[フリスコ]その牙で貫いて
- 2018/02/08 22:00
- カテゴリー:FF
ほんのりとR15の気配。
猫のようだとか、犬のようだとか、言われればどちらも当て嵌まるようで、どちらも違う気がする。
しかし、全くの的外れかと言われればそうではなく、部分的に言えばその通りだとも言える所もあった。
他にも、その猪突猛進ぶりから、文字通り猪であるとか、案外と器用な手捌きから、狐のようとも。
そこそこ体格が大きい方なのに、人懐こい表情や、相手を怯えさせないように気を回す余裕がある所は、草食動物のようにも思える。
かとも思えば、敵を前にした時の眼光は、猛獣か猛禽類にも通ずる。
早い話が、“獣”らしいのだ。
全てをひっくるめて、そう言う事なのだろうとスコールは思う。
平時のフリオニールを例えるなら、大型犬が一番近いのではないだろうか。
ちょこまかと忙しなく動き回るティーダを相手に、一緒にはしゃいだり宥めたりしている姿は、スコールにはそのように映る。
ティーダが調子に乗り過ぎると諫める事もあるが、存外と激情家な所もあるので、二人揃ってヒートアップする事も少なくない。
フリオニールは、良くも悪くも感情に正直だから、その波長がティーダと重なると、自分達では止められなくなってしまう。
そう言う時はセシルかクラウドの出番で、彼等が二人をそれぞれ止める重石となっていた。
叱られると判り易くしゅんとし、素直に詫びており、許して貰えれば嬉しそうに笑うので、スコールはそんなフリオニールにぶんぶんと振られる尻尾を見たような気がした。
食事当番の時、摘まみ食いを狙う賑やか組を相手に、わあわあと忙しなくしている時がある。
こう言う時、何に似ていると言う事は特にないのだが、一切無視をせずに逐一相手をしている辺り、彼は本当に面倒見が良い、と思った。
落ち着きのない子供を甲斐甲斐しく世話する動物の親────そんなイメージが沸く。
別に動物と喩える必要もないが、なんとなくスコールは、キッチンの前で騒がしくしている彼等を見ると、そう言うイメージが浮かぶのである。
戦闘に備え、獲物を研いでいる時の彼の目は、いつも真剣だ。
砥石で剣を一研ぎ一研ぎ、弓の弦の具合を確かめては何度も引いて強さを確かめる。
その様子は、己の武器を鋭く保つ事に余念のない、肉食獣に似ている。
丹念に整えたそれを手に握り、突き立てられる悪意を切り裂く時、赤い瞳は黄金の光を帯びて、敵の首を食い千切らんと吼える。
そんな青年の貌は、最早動物等と言う可愛らしい表現は似つかわしくない。
牙、爪を、本能を剥き出しにし、己が生きる為に全てを食らいつくす“獣”と呼ぶのが相応しい。
スコールは、フリオニールの“獣”の眼が好きだ。
元より嘘を知らないと言っても良いようなフリオニールが、下手な隠し事も忘れ、何もかもを曝け出しているように見えるのが良い。
その赤い眸に真っ直ぐに射抜かれ、剥き出しの牙が、爪が、喉に食い込むのを想像する。
笑うフリオニールの口の中に、微かに尖る八重歯を見付けて、あれが肌を食い破る事を考えたら、背中が熱くなった。
カニバリズムに興奮する性質ではないし、そうして欲しいと言う被虐性も持ってはいないが、それでも想像は止まらない。
食べられたい。
あの狂暴な瞳を見ながら、骨まで全部、食べられたい。
そんな風に思うようになったのは、いつからだろう。
恐らく、それが恋慕に通すると悟るまでには、随分と長い時間がかかった。
初めの頃は、何かと戸惑っていたように思う。
肌を重ね合う事は勿論だが、同衾する事にも彼は随分と長い照れがあった。
それはスコールも同じなのだが、腹を括るのはスコールの方が早かった筈だ。
何せ、最初の夜、主導権を取ったのはスコールの方であったから。
スコールとて初めての事だったから、何をどうすれば良いのか、知識はなんとなくあっても、それを実行に移すには色々と躊躇いがあった。
フリオニールの方はさっぱりと言って良かったから、とにかくスコールが促す指示に合わせるのが精一杯。
