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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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通販に関するお知らせ

  • 2014/04/06 00:06
  • カテゴリー:お知らせ
4月1日から、消費税が5%から8%に変わりました。
これに伴い、郵便局に置ける荷物の発送料金が改定されました。
その為、当サークルで発行した本の通販の際にかかる発送料金も、新たな送料での受け付けとなります。
発送方法は、以前と変わらないまま(今の所は郵便局からの「ゆうメール」のみ)です。

重量 : 送料
─────────
~150g:180円
~250g:215円
~500g:300円
~1kg:350円
~2kg:460円
~3kg:610円
3kg超:一律600円


厚みのある本が増えた事、一冊だけB5サイズの漫画本(FF/[Hyperthermia])がある事で、発送時に荷物を2つ以上に分割する事がありますが、最初に注文して頂いた時の送料から追加料金を頂く事はありません。
送料はあくまで荷物の総重量からの計算のみとなっております。

発送形態は基本的に封筒ですが、厚みのある本を重ねると封が閉じれなくなるので、段ボール箱で発送する事があります。
「ゆうメール」を利用する為、封筒/ダンボールの一部に、内容物が確認できる穴を開けています。
密封された状態での発送をご希望で、
・PC用のCGIをご利用の方はメッセージ欄に、
・携帯用CGIをご利用の方は、お手数ですが kryuto*hotmail.co.jp(*を@に変換して下さい)に、
荷物の密封希望の旨を添えて、送信して下さい。

現在、FFジャンルの本の通販をご利用の方には、レオンとスコールのしおりを無料配布しております。
二種類しかない上、ご利用いただいた方には須らく押し付け(←)ておりますので、「持ってる(いらない)のに来た!」と言う方もおられるかと思いますが、宜しければお使い下さい。不要でしたら、ゴミ処分しちゃって下さい。プラスチックではありませんが、ポリ系素材となっておりますので、各自治体のゴミ指定に合せて捨てて下さい。(いないと思いますが)オークション等への出品は絶対にお止め下さい。


これからもWeb、オフライン共に頑張りますので、のんびりお付き合い下さると幸いです。
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[カイスコ]暗黙の距離感

  • 2014/03/18 23:51
  • カテゴリー:FF


カインとスコールが恋仲である事を知っているのは、ジタンとバッツ、そしてカインの親友であるセシルのみ。
他の面々は、彼等が想いを寄せ合っている事を知らないばかりか、接点すら碌にないと思っているのではないだろうか。
二人揃って寡黙な性質な上、パーティを組む事も少ないのだから、無理もない。
カインと言う人間を知っているセシル、スコールを観察する事に長けたジタンとバッツだからこそ、二人が纏う微妙な空気の変化に気付いたのだ。

誰から見ても接点が薄い筈の二人が、どうやって心を寄せ合うようになったのか────元はと言えば、スコールの単独行動が原因であった。
一人でふらりと出掛けては、無理な戦闘をして負傷して帰ってくるスコールにカインが気付き、危なっかしさにカインの方が先に彼を目で追うようになった。
スコールの単独行動そのものについて、カインが注意や警告をした事はない。
何となく、言っても聞かないだろうと言う空気もあったし、スコールが自身の単独行動について、ウォーリア・オブ・ライトと何度となく口論している所も見た事がある。
下手に突いて蛇を出すより、出来るだけ注視し、危険に首を突っ込む様子があれば、その時に止めに入れば良いだろうと思っていた。

そしてカインがスコールを観察するようになってから、何度目かの単独行動の最中、スコールは上位イミテーションとの戦闘で傷を負った。
イミテーションは討伐したものの、ケアルのストックを切らせたスコールは、体力が回復するまで一人蹲っていた。
スコールがまんじりともしない時間を過ごす間、カインは彼を遠目に見詰め、彼の下へ近付こうとする周辺の敵を先手を打って駆逐して行った。
その後、休息から復帰し、聖域へと帰還したスコールから「……礼だけは言って置く」と微かに赤い顔で言われたのが、二人が直接話をした初めての記憶ではないだろうか。

それからは、違いに遠巻きな距離の関係が続く。
スコールは相変わらず単独行動を止めないし、カインはそれを咎める事はせず、しかし遠目にスコールの行動を見守っていた。
基本的にスコールは誰かに庇われる事や、干渉される事を嫌うが、カインに対してはそうではなかった。
干渉と言うには遠く、庇われると言う程あからさまな行為を、カインが取らなかった所為もあるだろう。
遠目に感じるカインの気配を知りつつ、スコールは「ついて来るな」等と言う言葉を向ける事はなく、カインも彼に拒絶されていないのならばと、彼を見守り続けていた。

