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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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[レオスコ]潮騒に隠した秘密

  • 2015/08/08 21:14
  • カテゴリー:FF


スコールは、海が好きではなかった。
その理由は、大きく分けて二つある。

一つは、大の人込み嫌いであると言う事。
夏休みとあって、何処に行くにも人で溢れ返っている中、海は特に人が多い。
夏の風物詩とも言える海水浴客や、それを宛てにした屋台や海の家、催し物など、人が集まる理由には事欠かない。
ただでさえ人が多い所が嫌いなスコールが、自ら進んでそんな場所に飛び込む等、天地が引っ繰り返っても、先ず有り得ない事だ。

もう一つは、夏であるが故の強い日差しだ。
見渡す限りに抜けるような青空が広がり、何処までも続く水平線と言う光景は、決して悪いものではないが、燦々と降り注ぐ太陽光だけは駄目だ。
光と共に突き刺す熱射は、地面にも熱を生み、アスファルトを鉄板へと生まれ変わらせる。
コンクリートや石よりも、地面の方が比較的熱を溜め難いとは言うものの、それも体感温度で言えば大した差ではない。
風の恩恵が1ミリでもあれば……と思いきや、稀に吹く風は大気中の高温を引っ掻き回すだけの熱風となり、涼とは全く縁遠い。
加えて、スコールの肌は強い日差しに弱く、日焼けすると赤くなって炎症を起こしてしまう。
極端な熱さと、皮膚を焼く日光を恨むのは、無理もない。

とは言え、折角の夏休み。
何処にも行かずに家で本の虫になってばかりと言うのも如何なものか───と、思っていた所だった。
自分一人であれば、最終的に「面倒だからこのままで良い」と言う結論に行き着くのだが、今回は兄と父が一緒だった。
折良く揃って休みが取れた二人に、「海に行かないか」と誘われた。
ラグナだけでなく、滅多にこうした事を言わないレオンからも誘われて、流石に一も二もなく「嫌だ」とは言い辛く、スコールは少しの間考えた。
それから、面倒な事に、夏休み中の課題に『旅行記録、若しくは自由研究』と言うものがあった事を思い出し、課題消化のついでと言う理由で、海行きに頷いた。

休暇前の最後の仕事に向かった父は、明日現地で合流する事にして、スコールとレオンは一足先に海に向かった。
到着したのは、別荘付の完全なプライベートビーチだ。
静寂と海の音のみが響く海岸は、見様によっては寂しいかも知れないが、人込み嫌いのスコールには願ったり叶ったりである。
下世話な話であるが、大企業の社長である父と、国内の指揮を任されている兄に感謝した。

一週間と言う長期滞在を予定して、多くなった荷物を別荘に運んだ後、スコールは海岸に向かった。
別荘から出た目の前に海があると言うのは、中々に贅沢だ。
海に来たからと言って、はしゃぐような性格ではないスコールだが、街の喧騒から遠く、耳に届く音は漣だけと言うのは心地が良い。
寄せる白波に足元を浸し、車の長時間移動で固まった背中を伸ばしていると、後ろから声がかかる。


「気に入ったか?」
「……悪くない」


砂浜を踏んで、ゆっくりと近付いてきた兄に、スコールは振り返らずに言った。


「人もいないし、静かだ」
「父さんが来れば、静かではなくなりそうだけどな」


くすくすと笑う兄の言葉に、スコールの眉間に皺が寄る。
が、それは溜息と共に直ぐに解けた。
父のお陰で自分は此処に来ているのだし、賑やかさに辟易すれども、彼を嫌いになる理由にはならない。

レオンはスコールの隣に並ぶと、先の弟と同じように、腕を頭上に上げて背筋を伸ばした。
此処まで車を運転したのはレオンだから、スコール以上に彼は疲れている。


「…大丈夫か」
「問題ない。どうせしばらくは、のんびりするしかないんだしな」


背中を目いっぱい伸ばしきって、レオンは言った。

此処へ来る道すがら、途中にあったスーパーで今日明日の食糧は買い込んで来た。
日用雑貨や消耗品も、差し当たって必要と思い付くものは揃えたので、今日はもう車を出す予定はない。
会社で余程の事があれば呼び出しを喰らうが、そうでなければ、今日の午後は丸々寝倒しても良い位だった。

それで、とレオンが隣に立ち尽くす弟を見る。
蒼と蒼が交わって、レオンが柔らかく微笑むと、スコールは顔を赤らめて目を反らした。
そんな弟に、可愛いものだと笑みを押し殺しつつ、


