Date... - 07.14 21:00−

イギリスと一緒に食べようと思って買った食材はほとんど使われず、フランスは一人きりの寂しい夕食を済ませてリビングでぼんやりとテレビを見ていた。
テレビに映る各所で行われた今日の多くのイベントは、どこもずいぶん盛り上がったようだ。
それとは対照的に時間が経つほどに、フランスの気分は盛り下がっていった。
ワインもせっかく上等なものを選んだのに、一人で飲むのはなんとも味気ない。
こんなに遅くなっては来ないだろうなぁ、っていうか完全に来る気ないよな、とあきらめかけたそのとき、今日だけで何度も聞いたチャイムの音が室内に響いた。

もう九時過ぎだ。
さすがに他の国が訪ねてくるような時間ではない。
しかし今日は何度も期待を裏切られているのでイギリスだという確信も持てず、玄関に向かう足取りは重かった。

「…はーい」

「あっ、フランス兄ちゃん、誕生日おめでとー!」

「夜遅くにすまない。……おめでとう」

「フランスさん、おめでとうございます」

ドアの向こうにはイタリア、ドイツ、日本がいた。
やっぱりイギリスじゃなかった、と少し落胆したけれど、予想はしていたのでそこまでショックではない。
それよりもこんな時間になっても、三人がわざわざ祝いに来てくれたのが嬉しかった。

「ああ、メルシ。…ってか、今日なんかあったのか? もう九時過ぎなのに三人揃って…」

この三カ国で会談があるとは聞いていない。
彼らは仲がいいから個人的に集まったのだろうとは思うが、時間が遅いだけになんとなく気になった。

「うん、今日は三人で俺んちに集まって遊びに行ったり、ご飯食べたりしたんだ。それで、さっきテレビ見てたら兄ちゃんちのことやってて、そういえば今日って兄ちゃんの誕生日だったねって思い出したから、みんなで来たんだよ〜」

テレビを見て思い出したというのはちょっと悲しいが、電話やメールで「おめでとう」と言えば済むところをみんなで来てくれたのは嬉しい。

「フランスさん、これは私からプレゼントです」

日本は肩に掛けていたバッグから、ケースに入った一枚のCDをフランスに差し出した。
受け取っていろいろな角度から眺めるが、なんの変哲もないCD-Rだ。

「これ、なに入ってるの?」

「私が作ったビジュアルノベルゲームです」

「ゲーム? へえ、すごいな。日本が全部作ったの?」

ゲームのプレゼントとは想定外だ。
手渡されたのはCDだけで説明書などはついていないので、一体どういうゲームなのか気になる。
ビジュアルノベルというからには、小説形式の文章を画像付きで読み進めていくゲームなのだろうけれど、ストーリーのジャンルがまったく想像が付かない。
フランスが首を傾げていると、イタリアが横から口を挟んだ。

「そう、すごいんだよ〜! 俺もテストプレイさせてもらったんだ」

「へえー、どんな内容?」

「……イギリスの前では、やらない方がいいだろうな」

今度はドイツが少し頬を赤らめて答える。
そうだね、ちょっとすごいもんね、と意味深な相づちを打つイタリアの顔も赤く染まっていた。

「なに? なんでイギリスの前でやったらまずいの? お前らの反応余計気になるんだけど!」

もしかして、好みの女の子を攻略していくというエッチなゲームなのだろうか。
日本が作ったのならさぞかしマニアックな内容に違いない……と、ドキドキしながら手中のCDを見つめていると、日本はにこにこ笑って答えた。

「詳しくはネタバレになるので言えませんが、フランスさんとイギリスさんの日常をテーマにしてみました」

「えっ! 俺とイギリスの? なんか全然想像つかないゲームだな…」

「お手すきのときに、ぜひプレイなさってくださいね」

「プレゼントも渡したし、俺たち帰るね! またね兄ちゃん、誕生日おめでとう!」

「ああ、……ありがとな、三人とも気をつけて帰れよ」

楽しそうに話しながら帰って行く三人を見送って、フランスもリビングに戻った。