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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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[バツスコ]たまにはこんな退屈な日々

  • 2015/05/08 21:59
  • カテゴリー:FF


木の上に上ったまま、降りられなくなっていた仔猫を助け、着地に失敗して足の骨を骨折したのが、今から一週間前。
回復力の早いと自負しているとは言え、切り傷や打ち身と違い、折れた骨は簡単にはくっついてくれない。
そんな訳で、バッツはしばらくの間、入院を余儀なくされてしまった。

入院生活はとても退屈である。
基本的に、じっとしている事が余り好きではないので、ベッドの上で淡々と時間の経過を待つしかないのが辛い。
ギプスで固定された足を、天井から釣っている為、尚の事身動きは自由にならなかった。
仕様のない事、且つ自分のミスによる、云わば自業自得と言われれば返す言葉もない。
止む無くバッツは、計画していた冒険と言う名の散策や遠出をキャンセルし、退院日を待つのだった。

バッツが入った病室は大部屋となっており、全部でベッドが六つ、その内の半分が既に埋まっていた。
飾らない性格のバッツは、直ぐに病室の雰囲気に馴染み、入院初日から同室者達とは親しくなった。
風に誘われる如く、ふらりとあちこちに足を運んだ時の土産話等、話題には事欠かない。
身振り手振りで面白おかしく、時に愉快な事件に巻き込まれるバッツの土産話は、バッツと同じく暇を持て余す入院患者には非常に受けが良く、回診に来た看護士も交えて、話に花が咲く。

しかし、やはりバッツはじっとしているのが苦手だった。
早く足を治して、次の冒険に行きたい────と、思いつつ。


「バッツ」


呼ぶ声に、うつらうつらと舟をこいでいたバッツの意識は、一気に覚醒に向かった。
眠りかけていた事など忘れたように、ぱっちりと開いた褐色の目に、深い蒼が映る。


「スコール!」
「煩い。病院だろ、静かにしろ」


両手を広げて、よく来たと言わんばかりに喜色満面のバッツに対し、蒼───スコールは至って冷静に言った。
おっと、と両手で口を塞ぐバッツに、スコールは呆れたと溜息を吐く。

スコールは学校帰りのまま此処に来たのだろう、制服に学生鞄を携えていた。
いつもきっちりと着崩さないスコールは、今日も通例に則り、服装に乱れはなく、優等生然としている。
そろそろ暑くなってきたと言うのに、辛くないのだろうか、と思ったバッツは、その矢先に、彼の首筋が酷く赤くなっているのを見付ける。
珠になった汗まで浮いているので、きっと暑くない訳ではないのだろう。
しかし、白い肌の彼は日向に出ると直ぐに皮膚を赤らめてしまう為、迂闊に肌を露出する事も出来ないのだ。
早く制服の衣替えが出来れば良いな、と思いつつ、バッツは身体を伸ばして、ベッド横の備付冷蔵庫の蓋を開けた。


「スコール、冷えてるジュースあるぜ」
「……貰う」
「はいよ」


冷蔵庫の中に入れてあるペットボトルを取り出して、スコールに差し出す。
スコールは冷蔵庫の上のトレイに伏せられていたコップを借り、オレンジ色の液体を其処に注いだ。
────彼が使うそのコップが、スコール専用に用意されたものであると、彼は知らない。


「……ふう」
「外、今日も暑いのか?」
「……ああ」


冷たいジュースをちびちびと飲みながら、スコールは一息吐いた。
ベッド下に収められていた丸椅子を出して腰を下ろすと、鞄からタオルを取り出す。
柔らかな布を額に、首筋に押し付けるスコールに、バッツは眉尻を下げて言った。


「もう上着も脱いじゃえよ。学校じゃないんだし、此処は日も当たんないしさ」
「……そうだな」


体の中に篭る熱も鬱陶しかったのだろう、スコールは素直に頷いた。
春用の上着を脱いで、きちんと締めていたネクタイも解き、ワイシャツの袖も捲り上げる。
終いにはシャツの第一、第二ボタンも外し、襟下を広げてぱたぱたと服の内側に風を送る。

病院内の温度は基本的に一定に保たれており、ずっと此処にいるバッツには涼しくも温かくもない。
しかし、日射に焼かれた外を歩いて来たバッツには、涼しく感じられるのだろう。


「楽になった……」
「だろうなー。ほい、ジュースお代わり」
「…ん」


空になっていたグラスに再度ジュースを注ぎ、バッツはグラスを差し出した。
それを受け取るスコールの眉間の皺は、いつもよりも少し和らいでいる。

バッツは、グラスを傾けるスコールの横顔を眺めていた。
こく、こく、と音を鳴らしながら、喉が上下する。
その喉は汗は多少落ち着いたが、未だ赤みは引いていない。


「大変だなあ、スコールは。日焼けすると直ぐ赤くなっちゃって」
「…それだけじゃない。ヒリヒリするんだ」
「じゃあ、体育とか辛いだろ」
「……最悪だ。おまけに、来月になったら体育がプール授業になる」
「へー、良いじゃん、プール!高校でプールとか羨ましいなあ。おれはなかったぞ」


真夏の暑い時期、釜茹でされるような炎天下のグラウンドでマラソンを敢行された時の辛さと言ったら。
絶対にあの体育教師は頭が可笑しい、と高校時代のバッツとその友人の間では持ち切りだった。
そんな経験を持つバッツにしてみると、水の恩恵にあやかれるプール授業と言うのは、羨ましい限りだ。

しかし、スコールにとっては違うらしい。


「プール授業なんか、日焼けしに行けって言ってるようなものだろ」
「…まあ、そう考えると、スコールには辛いかぁ」


肌の一切が守れないプール授業は、皮膚の炎症を起こし易い体質のスコールにとって、出来れば参加したくないものだった。
しかし、体調不良でもない限り、単位の為にも授業を欠席する訳には行かない。
出来れば一時間目が良い、日差しがまだ強くはないから、と呟くスコールに、バッツは眉尻を下げて苦笑した。


「こればっかりはし仕様がないよなあ。頑張れ、スコール」
「………」


慰めようにも慰められず、バッツはなけなしの激励をスコールを励ましてみるが、効果はない。
グラスに口をつけたスコールの眉間には、いつもと同じ深さの皺が刻まれている。