「今から泳ぐか?」
「……いや。日焼けはしたくない」
「そうか」
「ラグナが来たら、どうせ泳ぐ羽目になるんだろうし」
「まあ、そうだな」


息子達よりもよっぽど子供のような父の事だ。
この海岸で、きっと息子達以上に遊び倒すに違いない。
海で泳ぎ、砂浜で城を作り、磯や岩場に隠れた生物を探し……と、出発前から彼は遊びの計画を立てていた。
勿論、その計画は息子達が参加する事が前提で、レオンは勿論喜んで、スコールは渋々顔でそれに付き合う事を決めている。


「さっき父さんから連絡があった。明日の午後にはこっちに着くそうだ」
「…迷わずに来れるのか?」
「キロスさんが送ってくれるそうだ」
「…じゃあ、大丈夫か」


兄弟で先に海に行くと決まった時、スコールがいの一番に不安になったのは、父の酷い方向音痴振りだ。
一人でちゃんと来れるのか、と言えば、カーナビがあるから大丈夫!と彼は言ったが、何故かカーナビを使っても彼は迷子になるのである。
そのカーナビも、一人で入力しようとすると、打ち間違いや変換ミスをして、全く違う場所に連れて行かれそうになったりする。
これでは、息子達が不安になるのも無理はない。
旧知の友人達は、そんなラグナをよくよく理解しているので、遠方へ出かける時には、彼等が足を買って出てくれている。

一通りの不安が消化されて、スコールは気持ち軽くなった踵を返した。
別荘へ戻るスコールの後を、レオンものんびりとついて歩く。


「海風は気持ち良いが、やっぱり日差しが強いな」
「曇れば良いのに……」
「生憎、向こう一週間は晴れだ。泳ぐなら昼より朝の方が良いかもな」
「朝はラグナが起きないだろ」
「どうかな。皆で旅行なんて久しぶりだから、早起きするかも知れないぞ」


レオンの言葉に、スコールは朝からハイテンションな父を思い浮かべて足を止める。
兄が追い付いてみると、弟は判り易く顔を顰めていた。

レオンはくすりと笑って、渋い顔の弟の頭を撫でる。


「早起きしたら、次の日はきっと起きれないだろうから、一日くらいは付き合ってやろう。な?」


家族水入らずで過ごせる日と言うのは少ない。
仕事であったり、学校や課題であったり、日常的な擦れ違いは珍しくなかった。
その事実は、致し方のない事とは言え、家族を愛して已まないラグナには、少々寂しい現実だ。
だから家族が揃って過ごせる時は、少しでも長く触れ合っていたいからだろう、朝から晩まで息子達を構い倒すのがお決まりだった。

思春期故に殺しきれない反発心や、父の言動に対する抵抗感は否めずとも、ラグナの気持ちはスコールもきちんと判っている。
「……一日だけな」と言って溜息を漏らすスコールに、レオンは笑って彼の髪をくしゃくしゃと撫でて、


「じゃあ、それまでは、俺がお前を一人占めだな」


独り言のように、けれどもはっきりと聞こえる声で呟いたレオンに、スコールは顔を上げた。
ぱちっ、とごく近い距離で蒼と蒼が交じり合う。

丸い目で見上げる弟に、レオンはゆぅるりと笑みを浮かべた。
その貌が、柔らかな褥の中で見るものだと気付いて、スコールの顔が真っ赤に染まる。
判り易いスコールの反応に、兄は満足そうに微笑んで、汗の滲む額に唇を押し当てた。





プライベートビーチでいちゃいちゃする二人が浮かんだので。
人目を気にしなくて良いっていいね!
それでも恥ずかしがる弟が、お兄ちゃんは可愛くて堪らないそうです。
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オフライン活動について

  • 2015/07/20 21:56
  • カテゴリー:お知らせ
一身上の都合により、2015年のオフライン活動を休止とさせて頂きます。
 
昨年10月の東京FFオンリーでの直接参加の後、関東方面への遠征が厳しくなり、今年2月まではなんとか確保していた執筆時間も、現在では殆どなくなりました。時間の確保が本格的に難しくなったのは3月下旬頃からで、早くアナウンスしなければと思っていたのですが、あれよあれよと言う内に7月になってしまいました……
現在は、二日以上をかけてSS一本がやっとと言う状態です。しっかりと机に向かって、きちんと話を練る時間はほぼありません。無理に書いたものを人前に出すのは嫌なので、元のリズムに戻るまでは、オフ本の執筆は止めています。
この為、6月になんとか出したいと思っていたフリスコパラレル本【ペルシカ】の後編や、引き続き継続中の【Lion that retruns to crowd】【絆】の発行も、執筆停止の状態です。楽しみにしていて下さった方々、本当に申し訳ありません。
 
いつになったら現状が変わるのかは判りませんが、執筆途中の話は勿論、まだまだ書きたい話はあるので、同人活動そのものを終わらせるつもりはありません。
ツイッター上でも、低浮上ではありますが、湧いては腐った話に食い付き、人の呟きを勝手に頂いて、設定を広げてます。結構元気に生きてます。
 
