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[バツスコ]冷たい手

  • 2013/05/08 23:14
  • カテゴリー:FF


スコールの手は冷たい。
それで良いと、バッツは思っている。

握った手から伝わる体温を感じながら、バッツはそう思った。


「……おい」


ジタンやティーダ、ルーネスやフリオニールは、高い体温を持っている。
本人の体質なのか、若しくは気質なのか、まあその辺りが原因だろうとバッツは思っている。
割と低いのがクラウドやセシルで、ティナは精神状態が体調に影響するタイプなのか、落ち付いている時は温かく、不安や焦っている時には体温が低下しているような気がする(バッツの思い込みかも知れないが)。
一貫して、正しく恒温であると思えるのはウォーリア・オブ・ライトで、温度的には、ジタン達に近しいような気がする。

そんな秩序の面々の中で、スコールは特に体温が低い。
バッツは自分の体温が高い方だと自覚があるが、その手で彼の手を握ると、体温の違いがありありと感じられた。


「……おい、バッツ」


感じられる温度の低さと、彼の手が白いからだろうか。
まるで雪みたいだ、とバッツは思う。

スコールはいつも長袖のジャケットを着ており、手には黒い手袋を嵌めている。
時折袖と手袋の隙間に、白い手首が覗く事があった。
僅かに覗く肌が白いのだから、完全防備している場所など尚更で、日焼けと言う言葉を知らないかのよう。
顔や首、シャツの襟縁から見える肌も白いので、ひょっとしたら日焼け自体が無理なのかも知れない。

日焼けをしたら、もう少し雰囲気も違って見えるのだろうか。
そんな事を考えて、目の前の少年が、太陽のような少年のように健康的に日焼けをしている姿を想像しようとして、上手くまとまらなかった。


「バッツ、手を離せ」


こう言ったら彼はきっと怒るだろう。
戦士にしては細いシルエットと、雪のように白い肌と、低い体温を感じる度、バッツは、彼がいつか雪のように溶けて消える日が来るのではないかと思う事がある。

目の前の存在を、か弱い人間だと思っている訳ではない。
ウェイト不足を補って余りある知識や機動力、観察眼は、正に彼が“傭兵”として幼い頃から戦う術を身に付けて来たのだと言う事を実感させる。
手袋をしている所為か、フリオニールやセシル程はっきりとはしないが、剣胼胝もあるし、裸になれば細い背中や肩に古傷のようなものもある。

けれども、何処か儚いのだ。
何かが酷くぎこちなく、頼りなく見えてならない。
それは多分、大人びているのに、時折置いて行かれた子供のような顔をする事があるからだ。


「……バッツ?」


覗き込んでくる青灰色は、いつもの鋭さを感じさせない。
そんな時、彼がまだ幼さを残す“少年”である事を、改めて実感する。


「どうしたんだ、あんた。さっきから」


バッツの手の中で、冷たい手がぎこちなく動いている。
振り払うべきなのか、それともこのままでいるべきなのか、迷いの表れだった。

ちらちらと此方を覗き見る青灰色は、きっと此方から見ようとしたら逃げてしまう。
それは嫌だな、と思うから、バッツはじっと、自分の手の中で迷っている白い手を見つめ続けていた。


「………」


白い雪は、熱に触れると、熔けて消える。
溶けて消えて水になり、大地の底へと沁み渡って行くからこそ、緑が萌えて、沢山の命が輪を描く。
溶けて消えてしまう儚い存在だからこそ、一瞬の美しさは旅人の記憶に焼き付いて、消えない。

たった一度、ほんの一瞬の刹那を生きる、六花。
それがどれ程美しく、尊く、気高いものか、記憶はなくとも沢山の風景に触れていたバッツには判る。

けれど、目の前の少年が消えてしまうのは、困る。
その瞬間が、どんなに美しく気高いものであったとしても。


「……バッツ。何か言え」


ぎゅう、と白い手を強く握り締める。
驚いたようにビクッとしたのが判ったけれど、離さなかった。


「なあ」


久方ぶりに声を出すと、また驚いたように、彼の冷たい手がビクッと跳ねた。


「なん、だ」
「しばらく、こうしてても良いか?」


逃げ勝ちな手を確りと捕まえて言えば、暫くも何も、もうずっとこのままでいるじゃないか、と青灰色が言う。

自分の手の中で、冷たいスコールの手が、じんわりと熱を帯びて行く。
それでもバッツの体温よりも低い訳で、やっぱりスコールの手は冷たいんだなとバッツは一人ごちた。

ちら、とスコールの顔を覗いてみると、白い頬が微かに赤い。
其処に触れたら、其処もいつもよりも熱いのかな、とバッツは思った。
手を伸ばしたくなったが、そうするときっと彼は逃げるから、代わりにぎゅうと手を握る。


「……何してるんだ、あんた……」


意味不明だ、と呟くスコールに、なんだろうなあ、とバッツは呟いた。
ふざけているなら離せ、と冷たい手に力が篭ったが、バッツはそれよりも強い力で、彼の手を握り続けた。




スコールの手は冷たい。
今はそれで良いと、バッツは思っている。
冷たい手が、時折、彼の気持ちを表すように、僅かに上昇するのが判るから。

ただ、願わくば、この冷たい手が雪のように溶けて消える事のないように、自分の熱がほんの少しでも彼に分け与えられたら良いと思う。






5月8日と言う事で、バツスコ……の筈なんだがこれは誰だ。

真面目にスコールを振り回すバッツでした。
握られた時点で振り払おうとしていないから、スコールの方もまんざらではない感じ。
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