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#　精神世界＠魔物という罪のクリード

投稿者：丸大　投稿日：2003年03月04日(火)01時34分15秒
Let's just say....




「先生、オレは奴等とのケリを付けなきゃならない。オレは・・・やっぱり奴等への憎しみを、忘れさる事が出来ない。」

 そう言って彼は行った。あらゆる言葉、目に見えぬよう巡らせた妨害も、彼の心の奥底にある炎を消し止める事が
できなかった。無力だ。なんと無力なのだ、この私は。

「一人、女を匿って欲しいんだ、先生。・・・結婚かい？してないよ。だから紹介も出来なかったがね。」

 つくづく馬鹿な男だ。己の先行きを考えれば、縁故を作ることを避けるべきなのは自明の理だろうに。
 私のいさかいに首を突っ込んだ時もそうだ。愚かな、哀れな程に愚かな男だ。

「・・・そいつはよ、オレの正体を知ってもついてきやがるのさ。うっとおしくってしようが無ぇ。
 だからよ、出来るだけ遠くへ・・・頼むわ。」

それが私が聞いた彼の最後の言葉。彼は去り、そして君が来た。

オ

「・・・あの人は、帰ってきます。どんなに傷ついても、生きてさえいれば、絶対帰ってきてくれます。」

 相手がそのスジの機関で無かったなら、私も同感だったろう。
 私に出来るのは、妊娠している君を一刻も早く私の医院に移送する事だ。君の希望的観測は、事態に何ら
影響を与えない。

「主人が言ってました。
 『産婦人科医のクセに女の扱いが悪い。
 闇医者のクセにやたら面倒見が良い。
 技術は確かなクセに相応の自信を持たない。
 そんなヒネクレ者のクセに・・・名医だ。』って。」

 何とも受け取り方に困る評価をされたものだ。君はそう言って彼の陰口めいた言葉を詫びていた。
 君が詫びた所で、どうしようもないではないか。真に私に詫びるべきなのは、彼なのだから。

「・・・主人が帰って来なかったら・・・わたしと、わたしの子供で、彼のカタキを打ちたい。」

 君と彼は、所詮他人だ。他人の憎しみを背負い込む必要など無い。ただでさえ君は、彼に未だ生まれぬ子を
託されているのだ。
 これ以上、君が余計なモノを背負い込む愚を犯す必要がどこにある？ましてや、己の子供までその憎しみの
連鎖に巻き込むなど、愚の骨頂だろう。何故、それを理解出来ない？

「先生、もし万が一、わたしが奴等に捕らえられたら、彼の故郷の人たちのように、解剖実験されたり
 するんですか？・・・だとしたら・・・わたし、そんな事をされる前に・・・。」

 最悪の場合を想定するなとは言わない。
 だが今は、私を信用しろ。必ず、君を奴等の手の届かない所まで移送してみせる。

「・・・先生って、割と主人と似たような所があるんですね。なんていうか・・・人一倍寂しんぼうなくせに、
 それをひた隠しにしてるような様子とか。あ、別に悪い意味で言ってるんじゃないですよ？
 なんかこう・・・可愛いなって、思っちゃって。」

 その観察は間違っている。
 私は社会生活に必要最低限以上の交流を必要とはしていない。それ以上の交流は、私の冷静な判断を狂わせる。
 私はそれのもたらす悪弊を理解している。だからこそ、そんな事は断じてない・・・はずだ。

ネ

「クックック・・・なんとまあ、あの悪名高き金田医院の院長が、奴の知り合いだったとは。この世間は狭いものです。」

変化能力か・・・これと同じ手で、彼女の警戒を解いたな・・・キツネめ・・・。

「地下４階にて実験体が暴走中、繰り返す、地下４階にて実験体が暴走・・・」

　何だ？
　一体奴等、何を・・・いや、その可能性は低いハズだ！奴等が彼女を確保して、まだ１０時間ほどしか経っていない！！
　彼女には・・・何も・・・。

ガ

「ギギィ・・・ギギィイアア！！」

・・・腹部膨張、下腹部に人面様の変形、母体上半身に異常血流による内出血、並びに異形器官の形成を確認。
　変異深度、推定６０～７０％。

「ゲッギァアアアアアアアアア！！」

　外界判断能力は・・・認められない。やるしか、無いというのか・・・！！

「ッギィィイイイイイイ！！」

　両足並びに新成器官の腱部切断、患者の移動能力喪失を、確認・・・。

「ギギギ・・・ギギギギ・・・。」

・・・何だ？こちらを見て・・・何か、言おうとしている・・・？いや、まさか・・・。

「ギギギ・・・ギギギギ・・・。」

これは・・・涙・・・？

イ

「先生・・・あの人は・・・もう解体しつくされてしまっていた・・・帰ってきてくれたと・・・思っていたのに・・・」

　もう、良い・・・もう、君は充分苦しんだ・・・もうこれ以上、自分を苦しめるな。

「この子だけは・・・守りたかった・・・もう・・・助からない・・の？」

・・・母子一体型変異は、３０％以上進行してしまうと・・・格段に、難しくなると、言わざるを得ない。

「そう・・・なら・・・先生、最後のお願いがあります。」

コ

　何かを頼まれたとしても、それは出来ない。私を動かすには、金銭を伴う契約が必要だ。
　君は最早、私の新たなクライアントたり得ない。

「わたしと、あの人とわたしの子を・・・」

　やめろ、私は恣意的に死を与える権限を持たない。君の依頼は正式な手続きを踏んでいない。
　君の申し出は受け容れられない。

「このまま・・・奴等に弄ばれたくない・・・」

　何とか君達を逃がす方法を模索する。私からこそ頼む。チャンスをくれ。君達が生き延び、逃げ延びる為の、
数少ない可能性を模索する時間を、機会をくれ！！

ロ

「もう、助からないなら・・・。」

　駄目だ！駄目だ駄目だ駄目だ！！それ以上、私に・・・！！

シ

「お願いです・・・オネガイ・・・」

やめろっっっ！！！やめてくれぇええええええ！！！！

テ


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～精神世界～


＞いずみつ様
　最後の一言の後、場面は深紅に染まり、それから強制的に世界は閉じられます。
（北上さんの魔剣による呼びかけに応じないのを見て、金田がＡ－０に電流を流して北上さんの意識を
強制的にシャットダウンさせる為です。）
　今回の事態にルール的な解釈を無理矢理こじつけるとするなら、金田が所有していた『愛』
（患者との関わりで発生したものや、北上さんと出会った時に作った絆で説明要求に応えた分など）を、
北上さんが所有する『物品を通して意志を疎通させる業』（口寄せ・物品との会話・憑喪神など）の誘発に
使用した、という事になるでしょうか。
　北上さんが精神世界を見る事を望んだ場合、誘発された、という事を意味します。
　それによって金田は『愛』の使用によって人間性を回復し、なおかつ今回患者を殺した為に発生した＜感情＞のエゴ
『人が、その人らしい生き方が出来ないようになったら死ぬべきだ』４（金田と半分こ）が、疑似体験を
通じて北上さんにも転写されます。


　人の意志の延長線の上にある存在、魔剣。
　道具であるがゆえに、そして本当に道具であり続けられなかったがゆえに、味わうことになった苦悩を表現しようと
試みてみました。

　こういうケースの場合、彼女は誰が殺した事になるのでしょう？
　魔剣の意志？彼女の意志？それとも彼女を追いつめた組織？それとも・・・？

　そうした独りよがりでなおかつ未整理な創作表現を垂れ流すのに忍びなく、こんな形式をとってしまい、
読みにくくしてしまって本当にどうもすいません。
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