事が動いたのは、カインのそうした行動に気付いたセシルと、スコールのカインへの態度の変化に気付いたジタンとバッツの行動に因る。
カインは、自分がスコールの事を気にするのは、云わば保護者のような感覚なのだと思っていた。
だが、スコールと同じ年頃であるヴァンやユウナ───彼女の場合、既にジェクトと言う庇護者がいるのもあるが───、最年少のルーネスには、其処まで気をかけている事はない。
彼等がスコールのように無断で単独行動を取るタイプではないから、と言うのもあるが、では仮に彼等が単独行動を取った時、余計な刺激を与えないようにと言う配慮をしてまで、単独行動自体を自由に赦すだろうかと言われると、首を傾げるものがある。
ヴァンもユウナもルーネスも、言えば素直に聞く方なので、此処もスコールと比較しようがない事になってしまうのだが、少なくとも、一言二言の忠告するだろう。
それがスコールに対してのみ、彼を無為に刺激する事なく、無理に連れ帰る事もせず、わざわざ手間にしかならないであろう、彼の単独行動の度に遠目に見守るような真似をしているのは、何故なのか。
それらをセシルに指摘されて、ようやくカインは自分の中にいつの間にか芽吹いていた感情───「スコールを放っておけない」と言う事に気付いたのだった。

スコールの方は、ジタンとバッツに言及されたお陰か、カインよりももう少し早く、自分の中の違和感に気付いていたらしい。
ジタンやバッツのように強引に引っ張るでもない、ウォーリア・オブ・ライトのように正面からぶつかって来るでもない、自由にさせているのに放置する事はしないカイン。
彼が自分を見ている気配を感じつつも、何か言って来る訳でもなく、強制される様子もなかったので、スコールは好きにさせていた。
その“好きにさせていた”事が、ある意味で珍事なのだと、ジタンとバッツは言った。

それからは、ジタンとバッツがお膳立てし、カインをセシルが煽り、ひっそりと想いは重ねられた。

その後、二人の付き合い方が大きく変化した事はない。
最近、スコールが比較的丸くなったと言う変化はあるが、カインと同じ時間を過ごすのは稀な事だ。
カインも相変わらず遠目にスコールを見守っており、二人が会話らしい会話を交わす時と言ったら、周囲に誰の気配も感じられない時だけ。
「もっと話をした方が良いんじゃないか」とカインはセシルに、スコールはジタンとバッツに言われたが、今まで殆ど会話の無い付き合い方をしていたのに、いきなり喋れと言う方が無理だ、と両者───主にスコールの方───が思った為、一見殺風景な恋人関係が出来上がったのである。




いつものように、スコールがジタンとバッツに引き摺られ、素材集めに行った帰りの事だった。
目当ての武器防具、アクセサリー類のトレードをする為、秩序の聖域から程近い場所にあるモーグリショップに立ち寄ると、其処に恋人とその親友の姿があった。


「おっ、セシルとカイン」
「やあ、偶然だね。買い物?」
「トレードの方。おーい、カタログ見せてー」


ジタンとバッツに急かされ、モーグリが店の奥から分厚いカタログファイルを持って来る。
二人はファイルを開いて目当ての品を確認すると、荷物袋から今日集めて来たばかりの素材を取り出し、トレードに必要な数を確かめる。

こっちよりこっち、いやあっち、と有用な物を吟味している二人を、スコールは遠巻きに眺めていた。
目当てのアクセサリーがない訳ではなかったが、今日は運が悪かったようで、どう数えてもトレードに必要な数が揃えられていない。
詰まる所、スコールはモーグリショップに用事がなかった訳だが、一人で帰ると言ってもジタンとバッツは赦すまい。
後から「置いて行くなんて酷いじゃないか!」と涙ながら(目薬使用)に訴えられる面倒臭さを思うと、彼等の気が済むまで付き合う方が平和である為、同行しているのである。

暇を持て余していたスコールは、特に興味もなく、並べられた商品を眺めていた。
色とりどりの宝玉を使って精製された指輪やピアスは、一つ一つに魔力が込められているらしく、ドーピングのように魔力を上げるもの、毒を治療するもの等がある。
スコールの世界では、アクセサリーと言うと装飾品以上の価値はなかったから、アクセサリーを身に付けるだけで何某かの恩恵に与れると言うのは、少々不思議なものであった。


(……まあ、俺には関係ないな)


毒を治療すると言う類ならともかく、魔力の増幅は、スコールには余り意味がない。
スコールが使う魔法は、この世界では下級レベルの魔法にも劣る程度の威力しかなく、牽制以上の役目にはならない。
下手に苦手分野を強化して補おうとするよりも、得意分野を伸ばした方が有用だろう。

そんな事を考えつつ、深い紺色の宝石を頂いた指輪を手に取る。
オーバルカットされた宝石は、角度を変えるときらきらと光を返し、スコールの目に反射する。
スコールの世界で考えれば、相当な金額になるであろう指輪だが、掲示されている値段は随分と安価であった。
また一つ、不思議な気分にかられつつ、指先の石をじっと眺めていると、


