[ジョン+スコ]不思議なパズル 1
- 2018/06/08 22:00
- カテゴリー:FF
6月8日と言う事で、ジョン+スコール。敢えての“ジョン”で通します。
と言うよりは朗読劇組の四人です。少し朗読劇のネタバレもあり。
隕石の衝突のような現象の後、神々の闘争を代行する戦士達の前に現れた、記憶喪失の青年───ジョン。
記憶喪失であるが為に、自分自身がどう言う人間なのかも判らないまま、訳の判らない世界で過ごす事になった彼は、最初に彼を見付けたと言う縁も重ねてか、クラウド、スコール、ティーダの三人が当面の面倒を任された。
彼にこの世界のあらましを説明する傍ら、記憶喪失と言う本人の言も含めて怪しむスコールと、彼と援けたいと思うティーダの間で少なからず衝突が繰り返されたが、何度かの衝突の後のジョンの行動から、スコールの疑心も解けた。
その後、ジョンを狙うセフィロスの乱入により、一行が危機に陥る場面もあったものの、ジョンが所持していた召喚獣の力を使い、その場もなんとか納められた形となった。
直後にティーダは、ジョンが元の世界に戻る為、何やら急がねばならないと言ったのだが、どうやらそれ程急がなければならない、と言う事もなかったらしい。
本人曰く、ジョンは「死にかけていたが召喚獣のお陰で助かった」状態らしく、ティーダが言う“魔列車”と言うメ冥府行の急行列車に乗る必要はないそうだ。
それを聞いたスコールが、まさか本当に“John Doe”≠身元不明の死体になりかけていたとは、とひっそりと自分がつけた名前が強ち外れていなかった事に複雑な顔をしていた事は、誰も知らない。
ともかく、そのお陰でジョンは魔列車とやらに急ぐ必要もなく、元の世界に戻る為の安定した別の手段が見つかるまで、もう暫し一行の厄介になる事となったのである。
闘争の世界で過ごす内、マーテリアの陣営に与する者の中で、ジョンの事を知らない者はいない。
成行き的に参戦する事になった経緯や、彼が持っていた召喚獣フェニックス等、判明した事が増える度にクラウド達はジョンを連れて本陣へと帰還し、報告を行っている為、その度にマーテリア陣営の戦士と顔を合わせているのだ。
元々マーテリアに召喚された訳ではないジョンは、他の面々よりも一足先に帰る事が半ば確定されているようなもので、それを羨ましがる者の姿もいるのだが、それはそれとして、マーテリア陣営の戦士は概ねジョンに対して好意的だ。
以前のスコール同様、怪しんで警戒する者もいない訳ではなかったが、セフィロスとの衝突の経緯を説明すれば、少なくともジョンがセフィロスと同じ側───スピリタス陣営に与している訳ではない事は確かと言えた。
そんな面々に対しても、ジョンは「事故みたいな形で此処にいるんだから、怪しまれるのは仕方がない」と存外と大人な反応をしている。
元々、スコールが警戒を剥き出しにし、厳しい当たりをしていた時でも、そう言った反応をしていた人物である。
何処か飄々としながら、達観した物言いも垣間見える事、ジタンと並べる程の身軽さや気配を殺す実力等、相当な修羅場を潜ってきたであろう事は確かだ。
何より、先のセフィロスの戦闘の折、この世界に落ちてきた時に失われてしまった記憶も取り戻す事が出来たようで、自分自身の立ち位置やアイデンティティが確りと保てているのが、ジョンに余裕を齎しているのだろう。
記憶喪失の間は、自分がどうすれば良いのかも判らなかった為、基本的には受動であるようにと行動していたジョン。
クラウド達が彼の面倒を任されたのも、そう言った経緯があっての事だ。
ジョンの方も、刷り込みではないが、初めに自分を見付け、他の者よりも早く会話を交えた面々と一緒にいる方が、比較的気が楽と思っていた。
しかし、ジョンは案外と社交的な性格で、自分のテリトリーに踏み込まれる事にもそれ程強い抵抗を感じないようで、今ではクラウド達以外の戦士ともよく会話を交わしている。
が、現在に至るまでの経緯もあってか、散策に出かける時には、大抵クラウド、スコール、ティーダと言ったメンバーと一緒にいる事が多かった。
