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 長い学校から解放されて漸く戻って来れた自室の机の横に鞄を放り投げ、ベッドに背中から倒れこみながら望月はボンヤリと天井を眺めた。天井を眺めている内に思い出すのは親友の謎の熱視線。良ちゃん、俺が女の子と話してる時にじっとこっちを見てたような。もしかして、嫉妬してたとか!?  都合のいい方向に想像して思わず胸を高鳴らせるが、すぐに現実主義者な理性が現れて膨らんだ胸を瞬時に萎ませてしまう。まさかな。俺じゃあるまいし。嫉妬なんてする訳ないよな。
 溜め息を吐いてゴロリと横になると枕元に積み上げた漫画本が目に入る。その一冊の中から望月は挟んでいたらしい一枚の写真を抜き出した。良ちゃん、気付いてないだろ。お前の行動の一つ一つが気になるのを。お前が他の人と楽しそうに話してるのを見ると(と言っても交友関係が狭いお前だから、頻繁にその現場を見る訳じゃないけど)胸が苦しくなるのを。何かにつけて嫉妬してるのを。そして……。修学旅行の時に何気なく撮った写真の中で自分を見事に落とした笑顔を見せている親友に心の中で語り掛ける内に心の奥底に隠している汚れた欲望が沸沸と湧いて来て、無意識の内にベルトを外し始める。笑いかける写真の親友に望月は改めて心中でその欲望を告白した。そして……お前を激しく汚したいのを。

 全ては自分の妄想なのだから、そうなった過程など一切関係なく自分の思い通りに話は進む。気が付けば、早坂良麻が見知らぬ男に取り囲まれ、羽交い締めにされていた。
「な、何? 一体、僕に……ぅんっ!!」
 無骨な手で顎を掴まれ、ねっとりとした舌が早坂の唇を舐め回したかと思うと無遠慮に口内に割り入って来る。舌の感触に不快感を覚えたのか、早坂の瞳が固く閉じられた。
「んっ、ぁあ……ぁ」
 僅かでも口を開けて隙を見せれば厚い舌が中を蹂躙し、同時に早坂のシャツの首元に引っ掛けていた太い指を勢い良く下ろすとシャツは派手な音を立てて切り裂かれた。
「!!」
 胸部を露わにされる事で顔を赤くした早坂から漸く唇を離した男は赤く染まった知性的な顔を舐めるように眺めた後にペロリと舌なめずりをした。
「へへッ、可愛いねぇ。そんな顔されたら余計に汚したくなるじゃねぇか」
「やっ……嫌だ! 何で? 何で、こんな事するの!? 僕、何かした!?」
 何もしていないって言うのか? あの笑顔で人を魅了しておきながら。脳内で問う友人に妄想世界の外から低い声で答えながら、自分自身を激しく扱くと呆気なく露が溢れ出て手を濡らし始める。その手と同じように妄想の中では早坂の胸部が執拗に舐られる事で濡れ始めていた。
「だ、駄目……やめ、てよぉ!」
「何が駄目、だよ。こんなに感じて立たせてるくせに」
「ココも固くなってきてるぜ。若い若い。アハハハハッ!!」
 胸を舐られれば突起を生み、それに続くように男の象徴を熱くさせる。現実世界の彼がどうかは知らないが、自分の妄想世界で生きる彼はこのように感度良好・密かに淫乱。大人しそうな顔をして、実は色んな男相手に足を開いた(と言うとんでもなく都合のいい妄想設定を聞いたら、現実の彼はどう思うのやら)彼も知らない男と望まぬ性交を強いられる事は激しく拒絶。だから脳内の彼は必死に嫌だと泣き叫ぶが、その反応が自分と妄想内の男達の欲望を煽ってしまい、結果的には下も脱がされて(最も重要な個所は少し想像出来ないので、自分が今握り締めているそれで代用した)呆気なく床に押さえ付けられる。男達の手が彼の体をねちっこく愛撫し、その内の一人が舌を出しながら肉付きのいい双丘に顔を近づけた。