通販受付に関しましては、通常通り受け付けておりますが、返信・発送ともに遅れる可能性が高いです。自宅を空ける事が難しい為、配送作業を迅速に行う事が出来ません。通販をご利用下さる方は、申し訳ありませんが、ご了承ください。
 
 
オフライン活動休止に伴い、サイトの更新率も低下しています。元々オフ本作業に入ると、オンラインは放ったらかしにしている事が常でしたし、更新頻度にもムラがあったので、今更ですが……
来月のスコールの誕生日や、毎年ツイッターでリク募集していた8月8日のSS投下も、今年は書けないと思います。なので、今まで以上に動きのないサイトになってしまいますが、また動き出せる日まで長い目で待って頂けましたら幸いです。
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[クラスコ]ここは帰り道の途中

  • 2015/07/08 23:01
  • カテゴリー:FF


大学での授業を終え、アルバイトの配送業務を終えると、体力に自信があるクラウドと言えど、襲い来る疲労感からは逃れられない。
必要最低限の教材や、財布やタオルを入れた、然程大きくはない鞄が、無性に重く感じられる。
此処から当然乍ら、帰宅しなければならないのが、また体を重くする。
テレポートってどうやったら出来るようになるんだ、等と考えながら、愛車の大型バイクへ向かう。

社員用駐車場がある裏口へと向かう途中、これから夜勤に入るのであろうザックスと擦れ違った。
ザックスは気合を入れるようにジャケットの腕捲りをしながら、横切る友人を振り返り、


「クラウド。来てるぞ」
「……ああ」
「お熱いね~」


判り易く揶揄うザックスに、クラウドは何とも言えない貌をしていた。
怒るような事ではないが、照れる程の事でもないし、しかし浮かれた顔をするのも違う気がして、結局無表情になる。
が、ザックスはクラウドの無表情にも何か意味を読み取るらしく、茶化すように口笛を吹いた。

ザックスと別れ、突き当りの裏口ドアを開ける。
すっかり暗くなった駐車場の端にある、自転車置き場へと向かう。
自転車置き場には、資材庫から都合させて貰ったハロゲンライトが備えられており、今日も明々と照っている。
その光の陰となる、自転車置き場を囲う壁のすぐ外側に、ぽつんと寄り掛かる人影があった。

ハロゲンランプは熱を持ち、この時期だと誘蛾灯にもなる。
人影は、恐らくその両方を避けたのだろうが、暗い場所は危険も多い。


「こっちで待っていて良いって、いつも言ってるだろう」


クラウドが人影の名を呼べば、影はゆっくりと動いた。
光の世界を嫌うように、のろのろと灯りの下に現れたのは、進学校の制服姿の恋人───スコールだ。

夕方を過ぎ、夜と言って過言のない時間にあって、学生がこんな場所にいるのは感心される事ではないだろう。
しかし、スコールは週の半分は此処に来て、クラウドが仕事を終えるのを待っている。
難関の進学校に通いつつ、進学塾にまで通っているスコールは、こんな時でなければ自由な時間がないのだ。
つまりスコールは、恋人との一時の逢瀬の為に、塾終わりに、家とは反対方向にあるクラウドの仕事場まで足を運ぶのだ。

バイクを自転車置き場から運び出すクラウドの下に、スコールはのろのろと近付いた。
その足取りに、少し様子が可笑しいな、とクラウドは気付く。
彼の性格上、嬉しそうに駆け寄って来てくれる事は先ずないが、こうまで判り易く足が重そうなのも初めてだ。


「何かあったか?スコール」
「……別に……」


落ち込むような事でもあったのかと訊ねてみたクラウドだったが、スコールの反応は捗々しくない。
これも予想の範疇なので、クラウドはスコールの返事の瞬間、じっと彼の表情を観察した。
が、スコールはその視線を察したか、ふいっとそっぽを向いてしまう。

すたすたと歩き出したスコールを追って、クラウドはバイクを押しながら帰路に着く。
足の長いスコールは、その歩幅を存分に生かし、クラウドを置いて行かんばかりの早さで歩いている。
平時のクラウドならば特に苦も無くついて行く所だが、今はバイクを押している上、体も疲れ切っている。
ちょっと待ってくれ、と言えばスコールは歩く速度を落とすかも知れないが、前を歩く背中には若干の拒絶の色が見えて、その一言すらクラウドは言い辛かった。

どうしたものかと逡巡している間に、二人の間は距離が開いていた。
クラウドはバイクを押しながら歩調を速めるが、途端、スコールはそれを察したように更に早く歩く。
一向に縮まらない所か、開いて行く距離に、流石にこれは不味い、とクラウドは声を大きくした。