グラスをもう一度空にして、スコールは鞄を開けた。
取り出したのはA4サイズの茶封筒で、表に"バッツ用"と走り書きされている。
見覚えのある走らせ方は、バッツの大学での友人であるセシルのものだ。


「校門でセシルに渡された。あんたに届けてくれと」
「おっ、助かるー!ありがとな、スコール!」
「…礼はセシルに言ってくれ。俺は持って来ただけだ」


持って来ただけだと言うスコールだが、バッツには緩む頬が押さえられない。
わざわざ届けに来てやったんだぞ、と言う恩すら感じさせないスコールは、自分がこの病院に、バッツの見舞いに来る事を当然と考えているようだった。
それが判るから、バッツの頬はにやけてしまうのだ。

バッツが骨折して入院してから、友人達は入れ替わり立ち代わりに見舞いに来てくれた。
大学の友人であるセシルは勿論、バイト先で親しくなったクラウドやティナも。
スコールの同級生であるティーダも、部活のない日は此処に来て、一日の事をあれこれと報告してくれる。
きっとバッツは退屈しているだろうから、気分を紛らわす為に、彼等は気を遣ってくれているのだ。
とは言え、彼等も暇ではない訳で、毎日バッツの様子を見に来るのは難しい。

そんな中で、スコールだけが毎日病室へやって来る。
彼も暇な訳ではなく、特待生らしく勉強に追われており、学校では学年代表として生徒会にも所属している為、教員に呼ばれてあれこれと手伝いをさせられる事も多いと言う。
定期テストが一段落した後とは言え、毎日バッツの下に来て、他愛のない話で時間を浪費すると言うのは、スコールにとって決して有益な事とは言えまい。


(でも、来てくれるんだよなあ)


丸椅子に座ったスコールは、其処から動く気はないらしい。
明日は小テストがある、と言ったスコールに、頑張れよ、とバッツは言った。
スコールからは特に返事はなかったが、彼の眉間からは皺が一本減った。

────病院生活は、バッツには退屈だ。
入院の原因が足の骨折であるだけに、ベッドから降りて、院内を探検する事も出来ない。
早く治ってくれないだろうか、と思うのは一度や二度ではなかった。

けれど、こうして彼が毎日会いに来てくれるのなら、もう少しだけこの生活を続けるのも悪くない。



……そんなバッツの傍らで、足の怪我の所為でバッツが何処にも行かない事を、スコールが密かに嬉しく思っている事を、彼は知らない。





5月8日なのでバツスコ!
思った以上に健全なバツスコになった気がする。友達以上恋人未満かな?

皆が毎日来ないのは、二人に気を遣ってると言う所もある。
ティーダ辺りは早くくっつけば良いのにとか思ってそう。
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[ソラレオ]どうやら婚約したようです

  • 2015/05/05 22:16
  • カテゴリー:FF
子供の日なので、昨日に引き続き、保育士なレオンです。





今日のヒカリ保育園は、子供達を連れて、近所の河川敷へと出掛けた。
職員は事務員と他数名を残して待機、その他は皆子供達の監督の為に一緒に河川敷へ。
今日はレオンも監督役で、園舎を出発する前から、道中に誰が手を繋ぐかで取り合いが始まった。
レオンは子供達のおやつの入ったバスケットを持っているので、手を繋ぐ権利を得られるのは一人だけだ。
希望者が集まって、公平にジャンケンをした結果、権利を勝ち取ったのはカイリであった。
これには、レオンが一番好きだと言って譲らないソラも、我儘を引っ込めるしかない。

保育園から河川敷までは、大人の足で歩いて三分、就学前の子供なら五、六分と言った所だろうか。
集団でゆっくりと歩くので、もう少し時間はかかるが、道中は至って穏やかなものであった。
平日の昼間とあって、人通りも車の通行量も多くはなく、子供達もきちんと列を作って、引率の職員の後をついて行く。
時々やんちゃな子供が列を食み出すが、各位置で見守る職員達が卒なく捉まえ、列へと戻した。

到着した河川敷は、そよそよと穏やかな風が吹き、草いきれの匂いがする。
天気が良いので、川面で太陽の光が反射してきらきらと輝いていた。


「はーい、着いたわよー」
「わーい!」
「あっ、コラ!一人で行っちゃダメだろー!」


エアリスの言葉に、待ち切れなかったのだろう、やんちゃな子供達が一目散に川に向かって駆け出す。
慌てて追うのはユフィで、そのまま川まで突進しそうな子供達を捕まえた。


「川には近付いちゃ駄目って言ったでしょ」
「えー」
「きもちよさそうなのにー」
「ダーメ!はい、戻って戻って」


ユフィに叱られ、子供達はつまらなそうに唇を尖らせる。
川で遊びたい子供達の気持ちは判らないでもないが、この川は子供が遊べるような深さではない。
ユフィは川に近付きたがる子供達の手を握り、集合している他の子供達の下へと連れ戻した。

全員が揃った所で、職員達でさり気無く誘導し、子供達を扇状に座らせると、子供たちの前にエアリスが立って言った。


「それじゃあ、今から自由時間です。でも、危ないから、川には行っちゃ駄目だよ」
「はぁーい」
「おやつの時間になったら、笛を吹きます。集まれない子のおやつは、なくなっちゃうかもね」
「えーっ!」
「やだぁー!」
「ふふ。だから、きちんと笛が聞こえるように、あんまり遠くには行かない事。えーっと……あの石と、あのベンチから向こうは駄目です。気を付けてね」
「はーい」
「おトイレに行きたくなったら、我慢しないで、早目に近くにいる先生に言いましょう」
「はーい」
「それじゃあ、今から自由時間です。皆、元気に遊びましょう!」

はーい、と子供達の声が重なり、元気な子供達は早速あちこちへ散って行く。

この河川敷には、子供向けの遊具が幾つか設置されている。
定番のシーソーやスプリング遊具の他、箱型ブランコや、回転式ジャングルジムもあった。
レオンはスプリング遊具で遊びたがる子供達の監督を務める事にし、ケンカや横入りが起きないように、順番待ちになるように誘導する。

中々にバランス感覚と筋力が鍛えられる遊具に、子供達が振り落とされないように、レオンは一人一人にきちんと持ち手を握るように促した。
子供達は言われた通り、小さな手でしっかりと持ち手を握り、びよんびよんと前後に跳ねるスプリング遊具の上で、きゃっきゃと笑っている。

