[けものびと]おそとへいこう
- 2016/02/22 23:12
- カテゴリー:FF
猫の日と言う事で、ケモレオン&ケモスコールと、二人を引き取ったラグナの話。
設定他前に書いた話は此方。
ラグナが保護した獣人の兄弟は、まだまだ幼い為、単に運動するだけであれば、室内でも十分事足りる。
高さのある丈夫なインテリアを購入したり、本棚を倒れないように固定したりしているので、上下運動も出来るように配慮した。
兄レオンはすっかりその生活に慣れ、中々人馴れしなかったスコールも、生活訓練を経てからは、少しずつ順応しつつある。
しかし、心配事はそれで終わりと言う訳ではなかった。
ライオンモデルの彼等が、将来的にどのように成長するのか───ヒトの特徴が目立つようになるか、動物の生態に近いままか───も、まだ判らない。
それでも、今はヒトの3歳~4歳程度の身長しかない彼等が、大きく成長するのは想像に難くなかった。
元々が大型動物であるライオンモデルである事、彼等の肢が猫の獣人よりも遥かに大きい事が、彼等の将来性を暗示している。
となると、成長に伴い、ストレス発散や日々の生活に必要とされる運動量も増えて行く事が予想される。
個体によって成長速度が大きく異なる為、彼等が何年で大人と呼べる体躯になるかは判らないが、その時の為にも、今の内に室外で運動する事に慣れておくべき────と、獣人の生活訓練を担当しているバッツからの助言があった。
ラグナとしては、ようやく今の生活にも慣れてきたばかりの兄弟を、次のステップに進めるのは早過ぎはしないか、と思う。
しかし、多くの獣人と接して来たバッツの助言は、的を射ている。
成長してから新しい物事、環境に慣れさせるのは、中々難しい事だと言う。
レオンとスコールが、比較的早い内に今の環境に慣れる事が出来たのは、彼等がまだ幼かったからだ。
多少強引にでも彼等を御する事が出来る内に、その必要がないように教えるのが、保護者の義務だ。
そうしなければ、いずれは彼等が不幸になってしまう。
「────……うん。よし」
悩みに悩んだ末、キロスとウォードからも背を押されて、ラグナはようやく決断した。
幼い獣人の兄弟を、広い世界へと連れ出す事に。
野生育ちの後、ラグナに保護されてからは、移動以外はずっと室内で過ごしていた彼等にとって、都会の景色は見慣れないものばかりだった。
彼等が棲み暮らしていたサバンナには、コンクリートの地面も、レンガ詰みの塀も、何もかもが初めてのもの。
移動の時は必ずラグナに抱えられている───最初の頃は抱き上げられるのも嫌がっていた為、寝ている内にケージに入れて運んでいた───為、自分の足で都会の地面を踏むのも、彼等は初めての事だった。
最近は温かくなっては来たものの、不意打ちのように冷たい風が吹くので、念の為にとレオンとスコールに服を着せて、ラグナは二人を両腕に抱えて外に出た。
外出時は、念の為にサポートとしてキロスとウォードがついている事が多いのだが、今日はそれもない。
兄弟はその事に気付いたらしく、ラグナに抱えられて、きょろきょろと不思議そうな顔で辺りを見回していた。
「取り敢えず、先ずは庭かな」
コンクリートの階段を下りて、ラグナはマンション裏の庭へ向かった。
其処には猫の額程のスペースに、小さな子供が遊べる遊具が備えられている。
休日であればマンションに住んでいる子供が遊び場にしているのだが、平日の昼間は静かなものだ。
地面は砂場を覗いて柔らかな芝で覆われているので、慣れればレオンとスコールにも良い遊び場になるかも知れない。
自分達が知らない場所に連れて行かれる事が判ったのか、腕の中でレオンとスコールが緊張している。
きょろきょろと辺りを見回しながら、毛束を持った尻尾がぴくぴくと動いていた。
そんな二人に、「怖くないからなー」と言い聞かせながら、ラグナは庭の真ん中で足を止める。
「さあ、レオン、スコール。下ろすぞぉ」
「……?」
ラグナの声掛けに、レオンがラグナを見上げて首を傾げる。
