

ラグナ誕生日おめでとう!
妻とのデートの傍ら、子供達が何をしていたのかは、続きにて。
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[8親子]ディア・マイ・ダディ 2

  • 2018/01/03 21:00
  • カテゴリー:FF


母が買い物が必要だと言ったので、自分からそれを引き受けた。
それは平時からよく見られる光景ではあるのだが、頼まれるより先に挙手をした事には、理由がある。

行き付けのスーパーは、正月三が日の内、二日目まで休みだった。
今日が開いてて良かった、と思いつつ、レオンは頼まれた商品を一通り買い物籠に入れ、最後に自分の目的のものを手に取った。
母には後で代金を渡すとして、取り敢えずはまとめてレジを通し、帰路を急ぐ。

マンションまで戻ると、レオンはぽかりと空いた駐車場を見て、両親が予定通りに出掛けた事を知る。
駆け足で階段を上り、幼い妹弟が留守番をしているであろう家の玄関を開けると、


「レオン、お帰り!」
「おにいちゃん!」


玄関で待っていたのかと言うタイミングで、エルオーネとスコールの声が重なった。
どん、と抱き着いて来た弟を受け止めつつ、「ただいま」とレオンも応える。

ドアに鍵を掛け、冷える玄関先からいそいそと逃げて、レオンは買い物袋をキッチン台に置いた。
先ずは母に頼まれたものを冷蔵庫に入れる作業を済ませる事にする。
その間に、エルオーネが学校の家庭科の課題で作ったエプロンを取り出して身に着けた後、今日の為にとレオンが購入して置いたスコール用の子供用エプロンも取り出す。
自分ではまだ上手く出来ないであろうスコールに、エルオーネがエプロンを着せてやった。

隙間が増えていた冷蔵庫がまた埋めた後、レオンも自分のエプロンを取り出す。


「よし。準備は良いか?」
「うん!」
「はい!」


兄の確認に、両手を握って気合を入れる妹と、手を上げて張り切る弟。
そんな二人を見て、レオンもよし、と頷いた。


「先ずは材料の確認だな。これがスポンジ。ケーキの土台だ」
「どだいって何?」


レオンが買って来たばかりのスポンジケーキを見せると、スコールがきょとんと首を傾げる。


「ケーキの中にあるものだよ」
「ケーキの中……?」
「いつも食べてるケーキ、中に黄色いのがあるでしょ。ふわふわしてる所。あれがコレなんだよ」


知らない事ばかりの弟に、エルオーネが説明した。
スコールは、ふえー、と不思議なものを見る顔で、スポンジ生地を見詰める。

レオンはスポンジの入った袋をキッチン台に置いて、ホイップクリームの箱を開けた。
中には既にデコレーション用に固められたホイップが絞り袋に詰めて納められている。


「これが生クリーム」
「生クリーム!あまいの!」
「これでスポンジをケーキにして行くんだぞ」
「やりたい、やりたい!」
「まだだよ、スコール。材料の確認が先なの」


ちゃんと全部確認しなくちゃと言う姉に、スコールは待ち遠しそうな顔で兄を見る。
レオンはくしゃくしゃとスコールの頭を撫でて、ホイップクリームは箱に戻して冷蔵庫へ入れる。
なんでしまっちゃうの、と言うスコールに、冷やして置いた方が良いんだよと答えた。

それから野菜室に入れていたイチゴのパックと、蜜柑の缶詰を取り出す。


「イチゴと蜜柑。ケーキの中に挟むのと、上に乗せるのに使うぞ」
「いちご、いちご!」
「えーっと、最初は……イチゴを洗う?」
「ああ。それから、蜜柑の水切りか。エル、蜜柑は頼んで良いか?」
「うん」
「ぼくは?ぼくは?」
「スコールは一緒にイチゴを洗おう」


キッチン上の棚からボウルを三個取り出しながら、レオンは言った。

エルオーネが蜜柑の缶詰とボウルを二つ受け取り、缶詰の蓋を開ける。
プルタブ付きの缶詰なので、エルオーネでも簡単に開けられた。
指を切らないように注意しつつ、エルオーネは蜜柑をボウルの一つに移して、箸を使って蜜柑とシロップを分ける作業を始める。

その隣で、レオンは水を張ったボウルにイチゴを入れて、食卓テーブルへと移動した。
キッチン台は四歳のスコールにはまだ高いので、食卓テーブルの方に踏み台を使って作業するのだ。


「いちご……」
「食べちゃダメだよ、スコール」
「んぅ」


ちゃぷちゃぷと水の中でイチゴを泳がせながら、じっと見詰めるくりくりとした瞳に、エルオーネがすかさず注意した。
スコールはむぅと唇を尖らせつつ、つまみ食いは良くない事と思ってもいるので、我慢してイチゴを洗い続けた。


「水つめたいー」
「指先、痛いか?無理しなくても良いぞ」
「んーん、へいき」
「そうか?じゃあ……水から上げて。こっちのザルに移して」


水受け用の深皿の上にザルを乗せて、レオンが促すと、スコールは小さな手でイチゴを落とさないように掬い拾いながら、ザルへと移していく。

スコールがイチゴのヘタを取る傍ら、レオンはキッチンへと移動して、エルオーネと場所を交代して貰った。
キッチン台にまな板と包丁を並べ、スコールがヘタを取ったイチゴを運び入れ、数個を薄くスライスする。
残りはヘタのあった所だけを少し切り落として、空のボウルに移しておいた。