子供達が一通りスプリング遊具で遊び、待機列もなくなった頃、一人の子供がレオンの下にやって来た。


「レオンせんせー!」
「ああ。ソラもこれで遊ぶか?」


駆け寄って来た子供は、レオンに特に懐いている、ソラと言う子供だ。
ソラは走る勢いそのままにレオンに抱き付いて、腰にぐりぐりと額を押し付ける。
抱き付いて来た時には、必ず行う甘え方だった。

ソラは一頻りレオンに甘え倒した後、埋めていた顔を上げた。
へへ、と嬉しそうに笑うソラに、レオンはくすぐったさを感じつつ、癖っ毛の髪を撫でる。


「レオンせんせー」
「ん?」
「……へへへ」


呼ぶ声に、頭を撫でながら答えてやると、ソラは顔を赤らめた。
見上げる顔はにこにこと上機嫌だが、何やら興奮気味にも見える。
何か面白いものでも見付けて、それを報告しに来たのかも知れない、とレオンが思っていると、


「あのね、せんせー。ちょっとしゃがんで」
「こうか?」


ソラのおねだりに応え、レオンは膝を折って、ソラと目線の高さを揃えた。
近くなったレオンの顔に、ソラはそう、と頷いて、ずっと手に握っていたものを差し出す。


「はい、これ。レオンせんせーにあげる!」


そう言ってソラが差し出したのは、シロツメクサの花で作った小さなリングだった。
小さな子供でも腕に通すには小さすぎるそれは、きっと指に嵌めるものだろう。
シロツメクサの白が、指輪の宝石のように眩しい。


「先生が貰って良いのか?」
「せんせーのために作ったんだもん」
「そうなのか。ありがとう、ソラ」


嬉しい事を言ってくれるソラに、レオンは笑って礼を言った。
早速花のリングを受け取ろうと右手を差し出すと、


「あ、まって」
「ん?」
「こっちの手。こうやって」


ソラはレオンの左手を指差して、甲を上にするように言った。
「こうか?」と左手を伏せて見せると、小さな手が、レオンの手を柔らかく掴んだ。

する、と薬指にくすぐったい感覚。
見れば、シロツメクサの宝石が、レオンの指の上で揺れていた。


「これは……」
「けっこんゆびわ!」


思いも寄らぬ言葉に、レオンは目を丸くした。
ソラはそんなレオンを見上げ、健康的に日焼けした頬をリンゴのように染めて笑う。


「すきなヒト同士はけっこんの約束をする時、ゆびわをあげるんでしょ」


ぽかんとした表情になっているレオンの前で、あれ?こんやくゆびわだっけ?とソラは一人で首を傾げる。
あれ?あれ?と首を右へ左へ倒した後で、どっちでもいいか!と笑った。
シロツメクサの指輪を嵌めたレオンの手を、ぎゅっと小さな両手が握る。


「はずしちゃダメだよ。おれとレオンせんせーのけっこんの約束なんだから」
「ソラ……」


ソラの表情は何処までも真剣で、本気でレオンと結婚しようと思っているらしい。
レオンの手を握る彼の手は、心なしか緊張したように固い。
じっと見詰める円らな瞳の傍ら、唇がきゅっと引き結ばれていた。

可愛いものだ、とレオンは思う。
飾る事を知らない子供の言葉は、いつも真っ直ぐにレオンの心を射抜く。
くすぐったさすら感じてしまう程の一途さで、レオンを捕まえようと一所懸命だ。

レオンは左手を握るソラの両手に、そっと右手を乗せた。
途端、真剣な顔をしていたソラの貌が、沸騰したヤカンのように真っ赤になる。
どうやら、相当な努力をして、真面目な顔付をしていたらしい。
ぽこぽこと湯気が出そうな程に赤い顔をして、今更のように挙動不審になるソラに、喉の奥で笑いを堪えながら、レオンは小さな両手を優しく握った。


「ありがとう、ソラ。大事にするよ」
「う、うんっ!」
「ほら、リクとカイリが呼んでるぞ。遊んでおいで」
「うん!」


受け取って貰えた事で、嬉しさを振り切ってしまったのだろう。
ソラは紅潮していた頬を益々赤らめ、瞳はきらきらと輝いて、レオンの言葉に頷いた。

行っておいで、とレオンが背中を押してやると、ソラは元気よく駆け出して行った。
幼馴染の輪に戻って来たソラに、リクとカイリが何かを言うと、ソラは胸を張って見せる。
良かったじゃないか、とリクが言い、カイリが祝福するように手を叩いていた。

レオンは左手の薬指に通された、小さな花のリングを見た。
川の向こうから吹いた風に、シロツメクサの花弁が揺れて、指が少しくすぐったい。
ソラはこの指輪を外さないでと言ったけれど、園舎に戻ったら、仕事の為にも外さなくてはならない。
そうでなくとも、一日二日もすれば、この可愛らしい花の指輪は、すっかり草臥れて、直に枯れてしまう。


(……勿体ないな)


ソラは決して手先が器用ではない。
折り紙は苦手だし、解けた靴紐もまだまだ結べないし、どんなに頑張っても縺れさせてしまうのがパターンだった。
そんな彼にしては、このシンプルな指輪は綺麗に結び作られていて、花も潰れていない。
きっと何度も練習したのだろう、大好きなレオン先生に結婚の約束をする為に。



小さな子供の抱く夢が、いつまでも変わらず続いて行くとは思っていない。

けれど、あの子が同じ夢を見ている間は、この花も変わらずに残っていれば良いのに、と思った。





子供の日なので、引き続き保育士レオン!
押せ押せソラにびっくりしつつ、悪い気はしない。可愛いなあと思ってる。
ソラは真剣だけど、やっぱりこの年齢差は大きいね。頑張れソラ!
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[ソラレオ]予約済みになりました

  • 2015/05/04 22:40
  • カテゴリー:FF
レオンが保育士をしているのを妄想したら滾った。
そんなパラレルで、ソラ→レオンです。




「レオンせんせー!」


聞こえた声に振り返る暇も無く、どんっ、と背中に勢いの良い衝撃があった。
予測はしていたので、しっかりと踏ん張って突進してきたものを受け止める。

ぎゅうっと腰に回された腕に、懐かれた事への喜びを実感しつつ、手に持っていたシーツを広げる手を止める。
振り返って、下へと視線を落とせば、肩越しに茶色の髪がぴょこぴょこと動いていた。
ぐりぐりと腰に押し付けられる頭を撫でるべく、レオンは中断していた作業を再開し、手早くシーツを物干し竿にかけて、洗濯バサミで留める。
ふわっと拭き抜けた風にシーツがはためき、眩しい白が青空に映えた。
シーツの両端を軽く引っ張り、シワが伸びたのを確認して、よし、とようやく空いた手で腰にまとわりついているものを撫でた。


