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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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イベントお疲れ様でした

  • 2018/02/28 21:59
  • カテゴリー:雑記
 
 
イベント後に覚えている時だけ書いてるイベント記になってます(・∀・)
 
東京スクエニオンリー、お疲れ様でした。沢山の方に声をかけて頂けて、とても楽しかったです。
 
 
前乗りで東京に行きましたので、土曜日は別れの物語展に行っていました。六本木ヒルズってでっかいね!!!(田舎者)
入場直ぐのバハムートとの戦いは、光の戦士(14プレイヤー)にとって、そわそわして楽しかったです。SEとか音楽とか。私はライトもライトで、絶バハは勿論、バハムートも侵攻までしか行ってない(全力介護で見学に行かせて頂きました)のですが、全身で感じる映像と言うのはやはり凄いですね。ゲーム内でも、幻獣王バハムートと戦うキャラクター達は、こう言う迫力の中で戦っているのかと想像したりして、……今後の創作に活かせたら良いなあ……
展示はじっくり見て回る事が出来たので嬉しかったです。時間の制限が無いって良いなあ……往路で駅から目的地まで一回迷子になった事は忘れよう。
 
イベント日は東京マラソンと丸々被っていたと言う事で、交通規制があり、移動ルートが制限された為か、ホテルの最寄り駅から向かうバスが満員状態でした。イベント参加の方は勿論、一般の方々の乗り降りが非常に苦労する程で、私自身も荷物が多い状態で、申し訳なかった……バスは終始ぎゅうぎゅうでしたが、詰め合ってビックサイトへ向かう人は一人も漏らさずにバスに乗れたようです。ビッグサイトの到着前、車掌さんが「乗降の際のご協力ありがとうございました。皆様、苦しかった車内の事は忘れて、今日一日を楽しんで下さい」と言って下さった事が記憶に残っています。開場到着前から人酔いで少しグロッキー気味だったのですが、お陰で少し元気が出ました。
 
会場では色んな人と沢山お話が出来て楽しかったです!
NTの話もさせて頂きまして。私は格ゲーがてんで苦手な方なので、NTはスコールが見たいが為にやりました。ストーリーの召喚獣バトルはスコールだとかなりキツい!と言う話も……w意地とゾンビプレイでスコールでクリアした私ですが、やはりシューターが楽ですよね……w
 
 
新刊の[指揮官様の潜入任務Ⅱ]は、同じタイトルのものとは全く別の話です。エロラノベ風のモブスコ本はこのタイトルで統一させて行くつもりです。今後、同タイトルの物が出ても、今回と同じく続き物とかではなく、ストーリーは単品となります。
前回の[指揮官様]ではオリジナルキャラが出張っていたので、モブスコと言うよりオリキャラ×スコールの雰囲気になった気がしていたのですが、[Ⅱ]はモブ複数×スコールと言う感じになっています。難しい事はさておいて、スコールにエロい事をしたい欲望だけを詰め込んだ本です。
 
今回のイベントで、[絆~3rd junction]が在庫切れとなりました。続き物の中間の話のみが在庫切れとなってしまったので、1巻・2巻の在庫の数を確かめて、少部数での再版を考えています。3月中に再版する予定ですので、通販をお考えの方は、少々お待ちくださいませ。
 
 


イベント前日から当日まで、様々な出来事から、当サイトの方向性や運営について、一考せねばならない状況となってしまいました。サイト運営も同人活動も、私にとっては大事な楽しみであり、続けて行きたいと思っておりますが、今後の流れによっては、予告なく一斉削除と言う事もあるかも知れません。
今直ぐサイトの閉鎖、同人活動の停止と言う事は考えていませんので、Web・オフライン共に、これまで通りに活動を続けて行きたいと思っています。ただ、ある日突然閉鎖している、という可能性も否定できない状態となっておりますので、どうぞご容赦頂けますと幸いです。
 
これは管理人個人の考えです。他サイトの管理人様や、同人活動を行っている皆様方には、一切関係ありません。
 
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[獣人レオン&獣人スコール]けものびと

  • 2018/02/23 21:21
  • カテゴリー:FF
2月22日で猫の日(遅刻)と言う事で、獣人レオンと獣人スコール。
主な設定と今までの話は此処と此処。
ネタ粒格納庫にもあります。


[いつもとちがうひ]
[このにおいのそばがいい]


大分生活に慣れたレオンとスコールですが、何か起きるとやはり緊張したり警戒したり。
そう言う時は、自分の安心できる場所に行きたいし、自分を守ってくれる人の近くにいたい。
同時に、守ってくれる人が何か様子が可笑しいなら、なんとかしなくちゃとも思っています。

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[ライスコ]ただいま情報更新中

  • 2018/02/13 00:30
  • カテゴリー:FF
ライトニング×スコールです。
NTでグループEのネタバレ有り。




召喚獣の力を得る為に進むに当たり、その気配を辿る事が出来るティナの存在は稀有且つ有用であった。
スコールもそれらしき気配を感じ取る事は出来るが、彼女のように詳細までは判らない。
スコールが感じ取れるのは、精々方角程度で、距離感までは感じ取れなかった。
だからスコールは、もう一つ召喚獣の気配を感じる、とティナが言った時、彼女に距離を確かめさせたのだ。
これはやはり、その人物が召喚獣とどれだけ近い力や魔力を持ち得ているか、と言う違いから現れる差なのだろう。

召喚獣の気配を複数キャッチする事が出来たと言うのは、情報として決して小さくはない。
求めるものが情報であるにせよ、力であるにせよ、その接触は急がれている。
求める召喚獣が一体ならば、それに向かって走れば良いが、数が多いのなら分担した方が効率は良い筈だ。
戦力の分散と言う問題点については、今の所は目を瞑る。
今現在、優先するべきは、状況の把握と情報の入手、それを迅速に行う事であった。