蜜柑を実とシロップで分け終えたエルオーネが、二つのボウルを持ってキッチンへ戻って来る。


「レオン、これ、どうしよう。シロップって使わないよね?」
「そうだな……うーん……カップか何かに移して、冷蔵庫に入れておこう。後で母さんに相談してみる」
「はーい」


勿体ない精神も相俟って、捨てる気にはなれないのは、エルオーネも同じだった。
母は昔から菓子を作るのが得意で、シロップを使った菓子やジュースも作ってくれた。
子供達だけでは使い道のないものでも、何かに活用してくれるかも知れない。
美味しい物に化けてくれる事を祈りつつ、エルオーネはシロップを陶器のカップに移して、ラップで閉じた。

イチゴのヘタを取ってから、出来る事がなくて眺めているだけだったスコールが、うずうずとした様子でレオンのエプロンの端を握る。
見上げる瞳が「ぼくは何をしたらいいの?」と期待を込めているのを見付け、レオンはくすくすと笑って、


「これで飾りに使うものは準備できたし。ケーキの飾りつけを始めるか」
「かざり!ぼくやりたい!」
「リビングでやろう、レオン。まな板、向こうに持って行っていい?」
「ああ」


スコールも作業が出来るように、リビングの食卓テーブルを使おうと言うエルオーネ。
テーブルを汚さないようにまな板を持って行くエルオーネと、それを追って行くスコールを見送りつつ、レオンはキッチンの引き出しを開ける。


(ええと、確か……これを使っていたような)


レオンが取り出したのは、レインが使っているパレットナイフだ。
普段の料理で使う所は殆ど見ないが、子供達の為にケーキを作っている時に使っているので、恐らくこれで良い筈。
始めて使う道具なので自信はないが、多分、なんとかなるだろう、と自分に言い聞かせる。

冷蔵庫で冷やしていたホイップクリームの絞り袋を取り出し、リビングへ。
そわそわとしているスコールと、そんなスコールに落ち着いて待つように言いつつも此方も楽しみなのであるエルオーネの様子に、レオンの口元に笑みが浮かぶ。

スポンジ生地の袋には、「ケーキのデコーレションの仕方」とイラストつきの解説が書かれている。
レオンはそれを参考にし、先ず一番下になる一枚目にクリームを絞り出し、パレットナイフでクリームを塗り拡げた。


「これで、此処にイチゴを挟んで」
「ぼくやりたい!」
「じゃあ、スコール。頼んだぞ」
「うん!ねえ、ミカンも使って良い?」
「ああ」


レオンはまな板ごとスポンジ生地をスコールの前に移動させる。
スコールは兄がスライスしたイチゴを、端から順に均等に並べて行く。
丸いケーキに対し、縦横綺麗に並べられるイチゴと蜜柑の列を見ながら、中央から並べると良いんだったかな…とレオンは思うが、黙っていた。
スコールは楽しそうだし、その横で上下の隙間に小さなイチゴを並べて行く妹も楽しそうにしているので、一々止めるような事でもないだろう。

イチゴを並べ終わると、その上に生クリームを絞り出して、またパレットナイフで塗り拡げる。
二段目を乗せ、同じ作業を繰り返しつつ、蓋をするように三段目を乗せた。
平らな表面に生クリームを塗り終えた所で、側面を塗ろうとするレオンであったが、


「おにいちゃん、ここ生クリームない」
「ん、何処だ?」
「ここ」
「これ、生クリーム足りるかな?」
「どうだろう。結構難しいな……」


上手く埋まらない隙間を塗り足ししていく内に、絞り袋の中身が減って行く。
あまり使ってしまうと、上部のデコレーションに使うクリームが足りなくなってしまう。

デコボコとしている側面の不格好さに眉根を寄せていたレオンであったが、仕方ない、と割り切る事にした。
母ならきっと綺麗に埋められるのに、と思いつつ、彼女は父と一緒に出掛けているのだから頼る訳にも行かない。
第一、子供だけで頑張ろうと決めたのは、他でもない自分たち自身なのだから。


「上の方は、えーと……生クリームが先かな?」
「あっ。あのね、レオン。私、デコレーションの絵、描いてたんだ。持って来るね」


何処から手を付けようかと首を捻るレオンに、エルオーネが思い出したと言ってテーブルを離れた。
寝室へ駆け込んだ彼女は、しばらくすると戻って来て、一枚の紙をテーブルに置く。
其処には、ケーキのデコレーションデザインが描かれていた。

相当大きなケーキを想定していたのか、描いている内に楽しくなったのか、デコレーションは隙間なく細かく描かれている。
流石にこれ全てを再現するのは難しい───と言うのはエルオーネも判っているようだ。


「えっとね、真ん中がチョコのハッピーバースデーの奴で。イチゴとミカンで、ぐるっと円にして囲んで」
「ふむふむ」
「外側がツンツンってしてる、生クリームので。出来るかな?」
「やってみよう。真ん中は……目印つけても大丈夫かな」


レオンは凡その中心を、パレットナイフの先端で軽く撫でた。
薄らと筋が入っている其処を中心に、三人でイチゴと蜜柑を交互に並べて円を作る。


「ケーキっぽくなってきた!」
「イチゴ足りる?」
「なんとか……よし。次は縁を生クリームで」
「あっ、レオン。私もそれ絞るのやりたい!」
「ぼくも、ぼくも!」


ねだる妹弟に、そう言えば自分が絞ってばかりだなとレオンも思い出す。

じゃあ軽く手本だけ、と縁を一ヵ所デコレーションすると、エルオーネもスコールもじっとそれを見詰めて観察する。
失敗したら格好がつかないな、と思いつつ、なんとか崩れない程度には均一なツノを作る事に成功した。