その日は無理をした所為で、スコールは若干トラウマにもなりかけたのだが、次からフリオニールが出来る限り気遣ってくれるようになったので、その後は───なんとか───恙無く済んだ。
二回目にフリオニールが少なからず気遣ってくれた事が功を奏し、少しずつ主導権はスコールからフリオニールへと委託された。
スコール一人では、羞恥心や必要以上の我慢で強引に推し進めてしまう所を、フリオニールがリードを持つ事で、その負担を軽減させる事が出来るようになった。
時折、気遣いが度を過ぎてスコールを怒らせる事もあるが、それはそれだ。
繋がり合えば後は段々と熱に押し流されて行き、どちらともなく果てるまで、熱の交わりは続く。
最後の熱を吐き出してから、二人の呼吸が溶け合うように重なり、無音の部屋に反響していた。
はー、はー、と耳元を擽るフリオニールの吐息に、スコールはぞくぞくとしたものが首筋を奔るのを感じる。
背中に回した腕はしばらく強張っていたが、呼吸が少しずつ小さくなって行くにつれて、力も抜けた。
ぱた、とスコールの腕が投げ出されるようにシーツに沈んだ後、きしり、とベッドの軋む音が鳴る。
「…スコール。大丈夫か?」
「……ん……」
心配そうに名を呼ぶ声に、スコールは意識半分に頷いた。
中に埋まっていたものがゆっくりと抜けて行く感触に、びくっ、と腰が震える。
ともすれば締め付けそうになるそれを、スコールは意識して深呼吸を続ける事で、体の強張りを解すように努めた。
すぐ隣で、疲れ切ったフリオニールがベッドに沈む。
スコールは違和感の残る下腹部を擦り合わせて誤魔化しながら、寝返りを打った。
仰向けになっているフリオニールの体に身を寄せると、フリオニールがくすぐったそうに笑う。
「辛い所ないか?スコール」
「……腰」
「それは、まあ、はは……」
ごめん、と小さな声で詫びながら、フリオニールは眉尻を下げた。
弱り切った表情を浮かべて見せるフリオニールに、本当にギャップの激しい奴だ、とスコールは思う。
つい先程まで、自分に覆い被さっていた時には、雄そのものように猛々しかったと言うのに、赤い瞳は今は丸っこい。
戦闘中にも見られる変貌振りは、何度見ても、まるで人格そのものが何かと交代しているのではないかとすら思えた。
フリオニールは一心地つくと、スコールの背に腕を回して抱き締めた。
しっかりとした腕がスコールの脇や背中に触れていて、スコールが己とは全く違うその逞しさにこっそりと唇を尖らせていると、
「はあ……温かいな、スコールは」
安堵のように一つ息を吐いて、フリオニールは呟いた。
ぎゅう、と抱き寄せられ、肩口に埋められるフリオニールの顔。
スコールは、肩を擽るフリオニールの呼吸にむず痒さを感じつつ、
「温かいのはあんただろう。あんたの方が体温が高い」
「そうか?俺には、スコールの方が凄く温かく感じられるけど。ずっとこうしていたい位だ」
笑って言うフリオニールの言葉に、嘘はない。
彼は世辞を言える人間ではないから、口にする言葉は本心からのものだ。
それにしても、ずっとこうしていたい、とは。
こう、とは。
背中に肌に触れて感じる腕や、重なり合った胸の奥から聞こえる鼓動を意識して、スコールの顔に朱が昇る。
「あんた、よくもそんな…恥ずかしい事言えるな……」
「ん?」
恥ずかしいって何が、と首を傾げるフリオニールに、スコールは口を噤む。
きょとんとした顔で見詰められるのを感じて、スコールは視線だけで背中へと伸びるフリオニールの腕を見た。
赤い瞳が蒼の視線を追って滑り、それが白い肌に重ねられた褐色の腕を見付けた瞬間、はた、と見開かれる。
“こう”と言う状態が今の状態を指している───裸で抱き合い、体温を重ね合わせている状態である事にようやく気付いて、フリオニールの顔も真っ赤になった。
「あ…!い、いや、別にこう言う事じゃなくて、」
「………」
「わっ……!ス、スコール……!」
