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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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通販の申し込みを受理しました

  • 2013/11/28 22:29
  • カテゴリー:お知らせ

2013年11月25日~28日間にご注文を頂きましたご注文を受理しました。
受理完了のメールを送信しましたが、届いていらっしゃらない方がおられましたら、拍手かkryuto*hotmail.co.jp(*を@に変換して下さい)にてご連絡をお願いします。

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[プリスコ]アイム・ベリー・ハングリー!

  • 2013/11/08 23:08
  • カテゴリー:FF


元来、スコールは自分が決して気が長くない事を自覚していた。
数時間の待機命令であれ、数日間の根競べ勝負であれ、任務と言われればこなして見せるが、平時は違う。
表立って苛立ちを露骨に見せる事こそしないものの、スコールは短気な性質である。
ついでに、一人静かに過ごしたい時、他人のその時間を壊されるのも、非常に嫌いな性質であった。

仲間達の多くは、そんなスコールの性格を知ってか知らずか、スコールとは適度な距離を開けている。
だが、それを無視して、容易く垣根を乗り越えて、私有地に侵入してくる輩は、いつでも何処にでもいるものだ。
例えばジタンやバッツのように、何の目的があるのか、殊更にスコールに構い付けたがったり、鬱陶しいと追い払っても逃げたと思ったら戻って来て飛びついて来たり。
この二人に関しては、既に言っても無駄だと言う事を理解したので、好きにさせる事にした────要するに、根負けしたと言う事だ。

ジタンやバッツを除けば、他のメンバーはつかず離れずの距離で、スコールにとっては快適だ……と、思っていたのだが、もう一人、例外がいる。
これもやはり、ジタンやバッツのように、他人の心情などお構いなしで、自分のペースを崩さない人物───プリッシュであった。

何の因果か、彼女と秩序の屋敷で二人きりで待機となってしまったスコールは、プリッシュから常に「腹減った」「何か食えるものないか?」と常に問われ続けていた。
ちなみにプリッシュは、朝食・昼食共に、ティファが用意して行ってくれたものを、綺麗に平らげている。
他の仲間達がいつ帰るか判らないからと、鍋一杯に沢山作られていた筈の料理が、小柄なプリッシュの胃袋にどうやって全て治まるのか、スコールには皆目見当がつかない。
それでいてプリッシュは、もっと食べるものはないか、とスコールにしつこく強請るのだ。


「なあ。なあってば。腹減ったよ」
「………」
「何か食えるモンないか?」


食べられるものなら、あんたが全て食べたじゃないか。
スコールは書庫から持って来た文庫本に視線を落としたまま、苛々と眉間の皺を深くして思う。

どうして今日の待機組を、この組み合わせにしたのだろう……と言う疑問は、愚問だ。
スコールは先日のアルティミシアとの戦闘で負傷、プリッシュははしゃぎ回った末に頃んで足を捻った。
無手の格闘術で戦うプリッシュにとって、軸となる足は大切なものであり、きちんと直すまでは冒険禁止(つまり待機)、となった。
スコールの傷は既に治療魔法で治してあるが、念の為に、一日大事を取る事にしたのだ。

…それにしても、せめてもう一人誰か残して行ってくれても良いではないか。
何故よりにもよって、このペアだけで待機させる事を良しとしたのだろう。

黙したまま本を見詰めるスコールの手は、随分と前から、ページを捲る事を止めていた。
プリッシュはそれも気にしない(気付いていないのかも知れない)まま、なあなあ、とスコールの肩を揺さぶる。


(大体こいつは、なんで当たり前のように俺の隣に座っているんだ?)


昼食の時、プリッシュは食卓用のテーブルに座っていた。
スコールは午前中からずっと、今も座っているソファに落ち付いている。
そのままの距離感がスコールにとってはベストだったのだが、プリッシュは昼食を終えた後、犬か猫が懐くように、ちょこんとスコールの隣に座ってしまった。

嫌なら自分の部屋にでも引っ込めば良いだろう、と言われるかも知れないが、そうも行かない理由がある。
以前、プリッシュが一人で秩序の屋敷に待機する事になった時、彼女は空腹を満たそうとして、冷蔵庫の中のもので料理をしようとした。
その結果は燦々たるもので、しばらくは屋敷のキッチンが使用不可能になった程だ。
無邪気な彼女に、また同じ事を繰り返されては堪らないので、プリッシュはキッチンの出入り禁止の上、お目付け役が必要と言う結論に至った。
スコールがプリッシュを放置する事が出来ないのは、そのお目付け役と言う任務の所為だ。

