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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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メリークリスマス!

  • 2013/12/25 23:20
  • カテゴリー:FF
メリークリスマス!
と言う事で、[絆シリーズ]のレオン・エル・子スコ・子ティーダ・ジェクトでクリスマスSSです。

[今は見えない裏側で]
[真実はその手の中に]


相変わらず妙にノリの良いレオンとエルがいます。これは確実に父親の所為w
多分彼は、自分で衣装着て「メリークリスマース!」って窓から入ろうとして、足攣ったりしてたんじゃないでしょうか。
そして怒られていたんだと思います。そんな父の影響を完全に受け継いでいる二人でした。

そんな二人の父親に比べ、不器用で何かと失敗してしまうジェクトですが、彼も彼なりに一所懸命。
空回りしたり、なんで素直になれないんだと自問自答して凹む事もありますが、ティーダが喜んでくれるなら色々やってくれる筈。
そんな訳で↑の話が出来ました。

愛され子スコ&子ティーダはいつも通り、仲良しです。
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[サイスコ]びっくりさせる筈だった

  • 2013/12/22 20:52
  • カテゴリー:FF
サイファー誕生日でサイスコ!





三日前に入った緊急の任務は、大した内容ではなかった。
ドール郊外に巣を作り、最寄駅で列車を襲う魔物を退治してくれ、と言うもので、わざわざサイファーが出張らねばならない物でもない。
慢性的な人手不足にも関わらず、時間を持て余していたサイファーに、キスティスが「暇なら行って来て頂戴」と寄越しただけの事。
自分がデスクワークに向く性質ではない事を自覚しているサイファーは、これ幸いにと机から逃げ出し、早朝から大陸横断鉄道に乗ってドールへと出発した。
魔物は少々数が多かったが、サイファーの手を煩わせる程の事ではない。
面倒だったことと言えば、コロニー的な巣があちこちに分散していた事で、後でこれを再利用されない為に全て燃やし潰さねばならなかった事だ。
経費で借りたレンタカーを走らせ、あちらこちらへ走り回り、それで丸一日を使ってようやく全ての巣を駆除する事が出来た。

夕焼けの沈むドールを後にすれば、バラムに帰った時にはすっかり夜。
適度な運動をこなしたお陰か、ガーデン校門を潜る頃、サイファーの口からは欠伸が漏れていた。
報告書は明日書いて提出するとして、今日はさっさと風呂に入って寝ちまおう、と思いつつ、寮へと向かう。
そして辿り着いた我が家───寮部屋───に、明かりが灯っている事に気付いた。
サイファーの部屋に、彼のテリトリーだと判っていて入って来る人間はごく少数で、更に滞在しているとなると、一人しかいない。


(また俺の部屋で寝てんのか)


サイファーの部屋が、自分の部屋よりも指揮官室から近い距離にあるからと、彼はしょっちゅうサイファーの部屋に寝泊まりする。
その時、部屋の持主の都合は全く考慮されておらず、正しく勝手知ったる何とやらだ。
傍迷惑と言えば傍迷惑なのだが、早朝に会議を予定している筈なのに、昏々と自室で眠り続けていた(日頃の疲れもあるので仕方がないとは思うが、それで回らないのが世の中だ)彼を、指揮官室から寮の奥にある部屋へと呼び付けに行く回数が増えた頃、サイファーは彼を好きにさせる事にした。
自分が目が覚めた時、彼がまだ横で眠りこけていれば、その場で起こしてやる事が出来る。
───そんな経緯で、彼の行動を容認してしまう位に、サイファーが彼の世話を焼くのは当たり前の事となっていた。

部屋の扉には、ロックがかかっていない。
相変わらずの不用心さに呆れるものの、彼と幼馴染以外の人間がサイファーの部屋を訪れる事はない。
仮に泥棒でも入ろうものなら、どんな目に遭うか、知らない者はバラムガーデンにはいるまい。
だが、習慣として、鍵をかける癖はつけろと言っているのに、彼は今日もアンロック状態で寝ているようだ。

やれやれ、と思いながらドアを開けようとして、サイファーはパネルスイッチを押す手を止める。
部屋の中で、ごそごそと人が動いている気配があった。


(起きてんのか)


寝ているものとばかり思っていたので、少々虚を突かれた。
が、彼が起きているからと言って如何する訳でもない。
サイファーは改めてパネルスイッチを押して、自分の部屋へと入室した。


「おーい。帰ったぞー」


活動している筈の彼に声をかけるが、返事はなかった。
入って直ぐに目につくベッドにも、彼の姿はなく、珍しい事に、使った形跡さえも残っていなかった。

妙だな、と思っていると、キッチンの方からガシャガシャと言う音がする。
なんとなく嫌な予感を感じて、サイファーの眉間に深い皺が寄せられた。
恋人のそれと酷似した皺をそのままに、何してやがるんだ、とキッチンを覗き込む。

