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[レオン&子スコ]まってる 3

  • 2013/01/19 23:48
  • カテゴリー:FF



帰りが遅くなって、エレベーターののんびりとした早さに苛立ちつつ、若しくは階段を駆け上って息を切らせる度、1階か2階の部屋に引っ越した方が良いだろうか、と思う。
しかし、セキュリティ的な面を考えると、やはり中・高層マンションでオートロックのカードキー認証、玄関は暗証番号と言う点は外せない。
結果、やはり引っ越しはなしだな、と言う結論に行き着くのがパターン化していた。

街からマンションの下までタクシーで帰る最中、もう眠ってしまったかな、と思いながら、携帯電話で弟に『いまからかえるよ』と言うメールを送った。
すると、5分と経たない内に『まってる』と言う返信があって、レオンは口元を緩ませると同時に、可哀想な事をしたな、と思った。
時刻は夜の10時で、いつも通りにレオンが家に帰っているなら、夕飯も終えて風呂も入って、もうベッドの中で眠っている頃だ。
レオンはそれでも構わないと思っているのだが、弟はいつも、レオンが仕事から帰って来るのを待ちたがる。
それがどんなに遅くなる日でも。

だからレオンは、いつも出来るだけ早く帰るのだ。
仕事が詰まっている時でも、会社内で残業をする事は殆どなく、会社内でなければ出来ないような仕事でもない限り、必ず家に持ち帰る。
そして弟と一緒に過ごした後、弟が寝付いてから、一人仕事の続きを始めるのである。

階段を上り切った所で、レオンは軽く呼吸を整えた。
一回、二回、三回と、意識しながら深呼吸をして、どくどくと煩かった心臓の鼓動を落ち着ける。
額に滲んだ汗を掌で拭って、いつもと同じ歩調で歩き出す。

ようやく帰り着いた家のドアに、カードキーを押し当てて認証。
ドアノブを捻れば、がちゃり、と音が鳴って、


「ただいま────」
「おかえりなさい!」


帰宅の挨拶を追い抜くように、レオンに届いて来た迎えの言葉。
レオンが敷居を跨ぐよりも早く、小さくて温かいものが抱き着いた。


「おかえりなさい、お兄ちゃん」
「…ああ。ただいまスコール」


ぎゅ、とレオンの腰に抱き着いて、爛漫の笑顔で迎えてくれた小さな子供────スコール。
柔らかなダークブラウンの髪を撫でて笑いかければ、スコールは嬉しそうに頬を赤らめた。

レオンは鞄を腋に挟んで、スコールを抱き上げた。
わ、と驚くような声を漏らした後、スコールはきゃらきゃらと笑ってレオンの首にしがみ付く。
ほんの十時間ぶりの温もりが、レオンにはとても愛しく思えて堪らない。


「遅くなって悪かったな。寂しかったか?」
「ううん」


レオンの言葉に、スコールはふるふると首を横に振る。
それが甘えん坊の幼い弟の強がりだと、レオンは直ぐに判った。

玄関が開くなり、直ぐに飛び付いて来たスコールの体は、ひんやりとした冷気に包まれている。
きっと、レオンからのメールを貰ってから、玄関の前でずっと兄の帰りを待っていたのだろう。
ひょっとしたら、その前から、あの冷たい冷気の蔓延る玄関前で待ち続けていたのかも知れない。
リビングにいれば、暖房もあるし、電気カーペットもあるし、テレビだってあるのに、レオンに早く逢いたいが為に、スコールは外の冷気が滲む玄関前で、兄の帰りを待つのだ。

レオンがリビングに入ると、ピーッ、ピーッ、と言う音が鳴った。
何事かとレオンは辺りを見回して、音の発信源がキッチンの電子レンジだと気付く。


「あの、あのね、ね」


くいくい、と服の端を引かれて、弟を見ると、


「ご飯、ね。冷めちゃったから。もう一回、温めてたの。ご飯、温かい方が美味しいから」


スコールの言葉に、レオンはついつい口元が緩む。
くしゃくしゃとスコールの頭を撫でてやれば、スコールはくすぐったそうに目を細める。


「今日も夕飯、食べないで待っててくれたんだな」
「うん」
「ありがとう」
「んーん」


ぎゅ、と強く抱き締めてくれる兄に、スコールは照れたように顔を赤らめた。
それを兄に知られるのが無性に恥ずかしくて、スコールはレオンの首下に顔を埋める。

耳や頬にかかる柔らかい髪と、触れた場所から伝わる弟の温もり。
レオンはそれを確かめるように、スコールを抱き締めたまま、ゆっくりと呼吸を一つ。
離れ離れだった今日一日の不足分を取り戻すように、しっかりと弟の存在を確かめてから、レオンはスコールを椅子に下ろしてやった。


「スコール、お腹空いてるだろう」
「うん。お兄ちゃん、ご飯、食べて来ちゃった?」
「いいや」


酒の摘まみに少し食べたが、食事と言う程の量ではない。
上司からは色々と食べるように言われ、皿を受け取る事はしたものの、殆ど口をつけなかった。
それも全て、レオンと一緒の夕飯を楽しみにしている弟の為だ。

温め終わった食事をテーブルに並べる。
レオンと向かい合って座るスコールの腹から、くきゅぅ、と可愛らしい音が鳴った。
赤くなったスコールに、レオンは小さく笑みを漏らし、手を合わせる。




チキンライスを頬袋一杯に詰めて、嬉しそうに笑う小さな弟。
その笑顔が見たいから、レオンは早く帰らなくちゃと思うのだ。






子スコが待っててくれるんだもの。早くおうちに帰らなきゃ。

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