プリッシュの監視をするだけでも気が進まなかったスコールだが、彼女が自分と一定の距離を保っていてくれれば、構わなかった。
彼女がキッチンにさえ入らなければ、スコールは最低限、彼女の様子を確認しているだけで済む。
コミュニケーションの必要はない────と、思っていたのだが、まさかこんな事になるとは思っていなかった。


「なあなあ。スコール、腹減らないか?」
(減ってない)
「何か食いたくないか?」
(食べたくない)


胸中でのみ、スコールは答えを返す。
口にしないのは、喋れば相手をしなければならない羽目になるからだ。

そんなスコールをじっと見詰め、プリッシュが頬を膨らませる。


「スコールー。スコールってばー。腹減ったよ、何か食わせろよ」


耳元で声を大にするプリッシュに、もう監視任務も放棄して良いだろうか、とスコールは本気で考え始めていた、その時。
かぷ、と耳朶を噛まれて、スコールは思わず飛び退いた。


「………!?」
「あ。ワリ」


驚愕の余りに声も出ないスコールに、プリッシュが頭を掻きながら詫びた。


「スコールの耳、柔らかそうだなーと思って。パイだっけ?餃子だっけ?耳たぶと同じ位の柔らかさって言う奴。そしたら、段々旨そうに見えて来て」
(意味が判らない!大体俺は食べ物じゃない!)
「悪い悪い。凄く腹減ってたからさあ」
(だからって人間を食おうとするか!?)


きゃらきゃらと笑う彼女には、決して悪意はないのだろう。
それだけに、スコールの驚愕と恐怖は一入である。

このままだと、本当に食われるかも知れない─────そう思ったスコールは、意を決してソファを離れた。
「スコール?」と呼ぶ声を無視して、キッチンに入ると、卵、牛乳、小麦粉等々、記憶を頼りに必要なものを取り出して、分量を量って全てボウルに放り込む。
本当は色々と手順がある筈だが、其処まで明確には覚えていなかったし、何より、気が急いていた。
出入り禁止を律儀に守ってか、キッチンの入り口に佇む少女の視線が、今のスコールには無性に恐ろしい。

ボウルの中身が粉っぽさをなくした所で、出来た生地を五つのココット皿に小分けにして、オーブンに入れる。
10分、20分と時間が経つ内に、オーブンから漂い始めた香ばしい匂いに気付いて、じっとスコールを眺めていたプリッシュの瞳が爛々と輝き出す。

オーブンがチーン、と焼き上がりの音を鳴らしたので、蓋を開ける。
熱くなった鉄板の上で、こんがりと狐色の焼き色をつけたマフィンが現れた。
竹串を差して中まで火が通っている事を確かめ、粗熱が取れるまでの少々の時間を割いた後、トレイに乗せたマフィンをキッチンから運び出した。
目の前を横切るスコールを───マフィンを───、プリッシュがきらきらとした瞳で見詰める。

食卓用のテーブルにマフィンを置いて、スコールは直ぐにその場を離れた。
ソファへと戻るスコールを、プリッシュの声が追う。


「これ、オレが食べて良いのか?ホントに良いのか?」


スコールは答えなかった。
勝手にして良いから、もう付き纏わないでくれ、と思いつつ、ソファに放っていた本を開く。

出来たてのマフィンは、外はカリッと香ばしく、中はふわふわ。
一つ一つの大きさは決して小さくない為、一つでも食べればそれなりに腹が膨れそうだが(少なくともスコールは一つで十分だ)、プリッシュにはそんな事は関係ないらしい。
両手に一つずつマフィンを持って、プリッシュは嬉しそうに齧りついている。

取り敢えず、これでしばらくは静かになるだろう。
ようやく胸を撫で下ろして、しばらくぶりに本の世界に没頭しようとして、


「美味いな、これ!ありがとな、スコール!」


飛んできた無邪気な声に、妙に胸の奥がくすぐったくなった気がした。



後日、プリッシュから話を聞いたジタンとバッツが、オレ達にも食べさせろ、とねだって来る事については、また別の話。




11月8日なので、プリッシュ×スコール。
何処に需要があると言うのか。しかし楽しかった。

スコールの心の声は、きっと全部バレてる。
これを切っ掛けに、今後ずっとプリッシュがスコールに懐き回るんだと思う。
なんでマフィンかと言うと、今日私が作ったからです。お手軽。
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通販申込みの発送・受理を致しました