─────其処にあった光景を見て、サイファーは深々と溜息を吐いた。


「……おかえり」


キッチン台の前に立っていた恋人────スコールが此方を見て言った。

スコールの眉間には、今のサイファーよりも更に深い皺が寄せられている。
如何にも不機嫌ですと言わんばかりの表情は、幸か不幸か、サイファーに向けられたものではない事が判る。
スコールを不機嫌にさせているのは、多分、恐らく、十中八九、彼の前髪や横髪、頬にぺったりとくっついている、白い液体の所為だろう。


「……お前、何してんだ」


サイファーが胡乱な目で問うと、スコールは無言で自分の腕に抱えているものを見下ろした。
其処には銀色のボウルがあり、中には白い液体がなみなみと揺れており、泡立て器が入っている。
泡立て器があると言う事は、あの白い液体を掻き混ぜていたのだろうと推察されるが、それにしても一体どうやって掻き混ぜていたのだろうか。
スコールの周囲には、彼を中心に半径一メートル前後、白い液体があっちへこっちへと散らかっていた。

スコールは唇を尖らせて、ボウルをキッチン台に置いた。
来ているTシャツの裾を引っ張って、ごしごしと顔を拭くスコールを見て、サイファーは眉根を寄せる。
ずかずかと彼に近付くと、サイファーはスコールの腕を掴んで、顔を拭く手を止めさせた。


「拭くなら、ちゃんとタオル使え。つか、そのシャツも汚れてんじゃねえか」
「………」


白いシャツを着ていたので、遠目には判らなかったが、スコールの服にも白い液体は付着していた。
スコールも言われてようやく気付いたのか、摘まんでいたシャツを見下ろして、「本当だ」と言いたげな雰囲気を滲ませる。

ああ、もう。
サイファーはこれみよがしに溜息を吐いてやると、掴んでいたスコールの腕を引っ張った。
スコールは特に抵抗する事もなく、サイファーの後ろをついて来る。


一体何をしたんだ、とぶつぶつと愚痴を零しながら、サイファーは洗面所に入ると、タオルを取り出した。
スコールの顔や髪に付着している白い液体を、ごしごしと乱暴に拭ってやると、スコールは「…痛い」と呟いたが、されるがままに大人しくしている。


「で、お前は一体、何をしようとしてたんだ?」


髪にこびり付いている白い液体を拭いながら訊ねるサイファーに、スコールは唇を尖らせる。
何を拗ねてるんだ、拗ねたいのはこっちだ、と思ったサイファーだが、ふと、スコールの白い頬がほんのりと赤らんでいる事に気付いた。

じい、と青灰色の瞳がサイファーを見詰める。
何かを言いたげな、しかし中々それを口に出そうとしないスコールに、サイファーは今日何度目か知れない溜息を吐く。
こういう時、のんびりと待ってやるのも良いが、それでは明日の朝日が昇ってしまう。
少し突いてやると、余程意固地になっている時でもなければ、スコールはなんとか言葉を絞り出せる。


「何だよ?」
「………」
「あ?」
「…………」


傍目に聞いていると、サイファーは完全に喧嘩腰だったが、此処にいるのはスコールのみ。
スコールはしばらくサイファーの顔を見詰め返した後、ぼそぼそと、小さな声で呟く。


「……あんた…」
「ん?」
「………あんたの……」
「俺の?」
「………誕生日……」


聞こえるか聞こえないか。
正しく、蚊の泣くような声で、スコールは言った。

直後、スコールはサイファーの手からタオルを引っ手繰り、サイファーの顔面に投げつけた。
然程湿気を含んでいる訳でもないタオルは、ふわりとサイファーの顔を襲っただけで、ダメージにはならない。

どたどたと騒がしい足音が遠退いて、サイファーがタオルを取ると、既にスコールは其処にいなかった。
洗面所を出てベッドを見れば、丸くなっている猫がいる。
此処を出て行こうとはしないんだな、と思いつつ、サイファーはキッチンへ入った。
キッチンは相変わらず、あちこちに白い液体を飛び散らせており、キッチン台周りは特に悲惨な状態だ。
そんな中、ぽつんと忘れ去られているボウルを覗き込むと、先刻と同じ、真っ白な液体がたっぷりと入っている。
流し台の三角コーナーを見ると、ホイップクリームの200mlパックが捨てられていた。


(俺の、誕生日、ね)


成程、と。
スコールが何をしようとしていたのか判って、サイファーの唇に笑みが浮かぶ。

サイファーはがしがしと頭を掻いた。


(普段からまともに飯も作れねえ癖に)


スコールは普段、日常生活に必要なる物事の殆どを、サイファーに任せきりにしている。
寮部屋を出ると(嫌々やらされているとは言え)指揮官としての見栄と言うか、人目が気になるのか、如何にも何でも完璧にこなして見せるが、その実、かなりの物臭である。
サイファーが面倒を見る事が当たり前になってからは、それも日々根深くなっているように見受けられる。

料理に関しては、全く駄目だ。
調理実習やサバイバル訓練で必要な技能は持っているが、それ以外の知識はからっきし。
その上、人目が気にならないと、張り詰めている糸が切れるのか、焼けば焦がすし、刻めば手を切るし、煮詰めていると熱くなった鍋に触って火傷をする。