「ひあっ、あぁぁあああっ!! そ、そんな、トコ……やめっ、汚いっ……!」
「何言ってんだ。こんな美味しそうなケツ穴無視する馬鹿が何処にいるんだよ。それに、お前が“汚い”って言ってるココに今まで何回も、何本も色んな奴のちんこを咥え込んだんだろ?」
「そんなっ、言い方しないでっ!!あぅ、ぁ……っ、やああぁあーーーっ!!!」
 既に女のように濡らして男を求める涎を垂らしている蕾(実際は濡れるのか濡れないのかは知らないが、妄想世界の親友は世界の主である自分によって身体も都合のいい淫乱な作りにされていた)に一人が舌先を突っ込み、入り口付近で激しく動かして静かな門を抉じ開けようとすれば甲高い悲鳴が辺りに響く。その声が余りにも大きく、露骨に耳を押さえていた男がチッと小さく舌打ちをした後に落ちていた何かを拾い上げて、叫びを止めようとしない彼に近づいて来る。その足音に閉じっぱなしだった瞳が小さく開いたかと思うと、そのまま大きく見開かれた。
「ったく、喘ぎ声出すのは勝手だし、俺達も燃えるけど限度を考えろよな。声デカ過ぎるっつーの」
「んぐ、ぅっ……!」
 彼の叫び声を封じたのは、さっき無理矢理脱がされた彼自身の下着を丸め込まれた物。自分が履いていたそれを口に捻じ込まれると言う恥辱とこれから自分がされるであろう行為に彼は弱々しく啜り泣いたが、誰一人として胸を痛める事はなく、当然であるかのように一人が両足を掴みあげて派手に広げる。濡れた蕾に先端から早くも露を滲ませている雄が近づき、濡れた音を小さく立てて接触した。
「ん、ぅ……うぅぅっ!!」
 激しく首を振る事で最後の抵抗をするが、妄想の世界ではそのような行動に同情する者など何処にも居ない。全ては世界の主の思い通りに事は進み、熱い肉杭が勢い良く彼の中に押し込まれた。
「んんんぅーーーーっ!!!」
 篭った悲鳴を搾り出し、余りの衝撃に身体をビクビクと痙攣させる姿は自分の下半身を絞るように熱くする。想像以上の熱に妄想の主は熱い溜め息を一つ吐き、改めて脳内でもがく親友の身体を貪り始めた。

「こんにちはーっ」
「あら、良麻ちゃん。いらっしゃい」
 自宅の玄関で母親の出迎えを受けたのは現実世界の早坂良麻。前掛けで手を拭きながら現れた親友の母親にペコリと改めて軽いお辞儀をした後、ニッコリと笑顔を見せた。
「駿くん、大丈夫ですか? お腹の調子が悪いって言ってたから、少し様子見に来てみたんですけど」
「まぁ、わざわざ御見舞いに来てくれたの? ホント、良麻ちゃんは優しいわね。あの子ったら馬鹿みたいにアイス食べた挙句、お腹出して寝てたのよ? お腹壊さない方がおかしいわよ」
 親友の腹の不調の理由を初めて知った早坂は一瞬、きょとんと目を丸くしたが即座に小さく吹き出し、そのまま声を出して笑い出した。
「アハハッ、そうだったんですね。駿くんはお部屋ですか?」
「えぇ、きっと部屋でゴロゴロしてると思うから見に行ってあげて。」
「はい、お邪魔します」
 脱いだ靴を揃えて、玄関先の階段に向かった早坂の背中に向かって望月の母親は、あぁそうそうと声をかけた。
「後でお茶とお菓子を持って行くわ。何がいいかしら?」
「いえ、お構いなくー」
 振り向きざまにお得意(と言っても当の本人は無意識なのだが)の愛くるしい笑顔を見せながら、早坂は親友の部屋目指して階段を上り始めた。

「ぃやっ……嫌ぁああぁぁ……」
 嬌声を求めて解放された口からお望み通りの喘ぎ声を吐き続ける親友の相手は何時しか自分になっていて、涙混じりの拒絶の声を心地良く聞きながら、彼の最奥まで己を捻じ込む事で彼の身体を堪能していた。