「ソラ、外でリク達と遊んでたんじゃなかったのか?」
「んー。でも、レオンせんせーがいるのがみえたから」


撫でる手にごろごろと嬉しそうにしながら、レオンの言葉に応えるのは、このヒカリ保育園で預かっている、ソラと言う子供だった。
無邪気で明るく、直ぐに誰とでも打ち解ける、人懐こい子供。
初めてヒカリ保育園に来た時も、物怖じする様子もなく、あっと言う間に馴染んでしまった。
少々やんちゃが過ぎる所もあるが、子供のした事と思えば可愛い範囲である。
職員にもよく懐いており、彼が保育園に来た日は、いつも賑やかな園内が一層明るくなるように思う。

そんなソラが一等気に入っているのが、レオンであった。
レオンは今年で四年目になる保育士で、よく気の付く性格、面倒見も良い事で、職員にも子供達にも人気がある。
遊戯室ではレオンの取り合いが始まる事も珍しくはなく、時にはケンカに発展することもあった。
その為、基本的にレオンは遊戯室に留まる事は少なく、昼食の準備や事務仕事、洗濯等を行う事が多い。
しかし、レオンと遊びたい、レオンと一緒にいたいと言う子供は、職員室や洗濯スペースにいるレオンを見付けては、突進して来る事もあった。
その頻度が最も多いのがソラである。

レオンがしばらくソラを撫でている間に、ソラも一頻り甘えて気が済んだか、「ふぁ~」と満足そうな声を漏らして、レオンの腰から顔を上げる。
が、抱き付く腕は離れないままで、レオンは残りの洗濯物を片付ける事が出来ない。


「ソラ、ちょっと離れてくれ。洗濯物が取れないから」
「おれがとってあげる!」


ぱっとソラが離れて、レオンの足下に置かれた洗濯籠から、シーツを掴む。
持ち上げたシーツは、子供用の大きさなので、レオンにとっては小さいが、まだ幼いソラにとってはそうではない。
短い手足を一杯に伸ばして引っ張り出したシーツは、端を洗濯籠の中に収めたまま、持ち上がりそうになかった。
うんうんと頑張ってシーツを持ち上げようとするソラに、レオンはくすくすと笑って、シーツを握る。


「ありがとう、ソラ。助かる」
「うん!」


レオンの言葉に、ソラの笑顔がぱっと咲いた。
褒められると素直に喜ぶのが可愛らしくて、レオンはついつい頬が緩む。

するりと浮いたシーツを広げ、物干し竿にかけていると、


「はい!」
「────ああ。ありがとう」


ソラが差し出したのは、洗濯バサミだ。
ソラはレオンが洗濯物をしていると、よく構って貰いに来ている。
お陰で洗濯物作業の手順をすっかり覚え、最近は手伝う姿もすっかり様になって来た。

レオンが洗濯バサミでシーツを留めている間に、ソラは次のシーツを籠から取り出していた。
様になって来た手伝いとは言え、子供のする事なので、要領は決して良くない。
先と同じく、持ち上げきれないシーツにうんうん唸るソラに微笑みつつ、レオンはシーツを受け取った。


「これで、……最後、と」
「おわった?」
「ああ」


最後の一枚を物干しにかけると、ソラがきらきらとした目で言った。
レオンがこっくりと頷くと、「わーい!」と万歳をして喜ぶ。
そのまま、ソラは勢いよくレオンに抱き付いた。


「おっ、とっと」
「へへへー。レオンせんせー、いい匂いするー」


もう一度しっかりとレオンの腰にくっついて、ソラは嬉しそうに言った。
くんくんと子犬のように鼻を鳴らすソラに、レオンは汗の匂いじゃないだろうな、と少し恥ずかしくなったが、


「なんかあまい匂いするよ」
「……ああ。洗濯している間に、おやつを作っていたから、それかな」


今日の三時のおやつはチョコレートを使ったマフィンだ。
その時の匂いがエプロンに残っているのだろう。

おやつ、と言う単語を聞いたソラは、判り易く頬を上気させる。


「今日のおやつ、なに?」
「チョコレートマフィンだよ。一杯作ったから、取り合いしないで、仲良く食べるんだぞ」
「うん!」


返事の良いソラであったが、果たしてこれが何処まで守られるやら、とレオンは眉尻を下げて苦笑した。
ソラは食べるペースが速く、大抵、一番に自分のおやつを食べ終わる。
他の子供達がまだ食べているのを見ている時、彼は判り易く、もっと食べたい、と全身で訴えていた。
他の子のおやつは食べちゃ駄目、とは言われており、彼もそれを理解していない訳ではなかったが、幼い子供にとって食べ物の誘惑とは絶大である。
我慢出来ずに、よく一緒に遊んでいるリクやカイリに「一口ちょうだい」とねだるのはよくある事だった。
リクとカイリはそんなソラに慣れているのか、一口だけ、と言って食べさせている。


(あれもあまり良くないみたいだが…)


ソラが「一口ちょうだい」と言う事、リクとカイリがそれを許している事。
レオンから見ている分には、仲の良い子供達の微笑ましい光景なのだが、子供達の中には、「一口ちょうだい」の分だけソラが得をしているように見えるらしい。
何人かの子供が、「ソラ君だけずるい」とレオンに訴える事もあった。


(かと言って、ソラの分だけ増やしたり、大きくしたりする訳にも…)


空っぽになった籠を持ち上げ、給湯室に向かうレオンの後ろを、嬉しそうについて来るソラ。
無心に慕ってくれる幼子に、レオンも決して悪い気はしなかった。
しかし、だからと言って彼だけを特別扱いする訳にも行かない。

給湯室に洗濯籠を片付けると、手ぶらになったレオンの手を小さな手が握る。
視線を落とせば、嬉しそうに頬を赤らめて笑う子供と目が合った。
きゅっと小さな手に篭る柔らかい力を感じつつ、「外に行こうか」と言うと、ソラは嬉しそうに頷いた。