そんな彼が、バースディケーキなど、まともに作れる訳もない。


(どーせ、固まらねえからって滅茶苦茶に掻き混ぜたんだろうな…)


無表情のまま、ムキになってホイップを掻き混ぜ続ける姿が浮かんで、サイファーは笑った。

やれやれ、と思いつつ、サイファーは雑巾を手に取った。
あちこちに飛び散ったホイップの掃除が終わったら、ボウルに入っているクリームを完成させよう。
それからスポンジを作って、これでもかと豪勢なデコレーションをしてやろう。
「嫌味か」と言う姿が想像できたが、その後、黙々とケーキを頬張る恋人が見れるに違いない。



ロマンティックとは程遠い、誕生日プレゼント未満。
自分の手で完成させて、恋人に食べさせてやるのも、まあまあ悪くないのではないだろうか。





サイファー誕生日おめでとう!

いつもサイファーが全部やってるから、たまにはびっくりさせてやろう(と言う体で)と思って誕生日ケーキ作ろうとしたけど、結局出来なかったスコールでした。
何故かサイスコになると、うちのスコールは本当に駄目な子になるようだ。
でもそんなスコールも可愛いじゃないか。サイファーに世話焼かれてると良いよ。
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[クラスコ]放課後は俺のもの

  • 2013/12/10 00:37
  • カテゴリー:FF
着地点を見ないで見切り発車で書いた現代クラスコ。




一日の就学時間を終えて、帰宅しようと校門に向かったスコールは、その五メートル手前で足を止めた。
不意に立ち止まったスコールを、数歩先に進んだティーダとヴァンが振り返る。
どうした、と問うヴァンに、スコールは答えなかった。
進む先、一点のみを凝視して固まったスコールに、ティーダとヴァンは首を傾げ、前へ向き直る。

三対の瞳が捉えたのは、校門横に佇む金色だった。
空から落ちる太陽の光を受けて煌めく金糸は、まるで鶏冠のように逆立っている。
それを見たヴァンが「ヒヨコみたいだ」と言った時、その持ち主は怒鳴りこそしなかったものの、一日不機嫌であった。
ヴァンがそれを知る由はないが、不機嫌に当てられたスコールにとっては、溜まったものではなかった。

金色の持主の名は、クラウドと言う。
スコールとは幼少時から近所付き合いが深く、スコールが中学生になるまでは兄貴分を自称していた。
現在は社会人となり、運送業者で働く傍ら、弟のように思っていたスコールに、いつしか抱いていた恋心を告白し、晴れて恋人となった仲である。


「クラウド、また来てるんスね」
「よく来るなー。暇なのかな。師走なのに」


ティーダとヴァンが呟くと、その横をスコールが早足で通り過ぎた。

つかつかつかつかと近付いて来るスコールに気付いて、クラウドが顔を挙げる。
ジャケットのポケットに突っ込んでいた右手を挙げ、ひら、と手を振る。
柔らかな虹彩を宿した瞳と、小さな口が笑みの形を作っていたが、スコールはそれを見ていなかった。


「遅かったな、スコール。少し心配したぞ」
「あんた、なんでまた此処にいる!?」


労いの言葉をかけるクラウドを無視して、スコールは小声で叫んだ。
それを受けたクラウドは、きょとんとした貌をして、何を言っているんだ、と首を傾げ、


「お前の迎えに来ただけだが」
「止めろって言っただろう!」


さも不思議そうな顔をして返答をしたクラウドに、スコールは顔を顰めて言った。


「もう子供じゃないんだ。あんたの迎えなんかなくても、一人で帰れる」


幼い頃、引っ込み思案で泣き虫だったスコールは、何処に行くにもクラウドがいなければ駄目だった。
一人でお使いなんて出来た事もなく、常にクラウドの傍にいて、「くらうどお兄ちゃん」と呼んで懐いていた。
クラウドもどちらかと言えば人見知りの気があったのだが、スコールの前では兄らしくなろうと振る舞い、少しずつ人見知りも克服した。
だが、スコールの引っ込み思案は長い間続き、小学校の六年間など、クラウドが毎日登下校に付き添わなければならなかった。

しかし、中学生になった頃、スコールは一念発起して自分を変えた。
一人で学校に通えるようになり、泣き虫も形を潜め、新しい友達も出来た。
苦手だった体育の授業でも好成績を残し、高校生になった今では、クラス委員に選出される程の優秀な生徒と言われている。
もう、クラウドがいなければ何も出来なかった小さな子供ではないのだ。

────だと言うのに、クラウドは未だに、暇さえあればスコールの登下校の送り迎えをしに来る。
それがスコールには、自分が子供扱いされているように思えて、酷く腹立たしかった。

