[スコール]夢さえも届かない
- 2011/12/29 02:16
- カテゴリー:FF
夢を見る位ならタダだろうって誰かが言ったけど、タダで見れる夢ほど酷いものはないと思った。
夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。
それで叶えられる願いなら、どれだけ気楽な夢なのかと思う。
死に物狂いで掴もうとして、足掻いて手を伸ばして、それでも結局手に入らない。
手に入ったと思ったら、それはほんの少し掠められた欠片が見せた幻で、直ぐに消えて見えなくなる。
夜に見る夢で叶えられる願いのそれの虚しさと言ったら。
結局消えてなくなるんだ、何もかも。
夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めた時の絶望感に比べたら、空っぽも同然だ。
ずっとずっと手を伸ばす。
其処にある光に向かって、手を伸ばす。
足元から何か冷たい物が這い上がってくるのが、怖くて怖くて仕方がなかった。
逃げても逃げても追い駆けてくるそれは、光が差し込むと途端にその速度を鈍らせる。
だから、あの光を掴む事が出来たら、きっとこの冷たくて怖い物は消えるんだと思って。
光に向かって走る。
光に向かって手を伸ばす。
遠く遠くにあった光が、少しずつ近くなって、あと少しだと、地面を蹴って。
空っぽの手が、白い天井に向かって伸びていて。
……夢を見る位ならタダだろうって誰かが言った。
夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。
けれど夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めてしまえば空っぽになる。
空っぽの手を握り締めた。
空っぽの手で、溢れそうになる雫を握り締めて、消し潰す。
「……大丈夫」
もう少し、きっとあともう少しで、こんな弱い自分もいなくなる。
空っぽの手を見て、雫が溢れる事もなくなる。
そうしたら、そうしたらきっと。
(またあえるよね、“ ”)
呼ぶ名前さえ、判らないのだとしても。
ガーデンに入学してから数年経った頃のスコール。
思い出せなくなっちゃったけど、まだお姉ちゃんを追い駆けてる。
ジャンクションって何歳頃からやってたんだろ…?