「お前にそれは必要ないんじゃないのか」


突然聞こえた声に、スコールの心臓が思い切り跳ねた。
思わず落としそうになった指輪を慌てて掴み取り、スコールはじろりと隣を睨む。

蒼灰色に睨まれた男の顔は、兜の所為で口元しか見えない────が、微かに弧を描くその唇に、スコールの眉間に深い皺が刻まれる。


「…気配を消して近付くな」
「そんなつもりはなかったんだが」


睨むスコールに、カインは苦笑交じりに言った。


「そんなにその石が気になるのか?」


カインは、スコールの手に握られた石を指差す。

気配に敏感な筈のスコールが、気配も足音も消さずに近付いたカインに気付かなかった。
余程宝石に夢中になっていたのか、と問うカインの声が、子供を窘めるような柔らかさを含んでいる事に、スコールの眉間の皺が更に深くなる。
カインはそんなスコールから視線を外し、並べられたアクセサリーの品を眺め、


「何か欲しいものでもあったのか」
「別に。見てただけだ」


カインの言葉に素っ気なく返して、スコールは手にしていたアクセサリーを元の位置に戻した。
丁度良くそのタイミングで、トレードが終わったジタンとバッツ、セシルの声がかかる。


「スコール、終わったぞー」
「こっちも終わったよ、カイン」
「早く帰って、風呂入ろうぜ!」


それぞれの連れ合いの声に、二人もそれぞれ頷いた。

セシルがジタンとバッツを伴ってショップを出て、スコールも続く。
カインは僅かに遅れてからショップを出、殿を引き受けるようにゆっくりと進む。

いつも定位置とばかりにスコールの傍から離れないジタンとバッツだが、カインが同行している時は、彼に場所を譲っている。
恋仲である筈なのに、それを全く臭わせない程の距離感で付き合っているスコールとカインの様子が、彼等にはどうにもむず痒いものがあるらしい。
セシルは、そんなジタンとバッツに同調しているのか、恋仲同士を純粋に応援しているのかは判らないが、やはり「もう少し傍にいても良いんじゃない?」と思っているそうなので、スコールとカインの間に割って入るつもりはないらしい。
……そう言った判り易い気遣いや行動が、スコールには反ってプレッシャーに似たものとして感じられてしまうのだが。

少し歩く速度を落とした方が良いのだろうか。
背中を見守るようにして進む、背後の男の気配を感じながら、スコールは考える。
前を歩く三人は、スコールが少し遅れた程度で振り返る事はないだろう。
けれど、背後の男と並んで歩く、と言うのも、スコールには無性に難しい事のように思えてならなかった。

彼と話をしたくない訳ではない。
だが、どんな話をすれば良いのか判らない。
そんなジレンマに苛まれながら、スコールが黙々と足を動かしていると、


「スコール」
「……!」


距離があるとばかり思っていた彼の気配が、直ぐ後ろにあった。
近い距離で聞こえた声に、またしても心臓が跳ねる。

驚かすな、と言う気持ちで、判り易く顔を顰めて振り返る────が、眼前に差し出された銀色に、蒼灰色から剣呑な光が抜ける。


「体力を補えるアクセサリーだ。こっちの方が、お前には有用だろう」


そう言ってカインが差し出していたのは、燻し銀が鈍い光を反射させる、シルバーバングルだった。
突然の事に、スコールはきょろんとした表情で、カインとバングルを見詰める。

何も言わない、動かないスコールに対し、カインも何も言わずに動いた。
歴戦を臭わせる武骨な胼胝のある手が、スコールの手を掴み、持ち上げる。
バングルがスコールの手首に通され、黒のジャケット裾と手袋の隙間に、微かな重みが加わった。
その重みによって、スコールはようやく我に帰る。


「カイン、」
「持って置け。お前は直ぐにスタミナ切れをするからな」
「おい、」
「銀装飾なら、お前もそれ程抵抗はないだろう?」


自分が何を言おうとしたのか、スコールにもよく判っていなかった。
ただ、要らない、あんたが使え、と言う類のものであった事は違いなく、カインはそれを先回りするように言って、また歩き出す。

言葉を先回りされた事で、出鼻を挫かれたスコールは、数秒の間、其処に立ち尽くしていた。
遠くから聞こえるジタンとバッツの声に我に帰り、慌てて歩を再開させ、早足でカインを追い越して行く。




擦れ違い様、赤くなった耳を彼に見られていた事に、少年は気付かなかった。






なんか思い付いたので書いてみたカイン×スコール。
普段はスコールに無理のない距離を保つのに、不意打ちで近付いて来るカインとか良いかなって。

カイン、大人で兄貴分で紳士とか難しい。孤高だけど、隊長とかやってたし、人付き合いは問題なさそう。
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[レオスコ]甘い時間を待っています