「じゃあ、まずエルオーネだな」
「はーい。ん……しょ。こうかな」
「おねえちゃん、上手ー」
「んふふ」


弟に拍手ですごいすごいと言われ、エルオーネはほんのりと頬を赤くした。
頑張らなきゃ、と気合を入れ直して、エルオーネは縁の半分までデコレーションを進めて行った。
レオン程均一なツノではないものの、それも味と言うものだ。

絞り袋がスコールへとバトンタッチされる。
握り方も覚束無いスコールに、レオンは自分の手を重ねて、掴む所と使い方を教えてやった。


「このまま右手でちょっとずつ押して」
「ん、ん」
「もうちょっと強くて良いぞ」
「んん……んひゃっ」


おっかなびっくりと言う様子で絞り袋を押していたスコールだったが、兄に促されて入れた力が、思いの外強かった。
びゅっ、と出てきた生クリームぼ塊に、ひっくり返った声を上げる。
兄と姉が綺麗に作ったツノの横で、ぽっこりと膨らんだツノに、あうあうと泣きそうな顔をしているスコールに、レオンはくすくすと笑って宥める。


「大丈夫だ、スコール。こうやってゆっくり離せば、……ほら」


隣のクリームとは二回りほど大きな小山に、ツンとツノが立つ。

二度、三度とスコールはより慎重になって、クリームを絞り出して行く。
スコールがその作業に集中しているのを見て、レオンはそっと添えていた手を離した。
スコールは自分の作業に一所懸命で、兄に手が離れた事には気付いていないらしく、そのまま四分の一まで埋めて行く。

生クリームもなんとか足りてくれて、最後はレオンが絞り、縁のデコレーションは終わった。
均一なツノ、少し歪なツノ、バラつきのあるツノと、誰が何処で作業を請け負ったのかがよく判る。
皆で作った、と言う事が判る証のようで、レオンはそれが嬉しかった。

最後に買っておいたチョコレートのメッセージプレートを乗せて、完成。


「出来た」
「できたー!」
「たー!」


ふう、と安堵も混じる息を吐いて言ったレオンに、エルオーネとスコールが万歳で続く。
喜ぶ二人がハイタッチして、兄にも手を向ける。
少し気恥ずかしさを感じつつ、レオンも二人の手にそれぞれ自分の手を重ね合わせた。


「えへへ~。お父さん、喜んでくれるかな?」
「絶対喜ぶよ!ね、レオン」
「ああ。いや、それよりびっくりするかも知れないな」
「びっくり!びっくりしてほしい!」


スコールは興奮した様子で、レオンのエプロンに抱き着き、きらきらと瞳を輝かせる。
今から父の驚いた顔を想像しているのだろう、幼子の顔は興奮と期待に満ちていた。

レオンは弟の頭を撫でて、エルオーネとスコールに片付けを促した。
ケーキは買っておいた箱に移して───デコレーションで重くなっており、包丁で持ち上げ動かすのが大変だったが、なんとか出来た───、冷蔵庫に納めて置く。
後は両親の帰りを待つのみ、と母の携帯電話に「色々終わった。今片付けしてる」と言うメールを送る。
直ぐに「分かりました」と言う簡素な返事が届き、レオンは携帯電話をズボンのポケットに締まって、洗い物をしている妹弟へと合流した。



洗い物も終わり、エプロンも全て洗濯機に入れて、一段落していた頃。
母からのメールで、今から上に上がります、とマンションの駐車場からと思しきメールが到着した。

玄関のドアが開くのを今か今かと待つ子供達の手には、クラッカーが握られていた。





ラグナ誕生日おめでとうで子供達の様子。
うちの地域は年始に開いているケーキ屋があまりないので、子供達に頑張って貰いました。

まずクラッカーとお誕生日おめでとうに。
それから映画のチケットが兄妹がお金を出しあって買ったと聞いて。
最後にケーキを皆で作ったと聞いて。
ついでに、察していたけど子供達の気持ちを汲んで黙っていた妻に。
びっくりの連続+子供達の成長に泣きながらケーキを食べるラグナでした。
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[絆]メリークリスマス!

  • 2017/12/25 21:32
  • カテゴリー:FF
メリークリスマス!
と言う事で絆シリーズで久しぶりにクリスマスを。

[サンタクロースはやってくる?]
[フロム・ディア・サンタクロース 1]
[フロム・ディア・サンタクロース 2]


ラグナの影響もあって、レオンとエルオーネは年中行事を結構楽しく過ごしています。
そんな兄と姉と一緒にいるので、スコールとティーダも、プレゼントやお菓子が貰えるお祭りはとても楽しみにしてる。
サプライズを計画するのは大変だけど、ちびっ子達の喜ぶ顔を見ると、良かったなって思えるお兄ちゃんお姉ちゃんです。

だから時々不意打ちされてビックリする。
そして弟達の成長を実感するんです。
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[ヴァンスコ]明日への願い、緩やかに

