[ウォルスコ]惑い子の聲
- 2020/08/08 22:05
- カテゴリー:FF
ウォーリアの学校には、個性豊かな生徒が多くいる。
そういった生徒の評価は、教師の好みもあって、良くも悪くも分かれている事が多いのだが、今年時期外れの転校でやってきた少年───スコール・レオンハートは、どの教師も扱い兼ねている所があった。
彼が転校してきたのは、所謂家庭の事情と言うものであった。
詳しい事は私事であるので知っている者はおらず、教員が本人に訊ねても、彼自身が口を開かない。
ただ黙っているだけなら、転校したてで戸惑いもあるのだろう、と言う話で多くは流すものであったが、向き合った時、稀有な蒼灰色の瞳から、明らかに不信感を向けて来るのが、大人達には聊か苦しいものがあった。
どんなに朗らかに声をかけても、優しく話しかけても、その眼に宿る翳は濃く、まるで見えない胎の中を探ろうとしているかのよう。
そうした印象は強ち間違いではなく、彼は大人を信用していないのだと、教員たちの間で認識が広まるまでそう時間はかからなかった。
多感な時期と言われ易い年頃である。
大人への不信感というものは、子供が子供である事を辞めるに当たり、辿るプロセスの一つでもあった。
故にこの年頃の若者が、大人に対し、漠然とした不信感や猜疑心を持つのは珍しい事ではない。
代わりに横の繋がり───同年代の少年少女達でそれぞれグループを作り、大人の介入を排除したがる傾向も多い。
だから教師に対する態度に大なり小なりの問題はあれども、友人知人と言うものを作り、環境に馴染もうとする努力をしているようであれば、大人達も一歩引いた位置から見守れば済む話ではあった。
何よりスコールは、大人を信じていないからと、大人をターゲットにした嫌がらせや問題行動を起こすタイプではない。
授業態度は至って真面目だし、課題も送れず提出し、テストの成績は最良と、“優等生”と言って差し支えない程であった。
だが、彼は同年代の少年処女と繋がりを持つ事を拒絶していた。
時期外れの転校生とあって、初めは多くの生徒に囲まれていたが、それも長くは続かない。
元々が寡黙な性質でもあるようだが、投げかけられる質問にも余り応えないので、好奇心を満たしたくて彼に近付いていた生徒達は、遠からず飽きて話しかけることを辞めた。
見目に惹かれて声をかける女子生徒の姿はしばらく続いたが、彼自身がそう言った絡まれ方を好んでいない所もあるようで、勇気を出して告白した者が辛辣な言葉で振られたと、実しやかに囁かれるようになってから、それらの姿も途絶えるようになった。
次に、女子生徒からのモテぶりが気に入らなかったのであろう、一部の男子不良グループに目をつけられたと言う話もあったが、此方もまたいつの間にか途絶えていた。
その裏で、彼が返り討ちにしたとか、某自由業と繋がりがあるとか囁かれていたが、これらの噂は出所もはっきりしていない。
ただ、そう言う噂が囁かれるようになってから、彼が益々孤立して行ったのは事実であった。
ウォーリアは二年生に担当クラスを持ち、同時に生徒指導全般を受け持っている。
その為、校内で問題児と言われる生徒の情報については、ウォーリアの望む望まないに関わらず寄せられる事が多い為、詳しい方だと言えるだろう。
しかし、そんなウォーリアでも、スコールに関して知っている事は、他の者達と大差ない。
これはスコールが誰とも交友関係を持たず、自身の事を他者に説明する事がない為だ。
彼の家庭事情についても同様で、スコールが父子暮らしをしており、父親が多忙で不在勝ちである、と言う以上の事は知らない。
それでも、スコールが優等生である事は確かだった。
授業態度は勿論の事、誰かを苛めたり貶したりする事はなく、ただただ、誰とも繋がりを持とうとしないだけ。
ウォーリアの受け持ちではない事もあり、彼に関しては悪い噂がない───妙なものはあるが───事から、悪い子ではないのだろうと思うのが精いっぱいだった。
