娯楽/アミューズメント

観光名所や各種メディア、人間の方々には珍しいかも知れない里独特の遊びなど。
主に人姿、あるいはそのサイズ感を越えないレベルの獣姿で利用する前提の施設です。
【 ドリア絵図管理事務所 】
里の公営ネットカフェです。以前は役場の機器を借りて平行営業していましたが、 数年前に利用者のご要望にお答えして、同施設内に独立開業の運びとなりました。
「ドリア絵図管理事務所」は、役場営業時代、管理者のイグアナ団に頼んでドリア絵図をCDやDVDに 焼いてもらう獣が頻出したことから、建物自体がいつしかこう呼ばるようになったもので、独立後はそれがそのまま正式名称になりました。
現在は、時間制ネットカフェとしての通常利用の他に、コピー、画像スキャン、DVD・CD他のメディア焼き込み等の単品利用・代行サービスも行っており、PC・機械操作の苦手な方もお気軽に利用していただけるようになりました。
なお受付では、プリペイドで割安な「ドリア絵図利用カード」500円・1000円・3000円も販売しておりますので、是非ご利用下さいませ。
【 Zombie Iguana Cafe(ゾンビー イグアナ カフェ) 】
イグアナ団の経営するネカフェ「ドリア絵図管理事務所」が、一時的に名前を変えたものです。
勤務するイグアナ団員が、寒冷による低体温・曇った日の日照不足などでぼんやりと気力衰退している時(※)、「従業員全員がゾンビのネカフェって怖いよね‥‥」「いま正にそうじゃん‥‥」「じゃあ名前変えよっか‥‥」という会話の末、ノリと勢いだけで看板を作ってしまい、「今日は従業員がゾンビ状態です」の印に掲げられることに‥‥
店の営業形態・内容には何の変わりもありませんが、この看板になっている日は、従業イグアナが皆ぼんやりと覇気が無く、応答がスローモーな日であるという目印にして下さい。
(天候回復で日照が確保されたり、気温が上がって皆の状態が回復した時には、この看板は取り外され、従来の「ドリア絵図管理事務所」表示に戻ります)
(※‥‥「里物語」の小ネタSS「曇った朝の良くある風景」もご参照下さい)
【 獣カフェ 】
開店当初はごく普通の喫茶店でしたが、時代の要望に応えてまず「人姿メイドカフェ」になり、 そののち幸猫のプロデュースにより、現在の「獣カフェ」となりました。
「人姿メイドカフェ」は、文字通り人化した女性従業員がメイド姿で接客を行う、人里のそれと変わらぬ形態でした。しかし、それを見た幸猫の「獣的萌えが足りない」という猫の一声で、従来の「メイド服」に「ケモノ耳としっぽのレプリカ」を装着するという複合萌えを追求したものに進化しました。
勿論、それは単なる「ケモ耳メイド」の枠に留まらず、「装着者の元種族とは違うケモノ耳・しっぽを装着する(※)」という獣的ギャップ萌えを追求したものになっており、萌え系住人の心を掴みました。
(※‥‥例えば猫団の女性が犬耳と犬しっぽ、ハムスター女性が牛の耳しっぽを装着したりします)
なお、近年はさらなる需要に応え、男性従業員による執事・ギャルソン姿のサービスも開始されました。人獣老若男女を問わず楽しめる店となっていますので、是非一度お越し下さいませ。
獣姿満喫派による、種族それぞれの獣サイズで作られた専門店(主に飲食店)です。獣姿のままで利用するための様々な工夫が凝らされており、種族の親睦会等に重宝されています。
【 巨大怪獣カフェ 】
この度開店した、ネズミ団の施設です。
ネズミ類の方々は、その体格から巨大なものへの憧れが強く「ネズミ姿のままで巨大気分を味わえる施設を!」という要望がかねてより出されていました。それを受けて、ネズミ姿が巨大怪獣に見えるほど小さく作られた町並みのジオラマをしつらえ、ビルを椅子代わりに一服するという趣向のカフェとなりました。
なお、それほど小さなジオラマをリアルに作成するには、人化した器用な手や技術をもってしても、精度・微細さ共に困難を極め、開店までにはプロジェクトX並みの苦労があったとかなかったとか‥‥