  • 2017/12/08 23:00
  • カテゴリー:FF


日々の疲れが出たのか、其処に畳み掛けるように急激な冷え込みが襲い掛かった所為だろうか。
昨夜から熱っぽいと自覚したスコールは、出来る限り暖かくするように努めて眠ったのだが、免疫力の落ちた体は、簡単に元には戻ってくれなかった。
翌朝、スコールは足元がふらつく程の熱を出し、セシルやルーネスから「今日明日は大人しくしておく事」と言うお達しを食らう事になる。
多少の体調不良なら隠してしまうスコールも、まともに視界が保てない程の熱とあっては、大人しく甘受する他なく、行動を共にする予定だったジタンとバッツに断りを入れて、直ぐに自分の部屋へと戻った。
とにかく寝て養生するのが、回復への一番の近道である。

朝食は食べる気になれなかったのだが、何も食べないのは良くないとフリオニールに諭され、スープだけを貰った。
野菜の栄養が溶け込んだスープを、皿一杯分の半分だけ食べるのが精一杯だったが、そのお陰だろうか。
部屋に戻って眠ったスコールが目を覚ました時、身体の重みは随分と楽になっていた。


(……結構寝たみたいだな……)


首だけを動かし、ベッド横のサイドテーブルに置いた時計を見ると、短針が天辺を指している。
辺りは静かで、仲間達は各自の予定に出発しているのだろう、人の気配はしない。
身体を起こして窓のカーテンを持ち上げ、外を見ると、きんと冷えた空気に包まれた屋敷の外が見えた。

窓ガラスから滑り込んでくる冷気に、ぶるっと背中が震えた。
スコールはカーテンを閉めると、椅子の背凭れに放っていた上着を取って羽織る。

腹が減ったな、と思った。
朝は食欲がなかったので胃に物を入れる気にならなかったが、僅かに熱が引いた体は、一転してエネルギーを求めている。
誰もいないのなら自分で用意するしかない、とスコールがベッドを降りようとすると、ガチャ、とドアが開く音がした。


「お。起きてた」


片手にトレイを持って入ってきたのは、ヴァンであった。
ヴァンはベッドで起き上がっているスコールを見付けると、嬉しそうに目を輝かせて部屋に入った。

ヴァンはサイドテーブルにトレイを置くと、スコールの額に手を当てた。
自分の額にも同じように手を当てて、両者の体温を測っている。
うーんと、と考えているヴァンを見上げて、スコールは言った。


「……ヴァン、あんた、残ってたのか」
「うん。誰かが世話しなきゃいけないだろ?だから俺が残った。……うん、ちょっとだけ熱下がったみたいだな」


検温を終えると、ヴァンはトレイを指差し、


「昼飯、作ったんだけど、食欲あるか?」
「……一応。朝よりは、食べれると思う」
「じゃあ良かった」


スコールの言葉にヴァンは安心したように笑って、ベッド横に置いていた小さな椅子に座ると、トレイに乗せていた小さな土鍋の蓋を開ける。
中身は蒸かした豆を加えた粥で、ついさっきまで温めていたのだろう、ほこほこと温かな湯気が上っている。

ヴァンはレンゲで粥を軽く混ぜると、一掬いして、ふーふーと息を吹きかける。
粥から程良く熱を逃がしてから、ヴァンはそれをスコールに差し出した。


「ほら、スコール」
「……待て」
「ん?」


当然のような流れで差し出されたレンゲを、スコールは胡乱な目で見ていた。
ヴァンはそんなスコールを見て、きょとんと首を傾げる。


「……自分で食べれる」
「そうか?でも、朝は凄くフラフラしてただろ。スープ飲んでる時も倒れそうだったし」
「…今朝はそうだったけど、今は其処までじゃない。起きていられるし、食事位自分で出来る」


そう言って、スコールはサイドテーブルからトレイを取り、ベッドヘッドに背中を預けて、トレイを膝の上に乗せた。
ヴァンが手に持ったままのレンゲを見て、寄越せ、と手を出すと、ヴァンはしばらく考えるように間を開けた後、スコールの手にレンゲを渡す。
スコールはレンゲに乗っている粥を口に入れ、ゆっくりと咀嚼した。

黙々と食べているスコールを、ヴァンは横でじっと見ている。
背の低い丸椅子に座り、足に頬杖をついて此方を観察してくる鶸色の瞳は、くりくりと丸っこい。
気になる事があると直ぐに観察に入る瞳に曝されているのは、スコールは少々―――かなり―――落ち着かなかったりするのだが、見るなと言っても「なんで?」と見てはいけない理由について説明を求められるので、其方の方が面倒だと、スコールは食事を食べる事にのみ終始していた。

粥に入った米は柔らかく、豆の味付けも兼ねているのか、少し塩が入っていて美味かった。
朝食が食べていないようなものだったので、スコールの胃袋は空っぽになっており、其処に流し入れても負担にはならない。
病人食として最適でありながらも、病気じゃなくても食べても良いかも知れない、とスコールは思う。

土鍋の中身は綺麗に空になり、スコールの腹も満たされた。
トレイをテーブルへ退けて、ふう、とベッドヘッドに寄りかかる。


「…ご馳走様」
「ん。一杯食ったなー。腹減ってた?」
「……まあ……」
「そっか。じゃあ良かった」


食べれる元気があるのは良い事だ、とヴァンは言った。
確かに、食べる元気もないのは、それ程に状態が悪いとも言えるから、食欲があるのは良い事だろう。


「そうだ、飯食えたんなら薬も飲まなきゃな。バッツが調合して行ったんだ」
「…バッツが……」


仲間達の専属薬師的なバッツ特性と聞いて、スコールの顔が微かに強張る。
彼の薬の知識はあらゆる場面で重宝されるのだが、使う材料や、飲む際の味等に非常に不安があるのだ。
良薬口に苦しとは言うものの、ある程度の飲み易さは考慮して欲しい、と言うのは、カプセルやタブレットの類に馴染んでいる者の切なる願いであった。