だからスコールは、一人で向かおうとしたのだ。
距離が近い位置にいると言う召喚獣の事はティナを含めた他のメンバーに任せ、自分は遠い位置にいると思しき召喚獣の下へ。
半分は斥候の目的もあり、個別に行動する事で、旅路で起こるトラブルや、敵の襲撃に遭った時のリスクも緩和する事が出来る。
幸い自分は、薄ぼんやりとではあるが目的の気配を追う事が出来ていたから、それに沿って向かえば目当てのものには辿り着けるし、それが終わってからティナ達の下へ合流する事は十分可能だ。
だから、目的を果たしたら直ぐに戻る事を───一方的に───約束して、別行動を取る事を選んだのだ。

だが、それはあくまで自分一人の中の話。


(……こっちに来るとは思ってなかった)


同行者となった女性の背を見て、スコールはこっそりと息を吐く。
堪え切れなかった溜息が混ざった気がしたが、前を歩く人物が振り返らなかったのは幸いだった。

その名に雷光を抱き、文字通り稲妻の如き剣閃を持って戦う戦士────ライトニング。
スコールが彼女と顔を合わせたのは、これが初めての事ではないが、その記憶も思い出せるものは僅かである。
と言うのも、スコールが明確に記憶している“神々の闘争”は、最後の戦いの時の記憶のみで、それ以前のものは霞がかっており、激しくはないが所々に虫食いが出来ていた。
それが“浄化”の影響によるものなのか、スコール自身が抱える“代償”の影響なのかは判らない。
が。過去にライトニングと戦場を共にした際、それは決して長い時間ではなく、且つその機会も少なかったのだと言う事は明らかだった。

その限られた記憶を手繰り寄せながら、スコールはライトニングの背中を見詰めている。
眺めている内に、スコールは頭に浮かぶ後姿と、目の前にいる人物との形が違う事を確かめていた。


(あんな格好じゃなかった。もっと俺やクラウドに近いような、割と普通の感じで……)


この世界に召喚された者の多くは、スコールにとって、ファンタジーや創作物でしか見ないような服装をしている者が多い。
だからか、スコールやクラウドのようなシンプルな服装の者は、反って目立つ所があった。
ライトニングも同様で、服飾デザインとしての装飾はあっても、魔力を込めた宝石であるとか、特殊な魔獣の毛を編み込んだ布であるとか、そう言うものは余り使われていなかった。
装備していた肩宛てやベルト等は、強化カーボンやプラスチックが素材となっており、これもまた他の面々と異なる。
銃にもなるギミックを備えた剣、と言う、これも文明レベル的にはスコールと近い形があった事もあり、二人は同じ世界から来たのではないか、と想像する者もいた。

しかし、今のライトニングは、明らかに以前とは違う格好をしている。
身に着けているのは鎧と呼んで良さそうだが、それにしても合板は奇妙な繋がり方をしているし、普通の鎧とも違うように見えた。


(……クラウドも格好が変わっていたし、それと同じ事なのか?)


以前の闘争の時に比べ、服装が変わった仲間は他にもいた。
そう言う人物は、元の世界で一年や二年と言った時間が過ぎており、その間に何らかの出来事に巻き込まれたりとしていたらしい。
彼女もそうなのだろうか、と思いつつ、


(…だから、雰囲気も前と違うのか……?)


スコールの記憶に浮かぶライトニングは、常に何かを警戒しているように見えた。
幾人かの穏やかな気性の仲間に対しては、少し当たりが柔らかくなるものの、それ以外は総じて張り詰めた糸を保っていたように思う。

しかし、今のライトニングの背中は、そうした緊張感が殆ど感じられなかった。
いつ何が起こるか判らない、と言う警戒で周囲に気を配ってはいるものの、以前程に頑なな空気もない。
何より、以前の彼女なら、単独行動を進むスコールの後を追って来る事はしなかっただろう。
スコールはあの時、追って来るのであれば恐らくジタン、だがフェミニストの彼の事、女性二人を放ってこっちに来る事はないだろう────と思っていただけに、追って来たのが彼女だと見た瞬間、思わず一瞬足を止める程に驚いていた。


(……なんでこっちに来たんだ)


口の中で疑問を呟いた所で、誰も応えてくれはしない。
答を持っているであろう人物は、スコールの前を黙々と進んでいる。
恐らく彼女は、スコールが向かう方向の修正を提案しない限り、延々と真っ直ぐに歩き続けるつもりだろう。
まるでスコールが示す方向に間違いがあるとは思っていない足取りに、スコールは記憶に残る人物像との違いを益々深めていた。

そんな調子で、一日は歩き通して終わった。
進むうちに幾つかの歪を経由している内に、薄赤色を宿した曇り空が夜帳に変わる。
何処まで行っても荒地しかないのかと思っていた景色は、いつしか緑を映すようになり、川も見付かった。
魚がいたのでスコールがそれを釣り、ライトニングが集めた薪で火を起こし、それで夕食を採る事にする
その間、二人の間には、連絡事項に則した必要最低限の会話しかなかったのだが、釣った魚が半分まで減った所で、


「随分と雰囲気が変わったな」


と、ライトニングが言った。
特に前置きの会話もなく、藪から棒と言えばそうであった言葉だったので、会話相手はお互いしかいないのに、スコールはそれが自分に向けられた言葉だと、一瞬気付かず、


「……誰の事だ?」
「決まっているだろう。お前だ」


当たり前のことを訪ねて、当たり前の返事があった。
それを受けてから、ようやく、確かに俺しかいない、とスコールも理解する。

ライトニングは骨になった魚を焚火の中へ放った。
ぱちぱちと音を立てる焚火に、細長い生木の枝を使って、くべた薪を突きながら言う。


「私が覚えている限り、お前はこうやって誰かと同行する事はなかった」
「……そんなの、お互い様だろう。あんたも大体一人だった」
「お前程じゃない」


からん、と薪の音を鳴らして、ライトニングはスコールの反論に対して言い返す。

確かに、どちらも以前の闘争では、一人で行動している節があり、スコール自身も自覚があった。
特に最後の闘争の時以外では、スコールは外の仲間達に対し、判り易く明確な距離と線を引いている。
そんなスコールに比べ、ライトニングの周りには、彼女を慕う者や気に掛ける者の存在が多く、ライトニング自身も───相性の良し悪しはあれど───それを露骨に無碍にする事はなかった。