睨むスコールの視線と、噛み付くような表情で告げられた言葉を聞いて、クラウドは首を傾げる。
うーん、と考えるように唸って、クラウドは鶏冠頭をがしがしと掻いた。


「別に、子供扱いしているつもりはないぞ?迎えに来るのは、単に俺がお前に逢いたいからだ」
「……っ!」


クラウドの言葉に、スコールの頬に朱色が上る。

言い返す言葉を探すように、はくはくと口を開閉させるスコール。
クラウドは其処から音が出てくるのを待たずに、スコールの手を握って、ティーダとヴァンを見る。


「そう言う訳だから、悪いな」
「了解っス」
「じゃーな、スコール」


何がどういう訳で、何が了解で、何がじゃあななんだ。
スコールの胸中の疑問は、何一つ音にされる事なく、引っ張る手に掻き消された。
また明日なー、と言う友人達の暢気な声が、無性に腹立たしい。

颯爽とした足取りの男の手は、スコールの手をしっかりと握り、どんなに力を込めても振り払えない。
くそ、とスコールが口の中で苦味を潰していた事を、目の前の男は知っているだろうか。
知っていたとしても、きっと彼は繋いだ手を離そうとはするまい。
それが判り切っている事が、またスコールには腹立たしい。

せめて、これ以上同じ轍は踏むまいと心に決めて、スコールは鶏冠頭を睨んで言った。


「あんた、もう学校に来るな。明日から絶対に来るな」
「何故だ?」


念を押して言うスコールに、クラウドは至極不思議そうに問い返した。


「昨日も言った。あんたの所為で、周りで妙な噂が立ってるんだ」
「妙な噂って?」
「……あんた、いつもでかいバイクで迎えに来るだろう。その所為で、俺が暴走族だか何だかと付き合いがあるんじゃないかって話になって、職員会議になったって」


クラウドはいつも、愛用の大型バイクに乗って迎えに来る。
バイク通学禁止の学校にあって、あの大型バイクは目立ち過ぎる。
最近はスコールに注意されて、最寄の駐車場に停めて来るようになったが、それまでは校門の真横に乗り付けていた。
あのバイクを見た学校の教員達は、優等生で知られているスコールが、良からぬ事に巻き込まれているのではないかと戦々恐々としているらしい────と言うのは、職員会議前に呼び出しを食らったティーダが偶々耳にした話だが、強ち嘘ではあるまい。

人目を気にするスコールにとって、自分を中心に立つ噂は、早急に消えて貰いたい。
それなのに、クラウドがこうして迎えに来ていては、噂は尾鰭背鰭と共に広まる一方だ。
ついでに、クラウドの方は、自分達が周りからどう見られようと気にしていないらしく、


「良いじゃないか。言いたい奴には好きに言わせて置け」
「あんたはそれで良くても、俺は困るんだ。変な噂の所為で、教師が変な目で見て来る」
「そうか。じゃあ、尚更、今のままで良いな」
「……あんた、俺の言ってる言葉の意味、判ってるのか?」


何故そんな結論に行き着くんだ、と睨むスコール。
クラウドは、そんなスコールの手をぐっと強く引っ張った。

蹈鞴を踏んだスコールと、立ち止まって振り返ったクラウドの距離が近付く。


「良いから、送り迎え位させてくれ。お前と二人きりで話せる時間は、これ位しかないんだから」


家では、良くも悪くも過保護な父と、弟の恋路を心配して止まない義理の姉。
学校にいる時は、その時間は学友たちと過ごす者で、部外者のクラウドは其処に加わる事は出来ない。
だから、学校でもない、家でもない、登下校の時間だけでも、恋人を独り占めしていたい。

虚を突かれたように頬を赤らめ、蒼灰色の瞳を瞬かせるスコールを見て、クラウドは小さく笑う。
くしゃりと濃茶色の髪を撫でて、クラウドはまた歩き出した。



繋いだ手は、もう振り払おうと暴れる事はなかった。





なんか大人風吹かせたクラウドと、青臭いスコールが浮かんだので。
クラウド、噂に便乗して周りを牽制してます。
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[ヴァンスコ]嘘じゃないぞ

  • 2013/12/08 22:16
  • カテゴリー:FF


真面目な顔をして、真面目な事しか言わないから、性質が悪い。
スコールは、ヴァンと言う人間を、そう認識している。

良くも悪くも、彼は真っ直ぐなのだと思う。
何も考えていないようで、意外と深い部分を突いて来る彼は、よく他人のペースを悪気なく乱す。
あのラグナでさえ調子を外してしまうのだから、その影響力たるや、相当のものではないだろうか。
勿論、本人はそんなつもりは毛頭なく、ただ思った事を思ったままに口に出しているだけなのだが、その“思った事をそのまま口に出す”と言う事が、どれだけ難しいか。
それをあっさりと遣って退けてしまう彼を見て、ラグナやジェクトは「大物かもな」と笑っていた。
その時は自分は、ただデリカシーがないだけだ、と非難染みた事を考えていたと思う。