今日も例に漏れず、ジョンはクラウド、スコール、ティーダの三名と共に散策に出かけた。
神々の闘争の世界は、日に日に世界が拡張されており、その副産物であるのか、地形の変化等も少なからず起きていた。
イミテーションの出現も各地に確認され、陣営同士の戦闘の際に乱入して来ると言った邪魔も起きる為、定期的に掃除が行われている。
出発してから二つ目の歪を開放し、移動ルートの安全を確保して、一行は歪を脱出する。
歪の出入口は、前日に確認した時よりも僅かに位置を変えていたが、ポイントで言えば誤差程度だ。
地形の変化と照らし合わせつつ、今後も使って行ける事を確かめて、次の歪の場所まで移動する。
散策の過程は、大体がこうしたものとなっていた。
次の目的地まで向かう道すがら、ジョンは前を歩くチョコレートと蜂蜜の色をじっと観察していた。
昨日の出来事、その前の出来事、今の目の前にある物の話と、蜂蜜色───ティーダの話は尽きない。
喋っていないと間が持たないと感じる性格の彼は、常に雑談を提供してくれる。
チョコレート色───スコールはそれを面倒臭そうな顔をしながら聞き流しており、時折、「どう思う?」等と食いついてくるティーダに、適当な返事を返していた。
その返事が見るからに適当なものだから、ティーダは剥れて「真面目に聞いてるんだってー!」と抗議するように言った。
それをスコールが、煩い、と言うように片手をひらひらと払って見せたりするから、ティーダは益々ムキになる。
もう何度見たか判らない二人のそんな遣り取りを、ジョンがじっと観察していると、隣を歩く男───クラウドに声をかけられた。
「随分熱心に見ているが、面白い話でもあったか?」
「ん?いやいや、そう言う訳じゃないんだけどな」
進む足を止めず動かしながら、ジョンはバンダナを巻いた頭をぽりぽりと掻いて、
「あれだけ素っ気なくされてるのに、よく話しかけられるもんだと思ってさ」
「ふむ。俺達はもう見慣れてしまったが、言われてみれば、そうかも知れないな」
ジョンの言葉に、クラウドは前を歩く二人を見て、認識を再確認するように呟いた。
「だが、あれでも丸くなった方なんだ。前の闘争の時は、もっとピリピリしていたし」
「そうなのか?……あれで丸くなってるのか……」
ジョンの前には、いよいよ本気でティーダを無視し始めたスコールの姿がある。
すたすたと歩く速度を上げ、ティーダを置いていく気の歩調だ。
ティーダはそんなスコールの背中に突進宜しく抱き着いて、なあなあなあ、とまるで遊んで貰いたがる大型犬のようである。
スコールはそんなティーダに、相手にしたら負けだと言わんばかりに、彼を腰に巻きつかせたまま、ずるずると引き摺って歩いていた。
歩き難くないんだろうか、とジョンは眺めつつ思う。
「なんて言うか、余り人と馴れ合わないって言うか……そう言う感じがするんだ。割と熱くもなるみたいだから、クールなばかりでもないって言う感じもするけど」
「まあ、初めて逢った人間には、あいつはかなり取っ付き難く見えるだろうな。だがそれはスコールから見ても同じなんだ。あんたも見た通り、かなり警戒心が強い性格だから」
「ああ……はは、確かにかなり疑われてたな。無理もないけど」
和解に至るまでの一連の経緯を改めて思い出し、ジョンは苦笑いする。
色々と刺さるような事を言われたが、しかしそれも言われて当然の事であったとは思う。
ティーダが自分を庇い、クラウドが間に立ってくれていなければ、ジョンの心が折れていた事も想像に難くない。
それ程、あの頃のスコールは警戒心を剥き出しにしていたのだ。
「悪いが、あの時点では俺もあんたを全面信用はしていなかった。あんたが“どっち側”なのかも判らなかったからな」
「神様の闘争って奴か。俺はあまりその戦いってのにも参加させて貰ってないからまだよく判らないんだけど、そんなに癖の強い奴がいるのか?こっち側にはそんな感じの奴はいない気がするんだけど」