とは言え、自分から積極的に仲間達と交流をしていたとも言い難く、その為にスコールとライトニングは接点が薄かったのも確かだ。
ライトニングもそうした自分の行動、態度については記憶があるらしく、しばしの沈黙の後、


「まあ……確かに、必要がなければ一人でいた事も多かった気がするな。誰に信用を置いて良いか、そもそも信用が出来るのか、それも判らなかったから」


言って、ちらり、と緑の瞳がスコールを視る。
お前も似たようなものだろう、と言われているような気がして、スコールは沈黙で応答とした。

はあ、とライトニングは溜息を吐く。


「と言うか、あんな状況で、初めて出逢った赤の他人を即信用して背中を預けろ、と言うのに無理がある」
「……それは同感だ」
「あの時の私は、自分の事も全く判らない状況だったしな」


付け足されたライトニングの言葉に、そうか、とスコールは一人得心する。
スコールは何度か世界が撒き戻され、“浄化”で重ねられた戦いが今の記憶として───虫食いではあるが───残っているが、其処にライトニングの姿が見られた戦いは一度きり。
その戦いを除いて、ライトニングは後にも先にも登場していない。
つまりライトニングは、繰り返しを体験する事もなく、召喚間もなく退場する事になったのだ。


「……あんた、何も思い出せていない状態だったのか」
「そう言う事だ。判っていたのは精々自分の名前くらいで、後の事はからきし。自分の世界の事も全く思い出せてはいなかったが、それでもこの世界が自分の常識と全く違う世界である事は判った。判ったが、それだけだ。そんな状態で混乱しない程、私は融通良くは出来ていない」


スコールにも少なからず覚えのある話だ。
いつ、何回目の時の話なのか、それが始まりなのか否なのか、記憶に明確な正確性が持てないスコールには判らないが、それでも最初に召喚された時には、当時のライトニングと同じ混乱があった───ように思う。

説明を求めても、それに応じて貰っても、自身の頭に刷り込まれた常識とは何もかもが違い、それがどうして“違う”と判るのかと言う理由も判然としない。
記憶や体験から構築される、自分自身と言うアイデンティティが曖昧になった状態で、何もかもを己の都合良く受け入れて行動できる程、スコールは聞き分けと割り切りの良い人間ではない。
それでも神だと自称する者の拘束力は強く、それに従わなければ、記憶を回復する手立ても、元の世界に戻る手段も得られない。
気持ちの納得は置き去りに、烏合の衆のような団体の中で行動しなければならないと言う状況は、ライトニングやスコールと言った、安全の為に物事を懐疑的に見る癖のある人間にとって、少々難のあるものであったと言える。
結果、あの時点でライトニングは、己を召喚したと言う女神の言葉は勿論、それに機械的にも見える忠誠心で応じるウォーリアに対し、不信感を募らせる事となった。
故に彼女は、積極的に交流を行うコミュニケーション上手な人間以外には、刺々しい態度を振り撒かざるを得なかったのだろう。

ライトニングは焼き終わった二尾目の魚に手を付けた。
味付けも何もないが、川が比較的清流だったお陰で、泥臭さはない。
スコールも二尾目に手を伸ばして、ふ、ふ、と息を吹きかけて冷ましている所へ、ライトニングは言った。


「お前なら通じそうだから、言わせて貰うが。あの状態で、同じ陣営にいるからと、容易く信用できる人間の方が気が知れない」
「……まあな」
「私があの時、初めての召喚で、“浄化”されても継続的にあそこで戦い続けていた皆とは、考え方や感じ方が違うのかも知れないが……」
「いや。俺はあんたに同意する。あんな状況で見ず知らずの奴等と一緒にされて、あっさり信用できる方が可笑しい」


魚を齧りながら言うスコールの言葉を聞いて、そうか、とライトニングは言った。
その時の彼女の顔は、ほんの少し緩み、共犯者を見付けた子供のような雰囲気が滲んでいる。

ライトニングの言葉には、少々きつい棘が滲んでいるが、彼女の表情は特に顰められてはいない。
終わった事だから、思い出話のついでに苦言が出て来たのだろう。
ついでに、当時感じていた事が、自分一人の独走的なものではないと聞いて安心したのかも知れない。


「…そんな状態だった時に比べれば、今は随分楽だ。大体の奴等と顔見知りだからと言うのもあるが、身内を一々警戒しなくて良いしな」
「……マーテリアは?」
「察しろ。多分、お前と私の考え方は似ている」
「……」


スコールの端的な問の意味を、ライトニングは理解していた。
新たな女神となった女性を、何処まで信用しているのか、彼女の言葉を何処まで受け止めているのか。
それはスコールが未だ疑問視している所で、ジタンとも意見が一致している。
ライトニングはどう思うのか、と言う点を問い質したものであったが、ライトニングは明確に言葉にしない事で返答とした。

────それはそれで良いのだが、スコールは今のライトニングの言い方に引っ掛かるものを感じていた。


(似ているってなんだよ)


なんだか、自分の心の内を見透かされたようで、スコールは落ち着かなかった。
マーテリアやスピリタスと言った、神々の後継者について、懐疑的な見方が強いのは、広く仲間達を見渡しても、そう変わらないだろう。
それだけ、マーテリアの言動に頼りなさが感じられるのだ。

マーテリアについての見解が、スコールとライトニングの間で一致するのは当然だろう。
共に理屈屋とまでは言わないが、根拠のない感覚的なものだけで好悪を括れる程、人が好く出来てはいない。
スコールは傭兵、ライトニングも軍属の警備員と言う経験を持ち、組織内に搬入する異分子への危険度と言うものも理解している。
況してや組織の頭を担う形となっている人物があれでは───と言う懸念は、二人にとって至極当然のものだった。