弁明するように慌てて離れようとしたフリオニールを、スコールは抱き着いて留めた。
スコールの方から首に腕を回し、密着する体勢に、フリオニールの声が上擦る。
重ねた胸の奥から、鼓動が早鐘を打っているのが伝わった。
薄らと濡れた蒼灰色の瞳が、フリオニールの顔を至近距離で捉えていた。
まだ熱の名残を残す瞳に見詰められ、ごくり、とフリオニールの喉が鳴った。
その喉に誘われるようにスコールの唇が寄せられ、浮かぶ喉仏に柔らかな感触が押し付けられると、フリオニールの熱もまた、再び呼び覚まされる。
「スコー、ル、」
つい先程までの情交も、決して穏やかとは言えないものだった。
思いを重ね合わせているのだから、スコールとてそれを受け止めるのは決して吝かではないのだが、フリオニールは出来ればスコールに強い負担は強いたくないらしい。
大切に思うからこそ、時にはスコールを怒らせる位に気遣っているのだと、スコールも判っていた。
しかし、良くも悪くも自分の正直で、熱くなるほどに自制を忘れるフリオニールの性格は、こうした場面でも露呈する。
いや、こうした場面であるからこそ、尚の事制御が難しくなるのかも知れない。
スコールはゆっくりとフリオニールの喉に舌を這わせ、唇を当てて吸い付つくと、赤い痕を残る。
見付かるか、と思ったが、スコールは深く気に留めない事にした。
理性の強い平時であれば、こう言う所は駄目だ、とスコールも思ったのだろうが、今は頭の中が茹った様に歯止めが利かない。
残った赤い花を見ていると、知らず唇の端が上がって、スコールは嬉しそうにフリオニールの首を見詰めていた。
「フリオ」
「……!」
たった三文字の名を呼ぶ声に滲むものを、フリオニールは確かに感じ取った。
スコールの背中を抱いていた腕を滑らせて、片腕で細い腰を抱きながら、片手はスコールの後頭部へ添えられる。
上向くように促せばスコールは素直に従い、誘われるように唇を重ね合った。
フリオニールに舌がスコールの唇を擽り、隙間を割って、中へと侵入する。
ふ、と鼻にかかった吐息と声がスコールから漏れて、フリオニールの首に絡む腕に力が籠った。
もっと、と強請るように身を寄せるスコールに応える形で、フリオニールはスコールの舌を絡め取り、唾液を交換し合う。
「ん…ん……っ」
「ふ……っ」
ちゅく、ちゅく、と耳の奥で音がする。
その音が、スコールの耳を犯し、フリオニールの脳を融かして行く。
フリオニールは、自身の体の上に覆い被さるように身を寄せていたスコールを抱いて、体を反転させた。
スコールの体がベッドに沈み、フリオニールがその体を世界から隠すように覆い被さる。
スコールの爪先が衣擦れの音を鳴らしながら寄せられ、フリオニールの腰に絡み付いた。
「スコール……もう一回……」
良いか、と問う瞳に、仲間達に初心さを揶揄われている時のような恥じらいはない。
見下ろす赤い瞳は、組み敷いた獲物に一秒でも早く食らい付こうとしている。
駄目だと言えば、きっとフリオニールは思い止まるのだろう。
進めて良いかと問う間は、彼の理性はまだ形を残しているから、スコールがそれを操縦する事は出来る。
傷付けたくないと、大切にしたいと言うフリオニールの声も嬉しい。
しかし、スコールは覆い被さる彼を退けようとはしないし、寧ろこうなるように手綱を引いたのはスコールの方である。
いっその事、良いかどうかを聞く事もせず、噛み付いて来てくれても構わないとさえ思う。
そんな気持ちが促すままに、スコールはフリオニールの耳元で、そっと彼の名を呼んだ。
「フリオニール」
食べてくれ、と。
名を呼ぶ声に込められた願いを、フリオニールも本能で感じ取る事が出来るだろう。
躊躇いを捨てて覆い被さる重みに、スコールはうっそりと笑みを浮かべて身を委ねた。
フリオニールのギャップを書いてみたかった、筈。
穏やかなフリオニールの事も好きだけど、本能剥き出しで求められるのが好きなスコール。
