色情霊2−1


 真っ暗な、道なき道を歩く。ここは特殊な造りをしていて、いつもの迷路ではなく、あたり一面夜闇の墓地なのだ。月すらも出ておらず、真っ暗である。

 左右に崩れかけたお墓が並んでおり、何とか道のようなものはできている。それを伝ってゆっくり進んでいるありさまだ。何しろ明りになるようなものがほとんどなく、勘で動いているみたいなものだから。

 といっても、だいぶ目が慣れてきていて、墓石や背景の木々の輪郭くらいはつかめるようになっている。それを頼りにしていけば、なんとか躓かずに進むことはできた。

 それに、このステージに登場する敵は、死してなお欲求不満から成仏できず、幽霊となってさまよっている女の色情霊なのだ。彼女たちは青白く光っているから、その明りを頼りに道を見ることもできるし、光の余韻だけでも自分の感覚が研ぎ澄まされ、暗闇ステージを進むこともできるのである。

 性霊たちの相当に強い。精神だけの存在であり、その精神も色欲100%だ。求め方も半端ではなく、生前の恥じらいや嫌悪はない。ただ己の性欲を満たすためだけに男を求めてさまよっている。

 彼女たちの厄介なところは、僕の脳に侵食して魅了してきたり、金縛り攻撃を仕掛けてきたりすることだ。さらに物体をすり抜ける特性を利用して、一方的な攻撃に入ることさえもある。なにより、そのセックステクニックや肉体の感触は、生者のそれをはるかに越えた甘美さを備えている。並の男では挿入した瞬間果ててしまうだろう。

 それでも、何度か彼女たちに遭遇しているうちに、金縛りくらいはほどけるようになっていた。体の一部、小指の先でもわずかに動かすことができれば、それで全身の金縛りを解くことができる。もちろん、そういう悪あがきをしている間は拘束状態にあるので、1ターンから数ターンにかけて敵の一方的な攻撃を受けることになる。よほど精力に注意しなければあぶない。

 まだまだ性霊たちに慣れたわけではない。気を抜くと射精させられてしまう、ぎりぎりの戦闘が続いているんだ。もっとレベルを上げて、先へ進まないと。少なくともこの塔のステージはイジワルではなく、多くの場合レベルを上げて実力がつきさえすれば戦闘には勝てるし、先に進むことができる。相当レベルが上がっているのに大ダメージを受け続けていつでもピンチになる、ということはないんだ。だから安心できるし、自分に自信がもてる。希望がもてるかぎり、先に進もうという気になる…ヘコんでイライラして投げ出すということはなさそうだ。

 そういえば、僕はこれまで、十分レベルを上げてから先に進んだ気がする。昔やったド●クエとかでも、その街で売っている一番高い(強い)武器防具を完全に揃え、周囲の敵を余裕で倒せるようになるまでレベル上げをしてから(お金をためるために戦闘しまくるので自動的にレベルが上がる)、次の目標であるプチボスを倒しに行ったっけ。もちろんステージは“右手法”で、壁伝いに進めば大体目的地にたどり着けた。

 いま、そういう経験がここで発揮されている。一度出したら終わりという状況の中で、この堅実な歩みは相当に役に立っているみたいだ。友達の中にはできるだけ低いレベルでクリアすることを目標にしている奴もいたけど、僕は最高レベルに近いところまでコツコツあげてから余裕を持ってクリアするタイプ。この世界では無謀は禁物だ。無謀にならなければ進めないなんて論外。これからもじっくり戦って経験を積み、先へ進むことにしよう。

 「開けごまー…」ビクウッッ!!!

 いきなり近くで女の子の声がしたので、飛び上がらんばかりにびっくりしてしまった。考え事をしながら進んでいたのでなおさらだった。

 「開けごまごまー。」「…。」前方から声が聞こえる。性霊のお出ましか!?

 「開けごましお〜……」僕は身構えた。それにしても奇妙だ。性霊なら青白い光とともにぼんやりとあらわれ、僕に襲い掛かってくるはずなのだが…。

 一向に襲ってくる気配がないので、僕は恐る恐る声の主に近づいて行った。「…この携帯は壊れています…。」「いや…それは壊れてるんじゃなくて…」背の低いストレートヘアの和服美少女が、折りたたみ式携帯電話に何やら呪文を唱えていた。「てか、この世界でケータイなんて通じるのか?」

 「はにゅ…どうしましょう。私、知らないお兄さんに声をかけられてしまっていますわ。」女の子はオロオロしている。

 「あ、男の人ってことは、あなたがゲストさまなのですね。はじめまして、私、退魔師で妖怪さんのい●みと言います。趣味は読書です。もしよかったらお友達になってくれると嬉しいです。」「…途中からキャラ変わってないか?」