だから、夜遅い繁華街の近くで、その姿を見付けた時には驚いた。
それも、明らかに知人とは思えない、判り易い軽い風体の男達に絡まれている所を。
「いつもこの辺にいるじゃん、暇してんだろ?」
「カラオケでも行こうぜ。奢るからさぁ」
大学生だろうか、明らかに下心を匂わせる誘い文句を並べる男達。
テナントビルの閉まったシャッターに寄り掛かっているスコールは、そんな男達に囲まれている。
無遠慮に顔を近付けて来る男達を見る蒼色は、判り易く不快感を映していたが、絡む者達は気にしなかった。
それ所か、男の一人がスコールの肩に腕を回し、行こうぜ、と強引に攫おうとする。
スコールがどう言う事情でこんな場所にいるかは判らないが、ともかく放って置いて良い場面ではない。
それは生徒指導と言う立場にあるウォーリアの責任感でもあったが、それでなくとも、この状況を放置するのは大人としてあってはならない事だと思った。
「スコール」
「あん?」
「……!」
名を呼べば少年が足を止め、同時に男達も振り返る。
口にピアスをした男が、ウォーリアを見て、判り易く面倒臭がる顔をしてみせた。
同時にスコールも、驚いたように目を瞠る。
クラス担任ではないが、一応、ウォーリアの事を知ってくれてはいるようだ。
「その子は私の学校の生徒だ。君達は、彼の知り合いか?」
「あ?あー、うん、そうそう。なぁ?」
「………」
ウォーリアが問えば、男はへらへらと笑いながら適当に返してきた。
それから同意を求めてスコールに話しかけるが、スコールは黙したまま答えない。
少年のそんな態度に、自分達の目的に関して当てが外れたと察したか、目の前にいる教師と思しき男に疑われるのを面倒と思ったか、とにかく割が合わない事は察したようで、「チッ」と舌打ちして、スコールの肩を抱いた腕が離れる。
判り易く機嫌を損ね、男達は品のない罵倒を並べながら、遠ざかって行く。
スコールはそれを何とも言えない表情で見詰めていた。
「スコール」
「……」
名前を呼ぶと、整った顔立ちが振り返る。
ウォーリアよりも僅かに低い位置にある瞳が、不信感を滲ませて此方を見上げた。
「こんな所で何をしている?この辺りは余り治安が良くない。早めに家に帰りなさい」
「………」
定型に則る形で注意をすると、スコールは俯いて唇を噛んだ。
それが、何かを言おうとして、それを堪えているように見えて、ウォーリアは僅かに眉を顰める。
ウォーリアは、改めてスコールの様子を観察してみた。
学校指定の制服ではなく、黒のジャケットと白のシャツ、ボトムもダーク系で固めた私服。
少し大人びた雰囲気の所為か、一見して高校生とは判らないかも知れない。
長い前髪で隠れがちの蒼灰色の瞳は、常に揺らぎを映しており、ウォーリアは、学校で見ている時の彼よりも、酷く危なげな匂いを感じていた。
じっと見つめるウォーリアの視線を厭ったか、スコールはくるりと背を向けた。
すたすたと歩きだす背中を目で追っていると、スコールはビルとビルの間にある細道に入って行く。
しばらくその細道の影を見ていたウォーリアだったが、まさか、と思って近付き、ビルの角陰から道を覗き込んでみると、曲がって直ぐ其処でスコールは地面にしゃがみ込んでいた。
「……スコール・レオンハート」
「……」
名前を呼ぶが、スコールは反応しなかった。
拒否するように背中を丸め、抱えた膝に額を押し付けている姿に、ウォーリアはこっそりと溜息を吐く。
やはり、放って置く訳にはいかない。
ウォーリアはスコールの前に来ると、膝を折って、伏された顔を覗き込んだ。
気配を感じるのか、スコールは膝を抱える腕に力を込めて、貝のように縮こまる。
「何か、家に帰りたくない事情でも?」
「……」
「ご家族が心配しているのではないのか?」
「……」
尋ねてから、黙するスコールを見て、ああそうだ、と遅蒔きに思い出す。
