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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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日記と言うより妄想記録。時々SS書き散らします(更新記録には載りません)

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[絆]不器用なサンタクロース 2

  • 2014/12/25 22:15
  • カテゴリー:FF

リビングに戻って見れば、案の定、じっとりとした雰囲気が満ちている。
どうしてさっきの今で喧嘩が出来るのか、スコールには甚だ不思議であった。
取り敢えず此処はスコールの家なので、暴れられるのは非常に困ると、スコールはもう一度溜息を吐いて、


「コーヒー、入ったぞ」


いつもなら無言でテーブルに出す所を、わざわざ口に出して言った。
親子は一拍程無言になった後、「……ん」「……おう」と返事を寄越して、それぞれ目を逸らす。

スコールはテーブルにコーヒーを並べると、ソファに向かおうとしているティーダを呼び止めた。


「ティーダ。あれ、持って来い」
「………えっ!今!?」


あれ、とスコールが指した物に気付いて、ティーダは顔を真っ赤にする。
早くしろ、と蒼の瞳が睨んで急かすが、ティーダはその場をうろうろと彷徨い、助けを請うようにスコールを見る。
今じゃなくても、と言う表情なのは判ったが、スコールは黙殺した。

結局、ティーダの方が根負けし、彼は覚束ない足取りで階段を上って行く。
うーうーと唸りながら二階に向かう息子に、ジェクトが訝しげな表情を浮かべていた。


「なんだぁ?」
「………」


説明を求めるようなジェクトの声を、スコールは無視した。
此処で口に出して、またジェクトが余計な茶々を入れては、何もかもが台無しになってしまう。
面倒臭い親子だな、とスコールはこっそり嘆息する。

ティーダは直ぐにリビングに戻って来たが、彼は階段の出入口から中々出て来なかった。
青い瞳はふらふらと彷徨い、時折父親に向けらるが、父が自分を見ている事に気付くと、さっと逸らされる。
どうにも煮えない態度の息子に、ジェクトの眉間の皺が深くなって行く。
それを察したスコールは、やっぱり面倒な親子だ、と愚痴を零しつつ、階段で立ち尽くすティーダの腕を掴んで引っ張った。


「ちょちょちょ、スコール!」
「早くしろ」
「ま、待って待って!タンマ!俺のタイミングで…」
「そんなの待ってたら、来年になる」


きっぱりとティーダの訴えを殺して、スコールは幼馴染をその父の下へと連れて行った。
ジェクトは相変わらず眉間に深い皺を刻んでいたが、口を噤んで息子達を見守っている。

スコールはティーダをジェクトの前に置くと、自分はさっさとキッチンに引っ込んだ。
キッチンで何かする事がある訳でもなかったが、人目があるとティーダはいつまでも行動に出ないと思ったからだ。
リビングからは「スコール!」と助けを求める声がしたが、スコールは反応する気はなかった。
うわああ、と嘆くような焦るような声もしたが、これも無視する。


「…何やってんだ、お前は」
「……うるさい」
「で、さっきから後ろに隠してるのは何だ?」
「う……いや、別に……」


スコールはこっそりと、キッチンの出入口から、リビングの様子を伺った。
其処からはティーダの背中が見え、彼が腕ごと背に回して隠しているものが見えている。
それは青色に雪の白を模様にした包装紙で、赤色のリボンが施され、金色のシールが貼られている。
箱のような固いものではなく、袋を包んだような柔らかさで、ティーダが手元を動かす度、かしゅかしゅとビニールが擦れあうような音が聞こえていた。

ティーダはしばらく唸り、座り込み、頭を掻きともだもだとしていた。
ジェクトはそんな息子に焦れつつ、辛抱強く待っている。


「……………あーもうっ!」


立ち上がって、ティーダは叫んだ。
息子の突然の咆哮に、ジェクトは目を丸くする。
ティーダはそんな父親に気付かず、背に隠していたものを押し付けるように突き出した。


「これ!」
「あ?」
「あんた、いつも腹出して寝てるから!」
「は?」
「じゃ!」


そう言う事で、としゅたっと右手を挙げた後、ティーダはぐるんと方向転換した。
呆然とした表情を浮かべる父に背を向け、ソファに突進してそのまま俯せに倒れ込む。
更に縮こまるように丸くなる息子を、ジェクトはしばしぽかんと見詰めていた。

しんとした静寂が落ちた後、かさり、とジェクトの手元で音が鳴った。
視線を落とせば息子が押し付けて来たものがあり、それは誰が見ても判る、プレゼントとしてラッピングされた袋であった。
何やら、息子の心中が伝染したように、一気にむず痒いものに襲われたジェクトであったが、


「あー……開けるぞ?」
「勝手にしろよ!」


一応の確認をと問えば、ツンツンに尖った返事が帰って来た。
いつもなら、クソガキ、と毒づいてやる所であったが、今のジェクトにそんな余裕はない。

細かい作業を苦手としているジェクトは、こうした包装紙を破くのも上手くない。
自覚がある為、こんな時にはいつもビリビリに破いてしまうのだが、今日はそれは憚られた。
封に貼ってあるセロハンテープをどうにか───結局幾らか敗れたが―――剥がして、口を開けて中を覗き込む。
入っていたのは、シンプルな青生地に黄色のラインがあしらわれた腹巻だった。