「あぅ、んっ……あぁっ! ……あんぁ、あっ、あんっ! あっ、あっ」
 彼の口から漏れる声が、先日悪友と鑑賞したアダルトビデオの女優のそれと見事に重なったが、性交時の喘ぎ声など、その手のビデオ以外に聞いた事がないので仕方がない。イマイチ知識が少ない自分の妄想内で彼はアダルトビデオそのままの嬌声を吐きながら、ガクガクと身体を揺さぶった。
「はぁっ、ぁ……お、お願いっ、せめて、出す時は外に出してっ、妊娠しちゃう……」
 脳内で親友の喘ぎ声を紡ぎながら、理性の何処かが冷静に呟く。分かってる。彼が妊娠する訳ないって事くらい。だが、今の彼が居る世界は自分の妄想世界。妄想なのだから何をしても許される。彼を欲望のままに押さえ付けたって、自分の思い通りの淫乱な身体にしたって、力ずくでレイプしたって、挙句の果てには彼が子を宿す身体にしてしまったって、全てが自分の作った脳内世界での話なのだから許される事なのだ。だから、妄想世界の中の自分は何も言わずに彼の身体を押さえ付け、止めてと泣き叫ぶ彼の中で全てを吐き出そうと激しく下半身を揺らす。
「良ちゃん……良ちゃんっ……」
 現実世界と妄想世界の自分が無意識の内に口にした低い呻きが重なり、現実の自分も妄想の自分も絶頂が近い事を感じる。現実の自分の手の動きが速まり、妄想の自分の律動も同じく速まる。先に絶頂を迎えたのは妄想内の自分だった。
「やっ……駄目ぇええーーっ!!! 妊娠しちゃっ……赤ちゃん出来るうぅ!!」
 現実では絶対に有り得ない程の多量の種が止め処なく彼の中に叩き付けられ、子を宿せると言う都合の良すぎる身体の親友が自分の肩に爪を立てながら裏返った声で泣き叫ぶ。それでも腰を引かずに中に注ぎ続け、数十秒後に漸く射出が止まって下半身を離した時、自分を飲み込み続けた彼の蕾からはトロトロと白濁が溢れ、瞬く間に地面に広がって行った。
「っく、ヒック……ひどいよ……」
 頬を濡らす涙も拭わずに身体を小刻みに震わせる彼の弱々しい台詞を何処か遠く感じながら、現実世界の自分も今まさに絶頂を迎えようと………

「しゅーん君!」
「――――――っ!!」
 妄想世界を一瞬にして無に還し、強制的に自分を現実に引き戻したのは、一瞬前まで自分の脳内で徹底的に汚されていた親友の自分を呼ぶ声。自分でも情けない顔をしている事を感じながら、恐る恐る背後を振り向くとドアを開けた状態で立っている親友の笑顔と向かい合う形になってしまい、反射的に顔が茹でられてしまう。予想外の反応に笑顔を見せていた早坂は微かに首を傾げたが、何となく視線を望月の顔から下へ動かすと同時に顔を真っ赤にして目を反らした。
「えっ、えっと、その、ゴメン……」
「い、いや、別に……」
 我ながら間抜けな台詞を吐いていると互いに思いながら、早坂は壁を見詰め続け、望月はその間にいそいそと脱いでいたズボンを引き上げてベルトを締める。望月がズボンを履いた事を横目でチラリと確認した早坂は改めて笑顔を作って(と言っても、その笑顔は何時もの笑顔ではなく、引き攣り笑いだった)ベッドに座る望月の隣にちょこんと座った。
「あ、あの、恥ずかしい事じゃないんだよ? 僕達くらいの年頃の男は皆してるんだから。駿くん、元気いい証拠なんだよ」
「あ、あぁ」
 自慰行為を見られた気恥ずかしさも勿論あったが、何よりも隣で保健教師のような話をしている親友を脳内で汚す事によって絶頂を迎えようとした罪悪感が望月の視線を自然と下にする。床の一点を見詰めたまま微動だにしない望月に早坂は困り顔を浮かべたが、即座にそうそう、と話題を切り替えた。