しかし、スコールはそれをライトニングの前で吐露してはいない。
ジタンとは会話の折に、彼の方から心中を察されて指摘されたが、それも過去の戦いで何かと行動を共にしていた彼であるから、と思える。
だが、ライトニングとは仲間であっても殆ど会話はなかった。
ゆっくりと膝を突き合わせている等、今が初めても同然で、ライトニングが案外と多弁である事も、スコールは初めて知った位だ。
それなのに、自分の事を知っているかのように、双方を指して「似ている」と言われるのは、些か不本意な気分である。

むぐ、と魚を噛んで、スコールは眉間に皺を寄せていた。
ぱちぱちと音を立てて揺れる焚火に、その皺がはっきりと映し出されている。
ライトニングはそんな少年の顔をちらりと見遣って、口角を上げる。


「お前は案外、子供っぽいんだな」
「……は?」


突然のライトニングの言葉にスコールが顔を上げると、彼女はくつくつと笑っていた。

今までの会話に、彼女が笑うようなポイントがあっただろうか。
おまけに、子供っぽい等と、指摘されるような話をしたか。
混乱と苛立ちで、スコールの眉間の皺は益々深くなって行く。

そんなスコールの気配を察してか、ライトニングは骨になった魚をひらひらと揺らしながら、


「怒るな。前はそう言う顔を見た記憶がなかったから、意外だと思っただけだ」
「………」
「顰め面はいつもの事だが、そんな拗ねた顔をしたのは見た事がなかったからな」
「別に拗ねてない」
「ああ。そうだな」


反論を軽く流すように返され、スコールの眉間の皺がまた一段と深くなる。
そうする事で、ライトニングの言う“拗ねた顔”になっているのだと、スコールは気付いていなかった。
だから余計にライトニングの笑いのツボを刺激してしまうのだと言う事も、知る由はない。

スコールは苦い表情のまま、残ったいた魚を平らげた。
骨だけになったそれを焚火に放って、火に背を向けてごろりと横になる。
見張りについて話し合うつもりだったのも忘れて、不貞腐れた気分で過ごしていると、


「その内起こす。それまで私が見張りをする」
「……ん」
「ああ。お休み」


それがその日の内に二人が交わした、最後の会話だ。
スコールはそれきり沈黙し、眠る事に終始して、ライトニングは静かに過ごしていた。

から、と焚火の中で薪が小さくを音を鳴らす。
それも聞こえない程にスコールが眠りに落ちた頃、ライトニングは少し首を伸ばして、スコールの様子を伺った。
焚火に背を向けたままのスコールは、身動ぎ一つ立てず、ただ蹲っているだけのようも見える。
呼吸音がほんの微かに規則正しく聞こえているので、眠っている事は感じ取れた。

ライトニングは、焚火越しに見える少年の背中を見詰め、くつりと笑う。


「……お前は、そうやって寝るんだな」


これも初めて見た、とライトニングは呟いて、これからの長いか短いか判らない旅の道中、少なくとも退屈はしないだろうと思った。





ライトニング×スコールだと言い張る!!

書きたい書きたいと思いつつ、どう絡ませようか悩み続けたライスコ。
DdFFの頃から妄想はしていたんですが、NTで同じグループになってやったー!!って気分でした。
012では周り(主にWoLや衝突のあったカイン)に大してピリピリしていましたが、原作ではホープだったり、012ではユウナだったり、年下には優しいので、スコールの事も気にはなっていた感じにしてみた。
記憶の喪失や混乱がなければ、結構面倒見が良いライトニングが好きです。
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[フリスコ]その牙で貫いて

  • 2018/02/08 22:00
  • カテゴリー:FF
ほんのりとR15の気配。




猫のようだとか、犬のようだとか、言われればどちらも当て嵌まるようで、どちらも違う気がする。
しかし、全くの的外れかと言われればそうではなく、部分的に言えばその通りだとも言える所もあった。
他にも、その猪突猛進ぶりから、文字通り猪であるとか、案外と器用な手捌きから、狐のようとも。
そこそこ体格が大きい方なのに、人懐こい表情や、相手を怯えさせないように気を回す余裕がある所は、草食動物のようにも思える。
かとも思えば、敵を前にした時の眼光は、猛獣か猛禽類にも通ずる。

早い話が、“獣”らしいのだ。
全てをひっくるめて、そう言う事なのだろうとスコールは思う。

平時のフリオニールを例えるなら、大型犬が一番近いのではないだろうか。
ちょこまかと忙しなく動き回るティーダを相手に、一緒にはしゃいだり宥めたりしている姿は、スコールにはそのように映る。
ティーダが調子に乗り過ぎると諫める事もあるが、存外と激情家な所もあるので、二人揃ってヒートアップする事も少なくない。
フリオニールは、良くも悪くも感情に正直だから、その波長がティーダと重なると、自分達では止められなくなってしまう。
そう言う時はセシルかクラウドの出番で、彼等が二人をそれぞれ止める重石となっていた。
叱られると判り易くしゅんとし、素直に詫びており、許して貰えれば嬉しそうに笑うので、スコールはそんなフリオニールにぶんぶんと振られる尻尾を見たような気がした。

食事当番の時、摘まみ食いを狙う賑やか組を相手に、わあわあと忙しなくしている時がある。
こう言う時、何に似ていると言う事は特にないのだが、一切無視をせずに逐一相手をしている辺り、彼は本当に面倒見が良い、と思った。
落ち着きのない子供を甲斐甲斐しく世話する動物の親────そんなイメージが沸く。
別に動物と喩える必要もないが、なんとなくスコールは、キッチンの前で騒がしくしている彼等を見ると、そう言うイメージが浮かぶのである。