ヴァンがトレイの隅に置いていた、スコールが判っていつつ無視をしていた四つ折りの薬包を開く。
何種類かの薬草を混ぜて磨り潰したのだろう、薄緑色の粉が包まれていた。
その色を見て、まあまだ飲める色だ、とスコールはひっそりと安堵する。
以前ジタンが飲んでいた赤紫色の薬は、スコールから見ると危ない薬にしか見えなくて、躊躇なく飲んだジタンを称賛した程のきつい色をしていた。
それと比べれば、サプリメントのようなものと素直に受け入れる事も出来る。


「スコール、薬が苦手なんだろ。飲み易くしといたってバッツが言ってたぞ」
「……別に苦手な訳じゃ……」
「ほい、水」


苦手なのはバッツが調合した薬であって、薬全般は特に苦手としているつもりはない―――のだが、ヴァンは聞いていなかった。
マイペースに水を差し出すヴァンに、スコールは一つ溜息を吐いて、それを受け取る。

薬包から薬を零さない様に、挟んで飲み易く口を作っておいて、水を口に含む。
上を向いて開けた口に薬を流し込んで、スコールはそれが口内で溶けない内に飲み下した。
直後、舌に残る苦味と、喉の奥に残って上ってくるえぐみに顔を顰める。


「う……」
「水、まだ飲むか?」


スコールが頷くと、ヴァンはピッチャーの水をグラスに注いだ。
はい、と差し出されたそれを奪うように取って、口の中に残った嫌な味を消すように、水を飲み干していく。

一杯分の水を飲み切って、スコールはようやくほっと息を吐いた。


「は……やっぱり、不味い……」
「飲み易くしたって言ってたけど、やっぱり不味いのか?」
「…あいつの“飲み易い”は他人とは基準が違うんだ」


バッツの薬に関する仲間への配慮は、主に口の中に入れ易いように、飲み込み易いように、と言う方向にある。
スコールとしては、それも良いが、口の中に入れた瞬間に広がる、形容しがたい不味さをなんとかして欲しかった。
ジタンやジェクトが「不味い!」「飲めない!」と抗議した事があるので、一応、バッツなりに気を遣って調合してはいるようだが、効果を優先すると、どうしても不味さが一歩リードするようだ。

―――と、思う事はあるものの、バッツの薬には非常に世話になっている。
作って貰う立場で文句ばかりは言えない、と、飲めない程の不味さにならない限りは、スコールは閉口して大人しく口に入れるようにしていた。
だが、味わう度に、もう次は世話になりたくない、とも思う。

水のお陰で口の中は少しすっきりしたが、喉奥の苦々しさは中々消えない。
戻ってきそうだ、と喉を摩っていると、ヴァンが言った。


「なあ、甘い物、食べるか?」
「……甘い物?」
「果物とか。リンゴが剥いてあるんだ。食べれそうなら持って来ようと思ってたんだけど、どうだ?」
「……欲しい」


スコールが求めると、ヴァンは「じゃあ取ってくる」と言って席を立った。
ヴァンはすぐに部屋から出ようとして、あっと声を上げて戻ると、サイドテーブルのトレイを取り、改めてドアを潜っていった。

ヴァンが戻ってきたのは一分の経たない内である。
手に持った皿には、櫛形に薄く切ったリンゴが綺麗に円を描くように並べられていた。


「皮付いたままなんだけど、良いか?リンゴの皮剥きってちょっと苦手でさ、省いたんだ」
「……あんたが切ったのか?」


差し出された皿を受け取って、スコールはリンゴを見詰めながら問う。
ヴァンはそれに「うん」とだけ答えて、椅子に座る。

リンゴは殆ど均一な厚みで切られており、食べ易く消化もし易いだろう。
それを見るに、料理に慣れたフリオニールやティファ、マメな性格のルーネスあたりが作って行ったと思っていたのだが、ヴァンが作ったとはスコールは思ってもみなかった。
どちらかと言えば大雑把な所があり、リンゴや梨と言った果実は丸齧りにしている印象の強いヴァンが、こんなに丁寧な櫛切りが出来るとは。

意外な事を見付けた気持ちで見ていると、ヴァンが皿のリンゴを一切れ取り、ぽいっと自分の口に入れ、


「美味いぞ、このリンゴ。別に腐ってないって」
「……いや。そう言うつもりで見てたんじゃなくて」
「?」


じゃあなんだ?とヴァンが首を傾げる。
スコールは、言っても良いものかと思いつつ、小さな声で言った。


「…あんたがこういう事が出来ると思ってなかったんだ。普段、食事当番でも、こんな事してないだろ」
「そうだっけ。そうだな。だって人数が多いからさ、つい面倒になるんだよ」
「……まあ、な」


10人越えのメンバー全員の食事を作るのは、中々の重労働だ。
となると、様々な手間と時間を省く為、幾つかの作業を簡単にして作業時間の短縮を図るのも判る。


「それはスコールの分だけ作れば良かったから、ちゃんとしようと思って。粥もちゃんとやったんだ」
「あれも?」


先程食べたばかりの粥の味を思い出して、スコールは目を丸くした。
食べ易い米の固さと、適度な塩気で食欲を促していた豆粥。
てっきり今朝の食事当番だったフリオニールが作って行ったと思っていただけに、スコールは驚いた。