  • 2014/03/15 21:39
  • カテゴリー:FF

ホワイトデーでレオスコ!
バレンタインの[甘い吐息を分け合って]の続きになります。




今から一ヶ月前のバレンタインデー────その日、スコールはレオンからチョコレートを贈られた。
が、その時、スコールも彼に対して贈るチョコレートを用意していたのだ。

スコールは一日の学業を終えた後、普段なら先ず近付かないであろう、女子生徒が屯する洋菓子店に赴き、きゃいきゃいと花を飛び散らす少女達の中に一人混じって、彼に渡すチョコレートを選んだ。
そうした非常に高いハードルを越えた後で、スコールは更に高いハードルにぶつかる事となる。
スコールが学校で沢山の女子生徒(名前を知らない者も多い)からチョコレートを贈られたように、レオンも勤め先の同僚達から、大量のチョコレートを贈られていた。
レオンが貰ったものは、流石社会人とでも言うのか、どこそこの高級ブランドチョコレートが並べられ、手作りのものも、中身は勿論包装紙まで非常に凝られていて、女性達の執念のようなものが感じられた。
そんな沢山のチョコレートを見た後で、スコールは自分が用意したチョコレートが酷く貧相なものに見えたのだ。
学生達が寄り道して行くような洋菓子店で買ったもので、ワイン入りのビター味と言う大人向けの仕様とは言え、やはり高級菓子の類には、遥かに見劣りする。
スコールは完全に気後れし、チョコレートを直接渡す事を躊躇ってしまった。

スコールがどうやってチョコレートを渡すかを考えあぐねている間に、レオンの方からスコールへ、チョコレートが贈られた。
予告もなく口の中にチョコレートを入れられて、何事、と狼狽していると、キスをされ、彼はスコールとチョコレートの味を堪能した後、「来月は、お前の方から貰えると、嬉しいな」と言って笑った。

彼にそう言われたから───と言う訳ではないが、3月14日のホワイトデー当日、今度こそは、とスコールは思っていた。
あの日スコールが用意したチョコレートは、結果的にはレオンに贈る事は出来たものの、直接渡せた訳ではなく、レオンの部屋のデスクに置いて、彼に気付いて貰うと言う手法が取られた。
今回はバレンタインデーのお返しの日とされているのだから、渡す事への大義名分は十分ある。
一ヶ月前のように、あれこれと考え込んだり、チョコレートを用意する為に高いハードルを越えたりする必要はない。
この前のお返し、と言って差し出せば良い、簡単な事だ。

……簡単な事だ。


(………そう、思ってたのに)


3月14日の夜、スコールは無表情の裏側で、胸中で頭を抱えていた。

レオンと二人で暮らす家の中、リビングのソファに座って、スコールはテレビを眺めていた。
が、目線が其方に向いているだけで、放送されている番組の内容は、まるで頭に入って来ない。
彼の意識は、ただ只管、背中の気配に向けられている。

スコールが座っているソファの後ろには、食卓に使っているテーブルがあった。
レオンはその席に着いて、仕事用に使っているパソコンを開き、何かのデータを打ち込んでいる。


(……忙しそうだ)


何でも、年度末の総決算が近いとかで、やる事が山積みになっているらしい。
春休みと言うものは学生の内の特権であり、社会人には全く関係の無い事なのである。

絶えず聞こえる、キーボードを叩く音と、カーテンを開けた夜の窓越しに映る彼の表情は、真剣そのもの。
スコールは、ただの一時であっても、それを邪魔する事に気が引けていた。

スコールがバレンタインデーのお返しにと用意したのは、一ヶ月前と同じ店で買ったチョコレートだった。
同じ物を同じ店で用意するなんて芸がない、とは思ったが、スコールにとって、今日と言う日は、彼の日のリベンジの意味もある。
あの日は直接渡せなかった上、先にレオンの方からチョコレートを贈られたので、今度こそは自分から、と思っていた。
そして出来れば、あの日出来なかった“直接手渡しする”と言うミッションをクリアしたい。

しかし、忙しそうな彼の横顔を見遣る度、どんどん気後れして行く自分がいる。
邪魔をしないように、彼の部屋にこっそり置いておこうか、と思ったが、それでは一ヶ月前と何も変わらない。


(もう少し待って、レオンの仕事が終わったら、渡すか。でも、まだしばらく終わりそうにないよな…)


パソコンの横に置かれた、資料らしき紙の束を捲りながら、レオンは作業を続けている。
その紙束が、まだ半分も捲られていない事に、スコールは気付いていた。
あの紙束全てに書かれている事をまとめなければならないのだとしたら、日付を跨ぐのは目に見えている。

せめて日付が変わる前、ホワイトデーの内に渡したい。
でもタイミングが……と考えれば考える程、スコールはドツボに嵌り込み、冷蔵庫に納めているチョコレートを取りに行く事すら出来なくなっていた。

