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[サイスコ]ほだされていると知りつつも

  • 2013/01/07 23:10
  • カテゴリー:FF



表の顔と裏の顔、と言うものがある。
人前に出ている時に見せるものが表の顔、人のいない所などで覗く本性や、本音を漏らす時の様子を指して言うのが裏の顔。
それはどんな人間にも、多かれ少なかれ潜んでいるものだろう。

─────だが、こいつの裏の顔は酷い、と自分のベッドで滾々と眠る少年を見て、サイファーは思った。
平時が自立を象徴するかのように確りとしているだけに、落差がより一層酷いと思う。


「……おい、スコール」


眠る少年に声をかけた所で、返事がないのは判り切っている。
これが任務中であれば、サイファーがドアを開けた時点で覚醒しているのだろうが、今は休日。

指揮官と言う立場上、忙殺されているのが常である彼にとって、ようやく得られた久々の休日である事を思えば、こうしていつまでも惰眠を貪りたがるのも無理はないと言えよう。
サイファーとて、昨日まで目の下に隈を作りながら書類だの会議だの作戦立案だのに追われていた彼を見ていたのだから、安寧の時間を邪魔するのは非常に無粋である事は判っているつもりだ。
判っているのだが、サイファーはどうしても彼を起こさなければと思っていた。

スコールが眠っている場所は、サイファーの部屋のベッドだ。
彼は部屋主の事など露程も気にしていない様子で、すやすやと健やかな寝息を立てて眠っている。
それは別に良い、彼が何処で寝ようとサイファーは気にしない、例え此処が自分のテリトリーであるとしても、其処でスコールが日向の猫宜しく寝ているのはいつもの事だ。
だから、サイファーがスコールを起床させる事に拘っているのは、彼が陣取っている場所に問題があるからではない。

すぅ、とサイファーは息を吸い込んだ。
ベッドシーツの端を握って、せーの、と勢いよく掴んで上に乗っているスコールごと力任せに引っ手繰り、


「起きろテメェ!人に朝飯作らせといて、ぐーすか寝てるたぁどういう了見だコラ!」


怒声と同時に、どたん、と人が床に落ちる音。
言わずもがな、落ちたのはスコールだ。

サイファーがスコールを起こす事に執心していた理由は、ただ一つ。
昨夜の睦から押し流されるように眠りに付き、朝を迎え、先に起きたのは珍しくもスコールの方だった。
スコールはまだ眠っていたサイファーを揺り起し、寝惚け眼で舌足らずに「おなかすいた」と言った。
寝惚けている時にだけ見られる、子供返りしたスコールの言葉に、はいはいとサイファーは彼の頭を撫でて、朝食を作る為にベッドを出て、作っている間に顔を洗って着替えて置くようにとスコールに言い付けた。
その時スコールは、「……ん」と頷いて、ぼんやりとベッドの上に座り込んでおり、遠い記憶の幼い彼を思わせるその様子に、サイファーはこっそりと和んでさえいた。
……が、朝食の準備を終えて、出来たぞと呼びに来てみれば、スコールは主のいなくなったベッドの中で、布団に包まってすやすやと眠っていたのである。

本当は、サイファーとてもう少し眠っていたかったのだ。
指揮官であるスコールが多忙であるなら、補佐官であるサイファーも同様に多忙である。
二人の休みが重なる事など尚更貴重で、だからこそ昨日は睦み合った訳で、その末に、今日の午前はゆっくり惰眠を貪り、何某かの活動を始めるのなら午後からにしようと、サイファーはひっそり考えていたのだ。
それをスコールに話した訳ではなかったから、スコールに起こされた時は、仕方がないかと言う気分で起きる気になったのだが、


「おい!お前だけ寝てんじゃねえ、起きろ!」
「…………ぐー……」
「起きろっつーの!」


このままでは、折角作った朝食が冷めてしまう。
朝はあまり重いものが食べられない、しかし昨今のハードワークで栄養失調の気もあるスコールの為、色々と気を遣って作ったと言うのに。
せめてベッドの上に座って、起きていようとする努力をしていると言うならまだしも、見事に熟睡とは。

床に転げ落ちても、枕を抱いて眠り続けるスコールに、サイファーの米神に青筋が浮かぶ。
スコールの寝顔は、眉間の皺が取れていて、リノアの言葉を借りて言うなら「かわいい」訳で、サイファーも少なからずそれを気に入っている。
しかし、今ばかりはその愛らしい寝顔も、サイファーの苛立ちを助長させるものにしかならなかった。


「起きろ、ほら!朝飯だ!」
「……んぅ……要らない……」
「おめーが腹減ったっつったんだろうが」


ぎゅ、と頬を抓って言うサイファーに、スコールは嫌がるように頭を振る。
まだ寝惚けているのだろう、仕草が酷く幼い。
それも可愛らしくはあるのだが、やはり今のサイファーには苛立ちが増すばかりだ。