「スコール、ちょっと待ってくれ。少しで良いから」
「………」


クラウドの声に、スコールは数歩進んでから、足を止めた。
振り返らないスコールの背中が、狭い路地の中にぽつんと光る街灯の下に映し出されている。

クラウドは、光と闇の境界線の手前で足を止めた。


「スコール?」
「………」


名を呼んでみると、スコールの肩が僅かに跳ねた。
クラウドは首を傾げ、少し逡巡したが、ゆっくりとスコールへと近付く。


「スコール」
「………」


もう一度呼ぶと、スコールはゆっくりと振り返る。
俯いたままの彼の貌は、クラウドからはまだ見えない。
しかし、街灯に照らされたスコールの耳は、ほんの少し、赤らんでいるように見える。

やっぱり何かあったんだな、とクラウドは確信した。
同時に、それは決して単純に嫌なものをスコールに齎した訳ではない事も察する事が出来た。
可愛いな、と言う気持ちが貌に滲みそうになるのを、クラウドは無表情に押し隠して、小さな光の下で佇む恋人の頬に手を伸ばす。


「ザックスに、何か言われたか?」
「……!」


クラウドの指先に、ぴくっ、とスコールの震えが伝わった。

濃茶色の長い前髪を、そっと退けてやると、相変わらず地面を睨んだままの蒼灰色が覗く。
其処に映っているのは拒絶ではなく、戸惑いに似ていて、困惑も混じっている。
白い筈の頬は、耳と同じように赤くなり、噛んだ唇は音と一緒に自分の本心を隠そうとしているようだった。

全く、何を言ってくれたのだろう───と、気の良い友人を思い出して苦笑する。
彼の事だから、決して悪意のある事は言っていないと思うが、スコールはとても神経質で繊細だ。
ザックスやクラウドにとっては軽く流せる程度の事でも、間に受けていつまでも覚えている。

クラウドはくしゃくしゃとチョコレート色の猫毛を撫でた。


「何を言われたんだ?」
「……別に」
「そうは見えないんだが」


クラウドがそう言った所で、スコールは自身の頭を撫でている手を振り払う。
ようやく此方を見た蒼が、じろりとクラウドを睨んだが、頬が赤い所為で迫力も何もない。

睨む恋人を、クラウドはじっと見詰めていた。
スコールは意地を張るように、しばらくの間クラウドを睨み続けていたが、先に目を反らしたのはスコールだった。
他人と目を合わせる事が苦手なスコールにとって、自分が本当に頭に来ている時以外、睨み合いを続けるのは無理がある。
その上、頑固ではあるが押しに弱い所があるスコールは、見詰める碧眼に根負けしたように、ぼそぼそと口を開いた。


「……あんたの友達……何なんだ」


スコールは明確な名前を出さなかったが、ザックスの事を言っているのは直ぐに判った。
何なんだと言われてもな、とクラウドは苦笑いする。


「良い奴だぞ」
「……知ってる。でも、……バカじゃないのか…あんなの……」


スコールは言葉少なであるが、口に出す言葉についてはかなり吟味する方だ。
そんな彼が、恋人の友人について、ぼやかしつつではあるが「バカ」と称するのは、それなりに理由がある時だろう。

何を言われたんだ、とクラウドは重ねて訊いた。
スコールは肩にかけていたスクールバッグの肩紐を握って、うう、と小さく唸る。
赤らんでいた顔や耳が、益々赤くなって、蒼灰色が八つ当たり気味にクラウドを睨んだ。


「毎日お迎え、とか……あ、熱々、とか……」
「間違ってないだろう」
「毎日なんか来てないし、あ、熱々なんかでもない!」


言われた時の恥ずかしさと、改めて思い出して羞恥心が振り切ったか、スコールは声を大きくした。
噛み付くように叫んだスコールに、クラウドは零れそうになる笑みを堪える。


「あそこに行くのは週の半分だ、塾が終わってついでに…」
「家は反対方向なのにな」
「ら、ラブラブ、とか、熱々とか、そんなのじゃ…」
「俺はそのつもりでいるんだが」
「あ、あんたもバカなのか!」
「当然だろう。俺はスコールバカなんだ」
「……!」


真顔できっぱりと言い切ったクラウドに、スコールの顔は沸騰したように真っ赤になった。
今日が真冬なら、頭の天辺から勢いよく湯気が噴き出しそうな程の赤面ぶりだ。


「やっぱり、あんたも、あんたの友達もバカだ!」
「怒ったか?」
「知らない!帰る!ついて来るな!」
「そう言われても、俺の帰り道もこっちだ」


バイクを押して後をついて来るクラウドに、スコールは喚くように追い払おうとしたが、意味のない事だ。
そして、バイクがある所為で早くは走れないクラウドを、置いて行く程に彼の歩調も速くはならない。
自分の言動の矛盾に、果たして彼は気付いているだろうか、とクラウドは喉の奥でくつくつと笑う。