ラグナは膝を曲げて、二人の後肢を地面につけてやった。
抱えていた腕を解こうとすると、スコールの前脚が爪を引っ掻けた。
レオンは前脚も地面に下ろして、四足になって辺りを見回す。
「広いだろ。今日は此処で遊んでいいんだぞ」
「……が?」
「最初は、そうだな~……ま、砂場が一番危なくないな」
おいで、と言ってラグナは砂場に向かって歩き出した。
その後をとてとてと四足になったレオンがついて来る────が、スコールが動かない。
「スコール、おいで」
「………」
「スコール」
ラグナが声をかけて呼んでやるが、スコールは石になったように微動だにしなかった。
レオンが弟の様子に気付き、四足でスコールの下へ駆け寄る。
スコールの顔に自分の顔を寄せ、促すようにすりすりと頬を当てるレオンだが、スコールはまだ動こうとしなかった。
そんな弟が放って置けなかったのだろう、レオンは座り込んで動かないスコールの傍らで、ころんと丸くなってしまった。
ラグナはゆっくりと兄弟に近付いて、膝を曲げる。
目線を近くすると、丸くなったレオンが顔を上げた。
スコールはと言うと、普段は細い瞳孔を大きくさせ、尻尾をピクッ、ピクッ、と動かしていた。
「ちょっと怖いか、スコール」
「………」
「レオンも?」
「……がぁう」
黙ったままのスコールと、返事をするように鳴いたレオン。
そうか、とラグナは眉尻を下げ、二匹を抱き上げた。
ラグナは砂場の横に設置された、子供用の低いベンチに腰を下ろし、レオンとスコールを膝に乗せた。
二匹はしっかりとラグナの胸に掴まっている。
スコールは硬直からは解放されたものの、小さな体がぷるぷると震えていた。
レオンは弟程怯えている様子はないが、見慣れない場所には警戒心が先立つのだろう、辺りを伺うようにきょろきょろと辺りを見回している。
虫でもいれば、彼等の興味も動くだろうか。
膝の重みを感じながら、そんな事を考えていると、ふわふわと一匹の蝶が三人の頭上を横切った。
「お?レオン?」
レオンの視線が、頭上を通り過ぎていく蝶を追う。
蝶は庭の端の花壇に身を寄せると、しばらく蜜を吸った後、また飛び立った。
悠々と頭上を横断して行く蝶に、レオンが前肢を伸ばして、手招きするようにぴくぴくと手先を動かす。
ラグナがレオンを抱く腕の力を弱めると、レオンはよじよじとラグナの身体を登り始めた。
肩に昇ったレオンが落ちないように、ラグナはその背を後ろから支えてやる。
一つ高い位置に四足で立って、レオンは身体のバランスを取りながら、そおっと右の前肢を持ち上げた。
距離を測るように、精一杯伸ばした前脚で手招きの仕種を繰り返した後、
「がうっ!」
可愛らしい気合の一声と共に、レオンはラグナの肩を蹴って飛んだ。
宙をかいた前肢の僅か先で、慌てたように、蝶がふらふらとした起動で高く舞う。
一歩惜しい距離で空振りして、レオンは芝の地面に着地した。
「がうぅっ」
もう一回、とレオンが地面を蹴って飛ぶ。
しかし、跳び上がった高さは全く足りず、蝶は悠々と高い位置を飛んでいた。
「がうっ。ぎゃうっ。がうっ」
「頑張るなあ」
「………」
空振りを続けながら、一所懸命にジャンプしては蝶を追うレオン。
その後ろ姿は、獲物を捕らえる為と言うよりも、追いかけっこを楽しんでいるようにも見える。
低い耐性を取りながら、尻尾をピンと上に立て、上機嫌だと言う事も判った。
子猫を見ているものとして考えるなら、狩りの練習をしながら遊んでいると言った所か。
考えてみれば、サバンナにいた頃と違い、食べるものに困る事がないので、切羽詰って獲物を狩る必要はないのだ。
そして、本来ならば───恐らくではあるが───彼等はまだ、親の庇護下にある時期で、狩りも遊びながら学んでいる段階である。
親を失った事から、自らの力で生きる為に、彼等は必死で覚束ない狩りを行っていたのだろう。
ラグナが保護した頃は、こうして遊びで虫を追う余裕もない程、餓えていたに違いない。
ラグナは、膝に乗ったまま、遊ぶ兄を見ているスコールを見下ろした。