「ああ。今回こっち側にいるのは、良くも悪くも素直なのが多いな。だからスコールは余計に警戒したんだろう。誰かが疑わなければ、いざと言う時に甚大な被害が出る。それは避けるべき事だったから、スコールがその為に嫌われ役になった。……少し損な役回りをさせたな。あいつもそう言う役割が得意な訳じゃないのに」
悪い事をした、と呟くクラウドに、ジョンはそうだったのか、と一人ごちた。
同時に、セフィロスとの戦闘の際、意識を失っていた自分を背負っていた時に聞いた言葉を思い出す。
「……なあ。お前、“リノア”って知ってるか?」
「いや。初めて聞くが、人名か?」
「多分。スコールが前にその名前を言ってたのを聞いただけなんだけどさ」
それは、セフィロスとの戦闘の直前、ジョンが激しい頭痛を感じて気を失った後の事。
ティーダは何処かへと走り、セフィロスとの戦闘はクラウドに任せ、一先ずスコールがジョンを背負い戦線離脱していた時、スコールはその名を口にした。
あの時、ジョンの意識は現実に帰ってきており、独り言だったのであろうスコールの呟きを聞いてしまった。
抱き締めるように零れた言の葉の詳細を、ジョンは聞いていないが、それでも感じる事はあった。
きっとあの名前は、スコールにとって、酷く大切なものだったのだろう────と。
あの時にジョンがスコールに対して感じたのは、それ以前の頑なさや堅苦しさとは違う、青臭さだ。
目覚めていたのにそれを言わず、きっと誰にも聞かれたくなかったのだろう呟きを聞き留めて笑ったジョンに、スコールは顔を赤くして怒って見せた。
その時のスコールの表情は、それまでの刺々しい言動とは裏腹に、随分と幼く見えたものだ。
それを思い出して、ティーダを引き摺るスコールを眺めるジョンの双眸が細められる。
「なんて言うか……スコールって、見た目の割に少し子供っぽい所があるな」
「見た目の割には、か」
ジョンの呟きに、クラウドがくつくつと喉を震わせながら言った。
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と言うよりは朗読劇組の四人です。少し朗読劇のネタバレもあり。
隕石の衝突のような現象の後、神々の闘争を代行する戦士達の前に現れた、記憶喪失の青年───ジョン。
記憶喪失であるが為に、自分自身がどう言う人間なのかも判らないまま、訳の判らない世界で過ごす事になった彼は、最初に彼を見付けたと言う縁も重ねてか、クラウド、スコール、ティーダの三人が当面の面倒を任された。
彼にこの世界のあらましを説明する傍ら、記憶喪失と言う本人の言も含めて怪しむスコールと、彼と援けたいと思うティーダの間で少なからず衝突が繰り返されたが、何度かの衝突の後のジョンの行動から、スコールの疑心も解けた。
その後、ジョンを狙うセフィロスの乱入により、一行が危機に陥る場面もあったものの、ジョンが所持していた召喚獣の力を使い、その場もなんとか納められた形となった。
直後にティーダは、ジョンが元の世界に戻る為、何やら急がねばならないと言ったのだが、どうやらそれ程急がなければならない、と言う事もなかったらしい。
本人曰く、ジョンは「死にかけていたが召喚獣のお陰で助かった」状態らしく、ティーダが言う“魔列車”と言うメ冥府行の急行列車に乗る必要はないそうだ。
それを聞いたスコールが、まさか本当に“John Doe”≠身元不明の死体になりかけていたとは、とひっそりと自分がつけた名前が強ち外れていなかった事に複雑な顔をしていた事は、誰も知らない。
ともかく、そのお陰でジョンは魔列車とやらに急ぐ必要もなく、元の世界に戻る為の安定した別の手段が見つかるまで、もう暫し一行の厄介になる事となったのである。
闘争の世界で過ごす内、マーテリアの陣営に与する者の中で、ジョンの事を知らない者はいない。
成行き的に参戦する事になった経緯や、彼が持っていた召喚獣フェニックス等、判明した事が増える度にクラウド達はジョンを連れて本陣へと帰還し、報告を行っている為、その度にマーテリア陣営の戦士と顔を合わせているのだ。