スコールの家は父子家庭で、その父親は多忙で滅多に家にはいないのだと、スコールの担任教師から聞いた。
緊急連絡先として電話番号を提出されているので、連絡が全く取れない訳ではない筈だが、息子の夜歩きを抑制できる環境でないのは確かなのだろう。
どうしたものか、とウォーリアは考えた末に、一先ず明るい場所に連れ出そうと思い至る。
丁度、道を戻って直ぐの場所に、深夜まで営業しているファミレスがあった。
「スコール。少し移動しないか」
「……」
「君が嫌がる事はしない。ただ、此処は───良くない人間も少なからずいる。また絡まれるのも面倒だろう」
「……」
蒼い瞳が、じわりとウォーリアを覗き見る。
あんたの方が面倒臭い、と言う声を聞いた気がしたが、ウォーリアは無視した。
そうしなければ、スコールを此処から動かす事は出来ない。
振り払われるかとも思ったが、そっと膝を抱えた腕に触れると、意外にもスコールは抵抗しなかった。
少し引く腕から逃げたがる様子はあったものの、そのままウォーリアが静止すると、膠着状態が長引くだけと悟ったのか、のろのろと体を起こす。
その気になればスコールが振り解けるように、繋いだ手は優しく握るだけに努める。
甲斐はあったか、スコールはファミレスに入るまで、ウォーリアの元から逃げる事はしなかった。
適当なテーブルに向かい合う形で座り、コーヒー一杯と、ホットココアを注文すると、程無く届けられた。
取り敢えず、飲みなさい、と言うと、スコールは訝しむ顔でウォーリアを見詰めた後、渋々と言う様子でココアに口をつけ、
「………甘……」
零れた声に判り易く不満が乗っていた。
好きではなかったか、とウォーリアは目を閉じ、
「すまない。コーヒーの方が良かっただろうか」
「……これよりは」
「では交換しよう。私はまだ口をつけていないから」
そう言ってウォーリアは、スコールの手元のコーヒーカップをスコールの前へと差し出した。
スコールはまた訝しむ顔をして、ココアとコーヒーを交互に見る。
それから、恐る恐ると言う様子でコーヒーに手を伸ばし、代わりにココアを差し出す。
では、とウォーリアがココアを受け取り、口に運んでみると、成程確かに甘かった。
滅多に口にしない甘さを口に運びつつ、ちらりと少年を見遣れば、彼はコーヒーを一口含んで、ほうっと息を吐く。
詰め込んでいたものが僅かに解された、そんな表情だった。
その表情を、きっとまた強張らせてしまうだろうと思いつつ、しかし此処までしておいて踏み込まない訳にもいかないと、ウォーリアは口火を切った。
「スコール。君は此処で何をしている?」
「……」
案の定、スコールの表情がまた翳を帯びる。
蒼い瞳がウォーリアから逸らされて、夜の街を映し出す窓を見詰め、
「……暇潰し」
「日のある内なら問題ないが、この時間まで歩き回るのは感心できない」
「……」
判ってる、と言いたげに蒼灰色が細められた。
やはり愚鈍な子ではないのだと、ウォーリアも理解する。
なればこそ、やはり、スコールが夜の街にいた事には、某かの理由が存在するのだろう。
「君の事だ。きっと何か事情があるのだろうと思う」
「……」
「良ければ聞かせてくれないか。私でできる事なら、君の力になろう」
「………」
ウォーリアが言うと、蒼の瞳が此方を見る────いや、睨んだ。
その瞳から、“嘘吐き”と言う声を聞いた気がして、ずきりとウォーリアの胸の奥が傷む。
生徒指導と言う立場になってから、様々な生徒の内情に踏み込む事も経験した。
不良と呼ばれ、遠巻きに敬遠される生徒が、酷く荒れた家庭に育ち、身を守る為に悪い行いに手を染める事もあると知った。
友人と思っていた者に裏切られて傷付いた者や、面白半分に苛められ、助けを求めても誰も手を差し伸べてくれないと泣いた者もいた。
……今ウォーリアを見ているのは、そう言う生徒達と同じ、傷付き続けて疲れ切った者の眼だ。
だからこそ此処で彼を捨ててはいけないと、ウォーリアは真っ直ぐに睨む蒼を見詰め返す。