じぃっと兄を見詰めるスコールも、本能が疼くのか、兄に触発されたか、むずむずとした様子で蝶を目で追い始めている。
ラグナはそんなスコールの濃茶色の髪をくしゃりと撫でた。
「お前達、大変だったんだなあ」
「……ぐぅ…?」
ラグナの呟きに、スコールがラグナを見上げて、ことんと首を傾げる。
何処か切なそうな翠の瞳に見つめられ、スコールの丸い鼻がふくふくと動く。
スコールはラグナの顔に鼻を寄せ、くんくんと匂いを嗅いだ。
最近、ようやく此処まで顔を近付ける事を許してくれるようになったスコールに、ラグナの眉尻がへにゃりと緩む。
「俺、絶対お前達を幸せにしてやるからなっ」
「ぐぁうっ?がうっ、がううっ」
ラグナは、両腕でぎゅうっとスコールを抱き締めた。
小さな体はすっぽりとラグナの胸の中に包まれる。
自ら近付く事、抱き上げられる事には慣れたスコールだが、どうやらスキンシップは余り好きではないらしい。
スコールは抱き締める腕の中で、じたばたともがいて、ラグナの腕から抜け出そうとしている。
ぎゃうぎゃうと声を大きくし始めた事に気付いて、これはまだ駄目かあ、と少し淋しく思いつつも、引っ掻く事はしないスコールに感謝しつつ、ラグナは腕の力を緩めた。
解けた腕から逃げるように抜け出したスコールは、四足でレオンの下まで走る。
弟がやって来た事に気付いた兄が、ぴんっと尻尾を立たせてスコールを迎えた。
「がう。がぁう」
「くぅうー……」
「がうぅ」
すりすり、すりすりと顔を寄せ合わせる獣人の兄弟に、ラグナの口元が綻ぶ。
レオンが追っていた蝶は、兄弟がじゃれ合っている間に、何処かに行ってしまった。
しかし、兄弟は蝶の事などすっかり忘れ、芝の中でじゃれ合っている。
小さな庭の中で、無邪気に遊び始めた二人の姿に、ラグナはほっと安堵の息を零したのだった。
2月22日でにゃんにゃんにゃんの日。
と言う事でケモレオンとケモスコールをもう一度。ライオンだって猫だよ!
ラグナ(大人)に片腕で抱っこされるサイズのレオンとスコールって可愛いじゃないですか。
設定他前に書いた話は此方。
ラグナが保護した獣人の兄弟は、まだまだ幼い為、単に運動するだけであれば、室内でも十分事足りる。
高さのある丈夫なインテリアを購入したり、本棚を倒れないように固定したりしているので、上下運動も出来るように配慮した。
兄レオンはすっかりその生活に慣れ、中々人馴れしなかったスコールも、生活訓練を経てからは、少しずつ順応しつつある。
しかし、心配事はそれで終わりと言う訳ではなかった。
ライオンモデルの彼等が、将来的にどのように成長するのか───ヒトの特徴が目立つようになるか、動物の生態に近いままか───も、まだ判らない。
それでも、今はヒトの3歳~4歳程度の身長しかない彼等が、大きく成長するのは想像に難くなかった。
元々が大型動物であるライオンモデルである事、彼等の肢が猫の獣人よりも遥かに大きい事が、彼等の将来性を暗示している。
となると、成長に伴い、ストレス発散や日々の生活に必要とされる運動量も増えて行く事が予想される。
個体によって成長速度が大きく異なる為、彼等が何年で大人と呼べる体躯になるかは判らないが、その時の為にも、今の内に室外で運動する事に慣れておくべき────と、獣人の生活訓練を担当しているバッツからの助言があった。
ラグナとしては、ようやく今の生活にも慣れてきたばかりの兄弟を、次のステップに進めるのは早過ぎはしないか、と思う。
しかし、多くの獣人と接して来たバッツの助言は、的を射ている。
成長してから新しい物事、環境に慣れさせるのは、中々難しい事だと言う。
レオンとスコールが、比較的早い内に今の環境に慣れる事が出来たのは、彼等がまだ幼かったからだ。
多少強引にでも彼等を御する事が出来る内に、その必要がないように教えるのが、保護者の義務だ。
そうしなければ、いずれは彼等が不幸になってしまう。
「────……うん。よし」
