[ジョン+スコ]不思議なパズル 2
- 2018/06/08 22:00
- カテゴリー:FF
「俺からすれば、スコールは年相応だ」
「そうなのか?」
目を丸くするジョンに、クラウドは前を歩く二人を見るように促した。
二人────スコールとティーダは、いつの間にかまた二人並んで歩いている。
いつまでもティーダをしがみつかせている事にスコールが疲れたのか、ティーダの方が観念したのか。
スコールが面倒臭そうな顔をしながらティーダの話に相槌を打っている所を見ると、前者だろうか。
あれだけ素っ気なくしていたのに、こうなるとスコールは付き合いが良く、ティーダの振る話題に少ない言で答えている。
そんなスコールに、ティーダがまた楽しそうに話をするので、後ろで見ていると随分と微笑ましい光景だ。
身振り手振りに話すティーダと、体は歩くことに終始しているスコールの背中を眺めながら、クラウドが言う。
「警戒心がやたらと強いのは、本人の性格もあるだろうが、育った過程も大きいだろうな。あいつは子供の頃から傭兵になる事を前提とした教育を受けてきたようだから」
「傭兵、か。あいつの世界も殺伐としてるもんだな」
「さて、其処までは。何れにしろ、曲りなりにも戦闘をする人間として育てられた訳だから、危機意識やそれに対する防御意識は強いだろう。何でも最初に疑うのは、その所為もあると思う。ただ、精神の方は未熟な所が多い。それこそティーダと変わらないさ」
感情のベクトルが違うだけで、とクラウドは付け足す。
ティーダは自分自身を奮い立たせる為に、可能な限り目の前にある物事を前向きに考えている。
それでもどうにもならない事や、自分が納得のいかない事には、落ち込んでしまう事も少なくなかった。
彼の場合は感情が正直に表に出易く、素直な性格なので、感情を発散させる事で落ち着きを図る事が出来る。
スコールの場合は、危険を回避する為に、事前に悪いパターンを幾つも考え、防衛策を考えるタイプだ。
この為、想定の範囲内の事ならば素早く対応できるが、突発的な出来事や、自分が考えていた以上の出来事が起こると、思考停止に陥り易い。
案外と感情的になり易い反面、強い理性と理屈で自縄自縛になり、自分の思考をまとめる所か、発散させる事も苦手な節がある。
本陣である秩序の塔にいる際、自分の部屋に閉じこもって出てこない時があるが、その時のスコールは、その日一日の納得できなかった事など、処理が追い付かなかった事を黙々と考えている事が多く、それが済むまでは人との接触を拒む傾向があった。
────二人を並べて語るクラウドの言葉に、確かに正反対だが似ている、とジョンは思う。
脳裏に、自分を挟んで何度となく口論していたスコールとティーダの姿が浮かんだ。
徹底して疑っていたスコールと、最初から信じる、と言って憚らなかったティーダ。
しかし根底にあるのは、どちらもジョンの事を“敵だと思いたくない”と言う気持ちであったから、ジョンが自ら別行動を進言した事により、スコールはようやく疑心を拭う事が出来、“仲間”としてジョンを迎えに行くに至ったのだろう。
「スコールは、理屈と感情で挟まれ易いんだ。優先すべき事は取捨選択できるのは良いんだが、自分の行動と感情が別々の方向を向いている時に、感情の処理が出来ない。引き摺り続けたまま、無理やり理屈に行動を合わせるから、息苦しくもなる」
「複雑な奴だな」
「仕方がないさ。幾ら普段は大人びて見せた振りをしても、中身は学生だからな」
「学生?」
クラウドから零れた思いもよらなかった単語に、ジョンの琴線が引っ掛かる。
目を丸くしているジョンを見て、クラウドはくつりと笑って続けた。
「あんたの世界ではどうかは判らないが、俺やあいつらの世界では、17歳はまだ学生だ。本来、大人から庇護されて然るべき立場なんだよ」
「あー、それで……へ?17?」
納得したと言う表情で頷いた後、ジョンはもう一度目を丸くした。
隣に立って歩く男を見て、また前を歩く二人を見る。
交互に自分と仲間に視線を移すジョンに、クラウドは予想していた通りと言わんばかりに口角を上げ、
「雰囲気に騙される奴は多いんだ」
暗にスコールの年齢を指しての台詞だろう。
同時に、「そうだと思えば判るだろう?」と言うニュアンスも滲んでいる。
(……なる、ほど。成程)
道理で────とジョンの中で、散らばっていたピースがぱちぱちと嵌っていく。
