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[レオン&子スコ]祝福のベル、幸福の夜

  • 2015/12/25 23:20
  • カテゴリー:FF
クリスマスと言う事で、レオンと子スコがサンタクロースなパラレルです。





しんしんと雪が降り積もる小さな町。
住民たちがすっかり寝静まり、庭に繋がれた犬も丸くなって眠った頃。
空から滑るように降りてきた影が、とある家の屋根に辿り着いた。

屋根に降りた影から、小さな影が分離して、ぴょこっぴょこっと家屋の窓へ近付く。
小さな影が何かを振り翳すように右手を揺らすと、りーん、りーん、と小さなベルの音が鳴った。
すると不思議な事に、窓の向こうの鍵が、音も立てずにくるりと周り、ロックを外す。
カラカラと車輪が回る音を鳴らしながら、部屋の窓は開けられた。


「…ん…しょ、…ん…しょ、」


胸の高さにある窓を乗り越えようと、小さな影が奮闘する。
両手を使って体を持ち上げ、窓を乗り越えようとするが、宙に浮いた足をぱたぱたと動かしても、体は前に進まない。
せぇの、と一つ勢いつけて、小さな影は精一杯に身を乗り出して、なんとか窓を乗り越えた。
勢いを過ぎたものだから、くるんと体が丸まって、ころんと部屋の中に転げ落ちる。

影は小さなお尻を摩りながら起き上がると、部屋の中が静まりかえっていることを確かめて、窓の外に置いていた、大きな白い袋に手を伸ばした。
影がそのまますっぽり入れてしまいそうな大きさの袋を、両手に持って、よいしょ、と持ち上げる。
丸々と膨らんだ袋には、果たして何が入っているのか。

影は袋を肩に担いで、ゆっくりと部屋の中を進んだ。
向かう先にはベッドがあり、この家で暮らす小さな子供が眠っている。
すやすやと眠る子供の枕元には大きな靴下が吊るされ、今日この時を待ち侘びていた事が判る。
影はベッドの傍らにしゃがむと、大きな袋の口を開けて、ごそごそと中を探り始めた。


「ん…と……これ、じゃなくって……えっと……」


袋の中には、沢山のプレゼントボックスが入っていた。
それを一つ一つ確かめて、影はようやく目的の箱を見付け、ほっと息を吐く。


「よい…しょっ、と」


プレゼントボックスと、吊るされた靴下の中に入れて、これで成すべき事は終わった。
影はもう一度大きな袋を肩に担いで、そろりそろりと窓へ向かう。


(そーっと…そーっと……)


物音を立てないように、身長に、ゆっくりと。

細心の注意を払いながら、ようやく窓に辿り着くと、影は入って来た時と同じように、んしょ、と窓を乗り越えた。
これまた入って来た時と同じように、ころんと屋根の上に転がって、体についた雪を嫌ってぷるぷると頭を振る。
ぱんぱんと身体を軽く払うと、部屋の中に残して来た大きな袋を、うんしょ、と持ち上げた。
引っ張るように袋を外に運び出し、カラカラと窓を閉め、腰に吊るしていた小さなベルを掲げる。
りーん、りーん、りーん、とベルの音が三回鳴ると、鍵がくるりと回って、窓は再びロックされた。

窓が開かない事を確認して、小さな影は窓を離れる。
てってってっ、と軽い足音を立てて影が駆け寄る先には、影の帰りを待っているものがいた。




真っ白な雪がしんしんと降り注ぐ街の上で、しゃんしゃんと心地良い鈴の音が響く。
音の発信源には、小さな子供と一人の男が、空を飛ぶソリに乗っていた。
男はソリを引くトナカイ達の手綱を握り、子供を膝に乗せている。
子供はミトンをはめた手に紙とペンを持ち、紙に書かれた沢山の名前に、一つ一つチェックを入れてた。
やがてチェックが全ての名前に行き渡ると、子供はぱぁっと破顔して顔を上げる。


「お仕事できたよ、お兄ちゃん!」


そう言った子供は、濃茶色の髪の上に、赤い三角帽子を被っている。
上着も赤で、長袖の端と袖に白いもこもことした綿があり、丸く着膨れしている様子が可愛らしい。
けれどもボトムはと言うと、膝丈もないホットパンツのような短いズボンで、これも赤色に、裾に白い綿と言う仕様で、傷一つない、玉肌の膝小僧が眩しい。
足元は、トナカイの体毛と同じ色をした、ファー付のショートブーツを履いていた。
名前をスコールと言い、この街を担当するサンタクロース・ラグナの息子である。

スコールを膝に乗せ、トナカイを操っているのは、スコールの兄のレオンだった。
レオンも弟と同じように、もこもことした白い綿のある赤い服を着ており、ボトムは弟と違い長ズボンをブーツインにしている。
手元は黒い革の手袋をはめ、弟を空の上から落してしま輪わないように、腰のベルトで二人の体を繋げていた。