細い道を通り抜けると、国道沿いに出た。
片道四車線の反対側の歩道に渡ろうと、横断歩道に向かったスコールだが、タイミング悪く信号が赤に変わる。
くそ、と毒づく彼の隣にクラウドが並び、バイクの座席ボックスからヘルメットを取り出す。


「ほら、スコール」
「……」
「送ってやるから」
「……要らない」


銀のライオンのステッカーが貼られた、スコール専用のヘルメット。
スコールはそれをちらりと見遣った後、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
そうして此方に向けられたスコールの耳は、茹でたように赤い。

クラウドはくすりと笑って、ほら、と言ってヘルメットを放った。
スコールは反射的にそれをキャッチするが、手にしたそれを睨んだまま、中々被ろうとしない。

クラウドはバイクに跨り、エンジンをかけて、スコールを後座席に促す。


「遠いんだから、無理するな」
「してない」
「密着するのが恥ずかしいか?」
「このっ!」


クラウドの一言に、スコールはヘルメットを投げつけた。
確りとそれをキャッチして、クラウドはくつくつと笑う。


「別に誰に見られる事もないんだから、今更恥ずかしがる必要はないだろ?」
「見られてるんだよ!あんたの友達にも、ティーダにも!」
「その面子なら気にする事はないだろう」
「俺が気にするんだ!」
「じゃあ、次の時にはフルフェイスを買って置くか。それなら顔が見えないから、誰かに見られても安心だろ」
「そう言う問題じゃない!」


スコールにしてみれば、クラウドの背中にぴったりと密着している場面を、他人に見られているのが問題なのだ。
ただでさえ触れ合いが苦手で、それでもクラウドには触れたいと思う気持ちもあり、板挟みで葛藤した末に、最近ようやくクラウドのバイクに乗る事に慣れて来た所に、友人達からの目撃報告。
クラスメイトのティーダに「あんなにくっついちゃって、熱々っスね~」等と言われた日には、スコールは恥ずかしさで爆発しそうだった。
その上に、今日のザックスの「毎日お迎えご苦労さん、ラブラブだねー」の一言。
ティーダにもザックスにも、決して悪意があってスコールを揶揄った訳ではないが、思春期真っ只中で人一倍人目を気にするスコールには、死刑宣告も同然だったのだ。
そんな事があった日に、クラウドのバイクに同乗する気にはならない。

が、クラウドも譲るつもりはなかった。
彼にとって、スコールを乗せて夜の街を走るのは、大切な時間だったのだ。
生活リズムの擦れ違いや、そろそろ受験シーズンに入る年下の恋人と、誰に邪魔をされる事もない、数少ない二人きりの時間なのだから。


「良いから乗れ、スコール。これ以上遅くなったら、親父さんがまた煩いんだろう?」


スコールの父は、一人息子を目に入れても痛くない程に溺愛している。
塾の時間はとっくに終わっている筈なのに、中々帰って来ない息子をきっと心配しているに違いない。
以前、クラウドの仕事が押してしまい、スコールの帰りが遅くなった時は、息子が事故か、ひょっとして人攫いに遭ったのではと心配し、警察沙汰になる所であった。
父の友人は勿論、ティーダやヴァンと言ったスコールのクラスメイトにまで連絡していた為、ティーダ達からも盛大に心配された。
あの大騒ぎは二度と御免だ、とスコールは思っている。

この時間から歩いて家まで帰るとなると、相当の時間がかかる。
スコールは苦い顔を浮かべていたが、クラウドがもう一度ヘルメットを差し出すと、素直に受け取った。
スクールバッグを後ろの座席ボックスに入れ、バイクに跨る。


「ちゃんと掴まっていろよ」
「……判ってる」


後ろから回されたスコールの腕が、ぎゅ、とクラウドの腹を締め付けた。
背中にヘルメットの堅い感触が当たったのを感じて、クラウドはバイクを発進させるる。

走っている最中、背中で小さく、くそ、と毒づくのが聞こえた。
クラウドは運転に集中しつつ、視認を兼ねて、バックミラーで背中の少年を覗く。
しかし、見えるのは赤くなった耳だけで、顔が見れないのが残念だ。
それでも、あれだけ渋って見せた割に、掴まる手はしっかりと力が込められているのが、いじらしくて愛らしい。
バイクから落ちない為と言えば理はあるが、それだけで耳まで赤い理由にはならないだろう。

明日もスコールは塾がある。
今日の明日で、彼はまた迎えに来てくれるだろうか。
来てくれると良いな、と背中の温もりを確かめながら、クラウドはハンドルを握り直した。





7月8日なのでクラスコ!