まさか、その“思った事をそのまま口に出す”矛先が、自分に向くなど予想だにしていなかった。


「────なあ、スコール。スコールってば」


後ろをついて来る少年を徹底的に無視して、スコールは足を動かし続けていた。
競歩の如く早足で歩くスコールを、ヴァンは距離を縮めず拡げず、同じ速度で歩いてついて来る。

それなりに早い速度で進んでいる筈なのに、聞こえて来るヴァンの声は、いつもと何ら変わらない、平静としたもの。
なあってば、と呼び止めて来る癖に、その声にはまるで強引さがない。
ついでに付け加えると、追い駆けては来るものの、彼は本気で追い付こうとは思っていないらしく、足を動かし続けるスコールを無理やり捕まえようともしなかった。


「なー、スコール。聞いてるか?」


スコールは依然、振り返らない。
目的地としているイミテーションの巣窟がある歪に辿り着くまで、黙々と歩き続ける。

途中、目的地ではなかったが、歪を見付けたので飛び込んだ。
ついて来る仲間を撒こうと思っての行動だったが、彼は直ぐについて来て、逃げる暇もない。
おまけに歪の中はイミテーションが巣食っていたので、このまま無視して行く訳にも行かず、止む無くヴァンとの共闘となった。

一見茫洋としているように見えて、ヴァンは器用だ。
剣や槍に限らず、銃器類まで様々な武器を得意とし、近中遠距離に幅広く対応できる。
威力の強い魔法も扱えるので、近接戦闘を主とするスコールにとっては、あらゆる面でカバーしてくれる優れた仲間と言える。
戦闘中はどちらともなくスタンドプレーである事が多いが、背中を気にしなくて良い、と言うのは、非常に有用な事であった。

────だが、しかし。


「スコール」

「なあスコール」

「スコール、聞いてるか?」

「スコールってば」


平時ならいざ知らず、戦闘中まで及ぶマイペースは如何なものか。
無駄話を嫌うスコールにとって、彼ののんびりとした声は、どうにも気が散って仕方がない。

積もりに積もったストレスをぶちまけるように、スコールはイミテーションを打倒して言った。
その様子を見たヴァンが、「なんかイライラしてるみたいだな」と言うものだから、また苛立ちが募る。
スコールはその苛立ちを、最後に残った空賊にぶつけたが、それでも苛立ちは消えなかった。

最後の一撃を放ち、砕けたイミテーションの破片が砂になって消えて行くのを、スコールはじっと見下ろしていた。
特に意味はない、ただ胸の奥がぐらぐらと煮えているのが収まるまで、動く気にならなかっただけだ。
────そんなスコールの下に、事の原因である当人が、槍を両肩に担いでひょこひょことやって来た。


「どうした、スコール。どっか痛めたか?」


ケアル、いるか?と訊ねて来るヴァン。

俯いたスコールを見た彼は、傍らにしゃがんで、スコールの貌を覗こうとした。
が、それよりも早く、顔を上げたスコールが、ギッ!とヴァンを睨み付ける。


「あんた、いい加減にしろ」
「ん?」


睨み据えるスコールに対し、ヴァンはきょとんと首を傾げた。
何処までもマイペースを崩さない彼とは正反対に、スコールの苛立ちは尚も募る。


「なんであんたは俺に付き纏うんだ」
「付き纏う?」
「揶揄うのも大概にしろ」
「別に揶揄ってないぞ」
「だったらもう俺に構うな」
「うーん。それは無理だな」


スコールの最後の言葉に、考える素振りだけを見せて、ヴァンはけろりとした顔で言った。
スコールの傷の走る眉間に深い皺が寄る。

何故構う。
何故付き纏う。
何故────何度その言葉を繰り返し問うただろう。
その度、ヴァンは決まって、同じ言葉でスコールの口を塞ぐのだ。


「俺、スコールの事が好きだから」


だから、スコールが何処に行きたいなら一緒に行くし、戦うなら一緒に戦う。
声をかけるのはいつか帰って来る反応が楽しみだからで、その内容は何でも良い。
スコールが一瞬でも自分を振り返ってくれるなら、それだけで十分だ。

真っ直ぐに青灰色を見据えて言ったヴァンは、思った事を思ったままに口にしている。
其処に恥ずかしさや臆面なんてものはないから、彼は全くの素面で、思った事を口にする。
それは余りにもあけっぴろげで、真っ直ぐで、それなのに不意打ちのようにやって来るから、スコールには避けようがない。


「……スコール?」


顔を近付けて、まじまじと観察して来る、真っ直ぐな瞳。
それに背を向けて歪の出口に向かって歩き出せば、また付かず離れずの距離でついてくる気配。


「スコール。なあ、スコールってば」


背中に聞こえる声に、スコールは振り向かない。
絶対に振り向いてなどやるものか、とスコールは心に決めて、歪の出口へ早足で歩く。

歪を出て空気が変わっても、スコールは黙々と歩き続けた。
目的地に着くまでに、背中をついて来る人物をなんとか振り払わなければならない。
戦闘が始まれば、彼の存在は頼もしいが、平時まで彼とこうして延々と歩き続けるのは御免だ。


「なあ、スコール。好きって言うの、嘘じゃないぞ」


無視を決め込んだスコールの背中に、ヴァンは言った。
スコールはやはり振り返らない。
何も言わずに歩き続けるスコールの背中を、ヴァンは相変わらず、呼び続けながらついて行く。



(嘘じゃないって?)