  • 2013/11/05 18:23
  • カテゴリー:お知らせ

2013年10月24日~31日間にご注文を頂きました、通販の発送を、11月1日付で完了しました。
発送当日に、受理完了のメールを送信しましたが、二週間が経ってもお手元に届かない場合は、郵便事故の可能性がありますので、kryuto*hotmail.co.jp(*を@に変換して下さい)にてご連絡をお願いします。

また、2013年11月1日~5日現在までに頂きましたご注文を受理しました。
受理完了のメールを送信しましたが、届いていらっしゃらない方がおられましたら、拍手かkryuto*hotmail.co.jp(*を@に変換して下さい)にてご連絡をお願いします。
一部、名称ミスを未確認のまま送信してしまいました。まことに失礼致しました。


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[レオスコ]誰も知らないスピンオフ

  • 2013/10/31 21:54
  • カテゴリー:FF
俳優レオンと、高校生スコールの兄弟で、ハロウィンレオスコ。






舞台演劇で用意された衣装は、配役主が持ち返り────買取する事が可能な場合がある。
有名デザイナーが舞台の為に特別に誂たものや、コーディネートされたものも多く、劇の内容によっては日常生活で着られる衣装もある。
いやらしい話もするなら、誰々が使用した衣装、と言う謳い文句と共に、ファンやマニアに向けて人知れずオークションに提出される事もあった。

レオンも時折、舞台やドラマで使用した衣装を買い取って帰って来る。
それは大抵、日常生活で普通に着る事が出来るものなのだが、偶に奇抜なものを持って帰って来る事があった。

今日、学校を終え、家に帰ったスコールが見付けたのが、正にそれ。


「……なんだ、これ」


リビングのソファに綺麗に畳まれていたものを見付けて、スコールは眉根を寄せた。

手触りの良い黒い服が綺麗に畳まれており、それだけなら特に可笑しい所はないのだが、襟の作りや、裏地が目が覚める程に真っ赤である事が、スコールの目を引いた。
立て襟なんて今時流行らない形の服だが、衿には板紙でも縫い込んであるのか、立たせる事が前提となっているようだ。
合わせられた襟元には、金色の金属プレートが嵌められているのだが、どうにもプレートの光り方が安物っぽい。
その原因は、光の反射を抑えるようにコーティングされているからなのだが、素人のスコールにはそんな事は判らなかった。

今朝までは家になかった奇抜な服が、何故此処に在るのか。
スコールが思案するように立ち尽くしていると、リビングと寝室を繋ぐ扉が開く。


「お帰り、スコール」
「……ただいま。これ、レオンのか?」


帰宅の挨拶をそれぞれ交わした後、スコールはソファに置かれた布を指差して訊ねた。
レオンは示された物をちらりと見遣ると、ああ、と頷く。


「今日までやっていた舞台の衣装だ」
「…どんな衣装なんだ?」


レオンの今回の舞台公演を、スコールは一度も見に行く事が出来なかった。
平日の公演は学校があるから当然行けないし、加えて期末試験が近かったので、外に遊びに行く時間も取れなかった。
今回はいつものようにスコールがレオンの大本読みに付き合う時間も作れなかった為、スコールはレオンの舞台内容すらも知らない。

百聞は一見にしかずとでも言うのか、レオンは徐に黒布を手に取ると、広げて見せた。
表は黒一色、裏は赤一色で、縦衿と言う特徴的な形のそれは、どうやら羽織りマントとして着用するものらしい。
その色合いと形、マントと言う点から見て、スコールはひょっとして、とマントを見詰め、


「……ドラキュラ?」
「ああ。今回の舞台は、吸血鬼を主役にしたものだったんだ」
「…で、その衣装を、なんでわざわざ買取なんかして来たんだ?」


レオンの説明には納得したが、マントなんてものは、買い取っても早々着る機会には恵まれまい。
せめて、マントの下に着ていたのだろう、ブラックスーツなら────と思ったスコールだったが、広げたそれが燕尾服であり、ブラウスにもフリルがふんだんにあしらわれているのを見て、これもないな、と思う。
西欧諸国ならばともかく、少なくともこの国では、日常で着用される服ではないだろう。