うちのクラウドは、何かとスコールを迎えに行ってる気がするので、スコールの方からに迎えに行かせてみた。
恥ずかしいとか言うけど、多分このスコールは、クラウドのバイクに乗るのを嫌がってない。
そんで明日は絶対来ない、とか思ってるけど、気付いたら足がそっちに向かってる。
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[レオン&子スコ]ほしくずの橋

  • 2015/07/07 22:30
  • カテゴリー:FF


昨夜の内から降り出した雨は、夜が明けても止んでいなかった。
元より、この時期に雨は珍しいものではなく、寧ろ仕様のない事と言える。
二日前に晴れ間が覗いていたのは偶然の話で、基本的には雨か、良くても曇りが続くのが常であった。

窓の右上に吊るされたてるてる坊主が、少し所在なさげに頭を垂れている。
満面の笑みを浮かべた顔が、反って見る者の侘しさを助長させるように見えた。
背中の方では、テレビが今日の天気予報を教えている。
案の定、聞こえる言葉は「雨は降り続く模様です」と言うもので、晴れマークがついているのは、遠くの地方だった。
雨雲はすっぽりと街を覆い尽くし、風もないので、何処かへ旅立とうと言う気もなさそうだ。


「雨……」


レオンの膝の上で、窓の向こうを見詰めていたスコールが、つまらなそうに呟いた。

小さな手には、昨日レオンが職場で分けて貰った笹の葉がある。
長さ30センチ程度の小さな笹には、短冊が二つ吊るされていた。

ぎゅう、とスコールの両手が笹を握る。
俯いた幼い弟の顔は、レオンの位置から見ることは出来ず、旋毛頭しか見えない。
けれども、彼がどんな顔をしているのかは、手に取るように判った。
寂しそうに泣きそうに、それでも頭の良い子だから、天気ばかりは仕様のない事だと判っていて、泣かないように必死に堪えているに違いない。
いじらしいその姿に、レオンは口元を緩め、


「大丈夫だよ、スコール」
「……?」


兄の言葉に、スコールはきょとんとして顔を上げた。
前髪が開いて、露わになった額に唇を落とし、同じ場所を優しく撫でてやる。


「晴れないのは残念だけど、お願いごとはちゃんと叶うよ」
「……ほんと?」


雨が降ったら、雲が逃げなかったら、天の川が見れない。
晴れなかったら、天の川を渡って逢う筈の恋人たちが逢えない。
恋人たちが逢えなかったら、笹の葉に吊るした短冊のお願い事は叶わない。

────そんな話を、スコールは保育園で聞いたらしく、お陰で今日と言う日に晴れて欲しいと色々な事を頑張った。
窓の上のてるてる坊主は勿論、保育園の女の子から聞いたおまじないや、風を起こして雲を退かせようと、空に向かってふーっふーっと息を吹きかけていたりもした。
しかし残念ながら、幼子の努力の甲斐はなく、空は見事な雨曇り。
だから余計に、スコールは泣きたくて堪らないのだ。

生憎、レオンに天気をどうにかする事は出来ない。
それでも、雨空のように曇ってしまった弟の貌を、晴れさせてやりたかった。

「此処から見る俺達にとっては、今日はずっと雨だけど、あの雲の向こうには、ちゃんと天の川があるんだ」
「……天の川、あるの?オリヒメ様とホコボシ様、ちゃんと会えるの?」


不安げに確かめる弟に、レオンは頷いた。


「雲の向こうは、ずっと晴れてる。お星様もお月様もちゃんとある。だから、大丈夫だよ」
「でも、でも。天の川、雨のせいで一杯になったりしない?雨のせいで、お星様の橋がなくなっちゃって、渡れなくなったりしない?」


スコールの言葉に、レオンはくすくすと笑った。
氾濫と言う単語をスコールが知っているかは定かではないが、絵本やアニメで見たのだろう、大雨が降ると川にかけられた橋が沈んだり流されたり、渡れなくなってしまう所を想像しているようだった。

笹の葉を握り、縋る瞳で兄を見上げる弟に、レオンは笑顔で頷いた。


「大丈夫。お星様の橋は凄いんだ。雨が降って川の水が増えても、流されないし、壊れない。なくなっちゃったりしないんだ」
「そうなの?でも、雨が降ったら、お星様はなくなっちゃうでしょ?」
「お星様はなくならないよ。雨や雲より、もっと高い所に移動して、天の川を渡れるようにしてくれるんだ。ほら、うちの近くにもあるだろう?高い所に上って、道路を渡る橋。あれと同じ感じだな」


レオンの言葉に、スコールは家の近くに立っている、大きな道路の橋───歩道橋を思い出した。
車両の通行が多い場所に設置されたそれが、スコールは好きだった。
歩道橋に上ると、いつもと違う視点の街が見え、冬の日暮れに兄と一緒に渡る時は、街の光が星の様に其処此処に溢れ返っているのを見る事が出来る。