その強い瞳に圧されたか、抵抗するのが面倒になったか、スコールは一つ溜息を吐いて、
「……家にいたくない」
「理由を聞いても良いか」
「……あそこは、俺の家じゃないから」
そう言ってスコールは俯いた。
────スコールは、一年前まで児童養護施設に籍を置いて暮らしていた。
それが、父親だと言う人物が現れて、施設職員と本人同士とを交えた話し合いの末、引き取られる事になった。
それ自体はスコールも自ら考え、父親の方も「今更だとは思うから」とあくまで本人の意思を尊重してくれた結果の答えだったのだが、今になってスコールは、その時出した自分の“答え”に迷いを抱いている。
父親は息子の年齢を考えてか、元々忙しい事も相俟って、あまりスコールの生活に口を出す事はない。
スコールを信じての事でもあったし、父子が出会ってからまだ幾らと経っていない事もあって、それ位の距離感が妥当であるとはスコールも理解している。
元々干渉されるのは好きではないから、ぎこちなくはあっても、それ位から初めてくれないと、スコールも当惑するのが目に見えていた。
だから生活は自由気ままと言えば確かにそうなのだが、何処かスコールは空虚を感じていた。
父親の家に引っ越してきてから、スコールは間もなく、その空間にいる事に耐えられなくなった。
それは父親が家にいるいないに関わらず、何か漠然と「此処じゃない」と思う気持ちが競り上がって来るのだ。
初めのうちはそれでも何とか慣れようとしたのだが、それ程時間を置かず、無理が来た。
以来、スコールは父親のいない日は家で過ごす事を止め、かと言って行く宛てがある訳でもなく、夜の街を彷徨うようになる。
「それは───……施設の方に、相談などした事はないのか?」
「………」
再会したばかりの父子が、お互いの歩み寄りとして、共に暮らす事を選択したのは悪い事ではない。
しかし、十七歳と言う多感な年齢は、自分で判断する事も出来る力を持ってはいるが、同時に様々な出来事に対して経験が浅い事もあり、かかる負荷に対して上手く対応できない事も多い。
また、スコールのように頭の回転が早い場合は、周囲の無言の期待を取り込み過ぎ、望みと反した選択を選んでしまう事もあるのだ。
選択をした後でも、悩む事があれば、元保護者として手を差し伸べてくれる大人はいるのではないか。
そんな気持ちでウォーリアが確かめると、スコールは緩く首を横に振った。
「……あそこも、違う」
「だが、長く住んだ場所なのだろう」
「……」
ウォーリアの言葉に、スコールは沈黙した。
黙するスコールの胸中を、ウォーリアは汲み取れない。
だが、漠然と、しかしはっきりと、スコールが“自分のいる場所”に対して違和感を覚えているのは確かなのだろう。
「だって」と言いたげな、けれど「どうせ判ってくれない」と蒼の瞳が雄弁に語るのを、ウォーリアは音のない声で聞いた気がした。
夜の街へと移った瞳が、酷く老成して見えるのは、ウォーリアの気の所為ではないだろう。
きっとスコールは、誰に頼る事も出来ずに過ごしてきたのだ。
ひょっとしたら誰かを頼る努力をしたのかも知れないが、大人を睨み信じない瞳が、その結果を具に映し出している。
そうして此処かも知れないと期待する度、此処ではなかったと打ちひしがれるのを繰り返し、疲れてしまった。
スコールはコーヒーを飲み干すと、上着のポケットから小さな財布を取り出した。
自分の分の支払いを出そうとしているのだと気付いて、ウォーリアが止める。
「私が無理に連れてきて、勝手に注文したものだ。私が出すから、気にしなくて良い」
「……」
「それより君は────」
早く家に帰りなさい、と言おうとして、ウォーリアは辞めた。
家に帰れと言えば、スコールは帰るかも知れない。
しかし、それは一時の事であって、きっとまたスコールは夜の街へと彷徨い出すのだろう。