【 馬酒場 】
獣姿専門店の第一号で、大柄な馬団の方々も気軽に馬姿のまま利用出来る施設です。ここで供される「大盛り」「特盛り」を越えた「馬盛り」 (飼い葉桶にてんこ盛り)は大流行し、その影響で他種族の店にも同趣旨の「牛盛り」「熊盛り」 が生まれました。
【 ネズミカフェ 】
最初は馬酒場の天井裏に中二階をしつらえ、種族的小ささを利用した省スペース施設として作られました。
しかし酔ったネズミ客が階下の馬酒場に転落する事例が続出。その上、馬客の食器(桶)の中に落ち、それに気付かぬ馬客に誤食されそうになるという事故が起こったため、転落の心配のない現在の建物に移転したという経緯があります。
【 モル喫茶 】
一口にネズミと言っても、ハツカネズミの方は体長6センチ前後と小柄ですが、天竺ネズミ系の方だと30センチを越えることも。
しかしネズミカフェが馬酒場の天井裏から移転・新装開店した折、うっかり小柄な種族のネズミを想定して入り口を作ってしまったため、大柄種族(主にモルモット)がつっかえて抜けなくなるというトラブルが続出。その失敗を踏まえて入念な種族別体長調査が行われ、のちに大柄ネズミ用として独立開店の運びとなりました。
人里においては「食品は食品の、薬剤は薬剤の販売許可を個別に受けていないと取り扱ってはいけない」というような決まりがあるそうですが、獣の里にはそのような規則はありません。
そのため、人の集まるネカフェ「ドリア絵図管理事務所」では、仕出しではない従業員手作りのおやつが販売されていたり、猿団経営の「こしかけドラッグ(旧名・猿乃腰掛漢方薬局)」には、薬品だけでなく猿団向けの食品が売られていたりします。
(この辺りは人里のネカフェやドラッグストアと同じですね)
ネカフェでは日替わりでクッキーやプリン、時にはいきなりカレーライスや茶碗蒸しなど、作成者によってまちまちの品揃えになっており、時にはおやつの域を超えていることもありますが、基本的には種族差の無い人里メニュー(人間の料理)に統一されています。
しかし、そうしたメニューの選定基準も種族/店舗によってまちまちです。例えば猿団のこしかけドラッグでは、猿団ならでわの昆虫系の食品も多々陳列販売されており、里に来て間もない人間出身の方の度肝を抜いてしまうこともあるようです。
もし獣になりたてで「まだ里のことがよく解らない」「そして苦手なものがある」あるいは逆に 「自分は○○が食べたくて探しているのだ!」いう方は、役場の案内担当者にその旨を申告し、情報収集することをお勧めいたします。
【 サカナくぐり 】
人里から持ち込まれた巨大鯉のぼりを使った、季節限定の遊びです。
二階の窓や滑り台の上部に鯉のぼりの口側を、地上にしっぽ側を固定して、非常脱出シューターのように滑り降りて遊びます。鯉のぼりの中でボールのように回転しがちな小さい種族の間では、出口の先にボウリングのピンを並べて命中率を競う「サカナくぐりボウル」も一般的です。
なお、毎年役場に設置されるものについては、途中で生地がたわんだりしないように下側を支柱で補強したり、滑りのいいナイロン生地で裏貼りをしたりとの安全対策もばっちりなので、体重の重い種族も安心して楽しめます。
役場では例年、端午の節句に合わせて四月二十日~五月十日まで、二階小会議室を解放して設置されておりますので、住人の皆様は是非お誘い合わせの上お越し下さいませ。
【 リアル猫柳 】
春の兆しが見えて来る頃、いい枝振りの猫柳の木に猫団の面子が群がって登っては「リアル猫柳!」と称する遊びが毎年のように流行します。
ただそれだけの内輪の流行なので、勿論通りかかった多種族の獣は「だから何?‥‥」と反応に困ること請け合いですが、当の猫団はワクワクと反応を待っていることが多いので、出来れば温かく見守ってあげて下さい。
【 イナバウアー 】
人里と同じように、トリノオリンピックの直後この遊びが大流行しました。