元々マーテリアに召喚された訳ではないジョンは、他の面々よりも一足先に帰る事が半ば確定されているようなもので、それを羨ましがる者の姿もいるのだが、それはそれとして、マーテリア陣営の戦士は概ねジョンに対して好意的だ。
以前のスコール同様、怪しんで警戒する者もいない訳ではなかったが、セフィロスとの衝突の経緯を説明すれば、少なくともジョンがセフィロスと同じ側───スピリタス陣営に与している訳ではない事は確かと言えた。
そんな面々に対しても、ジョンは「事故みたいな形で此処にいるんだから、怪しまれるのは仕方がない」と存外と大人な反応をしている。
元々、スコールが警戒を剥き出しにし、厳しい当たりをしていた時でも、そう言った反応をしていた人物である。
何処か飄々としながら、達観した物言いも垣間見える事、ジタンと並べる程の身軽さや気配を殺す実力等、相当な修羅場を潜ってきたであろう事は確かだ。
何より、先のセフィロスの戦闘の折、この世界に落ちてきた時に失われてしまった記憶も取り戻す事が出来たようで、自分自身の立ち位置やアイデンティティが確りと保てているのが、ジョンに余裕を齎しているのだろう。
記憶喪失の間は、自分がどうすれば良いのかも判らなかった為、基本的には受動であるようにと行動していたジョン。
クラウド達が彼の面倒を任されたのも、そう言った経緯があっての事だ。
ジョンの方も、刷り込みではないが、初めに自分を見付け、他の者よりも早く会話を交えた面々と一緒にいる方が、比較的気が楽と思っていた。
しかし、ジョンは案外と社交的な性格で、自分のテリトリーに踏み込まれる事にもそれ程強い抵抗を感じないようで、今ではクラウド達以外の戦士ともよく会話を交わしている。
が、現在に至るまでの経緯もあってか、散策に出かける時には、大抵クラウド、スコール、ティーダと言ったメンバーと一緒にいる事が多かった。
今日も例に漏れず、ジョンはクラウド、スコール、ティーダの三名と共に散策に出かけた。
神々の闘争の世界は、日に日に世界が拡張されており、その副産物であるのか、地形の変化等も少なからず起きていた。
イミテーションの出現も各地に確認され、陣営同士の戦闘の際に乱入して来ると言った邪魔も起きる為、定期的に掃除が行われている。
出発してから二つ目の歪を開放し、移動ルートの安全を確保して、一行は歪を脱出する。
歪の出入口は、前日に確認した時よりも僅かに位置を変えていたが、ポイントで言えば誤差程度だ。
地形の変化と照らし合わせつつ、今後も使って行ける事を確かめて、次の歪の場所まで移動する。
散策の過程は、大体がこうしたものとなっていた。
次の目的地まで向かう道すがら、ジョンは前を歩くチョコレートと蜂蜜の色をじっと観察していた。
昨日の出来事、その前の出来事、今の目の前にある物の話と、蜂蜜色───ティーダの話は尽きない。
喋っていないと間が持たないと感じる性格の彼は、常に雑談を提供してくれる。
チョコレート色───スコールはそれを面倒臭そうな顔をしながら聞き流しており、時折、「どう思う?」等と食いついてくるティーダに、適当な返事を返していた。
その返事が見るからに適当なものだから、ティーダは剥れて「真面目に聞いてるんだってー!」と抗議するように言った。
それをスコールが、煩い、と言うように片手をひらひらと払って見せたりするから、ティーダは益々ムキになる。
もう何度見たか判らない二人のそんな遣り取りを、ジョンがじっと観察していると、隣を歩く男───クラウドに声をかけられた。
「随分熱心に見ているが、面白い話でもあったか?」
「ん?いやいや、そう言う訳じゃないんだけどな」
進む足を止めず動かしながら、ジョンはバンダナを巻いた頭をぽりぽりと掻いて、
「あれだけ素っ気なくされてるのに、よく話しかけられるもんだと思ってさ」
「ふむ。俺達はもう見慣れてしまったが、言われてみれば、そうかも知れないな」