あの歩道橋が、天の川にも。
更にスコールは、きらきらと綺麗な星くずを集めて作られた橋が、普通の橋から大きな欄干橋に生まれ変わるのを想像していた。
テレビで見た、海の上を遠く伸びる、大きな大きな橋だ。
大きな分だけ使われる星も増え、きらきらとより一層と眩しい光を放つ、星の橋が出来上がる。

雲の向こうの星よりも、きらきらと輝き始めたスコールの瞳を見て、レオンはほっと安堵する。
もう一度空に向けられたスコールの貌は、もう泣きそうな気配はなかった。


「じゃあ、オリヒメ様とヒコボシ様、会えるんだね」
「ああ」
「お願いごとも叶うんだ」
「うん」
「えへへ」


嬉しそうに、スコールは握った笹の葉を揺らす。
ぱたぱたと足が弾むように跳ねるのが、レオンには愛らしくて堪らない。
ぎゅうっとその小さな体を抱き締めてやれば、きゃぁ、と嬉しそうな声が上がった。

楽しそうに笑う弟の頬にキスをすると、スコールはきょとんと瞬きをして、また笑う。
お返し、とレオンの頬に柔らかい感触が触れて、レオンは抱き締める腕に力を籠めた。





七夕でレオンお兄ちゃんと子スコ。
まだまだ梅雨真っ盛りで、星が見えなくてしょんぼりする子スコが浮かんだので。

織姫と彦星が逢えないとお願い事も叶わない、と言う話は、一つ年上のロマンチストな子から聞いたんだと思います。
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[ティナスコ]見つめていたい

  • 2015/06/08 21:25
  • カテゴリー:FF


じっ、と此方を見詰める藤色の瞳が、如何にも何かを言いたそうで、しかし何を言わんとしているのか判らなくて、スコールはいつも目を反らす。

ウォーリア・オブ・ライトのような、穴を開けそうな強い視線とは違う、クラウドのように茫洋とただ眺めているだけと言うものとも違う、バッツやジタンのように好奇心を満たす為に下らない謀をしているものとも違う。
きっと悪い意味で見詰めている訳ではないのだろう、と言う事は、彼女の性格上、判るつもりだった。
苦手に思われている事はあるかも知れないが、そう言う相手をまじまじと見詰めていられる程、彼女は大胆ではない筈だ───少なくとも、スコールが知っている限りでは。
そう思えば思う程、彼女に自分を見詰められる理由と、その眼が映している感情が読めなくて、スコールは目を反らしてしまう。

そうやってスコールは、内々の疑問を胸の内に留めていたのだが、ジタンとバッツはそうではなかった。
特に、秩序で唯一の女性であるティナを愛して已まないジタンは、彼女の視線を独占状態にしているスコールに、度々嫉妬していた。
ティナちゃんに何をしたんだよ、と詰め寄るジタンに、スコールは俺が知りたい、と無言と眉間の皺で答えた。
胸倉を掴み、羨ましい羨ましいと揺さぶる彼をバッツが宥め、じゃあ聞いてみよう、と言った。
彼の言はそのまま実行へと移され、彼女と面と向かう事に気が進まなかったスコールも、「このままだとスコールだって落ち着かないだろ?」と言うバッツの一言に押され───と同時に、問答無用で彼に手を引かれ───、ティナの下へと向かい、


「スコールを見てる理由?」


聖域の屋敷のリビングで、モーグリのぬいぐるみをふかふかしていたティナを見付けると、バッツは直球で訊ねた。
藪から棒にも思える突然の質問に、ティナはどうして突然そんな事を聞くんだろう、と首を傾げる。


「最近、ティナってスコールの事よく見てる気がしてさ。自覚、なかった?」
「んー……ううん」


自覚の有無には、ティナは少し考えた後、首を横に振った。
柔らかな亜麻色の髪と、ポニーテールを結ぶリボンがふわふわと揺れる。


「意識してる見てるつもりじゃなかったけど……あ、私、またスコールの事見てるって、そう言うのは思った事があるよ」
「スコールぅうう!お前ティナちゃんに何したんだよ!」
(だから、それを聞きに来たんだろう…!)


半ば無意識化で行われていた行為だと聞いて、ジタンが血の涙でも流しそうな形相でスコールの身体を揺さぶる。
何をしたのか思い出せ、そして教えろいや教えて下さい、と言うジタンに、スコールは心底迷惑な顔を返して見せていた。

そんな年下達を気にせず、バッツはティナとの会話を続ける。


「なんかスコールの事で、気になる事とかあったのか?」
「うん、ちょっと。…ひょっとして、迷惑だった?」
「全然。ただ、やっぱり見詰められてると、なんでかなって思うからさ」