当初は普通に背の反り具合を競う遊びとして行われており、「犬バウアー」や「イグバウアー」等が派生しました。
途中、お約束の「イナバウアーとは足を平行にしたまま滑ることであって、背の反り具合は関係ないのでは」との意見も寄せられましたが、それでは別に面白くも何ともないので、里にあってはあくまで背の反り具合を競うものであると定義されました。
後期はそこから「反っていればいいのか」と「しっぽバウアー」なども派生したようですが、反りすぎて転倒するうっかり者の獣が続出したことから、数ヶ月を待たずに下火になりました。
【 ふるえ遊び 】
ふるえ薬を服用し、ただふるふると震えるだけの遊びです。
錠剤を服用すると5~10分ほどで主に指先から震え始め、やがて全身に広がっていく、制御出来ない無意識のふるえを楽しみます。
ただし、所構わず服用して震えていると、病気と間違われ救助騒ぎになったりすることから、自宅及び指定の「ふるえどころ」以外で服用することは禁じられております。
公共の場所や大多数の飲食店では「禁ふるえ」であることがほとんどですが、新しもの好きの店にはたまに「ふるえ席」が用意されている場合がありますので、ふるえどころが近くにない場合や、 外出先で震えたい場合にはその点をご確認の上、マナーを守って服用して下さい。
【 オムライスごっこ 】
レッドイグアナ固有の遊びです。
赤いウロコが米粒っぽく見えなくもない体をチキンライスに見立て、黄色い毛布、または黄色いタオルケットにくるまり、赤い襟カバーをつけることによって、オムライスを再現します。緑色のカバーを掛けた枕を使用すると、付け合わせのパセリに見えてさらにリアルなオムライスに!
同様に、ゾウガメのハリーに緑の頭巾(パセリ)と黄色い甲羅カバー(たまご)を着用させ、その上にレッドイグアナ(ケチャップ)が乗ることによっても、謎の移動オムライスが完成します。
(ただその場合は、甲羅の内部がチキンライスでないことが惜しまれます)
【 丸太転がし 】
人里の遊びにヒントを得た、獣たちに人気の遊びです。
山の奥から、直径一メートル以上の 丸太を切り出したものを使うことが多く、大きめの獣はその上に乗り、落ちないように転がして走ったり、小さい仲間たちは力を合わせて転がす距離を競ったりします。
しかしその特性上、思う方向には進まないことが多く、また、その重さから制御が難しいため、勢い余って人里まで転がっていってしまうこともあります。
それで人里の畑を荒らしてしまうこともあり、その場合は里の農協がお詫びと補償交渉に赴きます。しかし意外と人里は気にしていないのか、補償は転がり落ちた丸太で相殺してもらえることが多く、獣たちの間では「人里の謎」として語られています。
(後で判明したのですが、人里ではその大きさの丸太が珍しいため、それで大太鼓や家具等を作ったりしていたようです。人里の言葉で言うと、『ギブ&テイク』というものだったのですね)
※インターネットでの情報収集が普及した頃、この遊びは人里では丸太ではなく、軽くて大きな丸い玉で行われることが解ったのですが、里では変わらず丸太が使用されています。
【 タマ入れ 】
これも人里の遊びから来たもので、木の枝に網をくくりつけたりして、高い位置にポケットを作り、そこにたまねぎを投げ入れて、入った数を競う遊びです。秋の獣大運動会の競技でもあります。
しかし特有の強い匂いから、かねてより嗅覚に優れた犬団等に不評であり、また、「タマ」はたまねぎではないのではないかという意見が寄せられていました。
近年、やはり投げるのはたまねぎではなかったことが判明し、運動会では別の玉が使用されるようになりましたが、日常の遊びでは、今もたまねぎが多く用いられています。(勿論、遊んだ後はちゃんと食べます)
【 れんこん遊び 】
里の獣たちはれんこんが好きです。