「駿くん、お腹の調子悪いって言ってたからさ。御見舞いついでにコレ持って来たんだよ。ほら、コレ凄くやりたいって言ってただろう?」
手にしていた袋から出て来たのは、望月が以前から借りたがっていた新作のゲームソフト。普段ならそれを見るなり飛びついてゲーム機の中に押し込むのだろうが、流石に今はそのような気分にはなれなかった。
「あぁ、サンキュ。其処ら辺に置いといてくれ。後でやるから」
「何か、感動薄いね。あんなに“早くクリアして俺に貸せ”って急かしたくせに。君が急かすから、余りやりこみもしないで早解きしたんだよ? 別にいいけどさ」
 ブツブツ言いながら、袋に戻したゲームソフトをベッドの端に置いている間も望月はピクリとも動かない。早坂は余りにも落ち込みが激しい親友の顔を心配そうに覗き込んだ。
「ホント、気にしなくてもいい事なんだよ? その、僕だってしてるし。正直言うと真っ昼間からしてたのにはビックリした……い、いや、否定してる訳じゃないんだ。何て言うか……昼間からしてたら家の人とか僕みたいに遊びに来た人に見られる可能性が高くなるだろうなって」
「……」
「……」
 普段その手の猥談等はしたがらず、話をふれば真っ赤な顔をして嫌がる彼にここまで性的な話をさせている事に新たな罪悪感を覚えるが、どうする事も出来ずに黙るのみ。自分でも良くないと思っている反応に早坂は小さく溜め息を吐いたが、めげずに敢えて明るい笑顔を作って話し掛けた。
「ね、ねぇ、駿くんって、その、何を使ってするの? やっぱりHな本とかビデオ?」
「え? いや、その……」
 答えられる訳がない。お前を脳内で犯して抜きました、なんて。口の中でモゴモゴと“その”だの”いや”だの繰り返す望月の横顔を早坂はジッと見詰めていたが、ゴメンと謝罪の言葉を突然口にした。
「変な事聞いちゃったね。こんなの聞く方が間違ってた。本当にゴメン、困らせて」
 お前は悪くない。謝りたいのはこっちの方だ。漸く顔を上げるが、頭に浮かんだ台詞は口に出来ず、ただ首を横に振るだけという情けない反応。それでも早坂は漸く嬉しそうな笑顔を見せた。
「良かった。やっと顔を上げてくれたね。折角だからゲームでもしようか。コレ、慣れるまでがちょっと難しいから教えるよ」
 ベッドの端に置いたゲームソフトに手を伸ばす早坂の背中をぼんやりと見詰めていたが、ある事を思い出した途端に冷や汗が噴き出し始める。ヤバイヤバイヤバイ。最初にアイツが部屋に来た時、反射的にさっきの写真を隠したのはいいが、隠し場所がアイツがソフト置いた場所のすぐ横にある枕の下。しかも、上手い具合に写真の端が枕の下から見えている。あぁ、神様。アイツを妄想で汚した事は謝ります。ですから、お願いです。どうか、あの写真が良ちゃんに見つかりませんよう……
「あれ? 枕の下に写真敷いてるの?」
 神のアホーッ!! 祈りも空しく、呆気なく写真の端が早坂に見付かってしまい、左手が写真をスッと抜き取る。まだ写真の内容を知らない彼の呑気な声が望月の胸を抉り始めた。
「何だぁ。好きな人の写真でアレしてたの? 駿くん、好きな女の子いたんだね。あ、それともグラビアアイドルかな? じゃんじゃじゃー……えっ?!」
 何とかして場の空気を平穏にしようとしているのか、彼らしからぬテンションの高さ(しかも効果音を口で言う辺り、かなり必死なようだ)で写真をぺラッと表に返した瞬間、部屋の空気がビシッと固まるのを感じた。
「な、何? 何なの? こ、これ、僕の写真じゃないか……え? 何? どうして? どう言う事?」
「ど、どう言う事って……い、いやっ! ち、違うんだ良ちゃん! 俺、そんなつもりじゃ」
