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#　それぞれを見送る医者＠狂月記後日談のクリード

投稿者：丸大　投稿日：2001年10月05日(金)06時09分07秒

Let's just say....

＞金城
＞「じゃぁな、次はトラブル以外で会えるといいな。」
＞そう答えてその場を後にする。

「・・・ああ。」

  まず有り得ない事と判っていながら、金田はそう祈った。
  金城ほどの力量を持った死霊課職員が、自分のような闇医者と出会う事態。
  そこにトラブルが発生していない訳が無い。

  だが、金田はその祈りを肯定し、そしてその祈りが成就される事を祈った。



＞矢雨
＞「まぁそうなる前に表の方の関係者として来たいものだな。」

「・・・そうだな。」

  あの時の事を、うっすらと覚えている。
  死狼の放った＜死の咆哮＞に晒される直前の、あの瞬間を。

『約束を破る気か』

  矢雨の言ったその一言。
  それが二つの命を、この世に留め置く碇となった。

  一つは、医者・金田京二として生きる壱號刀の。
  もう一つは、既に死んでいた男の。

  『壱號刀』は彼のその一言に、大いなる感謝と、少しばかりの非難の混ざった、
複雑な思いを感じていた。

「・・・約束、か。
  何はともあれ、それが私と君との、医者としての約束なのだろうな。」

  矢雨に答えるような、己に言い聞かせるような呟きだった。



＞瑞穂
＞「言いよどむって事は、どーせロクでも無いことなんだろう」
＞京二を見ながら武雅が言う。
＞「ま、そうならないことを祈るさ」
＞何を考えていたのか、察しが付いたようだ。
＞そう言ってにやっと笑う。

「・・・フフッ、そうだな。
  そう、祈る事にしよう。」

  自分は、いつからこんなに“人間臭く”笑うようになったのだろう。
  まるで人間のように、悲観的な予測を前に皮肉めいた笑いを、漏らすように
なったのだろう。
  これが将来的に良いのか悪いのか、全く判らない。
  己に起こる変化が、これほど気になるという事すら、以前には無かった事だ。

  だが一つだけ判っている事がある。

  今、自分に起こっている変化が、自分の刀身の奥深くに刻まれた
“形容しがたい何か”を、徐々に、徐々に、目覚めさせていっているのだ、
という事だけは。



＞ラエル
＞「………約束は出来ないよ？」

「・・・それはそれで構わん。
  君や灯走君にとっては努力目標みたいな物だ。
  それに君等のような生傷の絶えんわんぱく少年達は、正直良いカモなのでね。
  今後も末永いお付き合いを願いたい。」

  ラエルは帰りの車中で改めて感じた。

  あんな皮肉めいた一言にすら、以前には無い暖かみが感じられる。
  評判を聞いて初めて訪れた時の、血の通わない愛想笑いをしていた医者と、
果たして同じ相手なのだろうかと疑わせるほどに。

  タクシーのバックミラーで後ろを見返すと、遠目に小柄な人影があの料理店へと
向かっているのが見える。
  あれが金田の言っていた『次の客』だろうか？
  そんなことを思っている間に、タクシーは料理店を離れていった・・・。



＞（se:どんっ!!）
＞　扉を開け、外に出ようとした金城に、勢い良く何かがぶつかる。
＞「きゃっ」
＞　勢い良くぶつかった何かは、そのまま勢い良く、後ろに倒れこむ。
＞「あいたたたた」
＞　倒れこんでから、暫くして、その何かは腰を抑え、立ち上がる。
＞「ご、ごメンなサイ…大ジョーぶデスか？」
＞　立ち上がった何か―金髪の少女―は、申し訳なさそうに頭を下げる。
＞「こノ店でお世話ニなった人タチが集まってるって、キいたんで、急イデたんデス。
＞　イッショに来ルはずのコーキが、ヨウジがあるって遅れるって…ソシテ急いダんデ
＞…本当にごメンなさい…」
＞　金髪の少女―ノイエ・クラウス―は、わざわざ急いだ理由を教えながら、本当に
＞申し訳なそうに頭を下げる。

  ノイエの登場で、その場を離れかけていた者達が、しばし止まる。

＞瑞穂
＞「ん？　どうした」
＞四郎の頭ひとつ上から、下を見る。倒れている少女がいる。
＞「大丈夫か？」少女に向かってそう言う。
＞「ん、コーキ？」
＞「誰だっけか？」

＞金城
＞「………金田先生に聞くが、少し前に言ってた別の客ってこの子か？」

「・・・いや、当初予定の客ではないが・・・。」

  金田はノイエを見る。
  何故かその目に、金城達を相手にしていた先ほどの優しさは、もう宿っていない。

「一体全体、何しに来たのかね？
  君はもう私の元を訪れる必要など無いはずだし、訪れるべきでも無い。
  吸血鬼どもが寄り付かない場所に留まり、安静にして居給え。」

  そう言い捨てるや、ノイエの方を省みる事無く、料理店の中へと戻っていった。

                                                  “メスの魔剣”壱號刀・冷遇

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