食べることよりも、むしろその形状に興味を覚えることが多く、時々蓮沼から掘ったれんこんを囲んでは、 肉球で揉んだり、爪でつついたりと、節々の形状や穴の開き具合の違いを愛でて楽しみます。
若い獣は長いところを選んで、刀の代わりにして遊んだりするのですが、叩き合いで形が壊れることもあり、 それはあくまでれんこんの形の妙が解らない子供の遊びとされています。
また、一時期、ネットオークションに里のれんこんを出品するのが流行し、おかげで人里からもその美味に ご好評を頂くようになりました。
【 モップのふり 】
幸猫氏が時折行う謎の遊び。
そのふかふかした長毛を生かして、背中にモップ棒をつけ、手足を引っ込めて床に平たく寝てモップのふりをし、他の獣が通りかかると、ガバリと起きあがって脅かすというもの。
しかし、幸猫氏は薄い茶色の縞模様の毛並みであり、どう見てもモップには見えないので、気付かずに驚く獣は今のところ報告されておりません。
【 堤防ごっこ 】
これも幸猫氏が広めた遊びです。
日当たりのいい野原などで昼寝をしていると「溶けて流れないように堤防を築け!」などと言われ、 体の周囲に小石を積み上げた堤防を築かれてしまいます。
築く前に寝返りを打ってしまったらアウトですが、その前に目が覚めた場合は、石組みを崩さないように起きあがるのが粋とされます。
(その痕跡は、人里でよく見られる事故現場のチョーク痕に似ています)
【 どんぐり通貨ごっこ 】
いわゆるドングリとは、ブナやシイ、ナラなどの複数の木の実の総称ですが、秋になるとこのドングリ類が子獣達の間でにわかに通貨として流通し始めます。
勿論、通貨と言っても子獣達の間だけで通じる他愛ない遊びで、多くは「宿題のこの問題教えて」「じゃあドングリ十個ね」とか、「読み終わったマンガ雑誌、ドングリ二十個と交換するよ」などというささやかな取引に用いられます。
しかし例年、ドングリから虫が湧く頃には子獣達もこの遊びに飽き、ドングリの通貨ごっこは急激に終わります。子獣達はこの引き際を見極め、手持ちのドングリを期間内に最大限有効活用するために目を光らせるのが常で、それはあたかも株の売り抜けを目論む投資家に似ています。
(そう思うとあまりほのぼのしていませんね)
【 そうめん滝 】
里の奥山に位置する「そうめん滝」は、白糸のように細く流れ落ちる滝があたかもそうめんのように見えることからの通称です。
しかし何を勘違いしてか、その清流で流しそうめんをしようとする獣が後を絶たず、一時期は清流がそうめんまみれになったことも‥‥(おかげで一帯の川魚は太りましたが)
環境保全の観点から、それ以来個人による流しそうめんは禁止され、代わりにクマ団の管理による流しそうめん食堂が、夏季限定で開設されるようになりました。
涼やかな滝を眺めながらのそうめんは絶品です。人里の皆様も、是非一度お越し下さい。
【 亀転びの湯 】
今年になって新しく湧いた、100%掛け流しの天然温泉です。
ある祭りの際、輿に乗せた長老を運ぼうとしていた時のこと。担ぎ手の獣がつまづいたか何かで、長老を輿から落としてしまった、というハプニングが起こりました。
その時、というか正に長老が地面に落ちた瞬間、そこから勢いよくお湯が噴き出し、あっという間に周囲はお湯浸しに。
お湯のおかげで長老は怪我もなく済んだのですが、その後数日経ってもその湯が枯れる様子はなく、検査したところ泉質にも問題が無かったため、そのままその場に温泉施設が作られ、由来にちなんで「亀転びの湯」と命名されました。
温泉自体はそのまま獣達の憩いの場となっているのですが、「あれってやっぱり長老のカメチカラの成せる技なのかな‥‥」「てことは、温泉が欲しいところに長老を落とせばあるいは‥‥?」「やめろよ罰当たりな!」などという会話が秘かに交わされ、一部の獣達の間で物議を醸しています。
【 獣地獄温泉 】
山間にある、一見極楽そうな露天の温泉です。