悩みに悩んだ末、キロスとウォードからも背を押されて、ラグナはようやく決断した。
幼い獣人の兄弟を、広い世界へと連れ出す事に。
野生育ちの後、ラグナに保護されてからは、移動以外はずっと室内で過ごしていた彼等にとって、都会の景色は見慣れないものばかりだった。
彼等が棲み暮らしていたサバンナには、コンクリートの地面も、レンガ詰みの塀も、何もかもが初めてのもの。
移動の時は必ずラグナに抱えられている───最初の頃は抱き上げられるのも嫌がっていた為、寝ている内にケージに入れて運んでいた───為、自分の足で都会の地面を踏むのも、彼等は初めての事だった。
最近は温かくなっては来たものの、不意打ちのように冷たい風が吹くので、念の為にとレオンとスコールに服を着せて、ラグナは二人を両腕に抱えて外に出た。
外出時は、念の為にサポートとしてキロスとウォードがついている事が多いのだが、今日はそれもない。
兄弟はその事に気付いたらしく、ラグナに抱えられて、きょろきょろと不思議そうな顔で辺りを見回していた。
「取り敢えず、先ずは庭かな」
コンクリートの階段を下りて、ラグナはマンション裏の庭へ向かった。
其処には猫の額程のスペースに、小さな子供が遊べる遊具が備えられている。
休日であればマンションに住んでいる子供が遊び場にしているのだが、平日の昼間は静かなものだ。
地面は砂場を覗いて柔らかな芝で覆われているので、慣れればレオンとスコールにも良い遊び場になるかも知れない。
自分達が知らない場所に連れて行かれる事が判ったのか、腕の中でレオンとスコールが緊張している。
きょろきょろと辺りを見回しながら、毛束を持った尻尾がぴくぴくと動いていた。
そんな二人に、「怖くないからなー」と言い聞かせながら、ラグナは庭の真ん中で足を止める。
「さあ、レオン、スコール。下ろすぞぉ」
「……?」
ラグナの声掛けに、レオンがラグナを見上げて首を傾げる。
ラグナは膝を曲げて、二人の後肢を地面につけてやった。
抱えていた腕を解こうとすると、スコールの前脚が爪を引っ掻けた。
レオンは前脚も地面に下ろして、四足になって辺りを見回す。
「広いだろ。今日は此処で遊んでいいんだぞ」
「……が?」
「最初は、そうだな~……ま、砂場が一番危なくないな」
おいで、と言ってラグナは砂場に向かって歩き出した。
その後をとてとてと四足になったレオンがついて来る────が、スコールが動かない。
「スコール、おいで」
「………」
「スコール」
ラグナが声をかけて呼んでやるが、スコールは石になったように微動だにしなかった。
レオンが弟の様子に気付き、四足でスコールの下へ駆け寄る。
スコールの顔に自分の顔を寄せ、促すようにすりすりと頬を当てるレオンだが、スコールはまだ動こうとしなかった。
そんな弟が放って置けなかったのだろう、レオンは座り込んで動かないスコールの傍らで、ころんと丸くなってしまった。
ラグナはゆっくりと兄弟に近付いて、膝を曲げる。
目線を近くすると、丸くなったレオンが顔を上げた。
スコールはと言うと、普段は細い瞳孔を大きくさせ、尻尾をピクッ、ピクッ、と動かしていた。
「ちょっと怖いか、スコール」
「………」
「レオンも?」
「……がぁう」
黙ったままのスコールと、返事をするように鳴いたレオン。
そうか、とラグナは眉尻を下げ、二匹を抱き上げた。
ラグナは砂場の横に設置された、子供用の低いベンチに腰を下ろし、レオンとスコールを膝に乗せた。
二匹はしっかりとラグナの胸に掴まっている。
スコールは硬直からは解放されたものの、小さな体がぷるぷると震えていた。
レオンは弟程怯えている様子はないが、見慣れない場所には警戒心が先立つのだろう、辺りを伺うようにきょろきょろと辺りを見回している。
虫でもいれば、彼等の興味も動くだろうか。
膝の重みを感じながら、そんな事を考えていると、ふわふわと一匹の蝶が三人の頭上を横切った。
「お?レオン?」
レオンの視線が、頭上を通り過ぎていく蝶を追う。