洋服ダンスには空きがあるので、収納云々の問題は気にしていないが、タンスの肥やしになるのは先ず間違いない。
レオンもそれが判らない訳ではないだろうに、と胡乱な目を向けるスコールだったが、レオンはそれを気にする事なく、衣装を一つ一つ広げている。


「特に理由はないんだがな。強いて言うなら────ほら、今日はハロウィンだろう?」
「……ああ」


ソファに座ったスコールの前で、徐に着替えを始めながら言ったレオンに、そう言えばそんな日もあったか、とスコールは気もそぞろに頷いた。

ハロウィンと言えば、真っ先に浮かぶモチーフは南瓜だ。
しかし、ハロウィン用の飾り付けには、南瓜の周りを飛び交う幽霊や、蝙蝠の姿も見られる。


「ハロウィン…だから、吸血鬼の衣装を持って帰ったのか?」
「そんな所だな」


弟の言葉に頷いて、レオンはシャツを脱いでブラウスに袖を通した。
その上に黒のマントを羽織れば、フィクションによくよく見られる、如何にも“吸血鬼”と言った様相が出来上がる。


「どうだ?」
「…うん」
「うん?」
「……吸血鬼、っぽい」
「そうか」


ハロウィンなんてものではしゃぐような性格でもないだろうに。
レオンが脱いだシャツを拾い、畳みながら、スコールは呆れたように小さく吐息を漏らす。
公演が無事に終わって、傍目には判り難いが、以外とテンションが上がっているのかも知れない。
なんだか妙に楽しそうに見える兄に、今日ばかりは水を差す事もあるまいと、スコールはこれ以上気にする事は止めた────が。

衣擦れの音がして、スコールの顎を形の良い指が捉えた。
くん、と顎が上向いて、蒼と濃茶色がスコールの視界を埋める。


「スコール、─────Trick or Treat?」
「………え?」


囁くように聞こえた声に、スコールはぱちり、と瞬きを一つ。
常の感情を殺した大人びた表情は何処へやら、きょとんとした顔で見上げて来る弟に、レオンの唇が緩く弧を描く。

柔らかなものが、スコールの頬に触れた。
一瞬だけのそれが離れると、今度は温かな手が同じ場所を撫でて、横髪を透いて耳元を指先が辿る。
レオンの唇が、スコールの耳に近付いた。


「悪戯か、お菓子か。どっちだ?スコール」
「……っ!」


吐息がかかる程の距離で、よく通る低い声が囁く。
途端、ぞくん、としたもの背中を奔るのを感じて、スコールは咄嗟に目の前の男を押し退けようとした。

が、押した身体はびくともせず、逆にスコールを腕の中へと閉じ込める。


「レオっ……!」
「どっちだ?」


繰り返し囁きながら、レオンの唇がスコールの耳に触れる。
かふ、と柔らかく耳朶を噛まれて、スコールは息を飲んだ。

身を固くしたままのスコールの耳を、ゆっくりと、生暖かいものがなぞる。
レオンの舌だ。
ぴちゃ、と小さな音が耳元で鳴って、スコールの躯がふるりと震えた。


「れ、おん……やっ……!」
「お菓子は────持ってない、か」


レオンの手がスコールの首筋を撫で、背筋を下りて、腰を抱く。
更に手は下りて行き、スラックスの尻ポケットを探るように臀部を彷徨った。

カッターシャツの裾が持ち上げられて、レオンの手が滑り込み、スコールの柔肌をくすぐる。
唇を噛んで肩を震わせるスコールを眺めながら、レオンは耳朶を食んでいた歯を離し、スコールの輪郭を辿って、首筋へ。
薄く開いたスコールの視界に、濃茶色の髪と、赤い裏地の襟が見えて、────一瞬だけ、レオンの耳が尖ったような錯覚を抱く。

スコールの首に、柔らかく、優しく、歯が立てられる。


「あっ…あぁっ……」


ちゅ、ちゅぅ、と吸い付かれて、スコールの肩がビクビクと跳ねる。
微かに皮膚に食い込むように喉を噛まれて、スコールは喉を反らして唇を震わせた。

つ……と濡れた舌先がスコールの喉仏を這って、離れる。
震えていたスコールの躯から力が抜けて、レオンの腕に抱き寄せられた。
スコールがぼんやりと瞼を持ち上げると、間近で真っ直ぐに見下ろしてくる、青灰色の瞳がある。