連れ立って園舎玄関へ向かって廊下を歩いていると、


「あのさ、レオンせんせーはさ」
「うん?」
「コイビトっている?」


唐突な子供の問いに、レオンはきょとんと目を丸くした。
少しの間固まるように沈黙していたレオンだったが、数秒後には復帰する。


「恋人はいないな」
「じゃあ、すきなヒトっている?」


また唐突な質問だ、と思いつつ、子供の質問は大抵唐突なものだと思い出す。


「好きな人か……」
「うん。いる?」
「どうしてそんな事を聞くんだ?」


きっとテレビアニメか何かの影響だろうと思いつつ、レオンは尋ねてみた。
ひょっとしたら、同い年だけれど少しマセているリクに何か教わったとか、女の子のカイリにちょっと特別な感情を持ったのかも知れない。
カイリはヒカリ保育園で預かっている子供達の中でも、一番可愛いと人気がある。
若しも彼女に初恋をしているのなら、少し応援してやりたいな────と思っていた時だった。


「だってさ、すきなヒトにすきなヒトがいたら、こまるじゃん」
「まあ……そうだな」
「カタオモイってつらいんだって、リクとカイリが言ってた」
(何のアニメを見たんだ?いや、ドラマか…?)


子供向けアニメは、保育園に来る子供達とのコミュニケーションの為にも、逐一チェックしている。
レオンが子供の頃と違い、最近は子供向けでも随分と凝った設定のものが増えた。
ストーリーも深みがあり、大人が見て唸る代物も少なくない。

しかし、子供の見るアニメで恋愛を推すような物はなかったように思う。
主人公の女の子が、作中でも格好良いと人気の男の子に片恋をしていると言う設定はあるが、今の所、それについて深く掘り下げたストーリーは放送されていない。
となると、親が見ているドラマ等を見たのかも知れない。

等と、つらつらと特に意味もなく考えて、


(……ん?)


ふ、と。
先のソラの言葉に、今更に引っ掛かりを感じて、首を傾げた時だった。


「レオンせんせー」
「ん……あ、ああ。なんだ?」


繋いだ手をくいくいと引っ張られて、レオンは自分が呼ばれている事に気付いた。


「せんせー、すきなヒトいる?」
「あ……いや……」


改めて向けられた問いに、意識半分でぼんやりと答えた。
途端、それを聞いたソラの表情が、夏の太陽に眩しく輝く。


「よかった!」
「良かった…?」
「うん。おれ、レオンせんせーがすきだから、レオンせんせーにすきなヒトがいたらタイヘンだった」


何がどう大変なのか、レオンにはソラの考えが判らない。
しかし、真っ白で無垢な魂は、何処までも真っ直ぐに、レオンへと向けられている。


「せんせー。おれ、レオンせんせーのこと、だいすきだよ」


その言葉は、子供の正直な気持ちそのものだろう。
隠されるものなど何一つなく、裏も表もある筈もなく、心のあるがままに言葉を紡ぐ。

繋いだ小さな手に力が篭って、熱い熱いものがレオンの手のひらに注がれて行く。
レオンの手が微かに震えて、それが伝わったのか、ぎゅっと強い力で握られたのが判った。


「だから、センセー。おれ以外にすきなヒト、作らないでね」


見上げる大きな丸い瞳は、何処までも真摯で嘘がない。
心の底からそう望んでいるのが判って、レオンは一瞬、どう反応して良いのか判らなかった。
子供の我儘、大好きな物を一人占めにしたい幼い独占欲────そう思えば、そう思える。
けれども、その奥底に、もっと違う、もっと強い感情が滲むようにも見えた。

握った手に引っ張られて、園舎の玄関から外に出た。
園庭で遊んでいた子供達が、ソラとレオンを見付け、一斉に集まってくる。
レオンと手を繋いでいるソラに、ずるいずるいと子供達が言ったが、ソラは決してレオンと繋いだ手を離そうとはしない。
その一途さが可愛くて、ほんの少しだけ、小さな手を握り返す。

丸い瞳が驚いたようにレオンを見上げ、大福のような頬が赤らんで、子供はとても嬉しそうに笑った。





保育士なレオンに唐突に萌えたので書き散らしてみた。

KH参戦FF組は皆スタッフ。クラウドは後輩スタッフ。
子供はソラ、リク、カイリの他にロクサスとかも(他の五つ子については未プレイの為イメージ出来ず…)。
将来的にソラレオになると良いなー。
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[フリスコ]だってこんなに近いんだ

  • 2015/04/14 22:02
  • カテゴリー:FF


ワン、ツー、スリー、フォー。
数え数えに、ステップを踏む。
一つ、二つと足を動かし、地を踏んで、くるりとターン。

その都度、足が縺れてリズムが止まる。


「す、すまない」


詫びるフリオニールの顔を見上げて、スコールは「別に」と言った。
繋いでいた手を解いて、もう一度絡ませ、もう一度初めからリズムを刻む。

────事の始まりは、やはりと言うか、相変わらずと言うか、バッツであった。
踊り子なる職業をマスターしていると言う彼に、劇団員として踊りはお手の物と言うジタンが乗り、ティーダがブレイクダンスとヒップホップなら行けるっス!と更に乗った。
更に、ワルツなら踊れるよ、とセシルが乗り、クラウドが踊りで舞台に立った事があると言い出した。
話の流れで、スコールもダンスの授業は受けていると言ってしまい、案の定、此処に賑やか組が食いついた。
記憶にあるのはセシルと同じワルツだが、世界背景とでも言うべきか、動きやステップの踏み方には若干の差異が見られ、こうなると他のメンバーの世界ではどう言う踊りが主流なのかと言う話で花が咲いた。
前述にない四名───記憶のないウォーリアを筆頭に、フリオニール、ルーネス、ティナ───は話を聞いていただけだったが、ジタンがティナをダンスに誘った所で、秩序の戦士達のささやかなダンスパーティーが開催された。

