勝家の方を向く形で褥の上に寝転がる利家の片足首を信長が掴み上げると、勝家の仕置きをきっかけに立ち上がった本体が、その全容を晒された。
「さぁ、勝家。しかと見よ。うぬが子の薄汚れた本性を」
「の、信長様! お願いします! 許してください! お願いします!! これだけは!!」
ほんの僅かな可能性に縋って嘆願するが、案の定、次の瞬間には詮無き事だと思い知らされた。自分の叫びを聞いた信長は意地悪な笑みのまま、自分の腰と交差する形で腰を近付けて来たのだ。
自分の粗相の所為で今も濡れたままの小袖の裾を軽く開き、彼の愛刀と同じような禍々しささえ感じる肉刀が衣の隙間から姿を見せ、先走りが光る先端が数度伺いを立てるように目当ての場所を突いたかと思うと、直後に独特の圧迫感が利家を襲う。同時に聞こえた勝家の息を呑む声が、利家にとって何よりも辛い音だった。
「あっ、あぁっ! あ、あ! あ!」
それでも腰の辺りに感じる侵入感には耐えられず、其処から生じる苦痛を少しでも和らげようと、無意識の内に開いたままの利家の口から声が飛び出して来る。そして、少しずつゆっくりと入り込んで来ていた信長が、緩やかな挿入が面倒にでもなったのか一気に奥まで貫いて来た途端に、獣のそれに近い悲鳴が轟いた。
「あぁあああーーっ!!!」
目を固く閉じ、敷布に爪を立てて、痛みとその中にも感じる甘い熱に堪えようとするが、相手が腰を揺さぶると、熱はより熱く、より甘美となって利家を容赦なく襲い、魔王の艶かしい声が密かに湧きつつある興奮をより掻き立てた。
「クククッ…何時もよりも熱く、生娘のように締まっておるわ。変態犬は交尾を勝家に見られて興奮しておると言う事か」
「は……はぅ……あ、ん………お、叔父貴……やだ………見たら……ヤられてる俺なンか…見た…ら……や…あっあ…!」
片足を掴み上げられた体勢のまま交差する腰を打ち付けられ、無意識の内に溢れていた先汁を辺りに散らしながらプルプルと落ち着き無く振れる利家の肉搭を信長の手が包み込んだ。
「あんっ…」
「まだ戯言を抜かすか。本当は見られて嬉しいのであろう? 感じておるのだろう?」
「んんぅ!!」
既に余裕の無い理性を振り絞り、歯を食い縛って首を左右に振る利家だったが、下半身に伸びている信長の手が慣れた手付きで上下すると、弾けるような息とあまやかな喘ぎを吐き出して身悶える。その姿をとても直視出来ないのか、勝家も利家がしたように首を激しく振り、軋みそうなほどに奥歯を強く噛み締めつつ、顔を明後日の方向へ逸らした。だが。
「勝家。うぬに命じた筈ぞ。しかと見よ、と。目を逸らす事は信長が命に逆らう事、ぞ」
「………」
何処までも非情な主君の声に胸を抉られるのを感じながら、勝家は自棄を起こしたように顔を二人の方へと戻し、殆ど睨みに近い目で交わりを凝視する。その視線がやはり痛いのか、敷布に歯を立てて嗚咽する利家に信長は愉悦を覚えて眼を狭めた。
「泣くほど嬉しいか犬よ。もっと犬らしい姿を勝家に見せてやらねばな」
「っく……や…だ…ひっ……嫌ぁ……」
「何を拒んでおる。獣の如く背後から突かれるは、うぬの気に入りであろう?」
「あ……ああぁあ…」
涙も拒絶も嘆きの声も今の状況を心底愉しんでいる魔王には何の効果も無く、彼の望み通りに興は続いていく。
不動不言を維持する勝家の眼前で、利家は大した抵抗も出来ぬまま四肢を床に付ける形で信長に押さえ付けられ、一度抜き出された信長の太刀が改めて犬の腰に突き立てられた。
目に入る惨状と耳に入る利家の叫びに、グッ…とつい喉の奥から低い音を漏らす勝家を煽るように、信長は先程にも増して腰を激しく律動させ、それに応えるかのように利家もべそをかきながらクンクンと犬の如く鼻を鳴らす。
何処か虚ろで異質な空気が三人の間で重く漂っていた。
信長が黒い薄ら笑いを突如浮かべたのは、暫く後の事。
切れ長をより細めた眼は一人の鬼に向けられていた。
相変わらず仏頂面で胡坐をかき、膝の上で拳を握っていたが、明らかにその頬は先程よりも赤く、冷や汗とは性質が違う雫が伝っていた。自分と利家にのみ向けられている筈の瞳も定期的に落ち着き無く泳ぎ、その度に何かを抑えるように握り拳に強い力を込める。その“何か”の正体を容易に見抜いた信長は、自分の下で喘ぐ利家を見遣り、揺れる髻に手を伸ばした。