家にも学校にも居場所を持たない彼は、あるかも知れない何かを探して、見付けるか諦めるか決めるまで、迷子になって歩き続けるのだ。
ウォーリアの脳裏に、つい先ほど、スコールを見付けた時の光景が蘇る。
明らかに悪質な雰囲気を振り撒き、下心を恥ずかしくも隠しもせず、露骨に卑しい目的で少年に近付いていた男達。
ウォーリアがちらりと外を見遣れば、丁度その男達が道を通り過ぎていく所だった。
何かを探しているようで、ひょっとしたらスコールをもう一度捕まえようとしているのかも知れない。
あの時スコールは、ウォーリアが介入しなかったら流されて行きそうだったので、男達には良いターゲットと見られた可能性はある。
そんな事をさせてはいけない。
そう思ったら、次の言葉がするりと口を突いて出ていた。
「家にいたくないのなら、私の家に来ると良い」
「……………は?」
数秒の沈黙を置いて、スコールが顔をあげる。
いつも何処か遠くを見ていた蒼の瞳が、真ん丸に見開かれている。
そう言う顔をすると、普段醸し出している雰囲気に反して、随分と幼い顔立ちをしている事が判った。
何を言ってるんだ、と瞬きを繰り返すスコールに、ウォーリアは続ける。
「家に帰りたくない事情は、理解しよう。だが、今日のようにこんな時間まで街を歩き回るのは、やはり感心できない。危険な事も多いから」
「……」
「君の事は詳しくはないが……学校でも、あまり親しい友人はいないように見えるし、きっといたとしても、君は其処を頼る気にはなれないのだろうな」
スコールは肯定も否定もしなかった。
だが、頭の良いスコールの事だから、下手に友人知人を頼っても、その親御等から良い顔をされない事は判っているだろう。
「だから、今は私の家を使うと良い。君が自分自身で、此処にいたいと思える場所が見付かるまで」
「……そんなの、いつになるか。大体、そんな事して、あんた……先生になんのメリットがあるんだ」
「損得の問題ではない」
「じゃあなんでそんな事」
「私が、君を放っておくことが出来ない」
それは事情を聞いたからでもあったし、生徒指導と言う立場からでもあった。
だがそれ以上に、ウォーリアは、この何処か儚く危うげな少年を、このまま孤独に溶かしてしまう事は出来ないと思ったのだ。
「君のような年頃の子が、楽しめるようなものなど、うちには置いていないから、詰まらないかも知れないが」
「………」
「教師の家に行くと言うのは、嫌がる生徒も多いとは聞く。無理強いはしない。だが、またこうして夜の街に行く事は辞めて欲しい」
止めろ、と言う確定的な言葉を、ウォーリアは避けた。
その言葉を使う事は簡単だったが、スコールはその言葉を受け取り難い状態にある。
あくまで尊重すべきは本人の意思だと、ウォーリアは考えていた。
その上で、ウォーリアははっきりと告げる。
「君が、君自身の望む居場所を見つけるまで、私が君の居場所になろう」
ウォーリアの言葉に、スコールは呆けた顔を返すのみ。
何を言っているんだろう、と首が傾げられたが、その後俯き考えている様子があった。
信じて良いのか、でも、と瞳が酷く不安定に揺れているのが判る。
テーブルの下で、スコールは膝に乗せていた手をゆっくりと握り締めた。
それから長い時間をかけて、お願いします、と言う声が小さな口から紡がれる。
頷けば、蒼の瞳が泣き出しそうに揺らめいて、それが安堵の所為ならば良いとウォーリアは願わずにはいられなかった。
『自分の居場所がないと感じているスコールに、「見付かるまで私の隣にいると良い」と言う包容力のあるWoL』のリクエストを頂きました。
半ば自分から独りぼっちになりつつ、でも本当は誰かの温もりが欲しいスコールと、何か本能的な所でそんなスコールを守りたいと思うWoL。
スコールの方も、変な大人だとか、生徒指導だから煩そうだとか思ってたけど、思ってもいなかった歩み寄りをされて驚きつつ、変だけど嫌な奴じゃないかも知れないと思い始める。
そんな二人のスタート地点。