スコールを大事にしたい気持ちは本当だけど、煽られると我慢できないフリオニール。
そんなフリスコ。
猫のようだとか、犬のようだとか、言われればどちらも当て嵌まるようで、どちらも違う気がする。
しかし、全くの的外れかと言われればそうではなく、部分的に言えばその通りだとも言える所もあった。
他にも、その猪突猛進ぶりから、文字通り猪であるとか、案外と器用な手捌きから、狐のようとも。
そこそこ体格が大きい方なのに、人懐こい表情や、相手を怯えさせないように気を回す余裕がある所は、草食動物のようにも思える。
かとも思えば、敵を前にした時の眼光は、猛獣か猛禽類にも通ずる。
早い話が、“獣”らしいのだ。
全てをひっくるめて、そう言う事なのだろうとスコールは思う。
平時のフリオニールを例えるなら、大型犬が一番近いのではないだろうか。
ちょこまかと忙しなく動き回るティーダを相手に、一緒にはしゃいだり宥めたりしている姿は、スコールにはそのように映る。
ティーダが調子に乗り過ぎると諫める事もあるが、存外と激情家な所もあるので、二人揃ってヒートアップする事も少なくない。
フリオニールは、良くも悪くも感情に正直だから、その波長がティーダと重なると、自分達では止められなくなってしまう。
そう言う時はセシルかクラウドの出番で、彼等が二人をそれぞれ止める重石となっていた。
叱られると判り易くしゅんとし、素直に詫びており、許して貰えれば嬉しそうに笑うので、スコールはそんなフリオニールにぶんぶんと振られる尻尾を見たような気がした。
食事当番の時、摘まみ食いを狙う賑やか組を相手に、わあわあと忙しなくしている時がある。
こう言う時、何に似ていると言う事は特にないのだが、一切無視をせずに逐一相手をしている辺り、彼は本当に面倒見が良い、と思った。
落ち着きのない子供を甲斐甲斐しく世話する動物の親────そんなイメージが沸く。
別に動物と喩える必要もないが、なんとなくスコールは、キッチンの前で騒がしくしている彼等を見ると、そう言うイメージが浮かぶのである。
戦闘に備え、獲物を研いでいる時の彼の目は、いつも真剣だ。
砥石で剣を一研ぎ一研ぎ、弓の弦の具合を確かめては何度も引いて強さを確かめる。
その様子は、己の武器を鋭く保つ事に余念のない、肉食獣に似ている。
丹念に整えたそれを手に握り、突き立てられる悪意を切り裂く時、赤い瞳は黄金の光を帯びて、敵の首を食い千切らんと吼える。
そんな青年の貌は、最早動物等と言う可愛らしい表現は似つかわしくない。
牙、爪を、本能を剥き出しにし、己が生きる為に全てを食らいつくす“獣”と呼ぶのが相応しい。
スコールは、フリオニールの“獣”の眼が好きだ。
元より嘘を知らないと言っても良いようなフリオニールが、下手な隠し事も忘れ、何もかもを曝け出しているように見えるのが良い。
その赤い眸に真っ直ぐに射抜かれ、剥き出しの牙が、爪が、喉に食い込むのを想像する。
笑うフリオニールの口の中に、微かに尖る八重歯を見付けて、あれが肌を食い破る事を考えたら、背中が熱くなった。
カニバリズムに興奮する性質ではないし、そうして欲しいと言う被虐性も持ってはいないが、それでも想像は止まらない。
食べられたい。
あの狂暴な瞳を見ながら、骨まで全部、食べられたい。
そんな風に思うようになったのは、いつからだろう。
恐らく、それが恋慕に通すると悟るまでには、随分と長い時間がかかった。
初めの頃は、何かと戸惑っていたように思う。
肌を重ね合う事は勿論だが、同衾する事にも彼は随分と長い照れがあった。
それはスコールも同じなのだが、腹を括るのはスコールの方が早かった筈だ。
何せ、最初の夜、主導権を取ったのはスコールの方であったから。
スコールとて初めての事だったから、何をどうすれば良いのか、知識はなんとなくあっても、それを実行に移すには色々と躊躇いがあった。
フリオニールの方はさっぱりと言って良かったから、とにかくスコールが促す指示に合わせるのが精一杯。