戦闘に備え、獲物を研いでいる時の彼の目は、いつも真剣だ。
砥石で剣を一研ぎ一研ぎ、弓の弦の具合を確かめては何度も引いて強さを確かめる。
その様子は、己の武器を鋭く保つ事に余念のない、肉食獣に似ている。
丹念に整えたそれを手に握り、突き立てられる悪意を切り裂く時、赤い瞳は黄金の光を帯びて、敵の首を食い千切らんと吼える。
そんな青年の貌は、最早動物等と言う可愛らしい表現は似つかわしくない。
牙、爪を、本能を剥き出しにし、己が生きる為に全てを食らいつくす“獣”と呼ぶのが相応しい。

スコールは、フリオニールの“獣”の眼が好きだ。
元より嘘を知らないと言っても良いようなフリオニールが、下手な隠し事も忘れ、何もかもを曝け出しているように見えるのが良い。
その赤い眸に真っ直ぐに射抜かれ、剥き出しの牙が、爪が、喉に食い込むのを想像する。
笑うフリオニールの口の中に、微かに尖る八重歯を見付けて、あれが肌を食い破る事を考えたら、背中が熱くなった。
カニバリズムに興奮する性質ではないし、そうして欲しいと言う被虐性も持ってはいないが、それでも想像は止まらない。

食べられたい。
あの狂暴な瞳を見ながら、骨まで全部、食べられたい。
そんな風に思うようになったのは、いつからだろう。
恐らく、それが恋慕に通すると悟るまでには、随分と長い時間がかかった。



初めの頃は、何かと戸惑っていたように思う。
肌を重ね合う事は勿論だが、同衾する事にも彼は随分と長い照れがあった。
それはスコールも同じなのだが、腹を括るのはスコールの方が早かった筈だ。
何せ、最初の夜、主導権を取ったのはスコールの方であったから。

スコールとて初めての事だったから、何をどうすれば良いのか、知識はなんとなくあっても、それを実行に移すには色々と躊躇いがあった。
フリオニールの方はさっぱりと言って良かったから、とにかくスコールが促す指示に合わせるのが精一杯。
その日は無理をした所為で、スコールは若干トラウマにもなりかけたのだが、次からフリオニールが出来る限り気遣ってくれるようになったので、その後は───なんとか───恙無く済んだ。

二回目にフリオニールが少なからず気遣ってくれた事が功を奏し、少しずつ主導権はスコールからフリオニールへと委託された。
スコール一人では、羞恥心や必要以上の我慢で強引に推し進めてしまう所を、フリオニールがリードを持つ事で、その負担を軽減させる事が出来るようになった。
時折、気遣いが度を過ぎてスコールを怒らせる事もあるが、それはそれだ。
繋がり合えば後は段々と熱に押し流されて行き、どちらともなく果てるまで、熱の交わりは続く。

最後の熱を吐き出してから、二人の呼吸が溶け合うように重なり、無音の部屋に反響していた。
はー、はー、と耳元を擽るフリオニールの吐息に、スコールはぞくぞくとしたものが首筋を奔るのを感じる。
背中に回した腕はしばらく強張っていたが、呼吸が少しずつ小さくなって行くにつれて、力も抜けた。
ぱた、とスコールの腕が投げ出されるようにシーツに沈んだ後、きしり、とベッドの軋む音が鳴る。


「…スコール。大丈夫か?」
「……ん……」


心配そうに名を呼ぶ声に、スコールは意識半分に頷いた。
中に埋まっていたものがゆっくりと抜けて行く感触に、びくっ、と腰が震える。
ともすれば締め付けそうになるそれを、スコールは意識して深呼吸を続ける事で、体の強張りを解すように努めた。

すぐ隣で、疲れ切ったフリオニールがベッドに沈む。
スコールは違和感の残る下腹部を擦り合わせて誤魔化しながら、寝返りを打った。
仰向けになっているフリオニールの体に身を寄せると、フリオニールがくすぐったそうに笑う。


「辛い所ないか?スコール」
「……腰」
「それは、まあ、はは……」


ごめん、と小さな声で詫びながら、フリオニールは眉尻を下げた。

弱り切った表情を浮かべて見せるフリオニールに、本当にギャップの激しい奴だ、とスコールは思う。
つい先程まで、自分に覆い被さっていた時には、雄そのものように猛々しかったと言うのに、赤い瞳は今は丸っこい。
戦闘中にも見られる変貌振りは、何度見ても、まるで人格そのものが何かと交代しているのではないかとすら思えた。

フリオニールは一心地つくと、スコールの背に腕を回して抱き締めた。
しっかりとした腕がスコールの脇や背中に触れていて、スコールが己とは全く違うその逞しさにこっそりと唇を尖らせていると、


「はあ……温かいな、スコールは」


安堵のように一つ息を吐いて、フリオニールは呟いた。
ぎゅう、と抱き寄せられ、肩口に埋められるフリオニールの顔。
スコールは、肩を擽るフリオニールの呼吸にむず痒さを感じつつ、


「温かいのはあんただろう。あんたの方が体温が高い」
「そうか?俺には、スコールの方が凄く温かく感じられるけど。ずっとこうしていたい位だ」


笑って言うフリオニールの言葉に、嘘はない。
彼は世辞を言える人間ではないから、口にする言葉は本心からのものだ。

それにしても、ずっとこうしていたい、とは。
こう、とは。
背中に肌に触れて感じる腕や、重なり合った胸の奥から聞こえる鼓動を意識して、スコールの顔に朱が昇る。


「あんた、よくもそんな…恥ずかしい事言えるな……」
「ん?」


恥ずかしいって何が、と首を傾げるフリオニールに、スコールは口を噤む。
きょとんとした顔で見詰められるのを感じて、スコールは視線だけで背中へと伸びるフリオニールの腕を見た。
赤い瞳が蒼の視線を追って滑り、それが白い肌に重ねられた褐色の腕を見付けた瞬間、はた、と見開かれる。
“こう”と言う状態が今の状態を指している───裸で抱き合い、体温を重ね合わせている状態である事にようやく気付いて、フリオニールの顔も真っ赤になった。