(そんなの知ってる)

(あんたはいつも、本気で思った事しか言わないんだ)

(……それぐらい、知ってる)



だから絶対、振り返らない。






12月8日なのでヴァンスコ!

素面で真っ直ぐに臆面なく言うヴァンと、そんなヴァンが苦手だけど拒めないスコール。
ヴァンの告白は不意打ちに来ると思う。本人的にはそんなつもりはないけど。それでいつもスコールがドキドキして真っ赤になってたらいい。
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[8親子]もふもふ包囲網

  • 2013/12/01 22:19
  • カテゴリー:FF


黒一色に塗り潰されていた世界が、ぱっと明るくなって、色付いた。
遠く近くに映る木々や山々、よく晴れて澄み渡った青空を映していた景色が、くるりと回転する。
濃茶色と蒼灰色が映り込んで、確認するように指先が近付いて、指先が何度か景色を押し隠した。

指が離れて青灰色が映ったかと思うと、またくるりと景色が回転し、微かに皺の浮いた手が映る。


「これで良いよ、父さん」


少年期と青年期の中間の声が聞こえ、三度目、くるりと景色が回る。
そうして、濃茶色の髪と、蒼灰色の瞳、まだ幼さを残す柔らかな輪郭を持った少年の姿が映る。


「おっ、ホントだ。サンキュな、レオン」
「どう致しまして」
「よーし、これでしっかり録って行くからな!後で皆で見ような」


少年────レオンの胸像を映していた視界が、少しずつ下がる。
レオンの全身像が映る距離を探しているのだ。

レオンの全身像が入る距離になると、彼の傍らに小さな子供の姿が映った。
今年で4歳になった、弟のスコールだ。
身長は兄の半分もない小柄な子供なのだが、濃茶色の髪や青色の瞳など、年齢が近ければきっと兄とそっくりだっただろう。

物怖じしない様子で此方を見詰める兄と違い、スコールは恥ずかしそうに兄の足の影に隠れている。


「どした~、スコール。恥ずかしがってないで出ておいで~」
「……」


促す声に、スコールはふるふると首を横に振って、兄の足にしがみ付く。
照れ屋さんだなあ、と笑う声に、スコールは益々恥ずかしがって、兄のズボンを引っ張って顔を隠してしまった。

レオンはそんなスコールの頭を撫でて、左手を差し出す。


「さ、行こう、スコール。お馬さんに乗るんだろう?」
「うん」


兄の言葉にこくんと頷いて、スコールはレオンの手を握った。
歳の離れた兄弟で、手を握り合って歩き出す。
その後ろ姿を、のんびりと追って歩いていると、ふと思い出したように、レオンが振り返って言った。


「父さん、転ばないように気を付けろよ」
「ああ、判ってる判ってる。大丈夫だから、レオンもちゃんと前向いてなさい」
「おうまさんっ、おうまさんっ」
「スコールも転ばないように気を付けなきゃダメだぞぉ~────っとぉっ!?」


兄弟を映していた画面が大きくブレて、空を映した後、地面を垂直に映した。
あいてて、と言う声が零れた後、レオンがスコールの手を引きながら駆け寄ってくる。
足元だけが画面に映されて、「だいじょうぶ?」と言う幼い息子の声があった。


「言わない事じゃない」
「はは、悪い悪い」
「お父さん、おけが、ない?」
「うん、だいじょーぶだいじょーぶ。尻餅ついただけだから。さ、お馬さんに乗りに行こうぜ」


垂直だった地面が平衡になり、景色が持ち上がって、もう一度レオンとスコールを映す。
危なっかしいな、と呟くレオンに、もう大丈夫だよ、と言う遣り取りがあった。

後ろを気にしつつ、再びレオンは歩き出す。
スコールは兄と手を繋いだまま、ぴょん、ぴょん、とスキップしていた。
可愛いなあ、と言う声が漏れる。

お馬さんどこかなぁ、ときょろきょろと辺りを見回しながら歩くスコール。
足元の小さな段差や石に気付かないスコールを、レオンが危ないぞ、と注意しながら進む。
その足が、途中でぴたりと止まり、スコールがきらきらと目を輝かせて遠くを指差し、兄を見上げる。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん!しつじ!しつじさん!」


あそこ、と言って指差すスコールに、レオンがうん、と頷く。

兄弟を映していた画面が真横に動いて、広い丘を映す。
青々と茂る牧草が一杯に広がる其処には、あちらこちらに丸い毛玉が歩き回っていた。
ぐっと画面をズームアップしてみると、それは放し飼いにされているヒツジの群れで、皆のんびりと草を食んでいる。
冬が間近となったこの季節、ヒツジ達はすっかり綿毛を着込み、もこもこと膨らんでいる。