しかし、不用意に飛び込むことなかれ。縁の土壌が非常に崩れやすいため、上がろうとしてもなかなか上がれず、のぼせたり溺れたりする獣が続出し、アリ地獄ならぬ獣地獄温泉と呼ばれるようになった、というのが由来の名所(?)です。
(なので人里によくある、激しい泡や湯気から連想される「○○地獄温泉」の地獄っぽさとは関係ありません)
もっともそれを救助するため「獣釣り」と称して救助ロープを垂らしに行くのが趣味の方などもおり、実際に溺れることはまあありません。しかし通の方はロープを持参し、木と自分を結びつけてから、満を持して入浴に挑みます。
【 足 湯 】
近年新しく作られた、チップ制の足湯です(と言っても実質無料開放で「財布に小銭が余っていたら入れていってね」程度のものですが)。
工事の際に温泉が湧出したはいいものの、「場所的に温泉施設を建築出来る広さが無かった」「湧出量も微妙」という理由で、コンパクトな足湯として利用されることになったものです。
あずまやの下は、人姿で利用するための「二足湯」と、獣姿で利用出来る「四つ足湯」に分かれており、四つ足湯はさらに種族ごとの身体の大きさに合わせて、四段階の深さに区切られています。 そのため大柄な牛・馬団の方から、小柄なねずみ団やミドリガメ班の方まで体高を気にせずご利用出来る、気軽な社交場となっています。
向かいの売店では浴後に手足を拭くタオルの販売・レンタルもしておりますので、合わせてご利用下さいませ。
【 狼椅子 】
「これを名所と言っていいのかどうか」物議を醸すシリーズの一つです。
屋外設置の背もたれのないベンチは、通常はワニ椅子と呼ばれています。しかし森の脇通路にある特定のベンチに限っては、昔から「狼椅子」と呼ばれ、一部の獣に恐れられています。
何故ならこの椅子、座面部分や脚部の材木の絶妙な歪み加減からか、薄暗がりの中で見るとあたかも「身体の上半分を切断された狼が平然と歩いているように見える」とかで、夜間通勤者には心臓に悪いことこの上ないのだとか。人里で言うところの「首無しライダー」の都市伝説に似ていますね。
【 迷子の藤棚 】
長老の祭殿の敷地内にある、長い長い藤棚です。
元々は参道脇に日除けとして作られた小さなものだったのですが、これがまた長老の亀チカラか伸びる伸びる。合わせて棚を広げていくうちに、通路のように長く立派な藤棚になったのはいいのですが、いかんせんうっかりこの藤棚をくぐると、祭殿ではなく裏庭まで行きついてしまいます。
いつかは藤棚が祭殿を一周してしまい、「あ、ありのまま今起こったことを(中略) 入り口で藤棚をくぐったら、いつの間にか元の出口に立っていた!(後略)」ということになるのではないかと囁かれています。
【 獣桜(けものざくら) 】
獣たちは群れ集ってのお祭り騒ぎが好きなので、花の季節、桜の下はいつも宴たけなわです。
しかし獣はどうしてもお酒に弱いことが多く、酔って桜の木によじ登り、そのまま樹上で寝てしまう者もちらほら‥‥
中には、枝振りなのか登りやすさなのか、何故か特定種族に好まれる桜というのが里の方々にあり、 毎年累々とぶら下がった二日酔いたぬきが救出される木は「たぬき桜」と呼ばれています。 (他に、同じ由来の猫桜と熊桜があります)
勿論、そのような由来のある木に限らず、八重・枝垂れ・ソメイヨシノ・山桜といった多種多様な桜の見事さは、べつだん登りたいとは思わない他種族の獣達にも、毎年憩いと潤いを与えています。
人里では「ソメイヨシノ六十年寿命説」というのがまことしやかに伝えられているそうですが、獣の里には百年越えのソメイヨシノがゴロゴロしています。近年は人里で初めて桜の剪定を始め、やはり百年超の桜を多く所有する青森県の弘前公園(※)に習って、さらに寿命を延ばそうと研究中です。
(※「桜 剪定 弘前公園」でグーグル検索すると、里に劣らぬ美しい桜の画像と共に関連記事が見られます)
【 熊桜倒壊事件 】