中を覗き込んだ格好のまま、ジェクトは停止している。
恐らく、予想だにしていなかった息子からのクリスマスプレゼントに、思考ごと停止しているに違いない。
ティーダはそれを横目で見遣った後、うーうーと唸りながらソファの背凭れに顔を埋めて丸くなった。
スコールはすっかり傍観者として、そんな親子を眺めた後、ほっと息を吐く。


(まあ、今年はこれで良いか)


ティーダがジェクトに渡したものは、スコールとレオンがティーダを宥めて諭して、ようやく準備させたものであった。
買いに行く時は渋々顔だったティーダだが、選ぶ時には真剣な表情で、毛糸は解れるから駄目、体に厚みがあるので伸縮がないと小さくて入らない、明るいカラーは違う、と悩んでいた。
店もあちこち覗いて探しており、それらに付き合ったスコールにとっても、今回は渡されなければ意味がなかった。
結局、渡し方は酷く不格好であるが、無事に父の下へと届けられたのは幸いであった。

これで此方は一安心────と、スコールはリビングを覗くのを止める。
それからスコールは、調理台の上の吊戸棚の扉を開けた。
必要な物のみが揃えられているので、すっきりと片付いた棚の奥に、ひっそりと日の目を待つ小箱がある。

紺色の包装紙に包まれ、赤いリボンが結ばれたそれを見て、スコールは溜息を吐く。
中身はレオンが愛用しているグローブの新品で、長年使っているお陰であちこち傷んでいるのを見付けてから、プレゼントはこれにしようと決めていた。
SEEDとして出先で使用しているものなので、頑丈且つ柔軟性のある素材で作られており、値段もそこそこ張るものであったが、スコールは自分が欲しかったアクセサリーを我慢して、これを用意した。
普段、専ら自分か何かをする側、与える側だと思っている兄に、今年こそは何か返したいと思っての事だ。
どんな顔をしてくれるのかは全く想像がつかなかったが、少しでも喜んでくれたら良いと思う。
そして、今回は時間が足りなかった為に、姉に用意は出来なかったが、来年こそはと決意する。

────そんな決意の傍らで、


(……どうやって渡そう)


レオンが自分を与える側だと思っていたなら、スコールも無意識に与えられる側として定着していた。
一念発起して用意した箱を見詰めながら、今度は、スコールが思い悩む番であった。




頑張ったティーダと、これから頑張るスコール。
スコールとしては、意識しないように普通に渡せば…と考えてたけど、本人を前にすると普通ってどうやるんだったっけ、って思う位に緊張すると思われる。
ティーダと「お前から渡して置いてくれ」「なんで?!自分で渡せよ」って言う押し問答も始まる。
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[ヴァンスコ]猫のポルカ

  • 2014/12/08 22:18
  • カテゴリー:FF
12月8日なので、現代パラレルでヴァン×スコールだと言い張る!





「スコール、ピアノ弾いてくれよ」


昼休憩に食事を終えると、ノート見せてくれよ、と言うトーンと全く同じ音調で、ヴァンは言う。
それを聞いた周囲の生徒達は、また恐れ多い事を、と言わんばかりの表情で、ヴァンとスコールを遠巻きに見つめていた。
スコールはその瞬間の、針の筵にいるような感覚が嫌いで、何も言わずにさっさと教室を出て行く。
その後をヴァンが躊躇わずについて来るのは、いつもの事だった。

────スコールは高校生で、プロのピアニストだ。
今年の春まで海外で生活しており、去年の夏まではプロとしてステージに立ち、鍵盤を弾いていた。
そんなスコールが、実に十年振りに母国に帰り、普通科の高校に編入したのには、訳がある。

スコールとヴァンは、幼い頃、同じ養護施設で暮らしていた。
その養護施設で、スコールは義姉と慕った少女を喜ばせようと弾いたピアノで、自身の才能を開花させた。
その後、スコールは七歳の時にスカウト同然の形で引き取られ、海外へと移ってしまう。
ヴァンとは手紙の遣り取りが長らく続いていたが、十五歳の時にスコールの方から返事が届かなくなり、二人の関係は疎遠になった。
その頃にはスコールは既にプロとして舞台に立っていたと言う話を聞いていた為、ヴァンはきっと仕事が忙しくなったのだろうと思ったが、真実は少し違っていた。
仕事が忙しく、筆を執る時間も減っていたのは確かだが、それ以上にスコールを蝕んでいたのは、生まれて初めてのスランプと言うものだった。

天才少年と誉めそやされた少年の、人生初のスランプを、周囲はしばらく静観していたが、スランプは一年以上も続き、このままではどうにもならないと判断した近親者は、一度ピアノの事をすっきりと忘れ、普通の少年として生活してはどうかと提案した。
スコールは初めは拒んだものの、幼い頃から変わらずに接してくれた義姉にも勧められ、ようやく鍵盤から離れる決意をし、母国の土を踏むに至る。

スコールが世界に名立たる天才ピアニストだと言う事は、母国でもよく知られていた。
ミーハーな少年少女達も、人伝いにその噂を聞き、転校初日には物見遊山でスコールの周りには人だかりが出来た。
しかし、生来からコミュニケーションに関しては全くの不得手である上、人嫌いのスコールである。
「ちょっと弾いてみて」と言う生徒達のリクエストを黙殺し続けている内に、好奇の目は次第に減り、代わりに「お高くとまった奴」と言う目で見られるようになった。
他人に構われる事が嫌いなスコールにとっては良い事だったが、唯一、ヴァンだけがスコールに構うのを止めなかった。