蝶は庭の端の花壇に身を寄せると、しばらく蜜を吸った後、また飛び立った。
悠々と頭上を横断して行く蝶に、レオンが前肢を伸ばして、手招きするようにぴくぴくと手先を動かす。
ラグナがレオンを抱く腕の力を弱めると、レオンはよじよじとラグナの身体を登り始めた。
肩に昇ったレオンが落ちないように、ラグナはその背を後ろから支えてやる。
一つ高い位置に四足で立って、レオンは身体のバランスを取りながら、そおっと右の前肢を持ち上げた。
距離を測るように、精一杯伸ばした前脚で手招きの仕種を繰り返した後、
「がうっ!」
可愛らしい気合の一声と共に、レオンはラグナの肩を蹴って飛んだ。
宙をかいた前肢の僅か先で、慌てたように、蝶がふらふらとした起動で高く舞う。
一歩惜しい距離で空振りして、レオンは芝の地面に着地した。
「がうぅっ」
もう一回、とレオンが地面を蹴って飛ぶ。
しかし、跳び上がった高さは全く足りず、蝶は悠々と高い位置を飛んでいた。
「がうっ。ぎゃうっ。がうっ」
「頑張るなあ」
「………」
空振りを続けながら、一所懸命にジャンプしては蝶を追うレオン。
その後ろ姿は、獲物を捕らえる為と言うよりも、追いかけっこを楽しんでいるようにも見える。
低い耐性を取りながら、尻尾をピンと上に立て、上機嫌だと言う事も判った。
子猫を見ているものとして考えるなら、狩りの練習をしながら遊んでいると言った所か。
考えてみれば、サバンナにいた頃と違い、食べるものに困る事がないので、切羽詰って獲物を狩る必要はないのだ。
そして、本来ならば───恐らくではあるが───彼等はまだ、親の庇護下にある時期で、狩りも遊びながら学んでいる段階である。
親を失った事から、自らの力で生きる為に、彼等は必死で覚束ない狩りを行っていたのだろう。
ラグナが保護した頃は、こうして遊びで虫を追う余裕もない程、餓えていたに違いない。
ラグナは、膝に乗ったまま、遊ぶ兄を見ているスコールを見下ろした。
じぃっと兄を見詰めるスコールも、本能が疼くのか、兄に触発されたか、むずむずとした様子で蝶を目で追い始めている。
ラグナはそんなスコールの濃茶色の髪をくしゃりと撫でた。
「お前達、大変だったんだなあ」
「……ぐぅ…?」
ラグナの呟きに、スコールがラグナを見上げて、ことんと首を傾げる。
何処か切なそうな翠の瞳に見つめられ、スコールの丸い鼻がふくふくと動く。
スコールはラグナの顔に鼻を寄せ、くんくんと匂いを嗅いだ。
最近、ようやく此処まで顔を近付ける事を許してくれるようになったスコールに、ラグナの眉尻がへにゃりと緩む。
「俺、絶対お前達を幸せにしてやるからなっ」
「ぐぁうっ?がうっ、がううっ」
ラグナは、両腕でぎゅうっとスコールを抱き締めた。
小さな体はすっぽりとラグナの胸の中に包まれる。
自ら近付く事、抱き上げられる事には慣れたスコールだが、どうやらスキンシップは余り好きではないらしい。
スコールは抱き締める腕の中で、じたばたともがいて、ラグナの腕から抜け出そうとしている。
ぎゃうぎゃうと声を大きくし始めた事に気付いて、これはまだ駄目かあ、と少し淋しく思いつつも、引っ掻く事はしないスコールに感謝しつつ、ラグナは腕の力を緩めた。
解けた腕から逃げるように抜け出したスコールは、四足でレオンの下まで走る。
弟がやって来た事に気付いた兄が、ぴんっと尻尾を立たせてスコールを迎えた。
「がう。がぁう」
「くぅうー……」
「がうぅ」
すりすり、すりすりと顔を寄せ合わせる獣人の兄弟に、ラグナの口元が綻ぶ。
レオンが追っていた蝶は、兄弟がじゃれ合っている間に、何処かに行ってしまった。
しかし、兄弟は蝶の事などすっかり忘れ、芝の中でじゃれ合っている。
小さな庭の中で、無邪気に遊び始めた二人の姿に、ラグナはほっと安堵の息を零したのだった。
2月22日でにゃんにゃんにゃんの日。
と言う事でケモレオンとケモスコールをもう一度。ライオンだって猫だよ!
ラグナ(大人)に片腕で抱っこされるサイズのレオンとスコールって可愛いじゃないですか。