目を丸くしているスコールに、ヴァンは言った。


「病人食を作るのは慣れてるんだ。ずっと作ってた事があったからさ」
「……そう、なのか」
「でも久しぶりに作ったから、上手く出来るかちょっと不安だったけど。全部食べれて良かったよ」


そう言って、ヴァンは嬉しそうに笑って、もう一つリンゴを口の中に入れた。
病人用に切ったのだろうに、自分でほいほい食べるなよ、と思いつつ、スコールもリンゴを食べる。
水分をたっぷり含んだ果肉がしゃりしゃりと音を立て、スコールの喉を甘味で潤していく。

持ってきたリンゴは、ヴァンと分け合う形で、綺麗に平らげた。
腹も膨れ、薬も飲んで、甘味も取ったお陰か、スコールの体から、今朝の重みは殆ど消えている。
とは言え、油断も無理も出来ない事には変わりなく、もう一度眠ろうと布団に潜っていると、


「また寝るのか?」
「…眠くはないけど、治ってもいないからな。寝て治す。世話になった」


スコールの言葉に、ヴァンは「うん」と返した。
返したまま、椅子に座ってじっと此方を見ている。


「…あんた、あまり此処にいると伝染るぞ」
「うん」
「……何かあったら呼ぶから」
「うん」


いつまでも此処にいなくて構わない、と言うつもりでスコールは言ったのだが、ヴァンは動かなかった。
スコールの遠回しな言葉の裏を読み取っていないのか、判っていながら気にしていないのか。
気にしていないとしても、いつまでも此処にいる必要はないだろう、とスコールは思うのだが、ヴァンはじっと此方を見ているだけであった。

ヴァンは基本的にマイペースで、自分のやりたいようにやる事が多い。
スコールにしてみると、空気の読めない奴、と言う印象で、出逢ったばかりの頃は自分の調子が崩されるので苦手だった。
しかし、悪意や敵意を持ってそれをしている訳ではなく、ただ彼自身は自分の気持ちに正直なだけなのだと思うと、邪見にする気にもなれない。

取り敢えずスコールは、寝返りを打ってヴァンに背を向けた。
もぞもぞと布団を手繰り寄せ、向けられている視線から隠れるように、枕に顔を埋める。
スコールが完全に寝る為の態勢に入ると、それを見ていたヴァンから、


「早く治るといいな」


な、スコール、と名前を呼ばれたが、スコールは返事をしない。
妙にくすぐったい気分を隠したまま、早く寝て、早く治そう、とスコールは目を閉じた。




12月8日なので、ヴァンスコの日!

何かとマイペースなうちのヴァンですが、面倒見は良い。
病人を看護する事について、ヴァンは色々と思う事がありそうだな、と思いつつ風邪っぴきスコールの世話をさせてみました。
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[シャンスコ]本日自習につき

  • 2017/11/08 20:40
  • カテゴリー:FF


闘争の世界に置いて、物資の調達は決して難しいとは言えない。
食料品諸々と言った日々の生活に必要なものは、多くがモーグリショップで仕入れる事が出来るし、エリアは限定されるが、飲食可能な自然物も数多く確認されている。
イミテーションは食えないが、魔物や獣は捌けば食べられるし、水も濾過すれば飲める。
畑のような世話が必要なものを見ている余裕はないので、折々に不足する事はあるものの、代替品は探せば一応見付かった。
薬や包帯は、これも殆どモーグリショップを頼っているが、幸いにもバッツを始めとした調合に心得のある者がいるので、薬草の調達さえ出来れば用立てする事も可能である。

その為、闘争の世界に置いても、あまり物資の不足と言うものを感じる機会は少ない。
秩序の戦士は比較的自立性の高い者や、サバイバル生活をある程度想定した訓練を受けている者もいる事もあって、急場を凌ぐ事も出来ると言う事もある。
元の世界の環境と言うものに差異があるので、その知識や経験にも差はあるのだが、幸い、秩序の戦士はその擦り合わせにも苦のない者が多い。
理論建てた技術知識と、その身で体験している者の知識を合わせれば、十分に日々の生活を賄う事も可能であった。

とは言え、儘ならない事が起きない訳ではない。
特に、日々の生活用品と言いつつも、趣向品の類は調達が難しい事がある。
例えば成人男性陣が囲む事を好むアルコール品は、モーグリショップでも扱っているタイミングや数が限られており、一度売り切れてしまうとしばらく入荷は見込めない。
皆が調達して来た果実を使って発酵酒を作る事も出来るが、これには長い時間と管理が必要になる為、手間である。
運が良ければ猿酒でも手に入るのだが、完全に運の話だ。
煙草も吸う者は少ないが、あれば息抜きに欲しいと言う者がいない訳でもなく、しかしこれも調達が限られているので、手に入っても使い渋ってしまう位には貴重品であった。

シャントットが好んでいる趣向品は、紅茶だ。
紅茶は酒に比べればモーグリショップで扱われている事が多いが、仕入れの数は限られているらしく、直ぐに売り切れる。
どうやら混沌側にも紅茶を好んで飲む者がいるらしく、其方と競合状態にあるようだ。
この為、切らせたから買いに行こうと赴いても、当てが外れて在庫切れと言う事は儘あった。
売っているのを見付けたら、その時のストックに限らず、幾らかはまとめ買いしておくのが賢い方法である。