きっちりと制服を着込んだスコールと、ネクタイ所か襟下も緩め、シャツも崩してと言う格好のヴァンが並んで歩く光景は、最近はすっかり見慣れたものになった。
天才ピアニストと、マイペースで知られた少年が並んでいる事に、始めは目を丸くしていた生徒達も、今は呆れたように見守るだけだ。
その呆れた視線は、専らヴァンに向けられたものであったが、ヴァンはそれも気にしていない。


「なあなあ、スコール。この間の現国のテスト、どうだった?」
「……別に」
「いつもと一緒?良いよなあ。俺、赤点ギリギリだった。答えのプリント見たらさ、ちゃんと合ってるのに、バツにされてるんだ。なんでだろ」


不思議そうに首を傾げるヴァンを横目に見て、スコールは一度だけ見た事のある、ヴァンの答案用紙を思い出していた。
答案用紙に書かれた文字は、まるで暗号かと思うようなものであった。
スコールが見た時には、数学の答案用紙だった為、答えとなる数字を何とか読解する事が出来た───それも、幼馴染でヴァンの字癖を知っているからこそ出来た事だ───が、現国となるとそうは行くまい。
長々と書かれた長文の答えを解読するのを、教師が早々に諦めたのは、想像に難くない。

不満げに唇を尖らせるヴァンに、字の練習をしろ、とスコールは思った。
口に出して言わないのは、言った所で渋い顔が帰って来るだけなのが判るからだ。

階段を下りて行くスコールとヴァンの横を、女子生徒のグループが擦れ違う。
後ろの方で「噂の天才ピアニスト!」「見ちゃった!」等と言う声が聞こえて、スコールは眉根を寄せた。
その肩書きを聞くのもうんざりして、スコールは母国に帰って来たと言うのに、結局耳から離れない。

苛々とした表情で階段を下りる横で、ヴァンはいつもと変わらず、雑談を振って来る。


「うちのクラス、五時間目って化学なんだ。実験とかやらないかな」
「実験は先週したんだろう」
「そうだけど。ただ机に座ってカリカリ書いてるより、実験の方が面白いだろ」


スコールにしてみれば、机に座って書くのも、実験をするのも大差ない。
黒板に書いてあるものをノートに書き移して行くか、目の前で起きている事を書き記して行くかの違いだけだ。

ヴァンの話は取り留めもなく、定まりもなく続く。


「二時間目の体育でさ、バスケやったんだ」
「……で?」
「俺、シュート入った。凄いだろ?でも負けちゃったんだよな」


惜しかったのに、と言うヴァンに、ふぅん、とスコールは気もそぞろな返事だ。
聞いているのかいないのか判らない反応も、ヴァンは気にせず話し続ける。

そうしている内に辿り着いた教室の前で、スコールは足を止めた。
鍵の具合を確認する為、扉の取っ手を軽く弾いてみると、抵抗なく隙間が開く。
これ幸いと、スコールが教室へ入ると、ヴァンも後ろをついて中に入る。

扉を閉めれば、昼休憩の喧騒すらも遠くなる其処は、音楽室だ。
確りとした防音の壁と、二重窓で閉じられたこの教室は、音楽の授業以外では余り使われる機会がなかった。
この学校のブラスバンド部は、活動にはあまり積極的ではないらしく、週に二回の放課後に練習が行われるのみであった。
ヴァンは今までその事を気にした事もなかったが、スコールが転校して来てからは、これで良かったのだと思っている。


「静かだよなぁ、此処」
「…防音が効いてるからな」


喚起の為か、空いていた窓をスコールは全て閉めて行く。
それに倣って、ヴァンも窓を一つ一つ閉め、鍵をかけた。

全ての窓を閉め終わると、外の喧騒は全く聞こえなくなり、閉じた世界に二人きりになる。
ヴァンが壁際に立てかけ並べてあるパイプ椅子を運び出している間に、スコールの足は教卓の横に置かれたグランドピアノへと向かった。


「スコールって、昔から静かな所が好きだよな」
「煩いのが嫌いなんだ」
「俺は嫌いじゃないけど。でも、静かな所も好きだな」
「…あんたは場所に好き嫌いなんてないだろ」


スコールはピアノの蓋を開け、椅子に座った。
目の前に並ぶ音の階段に、適当に指を置くと、ぽーん……と音が鳴る。

スコールの脳裏に、嘗てこの鍵盤の上で絶え間なく動いていた自分の指が思い出された。
その形をなぞろうと、手を鍵盤に置いてみるが、それきり、体は動かない。

─────天才ピアニストと謡われた少年は、ある時から全くピアノが弾けなくなった。
流麗に滑っていた指は、始めはぎこちなく惑うようになり、次第にそれは悪化し、遂には一指と揺れる事がなくなったのだ。
周囲はこれに驚いたが、最も困惑していたのはスコールだ。
ピアノだけが自分の拠り所であったと言っても過言ではないスコールにとって、それを弾く手を失う事は、自分の存在理由を失うも同然である。
何とか早い復帰をと、無理矢理ピアノを弾こうとした事もあったが、改善の兆しはなく、去年の夏には遂に舞台に立つ事も、その場所に向かう事も出来なくなった。