パーティーは10人の戦士の内、唯一の女性であるティナを、踊れる男性陣が順番にエスコートすると言うもの。
ルーネスが心底苦い顔を浮かべていたので、順番が終わったセシルとスコールで、彼に簡単なステップを教えた。
物覚えの良い彼は直ぐにリズムとステップを覚え、リレーの最後には彼がティナと共に踊った。
初々しく、楽しそうに踊る二人を囲むように、ジタンとバッツ、ティーダとクラウド、セシルとスコールもそれぞれペアになって踊る事となる。
ジタンとバッツは軽業のようなアクロバットダンスを、ティーダとクラウドは、クラウドが一人で奇怪な踊りを見せた為、ティーダは笑い転げてダンス所ではなくなっていた。
スコールは最後まで抵抗したのだが、セシルの笑顔になし崩しにされ、ワルツの相手役をする事になってしまった。
それに関してはスコールは余り思い出したくないのだが、それでも、概ね、ダンスパーティーは盛況の内に終わったと言って良い。

そんなダンスパーティを終始眺めていたのは、ウォーリアとフリオニールだ。
二人ともバッツやジタンから誘われていたのだが、二人とも踊り方が判らないと言った。
楽しそうに過ごす仲間達を見ているだけで、彼等は満足していたようだが、バッツが「楽しい事はやっぱり皆で共有しようぜ」と言った事で、二人にもダンスが踊れるようにとレッスンが企画される事になったのだ。
次いで、ティナが「もっと上手に踊れるようになりたい」と言ったので、相手役のルーネスと併せて、彼女もダンスレッスンに参加する事が決まった。

踊り所かリズムの取り方も判っているか怪しいウォーリアには、バッツとセシルが教える事が決まり、ティナとルーネスにはセシルとジタンが教える。
クラウドとティーダは、覚えている踊りのジャンルが他のメンバーと大きく異なる事もあり、ウォーリアについて拍を数えたりと言う形で参加した。。
そして、フリオニールにはスコールが教える事が決まったのである。

スコールの本音としては、面倒な事になった、の一言であったが、ダンスを教われると聞いたフリオニールの、照れくさそうな嬉しそうな笑顔に絆された。
生徒としてのフリオニールは真面目だし、リズムの取り方も判っていたので、教える側としては比較的楽な方だろう。
とは言え、経験が殆ど無いと言う人間に、一から教えると言うのは、中々根気のいる事であった。


「────うわっ、」


縺れた足でバランスを崩し、がくっとフリオニールの体勢が傾く。
伸し掛かるように倒れ込んで来た長身を、スコールは踏ん張って支えた。


「わ、悪い、スコール……」
「…謝るのはいいから、ちゃんと自分で立ってくれ」


自身よりも身長がある上、確りとした筋肉のついたフリオニールの体は、見た目相応に重量がある。
それに押し潰されるほどスコールは柔ではないが、体重全てを預けられるのは辛い。

押し返すスコールの力の補助を受けながら、フリオニールは地面に両足を置いてきちんと立った。


「難しいな……」
「…まあな。でも、全然経験がなかった事を考えたら、上達は早い方だ」
「そ、そうか?だったら嬉しいかな」


スコールの言葉に、フリオニールははにかむように笑う。

スコールの言葉は世辞ではなく、フリオニールの飲み込みは早かった。
簡単なステップは、ルーネスに教えた時と同様に直ぐに理解したし、リズム感も悪くない。
少しずつレベルを上げ、複雑なステップを教えるようになると、何度か足を縺れさせはするものの、時間の問題で直に克服する。
今躓いている所も、繰り返していれば、無理なく出来るようになるだろう。

フリオニールは自分の足元を見下ろして、記憶を辿りながら足を動かしている。
赤い瞳が至極真剣な顔で、リズムの数字を刻んでいるのが、スコールには少し面白かった。
────と、足元を見ていた赤い瞳が前を見て、スコールを映し、


「あ……その。俺、何か間違えたか?」
「……?」


フリオニールの不意の問いに、スコールはことんと首を傾げた。
不思議そうな表情を浮かべるスコールに、フリオニールは握っていた手を解いて頬を掻く。


「笑ってたように見えたから、変な間違い方をしたかなと思って」
「……別に。何も間違えてはいないし、…笑ってない」
「そ、そうか?」
「……そう見えたなら、悪かった」


真面目な顔でダンスレッスンに取り組むフリオニールに、面白い、と思ったのも事実。
スコールの故意ではないにしろ、失態を笑われたと思うような表情をしていたのなら、詫びるべきだと思った。
すると、今度はそれを受けたフリオニールが慌て、


「い、いや、スコールが謝る事はないんだ。俺は、その、こうしてるの、楽しいし」
「……楽しいか?こんな事…」


スコールには、ダンスは授業で教わったスキルとして以外に、意味のないものだった。
体育の授業として取り組まれたダンスは、当然、内申点にも響くし、ダンスホールと言うものは、潜入任務の種類によっては考えられない場所ではないので、授業を熟す事には抵抗はなかったが、必要が無ければ踊りたくないのがスコールの本音である。
止む無く踊った事がある記憶があるような気もするが、それらを詳しく思い出す事は出来なかった。
だから、先日の秩序の戦士のダンスパーティーの時も、セシルに無理やり相手役をさせられるまで、踊り手を拒否していたのだ。

しかし、フリオニールはダンスが「楽しい」と言う。
今まで経験がない事をしているからかも知れない、とスコールは思った。
フリオニールのような素直な人間なら、未知の経験と言うものは、心を躍らせるものなのかも知れない、と。


「……続けるぞ」


思考ばかりを巡らせていても仕様がないと、スコールはフリオニールの手を取った。
きゅ、と柔らかく握ると、さっきまで自然な動きをしていたフリオニールの手が、緊張したように強張る。


「……あんた、もうちょっと力を抜け」
「う、うん」
「固くなるから足が縺れるんだ」


一人で練習させてみると、フリオニールは教えた手順を綺麗に流して見せる。
少し複雑な所でモタつく事もあるが、其処は慣れの問題だ、とスコールは考えていた。
後は数をこなす事と、実際に相手役がいた時、自分の動きだけに集中する訳には行かないので、その練習を繰り返すのみだ。

───が、相手がいた時の練習と言うものが、中々進まない。
一人では上手く出来ていた筈のステップが、二人で踊る形となると、ガチガチになって上手く捌けないのだ。


「右、左、右、左…」


一定のリズムを刻みながら、足運びを誘導するように移動先を口にするスコール。
フリオニールは足元を見て、スコールの指示通りにステップを踏んでいる。


「右、右、左」
「え、あ、あっ」
「うわっ」


ステップの進みが僅かに変わった所で、またしてもフリオニールは躓いた。
間違えて踏み出した足を戻した拍子に、体重のバランスが崩れ、身体が倒れる。
掴まるものを求めてか、重ねていたスコールの手が握り締められ、スコールは諸共に倒れる羽目になる。