「レ、オ、ン……」


至近距離で見詰める蒼灰色の瞳の中で、蕩けた表情をしている自分がいる。
歯を立てられた喉が、耳が、異常な程の熱を持って、じくじくとした感覚を生み出している。
心なしか尖ったように見える瞳孔に見つめられていると、まるで誘惑か幻惑の魔法でも施されたかのように、思考が麻痺して行く。

レオンの手がスコールの後頭部を撫でて、指先で柔らかな髪の毛先を弄ぶ。
くすくす、くすくす、と笑う男の気配に、スコールも何処か楽しい気分になって来て、逆らう意志も融解して行く。

吸血鬼に噛まれた者は、どうなるのだったか。
不老不死になるとか、同じように吸血鬼になるとか、隷属するとか、フィクションでは色々と設定があった気がするが、目の前の吸血鬼の場合はどうだろう。
男の指が肌を滑る度、彼の唇が掠めるように触れる度、ぞくぞくとしたものが背中を奔るのは、これも彼に噛まれた所為なのか。
だとしたら、酷く性質の悪い吸血鬼だ────と思いながらも、ふわふわとした心地の良さは拒めない。

スコール、と呼ぶ声がして、蒼の瞳が交じり合う。


「お菓子がないなら、悪戯するぞ?」


良いな、と問い掛けと言うよりは、決定事項のように告げられて、スコールの唇が震える。
レオンのマントを掴んでいた手が、知らず知らずの内に震えていた。

唇が重ねられて、呼吸が出来なくなる。
咥内をゆっくりとまさぐられる感覚に、スコールの肩が小さく跳ねて、マントを握り締めていた手から力が抜けた。
傾いた躯をソファが受け止めて、カッターシャツの前が開かれる。




もう一度、首に歯が当てられる。

同じ場所からじん…としたものが沸き上がるのを感じて、スコールは目を閉じた。





正統派で演技派な売れっ子俳優レオンのハロウィンでした。
スコールはレオンの演技と雰囲気とオーラにすっかり飲み込まれてしまえば良い。
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[589]Trick and treat!

  • 2013/10/31 21:37
  • カテゴリー:FF


「Trick!」
「「And!」」
「Treatーーーー!」


帰還するなり、二つの声が重なって突進してきた。

悪意や敵意を一切感じさせないそれが誰の物なのか、最早考えなくても判る。
この声の持主達に対して、特に警戒する必要がない事も判っているが、それ以上に、彼等が何を考えて、何を意図しているのかは、未だに理解できずにいる。
その所為か、認識から理解、理解から把握、把握から行動と言う理屈に則った行動を取ろうとする体は、認識から理解・把握の段階で手順を頓挫させてしまい、行動するに至らないのが常だ。
早い話が、飛び掛かる影に対する反応が遅れ、硬直している間に、襲撃完了に至ると言う事だ。

どたんばたんと賑やかな音が玄関に響き、なんだどうした、とフリオニールとティーダがリビングから顔を出す。
が、玄関口に倒れている面々を見付けると、ああいつもの事か、とまたリビングに戻って行く。
頼むからこいつらを回収してから引っ込んでくれ、とスコールは思うのだが、そんな彼の胸中に気付いてくれる人物は、今の所、いない。


「おーい、スコールー」
「Trick and treat!」
「……取り敢えず、其処を退け」


腹の上に乗っている二人────ジタンとバッツを睨んでやれば、二人はいそいそと退いた。
起き上がったスコールは、じんじんと痛む背中に顔を顰める。
無傷で帰還した筈なのに、自陣の拠点で負傷すると言うのは、一体どういう事なのだろう。
いつもの事と言われればそれまでだが。