スコールの腕から枕を強引に奪って、強引に引っ張り起こす。
無理やり起こされたスコールは、取り上げられた枕を取り戻そうとするかのように、ふらふらと腕を彷徨わせた。


「起きろっつーの。顔洗って来いっ」
「うあ…」


立ち上がらせて背中を押すと、スコールはふらふらと歩き出した。
ごちん、と壁に体をぶつけながら洗面所に向かうスコールに、サイファーは深々と溜息を吐く。

スコールが寝汚い事は、幼馴染の間ではよく知られている事だ。
傭兵らしく、作戦中やガーデン生などの人目に着く所では、気配に敏感で、小さな物音でさえ睡眠を阻害されてしまう事があるスコールだが、気心の知れた者だけと一緒にいる時や、何事も警戒しなくて良いと安心しきっている時は、誰かに起こされない限り、中々自分で起きようとしない。
人一倍人目を気にする性格の所為か、限られた者にしか見せない無防備な姿は、見ていて微笑ましく思える事も多い。

だが、それも見る側が心穏やかでいる時の事。


「ったく……ンっとに手のかかる奴だぜ」


呟いた直後、がたーん!と言う物騒な音が洗面所から響いた。

いつもなら、その程度の物音を気にするサイファーではないのだが、こういう時はそうも行かない。
何をやらかした、と思いつつ、洗面所を除いて、サイファーはがっくりと項垂れた。


「何処をどうすりゃ、そうなるんだよ……」


スコールは、洗濯物の山に埋もれていた。
洗面台の横に設置している洗濯機の上に置いていた籠に入れていた洗濯物が、丸ごと引っ繰り返っているのである。
空っぽになった洗濯物が横倒しに転がっている様が、無性に虚しいものに見えた。

洗濯物に埋もれたスコールは、床に座り込んだまま動かない。
何処かぶつけたかとサイファーが覗き込んでみれば、またうとうとと舟を漕いでいた。


「オイ」
「………う、」


ぴしゃん、とサイファーがスコールの頭を叩く。
かくん、とスコールの頭が一度落ちたが、衝撃は覚醒を促す事には成功したらしい。
ぼんやりと霞む光を宿した青灰色が、サイファーを見上げる。


「サイファー……」
「顔洗ったのか」
「……ん」
「ちったぁ目ぇ覚めたか」
「……ん」


たどたどしい返事ばかりが繰り返されるのを聞いて、サイファーは溜息を吐く。
全然起きてねえ、と思ったが、何度怒鳴っても無駄であるのは判り切っているので、これ以上怒っても自分が疲れるだけだと言い聞かせ、スコールの手を引いて立ち上がらせる。


「リビング行って、先に食ってろ。腹減ってんだろ」
「洗濯物……」
「俺が片付ける」
「……ん」


こんな奴に片付けなんて任せたら、いつ終わるか。
寧ろ状況が悪化する、と決めつけて、サイファーはスコールを洗面所から追い出した。

まとめて片付ける方が良いと溜めていた洗濯物が、まさかこんなトラップになるとは思わなかった。
サイファーは床に散らばっていた洗濯物を掻き集めると、籠ではなく、洗濯機の中に投げ入れる。
ゆっくり休めるのはどうせ今日だけなのだから、洗濯物は今日の内に洗って干してしまおう。
幸い、外は晴れているし、天気予報でもバラム島は全域に渡って快晴となっている。
この機を逃せば、またいつ洗濯できるか判らないので、今日の内にやるべき事は全て済ませてしまうに限る。

洗濯機に洗剤を入れて、スタートボタンを押す。
回り出した洗濯機の音を聞きながら、すっきりとした洗面所を見て、これでよし、と一区切り。
やっと朝飯だとリビングに戻ったサイファーは、食卓の席についているスコールを見て、ぱちりと瞬きを一つ。


「……スコール」
「……ん」
「先食ってろっつったろ」
「……うん」


スコールは、食卓の席にはついているものの、食事を始めてはいなかった。
両腕でサイファーの枕を抱えて、うとうとと舟を漕いでいたばかりで、スプーンすら握っていない。

スコールは猫手で目を擦りながら、傍らに立って見下ろすサイファーを見上げ、


「朝ご飯、サイファーと食べようと思って」
「……」
「早く座れ。冷めるぞ」


いや、それはこっちの台詞だったのであって。
ついさっきまで、自分がスコールに言っていた言葉であって。
何を自分が待ってやっていたみたいな台詞をいけしゃあしゃあと。

─────と、思わないでもないのだが、


「う」


サイファーがぐしゃぐしゃと髪を掻き撫ぜてやれば、スコールは猫のように目を細める。
髪質の所為か、寝癖であちこちぴんぴんと跳ねた髪が、更にあちこちへ跳ねる。


「なんだ」
「なんでもねーよ」
「……意味不明だ…」


拗ねたように唇を尖らせるスコールに、サイファーはくつくつと喉で笑う。
それを見たスコールが、益々意味不明と首を傾げていたが、サイファーは何も教えるつもりはなかった。



なんだか、無性に気分が良い。
先程までの苛立ちは、さっさと忘れて、思い出さない事に決めた。
人間、気分の良い方にいるのが気持ちが良いものだ。

食事が終わったら、洗濯物を干して、スコールをバラムの街へ連れて行こう。
ジャンクショップにでも行けば、スコールの気を引く物が見つかるかも知れない。


卵焼きが甘くない、と言うスコールに、晩飯で作り直してやると約束して、サイファーはパンを齧った。





スコールの世話を焼いてるお兄ちゃん気質なサイファーが好きです。
色んな意味でサイファーには自分のことを隠さないスコールとか。

そんなまったりサイスコが書きたかった。
結果、何故かスコールが緩い子になってしまったw

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