どさっ、と倒れ込んだ二人を、草いきれが受け止めた。
フリオニールの上に覆い被さる形で倒れたスコールは、直ぐに起き上がって土埃を払う。


「すまない、スコール。大丈夫か?」
「問題ない」


フリオニールも起き上がり、背中についた土埃を払った。
その傍ら、彼は野性味のある目許を、すっかり弱ったように下げ、


「やっぱり駄目だな、俺。上手く出来る気がしない」
「……あんたは筋が良い方だと思うけど」
「スコールにそう言って貰えるのは嬉しいけど、でも、向いてないんだよ、きっと。一人でならなんとか行けそうな気もするけど、なんか…スコールに手を握られると、緊張してしまって」


フリオニールの最後の言葉に、スコールは小さく肩を揺らした。
蒼い瞳が、苦笑いする紅から逃げるように逸らされる。


「……じゃあ、セシルかジタンと交代する」
「え?」
「……俺が相手だと嫌なんだろ」


そう言って、ふいっと背を向けるスコールに、フリオニールは一瞬ぽかんと目を丸くした。
が、遠退いて行くスコールを見て、慌ててフリオニールはその背中を追い駆ける。


「待ってくれ、スコール。緊張って言うのは、嫌だって訳じゃなくて…」
「どの道、俺相手が上手く行かないなら、他の誰かと変わった方が良い」
「い、いや。それは……その……」


何かを言いかけて止める事を繰り返していうr内に、歩を進めるスコールの後ろを歩いていたフリオニールの足が止まる。
彼が立ち止まった事を、スコールは気配で感じていたが、構わずに歩き続けた。

気を遣い屋で素直なフリオニールの事だ。
苦手としている相手が練習相手となって、その意識がどうしても表に出てしまい、かと言って教わっている手前、先生を変えてくれと言うのは言い出し辛いだろう。
しかし、こう言うものは、苦手意識のある相手と練習した所で、発展は望めまい。
単位に響くような授業なら、スコールは割り切って練習するように努力する───或いは、相手を仮想して徹底的に、それこそ起こりうるであろうミスのカバー方法まで───所だが、今回はそうではない。
この練習は、あくまで仲間達と楽しむ為のものであり、無理を押してまで練習に勤める必要はないのだ。

────そう、スコールが考えていた時、


「俺は、スコールから教えて貰いたいんだ」


聞こえた声に、スコールの足が止まる。

振り返ると、フリオニールは立ち止まった時と同じ場所にいた。
其処から見詰める彼の貌が、湯気が立ちそうな程に真っ赤になっている。

スコールは体の向きを変え、一つ溜息を吐く。


「……俺が相手だと緊張するんだろ」
「あ、ああ」
「だから失敗続きなんだろ」
「それは、その…うん……」
「だったらやっぱり誰かと変わった方が良い。上手くなりたいなら、相手を変えるのだって選択肢の一つだ。合わない相手に、無理に合わせようとしなくて良い」
「いや、その───あ、合わないなんて事はないんだ。本当に」


尚も弁解しようとするフリオニールに、スコールはもう一度溜息を吐いた。
それが呆れの表れに見えたのだろう、フリオニールは慌てて続けた。


「い、嫌な緊張じゃないんだ。上手くやろうって思う緊張、みたいな感じで。それに、スコールに手を握られると、なんだか無性にドキドキして、だから、いや、スコールが悪いって言ってるんじゃなくて、俺が勝手に……」


言葉を重ねる度に、フリオニールは焦っていた。
見て取れるその慌て振りで喋り続けるフリオニールに向かって、スコールは足を踏み出した。


「だから、その、俺は、練習するならスコールが良い────」


其処まで言って、フリオニールの言葉はようやく止まった。
その時には、二人の距離はすっかり縮まり、一歩分のスペースすらもない。

スコール、とフリオニールが名を呼ぼうとした時だった。
徐に持ち上がったスコールの手が、フリオニールの手を握る。
ぎくっとしたように固まるフリオニールだったが、僅かに低い目線から見上げる蒼に射抜かれて、心臓が一度大きく跳ね、ゆっくりと静まって行く。


「ス、スコー、ル、」
「……取り敢えず、あんたはこの状態に慣れろ。続きはそれからだ」


ぎこちないフリオニールに対し、スコールは平時と変わらない声で言った。
見上げる蒼には苛立ちのような感情は一切感じられず、深い深いその色に飲み込まれたように、フリオニールは小さく頷いた。

フリオニールの心臓の鼓動は、煩いほどではないが、鎮まる事なく、少しだけ早いリズムを打っている。
けれども、指の先まで伝わっていた筋肉の緊張は、少しずつ解れているように思えた。
その傍ら、こんなに近くで見た事はなかったな、と、いつも逸らされ勝ちの蒼を見詰める。



感情を映さない蒼い瞳の傍らで、彼の耳が熟れたように赤くなっている事を、フリオニールは知らない。





衝動的に踊ってるフリスコが書きたくなったので、リハビリも兼ねて殴り書き。
こんな二人だけど付き合ってない。相手を意識している事もない。無自覚フリスコ萌え。

タイトルはフリオの心中です。
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[カイスコ]答えはきっと最初に出ていた

  • 2015/04/08 22:18
  • カテゴリー:FF


指先が触れるだけで、白い頬が赤くなる。
そんな顔を見て、これ以上の事をしたら、どんな顔をするのだろうと思いを馳せる。

触れ合う事が苦手なんだと言った少年は、苦手を通り越して、恐怖を抱いているように見えた。
それは強ち間違いではなく、彼はカインが少しでも触れる素振りを見せるだけで、身構えるように表情を硬くした。
そんな反応を見せられて、強引に距離を近づけられる程カインに大胆さはない。
遠慮なく抱き着いて行くジタンやバッツをひっそりと羨みつつ、カインはゆっくりと、じっくりと、彼との距離を縮めて行くように心がけた。

その努力の甲斐あって、カインはようやく、彼と恋人らしい距離まで近付く事が出来た。
しかし、距離を近付けても、まだまだ彼の緊張は解けない。
決して怖がらせたい訳ではないのだと思うと、やはり、カインは可惜に踏み込む事は出来なかった。