「あ…!い、いや、別にこう言う事じゃなくて、」
「………」
「わっ……!ス、スコール……!」


弁明するように慌てて離れようとしたフリオニールを、スコールは抱き着いて留めた。
スコールの方から首に腕を回し、密着する体勢に、フリオニールの声が上擦る。
重ねた胸の奥から、鼓動が早鐘を打っているのが伝わった。

薄らと濡れた蒼灰色の瞳が、フリオニールの顔を至近距離で捉えていた。
まだ熱の名残を残す瞳に見詰められ、ごくり、とフリオニールの喉が鳴った。
その喉に誘われるようにスコールの唇が寄せられ、浮かぶ喉仏に柔らかな感触が押し付けられると、フリオニールの熱もまた、再び呼び覚まされる。


「スコー、ル、」


つい先程までの情交も、決して穏やかとは言えないものだった。
思いを重ね合わせているのだから、スコールとてそれを受け止めるのは決して吝かではないのだが、フリオニールは出来ればスコールに強い負担は強いたくないらしい。
大切に思うからこそ、時にはスコールを怒らせる位に気遣っているのだと、スコールも判っていた。
しかし、良くも悪くも自分の正直で、熱くなるほどに自制を忘れるフリオニールの性格は、こうした場面でも露呈する。
いや、こうした場面であるからこそ、尚の事制御が難しくなるのかも知れない。

スコールはゆっくりとフリオニールの喉に舌を這わせ、唇を当てて吸い付つくと、赤い痕を残る。
見付かるか、と思ったが、スコールは深く気に留めない事にした。
理性の強い平時であれば、こう言う所は駄目だ、とスコールも思ったのだろうが、今は頭の中が茹った様に歯止めが利かない。
残った赤い花を見ていると、知らず唇の端が上がって、スコールは嬉しそうにフリオニールの首を見詰めていた。


「フリオ」
「……!」


たった三文字の名を呼ぶ声に滲むものを、フリオニールは確かに感じ取った。
スコールの背中を抱いていた腕を滑らせて、片腕で細い腰を抱きながら、片手はスコールの後頭部へ添えられる。
上向くように促せばスコールは素直に従い、誘われるように唇を重ね合った。

フリオニールに舌がスコールの唇を擽り、隙間を割って、中へと侵入する。
ふ、と鼻にかかった吐息と声がスコールから漏れて、フリオニールの首に絡む腕に力が籠った。
もっと、と強請るように身を寄せるスコールに応える形で、フリオニールはスコールの舌を絡め取り、唾液を交換し合う。


「ん…ん……っ」
「ふ……っ」


ちゅく、ちゅく、と耳の奥で音がする。
その音が、スコールの耳を犯し、フリオニールの脳を融かして行く。

フリオニールは、自身の体の上に覆い被さるように身を寄せていたスコールを抱いて、体を反転させた。
スコールの体がベッドに沈み、フリオニールがその体を世界から隠すように覆い被さる。
スコールの爪先が衣擦れの音を鳴らしながら寄せられ、フリオニールの腰に絡み付いた。


「スコール……もう一回……」


良いか、と問う瞳に、仲間達に初心さを揶揄われている時のような恥じらいはない。
見下ろす赤い瞳は、組み敷いた獲物に一秒でも早く食らい付こうとしている。

駄目だと言えば、きっとフリオニールは思い止まるのだろう。
進めて良いかと問う間は、彼の理性はまだ形を残しているから、スコールがそれを操縦する事は出来る。
傷付けたくないと、大切にしたいと言うフリオニールの声も嬉しい。
しかし、スコールは覆い被さる彼を退けようとはしないし、寧ろこうなるように手綱を引いたのはスコールの方である。
いっその事、良いかどうかを聞く事もせず、噛み付いて来てくれても構わないとさえ思う。

そんな気持ちが促すままに、スコールはフリオニールの耳元で、そっと彼の名を呼んだ。


「フリオニール」


食べてくれ、と。
名を呼ぶ声に込められた願いを、フリオニールも本能で感じ取る事が出来るだろう。
躊躇いを捨てて覆い被さる重みに、スコールはうっそりと笑みを浮かべて身を委ねた。





フリオニールのギャップを書いてみたかった、筈。

穏やかなフリオニールの事も好きだけど、本能剥き出しで求められるのが好きなスコール。
スコールを大事にしたい気持ちは本当だけど、煽られると我慢できないフリオニール。
そんなフリスコ。
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[ウォルスコ]この温もりが何よりも

  • 2018/01/08 21:25
[幸福の朝]と同じ設定の現パロウォルスコ。





予期せぬトラブル等が起こると、否応なく仕事は詰まってしまうものである。
そうした時に人手を借りる事が出来れば、幅広くカバーし合う事で早期解決も出来るのだが、良くない事は重なる運命とでも言うのか、中々そう上手くはいかない。
結果として全て解決に導ければ良しと言いたい所だが、これに手を取られた為に、本来の仕事が終わっていないと言う事案も起こる。
トラブルによって蓄積された疲労を労わる暇もないまま、元の仕事に取りかかるのは、存外と気力を使う。

元の仕事も片付け、週明けに手を付ける予定のものを仕分けして、ウォーリアの仕事は終わった。
いつもなら週明けの仕事も少し片付けて行くのだが、今日はそんな余裕もない。
パソコンを睨み続けて重くなった目頭を摘みつつ、ウォーリアは同僚達に挨拶をしてオフィスを出た。

人の少なくなった電車に揺られながら、携帯電話を確認する。
少しだけ期待した着信記録は其処にはなく、最新のものは昨日付けのものだけ。
メールはと言うと、夕方にウォーリアが自宅で待っているであろう恋人に対して送ったメールに対し、「分かった」と言う簡素な返信があったのみ。