────が、折に触れずにストックがなくなる、と言う事もない訳ではない。
偶々ショップの在庫切れが続いている時や、研究の進捗が進まない事から紅茶の消費量が増えた場合等、茶葉の中身が空になると言うのは起きる事であった。
正しく本日、一心地着こうと茶葉缶の蓋を開けた時のように。


(まあ、確かに最近、消費量が多かった気もしますわね)


この一週間ほど、シャントットは一切外界に出る事なく、研究に没頭している。
そのつもりで始めた研究ではなかった為、事前に消費物のチェックと購入を忘れていた。
愛用の茶葉を切らせてしまったのも、その所為だ。

シャントットが研究室代わりに使っている洞窟は、他者の余計な干渉を避ける為、少々外れた場所にある。
モーグリショップは世界のあちこちで店を開いているが、流石に人の気配から遠すぎる所には構えていなかった。


(面倒ですわね)


シャントットが此処に研究所を構えたのは自身の都合であるが、モーグリショップのある場所まで移動するのは、些か手間である。
しかし、切らしてしまっていると気付くと、放って置く訳にも行かない。
一心地入れる為にも趣向品は必要であり、慌てて買いに行く必要はないと言っても、結局は次の休息で欲しくなるのは判っていた。

仕方ない、とシャントットは睨んでいた空の茶葉缶に蓋をして、台座代わりの高椅子を飛び降りた。
どうせ、買いに行くのが今か後かと言う違いなのだ。
結局用立てに行くのであれば、無いと判った時に行くのが良いに決まっている。

と、洞窟の出口へと向かう通路を歩いていた時だった。
足の長い細身のシルエットが一つ、出口の光を背景にして近付いて来る。


「あら。もうそんな日だったかしら?」
「……ああ」


シルエットの正体は、スコール・レオンハートであった。
此処暫く、シャントットから魔法制御に関する手習いを受けている為、此処に来る足は慣れたもので、緊張の様子もない。

シャントットによる魔法の特別講義は、週に一度の頻度で行われていた。
しかし、シャントットは自分の研究に没頭する事も多い為、よく講義の予定を忘れる。
特に研究室である洞窟に籠り切りになると、外の時間の経過も気にしなくなるので、スコールの方から訪れなければ忘れ去られてしまう事になる。
別段、授業料を払っている訳ではないし、出席日数が必要とされる訳ではないのだが、真面目なスコールは予定は予定通りに行われなければ気が済まなかった。
魔法の仕組みについて、他の世界の事も知る事が出来る良い機会と言う気持ちもあって、出来ればすっぽかされないようにして欲しい、と言うのがスコールの気持ちである。
そんな訳で、最近のスコールは、シャントットの研究室を訪れる事が増えていた。

スコールは外出用の外套を身に着けているシャントットを見下ろし、


「出掛けるのか」
「ええ。茶葉を切らしてしまったんですの」


失敗でしたわ、と言うシャントット。
スコールはそれを聞いて、片手に抱えていた物を差し出した。


「茶葉なら買って来た」
「あら」
「あんたの好みのものが判らなかったから、売ってたものを一通り浚って来ただけだが…」
「十分ですわ。実に良いタイミングですこと。気が利きますわね」


封のされた紙袋を受け取ると、中に何の茶葉が入っているのかメモが書かれていた。
小分けにされた袋が複数詰められているようで、シャントットが好んで買うものと、他に三種類の茶葉が入っているらしい。
偶には違う物を楽しむのも良い、とシャントットは袋を手にくるりと踵を返した。


「それにしても、もう一週間が経っていたなんて。次の授業の内容を決めていませんでしたわ」
「…じゃあ、何か本を貸してくれ。あんたも忙しそうだし、今日は自習でもしてる」
「本当に真面目な生徒ですこと。宜しいですわ。どんな本が良いかしら」
「あんたの世界にある本を。初級は先々週に読んだから、次のレベルのものが良い」
「でしたら、右から四番目の棚、上から三段目あたりですわね」


先程潜ったばかりの扉を逆に押し開けて、研究室兼書庫へと戻る。
スコールもその後に続き、シャントットが指した本棚へと向かった。


「貴方の世界の“疑似魔法”の本は、相変わらず見付かりませんわね。余り出回っていないものなんですの?」
「そうでもない…と思う。少なくとも、俺がいたガーデンには教科書があったし、図書室にも置いてあった。ただ研究者が使うような専門書の類が殆どで、本屋の一般的な本とは別扱いだった気がする」
「流通量が限られるのかしら。その手の本は中々見ませんわね。やはり、元の世界で入手し難いものは、此処でも入手する機会が少ないようね。屋敷の方にも見つかりませんの?」
「今の所は────いや。三日前にルーネスが見覚えのある本を持っていた。俺の見間違いで泣ければ、多分、年少クラスが座学に使う本だったと思う」
「タマネギ君が読み終わったら、取って置いて頂戴な。一度目を通してみますわ」
「了解した」


スコールに魔法に関する講義をつける事は、シャントットにとって、研究の一環でもあった。
現在、“疑似魔法”と言う概念は、スコールの存在した世界にしか確認されていないものだ。
それを知る事が出来たのも、この闘争の世界と言う場所に召喚されたお陰だ。

今まで資料と出来る物が少なかった為、シャントットの“疑似魔法”の研究は進みが遅々とせざるを得なかった。
スコールが言うには、元々魔法に対する研究が進められる中で発見された代物であるので、下地となる研究はあったのだと思われるが、この世界にはその情報がなかった。
その情報の下となる文献が確認されたのであれば、どんなにそれが子供騙しの内容であるとしても、研究者として無視する訳には行かない。
全ての研究結果は須らく確認し、その情報の正否と確かめて行かなければ、次の発展は見込めないのだから。