後々になって考えれば、「一ヶ月前のお礼」と言って、テーブルに物を置くだけで目的は果たせたのだが、思考の迷路に嵌り込んだスコールは、そうした考えすら思い浮かばなかった。

窓越しにちらちらと彼を見て、興味の無いバラエティ番組の音を聞くともなしに聞きながら、いつ動こう、と緊張しながらタイミングを探す。
そんなスコールの後ろで、キーボードを叩く音が途絶え、レオンは曲げていた背中をぐっと後ろに逸らした。


「……ふーっ…」


パソコンに向かう為にずっと丸めていた背を伸ばせば、ぴきぴきと筋肉と骨の引き攣る感覚に見舞われる。
いたた、と眉根を寄せるレオンに、スコールは振り返り、


「終わったのか?」
「ん……今日の所は、な」


書類の束をぱらぱらと捲りながら、レオンは言った。
一応、今日の作業として予定している所までは終わった、と言う事だ。
几帳面な彼の事、出来れば前倒しで出来る所まで終わらせてしまいたいのだろうが、今日はもうそんな気力も尽きているようだ。

レオンはパソコンの電源を切り、蓋を閉じると、ふう、と息を吐いてテーブルに突っ伏す。
滅多に見せない、判り易い“疲れた”と言う様子で、彼は呟いた。


「毎年の事だが、やる事が多くて困る」
「……大変だな」
「まあな。この時期だし、仕方のない事ではあるんだが」


決算と言うものが近付く度、レオンが大量の書類作りに追われている事を、スコールは知っている。
一年間の総決算となると尚更で、平時でも多い書類の数が倍以上にまで増えており、さしものレオンでもこれを捌くのは一苦労だった。

のろのろと体を起こすレオンを見ながら、渡すなら今だろうか、とスコールは考える。
レオンもスコールもあまり甘い物は得意ではないが、甘味は疲労時の回復に役に立つ。
しかし、レオンは明日も仕事があるし、早朝の内に出社しなければならない筈だから、甘味よりも早く眠りたいかも知れない。
────考え始めればキリがない可能性を、スコールは延々と頭の中で巡らせていた。

かたり、とレオンが席を立つ音を聞いて、スコールは我に返る。


「風呂に入るのか?」
「いや。その前に、コーヒーでも飲もうかと」
「俺が淹れる」


仕事終わりの一服が欲しいのなら、丁度良い、とスコールはソファを立った。
コーヒーを淹れて、その当てにチョコレートも渡せば良い。
これなら、無理なく自然に渡せるだろう。

キッチンへ向かうスコールを見送って、レオンは小さく笑みを零し、テーブルに置いていた書類を取った。
明日まとめる分を確認するのも面倒で、パソコンと一緒にさっさと仕事用の鞄の中に入れて、蓋をする。

スコールはコーヒーミルを取り出し、レオンに教えて貰ったやり方で、コーヒー豆を挽いていた。
ほんのりとしたコーヒーの香りがスコールの鼻腔を擽る。
レオンに教わった通りの挽き方をしているのに、不思議な事に、何度挽いても彼の作ったコーヒーと同じ香りにならない。
それでも、レオンが「スコールの挽いてくれた豆の香りは美味い」と言ってくれるから、これで良いのだと思っている。

挽き終った豆を布フィルターに入れて、サーバーにセットし、少し湯を注ぐ。
豆を蒸らし終わった所で、改めて湯を注が、コーヒーが摘出されるのを待っている間に、冷蔵庫に入れているチョコレートを取り出そうとした所で、


「最近、妙に疲れが溜まっている気がするんだ」


本来なら対面式のキッチンとなる為か、キッチンとリビングの間の壁には、窓がある。
其処から聞こえた声にスコールが顔を上げると、レオンはスコールが点けっ放しにしていたテレビを眺めていた。
その為、キッチンにいるスコールからは、レオンの後ろ姿しか見えない。

じっとその後ろ姿を見詰めるスコールに、レオンは振り返らないまま、言った。


「だから、妙に甘いものが食べたくなるんだ」
「………」
「でも、此処の所、コンビニに買いに行く暇もなくてな」


レオンの言葉は、独り言染みていたが、スコールに向けられているようでもあった。

スコールは、冷蔵庫の蓋に手をかけたまま、じっとレオンを見詰めていた。
レオンが肩越しに振り返り、蒼灰色の瞳が微かに楽しそうに和らいで、


「何かあったら、嬉しいんだけどな」


澄んだ蒼の瞳には、期待と言うよりも、確信的な光が滲んでいる。
それを見付けただけで、スコールは、何もかもが見透かされているような気がして、頬に朱色が上った。



真っ赤な顔でコーヒーとチョコレートを差し出すスコールに、レオンがもう一つ、スコールが益々赤くなる事を言おうとしている事を、彼は知らない。





「お前の手で食べさせてくれ」って言う。

バレンタインの時には、レオンがスコールに食べさせてあげたからね(不意打ちで)。
自分がした事を、全部そのままお返しして貰おうと思ってるレオンでした。

 