冷静沈着に、当たり前の事だと言わんばかりに、厳しい物言いでざくざくと切り込んでいくかと思えば、何かを堪えるように黙り込んでしまう事もあるスコール。
言葉数が少ないかと思えば、投げ当てられたボールは全力で打ち返さねば気が済まないと言わんばかりの熱し易さ。
17歳と言えば、ジョンの記憶の中でも、微妙な年齢だ。
既に自立した者もいれば、大人の庇護の中にいる者もいるし、環境や立場と言ったものも影響するが、何れにしろ、“大人”とはっきりと括れない事は確かである。
加えてその年齢は、良くも悪くも不安定になり勝ちで、それを無理やり自制しようとしている人物がいた事も、ジョンの記憶には浮かんでいる。
はは、とジョンの喉から笑いが漏れた。
観察している内に、印象とは違う表情を見る事が多く、不思議に思っていた事が、一気に納得に向かう。
その様子を見たクラウドが、「驚いただろう」と何故か自慢げな顔をしているのが可笑しくて、ジョンは余計に笑いを堪えられなくなった。
「はは。あははは!あー、そっかそっか。成程な!」
「そういう事だ」
笑うジョンに、クラウドは肩を竦めて言った。
そのジョンの笑い声に、前を歩いていた二人が怪訝な顔で振り返る。
そうして、後続二人との距離がいつの間にか随分と離れていた事に気付いた。
「おーい!二人とも何やってるんスかー!?」
「置いていくぞ、あんた達」
手を振って早く早くと急かすティーダと、不機嫌そうに睨むスコール。
それを見ながら、ジョンは声を大きくして返した。
「悪い悪い!ちょっと話が盛り上がってさ!」
「話?」
「えー!?何々、何の話?」
眉根を寄せるスコールを置いて、ティーダが自分も混ぜてとばかりに駆け戻ってくる。
それを待たずに、ジョンは言った。
「スコールが意外と可愛い奴だなって話!」
「………はあ!?」
ジョンの言葉に、スコールが目を丸くして声を大きくする。
数瞬の空白の後、スコールの眉が一気に釣り上がり、ふざけているのか───と口が開きかけるが、
「そう、スコールは可愛い奴なんだ」
「なっ……あんたまで何言い出すんだ!?揶揄ってるのか」
「いや、本気で可愛いと思ってる」
「うんうん」
便乗するように言ったクラウドに、スコールの顔に益々血が上っていく。
揶揄なのかと言う言葉をクラウドは真っ直ぐに否定したが、スコールにしてみれば悪ふざけ以外の何物でもないだろう。
ヒクヒクと顔を引き攣らせるスコールを他所に、クラウドは間に挟まれた形できょろきょろと首を巡らせているティーダに声をかけた。
「ティーダもそう思わないか」
「へっ?俺?」
「ああ。スコールは可愛い奴だって。思った事はないか?」
「一杯あるっス!」
「な……」
話を振られて、悩む間もなく即答したティーダに、スコールはいよいよ言葉を失った。
よろりと足をふらつかせ、今にも倒れそうだが、流石に意識は現実に留まったらしく、よろめいただけで済んだ。
が、可愛い、可愛い、と何度も繰り返す三人の仲間に、スコールは状況への理解が追い付かなくなっていた。
「ば……馬鹿な事を言っていないで、足を動かせ!さっさと次の歪に行くぞ!」
「あー!置いてっちゃ嫌っスよ、スコール!」
「煩い!寄るな!近付くな!」
「顔が赤いな~、ひょっとして照れてるのか?」
「そう言う所も可愛いぞ、スコール」
「………!!!」
黙れ、とすら言うのも恥ずかしくなったのか、スコールは逃げるように走り出した。
直ぐにティーダが追い駆け、スタートダッシュ速度の違いであっという間に追いついて背中に飛び付く。
退け離せと怒るスコールだったが、真っ赤な顔で幾ら言った所で、ティーダに効果はない。
ジョンはクラウドと目を合わせ、可愛いよなあ、と言って笑った。
その日のその後、拗ねたスコールは、ジョンとクラウドとの会話を一切拒否した。
そうしてムキになってしまう所も可愛いよなあ、と彼等が和んでいた事は終ぞ知らない。
一回書きたかった朗読劇組の話。
と言うかジョンとスコールの話(会話してるのはほぼクラウドだけど)。
スコールの年齢ネタは何番煎じでパターンみたいなものと化してますが、やはりこう言う反応があると私が楽しい。
そんで帰る前にほんの少しだけこう言う時間があったらなーと。アケディアも参戦しましたし、後に再会したりとかしたら面白い。私が。
このメンバーで行くと、スコール・ティーダが17歳、クラウドが23歳、ジョンが25歳なんだよなーと思うと色々滾る。