義姉や信頼の置ける人々から勧められた母国での生活でも、スコールは思うようにピアノを弾く事が出来ない。
そんな自分を思い知る度、スコールは自分の心の空虚が広がって行くような気がしていた。
だから───生来の人嫌いもあるけれど───同級生達の「ピアノを弾いて」と言う言葉を黙殺するしかなかったのだ。

……しかし、何故だろうか。
スコールにもよく判らなかったが、母国に帰って来て、一つだけ判った事がある。


「……それで、何を弾けば良い?」
「いつもの奴」
「…そればっかりだな」
「だって俺、それしか知らないもん」


ヴァンの言う“いつもの奴”とは、スコールが幼い頃、初めて義姉とヴァンの前で披露した曲の事だ。
当時、引っ込み思案だったスコールと親しくしてくれたのは、姉とヴァンくらいのものだった。
その姉に喜んで貰おうと、こっそり練習した曲を、姉だけでなく仲の良いヴァンにも聞いて貰いたいと思い、発表の場に誘った。

ヴァンが知っているスコールのピアノの音は、あの頃から変わっていない。
姉に喜んで貰う為、一生懸命に頑張って、緊張しながら弾いた曲────それがヴァンの“スコールのピアノ”だった。

スコールはもう一度、両手を鍵盤の上に置いた。
今まで動く気配を見せなかった指が動き、ぽぽ、ぽん、ぽん、ぽん、と単音が鳴る。
それは次第に音層を重ねて行き、楽しげなリズムを刻んで、スコールの指が鍵盤を跳ねる。


「それ、なんてタイトルだったっけ」


パイプ椅子に逆向きに座って、ヴァンが問う。
スコールはピアノを弾く手を止めないまま、答えた。


「“Kissanpolkka”」


ああ、そうだ、とヴァンは言う。
しかし、明日になってもヴァンはきっと「いつもの奴」と言うだろう。
幼い頃も彼は、スコールにピアノを強請る時、「いつもの奴」と言っていたから。



ピアノを弾きながら、スコールはちらりと見詰める幼馴染に目を遣った。
彼はスコールのピアノに合わせて体を揺らしながら、誰もが知っている歌を歌っている。

幼い頃と変わらないその光景に、スコールは知らず知らず、口元を緩めていた。





12月8日なので、ヴァンスコ!
天才ピアニストなスコールと、幼馴染のヴァンでした。

色々ストレスが溜まってスランプになったスコールだけど、ヴァンの前だけなら弾けると言う設定(言わないと判らない)。
オフ用に考えていた話なので、色々とごちゃごちゃした背景設定とかがあったりする……しかも本筋はヴァンスコよりもティダスコメインと言う……
いつかきちんと書けたら良いなと思ってます。そんなのばっかりだな!

Kissanpolkka=猫のマーチ=猫ふんじゃった
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[シャンスコ]特別講義申込み

  • 2014/11/08 22:02
  • カテゴリー:FF
11月8日と言う事で、初のシャントット×スコール。





ぼぅっ、と掌に生まれた炎は、攻撃魔法にも使えない、小さなものだ。
しかし、炎魔法は大きく育てる事は比較的易しいが、火力を押さえて制御するのは案外と難しい。
それをやってみなさいと指示され、スコールは言われた通りに、極小のファイアを灯して見せた。

黒の皮手袋を嵌めた手の上で、微風に揺れる程度の灯を運だスコールを、じっと見詰める瞳が一対───シャントットであった。
彼女はスコールの掌にある炎は勿論、それを灯したスコールの立ち姿も含め、頭の天辺から爪先までをしげしげと眺めている。
スコールは出来るだけその視線を意識しないように、炎の制御だけに神経を注いでいた。

立ち尽くすスコールの下にシャントットが歩み寄り、右から左から、前から後ろからと、スコールの周りをぐるぐると回りながら検分する。
近くなる気配に、一瞬炎がゆらりと大きく揺れたが、直ぐに形は元に戻った。

シャントットが視界の端で、つい、と正面を指差したのを見て、スコールは掌で炎を握り潰す。
スコールの手の中が熱くなり、腕を振り被って手を開く。
放たれた炎の矢が真っ直ぐに飛び、数十メートル先に鎮座していた岩にぶつかって弾けた。


「ふむ。魔法のコントロールに関しては、理想通りと言えば理想通りですわね」


焦げ痕の残った岩を見て、シャントットは言った。
視線を落としたスコールに、シャントットは続ける。


「教科書で習った通りと言う感じかしら。学院のテストであれば、90点以上は確実ですわね」


シャントットの言う通り、スコールは魔力コントロールの成績では常に90点以上をキープしている。
体調に因り多少上下する事はあるものの、十分上位の成績が取れていた。

でも、とシャントットは付け加え、


「魔力の流れが整い過ぎているのが気になるかしら」
「何か悪い事があるのか?」
「テスト向きと実戦向きは別と言う事ですわ」


そう言って、シャントットは背に負っていた杖を手に取った。
背を向けた彼女が、言外に「見ていなさい」と言っているのを察して、スコールは彼女の背を見詰める。

シャントットが杖を手に早口で呪文を唱えると、シャントットを中心に魔力の渦が生まれる。
ゆっくりと円を描くようにシャントットを取り巻いていた魔力は、少しずつ濃度を増して行き、彼女の腕を伝って杖に注がれて行く。
杖の先に埋め込まれた宝玉が赤い光を照らし、シャントットが杖を振り翳した直後、焦げ痕のついた岩に向かって炎の矢が放たれた。
スコールが放ったそれよりも、遥かに大きく速く奔る矢は、標的に衝突すると大きく弾けて岩を灼いた。