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[絆]ちびっこたちのホワイトデー

  • 2014/03/14 21:44
  • カテゴリー:FF
絆シリーズでホワイトデー。
ちびっ子たち頑張る。
[ひみつのやくそく]から続いています。

はじめてのおかえし
  ┗はじめてのじゅんび 12


いつも見守ってるつもりでいても、いつの間にか成長している部分ってあるものです。
こんなこと出来るようになったんだ、とか、そんな事考えるようになったんだ、とか。
子供の成長って、周りが思っていたり感じていたりするよりも、実はずっと早いんだなぁ。

こうしてお返しして、お返しのお返しして、お返しのお返しのお返し……と言う形で続いて行くんだと思います。
仲良し兄弟。
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[オニスコ]無自覚と無防備

  • 2014/03/08 22:40
  • カテゴリー:FF
3月8日なのでオニオンナイト×スコール!





総勢10名の秩序の戦士の中で、料理が出来るのは約半分。
色々な意味で万能なバッツと、素朴ながらもボリュームのある料理が作れるフリオニール、基本に習った料理を作れるルーネス、簡単なものからレシピと材料さえ調達出来れば幅広く作れるスコール、酒の当てを中心に大衆向けのメニューを網羅しているジタンと言った具合だ。
後の面々は、戦闘以外は日常生活からして何処か抜けた感が拭えないウォーリア・オブ・ライトを筆頭に、料理の基礎は勿論、材料の種類の区別がつかない者が殆どである。
セシルとティーダはある程度出来るのだが、セシルは味付けの基本が何処かズレて(かなりオブラートに包んだ言い方である)おり、ティーダはかなり極端な味付けになり、健康に著しく害を及ぼしそうなので、もしも彼が料理当番になる時は、二人係りで補佐(と言う名の制御)を行う必要がある。

そんな訳で、秩序のメンバーの料理当番は、かなりコンスタンスに順番が回ってくる。
一人で十人分を作るのは相当な重労働となる為、必ず二人以上が当番になるとなれば、尚更順番の回転は早い。

昨日の食事当番は、秩序の聖域で待機番となったルーネスとフリオニールだった。
今日からはルーネスとスコールと言う組み合わせになり、ルーネスは今日の夕飯を作って、ようやく食事当番から解放される。
一週間もしない内にまた順番が回って来るのだが、こればかりは料理を任せられるメンバーが増えない限りは仕方のない事だ。
最近、ウォーリアの発案で、料理の出来ないメンバーにも料理のいろはを教える機会を設けるようにしているが、その成果が無事に功を奏すかどうかは、怪しい所であった。
一先ず、セシルには大多数の意見の味を反映して貰うように説得し、ティーダは"一つまみ"を"一握り"にする癖を直すようにスコールに教わっているようなので、今の所望みがあるのはこの二人だろう。
他の面々───ウォーリア、ティナ、クラウド───に関しては、今は触れるまい。

ルーネスとスコールが預かっているキッチンは、静かなものであった。
話しをしたのは食事の献立を決める時と、レシピの確認をした時だけで、後はそれぞれ分担し、黙々と自分の仕事に従事している。
スコールは元々喋る人間ではないし、ルーネスも話しかけられれば応えるが、必要ではないのなら喋らなくても良いだろうと思うので、二人の間には最低限の会話しかない。
聞こえるのは、トントントン、じゅうじゅうじゅう、ぐつぐつぐつ、と言った料理が出来上がっていく過程の効果音のみ。


(フリオニールとは、色々話をしながら作るけど)


刻んだ野菜をフライパンに入れて、コンロに火をつける。
ボッ、と簡単に火が付くのを初めて見た時は驚いたものだったが、今ではすっかり慣れたものだ。

じゅうじゅうと野菜を炒め、焦げ付かないように菜箸を入れながら、ルーネスは隣で鍋を掻き混ぜているスコールをちらりと見遣る。


(スコールは本当に喋らないから、作業が早くて良いな)


スコールと料理をする度に感心に思うのは、彼の手際と効率の良さだ。
何せ10人分を賄う料理を作るのだから、効率と言うものは大事である。
フリオニールも慣れた手付きで料理をするので、決して効率が悪い訳ではないが、話をする分、多少作業が遅くなるのは儘ある。
賑やかし事好きのジタンとバッツもよく喋り、おまけに遊びながら(楽しんでいるだけだと彼等は言うが)料理を作るものだから、見ていて危なっかしいと思うような場面も少なくない。