「いっ…! な、何…を……」
今や相手の行動の一つ一つが恐怖でしかない利家が動揺の声を出す中で、信長が褐色がかった髪を無遠慮に掴む。新たな痛みに歪んだ顔が、いきなり眼前にいる男の胡坐の中心に乱暴に押し付けられた。
互いに驚く二人に魔王の嘲りがぶつけられる。
「うぬらは揃いも揃って変態か。子は父に尻を打たれ、父は子が辱められている姿を見て勃たせるとはな」
「え……そんな…叔父貴…」
思わぬ一言に困惑した顔で見上げると、父のように慕うその男は、食い縛った歯の隙間から小さな唸りを出しながら目を逸らした。
そんな二人の状況を見て魔王は嘲笑し、犬の頭をより強く押し付ける。確かに熱が袴を通して頬に伝わり、それによって利家の春情は激しく刺激され、涙に濡れた瞳をボンヤリと蕩けさせた。
「利家。勝家はうぬが犬のように貫かれている姿を見て昂ぶっておるのだぞ? うぬが鎮めてやらぬか」
「……あぁぁ…」
信長の許可が下りた途端に利家は息を荒げ、熱っぽい溜め息を吐き、信長に貫かれているままであるのも構わずに両手を勝家の腰に絡めて抱き付いた。
相手の制止の言葉と自分の名前を交互に叫ぶ声も耳に入らぬ様子で衣越しの熱に顔を擦りつけ、以前から信長や他の男を相手に何度も同じような行為をしたのか彼にしては慣れた手付きで器用に袴を引き落とし、うっすら濡れている下着と肌の隙間に突っ込んで引っ掛けた指を思い切り横に引いて白布をずらす事で、お目当ての物を露出させる。
目の前に現れた、相手の年齢相応の衰えなど微塵も感じぬ男の立ち姿に、利家は生唾を飲み込み、餌を与えられた餓犬のようにハッハッと生温かい吐息を切らした。
「…これが、叔父貴の……凄ぇ…」
うっとりした表情で相手の年輪を感じる黒光りに手を添え、べたつく汁が付くのも構わずに愛しげに頬擦りを数度した後、躊躇いも無く口を開いて温かく濡れる中へと導いていく。性を全く知らぬ訳ではないが、口淫と言う未知の感触、しかも相手が利家である事実に勝家も無意識の内に昂ぶり、腰が一度大きく跳ねた。
「んっ! …ぅ…ん、んっ……」
突然の事に利家も一度眼を見開くが、瞬きをすれば即座に虚ろなそれに戻って頭や舌を積極的に動かし、互いの興奮を強める為かわざと唾液の音を立てて舐る。
未だ利家の中に入ったまま背中越しにその様子を見ていた信長は動きを止め、唇に親指を当てて眉間に小さく皺を寄せた。
(あれは奉仕行為は好きではない筈なのに、此度は積極的に、寧ろ喜んでやっておる。相手が勝家、だからか?)
其処まで考えた所で、信長の胸に小さくて黒い何かが生じたが、その異変に気付いていない利家は勝家の本体に舌を満遍なく這わせ、相手の先端の窪みに嵌めた舌先を蛇のように細かく動かし、チュパチュパと卑猥な音を響かせながら窄めた口で勝家を刺激する。唾液に苦味が混ざるのを感じた利家は嬉しそうに目尻を下げた。
感じてる。叔父貴、俺の口で感じてる―――
「と、利家…! わぬし、いい加減に、せぬか…!! ……はっ、離れい!!」
彼にしては珍しい焦り声を頭上から聞いた利家は、上目遣いで相手の顔を見ると共に頭を左右に幾度か振り、眼前にある黒い茂みに視線を戻した。再度自分を呼ぶ叫びが聞こえたが、それに応える事無くゆっくりと頭を前進させて限界まで相手の猛りを咥え込む。
「……ん…うん…」
口いっぱいに膨張している勝家の解放を促すように一気に吸うと、苦しげな声が耳に入ると同時に、喉奥に、舌の上に、頬の内側に熱い粘りが叩き付けられて利家の瞳を固く閉じさせた。吐精する事自体が久方振りだったのか、口内に広がる種は予想以上に濃厚で、独特の青臭さが口を通して利家の鼻を打った。
「ん……あ…叔父貴……叔父貴の…凄ぇ濃ゆい…」
忘れかけていた射精感に文字通り精を奪われたらしく、表情に疲れを浮かべて荒い呼吸を繰り返す勝家の何処かぼやけた視界の中で利家が閉じていた目を開き、同じく口を大きく開いて舌を伸ばすと、白色の体液が糸を引きながら舌先から零れ落ちた。
自分の知っている利家とは別人なのではないのかと疑いそうなまでに卑猥なその様に勝家が口を開きかけたその時。
「ん、んぐっ…!」