特に疾しい所がなくとも、熱烈な視線を長い時間受ければ、誰でも少しは気になるものだろう。
バッツなら視線を感じて直ぐに「何?」と問う事も出来るし、ジタンなら相手がティナなら───明らかに負の感情を宿した視線でなければ───理由は判らなくとも喜んだ所だろうが、スコールはそうではない。
スコールは、他者の視線と言うものを気にし、人一倍気配に敏感で、他人から寄せられるプラスの感情に疎い上に免疫がない。
そんな彼にとって、理由不明のティナの視線は、どうして良いのか判らない。

とは言え、迷惑や嫌な気持ちがあった訳ではない。
ティナの視線に対し、彼の中にあったのは、純粋な戸惑いであった。

ティナは、スコールが迷惑がっていた訳ではないと言うバッツの言葉に、ほっと安堵する。
しかし、見つめ続けていた事で、彼を混乱させた事は申し訳なく思い、ぬいぐるみを抱き締めてスコールを見上げ、


「ごめんね、スコール。困らせちゃって…」
「……いや…」
「気にしなくて良いって、ティナちゃん。で、なんでスコールを見てたんだい?」


言葉少ないスコールに代わり、ジタンが改めて訊ねると、ティナはぬいぐるみに顎を埋めて、上目遣いでスコールを見る。
柔らかな藤色の瞳の中で、小さな星がきらきらと揺れていた。

彼女の瞳は、まるで生まれたての赤子のようだと、スコールは思う。
未だ善も悪もないような、真っ白なイメージだ。
その真っ白なキャンバスに、自分が映り込むと、自分の奥底に隠した苦いものが見透かされそうで、それがスコールの苦手意識を震わせる。

しかし、今ばかりは目を反らす訳には行かないだろう。
じっと見詰める藤色を受けつつ、早く何か言ってくれ、とスコールは無表情の下で切実に願う。


「うん……」


スコールを見詰めたまま、ティナは何かを確認するように呟いた。
まじまじとスコールを見ていた瞳が細められ、ティナの貌は柔らかな微笑みに変わる。


「スコールって、いつも凄く落ち着いてるでしょう?」
「……」
「まあ、そうだな」
「バッツに少し分けてやりたい位になー」


尻尾を揺らして言ったジタンに、なんだよー、とバッツが拗ねた顔をする。
スコールはそんなバッツを、胡乱な眼で見た。
ティナは三人の表情を見てくすくすと笑い、


「凄く頼りになるし、色んな事も知ってるし」
「うんうん」
「でも、時々、凄く可愛い」
「うんうん」
「……は?」


ティナの言葉に、ジタンとバッツは快く頷くが、スコールには聞き捨てならない一言が聞こえた。
ちょっと待て、と言いかけたスコールだったが、サイドに控えた二人が素早くスコールの口を塞ぐ。

ティナは更に続けた。


「朝が早かった時、寝癖がついてて気付いていなかったりとか。ご飯を食べてる時、とっても丁寧に食べてるとか。カードをしてる時、凄く嬉しそうだったり、凄く悔しそうにしてたり」
「うんうん」
「判る判る」
「カードの時って、凄く判り易いんだよね。勝った時、目がキラキラしてるの。あと、剣を磨いてる時とか、真剣で、夢中になってる時も」


頬を赤らめて語るティナは、どうやら随分と興奮しているらしい。
どちらかといえば大人しい印象の彼女が、そんな様子を見せる事は、滅多に見られるものではなかった。
バッツはそんなティナを微笑ましそうに見詰め、ジタンはティナの笑顔に見惚れている。
が、スコールだけは、そんな悠長な事は言えなかった。

ティナがつらつらと挙げる、自分に関する事。
自分が夢中になっている所や、カードでムキになった所まで見られていたと知って、彼の顔はティナとは別の意味で赤く染まっていた。
それを語るのがティナだと言うのが、また思春期真っ只中の彼には辛い。
バッツやジタンやティーダを相手にするように、力尽くで黙らせると言う事も出来ないから、彼はどんどん赤くなるしかない。


「あとね。寝顔、可愛いの。眉間のシワも取れてて、子供みたい」
「こど……」
「私、スコールの寝顔、好きだな」
「……!」


モーグリのぬいぐるみを抱き締め、頬を赤くして笑うティナの言葉に、スコールは真っ赤になった。
その言葉が、恋愛の意味のないものだとしても、親愛の情であるとしても、年頃の少年が異性に正面から“好き”と言われて平静でいられる訳がない。

真っ赤になって固まったスコールを見上げて、ふふ、とティナは笑う。
彼女の前で、スコールは、バッツにわしゃわしゃと髪を掻き撫ぜられ、ジタンにずるい!代われ!とせっつかれていた。



音を失って、ぱくぱくと唇を開閉させるだけの少年を見ながら、やっぱり可愛い、とティナは思った。





6月8日と言う事でティナスコ!

可愛いものは、ずっと見ていたくなるよねって言う。
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