────相変わらず、凶悪な魔法だとスコールは思う。
傍目に見ればガ系レベルを思わせる威力だが、あれでシャントットはファイア一発しか唱えていない。
スコールが魔法戦よりも物理攻撃による近接戦闘を得意としている事を差し引いても、その威力は雲泥の差であった。
どれだけ魔力を持て余しているのだろう、と思う事も、一度や二度ではない。

魔力の供給源が尽きた所為か、炎は暫く岩を灼いた後、萎むように鎮火した。
そのタイミングで、シャントットはスコールに向き直る。


「先程の貴方の手順を真似ると、こう言う形かしら。じっくり練って、完成させた魔法を放つ、と。別にこれでも良いと言えば良いのですけど、実戦でじっくり練っている暇なんてありませんわ」
「……判っている」
「もっと早く、出来れば即座に最大限の力で魔法が使えれば理想的ですわね。まあ、最大限と言っても、貴方の魔力はそれ程強くはないから、主戦力にはならないでしょうけど」


スコールが近接戦を主力とする戦士タイプである事は、シャントットも知っている。
彼が使う魔法が、他の戦士達とは異なる"疑似魔法"と言うものである事も、スコール本人から聞き得ていた。
それでも、魔法に関する事なら、シャントットの分野である。
彼女もその自負があるのか、スコールからの「魔法の訓練に付き合って欲しい」と言う頼みには、二つ返事で了承を返してくれた。

シャントットはふぅむ、としばし考える仕草をした後、


「魔力の底上げはさて置くとして───コントロールの早さと、一度に扱える魔力量の増加。最短の準備で即発動可能にすると言った所かしら」
「最短の準備?……どう言う意味だ?」


コントロール速度を上げる事は当然として、扱える魔力量を増やすと言うのは、言葉の通りだから判る。
スコールもそれは必要不可欠だと考えていた事だ。
しかし、“最短の準備”と言う意味が解らない。

シャントットは持っていた杖をスコールに見せた。


「先程、私は教科書通りに魔力を集めましたわね」
「ああ。周囲の魔力を集めて、高めたエネルギーを杖に移して、この宝玉に集約させた」
「その通り。そうすれば確かに、エネルギーは綺麗な流れで、この石に集まりますわ」


ひらり、とシャントットは杖を揺らした。
緋色の石が微かに光を反射させ、スコールの目許を射る。


「でも、それでは余りにも時間がかかる。それなら、最初からこの石に魔力を集めてしまえば良い」


岩へと向けられた石に、魔力が吸いこまれるように集まって行く。
秘石の赤が、内側から炎を灯したようにゆらゆらと揺らめくと、シャントットは杖を振り翳した。
紅の閃光が迸ると同時に、渦をまとった炎の矢が岩に向かって放たれる。

岩にぶつかった炎は、岩を数秒取り巻くように焼いた後、間もなく鎮火した。
先の炎の一撃に比べると早い鎮火であったが、岩は燻されたように黒く焦げている。


「大分簡単に説明すると、こう言う事ですわ」


発動への形成を整えながら、魔力を集めると言う同時進行の作業。
練った魔力を完全に形作ってから、発動形態へと移行すると言う手順を踏まず、即発動の姿勢で魔力を高める───シャントットはそう言っているのだ。
スコールは整った眉を潜め、下方にあるシャントットの顔を見た。


「確かに、これが出来れば戦闘中に魔法を使う際のロスは減るが……これは、最初から高レベルのコントロールが出来る奴がやる事じゃないのか」


授業では好成績を収めているが、それはスコールの世界で、それも“疑似魔法”に限った話である。
この世界に置いて、スコールの魔力は非常に弱いレベルでしかなく、ウォーリア・オブ・ライトやフリオニールと同レベルと言って良い。
魔法の性質を鑑みると、彼等よりも不得手としていると見ても良いだろう。

が、シャントットは方針を変えるつもりはないらしい。
シャントットは丸い鼻をフン、と鳴らして、傲岸不遜を絵に描いたような表情で言った。


「私に特訓を頼んだ以上、私の方針に従って貰いますわよ。心配ご無用、出来ない事をやれとは言いませんわ」
「……それって……」


出来る事しか言わないから、言われた事は出来なければいけない、と言う事ではないだろうか。
これは、頼る相手を間違えたかもしれない、とスコールは密かに思う。
準備から発動までの作業を大幅に短縮させ、且つ威力も挙げられるのであれば確かに言う事はないだろうが、スコールは何も其処まで高望みして頼みに来た訳ではないのだ。
ただ、もう少し発動までのロスを軽減できれば……と考えていただけだったのに。