上記「獣桜」のひとつである「熊桜」が、根元からバッキリ折れて倒れてしまう、という出来事が先日起こりました。その原因は、過日の台風レベルの強風の日に熊団の方々が花見を強行し、十頭ほどの熊が一度に桜に登ってしまったから、という‥‥。 そりゃ倒れるわ!と皆に説教され、主犯の熊達は二日酔いの頭をさらに痛める結果に。
その上、猫団がお仕置きを強行しようにも、熊を入れられるサイズの大樽が足りないとか、 いかに荒くれの猫達であっても熊を担いで樽に詰め込むのは困難である等の理由で 未だお仕置きは執行されておらず、里内でもその処分を巡って意見が紛糾しています。
【 人参果の木 】
これを名所と言っていいのかどうかは、かなり微妙なところですが‥‥
ライラックに似て、房状に集まった沢山の小さな花を咲かせるこの大木は、その花が散る頃、花の数だけの小さな実を結びます。その実は熟していくにつれ大きくなり、やがて小さな実がくっついて、一房分がひとつの果実として完熟します。
熟した一房の集合果実は、人間の両手の平ほどの大きさで、その形状は目を閉じ、手足を縮めた人間の嬰児によく似ています。そのため「西遊記」に出てくる人参果になぞらえて、昔から「人参果の木」と呼び習わされておりますが、寿命が延びる・不老不死などの薬効は特にありません。
また、枝部分につながる頭頂部(?)がキューピーのように尖っており、収穫時期にはザワザワブツブツと謎の音声(言葉?)を発するため、「うるさい」「気味が悪い」「人間の子というよりビリケンに似ている」と獣たちには気味悪がられており、そのため、以前は里の中心に生えていたのを、外れに位置する現在の場所に移植されたという経緯が伝えられております。
(最初は切り倒そうとしたのですが、斧を入れた途端、果実が一斉に耳をつんざく悲鳴を上げたとか、血のような樹液が流れ出した等の気味の悪い伝説が残されており、おかげで今でも伐採しようという声は上がっておりません)
果実そのものは、やや癖のある風味と見た目の問題で生食はされておらず、主に酒に漬け込んでアクを抜いたものを砂糖煮にして、ジャムやすろっぷの材料として使用されております。
【 苦悶の牛面 】
「人参果の木」と同じく、これも名所と言っていいのかどうか、ちょっと微妙な代物です。
(里伝説でもあり、民間信仰でもあり、どこに分類するかも悩みどころです)
とある木の幹に浮く節くれは、そのリアルな大きさと形状から「苦悶の牛面」と呼ばれています。 絶妙な凹凸と歪み具合、口にあたる箇所に開いている穴などは、確かに苦悶に満ちた牛の死に顔をそのままミイラにしたかのよう。そのためいつからかこの節くれは「隠れ肉食者を見ると鳴く」「口に手を入れると噛まれる」等と恐れられており、たまに目的不明のお供えが上げられていることも。
勿論それらはただの里伝説であり、木の節が鳴いたり動いたりする訳もありませんが、身に覚えのある獣はその後ろめたさから、決してこの牛面には近付かないとか‥‥
【 千匹風呂 】
アライグマ団の経営・管理する、天然温泉の共同浴場です。
獣たちの体質上、どうしてもノミが繁殖しやすくなるため、里の清潔を保つには欠かせない施設です。
硫黄などの刺激成分が含まれないまろやかなお湯のため、嗅覚の鋭い住人達にも入りやすいと大好評で、獣千匹が入れるという伝説もあるほどの広さと由緒を誇っています。
この源泉で作られる温泉卵も隠れた逸品で、売店で一個から販売しております。
【 山下り・川下り 】
元々は、幸猫氏が喧嘩相手を樽に詰め、崖の上や滝の上から突き落としたのが始まりです。それがそのうち、もうちょっと緩やかな傾斜や渓流を樽に乗って下る遊びとして発展しました。
しかし危険なことには変わりないので、監視役の仲間のいないところで遊ぶのは禁止されています。出来れば事前に、救急隊の犬団に届け出てから、立ち会いのもとで行うようにして下さい。
(でないと、事故が起こった場合の発見が遅れて大変なことになります)
現在のところ、テレビ2局、ラジオ一局が運営されています。運営形態は、隣県の人里民放を受信・放送しつつ、合間に自社番組を織り込むという、人里のローカル局に似た内容となっております。