「なっ!?」
良いから早くそれを吐き出せと言おうとした口がそのまま開きっ放しになって言葉を発せなくなったのは、利家が彼らしからぬ妖艶な笑みを浮かべた後に舌を口内に戻し、ゆっくりと喉を鳴らしつつ白種を飲み下したから。塩の入った苦味と粘りが喉に纏わりついたらしくケホケホと咳き込みながら、利家は瞳を涙で滲ませて小さく笑った。
「へへっ……叔父貴の濃ゆ過ぎっから喉に凄ぇ絡み付……ひいっ!?」
突然襲って来た排泄感に、まさか後ろの方も失禁してしまったのかと慌てて背後を振り向いた利家は、その感触が繋がっていた信長が身を離した事によって生じた物だと知るとひとまず安堵したが、相手の顔を見た瞬間に表情が強張った。
犬の瞳に映る魔王の顔は、機嫌も何も分からない能面のようになっていた。
「利家」
「は、はっ、はいっ!!」
無表情と同じ冷めた声に、反射的に信長の方へと身体を向け、畏まって三つ指をつく利家の視界に信長の足の指が入った。
「うぬは今まで誰の精も飲んだ事がない、飲めた事がないと言うておったな」
「うっ…」
思わぬ指摘に青い顔を引き攣らせる利家の身体が細かく震えだし、それに合わせて小さく揺れる褐色の髻に魔王の長い指が触れる。
「そして、信長の精も何度も出してやったのに飲めなかったな。それなのに何故、勝家のは飲める?」
「あ、あの、信長、様…」
恐る恐る顔を上げつつ自分を呼ぶ声に全く聞く耳を持たぬ様子で、信長は手の中の髪を強く掴んで無理矢理頭を引き上げる。恐慌する利家の揺れる瞳と信長の冷たい炎の宿る瞳が絡み合った。
「の、信長様っ、す、すみませんっ! ごめんなさい! ごめんなさい!!」
今まで見た事の無い相手の瞳に利家の恐怖心はいよいよ激しくなり、狂乱に近い状態で必死に謝罪の言葉を繰り返し叫ぶが、抱いている本人も信じ難い気持ち――微かな嫉妬心に煽られている信長は、感情と言う物を超越した暗い笑みで顔を崩し、叫び続ける利家を黙らせるかのように滑り気を帯びた男根を一気に口に捻じ込んだ。
「んんーーっ!!! ん! んう! ぐっ、うえぇええ!」
味覚や嗅覚が何時もと違う何かを感知し、同時に口を蹂躙するそれがさっきまで入っていた器官を思い出すと、胃の辺りから喉の奥まで一気に熱が迫り上がるのを感じたが、口蓋の辺りまで肉栓をされている状態ゆえかその場で止まってしまい、強い酸が喉元を焦がす。
「吐き戻したら、どうなるか分かっておるな?利家」
「ひっ、ひぐっ……うげっ……ううう…」
非情な脅しを口にしつつ腰を容赦なく前後させて刺激すると、床に付いた両手両膝を震わせる利家の白目を剥きかけた瞳からは涙がポロポロと止め処なく零れ、鼻や口からは粘る液がダラダラとだらしなく垂れ落ちて醜状を晒した。
「ククッ、小汚い犬よ。似合いの姿、ぞ」
「っぐ……ぅえ…えうっ…うぅううーーー!!」
今、口を離せば惨事になりそうなのは当の本人が一番分かっているらしく、利家は口を汚されたまま肩を幾度も上下させてしゃくり上げ、篭った泣き声を出せるだけの声量で出した。
その声に歪んだ哄笑をあげる魔王。より一層悲痛な遠吠えを繰り返す犬。
そんな陰惨な世界に一人の鬼が急に紛れ込んだ。
「大殿!」
己の手首を掴んで来た骨太な手と掠れ声に僅かに片眉を上げ、そのまま黒目だけ声の方へ向けると、勝家がおもむろに頭を数度振り、信長の目を見据えて搾り出すように言った。
「好い加減になされよ…。これでは、余りにも利家がむご過ぎまする…!」
「ククク…鬼柴田もついに耐え切れなくなった、か」
「…………」
何が可笑しいのかと心の中で反発しつつ利家へ目をやると、彼は自分の事など見えていない様子で相変わらず苦悶の表情で泣きじゃくっていた。
どうすれば虐待同然の辱めから利家を解放出来るのか。そう考える勝家の胸の内を読んだかのように、信長が笑いながら声をかける。
「利家を救いたいか」
「はっ」
信長の勘の良さに内心驚きながらもしっかりと返事をする勝家だったが、
「ならば利家の背後に回れ」
「?」
次に続いた命令の意味は分からぬ様子で小首を傾げた。それでも、彼は利家を救う為、ただ言われた通りに動く。
自分がこれから下す命を読めない純な鬼に信長は改めて笑みを強め、次の行動に移った。