眉根を寄せるスコールだったが、シャントットはそんな彼の表情には全く興味を持たない。
方針が決まったら次は特訓方法と順番を考え始めたシャントットに、スコールは零れかけた溜息を飲み込んだ。
魔法に関して、シャントット以上に詳しい者がいない以上、誰を頼っても最終的に此処に行き着く事になるのは、想像に難くない。

此処まで来て、考え込んでいても仕方がない。
スコールがそう腹を決めた所で、シャントットは唇に笑みを浮かべ、


「貴方のセンスがあれば、そう難しくはない事ばかりですわ。そもそも、私が指導して差し上げるのだから、相応の結果を出して貰わないと」
「……努力する」
「宜しい」


スコールの返事に、シャントットは満足げに頷く。


心なしか、楽しそうな笑みを浮かべるシャントットに、スコールはまたも零れかけた溜息を寸での所で飲み込んだ。





シャントット×スコールだと言い張る!
実技特訓は無茶苦茶だけど、ちゃんと理に適ってるシャントットと、真面目に講義を受けるスコールって良いなと思います。
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[絆]お菓子の誘惑

  • 2014/10/31 22:06
  • カテゴリー:FF


「トリック・オア・トリート!」


玄関を開けるなり響いた元気な声と、飛び出して来たカボチャ少年と真っ白なおばけに、レオンは目を丸くした。
が、直ぐに一年前の事を思い出し、くすりと笑みを浮かべ、ズボンのポケットに手を入れる。


「トリック・オア・トリート!」
「ト、トリート!」


ごそごそとポケットを探るレオンを急かすように、カボチャとおばけが急かすように言った。
レオンはポケットの中のものを握って、しかし焦らすように、ポケットを探る仕草を続ける。
その傍ら、カボチャとおばけの姿を改めて眺めてみた。

カボチャは去年も見たものと違い、目尻を下げた困り顔で、口元もへの字になっている。
確か去年は、目尻を上げて、ギザギザ口を笑わせていた筈だ。
おばけの方も以前と違い、眉を吊り上げ、口を大きく開けて舌を出している。
此方も、去年はしょんぼりとした困り顔を浮かべていたように思う。
それぞれ前回と反対の作りになっているのは、きっと妹が役割に合わせて作ったからだろう。

おばけがぴょんぴょんと元気に跳ねているのに対し、カボチャ少年はレオンの服端をきゅっと握っている。
カボチャ少年がレオンに頭を寄せると、大きなカボチャが傾いて、カボチャが後ろに傾いた。
落ちそうになる頭を、首の力だけで戻そうと頑張るカボチャに苦笑して、レオンはさり気無くカボチャの後ろ頭を持ち上げてやった。
その手をおばけが捕まえて、早く早く、とねだる。


「お菓子ちょーだい!じゃないと、イタズラするぞーっ!」
「イ、イタズラするぞっ」
「イタズラか。それは怖いな」
「じゃあお菓子~っ」


おばけがレオンの背中に飛び乗った。
去年よりも大きくなった重さを感じつつ、レオンはようやくポケットから手を抜く。


「ほら、お菓子」
「やった!」
「これをあげるから、イタズラはしないでくれよ?」
「うんっ」


おばけが両手を上げて喜び、カボチャ少年はレオンに貰った飴とチョコレートを握ってこくこくと頷く。
二人とも貌は見えないが、全身で喜びを表現してくれるから、レオンも嬉しくなってくる。

カボチャ少年とおばけは、早速飴の包み紙を解いている。
頭に被り物をした状態で、どうやってお菓子を食べるのだろうと観察していると、カボチャ少年はカボチャ頭の首下から手を入れ、おばけは袖の中に手を引っ込め、布の中でもぞもぞと蠢いている。
あまい、おいしい、と嬉しそうに言い合う二人を眺めながら、レオンは少し悪戯心が沸いた。


「なあ、お前達、俺の家族を知らないか?いつもお帰りって迎えてくれるんだけど」
「ふえ?」
「んぐ?」


レオンの問いに、
カボチャ少年とおばけは、二人揃って同じ方向に首を傾げた。
二人は顔を見合わせると、とてとてと走ってレオンから離れ、リビングのソファ横で一緒に蹲る。
ぽしょぽしょと内緒話をするのが聞こえ、レオンはこみ上げる笑いを噛み殺しつつ、次の反応を待つ。

三十秒ほどで、内緒話は終わり、カボチャ少年とおばけが戻ってくる。


「えっとね、えっと、」
「お前の家族は、オレ達が食べちゃったのだー!」
「えっ、ち、違うよ、おでかけしてるんだよ」


両手を上げて怖さをアピールするおばけの言葉に、カボチャ少年が慌てて別の事を言う。
全く違う事を言う二人に、レオンは思わず噴き出しそうになった。
恐らく、“家族は此処にいない事にしよう”と言う話になったのだろうが、それぞれの設定までは話し合われていないらしい。


「お、おでかけしててね、まだ帰って来てないんだよ」
「えー…それじゃインパクトないよ」
「だって……食べちゃったなんて言ったら、お兄ちゃん怒っちゃうよ…」


小さな声で、お兄ちゃんに怒られたくないよ、と言うカボチャ少年。
それを聞いたおばけも、怒られるのはヤダなぁ…と小さく呟く。
ぼそぼそと話す声が、目の前の青年に聞こえているとは気付いていない。