【 RAB 獣の里放送 】
まずラジオ局として開設され、その後テレビ放送を始めた、歴史あるテレビ局です。 「獣の里」のどこにRやBが入っているのかとよく言われますが、「RAB」という略称は 開局当時の名称である「Radio Animal Broadcasting(ラジオアニマルブロードキャスティング)」の名残です。
(なお、人里に実在する「RAB青森放送」との関連は一切なく、名称の一致は偶然であると社史には記載されています)
【 FAT 獣ふかふかテレビ 】
平成になってから開局した、比較的新しいテレビ局です。当時人里で話題になった「岩手めんこいテレビ」のネーミングを耳にした経営陣が、局の開設の際、その法則にのっとって命名しました。
(それが人里でもユニークなネーミングであったことを知ったのは、 ずいぶん後になってからだとか‥‥)
なお「FAT」は「Fuka-fuka Animal Television(ふかふかアニマルテレビジョン)」の略ですが、ファット=脂肪、の連想からか、よく「Fat Animal Television/太る獣テレビ」と間違われたり、 解った上で冗談のネタにされたりします。
それぞれの局の人気番組をご紹介。
【 チョモランマ大統領の懲りない冒険
 ~世界の中心で救助を待つ…~
RABで近年話題の番組です。主人公はチョモ=ランマという名の大統領。趣味は山岳探検ながら、遭難して救助された経験は過去30年で10回。そんな迷惑極まりない人物が、懲りずに登山しては遭難し、救助されるまでのドタバタを描く、匿名脚本家によるCGドラマです。 その内容の有り得なさから一部マニアの間で話題となり、最低視聴率を更新しながらも、毎週早朝4時から絶賛放送中!
※なおこのドラマは、匿名脚本家が誰なのかという点も話題であり、 正体は幸猫か駄菓子屋ベンではないかと言われておりますがベンは執筆を否定。 幸猫は沈黙を守っており、視聴者はドラマの展開よりも、その謎が明かされるのを待っています。
【 チョモランマ大統領の懲りない冒険
 ~谷の底のチョモ~
一部獣民の間で大人気を誇ったチョモランマ大統領の続編です。
この回では「チョモランマ大統領」というのが別に役職名ではなく「チョモ=ランマ=大統領」という本名であることが明かされ、獣達の間に衝撃が走りました。
第一話ラストでは、山道から谷底に転落したチョモが救助を待つところで終わったものの、 予告編では土石流を丸太でサーフィンする姿が映ったのち「放送日未定」というテロップが流れたため獣達騒然! このたび脚本家であることを公表した幸猫の元に「早く続きを!」とお供えカボチャが山積みにされる事態に。 視聴率の上昇に伴い、ゴールデン進出も噂される中、獣達はどきどきと続編の放送を待っています。
【 宇宙戦争 ~馬ですか?~
コーヒーのCMでお馴染みの宇宙人ジョーンズが、間違って獣の里にやってきた!という前提で繰り広げられるコメディCGドラマです。
住人の繰り広げるドタバタに巻き込まれては特異な能力を発揮してしまい、宇宙人であることがバレないかとヒヤヒヤするものの、獣達の思考は毎度あさっての方向に超展開。宇宙人であるとはかけらも疑われません。ドラマは毎週、そうやって好意的に受け入れられる宇宙人ジョーンズ(獣姿時は馬)の「この里の住人は、いい人達だが、ちょっと鈍い」という呟きでシメられます。
(ちなみにタイトルとは裏腹に、作中には戦闘シーンも惑星間の揉め事も一切無く、何故このタイトルなのはファンの間でも謎となっています)
※なお、このドラマのメイン脚本家は例の如く幸猫ですが、近年里の住人となった銀色の馬・UMA(ユーマ)氏が原案協力に加わっており、その卓越した知識や能力に 「UMAさんて実はほんとに宇宙人なんじゃないのー(笑)」と囁かれています。
【 FAT のど自慢大会