ウォーリアの恋人であるスコールは、ウォーリアが住んでいるマンションの近くで一人暮らしをしている。
彼は週に一度はウォーリアの家を訪ねており、食生活に感心のないウォーリアの食事管理を担っていた。
土日を跨ぐ時には泊まる事も多く、そのまま休日を共に過ごす事もある。
しかし、スコールは17歳である為、定期試験などがある時には、学業に専念する為、ウォーリアの家にも来れなくなる。
今日は晴れて試験期間が開けた為、久しぶりにスコールが家に来て食事を作ってくれる事になっており、そのまま食事の席を共にする事も考えていた。
明日も平日なのでスコールが家に泊まる事はないだろうが、それでも約十日ぶりに彼の顔が見れるとあって、ウォーリアは今日の夜を楽しみにしていた。

しかし、自宅の最寄り駅に着いた時点で、時計は23時を指している。
ウォーリアとスコールがそれぞれ一人暮らしをしているマンションは、然して遠くもなく、スコールが日常的に通って来れる位置にある。
とは言え、流石にこの時間となれば、スコールも自宅に帰っているだろう。
高校生なのだから夜間の出歩きは控えるようにとウォーリアが釘を差している事、そうでなくとも父が心配性で過保護な事もあって、スコールは外で過ごしていても、22時には自宅に帰るようにしている。

久しぶりに彼が作った、温かい食事が食べられる筈だったのに、きっとそれも冷めてしまっている事だろう。
試験明けで決して疲れていない訳ではない彼が、折角作ってくれたと言うのに、勿体ない事をした。
仕事をしている以上、其処でトラブルが起きた以上、止むを得ない事であるとは思うが、それが余計にウォーリアの罪悪感を煽る。
傍目ばかりは聞き分けの良い態度を取りつつ、本当は人一倍寂しがり屋な恋人を知っているから、尚更。


(私に、何か詫びに出来る事でもあれば良いのだが)


北風の吹く街を歩きながら、落胆している少年の顔が浮かび、申し訳なさからそんな事を考える。
彼の為に出来る事なら、ウォーリアはどんな事があっても叶えたいと思うのだが、何をすれば彼が喜んでくれるのか、未だにウォーリアは判らない。
子供の頃は率直に訊ねてみたりもしたものだが、そう言う時スコールは、「ウォルお兄ちゃんとご本が読みたい」「一緒にお昼寝がしたい」と細やかな願いばかりを口にした。
それは嘘ではなく、彼の本心からの事だったから、ウォーリアもそれを叶えて来たつもりである。
しかし、成長するに従い、幼年の頃の素直さに変わって天邪鬼がよく顔を出すようになったスコールは、そうした願い事も口にしなくなった。
物欲に関しては昔から無いようなもので、時折シルバーアクセサリーを見ている事があるので恐らく好きなのだろうとは思うのだが、これが欲しい、とウォーリアに強請った事はない。
ウォーリアが自分で見繕って贈る、と言うのも良いのだろうが、スコールが贔屓にしているアクセサリーブランドは、そこそこ値が張るものらしい。
誕生日のような時ならともかく、夕食を一緒に食べられなかった詫びに───と言う理由で贈ったら、反って彼を困惑させてしまいそうだった。

難しいものだな、と考えている間に、ウォーリアの足はマンションの玄関ロビーに辿り着いていた。
エレベーターで自宅フロアまで昇っている内に、ふう、と溜息が漏れる。
それだけで一日の疲労がどっと襲ってきたような気がして、気を抜くとこのまま寝落ちてしまいそうだ。
ウォーリアがそれだけ疲労を自覚する事は珍しく、其処には恋人と過ごす時間がふいにされてしまった事への落胆も混じっていた。

自宅玄関の鍵を開けたウォーリアは、ふう、と二度目の溜息を吐きつつ、違和感に顔を上げる。
誰も人がいない筈のリビングから、明かりが零れていた。


(消し忘れて行ったのか)


几帳面なスコールにしては珍しい事だ、と思いつつ、ウォーリアは靴を脱ぐ。
スーツジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めながら、彼もきっと疲れていたのだろうと心中で労いながら、リビングへと入った。

リビング兼ダイニングには煌々と明かりが灯っており、食卓テーブルには一人分の食事が並んでいる。
温められるものと生サラダと皿も分けられており、全てきちんとラップで綴じられていた。
冷蔵庫に鍋に入ったスープもあると言うメモも置かれ、忘れずきちんと食べるようにと釘も差してある。
疲れて帰って来るであろうウォーリアに対し、眠りたい気持ちもあるだろうが、最低限何か口にしてからにしろと言う事だろう。
放って置けば簡単に食事を忘れてしまうウォーリアを知っているからこそ、スコールはこのメモを残したに違いない。

取り敢えず、食事の準備をしなくては、と手に持ったままだったスーツジャケットをテレビ前のソファに置こうとした時だった。


「……スコール?」


ソファの肘掛から食み出て見える、濃茶色の髪。
ウォーリアの家を訪れる人物で、その色を持つ人は一人しかいない。

呼びかけて見たが返事がなかったので、ウォーリアはソファを覗き込んだ。
其処には、肘掛を枕にし、すぅ、すぅ、と穏やかな寝息を立てている少年が横になっている。

稀有な光を宿す蒼灰色の瞳は、瞼の裏に隠れており、薄淡色の唇は無防備に緩んでいた。
人の気配の彼には珍しく、全く起きる様子はなく、深い眠りの中にる事が判る。
服装はジャケットだけを脱いだ制服のままで、ソファ前のテーブルにはノートや教科書、プリントが並べられており、課題をしている内に休憩に横になって眠ってしまったのだと言う事が感じられた。