レオンの目の前で、カボチャ少年とおばけはしばらく内緒話をした後、


「えーっと、家族はおでかけしてるんだ!まだ帰って来ないんだ!」
「そうなのか。いつもならこの時間には家にいる筈なんだが、心配だな…」


設定を考え直したおばけの言葉に、こみ上げる笑いを堪えつつ、レオンは素知らぬ顔で二人の設定に付き合う。

正体に気付かず、この場にいる筈の家族を心配する表情をするレオンに、カボチャ少年とおばけが楽しそうに頭を揺らす。
そんな二人を横目に見ながら、去年もこう言う展開を期待していたんだろうな、とレオンは遅蒔きながら理解した。
今日と言う日を知らなかった為に、去年は直ぐに正体を見抜いてしまったレオンだが、今回は彼等の思う通りにストーリーは進行しているようだ。

こんな時間に出かけるなんて珍しいな、と呟きつつ、レオンは窓辺のテーブルに落ち付く。
カボチャ少年とおばけは、レオンに貰った飴とチョコレートを見せ合っていた。
被り物のお陰で表情は見えないが、嬉しそうな雰囲気が滲んでいるので、彼等はきっと満足してくれた事だろう。
そんな二人から目を逸らして、レオンはもう一度ズボンのポケットに手を入れ、


「スコール達がいないのなら、残りのお菓子は俺が食べてしまおうかな」
「えっ?」
「えっ?」


ポケットから取り出した飴やチョコレートをテーブルに転がして言ったレオンに、カボチャ少年とおばけが声を上げた。

テーブルには、色とりどりの包装紙に包まれた、飴やらチョコレートやら。
他にも、ジャケットのポケットから、アルバイト中に常連客から貰ったビスケットやガム等々が並ぶのを見て、カボチャ少年とおばけがそわそわとし始める。


「マスターやお客さんが色々くれたから、スコール達に食べさせてやろうと思ってたんだが」
「あ、あう、」
「そ、それっ。それっ、オレ達が食べても良いよ!」


持て余すようにお菓子を整列させるレオンの言葉に、カボチャ少年がもじもじとし、おばけが手を挙げて提案する。
予想通りの反応に、うーん、と悩んで見せ、


「捨ててしまうのは勿体ないしな……」
「でしょ?でしょ?」
「でも、お前達にはさっきお菓子をあげただろう?」
「えあっ」
「それに、今日はハロウィーンだ。お前達は次の家に行って、其処でまた新しいお菓子を貰うんだろう?」


機械都市ザナルカンドで伝えられている、ハロウィーンと言う行事は、子供達がおばけや怪物の格好をして、各家々を周ってお菓子を貰うと言うものだ。
おばけや怪物の格好をするのは、この行事の始まりが、死霊や呪いの類から子供達を守る為、逆に怖い格好をさせて驚かせる為だったから───と言われている。
だからこの時期のザナルカンドでは、子供達が仮装し、お菓子を貰う為に近所の家を巡るのだと言う。
そして子供達が来た家は、お菓子を渡さなければ悪戯───悪い事が起きる───され、渡せば幸せが来るようにおまじないをかけて貰えるらしい。
だから、レオンの目の前にいるカボチャ少年とおばけも、そろそろ次の家に行かなければいけない筈。

と言っても、バラムではハロウィーンの習慣がない為、次の家など行きようもないのだが、それは知らない振りをして、レオンは目の前でおろおろとしている二人を急かしてやる。


「ほら、早く次の家に行かないと、お菓子が貰えなくなるぞ」
「ん、えっ、と…あ、あの、」
「つ、次の家は、予約してるから、遅れてもいいの!」
「予約か。何時頃にしてるんだ?」
「えーっと、えっと…じゅ、十時?」
「それならとっくに過ぎてるぞ。急がないと。ああ、道順が判らないなら、俺が案内しようか」
「えっ。い、いい、行けるっ。自分で行けるっ」


声も弱った困り顔のカボチャ少年と、強気な顔をしつつも声は戸惑っているおばけ。
大丈夫だから、と繰り返すおばけに、そうか、とレオンはおばけの頭を撫でた後、テーブルに向き直る。


「それじゃあ俺は、お菓子を食べながら、スコール達が帰って来るのを待とうかな」
「えっ。た、食べちゃうの…?」
「か、帰って来るの、待たないの?」
「そうだな。腹も減ってるし。チョコなんかは溶けてしまうし。エルがいないなら、夕飯も何処にあるか判らないし」


普段、レオンの夕飯は、アルバイトが終わってから採っている。
その時はエルオーネが起きていて、彼女が用意してくれるのが常であった。

エルオーネが此処にいないのでは、夕飯は食べられない───本当は、エルオーネがいなくても、何処に何があるのかレオンは把握しているのだが、素直な二人はその事に気付かない───。
アルバイト終わりの空きっ腹は、お菓子で誤魔化してしまおう。
本当は妹弟達に食べさせようと思っていたけれど、いないのなら仕方がない。
そう言って、レオンはチョコレートビスケットを手に取って、