 ~人も獣もご一緒に!~~
開局以来続いている、大人気長寿番組です。
当初は犬族の遠吠えや鳥団ニワトリ班の長鳴き、うぐいす班の美声などを競う「ケモノ呼び声自慢」と、人里形式のカラオケ歌自慢からなる二部構成でした。しかし「呼び声は子孫に正しく継承しなければならない伝統技能でもあるので、教育番組として独立してはどうか」という意見が出され、「のど自慢」としては人里の歌を歌うカラオケ大会に統一されました。
なおカラオケは元来人里の文化であるため、人姿・獣姿にかかわらず「人の声と言葉で歌うもの」という認識でしたが、近年若者の間で「獣姿・獣の声で人里の歌を歌う」というムーブメントが起こりました。人声による音程・言語との比較が困難であることから、一時は採点基準の面などで混乱が起こったものの、「楽しければ良し」との観点から現在はそれも受け入れられ、皆が毎週様々な形式で歌声を競っています。
(例えば犬声による「ジングルベル」は難易度も低く、子獣出場時の定番ソングですが、人声と獣声によるムード歌謡のデュエットなどは、その調和の難しさから上級者向けとされています)
【 WAOOH!モバイル 】
獣の里初の携帯電話サービスで、WAOOH!は「ワオー!」と読みます。
ケータイと言ってもシステム的にはPHSを改良したもので、カバーエリアは地下・地上を問わず里の結界内。 利用料金と端末の低価格化のため、ネット接続機能やワンセグなどはあえて搭載されておらず、 機能は通話とメール・簡易カメラに絞られています。
発売時の「遠吠え不要!地上も地下も山奥も、メールの同時送信機能で仲間全員に一発連絡!WAOOH!」というCMにより、 群れで行動することの多い種族や、行動範囲の広い職種の獣、生活時間の違う種族相手への連絡が必要な方々に大人気を博しました。
【 獣ネット 】
獣の里のISPです。里内部での通信には特に制限はありませんが、里の存在秘匿のため、 外部(人里のネット)への接続は役場のサーバに集約され、ある程度のフィルタリングが施されています。 とはいえ、情報統制と言えるほどの厳しいものではなく、普通の使い方をしている限り さしたる不自由はないはずですので、人里のネットジャンキーの皆様が移住しても安心です。
昨今は住民の開設する個獣サイトなども賑わっており、中でも狐団の駄菓子屋ベンが 普段紙芝居で披露している物語を綴ったまとめサイトは、老若男女を問わず大人気! 現在はメタルヒーロー特撮風味のSFアクション「宇宙刑事ゾウガメン!」が大好評連載中です。
これらは商業刊行物というよりも、購読会員を募っての自費出版のような形で発行されています。
【 新 聞 】
通常は週一回発行の「獣新報」が発行されており、臨時ニュースがあると号外として「獣日報」が発行されます。もっとも、平和な里ではさほどの事件は起こりませんので、内容のほとんどは里のほのぼのした出来事やお知らせで埋まります。幸猫氏が執筆する連載マンガ「爆裂農家」も、獣と農家のツボをつく笑いで大人気。熱烈なファンからは、単行本の発行が待たれています。
※獣日報・号外版の見本画像です。gif形式・705×974ピクセル(B5版)87KB。
(なお数年前の紙面ですので、掲載記事内の年齢等については現在のものではありません。ご了承下さい)
【 習慣サンデー 】
年齢層を問わない、獣向けの健康雑誌です。毎週日曜日発行。健康にいい生活習慣や食べ物、種族独特の健康法などを幅広く紹介します。
【 アニマルタウン 】
内容的には里のタウン誌で、色んな人や店や畑の紹介、それを元にした小説やマンガなど多岐に渡る内容で、住人の交流に役立っています。
【 獣トピア 】
成獣向け雑誌です。元人間の獣が始めただけあって、その斬新で大胆な内容は里の成獣に一大ムーブメントを巻き起こしました。
(成獣向け雑誌ですので、内容はこの場ではお伝え出来ません。ご了承下さいませ。なお、ご購入には、種族別の成獣証明が必要です)