レオンは、無事に仕事を終えたとはしゃぐ弟に、よく出来ました、と頭を撫でた。


「もう周り忘れた所はないか?」
「うんっ」
「よし。初めての仕事は無事に完了だな。ご苦労様、スコール」


ご褒美に、ぎゅっと小さな体を抱き締めると、きゃらきゃらと嬉しそうな笑い声が響く。

この街を担当している父、サンタクロース・ラグナと、その息子であるスコールとレオン。
レオンは幼い頃にサンタクロースの試験を受けて合格し、今では父の手伝いをする傍ら、隣町への配達も担当する程、優秀である。
スコールはそんな兄と父に憧れ、毎年のように、二人の手伝いをしたいと言っていた。
今年になってようやく空飛ぶソリに乗る事が許されたスコールは、サンタクロース見習いとして、兄と一緒に初めての仕事に赴いた。
その仕事を無事に終える事が出来たのだから、喜びも一入と言うものだ。

初めての大役を終えた事、兄に褒められた事、そして家に帰れば父もきっと褒めてくれるだろうと、スコールは全てた嬉しくて堪らない。
丸い頬を赤くして、父に褒められる時の事を想像しながら、ふふふ、と幸せそうに笑う。
そんなスコールに、レオンは小さく笑みを漏らし、ソリの後ろに乗せていた袋に手を伸ばした。


「スコール」
「なぁに、お兄ちゃん」
「お仕事を手伝ってくれた良い子のスコールに、クリスマスプレゼントだ」


そう言ってレオンは、袋から取り出したものを、スコールの前に見せてやった。
赤い箱が緑のリボンで飾られ、『Merry Christmas!』とメッセージカードが添えられている、プレゼントボックス。
それを見たスコールから、ふわぁ、と喜色一杯の声が零れた。

期待と喜びに満ちた目が兄を見上げる。
いいの、いいの、と興奮し切った瞳で訊ねるスコールに、レオンは笑顔で頷いた。


「はわっ、はわ……ふわっ」


興奮が冷めない様子で、スコールはリボンを解き、ボックスの蓋を持ち上げた。
中に入っていたのは、スコールが愛して已まないライオンの絵本と、絵本の挿絵とそっくりの、ライオンのぬいぐるみだ。
ぬいぐるみは子供の顔程の大きさで、スコールの姉替わりであり、レオンの妹分であるエルオーネと言う少女が、弟の為にと手作りしたものだった。
クリスマスの雰囲気に合うように、ライオンの首にはリボンと鈴が縫い付けられ、ちりんちりん、と小さな音を鳴らしている。

スコールは箱から絵本とぬいぐるみを取り出して、空に掲げるように持ち上げた。
きらきらと輝く蒼灰色の宝石を見下ろして、レオンはほっと息を吐く。
幼い子供がこんなに喜んでくれるなら、皆で準備をした甲斐があった、と。


「ライオンさん!」
「嬉しいか、スコール」
「うんっ!」


ぎゅうっと絵本とぬいぐるみを抱き締めるスコール。
赤らんだ頬をぬいぐるみに摺り寄せて、スコールはぱたぱたと足を遊ばせた。
全身で喜びを表現する弟に、レオンの胸も温かくなる。

スコールは一頻りぬいぐるみを抱き締め、絵本をぱらぱらと眺めた後、丁寧に箱の中に戻し始めた。


「絵本、読まないのか?」
「おうちに帰ってから、皆と一緒に読むの」
「ぬいぐるみも片付けてしまって」
「だって落としてなくちゃったらイヤだもん」


唇を尖らせて言うスコールに、確かに此処で落としたら大変だ、とレオンは苦笑する。

街を遥か下に見下ろす空の上で落し物なんてしてしまったら、探し出すのは難しい。
ソリやトナカイに乗っている間は、はサンタクロースの特別な力で、寒さや風から守られているが、離れてしまえばそうではない。
落し物は風に流され、何処へ運ばれてしまうか判らないだろう。
折角貰ったプレゼントとそんなお別れをするなんて、スコールは絶対に嫌だった。


「おうちに帰ってね、お仕事ちゃんと出来たよって、お父さんとお姉ちゃんに言うの」
「うん」
「それで、お姉ちゃんが作ってくれた晩ご飯食べて、ケーキ食べて」
「うん」
「それでね、絵本をね、お父さんにね、読んで貰うの」
「うん」
「それでね、それでね。今日は、皆で一緒に寝ようね。クリスマスだもん」


良いよね、とねだるスコールを、レオンは勿論だ、と言って抱き締めた。

向かう先に、温かい光を宿した家を見付けて、レオンはトナカイの手綱を引いた。
トナカイ達は走る速度を落として、高度を下げ、家に向かって近付いて行く。
玄関の前に立っていた二つの人影が、此方に向かって大きく手を振るのを見て、スコールも小さな手を目一杯大きく振って見せた。



しゃん、しゃん、しゃん……と鈴の音が小さくなって、空の彼方へ消えて行く。

ただいま、と元気に帰って来た幼子を、父と姉が抱き締める。
よく頑張りました、と頭を撫でられて、小さなサンタクロース見習いは、嬉しそうに笑った。
その笑顔が、家族に取って何よりのクリスマスプレゼントだと、彼は知らない。





メリークリスコマス!
ソリを操るレオンお兄ちゃんの膝に乗せて貰って、プレゼント配りをする子スコサンタ。うちにも来て欲しいものです←

子スコの服装は2012年のクリスマス絵のイメージ。
小さな子が大きな袋を一所懸命抱えてるのって可愛いですね。
部屋に入ろうと頑張ってる様子を、お兄ちゃんはハラハラしながら見守っていたと思います。
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