そんな面々に比べると、黙々と作業に従事するスコールの姿は、ルーネスにはとても好感が持てるものであった。
作業は完全に分担制で、お互いに邪魔をする事もないので、調理作業はいつも早く終わらせる事が出来る。
今日も二人の手は着々と終わりに近付いており、近々帰ってくる予定の仲間達を待たせる事なく、食事を提供する事が出来そうだった。

よく火が通り、しんなりとしたキャベツの入った野菜炒めを皿に盛る。
その隣で、スコールがスープの入った鍋を掻き混ぜる手を止め、小皿を手に取った。
ルーネスはスコールの邪魔にならないように移動して、冷蔵庫に入れていた食後のゼリーが固まっている事を確認しに行き、ぱか、と冷蔵庫の蓋を開けた時、


「……っつ……!」


押し殺したような声が聞こえて、かしゃんと何かが落ちる音がした。
ルーネスが振り返ると、スコールが口元を押さえて立っており、足下にステンレス製のおたまが転がっている。
微かに赤らんだ顔で、眉根を寄せているスコールを見て、ルーネスは直ぐに察した。
スープの味見をしようとして、冷まし方が足りなかったのだろう、熱い液体を口に含んで舌が痛んでいるに違いない。


「スコール、大丈夫?」
「……ああ」


問うルーネスに、スコールは顔を逸らして頷いた。
すまない、と言って、足下に落としていたお玉を拾って、シンクの蛇口を捻り、水洗いする。

ルーネスはよく固まったゼリーの入ったキッチンバットを取り出しながら、何気なくスコールの様子を見ていた。
お玉を綺麗に洗ったスコールは、床拭き用の布巾で、スープが零れた床を拭いている。
その口元は真一文字に引き絞られており、スコールは時折、その口元を気にするように指を当てていた。

布巾を洗い絞って布巾干しに戻して、スコールは改めてお玉を手に取った。
もう一度味見をしようと小皿にスープを掬い移し、今度はきちんと冷ましてから、皿を傾ける。


「………」


スコールが無言で眉根を潜め、今一度味見をする様子を、ルーネスはまだ見ていた。


「…………」


スコールの整った眉が、更に潜められる。
眉間に深い皺が刻まれるのを見て、ルーネスは手に持ったままだったゼリーをテーブルに置いて、スコールに声をかける。


「スコール。ひょっとして、舌を火傷したの?」
「……多分」
「大丈夫?」
「少しヒリついているだけだ。時間が経てば治る」


心配されるほどの事ではないと言って、スコールはルーネスに小皿を差し出した。
其処にはスープが少量入っていて、どうやら代わりに味見をしてくれとの事らしい。

何事も慎重なスコールが、珍しい事もあるものだ────そんな事を思いつつ、ルーネスは小皿を受け取った。
スコールのように火傷をしてしまわないように、念入りにスープの熱を覚まして、口に運ぶ。
少し薄味に思えたが、昨日はフリオニールがティーダとクラウドの要望に応え、肉系の濃いスープを作っていたので、今日はこの位で良いだろう(ティーダは不満かも知れないが)。


「うん、大丈夫。美味しいよ」
「少し薄くないか」
「これ位の方が僕は好き」
「……なら、これで良いな」


薄味が好きなのは、スコールも同じだ。
ルーネスが好きと言うなら良いだろう、とスコールは言って、返された皿を流し台に置く。

ルーネスがゼリーを切り分け、一人分ずつに皿に移し、また冷蔵庫に入れて、食事の用意は完了した。
片付けは二人並んで、ルーネスが水洗いをし、スコールが水気を拭いて所定の位置に戻して行く。
その間に、スコールは何度も自分の口元に手を当てていた。


「そんなに痛いの?」


ルーネスが訊ねると、スコールは口の中を気にしながら答えた。


「痛いと言う程じゃないが、少し麻痺しているような感じはする」
「それ、結構重症なんじゃない?」
「………」
「ちょっと見せてよ。具合、確認してみるから」


ルーネスの言葉に、スコールは僅かに眉根を寄せたが、口の中の違和感の方が勝ったらしく、手にしていた計量カップを棚に戻した後、ルーネスに向き直った。
身長差の所為で見えないだろうと、背を屈めるスコールの仕草に些かの悔しさを覚えつつ、ルーネスは開けられたスコールの口の中を覗く。
スコールの口の中は綺麗なもので、予想していたような、爛れや気泡のようなものは見当たらなかったので、ルーネスはほっと安堵の息を吐く。


「火傷って程じゃないのかな。それっぽいものは見当たらないよ」
「そうか」
「でも、気になるのなら、氷とかで冷やしてみる?」
「…そうする」


火傷にならない程だとしても、熱で舌の表面が炎症を起こしているのは確かだろう。
手っ取り早く冷やせば収まるかも知れない、とスコールは冷凍庫から氷を一つ摘まんで、口の中に入れる。
スコールは氷を口に含んだまま、残りの調理器具を拭いて、片付けを終了させた。