本を吟味するスコールを横目に、シャントットはキッチンへと向かった。
沸かした湯でカップを温めつつ、スコールが買って来た紙袋の封を切る
馴染みのものと合わせ、四種類の小袋を各一つ取り出して、ふぅむ、と眺めた後、折角だと初めて見る名の茶葉を使う事にし、ティーポットの蓋を開けた。

適温まで温度を下げた湯をポットに注いでいると、


「此処、借りて良いか」


声のした方向を見れば、本を持ったスコールがソファの端に立っていた。


「ええ」
「ん」


触れても良いか、使っても良いかと確認を取るスコールの態度は、シャントットには好感触であった。
やや神経質に感じる事もあるが、可惜に部屋を散らかすような人間より、少々真面目の過ぎる生徒と思えば、悪くない。

カップをトレイに置き、シャントットは棚の引き出しを開けた。
クリップで封を綴じた袋を開け、中から3センチ程度の大きさの丸クッキーを取り出し、皿に乗せる。
それらを持ってシャントットはソファへと移動し、スコールとはテーブルを挟んで対角線の位置に座った。
カチャリ、と小さく食器の鳴る音がして、シャントットはソファの背凭れに寄り掛かり、カップを口元へと運ぶ。

スコールはそれをちらりと視界の隅で確認した後、テーブルに置かれたトレイの上にあるものを見付け、


「……」
「どうぞ。遠慮しなくて良いんですのよ」


スコールの視線が其処に向けられている事を、シャントットは見ずとも感じ取っていた。
訝しむようにその眉間に皺が寄せられている事も見ないまま、シャントットはスコールに促す。

スコールは思案するように唇を噤んでいたが、数秒の空白の後、「……頂きます」と言って手を伸ばした。
トレイに残されていた紅茶入りのティーカップと、添えられたシュガースティック一本、そして小さなチョコチップクッキー。
それを手許に寄せて、スコールはカップを口元へと運んだ。


「中々良い香りですわ」
「……ん」
「貴方の世界ではポピュラーなものかしら」
「…紅茶には詳しくない。でも、多分何処かで飲んだ事はある、と思う」
「そう」


興味がなくとも覚えがあるのなら、それなりに浸透しているのかも知れない。
スコールの生活環境と言うのも、本人が語らないので判らないが。

すっきりとした香りと味わいの紅茶に、ほんのりと甘いチョコチップのクッキー。
組み合わせとしては悪くなく、この茶葉もストックに加えても良いか、と思えた。


「───所で、今日の講義の埋め合わせは、いつが良いかしら?」
「…あんた、忙しいんじゃないのか?俺の予定に合わせて良いのか」
「暇ではありませんけど、貴方の授業に付き合うのも、私にとっては研究の一環。協力して差し上げるのは吝かではありませんのよ。とは言え、今回忘れていたのは此方ですし、良いお茶も頂いた事だし。次回は特別に其方の都合に合わせて差し上げますわ」
「……それなら三日後が良い。明日と明後日は先約がある」
「了解しましたわ。ああ、来る時にこの茶葉があったら、追加を頼んで宜しいかしら」
「判った。あれば買って来る」
「ええ。宜しく」


あれば、ときちんと注釈が点くと言う事は、ショップでは余り扱われていない物なのか。
良い茶葉は人気のあるものだから、やはり見付けた時にストックを買っておく方が良さそうだ。

シャントットがカップを空にすると、程無くスコールもカップをトレイへと戻した。
いつもは講義後、授業料の代わりに、スコールが淹れた紅茶を飲み、その片付けもスコールが行っている。
その習慣からだろう、スコールがトレイを持って席を立とうとしたが、シャントットが制した。
トレイを浚ってキッチンへと向かうシャントットを、スコールは見送る形で見詰めた後、大人しくソファに座り直して本を開く。
今日は自習に集中する事が自分のするべき事、と認識したようだ。

台座に登って食器を洗い片付けて、シャントットはいつも書き物をしている座卓へ移動する。
卓の上には、休憩に入るまでまとめていた研究分が出しっ放しになっていた。
これもまた後で手を付けるので、片付けずに脇に寄せて置くに留め、新しく取り出した紙に羽根ペンを乗せる。
考えるのは、三日後の埋め合わせ講義の内容だ。


(魔力の放出量の底上げは概ね安定しましたわね。次はどうしようかしら)


ちらりとソファに座る少年を見遣れば、長い睫毛の眦を伏目勝ちにして、じっと文面を追っている。
一度集中すれば、気が散る事も無ければその世界に没頭するスコールは、授業態度は実に優秀であった。
成績の方も───元々彼は魔法使いではないので、そう言う意味で採点は甘めであるが───非常に良く、シャントットとしては中々に教え甲斐がある。

かと言って、授業内容まで甘くはしない。
寧ろ優秀であるからこそ、少々難度の高い課題も課してやりたくなる事もある。



視線を感じてか、スコールが顔を上げる。
小さな体で凶悪な笑みを浮かべた悪魔の笑みを見付けて、蒼灰色が判り易く歪められたが、やはり悪魔はそんな事は微塵も気に留めてはいなかった。





11月8日と言う事で、シャントット×スコール。
相変わらず教授と生徒のような組み合わせ。こんな距離感が好き。
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