「このビスケットは美味しそうだな」
「あっあっ、」
「あーっ、あーっ!」
「うん?」


待って、と言わんばかりに声を上げるカボチャ少年とおばけ。
レオンが「どうかしたか?」と言いつつ、包装紙のビニールを開けようと指を引っ掛けた時、


「おねえちゃぁーん!」
「エル姉ー!エル姉ちゃーん!」


助けを求めるように高く上がった声は、きっと家の二階まで響いた事だろう。
それだけ大きな声を出せば、リビング横のキッチンにも確り届く。

更に、カボチャ少年とおばけは、ごそごそもぞもぞと蠢いて、「ぷはっ」とそれぞれの被り物を脱いでしまった。


「レオン、レオンっ。オレっ!オレ、此処にいるよ!」
「僕も。お兄ちゃん、僕、おでかけしてないよっ」
「なんだ、お前達だったのか。早く言ってくれれば良かったのに」
「エル姉もいるよ!キッチンにいるよ!」
「お姉ちゃん、早くー!」


一所懸命、自分の存在をアピールするカボチャ少年とおばけ───基、スコールとティーダ。
二人は被り物の所為でぼせぼさになった髪もそのままに、必死になって兄に抱き着いた。
放られたカボチャの被り物が、寂しそうに床に転がっている。

ぎゅうぎゅうと抱き着く弟達を、レオンは声を上げて笑いそうになるのを堪えながら、いつものように頭を撫でてやる。
其処へ、キッチンから眉尻を下げて笑う魔女がやって来た。


「もう。二人とも、自分からバラしちゃったの?」
「だって!」
「お菓子……」


黒の三角帽子を被った姉の登場に、ティーダは拗ねた貌をして、スコールは涙目になっている。
エルオーネは、やれやれ、と言う表情を浮かべつつも、彼女の貌は決して怒ってはいなかった。
きっと彼女は、兄と弟達の遣り取りを、ずっと見ていたに違いない。
その証左のように、エルオーネはレオンを目を合わせ、


「いじわるね、レオン」
「何の事だ?」


呆けて見せる兄に、妹はなんでもない、と言及を止める。
予想していなかった兄の行動に、おろおろと慌てる弟達を見て笑いを堪えていたのは、決してレオン一人の話ではないのだから。

そんな兄姉の傍らで、イタズラされたとも知らない弟達は、沢山のお菓子を手に入れて、嬉しそうに笑っていた。





今年こそはと思ってたら、お兄ちゃんにやり返されましたw
お菓子の誘惑に負けて騙し切れないちびっ子は可愛い。

前回のハロウィーンは此方→[かぼちゃおばけが主役の日]
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東京オンリーお疲れ様でした!

  • 2014/10/12 12:40
  • カテゴリー:雑記
お久しぶりの日記です。
相変わらずイベント後にしか日記を書いていません。
 
10月5日の東京FFオンリーイベント、お疲れ様でした!お出で下さった方、声をかけて下さった方、本当にありがとうございます。台風が迫る土砂降りの中、イベント前後に体調を崩した方がいない事を祈る(もう一週間経ったけど…)。
私の東京~岡山方面への帰路は夜行バスで、よりにも因ってw台風が通過している中を走らなければならなかったのですが、バスは一時間弱の遅れはあったものの、無事に終点駅まで到着しました。四国方面が全線運休だったので、どうなるかと思った……帰宅困難だった方や、東京宿泊を余儀なくされた方など、少なくなかったのではと思うと、本当に運が良かったと思います。
それから、イベント開始時に電車の方で人身事故があったそうで、路線が止まってしまい、イベント会場に行くに行けなかった方もおられるとか。お逢いしたい方もいたのですが、残念です(´・ω・`) またお逢い出来る機会がある事を願っています。
 
 
今回の新刊は[Lion that returns to crowd]の五巻でした。17歳コンビがメインです。シリーズなので作中の時間軸は繋がっていますが、エピソードはそれぞれ独立している(筈)ので、単品でも読めると思います。
[絆]シリーズを筆頭に、いつも仲の良い二人を書いていますが、[Lion]シリーズは「013メンバーから見たスコールの印象の変化」をコンセプトとしているので、微妙な距離感からスタートする二人と言うのは、新鮮味もあって面白かったです。仲の良い二人ではあまり書かない感じのものが書けたかな?
台風や事故の影響で会場に行けず、購入できなかった方は、どうぞ通販をご利用ください。
 
前々からボソボソ考えている自作ブックカバーについては、7月から9月にかけて色々と私事が重なった為、手を付ける事が出来ませんでした(´・ω・`) 時間の有効活用が下手ですみません。期待して下さった方が果たしておられるのか判りませんがw
 
 
今年度中のイベント参加はこれで終了したいと思っています。
次のFFオンリーが2015年2月ですが、その手前にある大阪CMIC CITY(1月11日開催)にも参加出来ればなぁ……と希望してます(希望だけ)。大阪イベントに新刊が間に合うかは判りません(;´Д`) 最近は出来るだけ前倒しで作業するようにしていますが、未だにギリギリまで作業しているので……
って新刊が間に合うか否か以前に、次の本に何を書くのかすらも決まっていないよ\(^o^)/
 
台風の中、皆様お疲れ様でした。サークルに来て下さった方々、本当にありがとうございました!
本日(12日)にも台風19号が近付く中、スパークが開催されておりますが、皆様無事にご帰宅できる事を祈っております。
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