画面が元の位置に戻り、もう一度スコールとレオンを映す。
テレビでしか見た事がなかったヒツジの群れに、スコールの頬が興奮したように赤らんでいた。
そんなスコールとレオン前から、一頭のヒツジがゆっくりと近付いて来る。


「スコール、ヒツジさんが来たぞ」
「ふわっ、わっ」


レオンが言った時には、ヒツジは二人のすぐ近くに到着していた。
ヒツジの頭は、は今年で4歳になったスコールの頭と同じ高さにあった。
幼いスコールには、思いの外ヒツジは大きく見えて、驚いて思わずレオンの後ろに隠れてしまう。
けれども、怖いと思ってはいないようで、スコールはレオンの影から興味津々と言う様子で、目の前を横切るヒツジを観察していた。

すると、ヒツジはぴたり、とスコールとレオンの隣で足を止めた。
まるで「どうぞ」とでも言うかのように。

スコールはぱち、ぱち、とヒツジの横顔を見詰めた後、そぉっと手を伸ばした。
小さな手が、目の前のヒツジの体に触れて、もふっ、と柔らかく沈む。


「……!」


ぱっとスコールが手を引っ込める。
が、直ぐにもう一度、そおっと伸ばされた手が、ヒツジの体に触れた。

ふかっ、もふっ、と柔らかく返って来る感触に、スコールはきらきらと目を輝かせてレオンを見上げる。


「お兄ちゃん、すごい!しつじさん、ぽわぽわするの!」
「そんなに?」
「うん!ほら、ぽわぽわしてるの。あったかそう!」


興奮しきりのスコールに、レオンが良いなあ、暖かいんだろうな、と微笑む。
スコールは何度もヒツジに手を伸ばして、ふかふかの毛の感触を楽しんでいた。

しばらくヒツジと戯れる兄弟を映していたが、その画面端には、あるものが設置されていた。
それを見付けて、スコールに声をかける。


「スコール、ヒツジさんにご飯を食べさせてあげられるみたいだぞ」
「しつじさんのごはん?」
「────ああ、これか」


設置されていたのは、“ヒツジのおやつ 一袋100ギル”と書かれた手作り看板。
看板の傍には、四方30センチ程のボックス缶が置かれている。


「どうする?スコール。ヒツジさんにご飯あげるか?」
「あげる!」


やる気満々のスコールの元気の良い返事を聞いて、レオンが腰に巻いているウェストポーチから自分の財布を取り出した。
100ギルコインをコイン入れに投入して、ボックス缶の蓋を開ける。
中には、キューブ型の乾燥干し草を入れた袋が並んでおり、レオンは一つ取り出して、スコールに手渡した。

スコールが袋を開けると、その横からヒツジがひょこりと顔を出して来た。
くんくんとスコールの手の匂いを嗅ぐヒツジは、これから自分が餌を貰える事を理解しているようだ。
スコールは手の上に餌を取り出すと、はい、とヒツジの口元に持って行く。
わくわくと期待に満ちたスコールを裏切る事なく、ヒツジは餌の匂いを嗅いだ後、ぱくっと餌に食い付いた。


「ふわぁ……」
「食べてくれたか?」


まるで信じられないものを見るかのように、目を丸くして、自分の手を舐めるヒツジを見詰めるスコール。
レオンがそんな弟の頭を撫でながら訊ねると、スコールはヒツジを見詰めたまま、こくこくと首を縦に振った。

もっとあげる、と言って、スコールは袋から餌を取り出した。
ヒツジは嬉しそうにスコールの手に顔を寄せ、ぱくぱくと餌を食べる。


「俺もやってみようかな。父さんは?」
「そうだな~。俺もちょっとやって見ようかな」
「じゃあ、俺のと半分にしよう」


そう言って、レオンは財布からコインを取り出して、餌箱の下へ。
兄が離れたので、画面にはスコールとヒツジだけが映っていた。

ヒツジは餌をくれるスコールの事をすっかり気に入ったらしく、もっとちょうだい、とスコールの手に顔を寄せる。
スコールはねだられるまま、餌袋から少しずつキューブを取り出して、ヒツジに食べさせていた。
そんなスコールの下へ、もう一頭、ヒツジが現れる。


「スコール、そっちのヒツジさんもご飯が欲しいってさ」
「うん。はい、あげる。よくかまなくちゃダメだよ」


新しいヒツジに餌を与えると、ヒツジはあっと言う間にそれを食べ尽くした。
ヒツジの舌がぺろぺろとスコールの手を舐める。


「お腹空いてるの?はい、おかわり」
「また新しい子が来たぞ~。スコール、モテモテだな」
「もてもてってなーに?」


画面を見上げて問い返すスコールに、好き好き~って言われる事だよ、と返すが、スコールはことんと首を傾げている。

ととっ、と駆け寄ってくる気配に、画面が動く。
餌袋を手にしたレオンと、ぞの後ろに順番待ちのように並ぶヒツジ達が映った。


「父さん、餌、買ってきた」
「おお、ありがとな────レオン、後ろにヒツジが並んでるぞ」
「そうなんだ。きっと餌を貰えるって理解してるんだろうな」


餌袋を持っている人間に近付けば、食べ物が貰える。
ヒツジ達はそれを学習し、覚えていて、早く食べ物を貰おうと思ってついて来るのだろう。

画面を移動させると、二頭のヒツジに交互にエサをやっているスコールが映る。
楽しそうに餌やりを続けるスコールの背中を、とんっ、と誰かが軽く押した。
誰かにぶつかったのかな、と思ってスコールが振り返ると、其処にはヒツジがいた。
─────其処でスコールは、はっと周りを見渡し、


