Date... - 07.14 0:00−

ちょうど日付が変わった頃、突然来客を知らせるチャイムが鳴った。
そろそろ寝ようかと思っていたところだったのに、こんな遅くに一体誰が訪ねてきたのかと不審に思いながら玄関に向かう。
ドアの覗き窓から外の様子を窺うと、そこに立っていたのはなんとも見覚えのある、やたらと眉毛の太い天使……らしき格好をした恋人だった。
思い切り脱力し、なにやってんだこいつは、と呆れつつ扉を開ける。

「よお、変態ヒゲワイン野郎! お前、誕生日なんだろ? 今日は特別にこのブリタニアエンジェル様が、奇跡の力でお前を祝ってやるからありがたく思うんだな!」

腕をくんで得意げにふんぞり返っている天使を見るフランスは、だいぶしょっぱい顔になっていたと思う。
そしてブリタニアエンジェルとかじゃなく、どちらかというと普通に祝って欲しい……と切実に思った。

「…うん…、気持ちは嬉しいんだけどさ、……その痛いコスプレみたいな格好はなに? これじゃお前の方がよっぽど変態なんだけど」

心底呆れた口調で言ったフランスの反応は、天使…否、ブリタニアエンジェル…否、というかイギリス…が思っていたものと違ったらしく、変態、と言われてみるみるうちに顔が赤くなっていく。

「天使に向かって変態とはなんだっ! せ、せっかくブリタニアエンジェルの力でてめえの誕生日を祝ってやろうと思ってわざわざ来たのに、なんだよその言い方……嬉しくねえのかよっ」

ぽこぽこ怒ったイギリスの顔が泣きそうに歪んだので、フランスの方が慌てた。

「あーいや、嬉しいよ……その、誕生日を祝ってくれるっていうお前の気持ちはさ! でも、だからってなんで天使…?」

「プレゼント代わりに奇跡の力を見せてやる。こんなこと滅多にないんだからな、驚くなよ!」

「ああ…、そう…。別にいいのに…」

毎年言っていることだが、フランスとしては誕生日はイギリスと二人きりでゆっくり過ごすことが出来れば、それで十分満足なのだ。
それ以上に彼から何かして欲しいだとか、プレゼントが欲しいだとか、そんなことは思っていない。
もう何年もそうして誕生日を祝ってくれていたのに、なぜ今年に限ってこんなコスプレをして現れたのか本当に謎だ。
イギリスのことだから毎年同じじゃ芸がないとでも考えたのかもしれないが、出来れば普通に祝って欲しかったと思ってしまうのは少し冷たいだろうか。
どうにも反応の薄いフランスに、イギリスは不満げに唇を尖らせる。

「なんだよ……もっと嬉しそうにしろよ。もしかして奇跡の力を信じてないのか? よし、じゃあ見てろよ、俺の力はすごいんだからな! ほあた!」

「えっ?! うわ、…!」

イギリスは妙なかけ声とともに、手に持っていたてっぺんに星のついたステッキを振り上げる。

・:*:・°★,。・:*:・°・:*:・°★,。・:*:・°

そのステッキで殴られるんじゃないかとフランスは反射的に身を引いたが、彼がステッキを振ったとたん、周囲にキラキラとまばゆい光が散った。
なんの説明もなく周囲一帯が光に包まれたことに身の危険を感じたフランスは、とっさに頭を抱えてその場にうずくまる。
しばらくそうやって光が収まるのを待っていると、徐々に辺りは静けさと暗闇を取り戻し、特別何か起こった気配もない。
おそるおそる目を開けて周りを見回したが、光はすっかり消えてそこはもういつもの玄関先だった。

「…? あれ? なにも起こらねえぞ…」

「朝起きたら、いろんな奴がお前を祝いに来るから楽しみにしてろ! じゃあな!」

天使は偉そうに言って、フランスの前から走り去った。
あの痛々しい格好のまま帰るつもりなのだろうか。

「…っていうか帰るのかよ! 今日俺誕生日だよ?!」

日付が変わって一番に会いに来てくれたことは嬉しかったのに、これはとんだ逆サプライズである。
ありえないだろ、とフランスはがっかりと肩を落として、天使が姿を消した夜道をじっと見つめていた。