 いや、そもそもこの娘は何者なんだ。

 「実は、このステージに幽霊さんがいっぱいいると聞いて、退治しようと来たんですけど、なぜか墓地に入った瞬間”座敷わらし”という妖怪になってしまいまして、どうしたものかと考えましたけど、結局わからなくて、あちこち歩いているうちに…」「迷子になったのか。」「はい。」

 「それで、携帯を持っていることを思い出して助けを呼ぼうとしたのですけど、壊れていまして、でもたぶん壊れてなくても圏外で、どうしましょう?」「…。」そこに僕が通りかかったわけね。

 でも…。「妖怪、だと?」「はい。なぜかここでは生身の女性でいてはいけないみたいで、妖怪とかに自動的に変わってしまうみたいです。」「あー、たしかにここはモンスタータイプのステージだからなあ。」

 ってことは、このステージはもしかして、幽霊だけじゃなく別の敵キャラもいるってことになるのか!?

 「たぶん私のほかにも妖怪化したひとたちがいると思うんですけど、全然会えないんです。」「なるほど。メインは性霊だが、たまに別のキャラも混じっているんだな。理由は分からないが、色情霊オンリーではないってことはわかった。」もちろんそれは僕に不利に作用しそうだ。「多分そうなります。きっとほかにも妖怪さんがいるはずだから、合流して、出口を探すことにします。」まっすぐな瞳で、彼女は僕を見つめていた。それは僕を乗り越えて仲間を見つけるということだろう。

 とにかく、光を発しない、肉質あふれる生身の妖怪が混じっているとなれば厄介だ。今は和服少女一人だけだが、先に進めば幽霊と妖怪のコラボなんてのもありうる話だ。これは相当気を引き締めないといけなそうだ。僕はいつ戦闘に入ってもいいように身構えた。退魔術を駆使し、しかも座敷わらしの能力までもっている清純天然美少女が相手か。これは侮れないな。

 「では、私はこれで。」「えっ…あれ…!?」い●みちゃんは踵を返して立ち去ってしまった。暗いからもう彼女の姿は見えない。「…。」なんだったんだ、今のは。

 僕はひとり取り残されてしまった。ま、まあ、戦闘が避けられたのは、それはそれでよかったとしよう。僕はまた一人、暗い墓地を歩き始めた。

 「くすくす…」ぼんやりと光があらわれた。僕は身構える。男の精神を犯す甘い芳香、青白い光と寒気、まちがいない、今度こそ正真正銘の色情霊だ。

 僕の周囲に三体、光があらわれていた。「ついにきたか…」十分余裕のあるレベルとは言えないが、一体相手なら何とか倒せる段階にはきていた。ここで三体と戦い、実力を知って、無理そうなら引き返して修行をやり直す。地縛霊も多く、金縛りさえ克服すれば、逃げようと思えば逃げることはできた。

 ぽぅ…

 僕の周囲を淡い光が包み込んだ。光はすぐに消えたが、体の奥底から力がみなぎってくるようだった。これは…一時的にだが自分のステータスが上昇している。さっき座敷わらしと会話をして、わずかに運が良くなったのか。彼女が僕をゲストだと知った上で力を授けてくれたのか。

 ともかく、今の段階なら負ける気はしない。これならなんとか勝てるだろう。僕は大きく深呼吸して身構えた。

 暗い光は段々人の形を取り始めた。いやな風が吹く。精神がこわばるのを感じた。少しでもバランスを崩したらそのまま金縛りになってしまいそうだった。僕は気を抜かないようにしながら精神をリラックスさせ、金縛りにならないように抵抗した。おかげでいきなり拘束されることはなかった。

 人影ははっきりと人の姿をとった。一人は体操服にブルマ姿、もう一人は夏服、最後はスク水、いずれも女子高生風の若々しい幽霊さんだった。「私たち、ずっと昔に心中した仲なのです。将来を悲観して…」「うゎ…」「でも恋愛したことなかったのだけが心残りで、性霊になってしまいましたです。」「さあ、私たちの若い肌を堪能してね。」

 死んだ理由は置いといて、とにかく今敵は3人。全員を倒さなければいけない。しかもピチピチな娘たちが相手だ。手ごわいぞ。絶妙に男心をくすぐるコスチュームだし。

 い●みさんにせっかくもらった力だけど、ここは戦闘を放棄して、レベルを上げ直してから再び挑んだ方がいいかな。それとも果敢に戦うか。戦うとしても、一人ずつ倒すか、まとめて戦うかによっても戦略が変わってくる。

 色情霊相手なら、精神力がしっかりしていれば飲み込まれることはない。やってやれないことはない。が、やはり女子高性霊3人が相手となれば、こちらも無事では済まない。ギリギリで勝てる可能性がある、といったところか。ヘタを打てばこちらの負けだ。慎重に戦う必要がある。

 さて、どうする?

―選択肢―
色情霊2−2 逃げて仕切り直し
色情霊2−3 ブルマ娘をバック
色情霊2−4 夏服娘を騎乗位
色情霊2−5 水着娘と正常位
色情霊2−6 全員まとめて相手する


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