「君は───待っていてくれたのか?」


返事がない事は判っていつつ、眠る少年に問う。
当然ながらスコールは答えなかったが、声は聞こえたのか、ふるり、と長い睫毛が揺れたのが見えた。

見詰めていると、ゆっくりと瞼が持ち上がり、茫洋とした瞳が揺れる。
リビングの明かりが眩しいのだろう、嫌がるように眉間に皺を寄せて相貌を細めるスコールに、ウォーリアはそっと手を伸ばす。
外気の冷たさが残る手で頬を撫でると、「ん……」と小さく声を漏らして、スコールの目がもう少し大きく開かれた。


「………うぉ、る……?」


確かめるように名を呼ぶスコールに、「ああ」とウォーリアは頷く。

スコールは猫のように目を細めながら、ウォーリアの手に頬を擦り寄せた。
冷たい手で嫌ではないだろうか、と思ったが、スコールの表情は柔らかく、


「おかえり……」
「ああ。ただいま」


今日は聞けないと思っていたスコールの言葉に、ウォーリアの唇も緩む。

スコールは起き上がる程に眠気が晴れている訳ではないようで、ベッドに横たわったまま、ウォーリアへと手を伸ばした。
ウォーリアが膝を折って顔を近付けると、まだ幼さの残る滑らかな手が頬に触れる。
誘われるようにウォーリアが顔も寄せれば、スコールも少しだけ頭を持ち上げて、ウォーリアに顔を寄せる。


「ん……あんた、冷たい……」
「外が寒かったからな」
「……んん……」


ウォーリアの言葉に、スコールは暖を分け与えるように、ウォーリアに頬擦りした。
これだけ抵抗なく密着してくれるのは、睡魔に捕まっている故だろう。
そんなスコールを余り悪戯に刺激しないように努めつつ、ウォーリアはそっと頭を撫でてやる。


「君は、帰らなかったのだな」
「……んぅ…」
「今日は遅くなると言っただろう。もう直に日付も変わる。家に帰っているとばかり思っていた」


ウォーリアの頬を撫でるスコールの手が滑り、銀色の髪に絡まる。
ぼんやりとした瞳がウォーリアを捉え、小さな唇がゆっくりと動き、


「あんたの顔…見てから…帰る……」


試験期間に入ってから、スコールはウォーリアの家を訪れていない。
逢う事を避けていた、と言う訳ではなかったが、勉強に集中する為にも恋人との逢瀬は後回しにしていたのは確かだ。
本当は一瞬でも良いから逢いたかった───とスコールは決して口にはしないが、試験明けの今日と言う日を密かな楽しみにしていたのも事実。
仕事の所為でウォーリアの帰りが遅くなると判っても、その気持ちは強かった。

帰りが遅くなる、と言っても、ウォーリアの事だから直に帰るだろう、と言う気持ちもあった。
だからそれまで課題でもして過ごしていよう、と待っていたのだが、試験と言う学生にとって一種のボスとも言えるイベントを終えた事で、スコールも気が緩んでいたのだろう。
集中を邪魔する睡魔に負け、少しだけ、と横になった所で、そのまま眠ってしまった。
束の間に目を覚ました今、自身が眠ってから既に数時間が経っている事にも気付かないまま。

スコールが、自分と逢いたいが為に待っていてくれたのだと知って、ウォーリアは胸の奥で熱が灯る。
ウォーリアがスコールと共に過ごす事を密かな楽しみにしていたように、スコールも逢瀬の時間を求めてくれていた。
それを聞いてウォーリアが唇を緩めている間に、彼の体からは力が抜け、


「ん……ぅ……」
「スコール?」


ウォーリアに抱き着いた格好で、寄り掛かるように体重を預け、スコールの瞼がまた閉じられる。
スコール、と名を呼んでみるが反応らしい反応はなく、すぅ、すぅ、と言う寝息がウォーリアの耳朶を擽った。

腕にかかる重みが愛おしい。
ウォーリアはその感触を記憶するように確かめながら、そっとスコールを抱き上げた。
横炊きにした体からは力が抜けており、その分体重もウォーリアの腕にかかってくるが、ウォーリアは難無くスコールの体を持ち上げる。
振動でスコールが目を覚ます様子もなく、とすん、とウォーリアの胸に頭を乗せたのみ。

ウォーリアはスコールを寝室へと運び、綺麗に整えられているベッドへと下ろしてやった。
明日も学校がある彼が体調を崩さないように、首元まで布団を被せてやる。

スコールを寝室に残し、ウォーリアはリビングダイニングへと戻り、忘れかけていた遅い夕食の準備を再開させる。
出来たてを食べる事は出来なかったが、わざわざ彼が作ってくれたのだから、有難く頂かなければ。
冷蔵庫の中に入っていたスープの鍋を取り出し、コンロに置いて火をつける。
香りの良いコンソメスープを温め、その間にメインのチキンソテーも電子レンジで温め、食事の用意を整えた。

食事を済ませ、風呂も終えた頃には、日付が変わっている時間になっていた。
するべき事がすっかり終わった気分で寝室に入れば、ベッドでスコールが丸くなって眠っている。
起こさないように気を付けながらそっとベッドに入ると、ベッドの傾きを感じたか、ころりとスコールが寝返りを打つ。
暖を求めるように身を寄せて来る少年の体を抱き寄せて、ウォーリアは目を閉じる。



おやすみ、と囁いて、返事の代わりに聞こえる心音が心地良い。

翌日、腕の中で目を覚ました恋人が困惑するとも露知らず、ウォーリアの意識は夢の中へと溶けて行った。





1月8日と言う事でウォルスコ!
遅くなって家に帰ったら、もういないとばかり思っていた恋人が待ってた、と言うのが好きです。

スコールは別に寝るつもりはなくて、こんなに遅くまで帰って来ないと思ってなかったし、ウォーリアが帰って来て顔を見たら帰ろうと思ってた。
でもちょっとだけ目を覚ましたら本人がいて、やっと顔見れたと思ったら安心してまた寝落ち。
目が覚めてから、(なんでこうなってるんだ…!?)って混乱したまま固まるんだと思います。
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