スコールは溜息を吐いて、目の前に座る二人を胡乱な目で見る。


「なんだ、Trick and treatって」
「ん?スコールの世界には、ハロウィンはないのか?」
「…それは、ある」


質問に質問で返された事に眉根を寄せつつ、スコールは端的に答える。

ハロウィンと言うものは、スコールの世界では余り一般的ではなかったが、賑やかし事好きのバラムガーデンでは、何かと理由をつけては行事を行っているので、これも食い付いていた気がする。
スコールは余りその光景を明確に覚えていないが、菓子を配り歩く者がいたり、菓子を貰えないと悪戯を仕掛けられたり、と言う生徒の姿が其処此処にあった。
菓子を渡せなければ悪戯をされる────恐らく、そう言う祭りなのだろう。
その時、よく飛び交っていた言葉も、スコールは覚えていた。

その覚えていた言葉が、スコールの記憶にあるものと、二人が口走っているものとで、微妙に違う。


「…“Trick or treat”じゃないのか?」
「ああ、そうとも言うな」
「ティーダがそれでクラウド達にねだってたな」


けろりとした表情で二人に返されて、スコールは眉根を寄せる。


(こいつらの世界では、そう言うのか?)


それぞれ違う世界から召喚された仲間達から聞く各世界の話は、全く違うかと思えば、そうではない。
重なる所、似て非なる所と様々で、似ているし同じ物を指すけれど、微妙にそれを指す言葉が違うと言う事も少なくなかった。
今回も、それに当て嵌まるのだろうか。

やれやれ、と溜息吐きながら、スコールはジャケットの内ポケットに手を入れた。
ごそごそとポケットを探るスコールを見て、おお?おおお?とバッツとジタンの目が意外そうに、且つ期待を込めてきらきらと輝く。


「……これしかない」


そう言ってスコールが取り出したのは、二つの小さな飴玉。
非常食と息抜きにと携帯していたものだった。

まさかスコールが菓子類を持ち歩いているとは思っていなかったのだろう、バッツとジタンは丸くした目で、スコールの手の中の飴をまじまじと見詰める。


「飴だ」
「スコールが飴持ってた」
「…悪いか」


如何にも驚いたと言う表情をする二人に、スコールは眉間の皺を深くする。

いつまでも眺めているだけで、飴を受け取ろうとしない二人に焦れて、スコールは飴を持った手を引っ込めようとした。
が、一足早くそれに気付いた二人が、がしっ!とスコールの手を掴み、それぞれの飴を浚う。


「スコールから飴ゲット!」
「ゲット!」


二人揃って飴を高らかに頭上に掲げ、まるでレアアイテムでも手に入れたかのように、弾んだ声で宣言する。
飴一つでよくもはしゃげるものだ、と思いつつ、スコールは溜息を吐いて、腰を上げた。

今日は一人でイミテーション退治をしていたので、怪我こそないものの、疲れているのは事実。
単独行動していた事をウォーリア・オブ・ライトに気付かれる前に、部屋に帰って寝てしまおうと思っていた。
ジタンとバッツの襲撃は、ある意味、単独行動からの帰還後にはお決まりのものなので、文句を言いたい気持ちはあるものの、キリのない事なので全て諦める。
それより早く休みたい、と思いながら廊下を進もうとすると、


「おりゃっ!」
「うりゃっ!」
「っ…!」


二人分の人間の重みが、順番に重なって来る。
油断していた事、疲労していた事で、がくっとスコールの膝が折れて、床に突っ伏す羽目になった。

背中の重石をじろりと睨みつけてやる。


「なんなんだ、あんた達。菓子ならもうやっただろう」
「うん、貰った」
「だったら、さっさと退け」


邪魔だ、と言わんばかりの表情を浮かべるスコール。
しかし、そんなスコールを見ても、ジタンとバッツはにやにやと楽しそうな笑みを止めない。

─────嫌な予感がした。
逃げなければ、と背中の二人を振り落としてでも立ち上がろうとして、それよりも僅かに早く、がしっ!!と二人が全身で以てスコールの背中にしがみ付く。


「俺達、言っただろ?スコール」
「Trick and treat、ってな」


“Trick and treat”────“悪戯とお菓子を”。
接続詞が一つ変わるだけで、言葉は全く意味を変える。




その日の夕食、猫耳を生やした獅子の姿が、見られたとか見られなかったとか。






ジタンとバッツに言わせたかっただけ。ハメられたスコールが書きたかっただけw
皆から可愛い可愛いって言われまくったそうです。屈辱。でも可愛いと思う。
ティナに嬉しそうに「かわいい」って言われて、怒るに怒れなくて固まったりしてるに違いない。
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