───と、思いつつも、既にじれったい程に待っていたカインである。
色々な当番の都合で、運良く二人きりになった見張り番の最中、カインは遂に言った。


「キスをしても良いか、スコール」


カインの言葉に、スコールは一瞬呆けたように口を半開きにし、その後、沸騰したように真っ赤になった。
初心なその反応に、可愛らしいものだ、と兜の下でこっそりと笑う。

其処に至るまでの自分の葛藤や、スコールへの配慮と言うものを、カインはきちんと説明した。
ある意味、それは卑怯な事だと言えるだろう。
これだけ我慢したから、此処から先は此方の我儘を聞いてくれ、と言っているようなものだ。
存外と聡く、人目を気にするスコールであるから、其処まで懇切丁寧に話さなくても、カインの胸中の蟠りは感じ取っているだろうとは思ったが、それでも、カインは一から十までを話して聞かせた。
ずるい大人に翻弄される少年に、申し訳なさを抱きながらも、やはり、カインとて男である。
好いた相手に触れたいと言う欲求は、無視できるものではなかった。

真っ赤になったスコールの顔が、ゆらゆらと揺れる火に照らされている。
深い蒼灰色の瞳の中で、黄色と橙色が閃いた。
色の薄い唇が戦慄き、言葉を探すように、閉じては開いて、また閉じてと繰り返される。
その唇に手を伸ばし、指先を押し当てると、ピクッ、とスコールの肩が小さく震え、唇が引き結ばれた。


(拒否は、しないんだな)


いつであったか、冗談でバッツがスコールの頬にキスをしていた事がある。
愛してる!と言いながら、スコールの髪をくしゃくしゃに撫でて、押し付けられていたバッツの唇を、スコールは容赦なく拳で押し除けた。
その後、気持ち悪い、と言って頬を拭うスコールに、バッツは判り易く傷付いた顔をして見せる。
そんな二人の傍らで、ジタンが腹を抱えて笑うのを、カインは遠巻きに眺めていた。

基本的に声を上げて主張する事が少ないスコールだが、気に入らない事は気に入らないとはっきりと言う。
そんな彼が、唇に触れる指を拒否する事もなく、噛み付くような真似もしないと言う事は、その程度にはカインは受け入れられていると言う事だろう。
が、其処から先については、まだ判らない。


「スコール」
「……っ」


名を呼ぶと、指先で柔らかい唇が微かに震えた。


「あ……う……」


薄く開いた唇から、意味を成さない音が漏れる。
カインは、唇に触れた指を滑らせ、シャープなラインを作る顎を摘んだ。
赤い顔を隠すように俯こうとするスコールを、くん、と上向かせてやる。


「答えないなら、勝手にするぞ」
「待っ……」


問答無用で口付ける強引さの代わりに、見せかけの選択肢を与える。
答えればスコールの心に沿う、と言えば、スコールは慌てて停止させていた思考を回転させ始めた。

目深の兜の隙間から、僅かに覗く男の瞳を、スコールは見る事が出来ない。
平時でさえ、殆ど人と目を合わせようとしないのだ。
こんな状況では尚更で、スコールの視線は目の前の男から逃げ、助けを求めるように静かなテントを見遣る。
三つ並んだテントの内、左側のテントに彼と懇意にしている仲間達が眠っている。
いつも狙ったようなタイミングで、二人の間に割り込んで来て、スコールを浚って行く賑やかな仲間達は、今日ばかりは乱入して来る様子はない。
これ以上のチャンスはない、とカインが思う傍ら、どうしてこんな時だけ、とスコールは思っていた。

お互いの顔を近い距離に留めたまま、時間は流れる。
見張と言う役割を思えば、こんな事をしている場合ではないのは、二人とも判っていた。
片や軍属、片や傭兵、場所は鬱蒼とした森の中、魔物も模造も混沌の戦士も、いつ現れても可笑しくない。
しかし、今でなければ次はいつになるか、と言う事を思えば、やはり今しかチャンスはないのだ。


「う…あ……」
「スコール」
「……待、待て…ちょっと、離れろ…っ!近過ぎる…っ!」
「そうだな。だが、断る」


離れる気はない、と、カインの左手がスコールの腕を掴んだ。
ビクッとスコールの体が震える。
そうして怯えたような反応をするから、カインはずっと配慮を忘れないように努めていたのだが、


(お前は、拒否を示していない)


それなら、答えは一つしかないだろう。

カインはゆっくりと顔を近付けた。
ただでさえ赤いスコールの顔が、益々赤く火照って行く。


「カ、カイン…っ!ま、待て、待てって言ってる…!」
「言っただろう。俺はもう十分待った」


この感情を自覚して、想いを繋げて、怯えるように緊張する彼を少しずつ宥めた日々。
欲しいと思う感情を押し殺し、背伸びをしたがる彼の等身大の歩幅に合せて、ゆっくりと距離を近付けた。
其処までしたなら、後少し待って、とスコールは思っているかも知れない。
だが、その“後少し”が、カインにとってはいつ果てるとも知れない長い時間になり得るのだ。

近付く唇に、スコールがぎゅうっと自身の唇を噛み締めた。
カインの手に捕まれた腕が、ふるふると微かに震え、意を決したように拳が握られて、


「兜…っ!せめて、兜外せ…っ!」


絞り出すように言ったスコールに、カインの動きがぴたりと止まる。

龍を模した兜は、目許を隠す程に目深に被られている。
暗黒騎士の姿のセシル程ではないが、カインの兜も彼の表情をすっかり覆い隠していた。
兜の前先端は、龍の口を模して尖っており、これ以上顔を近付けると、間違いなくスコールの額を小突く羽目になる。

近付いていた顔がすっと離れて、スコールはほっと息を吐いた。
かちゃり、と金属の鳴る音の後、さらりと長い金色の髪が流れ落ちる。


「これで良いな?スコール」


口付けるのに邪魔になるそれを、外せ、と言ったスコール。
それは受け入れた証であると言うカインに、スコールは抗議しようとしたのだろう、引き結んでいた唇を開けた。

が、それ以上の言葉が彼の唇から紡がれる事は、なかった。





4月8日なのでカイン×スコール!
私の中で、カインは一応紳士なイメージ。大人。待てる限りは待って、スコールに合わせてくれる。
でも溜まりに溜まると爆発もするよ。その時は、紳士的に強引に行くと良いな!
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