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太陽を見る(ティスコ)

  • 2012/05/21 23:28
  • カテゴリー:FF
現代パロで、幼馴染兼恋人なティスコ。ティスコと言い張る。
日食ネタです。





テレビニュースで何度も流れていて、それを目にして耳にしていても、やはり興味がないと、その情報は頭から抜け落ちて行くものである。
増して、“それ”を見る事が出来るのは、スコールが大の苦手な早朝であると言う。
いつも通りの時間、学校に間に合う時間に起きるのも大変だと言うのに、それより早く目を覚ませなんて、無理難題も良い所だ。

けれど、幼馴染兼恋人であるティーダは、どうしても一緒に見たいのだと言って聞かない。

毎朝、早朝ランニングをしている彼にとって、早起きは苦ではないのだろう。
だから、スコールがどれだけ早起きが苦手か、その為にどれだけの苦労をしなければならないか、彼には判らないのだ。


100年に一度だの、200年に一度だのと言われても、スコールは興味がない。
それも、その現象が見られるのは、一時間二時間程度のものだと言う。
その一時の為だけに、多大な労を要して早起きしろだなんて言われても、スコールは到底気が進まなかった。

─────でも、



『100年に一度しか出来ない思い出っスよ。一緒の思い出にしたいじゃん!』



……きらきらとした青の瞳に見つめられて、そんな事を言われて、スコールがそれ以上拒否できる訳もなく。
流される形で「判った」と返事をしてしまって、当日に至る。


が、約束はしたものの、その日だけ調子良く早起き出来た、なんて事はなく、スコールはその日の朝もいつも通りに眠り続けていた。
昨夜は早めに眠り、携帯電話のアラームも、常よりも一時間以上早くセットしたが、そんなものは関係ない。
鳴り出したアラームは、寝惚けたまま手探りで停止させ、布団の奥に潜り込んで尚も睡眠を貪り続けている。

そんな彼を強引に現実世界へと引っ張ったのは、ランニング帰りの恋人の声だった。



「スコール!おっはよーっス!」



窓の向こうから響く声に、スコールの整った眉が潜められる。

むぅ、と唸って布団の中に潜り込むスコールだったが、呼ぶ声は二度三度と繰り返された。
それでも無視を決め込んでいると、呼ぶ声が止み、代わりにドタドタと階段を駆け上がる音。



「スコール、おはよー!」
「…………うるさ……」



部屋のドアを開けて響き渡る、元気の良過ぎる声。
低血圧のスコールには、毎度頭痛の種であった。

入って来たのは、近所に住んでいる幼馴染のティーダで、現在は恋人関係となっている。
この関係は両方の親公認で、特にティーダの父親のジェクトは、度々息子をけしかける形で二人の関係の発展を願っているらしい。
スコールの父親の方は、なんとも複雑な気持ち(曰く「息子を嫁に送る気持ち」らしい)のようだが、基本的には賛成してくれた。
お陰で、幼馴染だった頃の距離のまま、新たに“恋人”になって、日々を共に過ごしている。

だから早朝からのティーダの襲撃にも、咎める声がないのだ。
同居している父親はまだ寝ているだろうし、義姉も慣れたもので、「ティーダ君、朝ご飯いるー?」なんて声が階下から聞こえて来たりする。


ティーダは義姉に「食べるっスー!」と元気に返した後、スコールが被っている布団を無理やりはぎ取った。



「ティーダ、寒い……」
「起きれば気にならないっスよ。ほら、早く起きた起きた!」
「うぅ……」



無視してもう一度布団に包まろうにも、シーツはティーダに没収されている。
寝転んだままでいれば、間違いなくティーダの連呼攻撃と揺さぶり攻撃に遭うだろう。
寝起きの頭に耳元で賑やかにされるのも、脳を揺さぶられるのも、勘弁して欲しい。

仕方なくスコールが起き上がると、ティーダはスコールの手を引いてベッドから立たせた。
ティーダは、ふらふらとした足取りのスコールを、窓辺へと連れて行く。



「はい、これ」
「……ん…?」



ティーダがジャージのポケットから取出し、差し出した物を受け取る。
見ると、板紙に黒い遮光テープが貼られた、小学校の理科の授業で使った太陽グラスだった。



「お前、まだこんなもの持ってたのか?小学生の頃のだろ」
「ん?いや、これ買ったんスよ」
「買った?…どうせ今日しか使わないのに、わざわざ?」



そんな事をしてまで日食が見たかったのか、と呆れたように眉を潜めるスコールに、まあいいじゃん、とティーダが笑って、窓のカーテンを開ける。

空は雲一つない晴天に恵まれているのだが、心持ち、薄暗いように見える。
朝と言うよりも、夕方の明るさ────と言うのが一番近いだろうか。


ティーダは窓を開けると、太陽グラスを翳して早速太陽を見上げようとする。



「ちょっと待て、ティーダ。いきなり見るな」
「大丈夫っス、これ使ってるし」
「それでも駄目だ。使い方はちゃんと習っただろう」
「覚えてないっスよ……もう、いいからスコールも見ろって。今丁度、輪っかになって見える所だからさ!」



言って、ティーダはスコールの手にあった太陽グラスを取り、スコールの眼の前に掲げる。
そんな事をされて、見ろ、と言われても、無理な話だ。

スコールは無言で太陽グラスを取り上げ、自分で目元に宛がった。
十分に暗闇の視界を鳴らしてから、空を見る。
すると、真っ暗でしかなった視界の中に、ぽっかりと光の輪が浮き上がって見えた。



「な、見える?」



隣の声に、スコールは小さく頷く。
へへ、と楽しそうに笑うのが聞こえた。

グラス越しに見える光の輪。
金環日食、と呼び名わされるその現象は、人生の中でそう簡単にお目にかかれるものではないらしい。
だから、見れると言う事そのものが、とても貴重な体験────なのだろうけれど。


太陽グラスをかけたまま、スコールは隣を見た。
其処に幼馴染の顔はなく、視界は真っ黒に塗りつぶされて閉ざされている。



「スコール?」



名前を呼ぶ恋人の顔も、其処には映らない。

グラスを外すと、不思議そうに覗き込んでくる青とぶつかった。
ん?と首を傾げるティーダに、スコールはひらりと太陽グラスを翳して見せ、



「駄目だな。見えない」
「え、マジっスか?でもさっき見えるって」
「見えなかった。……まあ、これが見えなくても、別に問題はないんだが」
「ちょっと貸して」



差し出された手に、スコールは自分の太陽グラスを置いた。
ティーダがそれを翳して太陽を見る。



「……見えてるっスよ?」
「そっちはな」
「?」



どういう意味、と問うてくる青に、スコールは答えなかった。

耳が熱いのは、きっと、絶対、気の所為だ。




そんなもの、最初からいらないんだ。

だってそんなものがなくたって、お前の顔は見えるから。







日食なので、太陽のティーダと。
ティスコだって言い張るよ、これでも。ティスコだよ!

特別な思い出を共有したくて、色々やったり連れて行ったりするティーダと、お前がいればそれでいい、なスコール。私のティスコのイメージは、大体そんな感じです。多分。
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