「そんなつもりって、どう言うつもり!? ね、ねぇ、冗談だよね? 君が僕を、その、ネタにして、アレする訳ないよね?」
「あ、当たり前だろ? 何言ってんだよ! アルバム整理してたら、たまたまその写真が風で飛んで……そっかぁ、枕の下にあったのか。それじゃ見付からねぇわな。ハハハハ……」
 写真を両手に持ったまま何処となく声を震わせる早坂に対して、望月は即興で作った嘘を口にして乾いた笑い声をあげるが、早坂は瞬く間に顔を赤くして眉を釣り上げた。
「嘘だ! 僕、知ってるんだよ? 君が嘘吐くと、小さく頬が引き攣れるのを! 嘘吐き!!」
「えっ!?」
 自分でも知らなかった事実に慌てて引き攣れたらしい頬を両手で隠すようにして揉み解したが、全ては既に手遅れで早坂は自分を強く睨み付けたまま、唇を小さく震わせていた。
「信じられないよ。僕、もう帰る」
「りょ、良ちゃ」
「バイバイ!」
 バタンッ! 言い訳など聞きたくないと言わんばかりに鋭い声と共にドアを強く締め、階段を下りて行く音が耳に遠く入って来る。オイオイ。望月は小さく溜め息を吐いて項垂れながら呟いた。じゃあ、何だ。嘘吐かれるのが嫌なら正直に言って欲しかったのか? お前を脳内でレイプして気持ちよくイカせて貰いましたって。それ聞いて、お前普通でいられるか? 多分、さっきと同じ位、いや、それ以上に怒るだろ? 結局、俺どうする事も出来ないじゃん。ま、お前をネタにした俺が悪いんだろうけど……

「あら、良麻ちゃん。もう帰るの? 今、お菓子持って行こうと……」
「あ。す、すみません。折角用意してくれたのに……でも、僕今日は帰ります。お邪魔しました」
 玄関まで様子を見に来た望月の母親が持つ菓子やジュースの乗った盆を見た早坂は一瞬、辛そうに眉を顰めたが、結局シューズの靴先でトントンと軽く床を叩いた後、さようなら 、と最初に来た時と同じように軽いお辞儀をして去って行った。その去っていく早坂の肩が微妙に落ちている事に気が付いた母親は盆を階段下に置くと、そのまま階段を上がって息子の部屋のドアをノックした。
「ちょっと、駿! またアンタ良麻ちゃんに変な事言ったりしたりしたんでしょ! 駄目でしょ? あの子、アンタと違って繊細で傷付きやすいんだから」
「何もしてねーよっ! ちょっとほっといてくれよ!!」
「……後でちゃんと謝るのよ?」
 ドアの中から聞こえた苛立ちの声に母親は大きく息を吐き、ゆっくりと階段を下りていった。

「ちぇっ」
 誰にともなく舌打ちをしながらベッドに倒れ込み、枕の下から抜き出された親友の写真をジッと眺める。実物の彼とは違い、写真の中の彼は常に愛くるしい笑顔を見せている。だが、その事も今は微妙に空しいだけだった。実物の彼の怒りが治まって、何時もどおり接するのにどれだけかかるだろう。その怒りの度合いによって期間も変わってくるのだろうが、今回のケースは。学校から帰って放り投げたきり放置されていた鞄からメールの着信音が聞こえて来てボンヤリと計算していた望月を派手に起き上がらせる。密かに胸を高鳴らせながら鞄から携帯電話を引っ張り出して開くと、期待していた人物からのメールである事が分かった。あぁ、良かった。きっと、家に帰ってから少し頭が冷えたんだな。それで“さっきは怒ってゴメン”って口で言うのは恥ずかしいから、わざわざメール送って……。まったく、良ちゃんらしいな。返事? 勿論“気にするな。今からまたウチに来いよ”って返事を即送信……
『僕、明日一人で学校に行くから』
 光が、闇。無情な一言に望月はガックリと頭を垂れた。