その日は無理をした所為で、スコールは若干トラウマにもなりかけたのだが、次からフリオニールが出来る限り気遣ってくれるようになったので、その後は───なんとか───恙無く済んだ。
二回目にフリオニールが少なからず気遣ってくれた事が功を奏し、少しずつ主導権はスコールからフリオニールへと委託された。
スコール一人では、羞恥心や必要以上の我慢で強引に推し進めてしまう所を、フリオニールがリードを持つ事で、その負担を軽減させる事が出来るようになった。
時折、気遣いが度を過ぎてスコールを怒らせる事もあるが、それはそれだ。
繋がり合えば後は段々と熱に押し流されて行き、どちらともなく果てるまで、熱の交わりは続く。
最後の熱を吐き出してから、二人の呼吸が溶け合うように重なり、無音の部屋に反響していた。
はー、はー、と耳元を擽るフリオニールの吐息に、スコールはぞくぞくとしたものが首筋を奔るのを感じる。
背中に回した腕はしばらく強張っていたが、呼吸が少しずつ小さくなって行くにつれて、力も抜けた。
ぱた、とスコールの腕が投げ出されるようにシーツに沈んだ後、きしり、とベッドの軋む音が鳴る。
「…スコール。大丈夫か?」
「……ん……」
心配そうに名を呼ぶ声に、スコールは意識半分に頷いた。
中に埋まっていたものがゆっくりと抜けて行く感触に、びくっ、と腰が震える。
ともすれば締め付けそうになるそれを、スコールは意識して深呼吸を続ける事で、体の強張りを解すように努めた。
すぐ隣で、疲れ切ったフリオニールがベッドに沈む。
スコールは違和感の残る下腹部を擦り合わせて誤魔化しながら、寝返りを打った。
仰向けになっているフリオニールの体に身を寄せると、フリオニールがくすぐったそうに笑う。
「辛い所ないか?スコール」
「……腰」
「それは、まあ、はは……」
ごめん、と小さな声で詫びながら、フリオニールは眉尻を下げた。
弱り切った表情を浮かべて見せるフリオニールに、本当にギャップの激しい奴だ、とスコールは思う。
つい先程まで、自分に覆い被さっていた時には、雄そのものように猛々しかったと言うのに、赤い瞳は今は丸っこい。
戦闘中にも見られる変貌振りは、何度見ても、まるで人格そのものが何かと交代しているのではないかとすら思えた。
フリオニールは一心地つくと、スコールの背に腕を回して抱き締めた。
しっかりとした腕がスコールの脇や背中に触れていて、スコールが己とは全く違うその逞しさにこっそりと唇を尖らせていると、
「はあ……温かいな、スコールは」
安堵のように一つ息を吐いて、フリオニールは呟いた。
ぎゅう、と抱き寄せられ、肩口に埋められるフリオニールの顔。
スコールは、肩を擽るフリオニールの呼吸にむず痒さを感じつつ、
「温かいのはあんただろう。あんたの方が体温が高い」
「そうか?俺には、スコールの方が凄く温かく感じられるけど。ずっとこうしていたい位だ」
笑って言うフリオニールの言葉に、嘘はない。
彼は世辞を言える人間ではないから、口にする言葉は本心からのものだ。
それにしても、ずっとこうしていたい、とは。
こう、とは。
背中に肌に触れて感じる腕や、重なり合った胸の奥から聞こえる鼓動を意識して、スコールの顔に朱が昇る。
「あんた、よくもそんな…恥ずかしい事言えるな……」
「ん?」
恥ずかしいって何が、と首を傾げるフリオニールに、スコールは口を噤む。
きょとんとした顔で見詰められるのを感じて、スコールは視線だけで背中へと伸びるフリオニールの腕を見た。
赤い瞳が蒼の視線を追って滑り、それが白い肌に重ねられた褐色の腕を見付けた瞬間、はた、と見開かれる。
“こう”と言う状態が今の状態を指している───裸で抱き合い、体温を重ね合わせている状態である事にようやく気付いて、フリオニールの顔も真っ赤になった。
「あ…!い、いや、別にこう言う事じゃなくて、」
「………」
「わっ……!ス、スコール……!」
弁明するように慌てて離れようとしたフリオニールを、スコールは抱き着いて留めた。