ジョンの言葉に、クラウドは前を歩く二人を見て、認識を再確認するように呟いた。
「だが、あれでも丸くなった方なんだ。前の闘争の時は、もっとピリピリしていたし」
「そうなのか?……あれで丸くなってるのか……」
ジョンの前には、いよいよ本気でティーダを無視し始めたスコールの姿がある。
すたすたと歩く速度を上げ、ティーダを置いていく気の歩調だ。
ティーダはそんなスコールの背中に突進宜しく抱き着いて、なあなあなあ、とまるで遊んで貰いたがる大型犬のようである。
スコールはそんなティーダに、相手にしたら負けだと言わんばかりに、彼を腰に巻きつかせたまま、ずるずると引き摺って歩いていた。
歩き難くないんだろうか、とジョンは眺めつつ思う。
「なんて言うか、余り人と馴れ合わないって言うか……そう言う感じがするんだ。割と熱くもなるみたいだから、クールなばかりでもないって言う感じもするけど」
「まあ、初めて逢った人間には、あいつはかなり取っ付き難く見えるだろうな。だがそれはスコールから見ても同じなんだ。あんたも見た通り、かなり警戒心が強い性格だから」
「ああ……はは、確かにかなり疑われてたな。無理もないけど」
和解に至るまでの一連の経緯を改めて思い出し、ジョンは苦笑いする。
色々と刺さるような事を言われたが、しかしそれも言われて当然の事であったとは思う。
ティーダが自分を庇い、クラウドが間に立ってくれていなければ、ジョンの心が折れていた事も想像に難くない。
それ程、あの頃のスコールは警戒心を剥き出しにしていたのだ。
「悪いが、あの時点では俺もあんたを全面信用はしていなかった。あんたが“どっち側”なのかも判らなかったからな」
「神様の闘争って奴か。俺はあまりその戦いってのにも参加させて貰ってないからまだよく判らないんだけど、そんなに癖の強い奴がいるのか?こっち側にはそんな感じの奴はいない気がするんだけど」
「ああ。今回こっち側にいるのは、良くも悪くも素直なのが多いな。だからスコールは余計に警戒したんだろう。誰かが疑わなければ、いざと言う時に甚大な被害が出る。それは避けるべき事だったから、スコールがその為に嫌われ役になった。……少し損な役回りをさせたな。あいつもそう言う役割が得意な訳じゃないのに」
悪い事をした、と呟くクラウドに、ジョンはそうだったのか、と一人ごちた。
同時に、セフィロスとの戦闘の際、意識を失っていた自分を背負っていた時に聞いた言葉を思い出す。
「……なあ。お前、“リノア”って知ってるか?」
「いや。初めて聞くが、人名か?」
「多分。スコールが前にその名前を言ってたのを聞いただけなんだけどさ」
それは、セフィロスとの戦闘の直前、ジョンが激しい頭痛を感じて気を失った後の事。
ティーダは何処かへと走り、セフィロスとの戦闘はクラウドに任せ、一先ずスコールがジョンを背負い戦線離脱していた時、スコールはその名を口にした。
あの時、ジョンの意識は現実に帰ってきており、独り言だったのであろうスコールの呟きを聞いてしまった。
抱き締めるように零れた言の葉の詳細を、ジョンは聞いていないが、それでも感じる事はあった。
きっとあの名前は、スコールにとって、酷く大切なものだったのだろう────と。
あの時にジョンがスコールに対して感じたのは、それ以前の頑なさや堅苦しさとは違う、青臭さだ。
目覚めていたのにそれを言わず、きっと誰にも聞かれたくなかったのだろう呟きを聞き留めて笑ったジョンに、スコールは顔を赤くして怒って見せた。
その時のスコールの表情は、それまでの刺々しい言動とは裏腹に、随分と幼く見えたものだ。
それを思い出して、ティーダを引き摺るスコールを眺めるジョンの双眸が細められる。
「なんて言うか……スコールって、見た目の割に少し子供っぽい所があるな」
「見た目の割には、か」
ジョンの呟きに、クラウドがくつくつと喉を震わせながら言った。
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