「……ふえっ?えっ?えっ?」


其処は、もふもふの綿毛で溢れ返っていた。
右を見てももふもふ、左を見てももふもふ、前も後ろももふもふ。

あれ?あれ?ときょろきょろと辺りを見回してみると、スコールはもふもふによって完全包囲されていた。


「ありゃ。スコール、すっかり懐かれたみたいだな~」
「懐くと言うより、囲まれているように見えるけど…」


ヒツジに囲まれたスコールを見詰めながら、レオンが大丈夫かな、と少し心配そうに呟く。

こつん、とスコールの頭が押されて、振り返ると、ヒツジの鼻先が。
驚いて後ずさりしたスコールに、同じ高さにあるヒツジの頭が迫ってくる。
それも一つではなく、もふもふの数だけ、次から次へと近付いて来るのだ。
ご飯を頂戴、もっと頂戴────真っ直ぐにスコールを見詰め、催促しながら、ぞろぞろと。
最早、スコールの見える世界は、ヒツジの群れのみになっていた。


「えっ、えっ……ふぇっ……」


じりじりと後ずさりするスコールの蒼い瞳に、大粒の雫が浮かんで、直ぐ。


「ふえっえっ、ふえぇえええぇえん…!おにいちゃぁぁぁああああああん!」


スコールは大きな声を上げて泣き出した。
しかし、ヒツジ達は全くお構いなしで、ご飯を頂戴、とスコールの頭をこつんと小突く。


「やああああ!おにいちゃあああああん…!」
「スコール!」


スコールを囲む綿毛の群れを掻き分けて、レオンがスコールに駆け寄った。
助けを求めて小さな手を伸ばしてきたスコールを、レオンは抱え上げてやる。

ヒツジの顔しか見えない世界から、ようやく兄に助け出されて、スコールは泣きながらレオンの首にしがみついた。
わんわんと大きな声で泣きじゃくるスコールの手から、餌袋が逆さまになって地面に落ちる。
ヒツジ達は、頭上で聞こえる子供の泣き声を気にする事なく、ばらばらと散らばったキューブ型の餌をマイペースに食べていた。


「えっ、ふぇっ、わぁああああん…!」
「よしよし、ちょっと怖かったな。大丈夫、大丈夫」


ぐすぐすと泣きじゃくるスコールの背中をぽんぽんと叩いてあやす。

レオンは自分の手に持っていた餌袋の中身を取り出すと、ぱらぱらと足下に蒔いて、直ぐにその場を離れる。
ヒツジ達がこぞって餌にありついている間に、レオンは急ぎ足で群れの中心から脱出した。


「父さん、そろそろ行こう。スコールがすっかり怯えてる」
「だな。スコールにはあれ位のヒツジでも大きく見えるだろうから、余計怖かったかもな~」
「ひっく、ひっく…えっ、ふえっ…えうぅ……」
「もう大丈夫だからな、スコール。ほら、お馬さんに逢いに行こう」
「えっ、ん……おうまさん……」
「その前に顔拭こうか。ほーら、スコール、こっち向いてご覧」


スコールが顔を上げて、ティッシュを持った手が画面に映る。
目許と頬、口元を綺麗に拭き終わった頃には、スコールも少しずつ落ち着きを取り戻していた。

すん、すん、と鼻を啜るスコールを腕に抱いたまま、レオンが歩き出す。


「そう言えば父さん、ヒツジの餌は?」
「あー……落っことしちまって。ぜーんぶ一気に食われちまった」


あはは、と笑う声に、レオンは眉尻を下げて「父さんらしいよ」と言って苦笑する。

ヒツジの放牧地帯を過ぎて間もなく、馬舎が見えてきた。
乗馬体験用に表に出ている馬を見て、お馬さんだぞ、とレオンが教えると、スコールが顔を上げる。



─────間近で見た馬の大きさに驚いて、怖がったスコールが泣き出してしまうのは、また別の話。





家族旅行で牧場に行ってきまして、其処で見た光景をそのまま書いてみた。
4匹のヒツジにずいずいと来られた子供が泣き出した光景を、子スコに変換。
大人には腰くらいの高さのヒツジでも、小さい子には大きく見えるだろうなぁ。

この出来事は全てラグナのデジカメに記録され、映像アルバムとして残ります。
たまに父兄が見返してて、高校生になったスコールに見つかって「消せ!」って言うに違いない。
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