出来上がった料理をリビングの食卓用テーブルに運んで、食事の準備は出来た。
ルーネスが窓の外を覗くと、何処かで合流したのだろうか、バラバラに出発した筈の仲間達が揃って戻って来ている。
良いタイミング、と思いながら、彼等が入って来るまでの束の間の休憩に浸ろうと、リビングのソファへと向かったルーネスは、一足先に其処で休んでいたスコールが、また口元に指を当てているのを見て、


「氷、もう溶けた?」
「ああ」
「まだ痛む?」
「少し。さっきよりは引いた」


そう言いながら、スコールの形の良い指が、薄淡色をした唇をなぞる。
痛みが気になる所為か、薄く唇を開いて、視線を定まらせずにいる横顔は、何処か無防備で憂いを孕んでいるように見える。


「……そんなに気になるなら、ケアルで治しちゃう?」
「この程度の事で魔力を使うのは感心しない」
「僕もそうは思うけど。でも、僕は昨日も今日も待機だったから、魔力は有り余ってるし。ちょっと位、贅沢したって平気だよ」


スコールの言葉にはルーネスも同意見だが、この二日間、ルーネスは全く力を使っていない。
有り余っている、と言うのは語弊がありそうだが、エネルギーを持て余し気味なのは確かだ。
ケアル一回程度で空になるような魔力ではないし、たまには良いだろう。

ルーネスの思考が伝染したか、スコールはしばし考えた後、「……頼む」と言った。
どうやら、先の見た目に反して、口の中の痛みは存外とスコールを不愉快にさせているようだ。


「口、開けて」


ルーネスの指示に、スコールは素直に従った。
間近で目を合わせる気まずさを避けてか、スコールは目を閉じて口だけを開いて見せる。

此処にいるのがジタンやバッツなら、きっとこうは行かないのだろうな、とルーネスは思う。
良くも悪くもスコールに対して遠慮のない二人は、スコールが少しでも無防備な姿を見せようものなら、即襲撃して来る。
最近はスコールもそんな二人の扱いに慣れて来たのか、飛び掛かって来た彼等の気配を察して回避行動を取る事も増えたが、二対一では分が悪いのか、よく押し倒されている場面を見る。
そんな二人を相手に、無防備に目を閉じて口を開ける姿など、彼等が余程上手く誘導しなければ───それが出来てしまう辺り、彼等は本当にスコールの扱いと言うものをよく知っている───見せる事はないだろう。

ルーネスがもう一度スコールの口の中を確認してみるが、全容は先程と特に変わらなかった。
あれから悪化した様子もないので、軽い炎症だけで済んでいるのだろう。
その炎症を抑えるべく、ルーネスはスコールの口元に手を翳して、ケアルを唱える。


(これでよし)


多分、痛みは消えた筈。
その証拠のように、潜められていたスコールの眉が微かに緩んでいる。


「……もう良いか?」


ルーネスとの距離感を気にしてか、スコールは目を閉じたまま言った。
それに、良いよ、と答えようとして、ルーネスの口が止まる。

目を閉じて無防備になったスコールの表情は、ルーネスがいつも見ているものと雰囲気が違う。
そう感じるのは、自分が彼を見下ろしているからだろうか。
まだまだ小さいルーネスと違い、上背がある事もあって、ルーネスは専ら彼───に限らず、この世界にいる者全て、ジタンでさえも───を見上げる側だ。
きっとどんなに背伸びをしても、この世界で彼と一緒にいる間に、ルーネスがスコールの身長を追い越す事はあるまい。
そんなスコールが、今は座っているお陰で、目の前に立っているルーネスよりも頭の位置が低くなっている。

スコールの口元に翳していたルーネスの手が、まるで何かに操られるように動き、その指先がスコールの唇に触れる。
色が薄い所為か、肉も薄いのかと思っていたが、案外と膨らみがある。


「……ルーネス?」


まだ終わらないのか、と問うスコールに、ルーネスははっと我に返った。
それから、自分の指とスコールの唇が触れている事に気付いて、慌てて手を引っ込める。


「も、もう良いよ。どう?痛みは治まった?」
「ああ。ありがとう」


思わず声が震えたが、スコールには気付かれなかったらしい。
短く感謝を述べて、スコールは先と同じように唇に指を当て、咥内を舌で確認しながら頷いた。




スコールの形の良い指が、スコールの唇を撫でている。

その動きを目で追って、ルーネスは自分の行動に気付き、ぶんぶんと首を横に振る。
それを見たスコールが不思議そうに首を傾げ、どうした、とでも問おうとしてか唇を開いたが、その声は雪崩れ込んで来た空腹の仲間達の声に掻き消されてしまった。






3月8日と言う事で、無自覚ルーネス×無防備スコール。
年下だと思って警戒心が薄いスコールと、年下権限でひっそり役得だったルーネスでした。
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