スコールの方から首に腕を回し、密着する体勢に、フリオニールの声が上擦る。
重ねた胸の奥から、鼓動が早鐘を打っているのが伝わった。
薄らと濡れた蒼灰色の瞳が、フリオニールの顔を至近距離で捉えていた。
まだ熱の名残を残す瞳に見詰められ、ごくり、とフリオニールの喉が鳴った。
その喉に誘われるようにスコールの唇が寄せられ、浮かぶ喉仏に柔らかな感触が押し付けられると、フリオニールの熱もまた、再び呼び覚まされる。
「スコー、ル、」
つい先程までの情交も、決して穏やかとは言えないものだった。
思いを重ね合わせているのだから、スコールとてそれを受け止めるのは決して吝かではないのだが、フリオニールは出来ればスコールに強い負担は強いたくないらしい。
大切に思うからこそ、時にはスコールを怒らせる位に気遣っているのだと、スコールも判っていた。
しかし、良くも悪くも自分の正直で、熱くなるほどに自制を忘れるフリオニールの性格は、こうした場面でも露呈する。
いや、こうした場面であるからこそ、尚の事制御が難しくなるのかも知れない。
スコールはゆっくりとフリオニールの喉に舌を這わせ、唇を当てて吸い付つくと、赤い痕を残る。
見付かるか、と思ったが、スコールは深く気に留めない事にした。
理性の強い平時であれば、こう言う所は駄目だ、とスコールも思ったのだろうが、今は頭の中が茹った様に歯止めが利かない。
残った赤い花を見ていると、知らず唇の端が上がって、スコールは嬉しそうにフリオニールの首を見詰めていた。
「フリオ」
「……!」
たった三文字の名を呼ぶ声に滲むものを、フリオニールは確かに感じ取った。
スコールの背中を抱いていた腕を滑らせて、片腕で細い腰を抱きながら、片手はスコールの後頭部へ添えられる。
上向くように促せばスコールは素直に従い、誘われるように唇を重ね合った。
フリオニールに舌がスコールの唇を擽り、隙間を割って、中へと侵入する。
ふ、と鼻にかかった吐息と声がスコールから漏れて、フリオニールの首に絡む腕に力が籠った。
もっと、と強請るように身を寄せるスコールに応える形で、フリオニールはスコールの舌を絡め取り、唾液を交換し合う。
「ん…ん……っ」
「ふ……っ」
ちゅく、ちゅく、と耳の奥で音がする。
その音が、スコールの耳を犯し、フリオニールの脳を融かして行く。
フリオニールは、自身の体の上に覆い被さるように身を寄せていたスコールを抱いて、体を反転させた。
スコールの体がベッドに沈み、フリオニールがその体を世界から隠すように覆い被さる。
スコールの爪先が衣擦れの音を鳴らしながら寄せられ、フリオニールの腰に絡み付いた。
「スコール……もう一回……」
良いか、と問う瞳に、仲間達に初心さを揶揄われている時のような恥じらいはない。
見下ろす赤い瞳は、組み敷いた獲物に一秒でも早く食らい付こうとしている。
駄目だと言えば、きっとフリオニールは思い止まるのだろう。
進めて良いかと問う間は、彼の理性はまだ形を残しているから、スコールがそれを操縦する事は出来る。
傷付けたくないと、大切にしたいと言うフリオニールの声も嬉しい。
しかし、スコールは覆い被さる彼を退けようとはしないし、寧ろこうなるように手綱を引いたのはスコールの方である。
いっその事、良いかどうかを聞く事もせず、噛み付いて来てくれても構わないとさえ思う。
そんな気持ちが促すままに、スコールはフリオニールの耳元で、そっと彼の名を呼んだ。
「フリオニール」
食べてくれ、と。
名を呼ぶ声に込められた願いを、フリオニールも本能で感じ取る事が出来るだろう。
躊躇いを捨てて覆い被さる重みに、スコールはうっそりと笑みを浮かべて身を委ねた。
フリオニールのギャップを書いてみたかった、筈。
穏やかなフリオニールの事も好きだけど、本能剥き出しで求められるのが好きなスコール。
スコールを大事にしたい気持ちは本当だけど、煽られると我慢できないフリオニール。
そんなフリスコ。